説明

廃タイヤ焼却灰の有害成分溶出抑制方法

【課題】本発明の課題は、有害成分の溶出が抑制され、高強度かつ長期的に安定な固化体を廃タイヤ焼却灰から製造する技術を提供することである。
【解決手段】廃タイヤを含有する原料を焼却処理して発生する焼却灰に、リン酸を0.01〜10部、生石灰を1〜20部、水を20〜100部加えて混練して養生することによって、廃タイヤ焼却灰から固化体を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃タイヤ焼却灰から固化体を製造する技術に関する。特に本発明は、有害成分の溶出を抑制した、高強度、かつ、長期的に安定な固化体を廃タイヤ焼却灰から製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤの焼却灰は重金属類の有害物質が含まれているため、直接埋立処分ができず、そのまま埋立を行う場合は、遮水シート等で外部への浸透水流出を防止した管理型処分場で埋立処分するように義務付けられている。また、廃タイヤの焼却灰を、有害物質の溶出を抑制する中間処理を施した上で埋立処分することが可能であるが、処理費用が増大するため好ましくない。中間処理として薬剤(キレート)処理や溶融固化処理などがあるが、薬剤処理では高価なキレート剤が処理すべき灰に対して数%程度必要であり、溶融固化処理では設備費及び多くのエネルギーが必要となる。さらに近年、埋立処分場を確保すること自体がますます困難になってきており、廃タイヤ焼却灰を有効活用する技術の開発が要望されている。
【0003】
ところで、焼却灰や廃棄物を有効利用することで処理費の抑制を図る方法のひとつとして、水熱固化反応を利用した固化体の製造方法が提案されている(特許文献1〜5)。
特許文献1には、製紙工場から排出されるペーパースラッジを200〜1000℃で前処理した後、酸化珪素、水酸化ナトリウム及び酸化カルシウムを添加して、水熱合成することにより、イオン交換体として有用なトバモライト混合物を製造する方法が開示されている。しかし、特許文献1に記載の方法では、単にスラリー反応から粉末状の生成物を得られるだけで、粒状もしくはブロック状の固化体を得ることはできない。
【0004】
特許文献2には、陶磁器廃棄物、釉薬汚泥、生素地廃棄物、鋳物砂廃棄物、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰、石炭灰、フライアッシュ、スラグ等に、生石灰、消石灰等の活性カルシウム源を添加・混合し、得られた混合物を加圧成形した後、水熱合成して舗装材等の建設材料として利用可能な固化体を製造する方法が開示されている。しかし、特許文献2の方法では、固化体を得るために加圧成形が必要であり、処理工程が複雑になる。
【0005】
特許文献3には、都市ごみ、産業廃棄物、ごみ固形燃料(RDF)等の廃棄物を焼却処理した際に発生する焼却飛灰から、固化体を製造する際に膨張を抑制する処理を行うことにより、高強度の固化体を製造することが開示されている。
【0006】
特許文献4には、砕石副産物からなる水熱固化成形品の製造方法に関し、詳細には、砕石プラントで発生するシリカ(SiO2)を含有する砕石副産物である濁水ケーキや石粉にカルシウム化合物を添加・混合し、この原料混合物を最終的に水熱固化処理することにより、砕石副産物から高品質な建築用ブロック等の水熱固化成形品を製造する方法が開示されている。しかし、特許文献4の方法では、固化体を得るために加圧成形が必要であり、処理工程が複雑になる。
【0007】
特許文献5には、ペーパースラッジを焼却処理した際に発生する焼却灰に、水及び/又は温水、生石灰並びにセメントを加え、常温から98℃までの温度で混合して粒状に造粒した成形体を養生した後、水熱固化反応を利用して固化体を製造することが開示されている。しかし、特許文献5の方法では、原料としてセメントが必須であるため、コストの点において課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−159913号公報
【特許文献2】特開平10−296205号公報
【特許文献3】特開2000−308867号公報
【特許文献4】特開2002−137956号公報
【特許文献5】特開2005−313032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の諸点に鑑み、本発明の課題は、種々の用途に使用できる固化体を廃タイヤ焼却灰から製造する技術を提供することである。特に、廃タイヤ焼却灰を原料とする固化体を種々の用途に用いるためには、固化体が高強度で長期間安定であること、有害成分の溶出が抑制されていることが必要であり、本発明は、そのような固化体を廃タイヤ焼却灰を原料として製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために鋭意研究したところ、廃タイヤ焼却灰に特定量のリン酸、生石灰、水を添加して混練することによって、加圧成形などを特段行わずとも、長期間安定で、有害成分の溶出が抑制された造粒固化体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の廃タイヤ焼却灰を原料とする固化体の製造方法は、廃タイヤ70〜100部、ペーパースラッジ0〜30部を含有する原料を焼却処理した際に発生する焼却灰に、水を40〜70部加えて、更にリン酸を0.01〜10部と、生石灰1〜20部を加えて混練して造粒し、さらに養生することによって、固化体を製造する。
【0012】
本発明は以下に限定されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1) 廃タイヤを含有する原料を焼却処理して発生する焼却灰に、リン酸を0.01〜10部、生石灰を1〜20部、水を20〜100部加えて混練して養生することを含む、固化体の製造方法。
(2) 前記原料が、原料全体を100部とした場合に30部以下のペーパースラッジを含有する、(1)に記載の方法。
(3) 廃タイヤを含有する原料を焼却処理して発生する焼却灰に、リン酸を0.01〜10部、生石灰を1〜20部、水を20〜100部加えて混練して養生することによって得られる固化体。
(4) 前記原料が、原料全体を100部とした場合に30部以下のペーパースラッジを含有する、(3)に記載の固化体。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。
(1) 廃タイヤ焼却灰に所定量のリン酸(H3PO4)と生石灰(CaO)、水を添加して混練・養生することによって、フッ素(F)等の有害成分の溶出量を環境省告示18号の土壌環境基準以下に抑制した、高強度、かつ、長期的に安定な固化体を製造することができる。本発明によって高品質な固化体が得られる理由の詳細は完全には明らかでなく、本発明はこれに拘束されるものではないが、フルオロアパタイト(Ca5(PO4)3F)が生成することによってフッ素等の有害成分の溶出が抑制されるものと推測される。
(2) 廃タイヤ焼却灰は、元々細孔性と多孔性であるため、得られる固化体も、細孔性および多孔性を有しており、吸水性や保水性が良好である。
(3) 本発明によって得られる固化体は、有害物質の溶出が抑制されており、強度にも優れるため、土壌などの環境中で使用することができる。特に本発明の固化体は、吸水性や保水性の効果が大きいため、水捌けの改善や地盤の沈下抑制をして作物の育成改善も期待できる。すなわち、本発明の固化体は、土壌改良材に求められる品質・性状を備えており、例えば、路盤材・砕石増量材・土壌改良材・凍上抑制材に好適に使用することができる。
(4) 本発明によれば、廃タイヤやその焼却物といった廃棄物から付加価値のある固化体を製造することができるため、廃棄物の有効活用、地球環境の保全といった観点から特に優れている。
(5) 本発明によれば、加圧成形などの処理を特段行わずとも、固化体を製造することができるため、簡便かつ低コストに廃タイヤ焼却灰を処理することができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することができるものである。
廃タイヤ焼却灰
本発明においては、廃タイヤを含有する原料を焼却処理して発生する焼却灰(以下、廃タイヤ焼却灰と略することもある)を使用する。ここで、廃タイヤとは、供用の役割を終え車輌等から外されたいわゆる廃タイヤや中古タイヤはもちろん、タイヤメーカーの工場などにおける製造過程で発生する不良品、スペック外の新品タイヤも含むものとし、その大きさ、種類などに特に限定はない。一般に廃タイヤは、その発生量が膨大であるために、適切な廃棄処理方法を確立することが強く求められており、その有効な利用法が模索されているが、本発明によれば、廃タイヤから付加価値のある固化体を製造することができる。
【0015】
本発明で使用する焼却灰は、廃タイヤを含有する原料を焼却処理して得られる。焼却灰の原料(燃料)は、廃タイヤを含んでいればよく、廃タイヤ以外の原料を含有してもよい。廃タイヤ以外の原料としては、例えば、ペーパースラッジ、RDF(ごみ固形燃料)、RPF(産業系廃プラスチック・古紙類固形燃料)、木屑、その他一般可燃物も好適に使用することができる。本発明においては、ペーパースラッジは一般に有害成分であるホウ素や六価クロムを含んでいないことから、廃タイヤ焼却灰の原料として、廃タイヤに加えてペーパースラッジを併用することが好ましく、その使用量は、廃タイヤ70〜100部に対してペーパースラッジを0〜30部程度使用することが好ましく、廃タイヤ80〜95部に対してペーパースラッジを5〜20部使用することがより好ましい。
【0016】
また、助燃用とするために重油や石炭などを廃タイヤ等と共に、ボイラーなどの燃焼装置で混焼しても構わない。一般に、助燃用に石炭を使用した場合の廃タイヤ焼却灰は、微量ながらも重金属類(六価クロム、砒素、セレン、フッ素、ホウ素等)を含んでおり、特に亜鉛の含有量が多くなる傾向がある。
【0017】
廃タイヤを含む原料を燃焼させる条件は特に制限されず、公知の燃焼装置を用いて種々の条件で燃焼させることができる。燃焼装置には、流動層ボイラーなどのボイラーやストーカ焼却炉等種々あるが、形式は限定されるものではない。また、燃焼効率を高めるため、廃タイヤをチップなどの形状にしてから燃焼させることもできる。
【0018】
廃タイヤ焼却灰の固化
本発明においては、上述したようにして得られた廃タイヤ焼却灰に対して、リン酸を0.01〜10部、生石灰を1〜20部、水を40〜70部加えて混練した後、養生することによって固化体を製造する。
【0019】
本発明において廃タイヤ焼却灰に加える水の量は、廃タイヤ焼却灰100重量部に対して、20〜100重量部であり、望ましくは40〜70重量部、より望ましくは45〜65重量部である。水の添加量は、混練条件や混練後の強度に影響する。焼却灰に対する水の添加量が多くなると、混練後の強度は低くなるが、混練時間は短くなるが、これは、水が速く焼却灰に浸透することで、混練も速く進むためと考えられる。一方、焼却灰に対して、水の添加量が少なくなると、混練時間は長くなるが、混練後の強度は高くなる傾向である。このことを考慮し、本発明者が、混練後の強度や製造効率が高くなる水の添加量を追究したところ、廃タイヤ焼却灰に対して上記範囲の水を加えると好ましいことが明らかになった。
【0020】
また本発明は、造粒物を得るために、廃タイヤ焼却灰とともに、固化助剤としてリン酸及び生石灰を併用する。このような固化助剤を併用することによって、高強度かつ長期的に安定な粒状の造粒物を得ることができる。
【0021】
廃タイヤ焼却灰に加えるリン酸は、廃タイヤ焼却灰100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲であることが必須である。廃タイヤ焼却灰混練物の有害物質溶出量を調査したところ、リン酸の添加量が0.01重量部未満ではフッ素の溶出量を十分に抑えることができず、逆にリン酸の添加量が10重量部を超えると、溶出pHが低下し、ホウ素の溶出量が増加することに加え、コストの点においても好ましくない。従って、リン酸添加量は0.01〜10重量部の範囲であることが必須である。
【0022】
廃タイヤ焼却灰に加える生石灰は、廃タイヤ焼却灰に含有される生石灰分量にもよるが、廃タイヤ焼却灰100重量部に対して、1〜20重量部の範囲であることが必須である。廃タイヤ焼却灰混練物の有害成分溶出量の経時的な変化を調査したところ、混練物を空気にさらすと、空気中の二酸化炭素と混練物中の生石灰が反応して炭酸カルシウムが生成し、溶出pHが9程度まで低下するため、ホウ素の溶出量が増加することがわかった。そこで生石灰を1〜20部添加すると、ホウ素の溶出量が減少することがわかった。従って、生石灰添加量は1〜20重量部の範囲がであることが必須である。
【0023】
本発明においては、必要に応じて硬化促進剤、分散剤などを廃タイヤ焼却灰に添加してもよい。硬化促進剤は、水和作用を促進して早期に強度を発現させる役割があり、養生時間を短くする効果がある。硬化促進剤、分散剤には、例えば、塩化カルシウム、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、炭酸ソーダ、炭酸カリ、珪弗化亜鉛、珪弗化マグネシウム、珪弗化ソーダ等がある。
【0024】
本発明においては、廃タイヤ焼却灰に、水、リン酸、生石灰、必要により硬化促進剤、分散剤などを加え、混練する。混練工程においては、原料の混合及び造粒が行われる。なお、廃タイヤ焼却灰、水、リン酸、生石灰は混練機に別々に供給してもよく、予め混合した状態で供給してもよい。混練工程の温度は、特に限定されないが、5〜98℃が好ましく、10〜90℃がより好ましく、常温〜80℃がさらに好ましく、60〜80℃がいっそう好ましい。混練時間は、先述したように、水及び/又は温水の添加量に影響され、また、混合装置(撹拌子の回転数や大きさ等)にも影響されるが、1〜10分間が望ましく、5〜10分間がより望ましい。
【0025】
本発明において原料を混練する混練機としては、公知の装置を使用することができ、特に限定はないが、効率よく混合するためには転動混練機がもっとも好適である。例えば、ELBAミキサー(クリハラ)、インテンシブミキサー(アイリッヒ)、ペレガイア(北川鉄工所)等の混練機を好適に挙げられる。
【0026】
本発明においては、混練工程後、混練品を養生する必要がある。養生を行うことにより混練品の強度が向上する。養生方法には、大きく分けて自然養生と強制養生がある。自然養生とは、特に手を加えることなく、時間をかけることによる養生方法である。強制養生とは、高温状態(70〜250℃)に保持して、短時間で効率的な養生方法である。本発明においては、どちらの養生方法でも構わない。養生期間としては1〜30日間が好ましく、特に2〜10日が好ましい。1日以内であると十分な有害成分の溶出抑制効果と強度発現が得られず、30日以上養生しても有害成分の溶出抑制効果と強度発現の改善効果は見られない。また、容器に入れた状態で保管する養生に加えて、空気に曝した状態で保管する風乾を行ってもよい。風乾の期間に特に制限はないが、有害成分の溶出抑制効果と強度発現の観点から1〜10日が好ましく、2〜5日がより好ましい。
【0027】
固化体
本発明によって得られる固化体は、廃タイヤ焼却灰に由来する有害物質の溶出が抑制されており、また、その強度も高いため、各種用途に好適に使用することができる。好適な用途として、路盤材、砕石増量材、土壌改良材、凍上抑制材などを挙げることができる。
【0028】
本発明の固化体を路盤材・砕石増量材として使用する場合には、路盤材の原料の砕石に対して1〜30質量%添加することが好ましく、3〜10質量%添加することがより好ましい。砕石に焼却灰混練物をショベルカーで破砕した粒子を添加すると砕石同士の締りが良くなり、この用途に使用するのに重要な指標である95%修正CBRが高くなる。
【0029】
本発明の固化体を土壌改良材や凍上抑制材として使用する場合、粒径は1.18mm〜16mmの粒が全体重量の70%以上を有することが望ましく、混練・養生後に粉砕することによって粒径を調整することもできる。一般に、土壌改良材・凍上抑制材は土中に層状(例えば約50〜150cm厚さ)に施工された上に、表土(例えば土壌改良材では約100cm)を施工することで、水捌けを改良するものである。したがって、表土からの雨水等の水捌けが良好であるためには、土壌改良材・凍上抑制材の粒子間に間隙があり、水の抜け道があることが必要である。また、表土下の土壌改良材層・凍上抑制層が保水性を持ち表土水分が低下した場合に水分補給が可能であることも求められる。本発明の固化体は、原料である廃タイヤ焼却灰が多孔質かつ細孔性であるため、それから製造された固化体粒子も細孔性や多孔性であり、適度な吸水性や保水性を有する。このように、土壌改良材層・凍上抑制層が保水性を持つことで、農作物の旱害・冬害を防ぐこともできる。
【0030】
また、粒子の表面積が大きい方が吸水性や保水性には有利であり、粒径が小さいほど粒子の表面積が大きくなる。但し、粒子が球状に近い場合は、小粒径だけでは施工上締め固めがしにくく、また逆に大粒径だけでも同様に締め固めがしにくい。粒径の大きなものの間隙に粒径の小さなものが充填されることにより締め固めしやすくなる。これより、路盤材・土壌改良材・凍上抑制材として施工上締め固めしやすく、また土壌改良材・凍上抑制材に必要な適性を持った粒径範囲が規定されることとなる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明の実施例及び比較例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。
<試験方法>
元素組成分析は蛍光X線にて行った。溶出試験は環境省告示第18号、含有量は平成13年底質調査方法II5.2.2に準拠し、フッ素はイオンクロマトグラフィーにて、ホウ素・六価クロム・鉛はICP発光分光分析にて測定した。溶出pHは地盤工学会基準 JGS 0211-2000「土懸濁液のpH試験方法」に従って測定した。
【0032】
<造粒固化体の製造>
実施例1
廃タイヤ84重量部、ペーパースラッジ16重量部を含有する原料155tを、流動層ボイラー焼却炉にて850℃の条件で燃焼させて、焼却灰を得た。この焼却灰について、環境省告示第18号に基づく溶出試験を行い、元素組成分析を行った(表1)。
【0033】
この焼却灰100部に、水55部、リン酸1部、生石灰5部を添加し、モルタルミキサー(関西機器製作所製)で低速(140rpm)にて30秒攪拌後、高速(285rpm)にて60秒攪拌して混練することによって、平均直径が約5mm程度の造粒物を得た。
【0034】
この造粒物を2日間密封して養生した後、更に3日間空気にさらして風乾して、造粒固化体を得た。この造粒固化体について、フッ素、ホウ素、六価クロム、鉛の溶出量、強度を測定した。
【0035】
実施例2
焼却灰100部に、水58部、リン酸1部、生石灰10部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0036】
実施例3
焼却灰100部に、水56部、リン酸2部、生石灰5部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0037】
実施例4
焼却灰100部に、水58部、リン酸2部、生石灰10部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0038】
比較例1
焼却灰100部に、水53部のみを添加した以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0039】
比較例2
焼却灰100部に、水56部、二水石膏5部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0040】
比較例3
焼却灰100部に、水57部、二水石膏10部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0041】
比較例4
焼却灰100部に、水52部、リン酸1部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0042】
比較例5
焼却灰100部に、水52部、リン酸2部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0043】
比較例6
焼却灰100部に、水55部、生石灰5部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0044】
比較例7
焼却灰100部に、水53部、生石灰10部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0045】
比較例8
焼却灰100部に、水58部、二水石膏5部、生石灰5部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0046】
比較例9
焼却灰100部に、水59部、二水石膏5部、生石灰10部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0047】
比較例10
焼却灰100部に、水61部、リン酸0.1部、生石灰50部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0048】
比較例11
焼却灰100部に、水59部、リン酸15部、生石灰1部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして造粒固化体を製造した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
<評価結果>
表2に、製造した造粒固化体について溶出試験を行った結果を示す。実施例1〜4の造粒固化体は、フッ素、ホウ素、六価クロム、鉛の溶出量が土壌環境基準以内であった。ここで、フッ素、ホウ素、六価クロム、鉛の溶出量に関する土壌環境基準値は、フッ素は0.8ppm未満、ホウ素は1.0ppm未満、、六価クロムは0.05ppm未満、鉛は0.01ppm未満である。
【0052】
一方、固化助剤を添加しなかった比較例1では、フッ素、ホウ素の溶出量が土壌環境基準を超えており、固化体の強度も低かった。二水石膏のみを添加した比較例2・3、リン酸のみを添加した比較例4・5は、フッ素、ホウ素の溶出量が土壌環境基準を超えており、固化体の強度も低かった。また、生石灰のみを添加した比較例6・7は、フッ素の溶出量が土壌環境基準を超えていた。さらに、二水石膏と生石灰を添加した比較例8・9は、フッ素の溶出量が土壌環境基準を超えており、固化体の強度も低かった。
【0053】
また、リン酸の添加量が低い比較例10は、フッ素の溶出量が土壌環境基準を超えており、リン酸の添加量が過剰な比較例11は、ホウ素、六価クロムの溶出量が土壌環境基準を超えており、固化体の強度が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤを含有する原料を焼却処理して発生する焼却灰に、リン酸を0.01〜10部、生石灰を1〜20部、水を20〜100部加えて混練して養生することを含む、固化体の製造方法。
【請求項2】
前記原料が、原料全体を100部とした場合に30部以下のペーパースラッジを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
廃タイヤを含有する原料を焼却処理して発生する焼却灰に、リン酸を0.01〜10部、生石灰を1〜20部、水を20〜100部加えて混練して養生することによって得られる固化体。
【請求項4】
前記原料が、原料全体を100部とした場合に30部以下のペーパースラッジを含有する、請求項3に記載の固化体。

【公開番号】特開2012−213704(P2012−213704A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80322(P2011−80322)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】