説明

廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置

【課題】廃油及び廃固形分含有廃水を排出する零細、小規模事業所などで一度回収された廃油からその中に含まれている廃固形分、廃油夾雑物、廃水分などを更に選択的に分離、除去して、廃油のみを別の輸送、保管用容器に移送する簡易な装置を提供する。
【解決手段】廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置は、廃油移送装置2と廃油層探知装置1とからなる。この廃油移送装置2は、廃油吸入管14及び廃油排出管15付き廃油輸送モータ12と移送廃油の充填を検知して前記モータ12の駆動を停止させる電気制御装置13とからなる。廃油層探知装置1は、浮き板3に、廃油吸入管14の先端を収容可能な廃固形分除去器4と浮き板3に離接するようにその下部を上下動可能な廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5とを設けた廃油層探知装置1とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃固形分、廃油夾雑物、廃水などを含有する廃油から廃油のみを選択的に分離して他の容器に移送するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食料理店、ファーストフード店、レストラン、ホテル、食品加工場などの小規模事業所における厨房廃水には、様々の水質汚濁物質が含まれている。このような廃水を何ら処理することなく排水すると、廃水中の廃油分などが排水管に付着して固まり、詰まらせたりするだけでなく、合併処理槽や下水処理場での水の浄化処理を困難にし、また、環境に悪影響を及ぼし、法的規制を受けて、営業を続けることができなくなる事態ともなり得る。
そこで、廃油分やゴミ、浮遊物などの廃固形分を含む廃水を排出事業所単位で処理する方法、装置が種々提案されており、これらの技術は大きく分けて2つのグループに分類される。
すなわち、第1のグループは、廃水中の廃油分などを微生物で分解処理する方法、装置である。しかし、この方法、装置では、廃油分分解の速度が遅いため分解効率が悪く、また、微生物の管理に配慮しなければならず、複雑な設備が必要であった。
第2のグループは、廃水をプールし、浮いている上層の廃油分を汲み出したり、吸着剤で吸着して濾過する等により、廃水中の廃油分などを物理的に除去する方法、装置である。しかし、この方法、装置では、廃水(のプール)から悪臭が発生したり、廃油分の分離、除去が不完全となりやすく、また、大型のシステム、設備が必要であった。
【0003】
これら従来技術の問題点を解決するため、特許文献1には、廃油分は透過するが油吸着剤は透過しない壁面で形成された油吸着剤を収容する油吸着槽を備えた含油廃水処理装置が開示されている。
しかしながら、この含油廃水処理装置は、従来の装置にくらべれば比較的簡易な装置と言えるが、油吸着剤の消耗などのランニングコストや装置の構造がなお比較的複雑であるため、零細事業所にとっては装置の価格が高すぎるといった主に経済性の面から、依然として零細、小規模な事業所飲食店などでは直ちに採用するには負担が重かった。
【0004】
そこで、廃油分や様々の形状、性状の廃固形分などを含有する廃水を排出する零細、小規模事業所等において、廃水から廃油分や廃固形分を効率的に分離するため、特許文献2の廃油及び廃固形分含有廃水の選択分離装置が提案されている。
しかしながら、このような装置で分離された廃油には固形分、夾雑物、廃水分などが含まれているため、これまで分離回収された廃油は低コストでかつ簡易にA重油や灯油等の代替燃料として使用することができなかった。近年、特に地球温暖化防止、資源の有効利用、廃油処分コストの削減などの観点からは、分離回収された廃油を石油代替燃料として有効利用することが強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−28642号公報
【特許文献2】特願2008−286023号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、廃油及び廃固形分含有廃水を排出する零細、小規模事業所などで一度回収された廃油からその中に含まれている廃固形分、廃油夾雑物、廃水分などを更に選択的に分離、除去して、廃油のみを別の輸送、保管用容器に移送する簡易な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は次の(1)〜(4)に示すものである。
(1) 廃油吸入管14及び廃油排出管15付き廃油輸送モータ12と移送廃油の充填を検知して前記モータ12の駆動を停止させる電気制御装置13とからなる廃油移送装置2と、浮き板3に、廃油吸入管14の先端を収容可能な廃固形分除去器4と浮き板3に離接するようにその下部を上下動可能な廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5とを設けた廃油層探知装置1とからなること、を特徴とする廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置。
(2) 廃固形分除去器4が、更に廃油吸入管14の先端を連結するための吸出口8を上向きに安定的に収容してなる、前記(1)の廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置。
(3) 浮き板3に離接するようにその下部を上下動可能な廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5が、各上端部にストッパー25を設けた複数の棒10を浮き板3に上下に摺動容易となるように貫通して設け、棒10の各下端部に濾過材6で被覆した廃固形分分離器7の縁端を固定することにより、浮き板3の下部に上下動に従って離接するように離隔して懸垂させた濾過材6被覆廃固形分分離器7である、前記(1)又は(2)の廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置。
(4) 更に、少なくとも2本の棒10の上端部それぞれの間に把持部11を架橋し形成してなる、前記(3)の廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明により初めて、廃油及び廃固形分含有廃水を排出する零細、小規模事業所などで一度回収された廃油からその中に含まれている廃固形分、廃油夾雑物、廃水分などを更に選択的に分離、除去して、石油代替燃料として利用可能な廃油のみを別の輸送、保管用容器に移す簡易な装置を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施例の廃油の選択分離、移送装置の使用状況を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の廃油の選択分離、移送装置における廃油層探知装置の斜視図である。
【図3】図3は、図2の廃油層探知装置においてその廃固形分除去器における吸出口及びその安定保持のための針金のないものの斜視図である。
【図4】図4は、図1の廃油の選択分離、移送装置による廃油の選択分離、移送前後の状況を示す廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油タンクの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す本発明の一実施例の廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置は、廃油移送装置2と廃油層探知装置1とからなる基本構成である。
【0011】
この廃油層探知装置1は、浮き板3に廃固形分除去器4が設けられており、更にこの浮き板3の下部に廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5が設けられた構造である。
【0012】
浮き板3は、廃固形分除去器4と廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5などの重みで廃油層探知装置1が廃油層50中に沈み込んでしまわないようにするためのものであり、具体的に本実施例では発泡スチロール板である。浮き板3は、廃油層探知装置1が廃油層50中に浮き板の中ほどまで沈む程度のものが好ましい。
【0013】
浮き板3のほぼ中央部には貫通孔を設け、この貫通孔に廃固形分除去器4が収容されて浮き板3に固定されている。
廃固形分除去器4は、ゴミや浮遊物などの廃固形分を濾過して除去でき、しかも廃油移送装置2の廃油吸入管14の先端に連結する吸出口8を安定的に収容できるように、金属製や合成樹脂製の網目構造の容器である。この網目構造容器の形状は、上面が開放した下半球状以外に上面が開放した箱状など様々の形状であってよい。吸出口8は短い管であり、その下端が廃固形分除去器4の底部に接触しないよう、かつ、廃固形分除去器4の中心部付近に浮き板3より少し首を出す(廃油吸入管14の先端との連結を容易に行える)程度の長さで上向きに直立して安定的に保持されるように、針金9で廃固形分除去器4と一緒に浮き板(発泡スチロール板)に固定されている。
【0014】
他の態様では、廃固形分除去器4には、吸出口8と針金9は設けられていない(図3参照)。この場合、廃油吸入管14はその先端を廃固形分除去器4内に上方から直接に導入して使用する。
【0015】
廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5は、浮き板3の下部に離接するように設けられており、浮き板3から離説することなく上下動できる構造である。具体的には、廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5は、濾過材6で被覆された廃固形分分離器7の上縁端が4本の金属棒10の各一端で4箇所固定され、4本の金属棒10それぞれの他端は垂直上の浮き板3に設けられている各小(貫通)孔を通って(浮き板3から離脱しないように)ストッパー25で留められている。浮き板3の各小孔は金属棒10の太さより少し大きく設けられているため、金属棒10は浮き板3の小孔内を容易に上下に摺動することができる。つまり、濾過材6で被覆された廃固形分分離器7が、浮き板3の廃固形分除去器4の更に下部に(その上下動に従って浮き板3に離接するように)離隔して懸垂する構造である。濾過材6としては、グラスファイバーが最も好適に例示される。ストッパー25は、例えばパッキンを介するナットからなる。金属棒10は、廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5が浮き板3から最も離れた状態のときに、浮き板3と廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5との間に廃油が侵入して、廃油層分を廃油移送装置2で移送作業中に常に空間を生じることのない程度の長さであり、更に具体的には例えば、固形分分離器7の高さ(縦の長さ)と同程度であることが好ましい。そのため、廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5は、ほぼ金属棒10の長さの距離だけ浮き板3の真下を浮き板3(の小孔)に規制されつつ浮き板3に対して垂直に上下動することができるが、浮き板3の動きに反して横移動することはできない。
【0016】
浮き板3においてそれぞれ対角線に位置する相対抗する2本の金属棒10の各上端部(ストッパー25を含む)の間には、把持部11が架橋して形成されている。
【0017】
廃油移送装置2は、廃油輸送モータ12とこれについての電気制御装置13とからなる構成である。
【0018】
廃油輸送モータ12には、廃油の吸入側に廃油吸入管14と廃油の排出側に廃油排出管15が連結されている。
廃油吸入管14の先端は、廃油層探知装置1の廃固形分除去器4内に固定された吸出口(管)8に連結するか、或いは、廃固形分除去器4内に直接に導入して収容し、廃油排出管15の先端は輸送、保管用容器21内に直接に導入して収容する。
【0019】
電気制御装置13は、輸送、保管用容器21内に廃油が移送され充填されたとき、これを感知して廃油輸送モータ12の駆動を停止させるものである。この電気制御装置13は、具体的には、直角に屈曲したL字形鉄細棒17の一端に(容器21内に浮かべる)フロート16が固設されており、その他端は(フロート16の上昇により)スイッチ端子18に接触して廃油輸送モータ12の駆動を停止させるようスイッチ端子18からスイッチ19を介して廃油輸送モータ12と電源に電気配線されている。L字形鉄細棒17の屈曲部は、フロート16の上下動に従って限定された角度範囲でL字形鉄細棒17が揺動可能となるように軸固定されている。
【0020】
零細、小規模事業所などで廃油及び廃固形分含有廃水から回収された廃固形分、廃油夾雑物、廃水などを若干含有する廃油がラードなどの融点の高い固形油成分を多く含む場合には、この廃油は常温では固体状態となるため、本発明の廃油の選択分離、移送装置を使用するに際しては、選択分離、移送する前記の原料廃油は安全な加熱装置を装着したタンク20に収容することが必要である。このような加熱装置の例は、図1に示すような、温度センサー22と発熱シート23と電源にそれぞれ電気配線されたスイッチ及び温度表示板付き温度調節装置24である。
【0021】
次に、本発明の廃油の選択分離、移送装置を用いて、廃固形分、廃油夾雑物、廃水などを若干含有する廃油から廃油のみを選択的に分離し移送する方法について、図1及び図4を参照して具体的に説明する。
【0022】
廃油及び廃固形分含有廃水から回収した廃固形分、廃油夾雑物、廃水を若干含有するラードが主成分の廃油を収容してあるタンク20を約70℃に保って、タンク20内のラードを完全に溶解させ、廃油層50、廃固形分、廃油夾雑物層51、廃水層52に分離させて、この中に廃油層探知装置1を入れる。廃油層探知装置1は、濾過材6で被覆された廃固形分分離器7が廃油層50中で下降して浮き板3の真下に離隔して懸垂された状態となる(図4(a)参照)。タンク20に設置されている廃油輸送モータ12に連結された廃油吸入管14の先端を廃固形分除去器4内の吸出口8に接続し、廃油輸送モータ12に連結された廃油排出管15の先端を輸送、保管用容器21内に収容する。
廃油輸送モータ12のスイッチ19を入れるとモータ12が駆動して、廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5と浮き板3との間の廃油(層50)が廃固形分除去器4によって廃油層50中のゴミや浮遊物などの廃固形分が排除されつつ吸出口8から廃油吸入管14を通り、次いで廃油排出管15から輸送、保管用容器21内に流入し、移送される。
【0023】
電気制御装置13の設置されている輸送、保管用容器21に廃油が充填されると、容器21内でフロート16が上昇して(移送廃油の充填を検知し)L字形鉄細棒17の他端がスイッチ端子18に接触してスイッチ19が切れ、廃油輸送モータ12の駆動が停止し、タンク20からの廃油の吸入が止まる。
【0024】
移送廃油が充填した輸送、保管用容器21を次の空の輸送、保管用容器21と取替え、これに電気制御装置13を設置して、タンク20内の廃油層50から全ての廃油を輸送、保管用容器21に移送し終えるまで前記操作を繰り返す。そして、タンク20内の廃固形分除去器4の吸出口8から廃油吸入管14を抜き取る(図4(b)参照)。
【0025】
なお、タンク20内の廃油層50の廃油がほぼ排出(移送)されると、廃油層探知装置1の廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5がタンク20内の廃油夾雑物層51に接触し、廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5の濾過材6の隙間に廃油が充満しているため、廃油と異質の廃油夾雑物や水は(常圧では)濾過材6中に浸入することができないので、廃油夾雑物層51と廃水層52の圧力により廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5は廃油夾雑物層51のあたりで止まってしまってそれ以上沈むことができず、ついには廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5は次第に押し上げられて浮き板3に接触することになり、廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器5内かつ浮き板3と吸出口8の下端との間の廃油は、廃油輸送モータ12により廃油吸入管14から吸引されてそこに空間を生じ、これ以上廃油を吸い込むことができなくなる(ので、このタンク20からの廃油の移送は終了することになる)のである。
【符号の説明】
【0026】
1 廃油層探知装置
2 廃油移送装置
3 浮き板
4 廃固形分除去器
5 廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器
6 濾過材
7 廃固形分分離器
8 吸出口
10 金属棒
11 把持部
12 廃油輸送モータ
13 電気制御装置
14 廃油吸入管
15 廃油排出管
16 フロート
17 L字形鉄細棒
18 スイッチ端子
19 モータスイッチ
25 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃油吸入管及び廃油排出管付き廃油輸送モータと移送廃油の充填を検知して前記モータの駆動を停止させる電気制御装置とからなる廃油移送装置と、浮き板に、前記廃油吸入管の先端を収容可能な廃固形分除去器と前記浮き板に離接するようにその下部を上下動可能な廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器とを設けた廃油層探知装置とからなること、を特徴とする廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置。
【請求項2】
前記廃固形分除去器が、更に前記廃油吸入管の先端を連結するための吸出口を上向きに安定的に収容してなる、請求項1に記載の廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置。
【請求項3】
前記の浮き板に離接するようにその下部を上下動可能な廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器が、各上端部にストッパーを設けた複数の棒を浮き板に上下に摺動容易となるように貫通して設け、該棒の各下端部に濾過材で被覆した廃固形分分離器の縁端を固定することにより、浮き板の下部に上下動に従って離接するように離隔して懸垂させた濾過材被覆廃固形分分離器である、請求項1又は2に記載の廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置。
【請求項4】
更に、少なくとも2本の前記棒の上端部それぞれの間に把持部を架橋し形成してなる、請求項3に記載の廃固形分、廃油夾雑物、廃水含有廃油から廃油の選択分離、移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−251227(P2011−251227A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125459(P2010−125459)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(599135695)株式会社ティービーエム (4)
【Fターム(参考)】