説明

廃材の処理方法、リサイクル原料の製造方法及びリサイクル原料

【課題】撥水性断熱材の廃材を効果的に湿潤化できる、廃材の処理方法、リサイクル原料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る廃材の処理方法は、多孔質材料又は繊維質材料から構成される撥水性の断熱材を粉砕して得られた、前記断熱材の廃材を準備する工程10と、前記廃材に含まれる破片に亀裂を形成するために前記廃材を圧縮する圧縮工程20と、圧縮された前記廃材を、界面活性剤を含有する湿潤化液中に浸漬することにより、前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる浸漬工程30と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃材の処理方法、リサイクル原料の製造方法及びリサイクル原料に関し、特に、撥水性断熱材の廃材の湿潤化に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質材料又は繊維質材料から構成された断熱材は、当該断熱材の老朽化等の理由により、そのまま又は破砕され、廃材として回収され、処理される。このような廃材は、例えば、特許文献1に記載されているように、圧縮により、その体積を減じられて、処理される。
【0003】
また、近年、このような断熱材の廃材は、建築材料等の新たな構造物の原料として再利用することが求められている。この場合、廃材は、施工されていた場所から、他の場所に輸送され、保管されることになる。
【0004】
しかしながら、多孔質材料又は繊維質材料から構成された断熱材の廃材は、比重が非常に小さく、粉塵が飛散しやすい。このため、従来、例えば、堆積した廃材に水をかけることにより、当該廃材を湿潤化し、粉塵の飛散を防止することが行われていた。
【特許文献1】特開平2−144183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、断熱材が撥水性を付与されたものである場合には、当該断熱材の廃材に水をかけるだけでは、当該廃材に水を十分に浸透させて湿潤化することができないため、粉塵の飛散を十分に防止することができなかった。
【0006】
また、例えば、水の代わりに、界面活性剤を含有する水溶液を用いる方法も考えられる。しかしながら、この場合でも、各廃材の内部には孔や繊維間の空隙が残っているため、廃材を十分に湿潤化することはできなかった。
【0007】
このように、湿潤化を十分にすることができず、その結果、粉塵の飛散を十分に防止できないことから、撥水性断熱材の廃材を安全に輸送し、再利用することもまた容易ではなかった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、撥水性断熱材の廃材を効果的に湿潤化できる廃材の処理方法、リサイクル原料の製造方法及びリサイクル原料を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る廃材の処理方法は、多孔質材料又は繊維質材料から構成される撥水性の断熱材を粉砕して得られた、前記断熱材の廃材を準備する工程と、前記廃材に含まれる破片に亀裂を形成するために前記廃材を圧縮する圧縮工程と、圧縮された前記廃材を、界面活性剤を含有する湿潤化液中に浸漬することにより、前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる浸漬工程と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、撥水性断熱材の廃材を効果的に湿潤化できる廃材の処理方法を提供することができる。
【0010】
また、前記断熱材は、多孔質材料から構成され、前記圧縮工程において、前記廃材を圧縮して、前記廃材に含まれる破片の表面から前記破片内の孔に至る亀裂を形成することとしてもよい。こうすれば、撥水性多孔質断熱材の廃材を確実に湿潤化することができる。また、前記圧縮工程において、圧縮ローラを用いて前記廃材を圧縮することとしてもよい。こうすれば、廃材の圧縮を効率よく行うことができ、その結果、撥水性断熱材の廃材をより効果的に湿潤化できる。また、前記浸漬工程において、圧縮後の前記廃材を、前記湿潤化液が浸透可能な容器に収容し、前記容器を前記湿潤化液中に浸漬することにより、前記容器内の前記廃材に前記湿潤化液を浸透させることとしてもよい。こうすれば、撥水性断熱材の廃材を簡便且つ確実に湿潤化できる。また、この場合、前記浸漬工程において、前記湿潤化液中に浸漬された前記容器内に配管を導入して、前記配管から前記容器内の前記廃材に前記湿潤化液を吐出することとしてもよい。こうすれば、撥水性断熱材の廃材を効率よく、より確実に湿潤化できる。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るリサイクル原料の製造方法は、多孔質材料又は繊維質材料から構成される撥水性の断熱材を粉砕して得られた、前記断熱材の廃材を準備する工程と、前記廃材に含まれる破片に亀裂を形成するために前記廃材を圧縮する圧縮工程と、圧縮された前記廃材を、界面活性剤を含有する湿潤化液中に浸漬することにより、前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる浸漬工程と、前記浸漬工程において前記湿潤化液の浸透により湿潤化された前記廃材を取得し、湿潤化された前記廃材を含有するリサイクル原料を調製する工程と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、撥水性断熱材の廃材を効果的に湿潤化できるリサイクル原料の製造方法を提供することができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るリサイクル原料は、多孔質材料又は繊維質材料から構成された撥水性の断熱材を破砕して得られた、前記断熱材の廃材を含有するリサイクル原料であって、前記廃材には亀裂が形成されており、且つ前記亀裂には湿潤化液が浸透していることを特徴とする。本発明によれば、効果的に湿潤化された撥水性断熱材の廃材を用いたリサイクル原料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る廃材の処理方法(以下、「本処理方法」という。)について説明する。図1は、本処理方法に含まれる主な工程を示すフロー図である。図1に示すように、本処理方法は、準備工程10と、圧縮工程20と、浸漬工程30と、を含む。
【0014】
準備工程10においては、本処理方法において処理の対象となる廃材を準備する。この廃材は、多孔質材料又は繊維質材料から構成される撥水性の断熱材を粉砕することにより得られるものであれば特に限られない。
【0015】
多孔質材料から構成される撥水性の断熱材としては、例えば、主成分であるけい酸カルシウムと、撥水性を付与する成分であるシリコーンと、を含有する原料から形成された多孔質保温材を挙げることができる。繊維質材料から構成される撥水性の断熱材としては、例えば、ロックウール又はガラスウールから形成された繊維質保温材であって、成形用のバインダーにシリコーンを混合することにより撥水性を付与された繊維質保温材を挙げることができる。
【0016】
これらの断熱材は、外部との熱の移動を抑制すべき構造体に施工される。すなわち、断熱材が保温材である場合には、当該保温材は、例えば、加熱された流体を輸送するための配管の外表面を覆うように設けられる。
【0017】
そして、断熱材の廃材は、当該断熱材を施工されている構造物から剥離して粉砕することにより得ることができる。すなわち、断熱材の廃材は、例えば、構造物から剥離された廃材を、粉砕機により粉砕したものとすることができる。
【0018】
なお、断熱材の廃材に含まれる各破片は、その比重が極めて小さい。このため、廃材を粉砕機により粉砕した後においても、各破片は、その内部に独立孔や繊維間の空隙が残った所定以上の大きさの破片となる。
【0019】
ここで、図2には、多孔質断熱材の粉砕により得られた破片Dについて、その断面の一部を拡大して模式的に示す。図2に示すように、例えば、けい酸カルシウムMから構成される破片Dの内部には、外表面Sには開口しない孔Pが残存している。
【0020】
この孔Pは、例えば、けい酸カルシウムMのゾノライト結晶に由来する中空構造である。したがって、例えば、この破片Dを、界面活性剤を含有する水溶液中に浸漬しても、当該破片Dの内部にまで当該水溶液を浸透させることはできない。
【0021】
そこで、続く圧縮工程20においては、準備工程10で準備した廃材に含まれる破片に亀裂を形成するために当該廃材を圧縮する。すなわち、この圧縮工程20においては、廃材に含まれる破片に亀裂を形成できる圧力で、当該廃材を圧縮する。
【0022】
この圧力は、圧縮の対象となる廃材の種類や量、圧縮に用いる装置等の圧縮条件に応じて適宜決定することができる。具体的に、例えば、廃材が、多孔質材料から構成される断熱材の廃材である場合には、圧縮工程20において、当該廃材を圧縮して、当該廃材に含まれる破片の表面から当該破片内の孔に至る亀裂を形成する。
【0023】
図3には、図2に示す破片Dを圧縮して得られる破片Eについて、その断面の一部を拡大して模式的に示す。図3に示すように、圧縮後の破片Eにおいては、その外表面Sから、内部の孔Pに至る亀裂Kが形成されている。
【0024】
すなわち、この破片Eにおいては、内部の孔Pが亀裂Kを介して、当該破片Eの外部と連通している。したがって、例えば、後述するように、この破片Eを、界面活性剤を含有する水溶液中に浸漬することにより、当該水溶液を亀裂Kを介して当該破片Eの内部にまで浸透させることができる。
【0025】
なお、繊維質材料から構成される断熱材の破片についても、同様に、圧縮によって緻密な繊維組織を破壊することにより、当該破片の外表面から当該破片内の繊維間空隙に至る亀裂を形成することができる。
【0026】
このように、圧縮工程20においては、廃材を圧縮することにより、当該廃材に含まれる破片に亀裂を形成する。
【0027】
また、この圧縮工程20において廃材を圧縮する方法は特に限られず、廃材の種類や量に応じて適切な方法を適宜選択して用いることができる。具体的に、例えば、廃材の圧縮は、圧縮ローラを用いて行うことができる。
【0028】
すなわち、回転する一対のローラの間に、粉砕後の廃材を順次供給することにより、当該廃材を順次圧縮することができる。圧縮に用いる圧力は、例えば、一対のローラの間隔や各ローラの回転速度等の操作条件によって適宜設定することができる。
【0029】
この圧縮ローラを用いることにより、例えば、圧縮後の廃材が必要以上に大きな圧縮成形体を形成してしまうことを効果的に回避しつつ、工業規模で排出される大量の廃材を効率よく圧縮することができる。すなわち、例えば、廃材に対して局所的に大きな圧力をかけることができるため、圧縮率を高めることができ、且つ圧縮後の廃材がマット状に成形されてしまうことを防ぐことができる。
【0030】
浸漬工程30においては、圧縮工程20において圧縮された廃材を、界面活性剤を含有する湿潤化液中に浸漬することにより、当該廃材に当該湿潤化液を浸透させる。
【0031】
この湿潤化液は、例えば、界面活性剤を含有する水溶液とすることができる。湿潤化液の組成は、湿潤化すべき廃材の表面特性に応じて適宜決定することができる。すなわち、湿潤化液に含有される界面活性剤の種類及び量は、廃材に付与されている撥水性に応じて、当該湿潤化液が当該廃材に浸透しやすくなるよう決定することができる。
【0032】
そして、圧縮後の廃材を、このような湿潤化液中に保持することにより、当該湿潤化液を当該廃材に含まれる破片の表面及び内部に浸透させることができる。すなわち、上述のとおり、圧縮工程20における圧縮によって、廃材に含まれる破片には亀裂が形成されている。
【0033】
このため、廃材を湿潤化液に浸漬することにより、各破片の表面を当該湿潤化液で濡らすことができるとともに、当該各破片に形成された亀裂を介して当該各破片の内部にまで当該湿潤化液を効率よく浸透させることができる。この結果、廃材の全体に湿潤化液を効率よく浸透させることができる。
【0034】
また、廃材を湿潤化液に浸漬する方法は特に限られず、当該廃材の種類や量に応じて適切な方法を適宜選択して用いることができる。具体的に、例えば、圧縮後の廃材を、湿潤化液が浸透可能な容器に収容し、当該容器を当該湿潤化液中に浸漬することにより、当該容器内の当該廃材に当該湿潤化液を浸透させる。
【0035】
この場合、廃材を収容する容器は、当該廃材を漏らすことなく内部に保持でき、且つ湿潤化液が当該容器を構成する壁を通過して当該容器の外側から当該容器の内側まで浸透できるものであれば特に限られない。
【0036】
具体的に、この容器としては、例えば、廃材に含まれる断熱材の破片を通過させず、且つ湿潤化液が浸透可能な織布又は不織布から構成された、柔軟性のある袋を好ましく用いることができる。このような袋を用いることにより、廃材の回収、廃材への湿潤化液の浸透、廃材の輸送といった各工程における廃材の取り扱いが容易になり、作業性を向上させることができる。
【0037】
また、この容器を用いる場合には、廃材の入った当該容器を収容できる大きさ及び形状の水槽を準備する。さらに、この水槽中に、廃材の入った容器の全体を浸漬するために十分な量の湿潤化液を溜める。そして、廃材を収容した容器を、水槽内の湿潤化液中に浸漬する。
【0038】
この容器を、湿潤化液中で所定時間保持することによって、当該容器の外から中に当該湿潤化液を効率よく浸透させることができる。すなわち、この場合、湿潤化液中に保持された容器には、当該容器を囲む湿潤化液により所定の大きさの水圧がかかる。このため、容器外の湿潤液を、当該容器内に効率よく流入させることができる。そして、その結果、容器内の廃材に湿潤化液を十分に浸透させることができる。
【0039】
すなわち、上述のとおり、圧縮後の廃材に含まれる各破片には亀裂が形成されているため、容器内に浸透してきた湿潤化液は、当該亀裂を介して当該各破片に効率よく浸透することができる。その結果、容器内に収容されている廃材の全体に湿潤化液を効率よく浸透させることができる。
【0040】
このように容器を湿潤化液中に浸漬する場合には、当該湿潤化液中の水圧を利用して、当該容器内に当該湿潤化液を効率よく浸透させ、当該容器内の廃材を効率よく湿潤化することができる。
【0041】
しかも、廃材は容器内に封じ込められている。このため、廃材を湿潤化する過程において、当該廃材から粉塵が発生することを効果的に防止することができる。
【0042】
また、浸漬工程30において、上述のように廃材を入れた容器を湿潤化液中に浸漬する場合には、当該湿潤化液中に浸漬された当該容器内に配管を導入して、当該配管から当該容器内の当該廃材に当該湿潤化液を吐出することもできる。
【0043】
すなわち、この場合、例えば、ポンプに接続されて湿潤化液を吐出可能なホースの先端を、湿潤化液中に浸漬された容器内の廃材内に差し込む。そして、ポンプを作動させて、ホースの先端から、廃材の内部に、所定の流量で湿潤化液を吹き出す。これによって、容器を囲む湿潤化液と接触しにくい、当該容器の深部の廃材に対して、効率よく湿潤化液を浸透させることができる。
【0044】
また、この場合、容器内の廃材に対しては、当該容器を囲む湿潤化液による当該容器外からの水圧と、配管から吐出される湿潤化液による当該容器内からの水圧と、を同時にかけることができる。したがって、これらの水圧により、廃材に含まれる破片内に保持されている空気を当該破片から効果的に追い出すとともに、当該破片内に湿潤化液を効果的に浸透させることができる。
【0045】
このように、本処理方法によれば、撥水性が付与された断熱材の廃材を効率よく、且つ確実に湿潤化することができる。
【0046】
次に、本実施形態に係るリサイクル原料の製造方法(以下、「本製造方法」という。)について説明する。図4は、本製造方法に含まれる主な工程を示すフロー図である。図4に示すように、本製造方法は、準備工程10と、圧縮工程20と、浸漬工程30と、リサイクル原料調製工程40と、を含む。ここで、本製造方法に含まれる準備工程10、圧縮工程20、及び浸漬工程30は、上述の本処理方法に含まれる準備工程10、圧縮工程20、及び浸漬工程30とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
本製造方法のリサイクル原料調製工程40においては、上述の浸漬工程30において湿潤化液の浸透により湿潤化された廃材を取得し、湿潤化された当該廃材を含有するリサイクル原料を調製する。
【0048】
すなわち、このリサイクル原料調製工程40においては、浸漬工程30において得られた廃材を、その湿潤状態を維持したまま、リサイクル原料を調製可能な場所に輸送する。具体的に、例えば、廃材を織布又は不織布で形成された袋に収容して湿潤化液中に浸漬した場合には、当該廃材と当該湿潤化液とを含む当該袋をそのまま輸送する。
【0049】
そして、輸送された廃材に必要な処理を施して再利用可能なリサイクル原料を調製する。すなわち、廃材が、けい酸カルシウムから構成される多孔質保温材の廃材である場合には、例えば、当該廃材にバインダーを添加して混合することにより、新たな保温材(リサイクル保温材)の製造に再利用できるリサイクル原料を製造することができる。
【0050】
また、廃材が、ロックウール又はガラスウールから構成される繊維質保温材の廃材である場合には、当該廃材を溶融炉に投入して溶融し、再び繊維化することにより、新たな保温材(リサイクル保温材)の製造に再利用できるリサイクル原料を製造することができる。これらリサイクル原料に含有される廃材は、上述のとおり、圧縮工程20において亀裂が形成され、浸漬工程30において当該亀裂に湿潤化液が浸透した破片を含んでいる。
【0051】
このように、本製造方法によれば、撥水性の断熱材の廃材を効果的に湿潤化して、粉塵の発生を効果的に防止しつつ、当該廃材を輸送し、保管することができる。したがって、本製造方法によれば、従来敬遠されていた撥水性断熱材の廃材のリサイクルが可能となる。
【0052】
次に、本処理方法の具体的な実施例について説明する。
【0053】
[実施例]
本実施例においては、撥水性の多孔質保温材の廃材を処理の対象とした。すなわち、図5に示すように、工場の配管等に施工されていた多孔質保温材を剥離し、さらに粉砕機で粉砕することにより、当該多孔質保温材の廃材Wの堆積物を得た。
【0054】
ここで、この多孔質保温材は、けい酸カルシウムのゾノライト結晶から形成されたものであった。このため、得られた廃材Wに含まれる各破片の内部には、当該ゾノライト結晶の中空部分に由来する微小な孔が多数残されていた。
【0055】
そこで、図6に示すように、粉砕後の廃材Wを、一対のローラR1,R2を備えた圧縮ローラにより圧縮して、当該廃材Wに含まれる破片に亀裂を形成した。すなわち、図6に示す矢印の指す方向に回転する一対のローラR1,R2の間に、ベルトコンベアCによって廃材Wを少しずつ導入し、各破片に亀裂を形成できる圧力で当該廃材Wを順次圧縮し、圧縮された廃材Wの堆積物を得た。
【0056】
この圧縮によって、廃材Wに含まれる破片のうち大部分には、その外表面から、内部に形成されている孔まで延びる亀裂を形成することができた。こうして得られた、圧縮後の廃材Wの乾燥状態における重量は、168kgであった。
【0057】
次に、図7に示すように、この廃材Wを、透水性の織布から形成された袋であるフレキシブルコンテナバッグ(以下、「フレキシブルバッグB」という。)に収容した。このフレキシブルバッグBの容積は1mであった。また、フレキシブルバッグBに収容された廃材Wの体積は約0.56mであった。
【0058】
さらに、本実施例においては、図8に示すように、廃材Wを収容したフレキシブルバッグBを、水槽T内の湿潤化液L中に浸漬した。この水槽Tは、幅が1.9m、奥行きが1.15m、高さが1.2mの直方体形状であった。湿潤化液Lは、界面活性剤と水とを混合して調製し、水槽T内に貯留された体積は約1.1mであった。また、図8に示すように、フレキシブルバッグBの全体を湿潤化液L中に浸漬するために、当該フレキシブルバッグBの上に、浮力に対抗する約1000kgの重りMを載せた。
【0059】
さらに、図8に示すように、フレキシブルバッグB内に、ホースHの先端を挿入した。そして、ポンプ(不図示)を用いて、このホースHから、フレキシブルバッグB内の廃材W中に、湿潤化液を吐出した。このホースHからの湿潤化液の吐出は、約60L/分の流量で30分間行った。
【0060】
このように、本実施例においては、フレキシブルバッグB内の廃材Wに対して、当該フレキシブルバッグBの外部からは湿潤化液Lによる水圧をかけ、当該フレキシブルバッグBの内部においては、ホースHから吐出される湿潤化液による水圧をかけた。
【0061】
さらに、ホースHからの湿潤化液の吐出を終了した後も、図9に示すように、廃材Wが封じ込められたフレキシブルバッグBを、水槽T内の湿潤化液L中に浸漬した状態で維持した。
【0062】
そして、フレキシブルバッグBを湿潤化液L中に24時間浸漬した後、フォークリフト(不図示)によって、図10に示すように、当該フレキシブルバッグBを当該湿潤化液L中から引き上げた。
【0063】
さらに、引き上げられたフレキシブルバッグBを、そのままフォークリフトにより吊り上げた状態で3時間放置することにより、当該フレキシブルバッグBから余分な湿潤化液を滴下させ除去した。この水切り後の、廃材W及び湿潤化液を収容したフレキシブルバッグBの重量は、330kgであった。
【0064】
すなわち、フレキシブルバッグB内の廃材Wに、十分な量の湿潤化液を浸透させることができた。この結果、フレキシブルバッグBからの粉塵の発生を極めて効果的に抑制することができた。
【0065】
また、上述のとおり、フレキシブルバッグBの内部には、廃材Wに加えて、大量の湿潤化液を保持できていた。このため、フレキシブルバッグBを輸送し、さらに保管する間、当該フレキシブルバッグB内の廃材Wの乾燥を効果的に防止することができた。すなわち、フレキシブルバッグB内において、廃材Wを湿潤状態で長時間維持することができた。
【0066】
このように、本実施例においては、撥水性の廃材Wを確実に湿潤化することができ、しかも、当該廃材Wを輸送及び保管する過程において、当該廃材Wからの粉塵の発生を効果的に防止することができた。
【0067】
なお、本発明は、本実施形態に示した例に限られない。例えば、本処理方法及び本製造方法の浸漬工程30において、容器内に収容された廃材への湿潤化液の浸透を促進させる方法は、上述のように、当該容器内に配管によって別途、湿潤化液を吐出する方法に限られない。
【0068】
すなわち、例えば、湿潤化液と、当該湿潤化液中に浸漬された容器と、を収容した水槽を密閉して、当該水槽内の気相を減圧する方法を用いることができる。この場合、この減圧によって、容器内の廃材の破片に含まれている空気を追い出して、当該破片内に湿潤化液を効率よく浸透させることができる。なお、この場合、減圧に用いる配管の吸入口には、廃材の破片を吸入することを避けるため、当該破片を通過させないフィルターを設けることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態に係る廃材の処理方法に含まれる主な工程を示すフロー図である。
【図2】多孔質断熱材の破片の断面の一部を拡大して模式的に示す説明図である。
【図3】本実施形態に係る廃材の処理方法において圧縮された多孔質断熱材の破片の断面の一部を拡大して模式的に示す説明図である。
【図4】本実施形態に係るリサイクル原料の製造方法に含まれる主な工程を示すフロー図である。
【図5】本実施形態に係る廃材の処理方法において、処理の対象となる廃材の堆積物を模式的に示す説明図である。
【図6】本実施形態に係る廃材の処理方法において、廃材を圧縮する処理を模式的に示す説明図である。
【図7】本実施形態に係る廃材の処理方法において、廃材を収容したフレキシブルバッグを模式的に示す説明図である。
【図8】本実施形態に係る廃材の処理方法において、廃材を収容したフレキシブルバッグを湿潤化液中に浸漬する処理の一例を模式的に示す説明図である。
【図9】本実施形態に係る廃材の処理方法において、廃材を収容したフレキシブルバッグを湿潤化液中に浸漬する処理の他の例を模式的に示す説明図である。
【図10】本実施形態に係る廃材の処理方法において、湿潤化液中に浸漬した後に引き上げられた、廃材を収容したフレキシブルバッグを模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
10 準備工程、20 圧縮工程、30 浸漬工程、40 リサイクル原料調製工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料又は繊維質材料から構成される撥水性の断熱材を粉砕して得られた、前記断熱材の廃材を準備する工程と、
前記廃材に含まれる破片に亀裂を形成するために前記廃材を圧縮する圧縮工程と、
圧縮された前記廃材を、界面活性剤を含有する湿潤化液中に浸漬することにより、前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる浸漬工程と、
を含む
ことを特徴とする廃材の処理方法。
【請求項2】
前記断熱材は、多孔質材料から構成され、
前記圧縮工程において、前記廃材を圧縮して、前記廃材に含まれる破片の表面から前記破片内の孔に至る亀裂を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載された廃材の処理方法。
【請求項3】
前記圧縮工程において、圧縮ローラを用いて前記廃材を圧縮する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載された廃材の処理方法。
【請求項4】
前記浸漬工程において、圧縮後の前記廃材を、前記湿潤化液が浸透可能な容器に収容し、前記容器を前記湿潤化液中に浸漬することにより、前記容器内の前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された廃材の処理方法。
【請求項5】
前記浸漬工程において、前記湿潤化液中に浸漬された前記容器内に配管を導入して、前記配管から前記容器内の前記廃材に前記湿潤化液を吐出する
ことを特徴とする請求項4に記載された廃材の処理方法。
【請求項6】
多孔質材料又は繊維質材料から構成される撥水性の断熱材を粉砕して得られた、前記断熱材の廃材を準備する工程と、
前記廃材に含まれる破片に亀裂を形成するために前記廃材を圧縮する圧縮工程と、
圧縮された前記廃材を、界面活性剤を含有する湿潤化液中に浸漬することにより、前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる浸漬工程と、
前記浸漬工程において前記湿潤化液の浸透により湿潤化された前記廃材を取得し、湿潤化された前記廃材を含有するリサイクル原料を調製する工程と、
を含む
ことを特徴とするリサイクル原料の製造方法。
【請求項7】
多孔質材料又は繊維質材料から構成された撥水性の断熱材を破砕して得られた、前記断熱材の廃材を含有するリサイクル原料であって、
前記廃材には亀裂が形成されており、且つ前記亀裂には湿潤化液が浸透している
ことを特徴とするリサイクル原料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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