廃棄体の埋設処分施設および廃棄体の埋設処分方法
【課題】処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に充填したペレット状の緩衝材への注水を可能にする廃棄体の埋設処分施設を提供すること。
【解決手段】処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体Pを搭載した搬送台車のガイドレールとなり、処分坑道5に搬入した緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する際に緩衝材一体型の廃棄体Pの台座となる台座レール51を処分坑道5の床面から上方に向けて突出する態様で処分坑道5の軸方向に沿って敷設するとともに、台座レール51に定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに注水するための注水孔52を台座レール51の内部に設けるようにした。
【解決手段】処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体Pを搭載した搬送台車のガイドレールとなり、処分坑道5に搬入した緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する際に緩衝材一体型の廃棄体Pの台座となる台座レール51を処分坑道5の床面から上方に向けて突出する態様で処分坑道5の軸方向に沿って敷設するとともに、台座レール51に定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに注水するための注水孔52を台座レール51の内部に設けるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材一体型の廃棄体を処分坑道に横置きに定置し、埋設処分する廃棄体の埋設処分施設および廃棄体の埋設処分方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝材一体型の廃棄体を処分坑道に横置きに定置し、埋設処分する場合には、緩衝材一体型の廃棄体の大きさに見合った坑道断面の処分坑道が必要となる。これにより、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間には隙間が生じることになるが、この隙間を空間のままにしておくと、処分坑道を支える支保工が劣化した場合に地山からの偏圧が作用して、緩衝材一体型の廃棄体の健全性を損なうことになる。このような問題を解決すべく、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に生じる隙間に粘土系遮水材料を締め固めたペレット状の緩衝材が充填される(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−319732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間を遮水シールするためには、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に充填したペレット状の緩衝材に注水する必要がある。これは、早期に注水することで、ペレット状の緩衝材は吸水膨潤して、止水材として機能する効果を発揮するからである。
【0005】
しかしながら、注水管を処分坑道の壁面部に敷設すると、緩衝材一体型の廃棄体を搬入する場合や定置する場合の障害となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、緩衝材一体型の廃棄体を搬入する場合や定置する場合の障害となることなく、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に充填したペレット状の緩衝材への注水を可能にする廃棄体の埋設処分施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、処分坑道に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、緩衝材一体型の廃棄体を埋設処分する廃棄体の埋設処分施設において、前記処分坑道に前記緩衝材一体型の廃棄体を搬入する際に前記緩衝材一体型の廃棄体を搭載した搬送台車のガイドレールとなり、前記処分坑道に搬入した緩衝材一体型の廃棄体を定置する際に前記緩衝材一体型の廃棄体の台座となる台座レールを前記処分坑道の床面から上方に向けて突出する態様で前記処分坑道の軸方向に沿って敷設するとともに、前記台座レールに定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に注水するための注水孔を前記台座レールの内部に設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記注水孔が、前記処分坑道の軸方向に沿って設けられた主孔と、主孔から分岐して処分坑道の内周に沿って設けられた複数の枝孔とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記複数の枝孔の開口端部となる複数の吐出口は、前記処分坑道の軸方向において、前記緩衝材一体型の廃棄体の長さよりも短い間隔で開口したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、水圧が調整された水を前記注水孔から注水する注水手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記注水手段は、水圧を調整する注水圧調整手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、処分坑道の入口区間、さらには、処分坑道の途中の要所に、処分坑道の軸方向への地下水の流れを抑制する遮水プラグを設置したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、処分坑道に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、緩衝材一体型の廃棄体を埋設処分する廃棄体の埋設処分方法において、前記緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に処分坑道を掘削する前の地下水圧と同等の圧力まで段階的に調整された水を注水することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、処分坑道の入口区間、さらには、処分坑道の途中の要所に、処分坑道の軸方向への地下水の流れを抑制する遮水プラグを設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる廃棄体の埋設処分施設は、処分坑道に緩衝材一体型の廃棄体を搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体を搭載した搬送台車のガイドレールとなり、処分坑道に搬入した緩衝材一体型の廃棄体を定置する際に緩衝材一体型の廃棄体の台座となる台座レールを処分坑道の床面から上方に突出する態様で処分坑道の軸方向に沿って敷設するとともに、台座レールに定置された緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に注水するための注水孔を台座レールの内部に設けたので、緩衝材一体型の廃棄体を搬入する場合や定置する場合の障害となることなく、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に充填したペレット状の緩衝材への注水が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設を示す概念図である。
【図2】図2は、図1に示した埋設処分施設を構成する主要坑道と処分坑道とを示す概念図である。
【図3】図3は、図2に示した処分坑道を示す概念斜視図である。
【図4】図4は、緩衝材一体型の廃棄体の埋設手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、処分坑道を示す横断面図であって、緩衝材一体型の廃棄体の搬送時の状態を示す図である。
【図6】図6は、処分坑道を示す横断面図であって、緩衝材一体型の廃棄体の定置時の状態を示す図である。
【図7−1】図7−1は、処分坑道を示す横断面図であって、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体との間にペレット状の緩衝材を充填した状態を示す図である。
【図7−2】図7−2は、処分坑道を示す縦断面図であって、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体との間にペレット状の緩衝材を充填した状態を示す図である。
【図8−1】図8−1は、処分坑道を示す横断面図であって、ペレット状の緩衝材に注水した状態を示す図である。
【図8−2】図8−2は、処分坑道を示す縦断面図であって、ペレット状の緩衝材に注水した状態を示す図である。
【図9】図9は、主孔にグラウト材注入管を挿入した状態を示す概念斜視図である。
【図10】図10は、水の注水経路を示す断面模式図である。
【図11−1】図11−1は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填開始直後の状態を示す図である。
【図11−2】図11−2は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填途中の状態を示す図である。
【図11−3】図11−3は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填終了後の状態を示す図である。
【図12−1】図12―1は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填開始直後の状態を示す図である。
【図12−2】図12―2は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填途中の状態を示す図である。
【図12−3】図12―3は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填終了後の状態を示す図である。
【図13】図13は、他の形態である処分坑道を示す横断面図である。
【図14】図14は、ペレット状の緩衝材に注水してから経過した時間とペレット状の緩衝材の透水係数との関係を示す図である。
【図15】図15は、処分坑道が複数の湧水帯を貫通した廃棄体の埋設処分施設を示す図である。
【図16】図16は、処分坑道を掘削する前の天然状態における地山の地下水圧分布を示す図である。
【図17】図17は、処分坑道を掘削し、その後、湧水量が落ち着いた状態における地山の地下水圧分布を示す図である。
【図18】図18は、処分坑道と廃棄体との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、処分坑道と廃棄体との間に注水した直後の状態における地山の地下水圧分布を示す図である。
【図19】図19は、緩衝材一体型の廃棄体の埋設手順を示すフローチャートである。
【図20】図20は、注水圧を短時間で坑道掘削前の元の地下水圧まで昇圧する途上において、坑道壁面部における水圧が300mH2Oに達した場合における地山の地下水圧分布を示す図である。
【図21】図21は、注水圧が坑道掘削前の元の地下水圧に相当する500mH2Oに達した場合における地山の地下水分布を示す図である。
【図22】図22は、入口区画に遮水プラグを設置した処分坑道を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる廃棄体の埋設処分施設の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
まず、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設に埋設処分される廃棄体について説明する。本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設に埋設処分される廃棄体は、原子力の利用に伴い発生する放射性の廃棄物であって、より具体的には、再処理で使用済燃料からウラン、プルトニウム等の有用物を分離した後に残存する放射能レベルの高い廃棄物(高レベル放射性廃棄物)で、核燃料の核分裂によって生じた物質(核分裂生成物)等を含むものである。高レベル放射性廃棄物は、ガラスで固化した後、30〜50年間冷却のために貯蔵され、その後、地下深く埋設処分されることになるが、ここでは、ガラスで固化した高レベル放射性廃棄物をオーバーパックと称される金属製の容器に封入した後、さらにそのまわりを緩衝材で囲繞した円柱形状の緩衝材一体型の廃棄体P(図2参照)として埋設処分される。なお、緩衝材は、ベントナイトに代表される粘土系遮水材料を締め固めたもので、地震等の外力が加わって処分坑道が変形した場合に廃棄物に加わる外力を低減するとともに、地下水の侵入を阻止する。
【0019】
つぎに、図1に基づいて、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設の概要を説明する。なお、図1は、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設の概要を示す概念図である。
【0020】
図1に示すように、廃棄体の埋設処分施設1は、地上施設2と地下施設3とから構成される。地上施設2は、ガラスで固化された放射性の廃棄物(ガラス固化体)を受け入れて検査し、オーバーパックと称される金属製の容器に封入した後、それを地下深部に搬送するために必要な施設や、建設・操業・閉鎖に関連して地上部に必要となる施設などから構成される。本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1の地上施設2には、金属製の容器のまわりを緩衝材で囲繞するための施設を備えている。地下施設3は、地上と地下の施設を結ぶアクセス坑道4、緩衝材一体型の廃棄体Pを定置するための処分坑道5、処分坑道5を取り囲む主要坑道6と、主要坑道6と主要坑道6との間を結ぶ連絡坑道7などから構成される。また、緩衝体一体型の廃棄体Pの搬送にかかわる施設、坑道建設にかかわる施設、およびそれらの安全性を維持するための施設なども地下に建設される。
【0021】
アクセス坑道4は、地上施設2と地下の連絡坑道7、主要坑道6とを結ぶものであり、地上施設2との位置関係に応じて柔軟に配置することが可能である。アクセス坑道4は、緩衝材一体型の廃棄体Pの搬送だけでなく、作業員の出入り、掘削土の搬出、換気、排水、エネルギー供給など多様な目的に使用される。また、搬送手段に応じ、エレベータなどの昇降設備を用いる立坑41と、車両・レール方式を用いる斜抗42に大別することができる。また、地下の作業員にとってアクセス坑道4は、緊急時の避難通路としての役割も有する。なお、廃棄体の埋設処分施設1の閉鎖に伴いアクセス坑道4は最後に埋め戻しが行われる地下施設3となる。
【0022】
処分坑道5は、掘削など地下での作業の観点から一定の数の処分坑道群を一つの区画(処分パネル8)とし、複数の処分パネル8に分けて配置することが可能である。これにより対象となる岩体が小さい場合や傾斜している場合などその特徴に応じて処分パネル8を柔軟に配置することができる。処分パネル8の配置には、水平レベルで展開する分散配置や垂直方向に展開する多層配置が考えられる。分散配置は、断層など地質構造要素の特徴を踏まえた配置に適しており、多層配置は地下施設に必要な面積を確保できない場合などに有効である。
【0023】
連絡坑道7は、処分パネル8間を結ぶ坑道であり、地上施設2からの緩衝材一体型の廃棄体Pの搬送など地下での作業に伴う物流や作業員の出入りに用いられる。緩衝材一体型の廃棄体Pを埋設処分が終了した処分パネル8ごとに、不要となる連絡坑道7は埋め戻しを行うことができる状態となる。
【0024】
つぎに、図2および図3に基づいて処分坑道をさらに詳しく説明する。なお、図2は、図1に示した主要坑道と処分坑道とを示す概念図であり、図3は、図2に示した処分坑道を示す概念斜視図である。
【0025】
図2に示すように、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1は、円柱形状に形成された緩衝材一体型の廃棄体Pの軸方向を水平方向に向けた状態で定置する横置き方式を採用したもので、処分坑道5に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間には、ペレット状の緩衝材Bが充填される(図7参照)。
【0026】
図3に示すように、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1の処分坑道5には、台座レール51が敷設してある。台座レール51は、処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体Pを搭載した搬送台車(たとえば、パレットトラックフォーク)のガイドレールとなり、処分坑道5に搬入した緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する際に緩衝材一体型の廃棄体Pの台座となる。台座レール51は、処分坑道5の床面から上方に向けて突出する態様で敷設され、その横断面は円弧形状を有しており、処分坑道5の軸方向に延在している。
【0027】
また、台座レール51の内部には、台座レール51に定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに注水するための注水孔52が設けてある。注水孔52は、処分坑道5の軸方向に沿って設けられた主孔52aと、主孔52aから分岐して処分坑道5の内周に沿って設けられた複数の枝孔52bとを有している。
【0028】
枝孔52bの開口端部となる吐出口52b1は、処分坑道5の軸方向において、緩衝材一体型の廃棄体Pの長さよりも短い間隔で開口している。
【0029】
つぎに、図4に基づいて緩衝材一体型の廃棄体Pの埋設手順を説明する。なお、図4は、緩衝材一体型の廃棄体の埋設手順を示すフローチャートである。
【0030】
処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを埋設処分する場合には、図4に示すように、まず、処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する。緩衝材一体型の廃棄体Pの搬入には、搬送台車を用いるが、ここでは、図5および図6に図示されるローラー型タイヤを備えたパレットトラックフォークFを用いる。
【0031】
処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する場合には、主要坑道6において緩衝材一体型の廃棄体PをパレットトラックフォークFに載せ換える。緩衝材一体型の廃棄体Pが載せ換えられたパレットトラックフォークFは、図5に示すように、緩衝材一体型の廃棄体Pが台座レール51と干渉しない高さまで緩衝材一体型の廃棄体Pを持ち上げて、緩衝材一体型の廃棄体Pを処分坑道5に搬入する(ステップS1)。このとき、台座レール51は、パレットトラックフォークFのガイドレールとなり、パレットトラックフォークFは、図5に示すように、台座レール51にガイドされる。
【0032】
緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する位置まで緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入すると、つぎに、パレットトラックフォークFは、緩衝材一体型の廃棄体Pを台座レール51に降ろすことにより、図6に示すように、緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する(ステップS2)。
【0033】
つぎに、パレットトラックフォークFを主要坑道6まで搬出し、図7に示すように、定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間にペレット状の緩衝材Bを充填する(ステップS3)。ここで充填するペレット状の緩衝材Bは、ベントナイトに代表される粘土系遮水材料を締め固めたもので、注水すると膨潤することにより遮水性能を発揮するものである。
【0034】
処分坑道5に埋設処分する数の緩衝材一体型の廃棄体Pを定置し、ペレット状の緩衝材Bを充填すると、その処分坑道5の入口を閉鎖する(ステップS4)。つぎに、図8に示すように、注水孔52から給水することにより、ペレット状の緩衝材Bに注水する(ステップS5)。ペレット状の緩衝材Bに注水すると、ペレット状の緩衝材Bが膨潤することにより、緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間を遮水シールする。このように処分坑道5を閉鎖し、注水することにより、緩衝材一体型の廃棄体Pは処分坑道5ごとに埋設処分される。
【0035】
なお、処分坑道5の内壁に微量の湧き水(滲み水)がある場合には、その湧き水が充填した後のペレット状の緩衝材Bに吸水されて、局部的にムラのある膨潤シール状態を呈する懸念がある。そのようなことがないように、処分坑道外部の止水と処分坑道内部の排水とを厳重に対処するが、万一、局部的に湧き水がある場合には、坑道支保材(たとえば、コンクリート)の要所に導入溝もしくは導水管を設けて、注水孔52に導くことにより、当該注水孔52を一時的な排水対策に利用してもよい。
【0036】
また、緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに注水すると、短時間でペレット状の緩衝材Bは吸水膨潤して緩衝材(ベントナイト)と水が均質になった止水性の高い緩衝材になる。一部の緩衝材は、枝孔52bの中に若干侵入するが、主孔52aに侵入するまでには、数日以上を要するので、その前に主孔52aに主要坑道6からグラウト材注入管を挿入し、主孔52aをグラウト材で充填する(ステップS6)。これにより、処分坑道5の軸方向への水みちはすべて止水シールされることになる。グラウト材には、セメント系無機材系、ベントナイト系の材料等を適用できるが、ベントナイトをエタノール水または無機塩水と混合して作ったスラリーを注入することが最も適している。
【0037】
上述したように、主孔52aからペレット状の緩衝材Bに注水する一方、主孔52aにグラウト材を充填する場合には、図9に示すように、主孔52aにグラウト材注入管Tを挿入し、グラウト材注入管Tと主孔52aとを芯鞘構造に構成することが好ましい。このように構成すると、主孔52aからペレット状の緩衝材Bに注水する場合には、主孔52aとグラウト材注入管Tとの間に画成される環状の経路が注水経路R1(図10参照)となり、主孔52aにグラウト材Gを充填する場合には、グラウト材注入管Tがグラウト材Gの充填経路R2(図10参照)となる。なお、主孔52aに接続される鞘管52a1には、注水経路R1に連通する注水口52a2が設けてあり、ペレット状の緩衝材Bに注水する場合には、ここから注水する。一方、グラウト材注入管Tの一端と他端とは開口しており、手前側(入口側)となる一端開口がグラウト材Gの注入口T1となり、グラウト材Gを注入する場合には、ここから注入する。
【0038】
そして、図10に示すように、注入口T1を塞ぎ、注水口52a2から注水すると、注水された水は、注水経路R1、枝孔52bを通り、吐出口52b1から吐出する。吐出した水は、緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに供給され、ペレット状の緩衝材Bは膨潤することになる。
【0039】
一方、グラウト材注入管Tの注入口T1からグラウト材Gを注入すると、注入されたグラウト材Gは、図11−1に示すように、グラウト材注入管Tの内部を手前側から奥側に向けて侵入することになる。そして、グラウト材Gがグラウト材注入管Tの他端開口(吐出口T2)まで行き着くと、図11−2に示すように、グラウト材Gは、吐出口T2から吐出することになる。そして、吐出口T2から吐出したグラウト材Gは、主孔52aの奥側から手前側に戻り、主孔52aに充填されることになる。主孔52aの奥側から手前側に充填されたグラウト材Gは、図11−3に示すように、最終的には、注水口52a2から吐出することになる。注水口52a2からグラウト材Gが吐出した場合には、主孔52aにグラウト材Gが充填されたことになるから、グラウト材Gの充填作業を終了する。
【0040】
上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1は、処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体Pを搭載した搬送台車(たとえば、パレットトラックフォークF)のガイドレールとなり、処分坑道5に搬入した緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する際に緩衝材一体型の廃棄体Pの台座となる台座レール51を処分坑道5の床面から上方に突出する態様で処分坑道5の軸方向に沿って敷設するとともに、台座レール51に定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに注水するための注水孔52を設けたので、緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する場合や定置する場合の障害となることなく、処分坑道5に定置した緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填したペレット状の緩衝材Bへの注水が可能となる。
【0041】
また、処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体Pを搭載した搬送台車(たとえば,パレットトラックフォークF)のガイドレールとなるので、搬送出台車は搬入方向に向けて安定して移動することができる。
【0042】
また、定置された緩衝材一体型の廃棄体Pは、処分坑道5の床面から離隔した状態で定置されるので、ペレット状の緩衝材Bの充填が容易なものとなり、また、注水が満遍なく行われる。
【0043】
上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1では、グラウト材注入管Tの注入口T1からたんにグラウト材Gを注入することにしたが、グラウト材Gの注入手順には改良の余地がある。そこで、図12を参照しながら、改良したグラウト材の注入手順(方法)を説明する。なお、図12は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、図12―1は、グラウト材の充填開始直後の状態を示す図、図12―2は、グラウト材の充填開始途中の状態を示す図、図12―3は、グラウト材の充填終了後の状態を示す図である。
【0044】
改良したグラウト材の注入手順(方法)では、グラウト材Gの注入前に主孔52aおよび枝孔52bの内部を負圧にし、その状態を維持しながらグラウト材Gを注入する。具体的には、グラウト材注入管Tの注入口T1からグラウト材Gを注入する前に注水口52a2に図示せぬ真空ポンプまたは真空タンクを連結する。そして、真空ポンプを駆動することにより、主孔52aおよび枝孔52bの内部空気を排除し、主孔52aおよび枝孔52bの内部を負圧(真空)にする。つぎに、真空ポンプの駆動を維持した状態で、グラウト材注入管Tの注入口T1からグラウト材Gの注入を開始する。すると、図12―1に示すように、グラウト材Gは、グラウト材注入管Tの内部を手前側から奥側に向けて侵入することになる。そして、グラウト材Gがグラウト材注入管Tの吐出口T2まで行き着くと、図12−2に示すように、グラウト材Gは、吐出口T2から吐出することになる。そして、吐出口T2から吐出したグラウト材Gは、主孔52aの奥側から手前側に戻り、主孔52aに充填される。このとき、負圧状態(真空状態)にある枝孔52bにも充填されることになる。最終的には、図12−3に示すように、主孔52aと枝孔52bの内部すべてにグラウト材Gが充填されることになる。このように改良したグラウト材の注入手順(方法)によれば、主孔52aだけでなく、枝孔52bをも確実にグラウト材Gで充填して止水シールできる。
【0045】
また、上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1は、処分坑道5の床面中央に一つの台座レール51を設けることとしたが、図13に示すように、処分坑道5の床面両側にそれぞれ台座レール53を設けてもよい。この場合には、台座レール53ごとに主孔54aと枝孔54bとを有する注水孔54を設けることになる。
【0046】
上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1では、定置した緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間にペレット状の緩衝材Bを充填し、その後、注水孔52から注水することにより、ペレット状の緩衝材Bが膨潤し、緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に長期間安定な遮水層を形成する。
【0047】
図14は、ペレット状の緩衝材に注水してから経過した時間(日数)とペレット状の緩衝材の透水係数との関係を示す図である。図14に示すように、乾燥したペレット状の緩衝材Bに注水してもペレット状の緩衝材Bが直ちに遮水性能を発揮するわけではなく、注水から数日かけて遮水性能を発揮する。すなわち、乾燥したペレット状の緩衝材Bに注水すると、各ペレット状の緩衝材Bが吸水膨張してペレット状の緩衝材Bの相互間の間隙を埋めることにより、数日かけて透水性が小さくなり、遮水性能を発揮する。図14に示す例では、ペレット状の緩衝材Bに注水してから5〜6日で、透水係数が1.0E−11m/sとなり、緩衝材本来の遮水性能を発揮し、水みちは遮水シールされる。
【0048】
このように、ペレット状の緩衝材Bは、注水してから数日かけて緩衝材本来の遮水性能を発揮するので、遮水性能を発揮するまで(図14に示す例では、5〜6日)は、処分坑道5のまわりから処分坑道5の内部に地下水が流れ込むことによるシール材(膨潤し始めた緩衝材B)の損傷が懸念される。
【0049】
図15は、処分坑道が複数の湧水帯を貫通した廃棄体の埋設処分施設を示す図である。わが国の地質岩盤条件では、坑道が複数の湧水帯を貫通することは珍しくないので、処分坑道5の坑道延長が長い場合には、図15に示すように、処分坑道5が複数の湧水帯WA,WB、WCを貫通することがある。このような場合には、シール材(膨潤し始めた緩衝材B)の損傷が懸念される。
【0050】
図16は、処分坑道を掘削する前の天然状態における地山の地下水圧分布を示す図である。図16に示す例では、掘削する処分坑道の深度を500mとし、掘削する処分坑道5が三つの湧水帯WA,WB、WCを貫通するものとする。また、湧水帯WA,WB、WCの地下水面が地表(深度0)にあるものとする。図16に示すように、処分坑道5を掘削する前の天然状態において、水みちとなる湧水帯(断層、断層破砕帯、透水性の大きい火山性噴出物の層など)WA,WB、WCの地下水圧は、どこも同じような値となる。すなわち、地下水圧は、深度が深くなるにつれて大きくなるが、地下水圧を水頭値(その点にピエゾ管をつけて水位置で読み取った場合に相当する値)で表すならば、すべての点の地下水頭値は地表近くに存在する地下水位に等しい値を示すことになる。
【0051】
地下水は、微少流速で地下を浸透しているので、動水勾配は完全にゼロではない。したがって、水頭値の分布が完全に一定というわけではない。しかしながら、仮に隣の湧水帯に比べて地下水圧に差があったとしても、廃棄体の埋設処分施設1が立地する地下深く(たとえば、深度300〜1000m)の地山のマクロな動水勾配は、1/100を上まわることは少ないと予想される。これにより、たとえば、50m離れた湧水帯の地下水圧の差圧は、水頭にして0.5mH2O程度(圧力差で5kPa程度)である。
【0052】
図17は、処分坑道を掘削し、その後、湧水量が落ち着いた状態における地山の地下水圧分布を示す図である。図17に示すように、処分坑道を掘削した後は、湧水帯の坑道交差位置(処分坑道の壁面部)の水圧が大気圧と同じになるため、湧水帯WA,WB、WCの処分坑道周囲における水圧(水頭値)は、掘削後の時間の経過に伴って元の水圧から著しく低くなる。なお、図17において、複数の湧水帯WA,WB、WCの透水特性が異なるため、たとえば、湧水帯WBの透水性が隣の湧水帯WAやWBの透水性の10倍(たとえば、透水係数が20倍、間隙容積が2倍)相当である場合には、湧水帯WBの水圧は、湧水帯WAやWCの水圧に比べて奥まで(処分坑道の壁面から地山に向けて離れたところまで)低いものとなる。
【0053】
その後、処分坑道5と処分坑道5に定置した緩衝材一体型の廃棄体Pとの間にペレット状の緩衝材Bを充填した後、図示せぬ排水設備による地下水の湧水の排水行為を停止してから、処分坑道5と緩衝材一体型の廃棄体Pとの間に注水すると、その直後は、湧水帯WA,WB、WCから処分坑道5の内部に地下水が流入する。水は、短時間の内に処分坑道5の内部に満たされるので、その後は、時間の経過とともに遮水性能を発揮する(図14参照)。
【0054】
図18は、処分坑道と廃棄体との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、処分坑道と廃棄体との間に注水した直後の状態における地山の地下水圧分布を示す図である。処分坑道5の内部が水で満たされると、湧水帯WAやWCCの水圧は上昇して、早々に元の地下水圧に回復していく。一方、透水性が大きく、貯留量が大きい湧水帯WBの水圧回復は若干遅れる。このように、湧水帯WA,WB、WCのそれぞれにおける地下水圧の回復速度は、その湧水帯WA,WB、WCの透水特性に応じてばらつきがあり、湧水帯相互の地下水の湧水圧の差圧が一時的に大きくなる。たとえば、図18に示すような湧水帯WA,WB、WCの各々に異なる水圧回復現象が生じて、湧水帯WA,WB、WCそれぞれの処分坑道抗壁面での湧水圧に差が生じると、同図の中に矢印で示すような湧水帯WAやWCから湧水帯WBに向かう地下水流れが坑道すき間部に生じる。この地下水流をもたらす坑道壁面における処分坑道5の軸方向の動水勾配iは、湧水帯WA,WB、WCの離間距離Lab,Lbc、湧水帯WA,WB、WCの坑道閉鎖直前における湧水圧Pa,Pb,Pcの値に対応してたとえば下記のような条件となる。
【0055】
[湧水帯WAから湧水帯WBに向かう地下水流れの動水勾配](試算例1)
離間距離 Lab=10m
湧水圧 Pa=300mH2O,Pb=100mH2O
i=(300−100)/10=20
【0056】
[湧水帯WCから湧水帯WAに向かう地下水流れの動水勾配](試算例2)
離間距離 Lbc=100m
湧水圧 Pb〜〜100mH2O,Pc=200mH2O
i=(200−100)/100=1
【0057】
上記の試算例は、一例であって、実際には、湧水帯WA,WB、WCのそれぞれの水理特性に応じてさまざまな流動場となるので、複数の湧水帯WA,WB、WCを横切る処分坑道5の壁面付近を処分坑道5の軸方向に浸透する地下水の流れは、いろいろな条件で、地下水が流動することになる。たとえば、上記の試算例1や2で、試算例1のように、動水勾配が大きくなったり、圧力差が大きくなったりすると、シール性能が損なわれることが懸念される。具体的には、坑道壁面に沿って卓越して地下水が流れる流路が生じるパイピング現象が発生し、その後はその水みちを流動する地下水が流れとともに緩衝材Bを洗掘し、喪失させていくことが懸念される。
【0058】
なお、このような現象は一時的なものであり、図14に示すような遮水シール特性の材料を坑道壁面に沿った隙間の充填材として採用するならば、数日間でこのような動水勾配の大きな地下水流れ現象は解消するので、処分坑道5が地下水で満たされてから数日間の動水勾配の大きな浸透流れを抑制できれば、懸念は解消される。
【0059】
実施の形態2
本発明の実施の形態2である廃棄体の埋設処分施設は、上述した懸念を解消するものであって、上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1に注水手段を備えたものである。注水手段は、上述した注水孔から注水するためのものであり、注水圧調整手段を備えている。注水手段は、たとえば、吐出圧力が調整可能な吐出ポンプ9(図20および図21参照)で構成され、吐出圧力を調整することにより、注水圧力を調整する。具体的には、大気圧と略同一となる圧力から段階的に高圧となるように調整し、最終的には、処分坑道を掘削する前の地下水圧と略同一の圧力に調整する。
【0060】
つぎに、図19に基づいて緩衝材一体型の廃棄体Pの埋設手順を説明する。図19は、緩衝材一体型の廃棄体の埋設手順を示すフローチャートである。ここでは、掘削する処分坑道5の深度を500mとし、掘削する処分坑道5が三つの湧水帯WA,WB,WCを貫通するものとする。また、湧水帯WA,WB,WCの地下水面が地表(深度0)にあるものとする。
【0061】
処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを埋設処分する場合には、図19に示すように、まず、処分坑道5に廃棄体一体型の廃棄体Pを搬入する(ステップS11)。緩衝材一体型の廃棄体Pの搬入には、搬送台車を用いるが、ここでは、一例としてローラー型タイヤを備えたパレットトラックフォークを用いる。
【0062】
処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する場合には、主要坑道6において緩衝材一体型の廃棄体Pをパレットトラックフォークに載せ換える。緩衝材一体型の廃棄体Pが載せ換えられたパレットトラックフォークは、緩衝材一体型の廃棄体Pが台座レール51と干渉しない高さまで緩衝材一体型の廃棄体Pを持ち上げて、緩衝材一体型の廃棄体Pを処分坑道5に搬入する。
【0063】
緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する位置まで緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入すると、つぎに、パレットトラックフォークは、緩衝材一体型の廃棄体を台座レール51に降ろすことにより、緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する(ステップS12)。
【0064】
つぎに、パレットトラックフォークを主要坑道6まで搬出し、定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間にペレット状の緩衝材Bを充填する(ステップS13)。ここで充填するペレット状の緩衝材Bは、ベントナイトに代表される粘土系遮水材料を締め固めたもので、注水すると膨潤することにより遮水性能を発揮する。
【0065】
処分坑道5に埋設処分する数の緩衝材一体型の廃棄体Pを定置し、ペレット状の緩衝材Bを充填すると、その処分坑道5の入口を閉鎖する(ステップS14)。つぎに、注水孔52から吸水することにより、ペレット状の緩衝材Bに注水する(ステップS15)。
【0066】
ペレット状の緩衝材Bに注水する水の圧力(注水圧力)は、吐出ポンプ9の吐出圧力を調整することにより、注水圧力が大気圧と略同一となる圧力から短時間で(あるいは速やかに)段階的に高圧になるように調整する(ステップS16)。そして、注水圧力が処分坑道5を掘削する前の地下水圧と同等になった場合には、その状態を維持する(ステップS17)。
【0067】
図20は、注水圧を短時間で坑道掘削前の元の地下水圧まで昇圧する途上において、坑道壁面部における水圧が300mH2Oに達した場合における地山の地下水圧分布を示す図であり、図21は、注水圧が坑道掘削前の元の地下水圧に相当する500mH2Oに達した場合における地山の地下水圧分布を示す図である。
【0068】
図20に示すように、各々の湧水帯WA,WB,WCの坑道壁面における圧力が300mH20(圧力値で約30MPa)まで上昇すると、注水した水は、逆流して湧水帯WA,WB,WCに浸入する。これにより、地下水圧が低下していた湧水帯WA,WB,WCの圧力が回復する。急速な注水を行わなければ、図18に見られるように、処分坑道5の壁面から離れた位置における地下水圧(水頭値)の回復速度の違いが顕著であり、その結果、湧水帯間の水圧差が大きくなることが問題となる。これにより、急速な注水を行えば、湧水帯間の水圧分布が非常に短時間で回復することにより、湧水帯間の水圧差が解消する。
【0069】
図21に示すように、注水圧力を短時間で坑道掘削前の元の地下水圧と略同一となる500mH2Oまで上昇させると、処分坑道周囲の地下水の水頭値は元の地下水圧Piに等しい値に回復する。その後は、湧水帯相互の地下水圧の水圧差はほとんどゼロになり、坑道軸方向の地下水の流れは発生しなくなる。
【0070】
また、湧水帯WA,WB,WCの水圧が処分坑道を掘削する前の地下水圧Piと略同一となる圧力になるまでの一時的な状況では、湧水帯WA,WB,WCから処分坑道5に地下水が流入することがないので、処分坑道5の軸方向の地下水の流れは発生しにくくなる。その結果、隙間シール性能が損なわれる懸念を解消できる。
【0071】
図22は、入口区画に遮水プラグを設置した処分坑道を示す図である。注水圧の調整が可能な吐出ポンプ(注水手段)6を備えた廃棄体の埋設処分施設1は、図22に示すように、処分坑道の入口区間に遮水プラグ10を設置しておくことが好ましい。このように、遮水プラグ10を設置すると、処分坑道の軸方向の地下水の流れが抑制される。
【0072】
上述した廃棄体の埋設処分施設1の説明では、主要坑道6における地下水圧(水頭)の分布について省略したが、実際には主要坑道6においても地下水が湧出する。これにより、処分坑道5の入口区画において、主要坑道6を中心とする同心円状の地下水水頭の等高線Cが存在する(図22参照)。
【0073】
したがって、上述した遮水プラグ10は、主要坑道6に向かう地下水の流れを抑制する効果のほか、注水した水が主要坑道6にまわらないで、効率的かつ短時間で湧水帯WA,WB,WCに供給される効果も発揮する。尚、遮水プラグ10は、入口区間に一つに限られるものではなく、処分坑道5の途中に複数設置することも効果的である。
【0074】
上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1は、注水する水の圧力を調整することにより、湧水帯相互の地下水圧の差はほとんどゼロとなるため、処分坑道5の軸方向の地下水流れは発生しなくなる。その結果、隙間シール性能が損なわれる懸念が解消する。
【符号の説明】
【0075】
1 廃棄体の埋設処分施設
2 地上施設
3 地下施設
4 アクセス坑道
5 処分坑道
51 台座レール
52 注水孔
52a 主孔
52a1 鞘管
52a2 注水口
52b 枝孔
52b1 吐出口
53 台座レール
54 注水孔
54a 主孔
54b 枝孔
6 主要坑道
7 連絡坑道
8 処分パネル
9 吐出ポンプ
10 遮水プラグ
P 緩衝材一体型の廃棄体
B ペレット状の緩衝材
F パレットトラックフォーク(搬送台車)
G グラウト材
R1 注水経路
R2 充填経路
T グラウト材注入管
T1 注入口
T2 吐出口
WA,WB,WC 湧水帯
C 等高線
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材一体型の廃棄体を処分坑道に横置きに定置し、埋設処分する廃棄体の埋設処分施設および廃棄体の埋設処分方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝材一体型の廃棄体を処分坑道に横置きに定置し、埋設処分する場合には、緩衝材一体型の廃棄体の大きさに見合った坑道断面の処分坑道が必要となる。これにより、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間には隙間が生じることになるが、この隙間を空間のままにしておくと、処分坑道を支える支保工が劣化した場合に地山からの偏圧が作用して、緩衝材一体型の廃棄体の健全性を損なうことになる。このような問題を解決すべく、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に生じる隙間に粘土系遮水材料を締め固めたペレット状の緩衝材が充填される(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−319732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間を遮水シールするためには、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に充填したペレット状の緩衝材に注水する必要がある。これは、早期に注水することで、ペレット状の緩衝材は吸水膨潤して、止水材として機能する効果を発揮するからである。
【0005】
しかしながら、注水管を処分坑道の壁面部に敷設すると、緩衝材一体型の廃棄体を搬入する場合や定置する場合の障害となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、緩衝材一体型の廃棄体を搬入する場合や定置する場合の障害となることなく、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に充填したペレット状の緩衝材への注水を可能にする廃棄体の埋設処分施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、処分坑道に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、緩衝材一体型の廃棄体を埋設処分する廃棄体の埋設処分施設において、前記処分坑道に前記緩衝材一体型の廃棄体を搬入する際に前記緩衝材一体型の廃棄体を搭載した搬送台車のガイドレールとなり、前記処分坑道に搬入した緩衝材一体型の廃棄体を定置する際に前記緩衝材一体型の廃棄体の台座となる台座レールを前記処分坑道の床面から上方に向けて突出する態様で前記処分坑道の軸方向に沿って敷設するとともに、前記台座レールに定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に注水するための注水孔を前記台座レールの内部に設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記注水孔が、前記処分坑道の軸方向に沿って設けられた主孔と、主孔から分岐して処分坑道の内周に沿って設けられた複数の枝孔とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記複数の枝孔の開口端部となる複数の吐出口は、前記処分坑道の軸方向において、前記緩衝材一体型の廃棄体の長さよりも短い間隔で開口したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、水圧が調整された水を前記注水孔から注水する注水手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記注水手段は、水圧を調整する注水圧調整手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、処分坑道の入口区間、さらには、処分坑道の途中の要所に、処分坑道の軸方向への地下水の流れを抑制する遮水プラグを設置したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、処分坑道に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、緩衝材一体型の廃棄体を埋設処分する廃棄体の埋設処分方法において、前記緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に処分坑道を掘削する前の地下水圧と同等の圧力まで段階的に調整された水を注水することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、処分坑道の入口区間、さらには、処分坑道の途中の要所に、処分坑道の軸方向への地下水の流れを抑制する遮水プラグを設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる廃棄体の埋設処分施設は、処分坑道に緩衝材一体型の廃棄体を搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体を搭載した搬送台車のガイドレールとなり、処分坑道に搬入した緩衝材一体型の廃棄体を定置する際に緩衝材一体型の廃棄体の台座となる台座レールを処分坑道の床面から上方に突出する態様で処分坑道の軸方向に沿って敷設するとともに、台座レールに定置された緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に注水するための注水孔を台座レールの内部に設けたので、緩衝材一体型の廃棄体を搬入する場合や定置する場合の障害となることなく、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体と処分坑道との間に充填したペレット状の緩衝材への注水が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設を示す概念図である。
【図2】図2は、図1に示した埋設処分施設を構成する主要坑道と処分坑道とを示す概念図である。
【図3】図3は、図2に示した処分坑道を示す概念斜視図である。
【図4】図4は、緩衝材一体型の廃棄体の埋設手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、処分坑道を示す横断面図であって、緩衝材一体型の廃棄体の搬送時の状態を示す図である。
【図6】図6は、処分坑道を示す横断面図であって、緩衝材一体型の廃棄体の定置時の状態を示す図である。
【図7−1】図7−1は、処分坑道を示す横断面図であって、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体との間にペレット状の緩衝材を充填した状態を示す図である。
【図7−2】図7−2は、処分坑道を示す縦断面図であって、処分坑道に定置した緩衝材一体型の廃棄体との間にペレット状の緩衝材を充填した状態を示す図である。
【図8−1】図8−1は、処分坑道を示す横断面図であって、ペレット状の緩衝材に注水した状態を示す図である。
【図8−2】図8−2は、処分坑道を示す縦断面図であって、ペレット状の緩衝材に注水した状態を示す図である。
【図9】図9は、主孔にグラウト材注入管を挿入した状態を示す概念斜視図である。
【図10】図10は、水の注水経路を示す断面模式図である。
【図11−1】図11−1は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填開始直後の状態を示す図である。
【図11−2】図11−2は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填途中の状態を示す図である。
【図11−3】図11−3は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填終了後の状態を示す図である。
【図12−1】図12―1は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填開始直後の状態を示す図である。
【図12−2】図12―2は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填途中の状態を示す図である。
【図12−3】図12―3は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、グラウト材の充填終了後の状態を示す図である。
【図13】図13は、他の形態である処分坑道を示す横断面図である。
【図14】図14は、ペレット状の緩衝材に注水してから経過した時間とペレット状の緩衝材の透水係数との関係を示す図である。
【図15】図15は、処分坑道が複数の湧水帯を貫通した廃棄体の埋設処分施設を示す図である。
【図16】図16は、処分坑道を掘削する前の天然状態における地山の地下水圧分布を示す図である。
【図17】図17は、処分坑道を掘削し、その後、湧水量が落ち着いた状態における地山の地下水圧分布を示す図である。
【図18】図18は、処分坑道と廃棄体との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、処分坑道と廃棄体との間に注水した直後の状態における地山の地下水圧分布を示す図である。
【図19】図19は、緩衝材一体型の廃棄体の埋設手順を示すフローチャートである。
【図20】図20は、注水圧を短時間で坑道掘削前の元の地下水圧まで昇圧する途上において、坑道壁面部における水圧が300mH2Oに達した場合における地山の地下水圧分布を示す図である。
【図21】図21は、注水圧が坑道掘削前の元の地下水圧に相当する500mH2Oに達した場合における地山の地下水分布を示す図である。
【図22】図22は、入口区画に遮水プラグを設置した処分坑道を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる廃棄体の埋設処分施設の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
まず、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設に埋設処分される廃棄体について説明する。本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設に埋設処分される廃棄体は、原子力の利用に伴い発生する放射性の廃棄物であって、より具体的には、再処理で使用済燃料からウラン、プルトニウム等の有用物を分離した後に残存する放射能レベルの高い廃棄物(高レベル放射性廃棄物)で、核燃料の核分裂によって生じた物質(核分裂生成物)等を含むものである。高レベル放射性廃棄物は、ガラスで固化した後、30〜50年間冷却のために貯蔵され、その後、地下深く埋設処分されることになるが、ここでは、ガラスで固化した高レベル放射性廃棄物をオーバーパックと称される金属製の容器に封入した後、さらにそのまわりを緩衝材で囲繞した円柱形状の緩衝材一体型の廃棄体P(図2参照)として埋設処分される。なお、緩衝材は、ベントナイトに代表される粘土系遮水材料を締め固めたもので、地震等の外力が加わって処分坑道が変形した場合に廃棄物に加わる外力を低減するとともに、地下水の侵入を阻止する。
【0019】
つぎに、図1に基づいて、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設の概要を説明する。なお、図1は、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設の概要を示す概念図である。
【0020】
図1に示すように、廃棄体の埋設処分施設1は、地上施設2と地下施設3とから構成される。地上施設2は、ガラスで固化された放射性の廃棄物(ガラス固化体)を受け入れて検査し、オーバーパックと称される金属製の容器に封入した後、それを地下深部に搬送するために必要な施設や、建設・操業・閉鎖に関連して地上部に必要となる施設などから構成される。本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1の地上施設2には、金属製の容器のまわりを緩衝材で囲繞するための施設を備えている。地下施設3は、地上と地下の施設を結ぶアクセス坑道4、緩衝材一体型の廃棄体Pを定置するための処分坑道5、処分坑道5を取り囲む主要坑道6と、主要坑道6と主要坑道6との間を結ぶ連絡坑道7などから構成される。また、緩衝体一体型の廃棄体Pの搬送にかかわる施設、坑道建設にかかわる施設、およびそれらの安全性を維持するための施設なども地下に建設される。
【0021】
アクセス坑道4は、地上施設2と地下の連絡坑道7、主要坑道6とを結ぶものであり、地上施設2との位置関係に応じて柔軟に配置することが可能である。アクセス坑道4は、緩衝材一体型の廃棄体Pの搬送だけでなく、作業員の出入り、掘削土の搬出、換気、排水、エネルギー供給など多様な目的に使用される。また、搬送手段に応じ、エレベータなどの昇降設備を用いる立坑41と、車両・レール方式を用いる斜抗42に大別することができる。また、地下の作業員にとってアクセス坑道4は、緊急時の避難通路としての役割も有する。なお、廃棄体の埋設処分施設1の閉鎖に伴いアクセス坑道4は最後に埋め戻しが行われる地下施設3となる。
【0022】
処分坑道5は、掘削など地下での作業の観点から一定の数の処分坑道群を一つの区画(処分パネル8)とし、複数の処分パネル8に分けて配置することが可能である。これにより対象となる岩体が小さい場合や傾斜している場合などその特徴に応じて処分パネル8を柔軟に配置することができる。処分パネル8の配置には、水平レベルで展開する分散配置や垂直方向に展開する多層配置が考えられる。分散配置は、断層など地質構造要素の特徴を踏まえた配置に適しており、多層配置は地下施設に必要な面積を確保できない場合などに有効である。
【0023】
連絡坑道7は、処分パネル8間を結ぶ坑道であり、地上施設2からの緩衝材一体型の廃棄体Pの搬送など地下での作業に伴う物流や作業員の出入りに用いられる。緩衝材一体型の廃棄体Pを埋設処分が終了した処分パネル8ごとに、不要となる連絡坑道7は埋め戻しを行うことができる状態となる。
【0024】
つぎに、図2および図3に基づいて処分坑道をさらに詳しく説明する。なお、図2は、図1に示した主要坑道と処分坑道とを示す概念図であり、図3は、図2に示した処分坑道を示す概念斜視図である。
【0025】
図2に示すように、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1は、円柱形状に形成された緩衝材一体型の廃棄体Pの軸方向を水平方向に向けた状態で定置する横置き方式を採用したもので、処分坑道5に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間には、ペレット状の緩衝材Bが充填される(図7参照)。
【0026】
図3に示すように、本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1の処分坑道5には、台座レール51が敷設してある。台座レール51は、処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体Pを搭載した搬送台車(たとえば、パレットトラックフォーク)のガイドレールとなり、処分坑道5に搬入した緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する際に緩衝材一体型の廃棄体Pの台座となる。台座レール51は、処分坑道5の床面から上方に向けて突出する態様で敷設され、その横断面は円弧形状を有しており、処分坑道5の軸方向に延在している。
【0027】
また、台座レール51の内部には、台座レール51に定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに注水するための注水孔52が設けてある。注水孔52は、処分坑道5の軸方向に沿って設けられた主孔52aと、主孔52aから分岐して処分坑道5の内周に沿って設けられた複数の枝孔52bとを有している。
【0028】
枝孔52bの開口端部となる吐出口52b1は、処分坑道5の軸方向において、緩衝材一体型の廃棄体Pの長さよりも短い間隔で開口している。
【0029】
つぎに、図4に基づいて緩衝材一体型の廃棄体Pの埋設手順を説明する。なお、図4は、緩衝材一体型の廃棄体の埋設手順を示すフローチャートである。
【0030】
処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを埋設処分する場合には、図4に示すように、まず、処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する。緩衝材一体型の廃棄体Pの搬入には、搬送台車を用いるが、ここでは、図5および図6に図示されるローラー型タイヤを備えたパレットトラックフォークFを用いる。
【0031】
処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する場合には、主要坑道6において緩衝材一体型の廃棄体PをパレットトラックフォークFに載せ換える。緩衝材一体型の廃棄体Pが載せ換えられたパレットトラックフォークFは、図5に示すように、緩衝材一体型の廃棄体Pが台座レール51と干渉しない高さまで緩衝材一体型の廃棄体Pを持ち上げて、緩衝材一体型の廃棄体Pを処分坑道5に搬入する(ステップS1)。このとき、台座レール51は、パレットトラックフォークFのガイドレールとなり、パレットトラックフォークFは、図5に示すように、台座レール51にガイドされる。
【0032】
緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する位置まで緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入すると、つぎに、パレットトラックフォークFは、緩衝材一体型の廃棄体Pを台座レール51に降ろすことにより、図6に示すように、緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する(ステップS2)。
【0033】
つぎに、パレットトラックフォークFを主要坑道6まで搬出し、図7に示すように、定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間にペレット状の緩衝材Bを充填する(ステップS3)。ここで充填するペレット状の緩衝材Bは、ベントナイトに代表される粘土系遮水材料を締め固めたもので、注水すると膨潤することにより遮水性能を発揮するものである。
【0034】
処分坑道5に埋設処分する数の緩衝材一体型の廃棄体Pを定置し、ペレット状の緩衝材Bを充填すると、その処分坑道5の入口を閉鎖する(ステップS4)。つぎに、図8に示すように、注水孔52から給水することにより、ペレット状の緩衝材Bに注水する(ステップS5)。ペレット状の緩衝材Bに注水すると、ペレット状の緩衝材Bが膨潤することにより、緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間を遮水シールする。このように処分坑道5を閉鎖し、注水することにより、緩衝材一体型の廃棄体Pは処分坑道5ごとに埋設処分される。
【0035】
なお、処分坑道5の内壁に微量の湧き水(滲み水)がある場合には、その湧き水が充填した後のペレット状の緩衝材Bに吸水されて、局部的にムラのある膨潤シール状態を呈する懸念がある。そのようなことがないように、処分坑道外部の止水と処分坑道内部の排水とを厳重に対処するが、万一、局部的に湧き水がある場合には、坑道支保材(たとえば、コンクリート)の要所に導入溝もしくは導水管を設けて、注水孔52に導くことにより、当該注水孔52を一時的な排水対策に利用してもよい。
【0036】
また、緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに注水すると、短時間でペレット状の緩衝材Bは吸水膨潤して緩衝材(ベントナイト)と水が均質になった止水性の高い緩衝材になる。一部の緩衝材は、枝孔52bの中に若干侵入するが、主孔52aに侵入するまでには、数日以上を要するので、その前に主孔52aに主要坑道6からグラウト材注入管を挿入し、主孔52aをグラウト材で充填する(ステップS6)。これにより、処分坑道5の軸方向への水みちはすべて止水シールされることになる。グラウト材には、セメント系無機材系、ベントナイト系の材料等を適用できるが、ベントナイトをエタノール水または無機塩水と混合して作ったスラリーを注入することが最も適している。
【0037】
上述したように、主孔52aからペレット状の緩衝材Bに注水する一方、主孔52aにグラウト材を充填する場合には、図9に示すように、主孔52aにグラウト材注入管Tを挿入し、グラウト材注入管Tと主孔52aとを芯鞘構造に構成することが好ましい。このように構成すると、主孔52aからペレット状の緩衝材Bに注水する場合には、主孔52aとグラウト材注入管Tとの間に画成される環状の経路が注水経路R1(図10参照)となり、主孔52aにグラウト材Gを充填する場合には、グラウト材注入管Tがグラウト材Gの充填経路R2(図10参照)となる。なお、主孔52aに接続される鞘管52a1には、注水経路R1に連通する注水口52a2が設けてあり、ペレット状の緩衝材Bに注水する場合には、ここから注水する。一方、グラウト材注入管Tの一端と他端とは開口しており、手前側(入口側)となる一端開口がグラウト材Gの注入口T1となり、グラウト材Gを注入する場合には、ここから注入する。
【0038】
そして、図10に示すように、注入口T1を塞ぎ、注水口52a2から注水すると、注水された水は、注水経路R1、枝孔52bを通り、吐出口52b1から吐出する。吐出した水は、緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに供給され、ペレット状の緩衝材Bは膨潤することになる。
【0039】
一方、グラウト材注入管Tの注入口T1からグラウト材Gを注入すると、注入されたグラウト材Gは、図11−1に示すように、グラウト材注入管Tの内部を手前側から奥側に向けて侵入することになる。そして、グラウト材Gがグラウト材注入管Tの他端開口(吐出口T2)まで行き着くと、図11−2に示すように、グラウト材Gは、吐出口T2から吐出することになる。そして、吐出口T2から吐出したグラウト材Gは、主孔52aの奥側から手前側に戻り、主孔52aに充填されることになる。主孔52aの奥側から手前側に充填されたグラウト材Gは、図11−3に示すように、最終的には、注水口52a2から吐出することになる。注水口52a2からグラウト材Gが吐出した場合には、主孔52aにグラウト材Gが充填されたことになるから、グラウト材Gの充填作業を終了する。
【0040】
上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1は、処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体Pを搭載した搬送台車(たとえば、パレットトラックフォークF)のガイドレールとなり、処分坑道5に搬入した緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する際に緩衝材一体型の廃棄体Pの台座となる台座レール51を処分坑道5の床面から上方に突出する態様で処分坑道5の軸方向に沿って敷設するとともに、台座レール51に定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填されたペレット状の緩衝材Bに注水するための注水孔52を設けたので、緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する場合や定置する場合の障害となることなく、処分坑道5に定置した緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に充填したペレット状の緩衝材Bへの注水が可能となる。
【0041】
また、処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する際に緩衝材一体型の廃棄体Pを搭載した搬送台車(たとえば,パレットトラックフォークF)のガイドレールとなるので、搬送出台車は搬入方向に向けて安定して移動することができる。
【0042】
また、定置された緩衝材一体型の廃棄体Pは、処分坑道5の床面から離隔した状態で定置されるので、ペレット状の緩衝材Bの充填が容易なものとなり、また、注水が満遍なく行われる。
【0043】
上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1では、グラウト材注入管Tの注入口T1からたんにグラウト材Gを注入することにしたが、グラウト材Gの注入手順には改良の余地がある。そこで、図12を参照しながら、改良したグラウト材の注入手順(方法)を説明する。なお、図12は、グラウト材の充填経路を示す断面模式図であって、図12―1は、グラウト材の充填開始直後の状態を示す図、図12―2は、グラウト材の充填開始途中の状態を示す図、図12―3は、グラウト材の充填終了後の状態を示す図である。
【0044】
改良したグラウト材の注入手順(方法)では、グラウト材Gの注入前に主孔52aおよび枝孔52bの内部を負圧にし、その状態を維持しながらグラウト材Gを注入する。具体的には、グラウト材注入管Tの注入口T1からグラウト材Gを注入する前に注水口52a2に図示せぬ真空ポンプまたは真空タンクを連結する。そして、真空ポンプを駆動することにより、主孔52aおよび枝孔52bの内部空気を排除し、主孔52aおよび枝孔52bの内部を負圧(真空)にする。つぎに、真空ポンプの駆動を維持した状態で、グラウト材注入管Tの注入口T1からグラウト材Gの注入を開始する。すると、図12―1に示すように、グラウト材Gは、グラウト材注入管Tの内部を手前側から奥側に向けて侵入することになる。そして、グラウト材Gがグラウト材注入管Tの吐出口T2まで行き着くと、図12−2に示すように、グラウト材Gは、吐出口T2から吐出することになる。そして、吐出口T2から吐出したグラウト材Gは、主孔52aの奥側から手前側に戻り、主孔52aに充填される。このとき、負圧状態(真空状態)にある枝孔52bにも充填されることになる。最終的には、図12−3に示すように、主孔52aと枝孔52bの内部すべてにグラウト材Gが充填されることになる。このように改良したグラウト材の注入手順(方法)によれば、主孔52aだけでなく、枝孔52bをも確実にグラウト材Gで充填して止水シールできる。
【0045】
また、上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1は、処分坑道5の床面中央に一つの台座レール51を設けることとしたが、図13に示すように、処分坑道5の床面両側にそれぞれ台座レール53を設けてもよい。この場合には、台座レール53ごとに主孔54aと枝孔54bとを有する注水孔54を設けることになる。
【0046】
上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1では、定置した緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間にペレット状の緩衝材Bを充填し、その後、注水孔52から注水することにより、ペレット状の緩衝材Bが膨潤し、緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間に長期間安定な遮水層を形成する。
【0047】
図14は、ペレット状の緩衝材に注水してから経過した時間(日数)とペレット状の緩衝材の透水係数との関係を示す図である。図14に示すように、乾燥したペレット状の緩衝材Bに注水してもペレット状の緩衝材Bが直ちに遮水性能を発揮するわけではなく、注水から数日かけて遮水性能を発揮する。すなわち、乾燥したペレット状の緩衝材Bに注水すると、各ペレット状の緩衝材Bが吸水膨張してペレット状の緩衝材Bの相互間の間隙を埋めることにより、数日かけて透水性が小さくなり、遮水性能を発揮する。図14に示す例では、ペレット状の緩衝材Bに注水してから5〜6日で、透水係数が1.0E−11m/sとなり、緩衝材本来の遮水性能を発揮し、水みちは遮水シールされる。
【0048】
このように、ペレット状の緩衝材Bは、注水してから数日かけて緩衝材本来の遮水性能を発揮するので、遮水性能を発揮するまで(図14に示す例では、5〜6日)は、処分坑道5のまわりから処分坑道5の内部に地下水が流れ込むことによるシール材(膨潤し始めた緩衝材B)の損傷が懸念される。
【0049】
図15は、処分坑道が複数の湧水帯を貫通した廃棄体の埋設処分施設を示す図である。わが国の地質岩盤条件では、坑道が複数の湧水帯を貫通することは珍しくないので、処分坑道5の坑道延長が長い場合には、図15に示すように、処分坑道5が複数の湧水帯WA,WB、WCを貫通することがある。このような場合には、シール材(膨潤し始めた緩衝材B)の損傷が懸念される。
【0050】
図16は、処分坑道を掘削する前の天然状態における地山の地下水圧分布を示す図である。図16に示す例では、掘削する処分坑道の深度を500mとし、掘削する処分坑道5が三つの湧水帯WA,WB、WCを貫通するものとする。また、湧水帯WA,WB、WCの地下水面が地表(深度0)にあるものとする。図16に示すように、処分坑道5を掘削する前の天然状態において、水みちとなる湧水帯(断層、断層破砕帯、透水性の大きい火山性噴出物の層など)WA,WB、WCの地下水圧は、どこも同じような値となる。すなわち、地下水圧は、深度が深くなるにつれて大きくなるが、地下水圧を水頭値(その点にピエゾ管をつけて水位置で読み取った場合に相当する値)で表すならば、すべての点の地下水頭値は地表近くに存在する地下水位に等しい値を示すことになる。
【0051】
地下水は、微少流速で地下を浸透しているので、動水勾配は完全にゼロではない。したがって、水頭値の分布が完全に一定というわけではない。しかしながら、仮に隣の湧水帯に比べて地下水圧に差があったとしても、廃棄体の埋設処分施設1が立地する地下深く(たとえば、深度300〜1000m)の地山のマクロな動水勾配は、1/100を上まわることは少ないと予想される。これにより、たとえば、50m離れた湧水帯の地下水圧の差圧は、水頭にして0.5mH2O程度(圧力差で5kPa程度)である。
【0052】
図17は、処分坑道を掘削し、その後、湧水量が落ち着いた状態における地山の地下水圧分布を示す図である。図17に示すように、処分坑道を掘削した後は、湧水帯の坑道交差位置(処分坑道の壁面部)の水圧が大気圧と同じになるため、湧水帯WA,WB、WCの処分坑道周囲における水圧(水頭値)は、掘削後の時間の経過に伴って元の水圧から著しく低くなる。なお、図17において、複数の湧水帯WA,WB、WCの透水特性が異なるため、たとえば、湧水帯WBの透水性が隣の湧水帯WAやWBの透水性の10倍(たとえば、透水係数が20倍、間隙容積が2倍)相当である場合には、湧水帯WBの水圧は、湧水帯WAやWCの水圧に比べて奥まで(処分坑道の壁面から地山に向けて離れたところまで)低いものとなる。
【0053】
その後、処分坑道5と処分坑道5に定置した緩衝材一体型の廃棄体Pとの間にペレット状の緩衝材Bを充填した後、図示せぬ排水設備による地下水の湧水の排水行為を停止してから、処分坑道5と緩衝材一体型の廃棄体Pとの間に注水すると、その直後は、湧水帯WA,WB、WCから処分坑道5の内部に地下水が流入する。水は、短時間の内に処分坑道5の内部に満たされるので、その後は、時間の経過とともに遮水性能を発揮する(図14参照)。
【0054】
図18は、処分坑道と廃棄体との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、処分坑道と廃棄体との間に注水した直後の状態における地山の地下水圧分布を示す図である。処分坑道5の内部が水で満たされると、湧水帯WAやWCCの水圧は上昇して、早々に元の地下水圧に回復していく。一方、透水性が大きく、貯留量が大きい湧水帯WBの水圧回復は若干遅れる。このように、湧水帯WA,WB、WCのそれぞれにおける地下水圧の回復速度は、その湧水帯WA,WB、WCの透水特性に応じてばらつきがあり、湧水帯相互の地下水の湧水圧の差圧が一時的に大きくなる。たとえば、図18に示すような湧水帯WA,WB、WCの各々に異なる水圧回復現象が生じて、湧水帯WA,WB、WCそれぞれの処分坑道抗壁面での湧水圧に差が生じると、同図の中に矢印で示すような湧水帯WAやWCから湧水帯WBに向かう地下水流れが坑道すき間部に生じる。この地下水流をもたらす坑道壁面における処分坑道5の軸方向の動水勾配iは、湧水帯WA,WB、WCの離間距離Lab,Lbc、湧水帯WA,WB、WCの坑道閉鎖直前における湧水圧Pa,Pb,Pcの値に対応してたとえば下記のような条件となる。
【0055】
[湧水帯WAから湧水帯WBに向かう地下水流れの動水勾配](試算例1)
離間距離 Lab=10m
湧水圧 Pa=300mH2O,Pb=100mH2O
i=(300−100)/10=20
【0056】
[湧水帯WCから湧水帯WAに向かう地下水流れの動水勾配](試算例2)
離間距離 Lbc=100m
湧水圧 Pb〜〜100mH2O,Pc=200mH2O
i=(200−100)/100=1
【0057】
上記の試算例は、一例であって、実際には、湧水帯WA,WB、WCのそれぞれの水理特性に応じてさまざまな流動場となるので、複数の湧水帯WA,WB、WCを横切る処分坑道5の壁面付近を処分坑道5の軸方向に浸透する地下水の流れは、いろいろな条件で、地下水が流動することになる。たとえば、上記の試算例1や2で、試算例1のように、動水勾配が大きくなったり、圧力差が大きくなったりすると、シール性能が損なわれることが懸念される。具体的には、坑道壁面に沿って卓越して地下水が流れる流路が生じるパイピング現象が発生し、その後はその水みちを流動する地下水が流れとともに緩衝材Bを洗掘し、喪失させていくことが懸念される。
【0058】
なお、このような現象は一時的なものであり、図14に示すような遮水シール特性の材料を坑道壁面に沿った隙間の充填材として採用するならば、数日間でこのような動水勾配の大きな地下水流れ現象は解消するので、処分坑道5が地下水で満たされてから数日間の動水勾配の大きな浸透流れを抑制できれば、懸念は解消される。
【0059】
実施の形態2
本発明の実施の形態2である廃棄体の埋設処分施設は、上述した懸念を解消するものであって、上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1に注水手段を備えたものである。注水手段は、上述した注水孔から注水するためのものであり、注水圧調整手段を備えている。注水手段は、たとえば、吐出圧力が調整可能な吐出ポンプ9(図20および図21参照)で構成され、吐出圧力を調整することにより、注水圧力を調整する。具体的には、大気圧と略同一となる圧力から段階的に高圧となるように調整し、最終的には、処分坑道を掘削する前の地下水圧と略同一の圧力に調整する。
【0060】
つぎに、図19に基づいて緩衝材一体型の廃棄体Pの埋設手順を説明する。図19は、緩衝材一体型の廃棄体の埋設手順を示すフローチャートである。ここでは、掘削する処分坑道5の深度を500mとし、掘削する処分坑道5が三つの湧水帯WA,WB,WCを貫通するものとする。また、湧水帯WA,WB,WCの地下水面が地表(深度0)にあるものとする。
【0061】
処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを埋設処分する場合には、図19に示すように、まず、処分坑道5に廃棄体一体型の廃棄体Pを搬入する(ステップS11)。緩衝材一体型の廃棄体Pの搬入には、搬送台車を用いるが、ここでは、一例としてローラー型タイヤを備えたパレットトラックフォークを用いる。
【0062】
処分坑道5に緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入する場合には、主要坑道6において緩衝材一体型の廃棄体Pをパレットトラックフォークに載せ換える。緩衝材一体型の廃棄体Pが載せ換えられたパレットトラックフォークは、緩衝材一体型の廃棄体Pが台座レール51と干渉しない高さまで緩衝材一体型の廃棄体Pを持ち上げて、緩衝材一体型の廃棄体Pを処分坑道5に搬入する。
【0063】
緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する位置まで緩衝材一体型の廃棄体Pを搬入すると、つぎに、パレットトラックフォークは、緩衝材一体型の廃棄体を台座レール51に降ろすことにより、緩衝材一体型の廃棄体Pを定置する(ステップS12)。
【0064】
つぎに、パレットトラックフォークを主要坑道6まで搬出し、定置された緩衝材一体型の廃棄体Pと処分坑道5との間にペレット状の緩衝材Bを充填する(ステップS13)。ここで充填するペレット状の緩衝材Bは、ベントナイトに代表される粘土系遮水材料を締め固めたもので、注水すると膨潤することにより遮水性能を発揮する。
【0065】
処分坑道5に埋設処分する数の緩衝材一体型の廃棄体Pを定置し、ペレット状の緩衝材Bを充填すると、その処分坑道5の入口を閉鎖する(ステップS14)。つぎに、注水孔52から吸水することにより、ペレット状の緩衝材Bに注水する(ステップS15)。
【0066】
ペレット状の緩衝材Bに注水する水の圧力(注水圧力)は、吐出ポンプ9の吐出圧力を調整することにより、注水圧力が大気圧と略同一となる圧力から短時間で(あるいは速やかに)段階的に高圧になるように調整する(ステップS16)。そして、注水圧力が処分坑道5を掘削する前の地下水圧と同等になった場合には、その状態を維持する(ステップS17)。
【0067】
図20は、注水圧を短時間で坑道掘削前の元の地下水圧まで昇圧する途上において、坑道壁面部における水圧が300mH2Oに達した場合における地山の地下水圧分布を示す図であり、図21は、注水圧が坑道掘削前の元の地下水圧に相当する500mH2Oに達した場合における地山の地下水圧分布を示す図である。
【0068】
図20に示すように、各々の湧水帯WA,WB,WCの坑道壁面における圧力が300mH20(圧力値で約30MPa)まで上昇すると、注水した水は、逆流して湧水帯WA,WB,WCに浸入する。これにより、地下水圧が低下していた湧水帯WA,WB,WCの圧力が回復する。急速な注水を行わなければ、図18に見られるように、処分坑道5の壁面から離れた位置における地下水圧(水頭値)の回復速度の違いが顕著であり、その結果、湧水帯間の水圧差が大きくなることが問題となる。これにより、急速な注水を行えば、湧水帯間の水圧分布が非常に短時間で回復することにより、湧水帯間の水圧差が解消する。
【0069】
図21に示すように、注水圧力を短時間で坑道掘削前の元の地下水圧と略同一となる500mH2Oまで上昇させると、処分坑道周囲の地下水の水頭値は元の地下水圧Piに等しい値に回復する。その後は、湧水帯相互の地下水圧の水圧差はほとんどゼロになり、坑道軸方向の地下水の流れは発生しなくなる。
【0070】
また、湧水帯WA,WB,WCの水圧が処分坑道を掘削する前の地下水圧Piと略同一となる圧力になるまでの一時的な状況では、湧水帯WA,WB,WCから処分坑道5に地下水が流入することがないので、処分坑道5の軸方向の地下水の流れは発生しにくくなる。その結果、隙間シール性能が損なわれる懸念を解消できる。
【0071】
図22は、入口区画に遮水プラグを設置した処分坑道を示す図である。注水圧の調整が可能な吐出ポンプ(注水手段)6を備えた廃棄体の埋設処分施設1は、図22に示すように、処分坑道の入口区間に遮水プラグ10を設置しておくことが好ましい。このように、遮水プラグ10を設置すると、処分坑道の軸方向の地下水の流れが抑制される。
【0072】
上述した廃棄体の埋設処分施設1の説明では、主要坑道6における地下水圧(水頭)の分布について省略したが、実際には主要坑道6においても地下水が湧出する。これにより、処分坑道5の入口区画において、主要坑道6を中心とする同心円状の地下水水頭の等高線Cが存在する(図22参照)。
【0073】
したがって、上述した遮水プラグ10は、主要坑道6に向かう地下水の流れを抑制する効果のほか、注水した水が主要坑道6にまわらないで、効率的かつ短時間で湧水帯WA,WB,WCに供給される効果も発揮する。尚、遮水プラグ10は、入口区間に一つに限られるものではなく、処分坑道5の途中に複数設置することも効果的である。
【0074】
上述した本発明の実施の形態である廃棄体の埋設処分施設1は、注水する水の圧力を調整することにより、湧水帯相互の地下水圧の差はほとんどゼロとなるため、処分坑道5の軸方向の地下水流れは発生しなくなる。その結果、隙間シール性能が損なわれる懸念が解消する。
【符号の説明】
【0075】
1 廃棄体の埋設処分施設
2 地上施設
3 地下施設
4 アクセス坑道
5 処分坑道
51 台座レール
52 注水孔
52a 主孔
52a1 鞘管
52a2 注水口
52b 枝孔
52b1 吐出口
53 台座レール
54 注水孔
54a 主孔
54b 枝孔
6 主要坑道
7 連絡坑道
8 処分パネル
9 吐出ポンプ
10 遮水プラグ
P 緩衝材一体型の廃棄体
B ペレット状の緩衝材
F パレットトラックフォーク(搬送台車)
G グラウト材
R1 注水経路
R2 充填経路
T グラウト材注入管
T1 注入口
T2 吐出口
WA,WB,WC 湧水帯
C 等高線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処分坑道に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、緩衝材一体型の廃棄体を埋設処分する廃棄体の埋設処分施設において、
前記処分坑道に前記緩衝材一体型の廃棄体を搬入する際に前記緩衝材一体型の廃棄体を搭載した搬送台車のガイドレールとなり、前記処分坑道に搬入した緩衝材一体型の廃棄体を定置する際に前記緩衝材一体型の廃棄体の台座となる台座レールを前記処分坑道の床面から上方に向けて突出する態様で前記処分坑道の軸方向に沿って敷設するとともに、前記台座レールに定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に注水するための注水孔を前記台座レールの内部に設けたことを特徴とする廃棄体の埋設処分施設。
【請求項2】
前記注水孔は、前記処分坑道の軸方向に沿って設けられた主孔と、主孔から分岐して処分坑道の内周に沿って設けられた複数の枝孔とを有することを特徴とする請求項1に記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項3】
前記複数の枝孔の開口端部となる複数の吐出口は、前記処分坑道の軸方向において、前記緩衝材一体型の廃棄体の長さよりも短い間隔で開口したことを特徴とする請求項2に記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項4】
水圧が調整された水を前記注水孔から注水する注水手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項5】
前記注水手段は、水圧を調整する注水圧調整手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項6】
処分坑道の入口区間、さらには、処分坑道の途中の要所に、処分坑道の軸方向への地下水の流れを抑制する遮水プラグを設置したことを特徴とする請求項4または5に記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項7】
処分坑道に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、緩衝材一体型の廃棄体を埋設処分する廃棄体の埋設処分方法において、
前記緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に処分坑道を掘削する前の地下水圧と同等の圧力まで段階的に調整された水を注水することを特徴とする廃棄体の埋設処分方法。
【請求項8】
処分坑道の入口区間、さらには、処分坑道の途中の要所に、処分坑道の軸方向への地下水の流れを抑制する遮水プラグを設置することを特徴とする請求項7に記載の廃棄体の埋設処分方法。
【請求項1】
処分坑道に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、緩衝材一体型の廃棄体を埋設処分する廃棄体の埋設処分施設において、
前記処分坑道に前記緩衝材一体型の廃棄体を搬入する際に前記緩衝材一体型の廃棄体を搭載した搬送台車のガイドレールとなり、前記処分坑道に搬入した緩衝材一体型の廃棄体を定置する際に前記緩衝材一体型の廃棄体の台座となる台座レールを前記処分坑道の床面から上方に向けて突出する態様で前記処分坑道の軸方向に沿って敷設するとともに、前記台座レールに定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に注水するための注水孔を前記台座レールの内部に設けたことを特徴とする廃棄体の埋設処分施設。
【請求項2】
前記注水孔は、前記処分坑道の軸方向に沿って設けられた主孔と、主孔から分岐して処分坑道の内周に沿って設けられた複数の枝孔とを有することを特徴とする請求項1に記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項3】
前記複数の枝孔の開口端部となる複数の吐出口は、前記処分坑道の軸方向において、前記緩衝材一体型の廃棄体の長さよりも短い間隔で開口したことを特徴とする請求項2に記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項4】
水圧が調整された水を前記注水孔から注水する注水手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項5】
前記注水手段は、水圧を調整する注水圧調整手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項6】
処分坑道の入口区間、さらには、処分坑道の途中の要所に、処分坑道の軸方向への地下水の流れを抑制する遮水プラグを設置したことを特徴とする請求項4または5に記載の廃棄体の埋設処分施設。
【請求項7】
処分坑道に搬入され、定置された緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間にペレット状の緩衝材を充填し、その後、緩衝材一体型の廃棄体を埋設処分する廃棄体の埋設処分方法において、
前記緩衝材一体型の廃棄体と前記処分坑道との間に充填されたペレット状の緩衝材に処分坑道を掘削する前の地下水圧と同等の圧力まで段階的に調整された水を注水することを特徴とする廃棄体の埋設処分方法。
【請求項8】
処分坑道の入口区間、さらには、処分坑道の途中の要所に、処分坑道の軸方向への地下水の流れを抑制する遮水プラグを設置することを特徴とする請求項7に記載の廃棄体の埋設処分方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−1】
【図7−2】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図11−3】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−1】
【図7−2】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図11−3】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−11597(P2013−11597A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123506(P2012−123506)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
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