説明

廃棄物からの燃料の生産方法

【課題】本発明は、全ての種類の廃棄物の処理および使用の方法に関する。
【解決手段】廃棄物はゾーン温度照射および熱分離あるいは物質変換にさらされ、結果として生じる固体残さは高温溶解物に変換され、該廃棄物は、いくつかに分けて圧縮され、小型パケットを形成し、少なくとも1つの低温域と、合成ガスが廃棄物から生産される少なくとも1つの高温域とを有する温度処理域を、温度が増加する方向に通過し、該生産された合成ガスは、ガス透過性床および該床より高い状態の合成ガスの安定化ゾーンを通過し、次いで安定化ゾーンの外へ出され、該合成ガスは、後続反応において炭化水素分子に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初めに合成ガスが廃棄物から生産され、次いで該合成ガスが炭化水素に変換される方法に関する。生産される炭化水素は燃料として用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
近年の原油価格における展開は、上昇し続けている。原油価格がしばらくの間部分的に下落する場合であっても、長期的には原油価格は高いものと想定され、燃料生産の代替手段が、将来大きな関心となる。
【0003】
最も知られる代替的な燃料生産の方法は、フィッシャー・トロプシュ(Fischer−Tropsch)合成である。フィッシャー・トロプシュ法は、合成ガス(CO/H)の液体炭化水素への変換のための工業規模の方法であり、1925年以前にミュルハイム・アンデルルールにおいてフランツ・フィッシャー(Franz Fischer)および彼の同僚であるハンス・トロプシュ(Hans Tropsch)によって開発された。この方法は、ルールヒエミー株式会社(Ruhrchemie AG)によって1934年から工業規模で応用された。それは、CO/H混合物の、鉄又はコバルト触媒上での合成反応であり、パラフィン、アルケンおよびアルコールを形成する。
【0004】
フィッシャー・トロプシュ合成反応(重合)の化学的メカニズムは、主に長鎖の、わずかに分岐の(すなわち、基本的には線状の)炭化水素分子をもたらす。生成物の混合物では、異なる鎖長が見られる。C−C20の鎖長範囲が、燃料の生産には特に興味深い。鎖長は、触媒(促進剤を有する、コバルト、鉄)、合成条件(とりわけ、温度、合成ガスの組成、圧力)の選択によって調整することができる。第一のフィッシャー・トロプシュ合成生成物はその後、燃料のより高い収率と質となるように化学的に処理される(例えば、水素化分解法、異性化、すなわち、原油処理の方法)。
【0005】
主に、わずかにのみ分岐状炭化水素分子を形成する化学合成メカニズムの特性により、生成物は、中でも、高セタン価できわめて低い硫黄および芳香族化合物含有の高品質ディーゼル燃料として適している。鎖長の異なる炭化水素の生成物の混合物は、さらに、とりわけ高度に開発された原油精製法を適用することにより、蒸気圧、蒸留曲線に関して適している。これらの合成的に生産されたディーゼル燃料は、特に、低汚染でしたがって環境に優しいという利点を有する。
【0006】
現在、南アフリカはフィッシャー・トロプシュ反応による燃料要求の大部分にわたっている唯一の国である。ここでは、合成のための合成ガスは、石炭から生産される。
【0007】
ドイツでは、コーレン(Choren)社が、初めて炭素V処理によりバイオマスから合成ガスを、次いでフィッシャー・トロプシュ処理の助けにより燃料(いわゆる、サンディーゼル)を生産する方法を開発している。カルボV(Carbo−V)(登録商標)処理は、以下の部分処理を有する三段階ガス処理である:
− 低温ガス処理
− 高温ガス処理
− 吸熱燃焼流ガス処理。
【0008】
バイオマス(含水量15−20%)は、400から500℃の間の温度で、空気あるいは酸素で連続的に部分的に酸化(炭化)することにより第一処理段階で炭化される、すなわち、タール含有ガス(揮発性成分)および固体炭素(バイオコーク)に分解される。
【0009】
第二処理段階では、熱いガス化媒体を形成するために、半化学量論的に空気および/または酸素を用いて、可燃性材料の灰の溶融点より上で、タール含有ガスが燃焼室内で再酸化処理される。
【0010】
第三処理段階では、粉体燃料を形成するために粉々にされたバイオコークが、熱いガス化媒体中に吹き付けられる。粉体燃料およびガス化媒体は、それにより、ガス化反応炉内で吸熱して反応し、合成の粗ガス(systhesis crude gas)を形成する。次いで、これは、流れ(current、stream)および熱の生産のための可燃性ガスとして、あるいは、サンディーゼルの生産のためのフィッシャー・トロプシュ処理の助けによる合成ガスとしての対応する調節の後に、用いられることもできる。この処理の不利な点は、ガス化がいくつかの段階で起こり、バイオコークが積み上げられなければならないということである。さらに、この方法は全ての種類の廃棄物のガス化に適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、全廃棄物を用いることができる限り、廃棄物のガス化および、その結果としての燃料の合成を可能とする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。この方法の、可能な使用の目的は請求項10に示されている。従属請求項は、これにより、有利な発展を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によると、全ての種類の廃棄物の処理および使用の方法が提供され、ここでは、廃棄物は、ゾーン温度照射(zone−wise temperature impingement)および熱分離あるいは物質変換にさらされ、結果として生じる固体残さは高温溶解物に変換される。廃棄物は、いくつかに分けて圧縮され、小型パケット(compact packet)を形成し、少なくとも1つの低温域と、合成ガスが廃棄物から生産される少なくとも1つの高温域とを有する温度処理域を、温度が増加する方向に通過する。生産された合成ガスは、ガス透過性床(bed)および該床より高い状態の合成ガスの安定化ゾーンを通過し、次いで安定化ゾーンの外へ出され、合成ガスは、後続反応において炭化水素分子に変換される。この反応生成物は、好ましくは燃料、特に望まれるディーゼル燃料である。
【0014】
この方法の本質的な利点は、すべての種類の廃棄物、すなわち、処理された、処理されなかった、および汚染物質や有害物を含む廃棄物、さらにはバイオ廃棄物が、本発明に係る方法において、複雑な分離をすることなく用いられ得ることである。この種の方法は、サーモセレクト方法として先端技術において知られ、より詳細には、例えば、ヨーロッパ特許EP1187891B1、EP1252264B1、EP1377358B1、EP0790291B1、あるいはEP0726307B1に記載されている。これらのヨーロッパ特許の全ての記載内容は、ここに含まれる。
【0015】
有利な開発において、生産された合成ガスの少なくとも70%、好ましくは100%が、炭化水素への反応のために用いられる。従って、合成ガスの用いられていない部分は、処理方法の固有のエネルギー必要量を賄うために有利に用いられる。これは、この方法の中立なエネルギー平衡が保証されるという利点を伴う。さらに、この方法の本質的な利点は、準放射規制過程(quasi−emission−free course)が保証されるということである。
【0016】
さらに好適な実施例では、気体、液体、および/または固体の、合成ガスの炭化水素への反応の結果生じる副生成物が、合成ガス生産の高温域に戻されるので、フィッシャー・トロプシュ合成が、続いて処分を要するさらなる廃棄物なしに実施され得る。
【0017】
さらに好適な実施例では、フィッシャー・トロプシュ合成の副生成物は、この処理方法の固有のエネルギー必要量を賄うように用いられる。
【0018】
高収率を達成するために、反応は、10−30バールの圧力、200℃から350℃の温度範囲で、一般反応式
nCO+(2n+1)H → C2n+2+nH
によって、実施される場合に有利である。
【0019】
この反応は、フィッシャー・トロプシュ処理として先端技術において知られている。この点において、当業者に知られ、該先端技術において述べられる最適化された方法の条件、例えば、圧力、温度、および触媒系といった条件について述べられる。
【0020】
さらに、この方法が、炭化水素が平均で5から20の炭素原子を有し、可能な限り非分岐であるように制御される場合に有利である。フィッシャー・トロプシュ合成で、一般に、長鎖炭化水素の合成もまた可能であるが、長鎖炭化水素、例えばパラフィンは、液体燃料として用いられ得るには高すぎる融点を有する。しかしながら、平均で5から20の炭素原子を有する炭化水素は、合成ディーゼル燃料としての使用に非常に適している。
【0021】
ガス化方法から得られるフィッシャー・トロプシュ処理のための合成ガスは、水素に対して相対的に好ましくない一酸化炭素の体積比を有するので、重合反応の前に、一酸化炭素の水素に対する体積比が、シフト反応において水素寄りに移動する場合にさらに有利である。このシフト反応は、同様に、先端技術から当業者に知られ、最適化された反応条件と用いられた触媒について述べられる。
【0022】
さらに好適な実施例では、したがって、水素に対する一酸化炭素の体積比は、シフト反応において少なくとも1から1.5、好ましくは少なくとも1から2に調整される。
【0023】
さらに、上述した方法の使用は本発明とともに示されている。本発明によると、この方法は燃料の合成、好ましくはディーゼル燃料の合成に用いることができる。
【0024】
本発明による方法は、次に例を参照してより詳細に説明されるが、本発明をここで用いられる方法パラメータに限定するものではない。
【0025】
(方法制御の例)
本発明に係る方法は、それぞれ15t/hの廃棄物処理能力をそれぞれ有する二つのラインを備える、すなわち合計で30t/hの廃棄物処理能力を可能にするサーモセレクト施設を参照してより詳細に説明される。それにより、12MJ/kgの廃棄物の平均廃棄物発熱量が、稼働の基準である。施設の連続稼働の場合、それにより、体積組成38%のCO、体積で38%のH、および体積で14%のCOの、おおよそ30,000Nm/hの合成ガスが得られる。燃料生産は、フィッシャー・トロプシュ処理により達成される。フィッシャー・トロプシュ反応に好適なCO/Hの比を設定するために、COの一部は、シフト反応においてHに変換される。ここで結果として生じるCOは分離される。
CO+HO → H+CO
【0026】
合成ガス中の38%のCOのうち13%のCOは、シフト反応において変換され、すなわち、シフト反応後、25%のCOと51%のHを有する合成ガスが得られ、次いでフィッシャー・トロプシュ合成に用いられる。水素で濃縮され、フィッシャー・トロプシュ反応に好適なHに対するCOの比にされた合成ガスは、ディーゼル燃料に重合される。
25%CO+51%H => “ディーゼル”
燃料生産の全ての段階にわたる収率として、用いられた合成ガスの60%が達成される。これは、実験室条件下で最適化された方法として75%を示す文献値に非常に近い。COおよび水素の特有の容積重量は、物質平衡の計算の基準である。その式は、以下に示される。
21,000m/h(0.25・1.258kg/m+0.51・0.089kg/m)=7557kg/h
【0027】
合成ディーゼルの0.83kg/lの平均密度の場合、7,800l/hのディーゼルという量が生産される。したがって、2−ラインサーモセレクト設備では、7,800リットルのディーゼルが毎時生産され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ての種類の廃棄物の処理および使用の方法であって、
廃棄物はゾーン温度照射および熱分離あるいは物質変換にさらされ、結果として生じる固体残さは高温溶解物に変換され、
前記廃棄物は、いくつかに分けて圧縮され、小型パケットを形成し、少なくとも1つの低温域と、合成ガスが廃棄物から生産される少なくとも1つの高温域とを有する温度処理域を、温度が増加する方向に通過し、
前記生産された合成ガスは、ガス透過性床および前記床より高い状態の合成ガスの安定化ゾーンを通過し、次いで安定化ゾーンの外へ出され、
前記合成ガスは、後続反応において炭化水素分子に変換されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記生産された合成ガスのうち少なくとも70%、好ましくは80%、特に好ましくは100%が、炭化水素への反応に用いられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応に用いられない合成ガスの部分は、処理方法の固有のエネルギー必要量を賄うために用いられることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
気体、液体、および/または固体の、前記反応の結果生じる副生成物が、前記合成ガス生産の高温域に戻されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記戻された副生成物が、前記処理方法の固有のエネルギー必要量を賄うために用いられることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応は、200℃から350℃の温度範囲で、一般式
nCO+(2n+1)H → C2n+2+nH
に従って行われることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素は平均で5から20の炭素原子を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
一酸化炭素の水素に対する体積比は、シフト反応において、反応前に水素寄りに移動されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
水素に対する一酸化炭素の体積比は、前記シフト反応後に、少なくとも1:1.5、好ましくは少なくとも1:2であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つに記載の方法の燃料の合成のための使用。
【請求項11】
前記燃料はディーゼル燃料であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。

【公表番号】特表2010−501685(P2010−501685A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525961(P2009−525961)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007456
【国際公開番号】WO2008/025493
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509058623)テルモゼレクト アクチエンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】