説明

廃棄物のガス化溶融方法およびガス化溶融設備

【課題】灰の溶融スラグへの転換率を向上させ得る廃棄物のガス化溶融方法を提供する。
【解決手段】ガス化炉1で生成された廃棄物の熱分解ガスおよび灰をガス導入管2を介して溶融炉3に導き、その溶融室22で燃焼・溶融させる際に、ガス導入管2に、酸素富化空気供給装置32により空気に酸素を混合した酸素富化空気を供給するとともに、ガス導入管2から供給する酸素富化量を、供給される廃棄物を完全燃焼させるのに必要な酸素量の0.10〜0.15倍の範囲にする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解させた際に発生した熱分解ガスおよび灰を導き当該灰を溶融化させるガス化溶融方法およびガス化溶融設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみなどの廃棄物を熱分解して、そこから発生する残渣としての灰を安全に且つ無害化するガス化溶融炉においては、灰の溶融スラグ化への転換率を高めることが要求されている。
【0003】
すなわち、灰の溶融スラグへの転換率が低いと、ガス化溶融炉における溶融室や、その下流に設置される二次燃焼室の床面や側壁において、溶融室で溶融スラグ化されなかった灰が未溶融状態で付着・堆積することになり、例えば溶融室と二次燃焼室との間の連通部分が閉塞してガス化溶融炉の運転継続が不可能になってしまう。
【0004】
この灰の溶融スラグへの転換率を高める方法として、バーナ等により熱を加えることで溶融室内の温度を上げて、溶融スラグ化を促進させる方法があるが、外熱を加えることはエネルギー使用量の増大および浪費につながり、また溶融炉側での過剰な熱負荷により、溶融炉における耐火材を損傷させる原因となる。
【0005】
このような事態を回避するために、ガス化溶融炉において、溶融炉に酸素富化空気を吹き込み、溶融温度を維持する方法が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
このようなガス化溶融炉においては、溶融炉内の温度を溶融温度以上に維持するために、酸素富化空気が、直接、溶融炉内に供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−183914号公報
【特許文献2】特開2004−132667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の構成によると、酸素富化空気の供給箇所が溶融炉そのものであるとともに溶融炉の複数箇所に分散されて供給されており、溶融炉内の温度の維持はできるが、全体的に供給されているため、灰の溶融スラグへの転換率がそれほど大きく上がらないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、溶融炉内の温度を必要以上に上げ過ぎることなく灰の溶融スラグへの転換率を向上させ得る廃棄物のガス化溶融方法およびガス化溶融設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の廃棄物のガス化溶融方法は、ガス化炉で生成された廃棄物の熱分解ガスおよび灰をガス導入管を介して灰溶融炉に導き燃焼・溶融させる際に、
上記ガス導入管に、空気に酸素を混合した酸素富化空気を供給する方法であり、
また上記ガス導入管から供給する酸素富化空気の酸素富化量を、供給される廃棄物を完全燃焼させるのに必要な酸素量の0.10〜0.15倍の範囲にする方法である。
【0011】
さらに、本発明の廃棄物のガス化溶融設備は、廃棄物を熱分解するガス化炉と、このガス化炉で発生した熱分解ガスおよび灰をガス導入管を介して導き燃焼・溶融させる溶融炉とを有する廃棄物のガス化溶融設備であって、
空気に酸素を混合した酸素富化空気を供給するための酸素富化空気供給管を上記ガス導入管に接続したものであり、
また上記酸素富化空気供給管に酸素を供給する酸素供給管に酸素量調節手段を設けたものであり、
さらに上記酸素量調節手段により、ガス導入管から供給する酸素富化空気の酸素富化量を、供給される廃棄物を完全燃焼させるのに必要な酸素量の0.10〜0.15倍の範囲となるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
上記ガス化溶融方法およびガス化溶融設備によると、ガス化炉で発生した熱分解ガスおよび灰を溶融炉に導くガス導入管途中に、酸素富化空気を供給するようにしたので、ガス化炉およびガス導入管での温度を上げ過ぎることなく、しかも溶融炉全体に亘って温度を必要以上に上げ過ぎることもなく、溶融炉上流側からの高温燃焼が可能となるため、灰の溶融スラグへの転換率の向上を図ることができ、しかも溶融炉内での灰の付着を防止し得るとともに、既に溶融炉内に付着しているクリンカの除去も行うことができる。
【0013】
また、酸素富化量については、酸素量調節手段により調節が可能であるため、灰を溶融スラグ化するのに最適な温度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係るガス化溶融設備の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同ガス化溶融設備における酸素吹込箇所と灰の溶融スラグへの転換率との関係を説明するグラフである。
【図3】同ガス化溶融設備における酸素吹込量と灰の溶融スラグへの転換率との関係を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る廃棄物のガス化溶融方法およびガス化溶融設備を具体的に示した実施例に基づき説明する。
まず、廃棄物のガス化溶融設備を図1に基づき説明する。
【0016】
このガス化溶融設備は、概略的に、廃棄物を導き部分燃焼させることにより、つまり比較的低温でゆっくりと燃焼させることにより、熱分解ガスを発生させる流動床式ガス化炉(以下、単に、ガス化炉という)1と、このガス化炉1で発生した熱分解ガス、チャーなどの未燃分、および不燃分である灰をガス導入管2を介して導き燃焼・溶融させる溶融炉(灰溶融炉でもある)3とから構成されている。
【0017】
上記ガス化炉1は、縦型筒状にされた炉本体11と、この炉本体11内の下部に配置されるとともに上方に流動砂が充填されて流動床Sを形成するためのホッパー形状の底壁部12とから構成されており、この流動床Sの上方空間部が燃焼用空間(所謂、フリーボードである)Fにされ、また底壁部12の下方が流動床の形成を兼ねた燃焼空気を導入するための空気導入空間部13にされている。
【0018】
したがって、炉本体11の側壁部の下部には第1空気供給ノズル16が、上部には燃焼用空間Fに燃焼空気を供給するための第2空気供給ノズル17がそれぞれ設けられるとともに、中間位置には、廃棄物を供給するための廃棄物投入用シュート18が設けられている。
【0019】
上記溶融炉3は、熱分解ガス、未燃分および灰を導き燃焼させて高温でもって灰を溶融させる溶融室22および溶融された溶融スラグを取り出すスラグ取出室23並びに燃焼排ガスを導き排ガス中の未燃分を燃焼させるための二次燃焼室24を有する溶融炉本体21と、この溶融炉本体21の中央部に、すなわちスラグ取出室23の底壁部に形成されたスラグ取出口25から取り出される溶融スラグMを固形化するスラグ水砕化装置26とから構成されている。なお、溶融室22の下部には絞り部21aが設けられて、ガス化炉1から流入する灰の遠心力による炉壁への捕集効果が高められており、また溶融室22の上部には、図示しないが、助燃用バーナが設けられている。
【0020】
また、上記溶融炉本体21の溶融室22の上部および下部、並びに二次燃焼室24のくびれ部21bに燃焼空気を供給するための例えば第1〜第4燃焼空気供給ノズル(供給口ともいえる)27〜30がそれぞれ設けられるとともに、これら燃焼空気供給ノズル27〜30には、燃焼空気供給管31が接続されている。
【0021】
さらに、上記ガス導入管2の途中には、酸素富化空気を供給するための酸素富化空気供給装置32が接続されている。
この酸素富化供給装置32は、ガス導入管2の途中に設けられた酸素富化空気供給ノズル33に接続されて燃焼空気を供給するための燃焼空気供給管34と、この燃焼空気供給管34の途中に接続されるとともに途中に流量制御弁(酸素量調節手段の一例)35が設けられて酸素を供給するための酸素供給管36とから構成されている。
【0022】
そして、この酸素供給管36から燃焼空気供給管34に供給される酸素供給量すなわち酸素富化量は、供給された廃棄物を完全燃焼させるのに必要な酸素量の0.10〜0.15倍の範囲となるようにされている。
【0023】
ところで、酸素富化量の下限を0.10としたのは、0.10より少ないと、灰の溶融スラグへの転換率(転換効率、生成率などともいう)の向上があまり見られず、また上限を0.15としたのは、0.15より多いと、溶融炉3の上流側温度、具体的には、溶融室22内の上流側温度が上昇し過ぎて、溶融炉3の耐火材が損傷する惧れが生じるからである。
【0024】
次に、上述したガス化溶融設備におけるガス化溶融方法について説明する。
まず、廃棄物は、ガス化炉1内の流動床S上に供給されて、炉本体11の底部に供給される燃焼空気により部分燃焼が行われ、熱分解ガスが発生される。勿論、同時に、未燃分および不燃分である灰も発生する。
ガス化炉1で発生した熱分解ガス、未燃分および灰は、ガス導入管2を介して、溶融炉3に導かれるが、このガス導入管2には、燃焼空気供給管34より酸素富化空気が供給される。この酸素富化空気の酸素富化量は、上述したように、空気比が0.10〜0.15となるように調整されている。
【0025】
このガス導入管2より吹き込まれた酸素富化空気により、溶融炉3における溶融室22の上流側では高温燃焼が行われる。すなわち、溶融室22内に入った熱分解ガスは燃焼して当該溶融室22内を高温にするとともに、この高温によりガス化炉1からの灰が溶融される。
【0026】
ところで、酸素富化空気はガス導入管2の途中に吹き込まれるため、ガス化炉1およびガス導入管2でのガス温度の上げ過ぎを防止することができ、また酸素富化空気は溶融炉3内に直接供給されないため、溶融炉全体に亘って温度を必要以上に上げ過ぎる(高める)こともない。
【0027】
そして、溶融室22内で溶融された溶融スラグMは溶融炉本体21下部のスラグ取出室23に導かれるとともに中央部に形成されたスラグ取出口25から溶融炉本体21外に取り出される。
【0028】
このスラグ取出口25より取り出された溶融スラグMはスラグ水砕化装置26に導かれ、水により冷却・細片化されて水砕化スラグとして外部に排出される。
ここで、酸素富化空気の供給による作用効果について説明しておく。
【0029】
上述したように、ガス化炉1と溶融炉3との間のガス導入管2の途中に酸素富化空気を供給するようにしたので、ガス導入管2部分でのガス温度を上げ過ぎることなく、また酸素富化空気は溶融炉3内に直接供給されないため、溶融炉全体に亘って温度を必要以上に上げ過ぎる(高める)こともなく、溶融室22の上流部からの高温燃焼が可能となる。したがって、灰の溶融スラグへの転換率が最も高くなるとともに、溶融室22上部への灰(未溶融物)の付着を防止し得るとともに、既に付着している未溶融のクリンカの除去も可能となる。
【0030】
また、酸素富化量については、流量制御弁35により調節することができるため、灰を溶融スラグ化するのに最適な温度にすることができる。なお、最適温度については、一般的には、1300〜1400℃とされており、灰の性状によって若干異なるが、溶融炉3に設置した温度計や、スラグ取出口25の監視画像などから判断することができる。
【0031】
上述したように、廃棄物を部分燃焼させて熱分解ガスを発生させる際に生じた熱分解ガス、未燃分および不燃分である灰を導き燃焼・溶融させて、灰を溶融スラグとして取り出し得るガス化溶融設備において、ガス導入管2の途中に酸素富化空気を供給し得る酸素富化供給装置を設けたので、灰の溶融スラグへの転換率を向上させることができ、また溶融炉の溶融室などの各部における未溶融物の付着・堆積を防止し得るとともに既に付着・堆積している未溶融のクリンカの除去が可能となる。
【0032】
このような作用により、ガス化溶融設備を、長期間に亘って安定的に且つ連続的に運転することが可能となる。すなわち、溶融せずに系外へ排出される灰の量を減らすことができるため、溶融炉下流に設置される廃熱ボイラや排ガス冷却器での灰の付着・堆積による運転阻害を防止し得るとともに灰の無害化処理費用や、無害化処理後の埋立等による処分費用の削減が可能となる。
【0033】
ここで、灰の溶融スラグへの転換状態を、図2および図3のグラフに基づき説明しておく。
図2のグラフは、酸素吹込の有無および吹込箇所を変えた場合の灰の溶融スラグへの転換率を示すもので、(a)は酸素富化空気を吹き込まない場合、(b)は溶融炉に酸素富化空気を吹き込んだ場合(具体的には、第1〜第3燃焼空気供給ノズル27〜29に吹き込んだ場合)、(c)はガス導入管に酸素富化空気を吹き込んだ場合をそれぞれ示し、酸素富化空気を吹き込まない場合を100%とした際の相対評価を示している。なお、(b)と(c)における酸素富化量は、空気比が0.10の場合である。
【0034】
図2のグラフから、酸素富化空気を溶融炉3に直接吹き込むのではなく、ガス化炉1と溶融炉3との間のガス導入管2に吹き込むのが最も転換率が高いことが分かる。
また、図3のグラフは、酸素富化量つまり酸素吹込量を変えた場合の灰の溶融スラグへの転換率を示すもので、(a)は酸素吹込量が無い(ゼロである)場合を、(B)は酸素吹込量が空気比で0.05(酸素濃度が24.7%の空気)である場合を、(c)は酸素吹込量が空気比で0.10(酸素濃度が28.0%の空気)である場合をそれぞれ示す。なお、図2と同様に、酸素吹込量が無い場合を100%とした場合の相対評価を示す。
【0035】
図3のグラフから、酸素吹込量が空気比で0.05である場合には、酸素吹込量が無い場合とそれ程変わらないのに対して、酸素吹込量が空気比で0.10である場合には、灰の溶融スラグへの転換率が大きく向上しているのがよく分かる。
【符号の説明】
【0036】
F 燃焼用空間
S 流動床
1 ガス化炉
2 ガス導入管
3 溶融炉
21 溶融炉本体
22 溶融室
23 スラグ取出室
24 二次燃焼室
25 スラグ取出口
26 スラグ水砕化装置
32 酸素富化空気供給装置
34 燃焼空気供給管
35 流量制御弁
36 酸素供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化炉で生成された廃棄物の熱分解ガスおよび灰をガス導入管を介して灰溶融炉に導き燃焼・溶融させる際に、
上記ガス導入管に、空気に酸素を混合した酸素富化空気を供給することを特徴とする廃棄物のガス化溶融方法。
【請求項2】
ガス導入管から供給する酸素富化空気の酸素富化量を、供給される廃棄物を完全燃焼させるのに必要な酸素量の0.10〜0.15倍の範囲にすることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物のガス化溶融方法。
【請求項3】
廃棄物を熱分解するガス化炉と、このガス化炉で発生した熱分解ガスおよび灰をガス導入管を介して導き燃焼・溶融させる溶融炉とを有する廃棄物のガス化溶融設備であって、
空気に酸素を混合した酸素富化空気を供給するための酸素富化空気供給管を上記ガス導入管に接続したことを特徴とする廃棄物のガス化溶融設備。
【請求項4】
酸素富化空気供給管に酸素を供給する酸素供給管に酸素量調節手段を設けたことを特徴とする請求項3に記載の廃棄物のガス化溶融設備。
【請求項5】
酸素量調節手段により、ガス導入管から供給する酸素富化空気の酸素富化量を、供給される廃棄物を完全燃焼させるのに必要な酸素量の0.10〜0.15倍の範囲となるようにしたことを特徴とする請求項4に記載の廃棄物のガス化溶融設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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