説明

廃棄物の搬送用コンテナ

【課題】 有毒な廃棄物の搬送・保管に使用されるもので、容器本体と蓋部材との緊締を確実に行なうことができ、かつ操作が容易な廃棄物の搬送用コンテナを提供する。
【解決手段】 上部が開口する容器本体2と、容器本体2の開口を閉止する蓋部材10からなるもので、容器本体2の各側面部に沿って、動力部材によって上下動するロッド主体20が配置されるとともに、各ロッド主体20の先端部に基端部を軸支させ、前記蓋部材20に形成された係止片15と係合離脱するフック部24を先端部に有する開閉部材21が設けられている。したがって、前記ロッド主体20の上昇で、開閉部材のフック部24が、前記容器本体側面から離間しながら、係止片15と係合可能な高さに移動し、ロッド主体20を下降させると、フック部24を前記側面に近接し、前記係止片15とが密着係合し、容器本体2に蓋部材10が緊締する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PCBのような有毒性の廃棄物を、輸送もしくは保管するのに最適な廃棄物の搬送用コンテナに関するものである。
より具体的には、有毒性の廃棄物を安全に輸送、保管することができ、輸送時における不慮の事故においても、有毒性に起因する問題を発生させることがなく、コンテナの横倒れ時にも対応し得る廃棄物の搬送用コンテナであって、輸送用コンテナ製造技術に属するものである。
【背景技術】
【0002】
有毒性物質、特にPCBなどの塩素含有化合物を含んだ廃棄物は、処理能力のある施設で無害化する必要があるため、各地で発生したそれら廃棄物は、一定量になるまで保管され、その後、前記処理施設へ輸送され、無害化が図られている。
そのような有毒性物質を含んだ廃棄物は、発生場所での保管時は勿論のこと、特に、処理施設への輸送時に、周辺環境を汚染しないよう、また、取り扱い者の健康を損なわないように、万全の体制をとる必要がある。
【0003】
したがって、例えば、環境事業団では、輸送のための設備や取り扱いなどに対し、高度の安全性を確保する観点から、産業廃棄物などの搬送用コンテナに関し、外形、強度、材質などについて厳しい基準を定めている。
【0004】
このような要望に応えるものとして、例えば、特開2003−312774号公報(特許文献1)に記載された廃棄物の輸送、保管に使用する廃棄物用コンテナがある。
この廃棄物の輸送、保管に使用する廃棄物用コンテナは、上面のほぼ全域が開口し、内部に廃棄物を収容する容器部と、前記収容部の上面開口を開閉するための蓋部とを備え、前記蓋部により前記容器内部を密閉するために前記容器部と蓋部とを締結する締結手段を有することを特徴としている。
【0005】
また、特開2002−370790号公報(特許文献2)では、有毒物質を使用する機器類を輸送するのに好適な輸送容器として、有毒性の内容物を含む輸送物の格納室を、二重隔壁によって密閉し、前記二重隔壁相互の間隙に吸収体を装填したものが提案されている。
【0006】
この輸送容器によれば、輸送時に事故等が起きて、コンテナ内に格納されている機器あるいは輸送容器が破損し、機器の内容物である有毒液体が漏出した場合でも、二重隔壁内の吸収体がその有毒液体を吸収し、外部に散乱するのを完全に防ぎ、吸収体ブロックが付設されることで、吸収作用をさらに効率よく高めるとしている。
【0007】
さらにまた、本願の出願人が提案した廃棄物の搬送用コンテナが、特開2007−2404136号公報(特許文献3)において開示されている。
【0008】
この廃棄物の搬送用コンテナは、相対する開口面を接合したとき密封された中空直方体を形成する、下面が開口した上部カバーと、上面が開口した下部トレーとからなるものである。
前記上部カバーは、各コーナー部に開口面から突出する脚部を一体的に設けた支柱が配設固定され、前記下部トレーは、各コーナー部に前記脚部を受け入れるための脚部受入部が形成されるとともに、床面まで延出する前記脚部の先端面と相対する部位に、前記脚部を介して上部カバーと下部トレーとを緊締するための緊締手段が設けられている。
【0009】
かかる廃棄物の搬送用コンテナは、中空直方体を上部構造体と下部構造体とに上下に二分割した形態の上部カバーと下部トレーが、上部カバーに取付けられた支柱を、下部トレーを挟持しながら下部トレーの床面まで延出するとともに、支柱に連設する脚部を介して緊締手段によって、さらには、上部カバーと下部トレーとの接合部に設けられた締結部材によって、上部カバーと下部トレーとを確実に締結させるので、高度な気密性を確保することができ、搬送用コンテナの外部へ有毒性物質を漏洩させ、あるいは、流出させることのないものである。
また、その気密性は、上部カバーと下部トレーの接合部における凹凸形状の嵌合と緩衝材の併用によって、さらに向上させることができる。
【特許文献1】特開2003−312774号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−370790号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2007−204136号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1に開示された廃棄物用コンテナは、蓋部と容器部とを別々に構成し、蓋部の下面にシールパッキンを取付け、容器部の上面に縁部材およびストッパを設け、前記縁部材がシールパッキンに当接した状態で、蓋部に設けられたキャッチクリップおよび容器部に設けられた係止フックを用いて、容器部と蓋部とを締結している。
なお、容器部と蓋部とを締結する締結手段については、前記キャッチクリップと係止フック以外には、ネジを使用して締結できることが開示(特許文献1;段落0036参照)されているのみである。
【0011】
しかしながら、この締結手段は、ワンタッチ方式の締結金具であって、容器部と蓋部をそれらで締結するだけのものであるため、輸送中の事故に際し、蓋が外れて、コンテナに収容された内容物が漏洩するおそれを完全に否定することはできず、より安全性の高いコンテナが求められている。
【0012】
また、この締結手段は、特許文献1の段落0026で明らかなように、高さがおよそ1250mmのコンテナに装着されるもので、地表にある場合には、通常の背の高さ(およそ160〜170cm程度)の人であれば、締結手段を容易にハンドリングすることが可能である。
しかしながら、搬送用の車両などに搭載された場合、車両の荷台の高さが加算されるため、車両搭載時に蓋部を開閉する必要が生じた場合、作業者は、締結手段を構成する蓋部の上面に配置されたキャッチクリップに手が届かず、作業者がその都度荷台上に登るなど煩瑣な行動が要求される。
【0013】
また、特許文献2に記載の輸送容器は、輸送容器に車両などが衝突し、コンテナ内に格納された機器類が破損し、液漏れが生じた場合には、有毒物質が吸収体によって吸収されて外部に散乱することは防げるものの、輸送容器が90度横倒れした場合については、有毒物質の液漏れは完全に防止できないものである。
【0014】
さらに、特許文献3の廃棄物の搬送用コンテナは、先に述べた作用効果を奏するものであるが、下部トレーと上部トレーとを緊締する緊締手段が、四隅に分散配置されているので、作業工程の能率面からは必ずしもよいとは言い得ない。
【0015】
この発明はかかる現状に鑑み、PCBなどの塩素含有化合物などの有毒性物質からなる廃棄物の搬送に際し、万一、有毒性の廃棄物を搭載した車両が不測の事故に遭遇し、廃棄物を収容したコンテナが横転したとしても、コンテナの蓋が開いて前記廃棄物が外部に漏れ出し、飛散又は流出により環境を汚染することのない廃棄物の搬送用コンテナを提供せんとするものである。
【0016】
また、この発明の他の目的は、搬送用コンテナが所要の高さを有する車両などの荷台に搭載された状態でも、容器本体と蓋部材との緊締状態を、簡単かつ容易に解除することのできる廃棄物の搬送用コンテナを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
上部が開口する容器本体と、前記容器本体の開口を閉止する蓋部材から構成される廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記容器本体の各側面部に沿って、動力部材によって上下動するロッド主体が配置されるとともに、
前記各ロッド主体の先端部に基端部を軸支させ、先端部に前記蓋部材に形成された係止片と係合離脱するフック部を有する開閉部材が設けられたものであって、
前記ロッド主体の上昇によって、前記開閉部材のフック部を、前記側面から離間しながら、前記係止片と係合可能な高さに移動させたのち、前記ロッド主体を下降させることによって、前記フック部を前記側面に近接し、前記係止片と密着係合するよう構成されていること
を特徴とする廃棄物の搬送用コンテナである。
【0018】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記容器本体は、
開口部に補強材を、その一部を側面から外方に突出させた状態で配置させるとともに、前記補強材の容器本体側の表面に、弾性材が貼着固定されていること
を特徴とするものである。
【0019】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記蓋部材は、
四周の側縁部に、前記開閉部材のフック部と係合する切欠き部を有する係止片が、所要の間隔を存して設けられていること
を特徴とするものである。
【0020】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記ロッド主体は、
その下端部が、前記動力部材に連繋されていること
を特徴とするものである。
【0021】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記ロッド主体は、
少なくとも同一側面において隣接するロッド主体同士が、連結部材で相互に連結され、かつ前記連結部材が、前記動力部材と連繋されていること
を特徴とするものである。
【0022】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1又は4に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記動力部材は、
ラチエット機構からなること
を特徴とするものである。
【0023】
また、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1又は4,5に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記動力部材は、
電動機からなること
を特徴とするものである。
【0024】
また、この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1又は6,7に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記動力部材は、
その操作部が、前記容器本体の下方の所要部位に配置されたものであること
を特徴とするものである。
【0025】
また、この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記開閉部材は、
全体が帯状の板材で形成され、基端部の内側にクサビ状の案内ガイドが設けられるとともに、先端部を内側に屈曲させてフック部が一体的に形成されたもので、少なくとも前記板材と前記容器本体の側面間に配置された付勢部材によって、常時前記容器本体に付勢されていること
を特徴とするものである。
【0026】
また、この発明の請求項10に記載の発明は、
請求項9に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記フック部は、
同形の補強部材によって補強されていること
を特徴とするものである。
【0027】
また、この発明の請求項11に記載の発明は、
請求項9に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記開閉部材は、
帯状の板材の所要部位に縦方向の長孔が形成され、この長孔から頭部を有するストッパ部材を挿通させ、その先端部を前記容器本体の外側面に固定させ、開閉部材の容器本体側面からの離反間隔が制御されるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0028】
また、この発明の請求項12に記載の発明は、
請求項9に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記案内ガイドは、
前記容器本体の側面部の相対位置に設けられたピン部材と、上下方向において当接するもので、前記ロッド主体の上昇に伴って開閉部材を容器本体から離反する方向に、前記ロッド主体の下降に伴って開閉部材を容器本体に近接させるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0029】
また、この発明の請求項13に記載の発明は、
請求項11に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記ストッパ部材は、
頭部と帯状の板材との間に付勢部材が介装され、前記開閉部材が常時容器本体側に付勢されるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0030】
また、この発明の請求項14に記載の発明は、
請求項9に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記クサビ状の案内ガイドは、
片面に、下方に至るに従って傾斜角度が大きくなるよう傾斜面が形成されたものであること
を特徴とするものである。
【0031】
さらに、この発明の請求項15に記載の発明は、
上部が開口する容器本体と、前記容器本体の開口を閉止する蓋部材から構成される廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記容器本体の各側面部に沿って、動力部材によって上下動するロッド主体が、少なくとも1以上が配置されるとともに、
前記各ロッド主体の先端部に、前記蓋部材に形成された係止片と係合離脱するフック部を先端部に有する開閉部材の基端部が軸支され、
前記動力部材の操作部が、前記容器本体の下方の所要部位に配置され、
前記開閉部材が、付勢部材によって、常時容器本体側に付勢されるとともに、
前記開閉部材の内側にクサビ状の案内ガイドが配置され、
この案内ガイドと上下方向において当接するピン部材が、前記容器本体の相対する側面に設けられ、
前記ロッド主体を前記動力部材で上昇させることによって、前記開閉部材を、前記付勢力に抗して容器本体の側面から離間させながら、フック部を前記係止片と係合可能な高さに移動させ、前記ロッド主体を下降させることによって、前記フック部を前記容器本体側面に近接させ、前記蓋部材に設けた係止片と前記フック部とが密着係合するよう構成されていること
を特徴とする廃棄物の搬送用コンテナである。
【発明の効果】
【0032】
この発明にかかる廃棄物の搬送用コンテナは、動力部材によって上下動するロッド主体が、容器本体の各側面部に沿って配置されるとともに、前記各ロッド主体の先端部に、前記蓋部材に形成された係止片と係合離脱するフック部を有する先端部に開閉部材の基端部を軸支させ、前記ロッド主体の上昇によって、前記開閉部材のフック部を、前記側面から離間しながら、前記係止片と係合可能な高さに移動させたのち、前記ロッド主体を下降させることによって、前記フック部を前記側面に近接させ、前記係止片と密着係合するよう構成されている。
したがって、前記動力部材を操作し、ロッド主体を上方に移動させれば、当該ロッド主体と連動する開閉部材のフック部が容器本体の開口部から離れた状態で、蓋部材の係止片と係合可能な高さに移動する。
しかるのち、前記ロッド主体を下降させ、開閉部材が容器本体の側壁に沿って移動させると、前記フック部が蓋部材に形成された係止片と密着係合し、その状態でロッド主体をロックさせることによって、容器本体と蓋部材とを完全に一体化させた状態に保持することができる。
【0033】
その際、前記ロッド主体の上下動を、モータのような電動機やラチエット機構などの動力部材を使用することによって行なうことで、搬送車両に搬送用コンテナが搭載された状態であっても、容器本体と蓋部材との緊締を、きわめて簡単かつ容易に行なうことが可能とすることができる。
【0034】
また、前記動力部材の操作部を、前記容器本体の下方の所要部位に配置することによって、廃棄物の搬送用コンテナを搬送用車両に載せた状態であっても、作業員が動力部材を地上からでも操作することが可能となる。
【0035】
また、前記ロッド主体と連動する開閉部材を、容器本体の側面部に対して接近・離接させるに際し、開閉部材に設けた傾斜面を有するクサビ状の案内用ガイドと、容器本体の側面部に設けたピン部材とを、縦方向に当接移動させることによって、前記動作を確実に、しかも簡単な構成によって行なうことができる。
【0036】
また、前記開閉部材と容器本体の側面部との間にスプリングなどからなる付勢部材を介装させ、開閉部材を常時容器本体の側面側に付勢することによって、容器本体と蓋部材との緊締作業を円滑にかつ速やかに行なうことができる。
【0037】
また、開閉部材の傾動動作に際し、ストッパ部材を開閉部材に設けることによって、開閉部材が不必要に容器本体の側面部から離反せず、開閉部材を他の作業の支障にならない範囲内において動作させることができる。
【0038】
さらに、開閉部材の先端部に形成されるフック部を同形の補強部材によって補強することによって、容器本体と蓋部材との締結をより確実なものとし、万一、搬送車両の横転して、搬送用コンテナが地上に放り出されたとしても、容器本体から蓋部材が離脱するおそれがなく、収納物が外部に飛び出すことや漏れ出すことがない。
【0039】
さらにまた、前記容器本体の同一側面に配置されるロッド主体同士の基端部を、連結部材で連結することによって、複数のロッド主体を一つの動力部材で操作することが可能となるため、作業効率を向上させることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、この発明に係る廃棄物の搬送用コンテナの実施例を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
なお、この発明は実施例にのみ限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内において種々変更を加えることができるものである。
【0041】
この発明の廃棄物の搬送用コンテナ1は、図1で明らかなように、上部が開口する容器本体2と、この容器本体2の開口を閉止する蓋部材10から構成されている。
【0042】
前記容器本体2は、平面視が方形もしくは矩形状で、上部が開口したステンレスなどの鋼材からなるボックス状のもので、その上縁部、各側面部および底面部は、それぞれパイプ材などからなる補強材で補強されている。
また、その底面部には、フォークリフトの爪を挿入するためのポケット3,3が設けられている。
その大きさは、収容する廃棄物の種類によって異なるものの、その高さはおおむね2000mm前後であることが取り扱い上好ましい。
【0043】
また、前記容器本体2の四周のコーナー部には、所要形状の脚部材4が、それぞれ基端部を、容器本体2の底面部2aから突出させた状態で固着されている。
この脚部材4の先端部には、所要長さのアングル材5がそれぞれ一体的に付設されたものである。
前記アングル材5の先端部は、容器本体2に蓋部材10を被着させたとき、前記蓋部材10の上面部よりも所要長さ分が突出するよう形成されている。
なお、当該突出部には、ワイヤーもしくはフックを挿通させるための透孔5aが、形成されている。
【0044】
また、前記脚部材4は、容器本体2の各コーナー部に密着させて固着することによって容器本体2の強度を向上させることができる。
さらに、脚部材4の強度自体をも向上させることができるものであれば、その形状については特段の制限はないものである。
【0045】
さらにまた、前記容器本体2の側面上部は、特に図4で明らかなように、開口部の外側面に角パイプからなる補強材6を囲繞させて配置されている。
【0046】
この補強材6の容器本体2側の上面には、前記蓋部材10の開口縁部と当接する、所要の厚みを有するゴムなどからなる弾性材7を貼着固定することによって、緊締時における容器本体2と蓋部材10との気密性を向上させている。
【0047】
他方の蓋部材10は、図2および図3で明らかなように、前記容器本体2の開口部が閉止可能な板状体11の上面に、各パイプからなる補強材12,12・・・を格子状に配置して固着して一体化させて形成したものである。
【0048】
前記格子状に配置された補強材12のうち、所定箇所の補強材12の上面には、それぞれフォークリフトの爪、あるいはワイヤーなどを挿入するためのポケット13,13が設けられている。
また、四周に配置された補強材12の側面には、図3で明らかなように、所要間隔を存して凹状の切欠き部14が形成された係合片15が固着されている。
【0049】
前記蓋部材10に形成された係合片15の下方の、容器本体2の外側面部には、容器本体2と蓋部材10とを一体的に連結する緊締機構が配置されている。
【0050】
この緊締機構は、容器本体2の外側面に沿って、上下方向に移動可能に配置される所要長さのロッド主体20と、このロッド主体20の先端部に軸支される開閉部材21とから構成されるものである。
【0051】
前記ロッド主体20は、その基端部が、ラチエット機構23又は電動機からなる動力部材と連繋するものである。
なお、前記動力部材は、前記ロッド主体20を容器本体2の側面に沿って上下動させることができるものであれば、具体的な機構には特段の制限はないものである。
【0052】
実施例においては、図4で明らかなように、その上部と下部とをそれぞれブラケット22によって容器本体2の外側面と平行に保持され、下部のブラケット22,22間に水平回転するように介装された、ラチエットハンドル23aの操作によって、正転・逆転する公知のラチエット機構23の、ラチエット主体(図示せず)の中心部に形成されたネジ孔にロッド主体20の下端部をネジ結合させている。
【0053】
したがって、ラチエット主体と連動するラチエットハンドル23aを正転方向に操作すると、前記ラチエット主体が正方向に回転し、ネジ結合するロッド主体20が上方に移動する。
このラチエットハンドル23aによる操作を中止すると、戻り止めがラチエット歯と係合して、ラチエット主体がその位置に保持される。
【0054】
前記ロッド主体20の先端部に軸支される開閉部材21は、全体が帯状の板体で形成されるとともに、その先端部がL字状に折り曲げられてフック部24が一体的に形成されたものである。
この開閉部材21は、前記ロッド主体20の上昇によって、先端のフック部24が容器本体2の開口部から離反し、ロッド主体20の下降によって再び元の位置に戻るように構成されている。
【0055】
すなわち、開閉部材21は、常時は開閉部材21の裏面と前記容器本体2の外側面間に介装されたスプリングからなる付勢部材25によって、容器本体2側に付勢されている。
したがって、前記ロッド主体20と同様に、緊締時には、前記容器本体2の外側面とほぼ平行状態に保持される。
【0056】
同時に、この開閉部材21の裏面下方には、上方に至るに従って厚さが薄くなるよう傾斜面を形成したクサビ状の案内ガイド26が一体的に固着されるとともに、常時、前記案内ガイド26の上方の傾斜面と当接するピン部材27が、容器本体2の外側面に固定されている。
【0057】
したがって、前記ロッド主体20の上昇によって開閉部材21が上昇すると、案内ガイド26の傾斜面が、上方から下方に向かって肉厚になるよう形成されているので、開閉部材21、特に先端のフック部24は、付勢部材25の付勢力に抗して、図4(a)に示すように軸支点Pを支点として外側、すなわち、容器本体2の外側面から離反する方向に傾斜するよう構成されている。
【0058】
前記開閉部材21は、上方に移動するに従って傾斜角度(容器本体2の外側面からのフック部24の離反距離)は大きくなるが、余り大きくフック部24が容器本体2から離反すると、他のコンテナなどに触れるおそれがある。
したがって、頭部29を有するボルト状のストッパ部材28の先端部を、前記開閉部材21の所要部位に形成した上下方向に延びる長孔21aに貫通させ、その先端部を容器本体2の外側面に固定し、傾斜角度を一定の範囲に制御することが好ましい。
【0059】
その際、前記頭部29と開閉部材21の外側面との間にスプリングからなる付勢部材30を介装し、その付勢力によって、開閉部材21を常時容器本体2側に付勢することが好ましい。
【0060】
なお、前記開閉部材21の先端のフック部24は、所要の厚みと幅を有する板状体を内側にほぼ90度の角度で折り曲げて一体的に形成したものである。
したがって、前記蓋部材10に形成した係合片15と係合させて締め付けたとき、相応の負荷がフック部24に作用するので、好ましくは、当該フック部24と同形の補強部材24aを外側に設けることが望ましい。
【0061】
かかる構成の廃棄物の搬送用コンテナ1は、図4(b)に示すように、容器本体2の開口部に蓋部材10が装着され、容器本体2側に設けられた緊締機構のフック部24と、蓋部材10に設けられた係合片15とが係合し、容器本体2は蓋部材10によって密封されている。
この時、ロッド主体20の下端部は、下方のブラケット22よりも長く突出している。
【0062】
この状態で、図1で明らかなように、ラチエット機構23を構成するラチエットハンドル23aを手前方向に引いて正転させると、ラチエット主体も同時に回動する。
したがって、このラチエット主体とネジ結合しているロッド主体20が上方に移動し、図4(a)に示すように、ロッド主体20の上端部に軸支された開閉部材21を上方に押し上げる。
【0063】
前記開閉部材21は上方に押し上げられると、ピン部材27に沿って案内ガイド26が上方に移動する。
同時に、前記開閉部材21のフック部24は上方に持ち上げられるとともに、前記付勢部材25および付勢部材30の付勢力に抗して蓋部材10の係合片15から離れ、容器本体2と蓋部材10との緊締が解除される。(図4(b)→(a)参照)
【0064】
よって、蓋部材10を適宜手段によって容器本体2から取外し、廃棄物が収容されていた容器を取出し、あるいは新たに廃棄物を収容した容器を容器本体2内に収容したのち、再び蓋部材10を容器本体2の開口部に装着する。
【0065】
ついで、ラチエットハンドル23aを逆転させると、ラチエット主体も同時に回動するので、このラチエット主体とネジ結合しているロッド主体20が下方に移動し、ロッド主体20の上端部に軸支された開閉部材21を下方に引き下ろす。
【0066】
この開閉部材21が下方に移動すると、ピン部材27と案内ガイド26との係合も緩められ、付勢部材25および30の付勢力によって、開閉部材21が容器本体2側に引き寄せられ、先端のフック部24が、蓋部材10に設けた係合片15の切欠き部14と係合する。
したがって、さらにラチエットハンドル23aを逆転させると、ロッド主体20が下降して開閉部材21を下方に引き下げるので、容器本体2と蓋10とが気密に緊締される。(図4(a)→(b)参照)
【0067】
かかる構成からなる緊締機構は、適用する容器本体2の高さにもよるが、おおむねラチエットハンドル23aが、ほぼ容器本体2の高さの1/2以下の高さ、具体的には、容器本体2の下方の所要位置するように設定することによって、搬送用の車両に容器本体2を搭載しても、平均的な身長(約160〜170cm前後)を有する作業員であれば、容易にラチエットハンドル23aを操作することができる。
そのため、ラチエットハンドル操作のための特段の器具や装置を必要とせず、容器本体2と蓋部材10との緊締、開放を容易に実施することができる。
【0068】
また、この実施例においては、ロッド主体20の上下動を、ラチエット機構を使用して行うようにしているが、前記ロッド主体20を上下動させることができる手段であれば、手動,電動を問わず利用することができる。
さらに、各緊締機構を個別に操作して、前記容器本体2と蓋部材10との緊締・開放を行うこともできるが、全てを同時に操作することもできる。
【0069】
すなわち、少なくとも同一側面において所要間隔を存して隣接するロッド主体20,20の基端部を棒状の連結部材で互いに連結し、前記連結部材の中央部下面に設けた操作ロッド(図示せず)の基端部を動力部材に連結することによって、複数のロッド主体20,20を同時に上下動させ、効率的に作業を実施することができる。
【0070】
また、この緊締機構は、容器本体2の各側面に、具体的には、図2で明らかなように、長手方向で相対する側面にそれぞれ3個、短手方向で相対する側面にそれぞれ2個配置することによって、容器本体2と蓋部材10との緊締をより確実にすることができる。
【0071】
さらに、前記の実施例において、ロッド主体20を上下動させるラチエットハンドル23aは、不使用時は、図1に示すように、容器本体2の側面部と平行にセットされるものであるが、緊締時あるいは開放時に不用意に移動しないよう、適宜手段を用いて容器本体2に固定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明にかかる廃棄物の搬送用コンテナの一例を示す正面図である。
【図2】図1に示す搬送用コンテナの蓋部材を示す平面図である。
【図3】図2における蓋部材を示す正面図である。
【図4】図1に示す搬送用コンテナにおける要部の側面図で、(a)は容器本体と蓋部材とを分離する直前の状態を、(b)は容器本体と蓋部材との緊締状態を示すものである。
【図5】開閉部材の他の例を示す概略説明図であって、(a)は容器本体と蓋部材とを分離する直前の状態を、(b)は容器本体と蓋部材との緊締状態を示すものである。
【符号の説明】
【0073】
1 廃棄物の搬送用コンテナ
2 容器本体
4 脚部材
5 アングル材
6 補強材
7 弾性材
10 蓋部材
14 切欠き部
15 係合片
20 ロッド主体
21 開閉部材
21a 開閉部材に形成された長孔
22 ブラケット
23 ラチエット機構
24 フック部
25 付勢部材
26 案内ガイド
27 ピン部材
28 ストッパ部材
29 ストッパ部材の頭部
30 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口する容器本体と、前記容器本体の開口を閉止する蓋部材から構成される廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記容器本体の各側面部に沿って、動力部材によって上下動するロッド主体が配置されるとともに、
前記各ロッド主体の先端部に基端部を軸支させ、先端部に前記蓋部材に形成された係止片と係合離脱するフック部を有する開閉部材が設けられたものであって、
前記ロッド主体の上昇によって、前記開閉部材のフック部を、前記側面から離間しながら、前記係止片と係合可能な高さに移動させたのち、前記ロッド主体を下降させることによって、前記フック部を前記側面に近接し、前記係止片と密着係合するよう構成されていること
を特徴とする廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項2】
前記容器本体は、
開口部に補強材を、その一部を側面から外方に突出させた状態で配置させるとともに、前記補強材の容器本体側の表面に、弾性材が貼着固定されていること
を特徴とする請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項3】
前記蓋部材は、
四周の側縁部に、前記開閉部材のフック部と係合する切欠き部を有する係止片が、所要の間隔を存して設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項4】
前記ロッド主体は、
その下端部が、前記動力部材に連繋されていること
を特徴とする請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項5】
前記ロッド主体は、
少なくとも同一側面において隣接するロッド主体同士が、連結部材で相互に連結され、かつ前記連結部材が、前記動力部材と連繋されていること
を特徴とする請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項6】
前記動力部材は、
ラチエット機構からなること
を特徴とする請求項1又は4に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項7】
前記動力部材は、
電動機からなること
を特徴とする請求項1又は4,5のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項8】
前記動力部材は、
その操作部が、前記容器本体の下方の所要部位に配置されたものであること
を特徴とする請求項1又は6,7のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項9】
前記開閉部材は、
全体が帯状の板材で形成され、基端部の内側にクサビ状の案内ガイドが設けられるとともに、先端部を内側に屈曲させてフック部が一体的に形成されたもので、少なくとも前記板材と前記容器本体の側面間に配置された付勢部材によって、常時前記容器本体に付勢されていること
を特徴とする請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項10】
前記フック部は、
同形の補強部材によって補強されていること
を特徴とする請求項9に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項11】
前記開閉部材は、
帯状の板材の所要部位に縦方向の長孔が形成され、この長孔から頭部を有するストッパ部材を挿通させ、その先端部を前記容器本体の外側面に固定させ、開閉部材の容器本体側面からの離反間隔が制御されるよう構成されていること
を特徴とする請求項9に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項12】
前記案内ガイドは、
前記容器本体の側面部の相対位置に設けられたピン部材と、上下方向において当接するもので、前記ロッド主体の上昇に伴って開閉部材を容器本体から離反する方向に、前記ロッド主体の下降に伴って開閉部材を容器本体に近接させるよう構成されていること
を特徴とする請求項9に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項13】
前記ストッパ部材は、
頭部と帯状の板材との間に付勢部材が介装され、前記開閉部材が常時容器本体側に付勢されるよう構成されていること
を特徴とする請求項11に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項14】
前記クサビ状の案内ガイドは、
片面に、下方に至るに従って傾斜角度が大きくなるよう傾斜面が形成されたものであること
を特徴とする請求項9に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項15】
上部が開口する容器本体と、前記容器本体の開口を閉止する蓋部材から構成される廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記容器本体の各側面部に沿って、動力部材によって上下動するロッド主体が、少なくとも1以上が配置されるとともに、
前記各ロッド主体の先端部に、前記蓋部材に形成された係止片と係合離脱するフック部を先端部に有する開閉部材の基端部が軸支され、
前記動力部材の操作部が、前記容器本体の下方の所要部位に配置され、
前記開閉部材が、付勢部材によって、常時容器本体側に付勢されるとともに、
前記開閉部材の内側にクサビ状の案内ガイドが配置され、
この案内ガイドと上下方向において当接するピン部材が、前記容器本体の相対する側面に設けられ、
前記ロッド主体を前記動力部材で上昇させることによって、前記開閉部材を、前記付勢力に抗して容器本体の側面から離間させながら、フック部を前記係止片と係合可能な高さに移動させ、前記ロッド主体を下降させることによって、前記フック部を前記容器本体側面に近接させ、前記蓋部材に設けた係止片と前記フック部とが密着係合するよう構成されていること
を特徴とする廃棄物の搬送用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58813(P2010−58813A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227075(P2008−227075)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(591135440)日本通運株式会社 (39)
【出願人】(000227216)日通商事株式会社 (27)
【Fターム(参考)】