廃棄物処理方法
【課題】広範囲の水質汚濁性有機物質を含有する廃棄物を、温和な条件で短時間に、かつ大量のスラッジなどを発生する二次公害を発生させることなく、かつ安価に分解処理し得、さらに、ダイオキシン類なども含む種々の難分解性物質も含む水質汚濁性有機物質含有廃棄物であっても処理できる方法を提供する
【解決手段】水質汚濁性有機物質含有廃棄物を処理する方法において、廃棄物に鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を添加し、pH5以下の条件下で酸化剤により処理する方法と廃棄物を生物処理する方法とを組み合わせることを特徴とする水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法。
【解決手段】水質汚濁性有機物質含有廃棄物を処理する方法において、廃棄物に鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を添加し、pH5以下の条件下で酸化剤により処理する方法と廃棄物を生物処理する方法とを組み合わせることを特徴とする水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイオキシン類なども含む種々の難分解性物質も含む、水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法として、過酸化水素などの酸化剤と鉄塩を使用した酸化分解法、過酸化水素などの酸化剤と鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を併用する方法(特許文献7、8参照)、紫外線と過酸化水素を使用する方法(特許文献4参照)、オゾンによる分解法(特許文献2、6参照)、活性炭による吸着法、活性汚泥処理を代表とする各種生物学的処理法(特許文献1、3、5、6参照)、およびこれらを種々組み合わせた方法などが使用されてきた。
【0003】
しかしながら、これらの処理方法は以下のような問題を有する。酸化分解法による処理方法は鉄塩の存在下、酸化剤(通常過酸化水素)の酸化力を利用した分解方法であり、この場合過酸化水素1当量に対して鉄イオン(第一鉄イオン)を当量以上必要とするため、鉄塩の使用量が多く、処理後生成した第二鉄イオンは、アルカリにより中和した後、高分子凝集剤などを用いて凝集沈殿させ、スラッジとして回収される。このため、大量のスラッジが発生し、この処理に多大な費用が必要となる。その他に、処理しうる水質汚濁性有機物質の種類がある程度限定される等の問題点もある。
【0004】
過酸化水素分解能力を有する活性炭材料を併用する方法では、スラッジの発生量も少なく、非常に多種類の水質汚濁性有機物質を処理できる点で大幅な改善が認められるが、大量の過酸化水素を使用する点で多大なランニングコストが必要となる問題点がある。紫外線+過酸化水素による処理方法は紫外線発生に高価な装置を必要とし、又紫外線発生に電力が必要であり多大なランニングコストが必要となる問題点がある。オゾンによる分解処理法はオゾン発生に高価な装置を必要とし、又オゾン発生に電力が必要であり多大なランニングコストが必要となる問題点がある。
【0005】
活性炭による吸着方法は、一度に吸着できる水質汚濁性物質が少なく、大量の吸着剤を必要とし、吸着剤の再生などが煩雑であり、再生しない場合は大量の廃棄物となる問題がある。活性汚泥を使用する方法は、膨大な設備面積、長い処理時間を必要とし、維持管理が難しく、かつ処理できる水質汚濁性有機物質の種類が限定される等の問題がある。
【特許文献1】特開平10−151498号公報
【特許文献2】特開2001−104971号公報
【特許文献3】特開平7−185522号公報
【特許文献4】特開平8−141581号公報
【特許文献5】特開平9−122640号公報
【特許文献6】特開平7−31996号公報
【特許文献7】特開2003−245678号公報
【特許文献8】特開2004−74087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの処理方法における種々の問題点を解決し、広範囲の水質汚濁性有機物質を含有する廃棄物を、温和な条件で短時間に、かつ大量のスラッジなどを発生する二次公害を発生させることなく、かつ安価に分解処理し得、さらに、ダイオキシン類などの種々の難分解性物質を含む水質汚濁性有機物質含有廃棄物であっても処理できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題について鋭意検討した結果、該廃棄物に鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を加え、そのpHを5以下に調整し、酸化剤により該廃棄物を処理する方法と、該廃棄物を生物処理する方法を組み合わせることにより、効率良く分解できることを見出し本発明に到達した。即ち本発明は、水質汚濁性有機物質含有廃棄物を処理する方法において、廃棄物に鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を添加し、pH5以下の条件下で酸化剤により処理する方法(処理A)と廃棄物を生物処理する方法(処理B)とを組み合わせることを特徴とする水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法に関するものである。ここで、組み合わせの順序として、(1)処理Aの後、処理Bを行う方法、(2)処理Bの後、処理Aを行う方法、(3)処理A、処理B、処理Aの順に行う方法、(4)処理B、処理A、処理Bの順に行う方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、広範囲の水質汚濁性有機物質を含有する廃棄物を、大量のスラッジ発生などの二次公害を発生させることなく、温和な条件で、短時間でかつ安価に分解処理できるので産業上極めて有用な方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の水質汚濁性有機物質含有廃棄物は、例えば工場や事業所から排出される工業廃水、農業廃水などが挙げられる。これらの水質汚濁性有機物質含有廃棄物中には、ダイオキシン類、各種有機溶剤、含ハロゲン有機溶剤、含硫有機溶媒、含硫化合物、各種界面活性剤、各種アミン類、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アルカリを含む各種窒素化合物や、各種難分解性物質を含む場合がある。
【0010】
本発明に使用する活性炭の過酸化水素分解能力は、温度27℃、過酸化水素濃度0.5重量%の水溶液において、活性炭を0.5重量%添加し、60分間放置後、残存過酸化水素濃度を測定し、下式(1)で算出される過酸化水素分解率で表される。
過酸化水素分解率=(0.5−残存過酸化水素濃度(%))/0.5 × 100 (1)
【0011】
本発明では上記過酸化水素分解率が5%以上、好ましくは20%以上の活性炭を用いる。過酸化水素分解活性が高いほど、廃液中有機物の分解が効率的に進み、活性炭使用量を少なく、処理時間を短くでき有利である。過酸化水素分解率5%以下では大量の活性炭が必要とされる或いは非常に長い処理時間が必要となり、本発明の目的を達することができない。
【0012】
使用する活性炭は過酸化水素分解能力を有するものであればよく、その由来は特に限定されないが、通常、木材、セルロース、のこくず、木炭、ヤシガラ炭、パーム核炭、素灰などの植物質を原料としたもの、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭などの石炭系鉱物質を原料としたもの、石油残渣、硫酸スラッジ、オイルカーボンなどの石油系鉱物質を原料としたもの。蛋白質を原料としたもの、蛋白質を含有する汚泥もしくは廃棄物を出発原料としたもの、発酵生産の廃菌体を原料としたもの、ポリアクリロニトリル(PAN)を原料としたもの、などが好適に使用される。また、これら活性炭に処理を加えることにより、過酸化水素分解能力を付与する、或いは向上させて使用することもできる。
【0013】
また、使用する活性炭は微粉末であるほどその効果が大きく、特に平均粒子径1000μm以下、好ましくは平均粒子径300μm以下の微粉末を使用することで、その効果を高めることができる。これは微粉末とすることにより拡散性が良くなり、もって過酸化水素分解率が上がることに由来すると考えられる。平均粒子径が1000μm以上、例えば10mmであっても、過酸化水素分解能力があれば本発明の目的は達することができるが、使用量が多くなり、或いは処理時間を長くする必要があり、工業的操作性も勘案すると平均粒子径1000μm以下が好ましい。
【0014】
活性炭は、通常水分吸着などによりその吸着能力を減ずるが、本発明においては、活性炭を水などの分散媒中に懸濁して使用することができる。廃液への活性炭の供給方法には特に制限は無く、固体の活性炭をそのまま供給してもよいが、懸濁液をポンプなどで供給しても良い。工業的には、粉塵発生抑制、操作性の点で懸濁液としての供給の方が有利であり、懸濁液の流動性、操作性の点から、平均粒子径1000μm以下、好ましくは平均粒子径300μm以下の粉末の懸濁液として供給することが好ましい。
【0015】
本発明では過酸化水素分解能力のある活性炭とともに、酸化剤、鉄塩を用いる。これらは、通常の酸化処理法による廃液処理に用いられているものであれば良く、特に制限はなく、酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酢酸、過酢酸塩、過炭酸、過炭酸塩、過硫酸、過硫酸塩、過ホウ酸、過ホウ酸塩、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、オゾン、酸素、塩素、空気などが挙げられ、操作性、価格などの点から過酸化水素が好ましい。鉄塩としては、例えば硫酸第一鉄、塩化第一鉄などが挙げられるが、価格、汎用性の点から硫酸第一鉄が好ましい。酸化剤、鉄塩の使用量には特に制限はなく、必要とされる廃液の処理レベルにより適宜選択されるが、一般的には、酸化剤は過酸化水素に換算して、処理廃液に対して0.1〜10重量%、鉄塩は硫酸第一鉄に換算して、処理廃液に対して0.01〜5重量%である。本発明による廃液処理においてはpHを5以下とする。pHが高い場合は効果が著しく損なわれる。pHの調整法としては、特に制限はないが、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などを添加することが挙げられる。価格、操作性などから、硫酸が好適に使用される。
【0016】
本発明の生物処理は、特に制限はなく、通常の活性汚泥法の他に、深層曝気法、土壌式活性汚泥法、流動床式接触曝気法、各種散水法、さらに微生物を坦体表面に結合させた回転円盤法などがある。
【0017】
本発明では微生物処理において、固定化した微生物を使用することで、より高濃度の水質汚濁物質の処理が可能となり、さらに、廃水の濃度、成分変動などにも対応することが可能となり、微生物処理の効率向上、運転の安定化を行うことができる。さらに、微生物を固定化することで微生物の分離除去工程を省略することも可能となる利点がある。微生物の固定化方法としては特に制限されるものではなく、一般的なポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル、アガロースゲル、アルギン酸カルシウムゲル、光架橋性樹脂ゲル、ウレタン樹脂ゲル、界面重合マイクロカプセル、液中乾燥マイクロカプセル、相分離マイクロカプセル等を利用した各種包括固定化法、一般的なセルロース、デキストラン、アガロース、アルギン酸カルシウムゲル、カラギーナンゲルなどの多糖類およびその類似化合物、多孔性セラミックス、活性炭、ポリアクリルアミドゲル、光架橋性樹脂ゲル、ポリエステルやポリプロピレンやポリウレタンやポリオレフィンやアクリルなどの合成樹脂の加工品などが、各種付着固定化法が好適に使用できる。ここで、各種市販固定化坦体、たとえば、ユニチカ株式会社製の活性炭坦体やポリエステル繊維からなる「フォビオス坦体」、水道機工株式会社製のポリプロピレン製「スイオー坦体」やアクリル系繊維性「スイオーバイオフリンジ」、アライ化成製のウレタン系坦体「AQ−1」「AQ−3」やオレフィン系坦体「AQ−4」「AQ−5」「AQ−7」、神戸製鋼製の「アクア ゲル」やポリエチレン製「パビオムーバー」、関西ペイント株式会社製の光硬化性樹脂坦体「KPパール」などが好適に使用できる。
【実施例】
【0018】
以下実施例にて本発明を詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0019】
参考例1
TOC(全有機体炭素)2700ppm、TOD(全酸素消費量)11000ppmの発酵廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表1に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径100μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は、廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。過酸化水素無添加実験のTOC測定値に対する過酸化水素添加実験のTOC測定値の比率からTOC分解率を算出した。結果を表1に示した。さらに、過酸化水素0.1当量を添加して処理した液のBOD(生物化学的酸素消費量)測定を行った。結果を図1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
参考例2
参考例1に使用した過酸化水素未添加の発酵廃棄物処理液のBOD測定を行った。結果を図2に示した。参考例1の方がBODの立ち上がりが1日ほど早くなっており、生分解性の大幅な向上が確認された。
【0022】
実施例1
TOC1600ppm、TOD38000ppmのギ酸ナトリウムを含む難分解性廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表2に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径100μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。結果を表2に示した。さらに、過酸化水素を対TODで0.1当量を添加して処理した液の16mlを三菱瓦斯化学新潟工場活性汚泥の384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図3および表3に示した。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
比較例1
実施例1に使用した過酸化水素未添加の難分解性廃棄物を実施例1と同様に、活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図4に示した。実施例1の方が短時間にTOCが分解し、生分解性の大幅な向上が確認された。
【0026】
実施例2
TOC1100ppm、TOD50000ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表4に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径10μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。結果を表4に示した。さらに、過酸化水素0.1当量および0.3当量を添加して処理した液の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図5および表5に示した。
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
比較例2
実施例2に使用した過酸化水素未添加の難分解性廃棄物を実施例2と同様に、活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図6に示した。実施例2の方が短時間にTOCが分解し、生分解性の大幅な向上が確認された。
【0030】
実施例3
2000ppmに希釈した水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TOC1100ppm、TOD5100ppm)を難分解性有機アルカリ廃棄物のモデル液として、その1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表6に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径5μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化ナトリウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。結果を表4に示した。さらに、過酸化水素0.1当量および0.3当量を添加して処理した液の2mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥398mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図7および表7に示した。
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
比較例3
実施例3に使用した過酸化水素未添加の難分解性廃棄物を実施例3と同様に、活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図8に示した。実施例3の方が短時間にTOCが分解し、生分解性の大幅な向上が確認された。
【0034】
実施例4
TOC1000ppm、TOD50000ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表8に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径10μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。結果を表8に示した。
さらに、処理した液の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定する実験を2組実施し、その一方は、15時間目に遠心分離により微生物を除去し、その液の0.1Lを硫酸によりpHを2.7に調整した後、表9に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化ナトリウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。
結果を図9および表9に示した。15時間目の液をさらに過酸化水素−鉄塩−活性炭系触媒で処理することで、TOCの著しい低減が認められた。
【0035】
【表8】
【0036】
【表9】
【0037】
比較例4
実施例4の活性汚泥処理を15時間以後も継続した場合の活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図10に示した。15時間以後ほとんどTOCの分解が認められなかった。
【0038】
実施例5
TOC500ppm、TOD2500ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定する実験を2組実施し、その一方は、15時間目に遠心分離により微生物を除去し、その液の0.1Lを硫酸によりpHを2.7に調整した後、表9に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径10μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化ナトリウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。
結果を表10および図11に示した。15時間目の液をさらに過酸化水素−鉄塩−活性炭系触媒で処理することで、TOCの著しい低減が認められた。
【0039】
【表10】
【0040】
比較例5
実施例5の活性汚泥処理を15時間以後も継続した場合の活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図12に示した。15時間以後ほとんどTOCの分解が認められなかった。
【0041】
実施例6
TOC500ppm、TOD2500ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥の384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定する実験を2組実施し、その一方は、15時間目に遠心分離により微生物を除去し、その液の0.2Lを硫酸によりpHを2.7に調整した後、表11に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径100μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化ナトリウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。残った液量を元の難分解性有機廃棄物量に換算し、その16mlに相当する三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlあるいは三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384ml相当の微生物を遠心分離した後、得られた菌体を添加混合した後、20℃で毎分あたり、液量と同量の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定する実験を実施した。結果を図13に示した。15時間目の液をさらに過酸化水素−鉄塩−活性炭系触媒で処理することで、微生物処理によるTOCの著しい低減が認められた。
【0042】
【表11】
【0043】
比較例6
実施例6の活性汚泥処理を15時間以後も継続した場合の活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図14に示した。15時間以後ほとんどTOCの分解が認められなかった。
【0044】
実施例7
TOC55000ppm、TOD250000ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表12に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径100μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。さらに、処理した液の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlあるいは三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384ml相当の微生物を遠心分離した後、定法(バイオリアクター実験入門20〜22頁:学会出版センター)に準じてアクリルアミドで包括固定化したものと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図15に示した。
【0045】
【表12】
【0046】
比較例7
実施例7の活性汚泥処理を固定化していない活性汚泥を使用した場合の難分解性物質分解度合いを測定した。結果を図16に示した。実施例7の方が、短時間にTOCが分解し、固定化の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】参考例1のBOD濃度変化
【図2】参考例1のBOD濃度変化
【図3】実施例1のTOC残存率変化
【図4】比較例1のTOC残存率変化
【図5】実施例2のTOC残存率変化
【図6】比較例2のTOC残存率変化
【図7】実施例3のTOC残存率変化
【図8】比較例3のTOC残存率変化
【図9】実施例4のTOC残存率変化
【図10】比較例4のTOC残存率変化
【図11】実施例5のTOC残存率変化
【図12】比較例5のTOC残存率変化
【図13】実施例6のTOC残存率変化
【図14】比較例6のTOC残存率変化
【図15】実施例7のTOC残存率変化
【図16】比較例7のTOC残存率変化
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイオキシン類なども含む種々の難分解性物質も含む、水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法として、過酸化水素などの酸化剤と鉄塩を使用した酸化分解法、過酸化水素などの酸化剤と鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を併用する方法(特許文献7、8参照)、紫外線と過酸化水素を使用する方法(特許文献4参照)、オゾンによる分解法(特許文献2、6参照)、活性炭による吸着法、活性汚泥処理を代表とする各種生物学的処理法(特許文献1、3、5、6参照)、およびこれらを種々組み合わせた方法などが使用されてきた。
【0003】
しかしながら、これらの処理方法は以下のような問題を有する。酸化分解法による処理方法は鉄塩の存在下、酸化剤(通常過酸化水素)の酸化力を利用した分解方法であり、この場合過酸化水素1当量に対して鉄イオン(第一鉄イオン)を当量以上必要とするため、鉄塩の使用量が多く、処理後生成した第二鉄イオンは、アルカリにより中和した後、高分子凝集剤などを用いて凝集沈殿させ、スラッジとして回収される。このため、大量のスラッジが発生し、この処理に多大な費用が必要となる。その他に、処理しうる水質汚濁性有機物質の種類がある程度限定される等の問題点もある。
【0004】
過酸化水素分解能力を有する活性炭材料を併用する方法では、スラッジの発生量も少なく、非常に多種類の水質汚濁性有機物質を処理できる点で大幅な改善が認められるが、大量の過酸化水素を使用する点で多大なランニングコストが必要となる問題点がある。紫外線+過酸化水素による処理方法は紫外線発生に高価な装置を必要とし、又紫外線発生に電力が必要であり多大なランニングコストが必要となる問題点がある。オゾンによる分解処理法はオゾン発生に高価な装置を必要とし、又オゾン発生に電力が必要であり多大なランニングコストが必要となる問題点がある。
【0005】
活性炭による吸着方法は、一度に吸着できる水質汚濁性物質が少なく、大量の吸着剤を必要とし、吸着剤の再生などが煩雑であり、再生しない場合は大量の廃棄物となる問題がある。活性汚泥を使用する方法は、膨大な設備面積、長い処理時間を必要とし、維持管理が難しく、かつ処理できる水質汚濁性有機物質の種類が限定される等の問題がある。
【特許文献1】特開平10−151498号公報
【特許文献2】特開2001−104971号公報
【特許文献3】特開平7−185522号公報
【特許文献4】特開平8−141581号公報
【特許文献5】特開平9−122640号公報
【特許文献6】特開平7−31996号公報
【特許文献7】特開2003−245678号公報
【特許文献8】特開2004−74087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの処理方法における種々の問題点を解決し、広範囲の水質汚濁性有機物質を含有する廃棄物を、温和な条件で短時間に、かつ大量のスラッジなどを発生する二次公害を発生させることなく、かつ安価に分解処理し得、さらに、ダイオキシン類などの種々の難分解性物質を含む水質汚濁性有機物質含有廃棄物であっても処理できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題について鋭意検討した結果、該廃棄物に鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を加え、そのpHを5以下に調整し、酸化剤により該廃棄物を処理する方法と、該廃棄物を生物処理する方法を組み合わせることにより、効率良く分解できることを見出し本発明に到達した。即ち本発明は、水質汚濁性有機物質含有廃棄物を処理する方法において、廃棄物に鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を添加し、pH5以下の条件下で酸化剤により処理する方法(処理A)と廃棄物を生物処理する方法(処理B)とを組み合わせることを特徴とする水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法に関するものである。ここで、組み合わせの順序として、(1)処理Aの後、処理Bを行う方法、(2)処理Bの後、処理Aを行う方法、(3)処理A、処理B、処理Aの順に行う方法、(4)処理B、処理A、処理Bの順に行う方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、広範囲の水質汚濁性有機物質を含有する廃棄物を、大量のスラッジ発生などの二次公害を発生させることなく、温和な条件で、短時間でかつ安価に分解処理できるので産業上極めて有用な方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の水質汚濁性有機物質含有廃棄物は、例えば工場や事業所から排出される工業廃水、農業廃水などが挙げられる。これらの水質汚濁性有機物質含有廃棄物中には、ダイオキシン類、各種有機溶剤、含ハロゲン有機溶剤、含硫有機溶媒、含硫化合物、各種界面活性剤、各種アミン類、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アルカリを含む各種窒素化合物や、各種難分解性物質を含む場合がある。
【0010】
本発明に使用する活性炭の過酸化水素分解能力は、温度27℃、過酸化水素濃度0.5重量%の水溶液において、活性炭を0.5重量%添加し、60分間放置後、残存過酸化水素濃度を測定し、下式(1)で算出される過酸化水素分解率で表される。
過酸化水素分解率=(0.5−残存過酸化水素濃度(%))/0.5 × 100 (1)
【0011】
本発明では上記過酸化水素分解率が5%以上、好ましくは20%以上の活性炭を用いる。過酸化水素分解活性が高いほど、廃液中有機物の分解が効率的に進み、活性炭使用量を少なく、処理時間を短くでき有利である。過酸化水素分解率5%以下では大量の活性炭が必要とされる或いは非常に長い処理時間が必要となり、本発明の目的を達することができない。
【0012】
使用する活性炭は過酸化水素分解能力を有するものであればよく、その由来は特に限定されないが、通常、木材、セルロース、のこくず、木炭、ヤシガラ炭、パーム核炭、素灰などの植物質を原料としたもの、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭などの石炭系鉱物質を原料としたもの、石油残渣、硫酸スラッジ、オイルカーボンなどの石油系鉱物質を原料としたもの。蛋白質を原料としたもの、蛋白質を含有する汚泥もしくは廃棄物を出発原料としたもの、発酵生産の廃菌体を原料としたもの、ポリアクリロニトリル(PAN)を原料としたもの、などが好適に使用される。また、これら活性炭に処理を加えることにより、過酸化水素分解能力を付与する、或いは向上させて使用することもできる。
【0013】
また、使用する活性炭は微粉末であるほどその効果が大きく、特に平均粒子径1000μm以下、好ましくは平均粒子径300μm以下の微粉末を使用することで、その効果を高めることができる。これは微粉末とすることにより拡散性が良くなり、もって過酸化水素分解率が上がることに由来すると考えられる。平均粒子径が1000μm以上、例えば10mmであっても、過酸化水素分解能力があれば本発明の目的は達することができるが、使用量が多くなり、或いは処理時間を長くする必要があり、工業的操作性も勘案すると平均粒子径1000μm以下が好ましい。
【0014】
活性炭は、通常水分吸着などによりその吸着能力を減ずるが、本発明においては、活性炭を水などの分散媒中に懸濁して使用することができる。廃液への活性炭の供給方法には特に制限は無く、固体の活性炭をそのまま供給してもよいが、懸濁液をポンプなどで供給しても良い。工業的には、粉塵発生抑制、操作性の点で懸濁液としての供給の方が有利であり、懸濁液の流動性、操作性の点から、平均粒子径1000μm以下、好ましくは平均粒子径300μm以下の粉末の懸濁液として供給することが好ましい。
【0015】
本発明では過酸化水素分解能力のある活性炭とともに、酸化剤、鉄塩を用いる。これらは、通常の酸化処理法による廃液処理に用いられているものであれば良く、特に制限はなく、酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酢酸、過酢酸塩、過炭酸、過炭酸塩、過硫酸、過硫酸塩、過ホウ酸、過ホウ酸塩、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、オゾン、酸素、塩素、空気などが挙げられ、操作性、価格などの点から過酸化水素が好ましい。鉄塩としては、例えば硫酸第一鉄、塩化第一鉄などが挙げられるが、価格、汎用性の点から硫酸第一鉄が好ましい。酸化剤、鉄塩の使用量には特に制限はなく、必要とされる廃液の処理レベルにより適宜選択されるが、一般的には、酸化剤は過酸化水素に換算して、処理廃液に対して0.1〜10重量%、鉄塩は硫酸第一鉄に換算して、処理廃液に対して0.01〜5重量%である。本発明による廃液処理においてはpHを5以下とする。pHが高い場合は効果が著しく損なわれる。pHの調整法としては、特に制限はないが、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などを添加することが挙げられる。価格、操作性などから、硫酸が好適に使用される。
【0016】
本発明の生物処理は、特に制限はなく、通常の活性汚泥法の他に、深層曝気法、土壌式活性汚泥法、流動床式接触曝気法、各種散水法、さらに微生物を坦体表面に結合させた回転円盤法などがある。
【0017】
本発明では微生物処理において、固定化した微生物を使用することで、より高濃度の水質汚濁物質の処理が可能となり、さらに、廃水の濃度、成分変動などにも対応することが可能となり、微生物処理の効率向上、運転の安定化を行うことができる。さらに、微生物を固定化することで微生物の分離除去工程を省略することも可能となる利点がある。微生物の固定化方法としては特に制限されるものではなく、一般的なポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル、アガロースゲル、アルギン酸カルシウムゲル、光架橋性樹脂ゲル、ウレタン樹脂ゲル、界面重合マイクロカプセル、液中乾燥マイクロカプセル、相分離マイクロカプセル等を利用した各種包括固定化法、一般的なセルロース、デキストラン、アガロース、アルギン酸カルシウムゲル、カラギーナンゲルなどの多糖類およびその類似化合物、多孔性セラミックス、活性炭、ポリアクリルアミドゲル、光架橋性樹脂ゲル、ポリエステルやポリプロピレンやポリウレタンやポリオレフィンやアクリルなどの合成樹脂の加工品などが、各種付着固定化法が好適に使用できる。ここで、各種市販固定化坦体、たとえば、ユニチカ株式会社製の活性炭坦体やポリエステル繊維からなる「フォビオス坦体」、水道機工株式会社製のポリプロピレン製「スイオー坦体」やアクリル系繊維性「スイオーバイオフリンジ」、アライ化成製のウレタン系坦体「AQ−1」「AQ−3」やオレフィン系坦体「AQ−4」「AQ−5」「AQ−7」、神戸製鋼製の「アクア ゲル」やポリエチレン製「パビオムーバー」、関西ペイント株式会社製の光硬化性樹脂坦体「KPパール」などが好適に使用できる。
【実施例】
【0018】
以下実施例にて本発明を詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0019】
参考例1
TOC(全有機体炭素)2700ppm、TOD(全酸素消費量)11000ppmの発酵廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表1に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径100μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は、廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。過酸化水素無添加実験のTOC測定値に対する過酸化水素添加実験のTOC測定値の比率からTOC分解率を算出した。結果を表1に示した。さらに、過酸化水素0.1当量を添加して処理した液のBOD(生物化学的酸素消費量)測定を行った。結果を図1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
参考例2
参考例1に使用した過酸化水素未添加の発酵廃棄物処理液のBOD測定を行った。結果を図2に示した。参考例1の方がBODの立ち上がりが1日ほど早くなっており、生分解性の大幅な向上が確認された。
【0022】
実施例1
TOC1600ppm、TOD38000ppmのギ酸ナトリウムを含む難分解性廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表2に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径100μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。結果を表2に示した。さらに、過酸化水素を対TODで0.1当量を添加して処理した液の16mlを三菱瓦斯化学新潟工場活性汚泥の384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図3および表3に示した。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
比較例1
実施例1に使用した過酸化水素未添加の難分解性廃棄物を実施例1と同様に、活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図4に示した。実施例1の方が短時間にTOCが分解し、生分解性の大幅な向上が確認された。
【0026】
実施例2
TOC1100ppm、TOD50000ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表4に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径10μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。結果を表4に示した。さらに、過酸化水素0.1当量および0.3当量を添加して処理した液の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図5および表5に示した。
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
比較例2
実施例2に使用した過酸化水素未添加の難分解性廃棄物を実施例2と同様に、活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図6に示した。実施例2の方が短時間にTOCが分解し、生分解性の大幅な向上が確認された。
【0030】
実施例3
2000ppmに希釈した水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TOC1100ppm、TOD5100ppm)を難分解性有機アルカリ廃棄物のモデル液として、その1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表6に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径5μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化ナトリウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。結果を表4に示した。さらに、過酸化水素0.1当量および0.3当量を添加して処理した液の2mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥398mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図7および表7に示した。
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
比較例3
実施例3に使用した過酸化水素未添加の難分解性廃棄物を実施例3と同様に、活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図8に示した。実施例3の方が短時間にTOCが分解し、生分解性の大幅な向上が確認された。
【0034】
実施例4
TOC1000ppm、TOD50000ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表8に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径10μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。結果を表8に示した。
さらに、処理した液の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定する実験を2組実施し、その一方は、15時間目に遠心分離により微生物を除去し、その液の0.1Lを硫酸によりpHを2.7に調整した後、表9に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化ナトリウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。
結果を図9および表9に示した。15時間目の液をさらに過酸化水素−鉄塩−活性炭系触媒で処理することで、TOCの著しい低減が認められた。
【0035】
【表8】
【0036】
【表9】
【0037】
比較例4
実施例4の活性汚泥処理を15時間以後も継続した場合の活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図10に示した。15時間以後ほとんどTOCの分解が認められなかった。
【0038】
実施例5
TOC500ppm、TOD2500ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定する実験を2組実施し、その一方は、15時間目に遠心分離により微生物を除去し、その液の0.1Lを硫酸によりpHを2.7に調整した後、表9に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径10μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化ナトリウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。
結果を表10および図11に示した。15時間目の液をさらに過酸化水素−鉄塩−活性炭系触媒で処理することで、TOCの著しい低減が認められた。
【0039】
【表10】
【0040】
比較例5
実施例5の活性汚泥処理を15時間以後も継続した場合の活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図12に示した。15時間以後ほとんどTOCの分解が認められなかった。
【0041】
実施例6
TOC500ppm、TOD2500ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥の384mlと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定する実験を2組実施し、その一方は、15時間目に遠心分離により微生物を除去し、その液の0.2Lを硫酸によりpHを2.7に調整した後、表11に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径100μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化ナトリウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。残った液量を元の難分解性有機廃棄物量に換算し、その16mlに相当する三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlあるいは三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384ml相当の微生物を遠心分離した後、得られた菌体を添加混合した後、20℃で毎分あたり、液量と同量の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定する実験を実施した。結果を図13に示した。15時間目の液をさらに過酸化水素−鉄塩−活性炭系触媒で処理することで、微生物処理によるTOCの著しい低減が認められた。
【0042】
【表11】
【0043】
比較例6
実施例6の活性汚泥処理を15時間以後も継続した場合の活性汚泥による難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図14に示した。15時間以後ほとんどTOCの分解が認められなかった。
【0044】
実施例7
TOC55000ppm、TOD250000ppmのメタクリル酸などを含む難分解性有機廃棄物の1Lを、硫酸によりpHを2.7に調整した後、表12に示した硫酸第一鉄7水塩、石炭系活性炭材料(平均粒子径100μm)を加え、過酸化水素を8時間かけて滴下した。表中各成分の濃度は廃棄物に対する値である。処理温度は20℃とした。過酸化水素の滴下終了後、水酸化カルシウムでpHを中性とした後、一部を濾別してろ過液についてTOC測定を行った。同時に過酸化水素を添加せずに同様の実験を行い、TOC測定を行った。参考例1と同様にTOC分解率を算出した。さらに、処理した液の16mlを三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384mlあるいは三菱瓦斯化学(株)新潟工場の活性汚泥384ml相当の微生物を遠心分離した後、定法(バイオリアクター実験入門20〜22頁:学会出版センター)に準じてアクリルアミドで包括固定化したものと混合し、20℃で400ml/分の通気をしながら、適宜TOC測定を行い、難分解性物質の分解度合いを測定した。結果を図15に示した。
【0045】
【表12】
【0046】
比較例7
実施例7の活性汚泥処理を固定化していない活性汚泥を使用した場合の難分解性物質分解度合いを測定した。結果を図16に示した。実施例7の方が、短時間にTOCが分解し、固定化の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】参考例1のBOD濃度変化
【図2】参考例1のBOD濃度変化
【図3】実施例1のTOC残存率変化
【図4】比較例1のTOC残存率変化
【図5】実施例2のTOC残存率変化
【図6】比較例2のTOC残存率変化
【図7】実施例3のTOC残存率変化
【図8】比較例3のTOC残存率変化
【図9】実施例4のTOC残存率変化
【図10】比較例4のTOC残存率変化
【図11】実施例5のTOC残存率変化
【図12】比較例5のTOC残存率変化
【図13】実施例6のTOC残存率変化
【図14】比較例6のTOC残存率変化
【図15】実施例7のTOC残存率変化
【図16】比較例7のTOC残存率変化
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質汚濁性有機物質含有廃棄物を処理する方法において、廃棄物に鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を添加し、pH5以下の条件下で酸化剤により処理する方法(処理A)と廃棄物を生物処理する方法(処理B)とを組み合わせることを特徴とする水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法。
【請求項2】
処理Aの後、処理Bを行う請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
処理Bの後、処理Aを行う請求項1記載の処理方法。
【請求項4】
さらに処理Aを行う請求項2記載の処理方法。
【請求項5】
さらに処理Bを行う請求項3記載の処理方法。
【請求項6】
生物処理が、固定化微生物を使用する請求項1記載の処理方法。
【請求項7】
活性炭素材料が、温度27℃、過酸化水素濃度0.5重量%の水溶液において、活性炭材料を0.5重量%添加した時の60分後の過酸化水素分解率が5%以上の過酸化水素分解能を有するものである請求項1記載の処理方法。
【請求項8】
活性炭素材料が、平均粒子径1000μm以下の微粉末である請求項1の処理方法。
【請求項9】
活性炭素材料が、平均粒子径1000μm以下の微粉末の懸濁液である請求項1記載の処理方法。
【請求項1】
水質汚濁性有機物質含有廃棄物を処理する方法において、廃棄物に鉄塩および過酸化水素分解能力を有する活性炭素材料を添加し、pH5以下の条件下で酸化剤により処理する方法(処理A)と廃棄物を生物処理する方法(処理B)とを組み合わせることを特徴とする水質汚濁性有機物質含有廃棄物の処理方法。
【請求項2】
処理Aの後、処理Bを行う請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
処理Bの後、処理Aを行う請求項1記載の処理方法。
【請求項4】
さらに処理Aを行う請求項2記載の処理方法。
【請求項5】
さらに処理Bを行う請求項3記載の処理方法。
【請求項6】
生物処理が、固定化微生物を使用する請求項1記載の処理方法。
【請求項7】
活性炭素材料が、温度27℃、過酸化水素濃度0.5重量%の水溶液において、活性炭材料を0.5重量%添加した時の60分後の過酸化水素分解率が5%以上の過酸化水素分解能を有するものである請求項1記載の処理方法。
【請求項8】
活性炭素材料が、平均粒子径1000μm以下の微粉末である請求項1の処理方法。
【請求項9】
活性炭素材料が、平均粒子径1000μm以下の微粉末の懸濁液である請求項1記載の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−187725(P2006−187725A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1306(P2005−1306)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】
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