説明

廃棄物制御装置

液体ジェット手術切開装置10及びその使用方法が記載されている。この装置は、 供給すべき切開流体14を貯留する流体リザーバ12と、液体ジェット手術切開器具へ切開流体を供給するポンプ16と、液体ジェット手術切開器具20と、廃棄物キャニスター24に操作可能に接続され、廃棄切開流体14及び捕捉くずを受け取りかつ排出するドレン導管22とを備え、廃棄物キャニスターは、廃棄物キャニスターに作用的に接続された真空手段26を有して、真空を廃棄物キャニスターの内部及びドレン導管に付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物 (waste)、特に、これに限定はされないが、液体ジェット手術的器具切開装置 (liquid jet surgical instrument cutting apparatus) から出る廃棄物を取り扱うための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の手術技術では、いわゆるウォーターメス (water scalpel) と称されるものが用いられている。ウォーターメスは、液体の細いジェットが非常に高圧で用いられもので、先端を持ったメスに替わって、組織の切開及び/又は除去をすることができる。このような高圧ジェット切断システムを備える装置は通常、例えば食塩水といった滅菌切開液を貯留するリザーバと、前記切開流体を手持ちタイプの切開器具に供給する高圧ポンプとを備える。切開器具は通常ドレン導管を有し、該ドレン導管が、切開後に前記高圧ジェットを捕捉して、例えば使用済みの切開流体及び繊維くず (tissue debris) を手術を施術されているところから運び出す。この手術処置は例えば、前記手持ちタイプの器具内のベンチュリ装置の開口に入り込む前記液体ジェットの、前記ドレン導管の入り口におけるベンチュリ効果によって生ずるバキュームによって実施される。
【0003】
液体ジェット手術切開器具の一例は特許文献1に記載されており、ここにその文献番号を記すことでその内容は本願に含まれるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第 WO 2003/045259 号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の液体ジェット手術切開装置の問題は、ウォーター切開ジェットが停止すると、前記ベンチュリ効果が、すなわち結果的に前記バキュームの発生が、停止し、液体ジェットが再度スタートするまで前記ドレン導管内に前記くずが残ってしまう可能性があるという点にある。手持ちタイプの器具が下向きの位置となると、廃棄くずが手術室の床上に落下する可能性があり、生物学的災害 (biohazard) をもたらすおそれがある。手持ちタイプの器具が例え廃棄くずを床上に落とす姿勢とならないとしても、ウォータージェットの再スタートにより、該液体ジェットの再スタートに続いて前記ドレン導管がクリアーとなるまで、しぶきを飛ばしまた跳ね返りの原因となりかねない。さらに、廃棄物は、ドレン導管のコイル状巻きつけ、あるいは多過ぎるくず量による詰まりにより、ドレン導管内に留まることもある。
【0006】
本発明の目的は、従来の液体ジェット手術的切開器具装置の上述した問題を最小化あるいは解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴によれば、液体ジェット手術切開装置が提供される。該装置は、供給すべき切開流体を貯留する流体リザーバと、液体ジェット手術切開器具へ前記切開流体を供給するポンプと、液体ジェット手術切開器具と、廃棄切開流体及び捕捉くずを受け取りかつ排出するドレン導管とを備えてなる。ドレン導管は、廃棄物キャニスターに操作可能に接続され、該廃棄物キャニスターが、該廃棄物キャニスターに作用的に接続された真空発生手段を有して真空を前記廃棄物キャニスターの内部及びドレン導管に付与する。
【0008】
本発明は、前記廃棄物キャニスター及びドレン導管に真空を付与する。この真空は、液体ジェットが流れているか否かに依らず、該真空により連続した排出力 (continuous draining impetus) が前記ドレン導管に付与されるように付与される。あるいは、この真空手段は、液体ジェットが停止した後の一定時間運転されるよう、そしていかなる廃棄切開流体及び捕捉くずもドレン導管から廃棄物キャニスターに運び出されるように制御することも可能である。
【0009】
真空手段としては、例えば電動真空ポンプといった適宜な何れのタイプの真空ポンプでよく、あるいは、例えば病院に固定設置されている適宜真空システムの流通路 (off-take) であってもよい。
【0010】
望ましくは、廃棄物キャニスターは、疎水性フィルタ及び抗菌フィルタといった適宜なフィルタ手段を備える。フィルタ手段は、廃棄物キャニスターと真空手段との間で廃棄物キャニスターの排出口に設けられ、バクテリアの排出及び撒き散らしを防止する。このような構成は真空手段を生物学的問題 (bioburden) から守ることにもなる。
【0011】
フィルタが匂いフィルタを含んでいてもよい。
【0012】
廃棄物キャニスターは適宜なバルブ手段を介してドレン導管に対する接続・絶縁が可能である。
【0013】
廃棄物キャニスターはゲル化剤あるいは内容廃棄物を固化させるその他の手段を備えることが出来、この場合、収集した廃棄物の水分を減じて固形化し、その後の廃棄を容易にすることができる。
【0014】
廃棄物キャニスターは、ドレン導管と自身との間に管状部を有していてもよい。管状部は、廃棄物キャニスターが満杯になって処分することが必要となった際に該管状部を密封するクランプを受け入れる。
【0015】
廃棄物キャニスターが満杯になった際に接続解除して密閉するために、クランプに代えて、例えば逆止弁、手動閉止弁、あるいは自動閉止弁を用いてもよい。
【0016】
本発明に係る装置の一実施例では、廃棄物キャニスターは圧力監視手段を取り付けるためのポートを備えていてもよい。第2の圧力監視手段を 廃棄物キャニスターからの流体出口に設けられたフィルタと、例えば真空ポンプとの間の位置に設けても良い。廃棄物キャニスターに存在する真空が、第2の圧力監視手段により記録されたそれに対して低下した場合、キャニスターが満杯であって交換の必要があることを知らせることができる。他方、廃棄物キャニスター内及び第2の圧力監視手段が比較的高い真空値を示したときは、ドレン導管がよじれたか詰まったこととを、及び廃棄物キャニスター内部で廃棄流体が排出されないでいることを知らせることができる。
【0017】
本発明の第2の特徴によっては、液体ジェット手術切開装置の使用方法が提供され、該方法は、供給すべき切開流体を貯留する流体リザーバを準備する段階と、前記切開流体を液体ジェット手術切開器具に供給するためのポンプを準備する段階と、液体ジェット手術切開器具を準備する段階と、廃棄切開流体及び捕捉くずを受け取りかつ排出するためのドレン導管を準備する段階と、を有し、さらに、前記ドレン導管を廃棄物キャニスターに操作可能に接続し、かつ前記廃棄物キャニスターに真空発生手段を操作可能に接続して、真空を前記廃棄物キャニスターの内部及び前記ドレン導管に付与する工程と、を備えてなる。
【0018】
この方法は、手術が実施されている間、前記真空手段を常に作動させる段階を有していてもよく、あるいは、液体切開ジェットが再発生される前にドレン導管を廃棄切開流体及びくずから空とすることを保証するために、真空手段の作動の停止を液体切開ジェットの停止後所定時間まで遅延させる段階を有していてもよい。
【0019】
本発明による方法は、廃棄物キャニスターが満杯であるか、あるいは修正の必要な欠陥がないかを知るために、廃棄物キャニスター及び/又は真空ポンプに圧力感知手段を設ける段階を含んでいてもよい。
【0020】
本発明をより完全に理解するために、以下、添付の図面を単なる参照として本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態による装置の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による装置の概略図である。
【0022】
両図において共通の特徴的構成部には同一参照符号を付してある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明の第1の実施形態による装置10の概略図を示す。該装置は、液体ジェット切開流体14の補給材料を貯留するリザーバ12と、前記流体14を手持ちタイプの液体ジェット手術切開器具20に供給するための高圧ポンプ16と、ドレン導管22と、廃棄物キャニスター24と、真空ポンプ26とを備えてなる。図1においては、前記リザーバ12、ポンプ16、及び液体ジェット手術切開器具は導管30によって接続されている。該液体ジェット手術切開器具のドレンシステムに関しては、ジェットノズル32及びベンチュリ・イジェクタ・アッセンブリ34の機能的特徴のみを説明する。ベンチュリ・イジェクタ・アッセンブリ34はベンチュリポート36を備える。ベンチュリポート36内にはノズル32から高圧液体ジェット38が噴き出される、またベンチュリポート36はシュラウド40により囲まれている。ベンチュリポート36の外面44とシュラウド40の内面46との間の空間には、噴き出されている液体切開ジェット38によって真空が発生しており、この真空によって、廃棄切開流体14及び施術中の手術によって生ずるくず(図示せず)は、ベンチュリポート内に、そしてまたドレン導管22内に引き込まれる。ドレン導管22は閉止バルブ50を介して廃棄物キャニスター24に接続しており、この閉止バルブによって、廃棄する際、廃棄物キャニスターを取り外せるようになっている。廃棄物キャニスターにはまた、取り込まれた廃棄流体14(及びくず)を固形化するためのゲル化剤52が設けられている。廃棄物キャニスターはガス状流体のための出口ポート54を有し、該ポート54に接続されたハウジング59内には、疎水性フィルタ56及び抗菌フィルタ58(図示しないが、匂いフィルタを設けてもよい)が設けられ、液体及びバクテリアが真空ポンプ26によって該廃棄物キャニスター24から引き出されないようにされている。前記真空ポンプ26は、第2の閉止バルブ60を介して接続されており、これにより該真空ポンプ26は、満杯となった廃棄物キャニスター24の処理後も再使用可能である。該真空ポンプからの排気62には、適宜なフィルタ及び消音システム(図示せず)を適用することも可能である。
【0024】
作動中にあっては、真空ポンプ26によって廃棄物キャニスター24及びドレン導管22内に真空が生じ、この真空により、イジェクタ・アッセンブリ34から導管22を介して廃棄物キャニスター24内へ至る廃棄切開流体14及び廃棄くずの流れをアシストする。真空ポンプ26は、流体ジェット38が発生しているか否かに拘わらず、イジェクタアッセンブリから導管22を介しての廃棄物キャニスター24までの流体流れが生ずるよう、手術中常時作動とすることができる。従って、このように作動させた場合には、ドレン導管22内を常時空にできる。
【0025】
あるいは、真空ポンプは、高圧ポンプ16により発生させられる流体ジェット38の停止後、所定時間連続運転させてもよい。従って、高圧ポンプ16及び真空ポンプ26を制御する制御システム(図示せず)は、高圧ポンプ16の停止又はジェット38の停止と、真空ポンプ26の停止との間の作動遅延に関して統合的な制御を行うことが可能である。このように、ドレン導管22内は、流体ジェット38の停止後、常時空になる。
【0026】
図2は、図1に示したものと類似した、本願発明の第2の実施形態による装置100のシステムを示す。本実施形態による装置は、図1に示したものと基本的な装置構成及び機能は同様であるが、廃棄物キャニスター24がさらに圧力計104を取り付けるためのポート102を有し、かつ、フィルタハウジング59と真空ポンプ26と間には第2の圧力計110を取り付けるための適宜な接続部106を有している。これら2つの圧力計の目的は、廃棄物キャニスター24が満杯となったか、あるいは他の問題が該ドレンシステムに生じていないかを示すことである。例えば、圧力計104が圧力計110よりも著しく低い真空レベルを示すときは、キャニスターが満杯である指標となる。しかしもし、2つの圧力計104,110が予想されるよりも比較的高い、かつ実施的に同じ値を示した場合には、ドレン導管22によじれか、あるいは詰まりが生じた可能性があり、適宜な処置が施されることとなる。一般に、2つの圧力計104,110は、装置の機能に不調が生じた場合あるいは廃棄物キャニスターが満杯となった場合に自動警報及び自動的シャットダウンと言った作動をさせるより包括的なシステム(図示せず)の一部として組み込むことも可能である。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲の記載全体を通して、「備える」並びに「含む」との語、及びこれらの語の変化形は、「含んでいるがそれのみに限定されない」の意であり、その他の部分、付加物、要素、数、又は段階を排除するものでも、またそれを意図したものでもない。
【0028】
本明細書及び特許請求の範囲の記載全体を通して、単数で記載したものは、文脈上限定しない限り複数のものを含む。特に、数に関して明記されなかったものについては、その文脈で規定していない限り、単数及び複数を意図したものと理解されるべきものである。
【0029】
本発明における特定の特徴的側面、実施形態、あるいは例示との関連で記載される構成、数、特性、化合物、化学的成分又は群は、矛盾の生じない限り、ここに記載されるその他の特徴的側面、実施形態、あるいは例示にも適用可能であることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体ジェット手術切開装置であって、
供給すべき切開流体を貯留する流体リザーバと、
液体ジェット手術切開器具へ前記切開流体を供給するポンプと、
液体ジェット手術切開器具と、
廃棄切開流体及び捕捉くずを受け取りかつ排出するドレン導管と、
備え、
前記ドレン配管は、廃棄物キャニスターに操作可能に接続され、
前記廃棄物キャニスターは、該廃棄物キャニスターに操作可能に接続された真空発生手段を有して真空を該廃棄物キャニスターの内部及び前記ドレン導管に付与し、
前記廃棄物キャニスターはさらに自身の排出口上にフィルタ手段を有し、
該装置はさらに、前記廃棄物キャニスターの内部と作用的に接続された第1の圧力感知手段と、前記フィルタ手段と前記真空発生手段との中間部に作用的に接続された第2の圧力感知手段と、を備えてなる
液体ジェット手術切開装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体ジェット手術切開装置において、前記真空発生装置は電動真空ポンプである液体ジェット手術切開装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液体ジェット手術切開装置において、前記フィルタは、疎水性フィルタ、匂いフィルタ、及び抗菌フィルタを含む群から選ばれた少なくとも一つを備える液体ジェット手術切開装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項記載の液体ジェット手術切開装置において、前記廃棄物キャニスターがバルブ手段により前記ドレン導管に接続されている液体ジェット手術切開装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項記載の液体ジェット手術切開装置において、前記廃棄物キャニスターがゲル化剤を有している液体ジェット手術切開装置。
【請求項6】
液体ジェット手術切開装置の使用方法であって、
供給すべき切開流体を貯留する流体リザーバを準備する段階と、
前記切開流体を液体ジェット手術切開器具に供給するためのポンプを準備する段階と、
液体ジェット手術切開器具を準備する段階と、
廃棄切開流体及び捕捉くずを受け取りかつ排出するためのドレン導管を準備する段階と、を有し、
さらに、
前記ドレン導管を廃棄物キャニスターに操作可能に接続し、かつ前記廃棄物キャニスターに真空発生手段を作用的に接続して、真空を前記廃棄物キャニスターの内部及び前記ドレン導管に付与する工程と、
前記廃棄物キャニスターの出口ポート内にフィルタ手段を設ける工程と、
前記廃棄物キャニスターの内部と作用的に接続された第1の圧力感知手段を設ける段階と、
前記フィルタと前記真空発生手段との中間部に第2の圧力感知手段を設ける段階と
を備えてなる液体ジェット手術切開装置の使用方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、手術が実施されている間、前記真空手段を常に作動させる段階を有してなる方法。
【請求項8】
請求項6記載の方法において、液体切開ジェットの停止後所定時間まで、真空手段の作動の停止を遅延させる段階を有してなる方法。
【請求項9】
請求項6から8の何れか一項記載の方法において、前記第1の圧力感知手段と前記第2の圧力感知手段との圧力差を測定して廃棄物キャニスターが一杯である状態を特定する段階を有してなる方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−507566(P2011−507566A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538911(P2010−538911)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/GB2008/051054
【国際公開番号】WO2009/081176
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】