説明

廃棄物最終処分場キャッピングシート

【課題】 均一な通気性と難透水性及び適度な剛軟性を有する廃棄物最終処分場キャッピングシートの提供。
【解決手段】 遮水及び超難透水シートにニードルパンチ加工を施して、通気度が400m/m・24hr以上、透水係数が1×10−4〜1×10−7cm/secで剛軟度が15cm以上である合成樹脂又は繊維シートの廃棄物最終処分場キャッピングシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物最終処分場の埋立地に於ける最終覆土での通気性及び難透水性の特長を有するキャピングシートに関するものである。特に、廃棄物最終処理場で廃棄物埋め立てが完了して処分場を閉鎖する場合、その廃棄物を土質並みに早期に安定の為に廃棄物中の微生物が活発な活動をするための準好気環境を確保させるキャッピングシートで、廃棄物中のガスを排除する通気性能と空気を含んだ雨水の一部を透水する難透水性能を有するもので、かつこのキャッピングシートが適度な硬さを有することで局部的に水溜まりが発生しやすい凹部を無くすると共に敷設性に優れた廃棄物最終処分場キャッピングシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最終処分場は廃棄物の埋め立てが完了すると、廃棄物層を覆土や工業用シート材料等キャッピングで、景観、跡地利用及び浸出水量の削減を目的にした最終覆土が行なわれている。
以前は廃棄物に有害物質が含まれている場合は通気孔を有した遮水シートや防水シートで雨水の浸透を無くするキャッピングを行ない浸出水の削減を行なっていたが、近年は高温焼却炉の普及で焼却残査等の廃棄物は有害物が少ないので、廃棄物の早期安定化の為に適度な雨水を浸透させるために、特開平5−138143号公報で非通気性遮水シートと通気性シートを格子状に接ぎ合わせ工法があるが、この方法は断続的な透水性が均質性でない。 また特開2004−43989号公報は難透水性土木シートで通気度は0.2cc/cm2/sec以上、透水係数は1×10−3未満の織物が記載されているが、この織物は地盤の凹凸に追従を良好するために柔軟性を付与として繊維の繊度を420dtex以下と制限している。 しかしながら廃棄物地盤に凹状部が存在するとシートに柔軟性があると雨水が溜まり、水圧が掛って局部的に多量の水が透水して、透水の均一性を損なう。
このように透水性が均質でないと、廃棄物中の微生物が流出したり、生存することが困難になる。
【特許文献1】特開平5−138143号公報
【特許文献2】特開2004−43989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術の有する問題点を解消した、均一な通気性と難透水性及び適度な剛軟性を有する廃棄物最終処分場キャッピングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、遮水及び超難透水シートにニードルパンチ加工で0.5mm以下の微細孔を付与することで、所望の通気・難透水の廃棄物最終処分場キャッピングシートが得られることを究明した。
即ち本発明は、遮水及び超難透水シートにニードルパンチ加工を施して、通気度が400m/m・24hr以上、透水係数が1×10−4〜1×10−7cm/secで剛軟度が15cm以上である合成樹脂又は繊維シートの廃棄物最終処分場キャッピングシートである。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、均一な通気性と難透水性及び適度な剛軟性を有する廃棄物最終処分場キャッピングシートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について、特にその好ましい形態を中心に、詳細に説明する。
本発明の遮水及び超難透水シートの合成樹脂・繊維シートとは、透水係数が1×10−8cm/sec以下でニードルパンチ加工可能なもので、遮水シートは低〜中弾性タイプ及び繊維補強タイプシートで低弾性タイプは加硫ゴム系、塩化ビニル系、中弾性タイプはオレフィン系熱可塑性ゴム(PP系、PE系)、熱可塑性ポリウレタン、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等及び繊維補強タイプは加硫ゴム等及び合成繊維複合品、塩化ビニル系及び合成繊維複合品と不織布(ポリオレフィン、ポリエステル長繊維及び短繊維不織布や反毛フェルト等)や織物(ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンの繊維やテープ)に透水係数が1×10−8cm/sec以下にウレタン、シリコーン等の樹脂コートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル樹脂等の溶融ラミネートやフィルムラミネート等の防水加工を施したものや0.5mm以下のフィルム(ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル等)と上記の不織布や織物を接着ラミネートした防水シートである。 超難透水シートとは透水係数が1×10−8cm/sec以下もしくは耐水圧が100cm以上のフラッシュ紡糸法及びメルトブロー法ポリオレフィン不織布やポリオレフィンに無機充填剤を混練・特殊延伸加工した透湿防水フィルム単独もしくは上記不織布や織物を熱や接着剤による接着加工を施したシートである。
【0007】
これらのシートにニードルパンチ加工で微細孔を付与して、本発明の通気性能及び透水係数機能を確保したのものである。 ニードルパンチ加工とは1mm径以下のニードルを遮水及び超難透水シートに突き刺し、穴跡を残す加工であり、突き刺す時にニードルの先端を尖らして常温もしくはシート基材温度以上に加熱して上下運動もしくは回転で加工するものである。
【0008】
本発明シートの通気度は廃棄物より発生するガスをシート内を通過させるためには大きいほど良いが、少ないとシートは破損するので、これを防ぐには400m/m・24hr以上必要である。
本発明シートの透水係数は廃棄物中の微生物の活動範囲として1×10−4〜1×10−7cm/secが最適で、1×10−4cm/secを越えると微生物の流出で活動が低下し、逆に1×10−7cm/sec未満では乾燥し過ぎて微生物の活動が低下する。
本発明シートの剛軟度は15cm以上必要で、これ以下では敷設面に小さな凹面が存在するとシートも馴染みがよく凹面を呈する。
【0009】
通常降雨は月単位や年間単位でみると微少な期間であり、降雨のほとんどの雨水は敷設したシートが数%の勾配がついているので排水溝へ流出してしまうが、シート上に凹部が存在すると、この凹部に水が溜まり、この溜まり水が長時間透水するので微生物からみれば過剰な水が進入したことになり、結果的には透水係数が1×10−4cm/secを越えることになる。
また、シートの剛性が高いと敷設時に容易に展開できるので、シワや引っ掛かり部の修正が少なく施工作業性が容易であるとの利点もある。
【実施例】
【0010】
以下の実施例により本発明を具体的に説明する。尚、実施例中の各特性は下記の方法により評価した。
(1) 重量 JIS L 1908に準じて測定した。
(2) 厚み JIS L 1908に準じ加圧2Kpaで測定した。
(3) 引張強さ、引張伸度 JIS L 1908に準じて測定した。
(4) 通気度 JIS L 1096のA法に規定されるフラジール形法に準じて測定し、通過する空気量をm/m・24hrで算出した。
(5) 透湿度 JIS Z 0208(40℃、90%RH)に準じて測定した。
【0011】
(6) 透水係数 JIS A 1218に規定される「土質の透水試験方法」の変水位透水試験法に準じ、遮水シート面から水が透水する方向で測定した。
(7) 耐水圧 JIS L 1092低水圧法で遮水シート面から水が透水する方向で測定した。
(8) 剛軟度 JIS L 1096のA法に規定されるカンチレバー法に準じ、遮水シート面を上面にして測定した。
(9) 敷設作業性 簡易的に直径80mmφ、高さ30cmの木杭を3m間隔で2本打ち込み、その上にしシートを手で引張って引っ掛かり状態を評価した。
評価 ◎引っ掛かりもなくスムーズに走行する。
○まれに引っ掛るが修正は必要ない。
×引っ掛って走行ができず、修正が必要である。
【0012】
[実施例1]
2m幅で4mm厚みの単糸繊度4.4dtex、質量400g/mのポリエルテル長繊維不織布に低密度ポリエチレン樹脂を塗布量300g/mで溶融ラミネートシート加工を施した遮水シートに、穴明け加工としてニードルパンチ用細針(0.6mm△形状)を有するニードルパンチ機で糸を積極的に絡ませない穴明けを目的に針深さ3mm、穴数40ケ/cmを速度5m/minで加工した。
【0013】
[実施例2]
実施例1の条件で穴明け数のみ15ケ/cmで加工した。
【0014】
[比較例1]
実施例1及び2の穴明け加工前のポリエステル長繊維不織布に低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした遮水シートである。
【0015】
[比較例2]
560dtex96フィラメントのポリエステル長繊維を使用して、経糸は80回撚糸のノンサイジング、緯糸は無撚でレピア織機にて織密度41×41の平織組織で製織した。
【0016】
[実施例3]
2m幅、質量63g/mのフラッシュ紡糸法によるポリエチレン不織布である超難透水シートに、穴明け加工としてニードルパンチ用細針(0.6mm△形状)を有するニードルパンチ機で糸を積極的に絡ませない穴明けを目的に針深さ3mm、穴数40ケ/cmを速度5m/minで加工した。
このシート両面に質量136g/mのポリプロピレン熱圧着タイプ長繊維不織布を接着剤にて貼り合わせ加工した。
【0017】
[実施例4]
実施例3の条件で穴明け加工のみ針深さ1.5mm、穴数10ケ/cmで加工した。
【0018】
[比較例3]
実施例3及び4で使用したポリエチレン不織布及びポリプロピレン不織布で穴明け加工のみ行なわず、貼り合わせ加工を行なった。
【0019】
〔比較例4〕
560dtex96フィラメントのポリエステル長繊維を使用して、経糸は80回撚糸のノンサイジング、緯糸は無撚でレピア織機にて織密度38×41の平織組織で製織し、アルカリ精錬で織物の油剤を除去し乾燥後、ウレタン樹脂を20g/mドクターナイフで塗布して織密度41×41本/インチの遮水シートとした。 この織物を穴明け加工としてニードルパンチ用細針(0.6mm△形状)を有するニードルパンチ機で糸を積極的に絡ませない穴明けを目的に針深さ3mm、穴数40ケ/cmを速度5m/minで加工した。
【0020】
上記の実施例及び比較例のシートの物性は表1,表2に記載した。
比較例1は遮水シートであり通気性がなく、透水性も殆ど透水しない。比較例3は水蒸気のガスは通すが透水性は非常に低い透湿防水の超難透水シートであり、このシートを廃棄物の上にキャッピングすると殆ど透水しないので廃棄物中の微生物が活動できず廃棄物の安定化が進まない。
比較例2は通気性及び透水性は10−4cm/secを越える透水があり過ぎるので、廃棄物中の微生物が流出されて廃棄物の安定化が進まない。
【0021】
比較例4は通気性及び透水性があるシートであるが、シートが柔らか過ぎて、凹凸面のある部分に敷設すると凹凸状に被覆され、凹部に水を入れると溜まり経時的に透水される凸部は水が容易に流出するので透水できず、廃棄物中への水の供給が過剰な部分供給の無い部分が存在する不均一領域を形成するので、廃棄物安定化が遅れる。
また、敷設作業でもシートが柔らかいので凹凸部で引っ掛かりがあり修正作業が必要である。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0024】
廃棄物最終処分場の埋立地に於ける最終覆土の分野等で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮水及び超難透水シートにニードルパンチ加工を施して、通気度が400m/m・24hr以上、透水係数が1×10−4〜1×10−7cm/secで剛軟度が15cm以上である合成樹脂又は繊維シートの廃棄物最終処分場キャッピングシート。

【公開番号】特開2006−167644(P2006−167644A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365385(P2004−365385)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】