説明

廃水の処理方法および装置

【課題】オゾンや過酸化水素の供給、ならびに紫外線照射をリアルタイムに制御して処理水中の有機物濃度、有機ヒ素濃度を確実に求められる処理水質とする。
【解決手段】反応槽21内において廃水中の有機性物質を酸化分解する酸化分解工程を備え、前記廃水に含まれた特定金属が酸化によって発色することで酸化分解工程の進捗度を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水の処理方法および装置に関し、下水、上水、埋立浸出水、地下水、不法投棄現場の地下水および浸出水等の水処理技術に係り、特に有機ヒ素含有廃水の処理技術である。
【背景技術】
【0002】
本発明の対象物質である有機ヒ素(ジフェニルアルシン酸やモノフェニアルソン酸)は、毒ガス兵器として使用された毒ガスの分解生成物であり、現在のところ日本各地で、遺棄された毒ガス兵器によるヒ素汚染が見つかっており、また不法投棄によるヒ素汚染の可能性も指摘されており、地下水汚染に対する早急な対策が求められている。
【0003】
以下に従来の有機ヒ素含有廃水の処理方法を図5に基づいて説明する。図5に示すように、前段の有機ヒ素酸化分解工程において、流入水として有機ヒ素含有廃水を紫外線/オゾン処理装置1に導入し、pH調整槽2との間において有機ヒ素含有廃水を循環してpHを調整しつつ、紫外線/オゾン処理装置1において紫外線の照射下でオゾンを供給して有機ヒ素を酸化して無機ヒ素に分解する。
【0004】
有機ヒ素酸化分解工程を経た処理水は後段の無機ヒ素除去工程に導き、凝集剤3を添加して凝集膜分離槽4において凝集沈殿、凝集膜分離し、さらに活性アルミナ吸着処理塔5に導いて活性アルミナ吸着、キレート吸着等で無機ヒ素を除去する。
【0005】
また、他の従来の廃水の処理方法には、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、酸化処理工程において、反応槽内の被処理廃水に対して紫外線照射とオゾン供給とを併用して行うことによりヒドロキシラジカルを発生させて、有機金属化合物を酸化分解して無機金属化合物に変換し、無機金属除去工程において、活性アルミナ吸着処理を利用した無機金属除去装置により無機金属化合物を除去するものである。
【0006】
また、特許文献2に記載するものは、水性媒体中の有機ヒ素化合物に、鉄イオン、銅イオン、コバルトイオンおよびマンガンイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属イオンの存在下、過酸化水素を反応させて、有機ヒ素化合物を無機ヒ素に酸化分解するものである。
【特許文献1】特開2005−279409号公報
【特許文献2】特開2001−158622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、有機ヒ素含有廃水の処理において、求められる処理水質は、0.001mg/L(有機ヒ素として)であり、極めて低濃度である。この低濃度であるが故に、濁度計、吸光度計等を使用した現地での測定では必要とするレベルの測定を行うことができず、水質管理上0.001mg/L以下を保つことが難しい。
【0008】
有機ヒ素含有廃水をサンプリングして分析する手法では多点分析が望ましい。しかし、有機ヒ素の分析費用が非常に高くて検体当たり十数万円を要するのでコスト的に困難であり、分析に要する時間も数週間かかるためにリアルタイムに測定結果を得ることができない。
【0009】
このため、酸化工程において、求められる処理水質を達成するために必要な適正な注入量でオゾンや過酸化水素を供給し、適正な照射量で紫外線を照射することが困難であり、求められる極めて低濃度の処理水質を確実に達成するためには、酸化工程において必要以上に過剰な多量のオゾンや過酸化水素を供給し、過剰な照射量(時間、出力)で紫外線照射することを必要とする。
【0010】
本発明は上記した課題を解決するものであり、廃水、特に有機ヒ素含有廃水の処理において、オゾンや過酸化水素の供給、ならびに紫外線照射をリアルタイムに制御して処理水中の有機物濃度、有機ヒ素濃度を確実に求められる処理水質とすることができる廃水の処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の廃水の処理方法は、反応槽内において廃水中の有機性物質を酸化分解する酸化分解工程を備え、前記廃水に含まれた特定金属が酸化によって発色することで酸化分解工程の進捗度を判断することを特徴とする。
【0012】
また、廃水は有機ヒ素を含み、酸化分解工程において前記廃水に含まれた特定金属が酸化されて所定色濃度で発色するまで前記廃水中の有機ヒ素を無機ヒ素に酸化分解することを特徴とする。
【0013】
また、酸化によって発色する特定金属を廃水に添加し、廃水中の有機ヒ素を無機ヒ素に酸化分解する酸化分解工程の後において前記特定金属を特定金属除去手段で除去することを特徴とする。
【0014】
本発明の廃水の処理装置は、有機ヒ素を含む廃水中の有機性物質を酸化分解する酸化分解反応槽と、酸化によって発色する特定金属を廃水に添加する特定金属添加手段と、酸化によって発色した前記特定金属の色濃度を測定する測定手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、特定金属を除去する特定金属除去手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、反応槽内では有機物の酸化分解反応が優先して生じ、反応槽内に酸化分解の対象物である有機物が存在する間は、有機ヒ素の酸化分解および特定金属の酸化反応は遅速し、特定金属が酸化によって発色する色濃度は薄い状態となる。
【0017】
例えば、マンガンは酸化されるとまず二酸化マンガンとなり、この二酸化マンガンは水に難溶で廃水中に固形状態で存在する。そして、二酸化マンガンがさらに酸化されて過マンガン酸になると水に溶解して淡紫色を呈する。
【0018】
ここで、過マンガン酸は、強力な酸化剤として知られており、この酸化剤は換言すると自らを強く還元しようとするので、二酸化マンガンを過マンガン酸まで酸化するには強力な酸化力が必要であり、反応槽内の酸化分解工程では二酸化マンガンの酸化によって過マンガン酸が生成する反応よりも、有機ヒ素以外の被酸化物である有機物やMn2+などの金属類、炭酸イオン等のスカベンジャーの酸化反応が優先して生じる。
【0019】
特に、有機ヒ素よりも、オゾン等の反応活性種との反応速度が速い被酸化物が多く共存している場合、反応活性種はそれら被酸化物に消費されてしまい、相対的に有機ヒ素の減少速度が遅くなる。
【0020】
このため、酸化分解処理が進み、過マンガン酸(MnO)が生じることは、有機ヒ素以外の他の被酸化物がほとんど酸化分解により除去されたことを示しており、ここに至って初めて有機ヒ素を無機ヒ素に分解する反応および二酸化マンガンの酸化が促進される。 そして、有機ヒ素の無機ヒ素化が進行して有機ヒ素の濃度が0.001mg/L以下になると、二酸化マンガンが酸化によって過マンガン酸となって淡紫色に発色し、所定の色濃度となる。
【0021】
このため、マンガン、鉄、コバルト、クロム等の特定金属の酸化による発色の色濃度を指標として反応槽内の有機ヒ素を含む廃水の酸化分解反応の進捗度を判断することにより、酸化分解工程におけるオゾンや過酸化水素の供給、ならびに紫外線照射をリアルタイムに制御して処理水中の有機物濃度、有機ヒ素濃度を確実に求められる処理水質とすることができる。
【0022】
この酸化分解により生成する酸化処理水中における特定金属の発色の色濃度の測定は、目視もしくは測定手段として色度計あるいは紫外線吸光度計を用いて行う。例えば、過マンガン酸では所定の波長の紫外線の吸収を利用して、吸光度計によって過マンガン酸の濃度をモニターすることができる。特定金属は酸化分解工程の後に特定金属除去手段をなす活性炭処理塔において還元、不溶化して活性炭層に二酸化マンガンとして固定し、酸化処理水中から除去する。その後に、酸化処理水を無機ヒ素除去工程に導いて無機ヒ素を除去する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明は酸化されることで発色する特定金属に着目し、処理対象物の有機ヒ素そのものではなく、酸化分解工程において特定金属を試薬として使用し、特定金属の発色の色濃度によって有機ヒ素を無機ヒ素化する酸化分解反応の進捗度を判断するものである。
【0024】
このため、図1に示すように、廃水の処理装置は、酸化分解反応槽21と、測定手段をなす吸光度計(もしくは色度計)22と、特定金属除去手段をなす活性炭処理塔23からなる。測定手段は吸光度計、色度計に限るものではなく、特定金属除去手段は活性炭処理塔23に限るものではない。
【0025】
酸化分解反応槽21には、処理対象の有機ヒ素を含む廃水を導入する流入水系24が槽上部側に接続しており、流入水系24に試薬としての特定金属を添加する特定金属添加手段となす試薬供給系25が接続している。
【0026】
特定金属は最終の酸化状態において水に溶解して発色する金属であれば良く、マンガン、鉄、コバルト、クロム等が採用できるが、マンガンが最も望ましい。マンガンや鉄は普遍的に河川水、湖沼水、地下水中に含まれており、特にマンガンは水道水基準として0.05mg/Lが規定されており、この程度の微量であっても酸化によって淡紫色を呈するので、試薬としての機能は果たせる。
【0027】
このため、処理対象物である廃水の性状によっては、特定金属としてのマンガンを添加せずとも本発明を実現することは可能であり、特定金属除去手段も必要ない場合もあるが、廃水中にマンガンが含まれていない場合も想定し、試薬としての機能を確かなものとするために、本実施の形態では試薬として所定量のマンガンを予め添加する。
【0028】
添加するマンガンは水に溶解させるとMn2+(マンガンイオン)を生じる化合物であることが望ましく、マンガン(Mn)もしくは二酸化マンガン(MnO)の形態で添加することも可能であり、その添加量は水道水質基準である0.05mg/L程度の極微量でよい。また、試薬供給系25は酸化分解反応槽21に接続することも可能である。
【0029】
酸化分解反応槽21には、内部に紫外線ランプ26を水深方向に沿って配置しており、槽底部にオゾン供給系27が接続している。酸化分解反応槽21にはオゾンに代えて過酸化水素を供給することも可能であり、その他の酸化手段を採用することも可能である。本実施の形態の酸化分解反応槽21におけるオゾンと紫外線による有機物(有機ヒ素も同様)の酸化分解反応は公知の技術であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0030】
酸化分解反応槽21の槽下部側には酸化処理水を取り出す酸化処理水系28が接続しており、途中に吸光度計(もしくは色度計)22を介装した酸化処理水系28が活性炭処理塔23の塔上部側に接続している。活性炭処理塔23は内部に活性炭充填層29を備えており、活性炭充填層29を通過した酸化処理水が活性炭処理塔23の槽下部側に接続した酸化処理水移送系30を通して無機ヒ素除去工程(図2参照)へ供給される。
【0031】
流入水系24、試薬供給系25、オゾン供給系27、酸化処理水系28、酸化処理水移送系30はバルブ41およびポンプ42、43等の機器を備え、その流量は吸光度計(もしくは色度計)22の出力値に基づいて制御装置(図示省略)により制御されるが、手動操作することも可能である。また、流入水系24は流量調整槽(図2参照)や前工程の水処理系に接続している。
【0032】
以下、上記した構成における作用を説明する。処理対象物である有機ヒ素を含む廃水は、効率よく酸化分解処理するため、および過マンガン酸イオンによる発色をみるために濁質除去等を前工程の水処理系において行うことが好ましく、この前処理された廃水が流入水系24を通して酸化分解反応槽21へ流入する。この流入水系24の途中において試薬供給系25から試薬をなす特定金属としてのマンガンを添加する。
【0033】
酸化分解反応槽21では、オゾン供給系27から所定量のオゾンを槽内の廃水に供給し、紫外線ランプ26によって有機物の酸化分解に有効な所定波長の紫外線を照射し、紫外線およびオゾンによって廃水中の有機ヒ素を含む有機物を酸化分解する。流入水系24、酸化処理水系28の流量をバルブ41およびポンプ42で調整することにより、酸化分解反応槽21における必要な反応時間を確保する。
【0034】
ここで、酸化分解反応槽21におけるマンガンの挙動を説明する。Mn2+は無色透明で水に溶解するが、Mn4+は二酸化マンガン(MnO)として存在し、褐色で水に難溶であり、さらに酸化されたMn7+は過マンガン酸(MnO)として水に溶解し、淡紫色を呈する。
【0035】
酸化分解反応槽21において制御された反応時間の下で廃水を酸化分解すると、有機ヒ素以外の被酸化物である有機物やMn2+などの金属類、炭酸イオン等のスカベンジャーも同時に酸化される。特に、有機ヒ素よりも、オゾン等の反応活性種との反応速度が速い被酸化物が多く共存している場合、反応活性種はそれら被酸化物に消費されてしまい、相対的に有機ヒ素の減少速度が遅くなる。
【0036】
そして、酸化分解処理が進むと、有機ヒ素以外の他の被酸化物がほとんど酸化分解により除去され、有機ヒ素を無機ヒ素に分解する反応および二酸化マンガンを過マンガン酸(MnO)に酸化する反応が促進される。
【0037】
この結果、有機ヒ素の無機ヒ素化が進行して有機ヒ素の濃度が0.001mg/L以下になると、二酸化マンガンも酸化されて過マンガン酸となって淡紫色に発色し、所定の色濃度に達する。換言すると、二酸化マンガンが酸化されて過マンガン酸となって淡紫色の所定の色濃度に発色するまで酸化分解処理を継続しないと、有機ヒ素濃度は0.001mg/L以下にならない。
【0038】
よって、試薬の特定金属であるマンガン(過マンガン酸)の発色の色濃度を指標として観測することで、酸化分解反応槽21における有機ヒ素を含む廃水の酸化分解反応の進捗度を判断でき、有機ヒ素濃度が0.001mg/L以下に低下したことを検知できる。
【0039】
ここで、図3にMnOの各波長の吸光度を示す。MnOは図3に示すピークの波長を吸収するので、それらの波長をモニターすることで、MnOの濃度を計測することができる。
【0040】
このため、酸化処理水系28の途中において吸光度計22で酸化処理水の吸光度をモニターする。発色した過マンガン酸は図3に示すピークの波長の紫外線を吸収するので、吸光度計22で酸化処理水中の過マンガン酸濃度をモニターし、有機ヒ素を含む廃水の酸化分解反応の進捗度を判断し、酸化分解工程における反応時間、オゾンの供給量、ならびに紫外線照射時間をリアルタイムに制御して酸化処理水中の有機物濃度、有機ヒ素濃度を確実に求められる処理水質とすることができる。
【0041】
ところで、試薬としてのマンガンは水道水質基準で0.05mg/Lと規定されているのように、過剰に人体に摂取されると毒性があるので、最終処理水中のMn濃度は0.05mg/L以下であることが必要である。
【0042】
このため、酸化分解処理工程でMnOまで酸化されたMnを含む酸化処理水は活性炭処理塔23に供給し、活性炭充填層29における活性炭処理によって、過マンガン酸(MnO)を再びMnO2に還元、不溶化し、活性炭層に二酸化マンガンとして固定し、酸化処理水中から除去し、酸化処理水中のMn濃度を0.05mg/L以下に保つ。この後に、酸化処理水移送系30を通して酸化処理水を無機ヒ素除去工程に導いて無機ヒ素を除去する。
【0043】
本実施の形態では、流入水系24、酸化処理水系28における流量をバルブ41およびポンプ42で調整することにより、酸化分解反応槽21における必要な反応時間を確保しつつ、廃水を酸化分解反応槽21で連続処理して活性炭充填層29へ供給しているが、酸化分解反応槽21において廃水を回分処理することも可能である。
【0044】
この場合には、流入水系24のバルブ41を閉栓し、酸化処理水系28のポンプ42を停止し、酸化分解反応槽21に所定量の廃水を貯留する状態で必要な反応時間を確保する。そして、酸化分解の反応完了後にポンプ42を起動して酸化分解反応槽21の酸化処理水を活性炭充填層29へ供給し、その後に流入水系24のバルブ41を開栓して新たに廃水を酸化分解反応槽21へ供給する。
【0045】
あるいは、図4に示すように、酸化処理水系28を吸光度計22の下流側で分岐し、バルブ44を介して酸化分解反応槽21の塔上部側に接続するとともに、バルブ45を介して活性炭処理塔23の塔上部側に接続する構成において、流入水系24のバルブ41および酸化処理水系28のバルブ44を閉栓し、酸化処理水系28のバルブ45を開栓し、酸化処理水系28のポンプ42を駆動し、酸化分解反応槽21に貯留した廃水を酸化処理水系28により塔底部側から塔上部側へ循環し、酸化分解反応槽21におけるオゾンおよび紫外線との接触効率を高めつつ、必要な反応時間を確保することも可能である。
【実施例】
【0046】
一例として、有機ヒ素(ジフェニルアルシン酸、モノフェニアルソン酸)に汚染された地下水を、回分式のUV/オゾン処理装置によって酸化分解処理した場合の有機ヒ素濃度と処理水の吸光度の経時変化を図2に示す。
【0047】
この場合、254nmの紫外線吸光度を測定するUV計を用いて、連続的に吸光度を測定した。この地下水にはMnが水道水質基準程度含まれており、酸化によって淡紫色を呈することが事前に判明しているので、Mn2+の添加は行わなかった。
【0048】
処理開始直後において、吸光度は急激に上昇し、処理開始1時間で減少に転じ、5時間で最低値を示した。しかし、その時の有機ヒ素濃度は0.1mg/L以上であった。
さらに、酸化分解処理を継続すると、吸光度は再び上昇に転じ、処理水は淡紫色を呈しはじめ、10時間目で吸光度0.2を示した。その時の有機ヒ素濃度は、ジフェニルアルシン酸が0.001mg/L以下となるが、モノフェニアルソン酸はまだ0.001mg/L以下となっていない。
【0049】
最終的に吸光度が0.25を上回ったときに、ジフェニルアルシン酸、モノフェニアルソン酸がともに、目標処理水質である0.001mg/L以下となった。
すなわち、この地下水の場合に、処理水が淡紫色を呈し、かつ吸光度が0.25以上となる処理条件に制御することによって有機ヒ素濃度は0.001mg/L以下とする運転が可能となる。
【0050】
処理開始初期では、有機ヒ素以外の被酸化物である有機物やMn2+などの金属類、炭酸イオン等のスカベンジャーも同時に酸化される。特に、有機ヒ素よりも、オゾン等の反応活性種との反応速度が速い被酸化物が多く共存している場合、反応活性種はそれら被酸化物に消費されてしまい、相対的に有機ヒ素の減少速度が遅くなる。
【0051】
処理が進み、MnOが生じることは、有機ヒ素以外の他の被酸化物がほとんど酸化分解により除去されたことを示しており、ここに至って初めて有機ヒ素濃度が0.001以下となり得る。この例では254nmの吸光度をモニターしたが、この波長に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態における廃水の処理装置を示すブロック図
【図2】有機ヒ素濃度と処理水の吸光度の経時変化を示すグラフ図
【図3】MnOの各波長の吸光度を示すグラフ図
【図4】本発明の他の実施の形態における廃水の処理装置を示すブロック図
【図5】従来の廃水の処理装置を示すブロック図
【符号の説明】
【0053】
21 酸化分解反応槽
22 吸光度計(もしくは色度計)
23 活性炭処理塔
24 流入水系
25 試薬供給系
26 紫外線ランプ
27 オゾン供給系
28 酸化処理水系
29 活性炭充填層
30 酸化処理水移送系
41、44、45 バルブ
42、43 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内において廃水中の有機性物質を酸化分解する酸化分解工程を備え、前記廃水に含まれた特定金属が酸化によって発色することで酸化分解工程の進捗度を判断することを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項2】
廃水は有機ヒ素を含み、酸化分解工程において前記廃水に含まれた特定金属が酸化されて所定色濃度で発色するまで前記廃水中の有機ヒ素を無機ヒ素に酸化分解することを特徴とする請求項1に記載の廃水の処理方法。
【請求項3】
酸化によって発色する特定金属を廃水に添加し、廃水中の有機ヒ素を無機ヒ素に酸化分解する酸化分解工程の後において前記特定金属を特定金属除去手段で除去することを特徴とする請求項2に記載の廃水の処理方法。
【請求項4】
有機ヒ素を含む廃水中の有機性物質を酸化分解する酸化分解反応槽と、酸化によって発色する特定金属を廃水に添加する特定金属添加手段と、酸化によって発色した前記特定金属の色濃度を測定する測定手段を備えたことを特徴とする廃水の処理装置。
【請求項5】
特定金属を除去する特定金属除去手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の廃水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−196175(P2007−196175A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19914(P2006−19914)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】