説明

廃水内のバイオソリッドの改善された消化

廃水汚泥の生物学的消化を向上する方法が提供される。当該方法は、好気性または嫌気性消化の効率を促進および改善するように二酸化塩素を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的消化プロセスを改善するためのシステムおよびプロセスに関する。とりわけ、本発明は、栄養素を所望の微生物学的有機物による代謝に利用可能にすることによってプロセスを促進するように、病原菌であってもよいまたはなくてもよい競合する有機物を減少することによって、および基質(有機物質)の細胞壁を機械的に変化させることによって、廃水処理に関する好気性または嫌気性消化プロセスにおける特定有機物の微生物活性を改善するように二酸化塩素を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市廃水処理の際に、相当量の分解可能な有機物および栄養素を含む汚泥が生成される。この汚泥ケーキまたはバイオソリッド物質の有益な再利用は世界的に行われている。
【0003】
廃水は、流入水として廃水処理工場に入る。典型的には、この流入水に、いくらかの形態の生物学的栄養素除去が行われ、後に、いくらかの種類の浄化または沈殿プロセスによって固形物(汚泥)が液体(排水)部分から分離される。排水は、ろ過され、殺菌され、および地上水に排出され得るまたは再利用され得る。汚泥部分は、従来、いくつかの種類の安定化プロセスに移行され、分解可能な有機物は、処分のために腐敗しにくいバイオソリッド物質に分解される。米国における都市汚泥安定化に用いる最も一般的な3つのプロセスは、嫌気性消化、好気性消化、および堆肥化である。
【0004】
嫌気性消化プロセスにおいて、微生物は空気の欠如下で汚泥内の生分解可能物質を分解する。この生物学的に分解された最終生成物は、メタンと二酸化炭素とから大部分が成る安定化されたバイオソリッドおよびバイオガスである。プロセスから得られるメタンの容量は、プロセスで消費される汚泥の生物学的酸素要求量または化学的酸素要求量に直接関係する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
汚泥の炭水化物および脂質要素は容易に分解されるが、一方で、たんぱく質は、細胞壁内に含まれており、該細胞壁は、まず、消化のための栄養素として含有物を即座に利用可能にするように分解される必要がある。試行は、嫌気性消化プロセスを促進するように、汚泥を前処理することに関して為されてきた。1つの例は、栄養素を更に即座に利用可能にする熱加水分解(高圧蒸気)を用いたCambi(登録商標)プロセス(5,888,307および6,913,700)である。上述した例は、1940年代〜1960年代に遡るPortousおよびZimproプロセスを含む。熱加水分解は、典型的には、1週間〜2週間に亘って135℃以下まで、または30分間に亘ってより高温(185℃〜200℃)まで汚泥温度を上昇させることによる廃棄活性汚泥(または余剰活性汚泥、waste activated sludge)の前処理を含む。汚泥前処理プロセスの別の例は、細胞膜および細胞壁を破壊するようにパルス状の高電圧(20V〜30V)を用いるOpenCel(登録商標)プロセスである。更なる別の例は、細胞をせん断して細胞壁および膜を破壊するように機械的な力を利用するCrown(登録商標)Disintegraterである。これらのプロセスの各々は、それら全てが高い資本および作業コストを要する点で類似している。
【0006】
本発明者は、汚泥を加水分解または可溶化する改善された方法を有し、該方法が、分解可能な有機物質のバイオガスへの高い転化率をもたらし、低い資本および作業コストを有し、および拡張可能であることが望ましいことを認識している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所望の目的のための優れた性能を提供しおよび極端に低い資本および作業コストを有する革新的なプロセスを表す。これは、これまでに知られている方法よりも明らかな経済的利点をもたらす。
【0008】
二酸化塩素を使用して、廃水内の糞便性大腸菌と従属栄養素細菌の集団を減少しおよび栄養素を消化のために更に即座に利用可能にするように廃水汚泥内の細菌の細胞壁構造を変化させることを含む、微生物消化プロセスを改善するためのシステムが提供される。
【0009】
廃水処理における生物学的消化プロセスにおいて、微生物は、生分解可能物質を分解して基質を、好気性消化の場合に二酸化炭素および水に、または嫌気性消化の場合にメタンおよび二酸化炭素に転化する。
【0010】
生汚泥に、消化した汚泥を接種することの実施は、好気性および嫌気性消化の両方における一般的な実施であり、および多くの商業的な接種は、この目的に用いる様々な生体触媒および酵素を含んで利用可能である。これらの方法は、それらの機能に特有の有機物の「貯蔵(stock)」培養をもたらすように機能するが一方で、本発明者は、これらの有機物が食物源に対して競合に直面するということを認識している。とりわけ、嫌気性消化の場合において、消化速度は、廃棄活性汚泥の生物学的に利用可能な(メタン生成細菌により利用可能な)形態への加水分解の低速により制限される。
【0011】
本発明者は、二酸化塩素を含む新しいプロセスが、現在の方法よりも顕著な経済的利点を与え、消化に関する微生物の更なる制御を提供し、および所望の微生物による分解を向上するということを推測している。消化を向上するように二酸化塩素を使用することは、2つの主要なメカニズムによって;1)システムに、それらの機能に良く適した特定の有機物を接種する前に、無益な微生物の集団を減少することによって、および2)基質物質の細胞壁を変化させて細胞溶解を生じさせまたは促進し、従って、更なる栄養素を微生物に利用可能にすることによって機能する。
【0012】
向上した競合性排除のこの方法は、消化プロセスが起こるのに必要な時間とエネルギーを減少することにより、および嫌気性消化の場合に気体の製造を向上することにより、顕著な利益を提供する。処理された物質の増加した生物学的酸素要求量により、またはこの処理プロセス後の基質物質の増加した可溶性化学的酸素要求量(s−COD)により、ならびに堆肥化の際に、より高温に達しおよび温度が更に迅速に上昇することにより、基質物質の「調整(conditioning)」は明らかである。
【0013】
1つの実施形態によれば、本発明は、生汚泥試料、生分解可能な固形物を含む廃水または他の試料を得ること、試料内の微生物を減少または排除しおよびバイオソリッド物質の細胞壁を破壊するのに充分な容量の二酸化塩素を試料に付すこと、二酸化塩素で処理した試料に、有益な微生物の接種物を接種すること、および好気性または嫌気性消化を促進する条件下に接種した試料を置くことを含むプロセスを有する。他の本発明の実施形態は、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、廃水のs−CODが、本発明の方法の実施形態を行うことにより増加し得ることを図示したグラフを示す。
【図2】図2は、所定の実施形態により記載されるようなWAS処理により生成されるホスフェートの増加を図示するグラフを示す。
【図3】図3は、本発明の実施形態の基本的な廃水処理システムの概略である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
主題となる発明は、都市汚泥またはバイオソリッドの向上した消化のために二酸化塩素を利用する新規な方法に関する。1つの実施形態において、該方法は、都市バイオソリッドの促進された堆肥化(好気性消化)の理想条件を提供できる。別の実施形態において、該方法は、前処理されていないバイオソリッドに対して、結果として得られる50%以上のメタン収率の増加を伴う嫌気性消化を容易にするのに用いることができる。
【0016】
第1の実施形態において、任意の一般的な方法で脱水する前に、廃棄活性汚泥の細菌濃度を減少するのに二酸化塩素を用いる。次に、クラスBスタンダードに対する病原菌減少のための米国環境保護庁要件を満たす得られたバイオソリッドケーキに、堆肥化プロセスに適している任意の市販されている細菌混合物を接種し、および物質を木材廃棄物または植物性廃棄物と混合できる。この方法により処理されたバイオソリッドを迅速かつ経済的にクラスAスタンダードに堆肥化できる。
【0017】
例えば、限定されるものではないが、Turned Windrow、Aerated Static Pile(開口または取り囲まれた)、Aerated Turned Windrow Horizontial Agitated BedまたはIn−Vessel Processes(様々な種類)のような任意の一般的な方法を用いた堆肥化を利用してよい。しかしながら、好ましい実施形態において、物質は、強制換気静的堆積法(air-forced static pile method)を用いて堆肥化され、該方法では、バイオソリッド内の有機物の好気性消化または分解の主因である細菌が上限の好熱性範囲における温度(150°F〜176°F)により減少しないように、堆積物への空気添加により温度が150°Fを概して越えるのを防ぐように、温度が調節される。初めに、二酸化塩素を添加することによって(>+100mV)、および後に、処理された物質における好ましい範囲のORP(0>mV)を維持して硫黄還元細菌の活性を妨げるように堆積物を通気することによっておよび堆積物における嫌気性条件を防ぐことによって、この実施形態を用いて行われる場合の本発明の方法は、高い酸化還元電位を維持する結果として生じる悪臭の形成を防ぐ付加的な利益を有する。硫黄還元細菌は、−100mVのORPよりも低い範囲で最も機能する。
【0018】
二酸化塩素により処理され次いで接種および堆肥化されたWASを参照すると、消化されていない「調整された」バイオソリッドは、消化された汚泥よりも高い揮発性固形物部分を含みおよびより即座に消化するので、処理プロセスは、堆肥化プロセスがより急速に生じることを可能にし、堆積物がより高温までより速く到達するのを可能にしている。糞便性大腸菌、他の病原体またはあり得る病原性細菌による食物源のための競合欠如は、堆肥化プロセスの主因である有機物による物質のより迅速な分解を可能にしている。これらの条件は、また、プロセス中に、他の望ましくない有機物の競合性排除または病原体の起こり得る再成長をもたらす。
【0019】
プロセスからの減少した臭気と組合せて、クラスAスタンダードまで堆肥化するのに必要な短縮された時間は、これを市政機関(利用可能な空間および堆肥化による臭気に対する懸念に起因して、これを低コストの代替手段としてみなしていなかった)に対し実行可能な選択肢にする。
【0020】
別の実施形態によれば、本発明は、生汚泥試料、生分解可能な固形物を含む廃水または他の試料を得ること、クラスBスタンダードを満たすように糞便性大腸菌濃度を減少しおよびバイオソリッド物質の細胞壁を破壊するのに充分な容量の二酸化塩素を試料に付すこと、有益な微生物(例えば、中温性および好熱性微生物(または他の微生物)および/または方線菌等)の接種物を、二酸化塩素で処理した試料に接種すること、および試料をクラスAバイオソリッドに転化にする条件下で接種した試料を堆肥化することを含むプロセスを有する。一般的な中温性微生物の例は、限定されるものではないが、リステリアモノサイトゲネス、シュードモナスマルトフィリア、チオバチルスノベルス(Thiobacillus novellus)、黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、肺炎レンサ球菌、大腸菌、およびクロストリジウムクルイベリ(Clostridium kluyveri)を含む。一般的な好熱性微生物の例は、限定されるものではないが、バシラス・ステアロサーモフィラスおよび細菌属を含む。様々な好熱性の菌類リゾムコール・プシルス、ケトミウム属の好熱菌、フミコーラインソレンス、フミコーララヌギノサ(Humicola langinosus)、好熱性糸状菌、およびアスペルギルス・フミガタス。
【0021】
酸化剤処理による廃棄物内の微生物の意図的な減少および処理後における処理された廃棄物への微生物の意図的な接種(または植菌)に関する本明細書の教示を備えた当業者は、嫌気性消化、好気性消化、または堆肥化のために、処理された廃棄物に接種する際に用いる微生物の最適な組合せを求めることができる。
【0022】
プロセスからの減少した臭気と組合せて、クラスAスタンダードまで堆肥化するのに必要な短縮された時間は、これを市政機関(利用可能な空間および堆肥化による臭気に対する懸念に起因して、これを低コストの代替手段としてみなしていなかった)に対し実行可能な選択肢にする。
【0023】
市政機関にとっての堆肥化に対する主要な障害は、作業に必要な時間/空間であり、およびプロセスで発生する臭気である。本発明の実施形態の利点および特徴は、これらの障害を克服する:
バイオソリッド内の細菌濃度を減少するように二酸化塩素を使用すること。このことは、堆肥化プロセスにおいて有益である微生物の栄養素に対する競合を減少する。二酸化塩素はかなり反応しやすいので、残留の殺菌が堆肥化プロセスを妨げるように存在しないように、二酸化塩素は迅速に減少する。
物質を「前処理」する(いくらかの程度の細胞溶解を生じさせる)ように二酸化塩素を使用すること。このことは、堆肥化プロセスを促進するように、物質を「好ましい」微生物に更に即座に利用可能にする。
堆肥化プロセスに用いる出発材料または「貯蔵(stock)」物質の臭気を減少するように二酸化塩素を使用すること。このことは、ほとんどの施設が堆肥化しない主要な理由である。
貯蔵源は、微生物のための更なる「食物」をもたらすので、貯蔵源が有益であるように消化されていない汚泥を使用すること。堆積物内の温度は、典型的には、消化されていない汚泥により更に高い。このことは、臭気がプロセスを使用不可能にするので、二酸化塩素無しでは実際に行うことはできない。
消化(堆肥化)の上昇した速度は、プロセスを行うために利用可能である必要がある時間および空間に対する際立った影響を有する。
「容器内」の堆肥化は、臭気を更に減少し、およびより寒い地域(colder climate)でのプロセスの使用を可能にする。
このプロセスを行うコストは、クラスAバイオソリッドを生成するための他の既知の方法よりも実質的に高価であるべきではない。
【0024】
二酸化塩素を既知の方法に従って発生でき、例えば、国際公開WO2010/126548号公報;および国際公開PCT/US10/59208号公報を参照されたい。廃水処理システムに関連して廃水試料を処理するための1つのシステムは、米国仮出願第61/328,363号に開示されている。簡潔に、図3を参照すると、廃水108は、まず、ヘッドワーク110に入り、および次いで生物学的処理場115に移動する。生物学的処理場115は、廃水内のバイオソリッドから分離した栄養素(およびバイオソリッドに付随した低パーセントの栄養素)を除去して、栄養素減少廃水試料116を生成するように主に機能する。栄養素減少廃水試料116を浄化器120に移動し、栄養素減少廃水試料116を、排水要素121とWAS要素122とに分離する。排水要素121を廃棄する。
【0025】
WAS要素122は、配管124内に輸送され、および酸化剤処理領域125(酸化剤処理領域125に流体連結しているその場酸化剤発生器127によって供給されている)に暴露される。配管124は、配管と一体であってよいまたは分離してよい酸化剤投与要素143を含んでおり、化学酸化剤を、制御した方法でWASに投与する。
【0026】
1つの実施形態において、酸化剤処理に続いて、WAS123を脱水装置140(例えば、ベルトフィルタプレスまたは遠心分離機)に輸送し、更なる水を、WASから除去して、12パーセント〜30パーセントのバイオソリッドを有する濃縮バイオソリッド試料141を達成する。脱水場140前に達成した濃縮バイオソリッド試料は、酸化剤添加により得られるより高いORPを有する。脱水に続いて、脱水したバイオソリッドを堆肥化して、クラスAのバイオソリッドを達成できる。
【0027】
別の実施形態によれば、酸化剤処理に続いて、WAS123を保持タンク210に輸送する。細胞の破壊が酸化剤処理の結果生じるように、所定時間に亘って、処理されたWASを「調整(condition)」する。このことは、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、または6時間、もしくは更なる時間であってよい。典型的には、保持タンク内の調整時間は、6時間〜24時間である。調整時間に続いて、調整されたWASを、消化槽184に移動する。消化槽184は、嫌気性消化または好気性消化を行う。メタン製造のための嫌気性消化に関して、調整されたWASは、より高い可溶性COD率をもたらし、供給汚泥のいかなる所定容量に対してもメタン製造の増加を容易にする。酸化剤処理に続いて、改善された消化を容易にするように、有益な細菌をWASに戻って添加できる。消化のための細菌は、酢酸生成細菌および/またはメタン生成細菌(始原菌と言うこともある)を含む。
【0028】
廃水処理プロセス
スクリーニングおよび生物学的処理
廃水処理プロセスは、多くの逐次的工程から成る。典型的には、廃水は、ヘッドワーク(headwork)において廃水処理プラントに入る。ヘッドワークは、主要なグリット(または沈砂場、grit)および廃水処理プラントのための異種物除去システムとして機能する。ヘッドワークからの廃水を、所定形態の生物学的処理ユニット(「BTU」)(すなわち、酸化溝、逐次回分式反応器、生物的反応器部分等)に移動する。BTUでは、栄養素を廃水から除去する。典型的には、廃水処理プロセスにおけるこの生物学的栄養素除去工程間の微生物成長は、廃水流れの固形物および液体要素の分離を可能にする生物学的フロックを形成する。衛生的な汚泥内の茶色のフロックであるこの物質は、腐栄養素微生物から大部分が成るがしかし、アメーバ、Spirotrichs、釣鐘虫類(Vorticellids)を含むPeritrichs、および所定範囲の他のフィルター供給される種から主に成る重要な原生動物細菌叢(protozoan flora)を有する。また、廃水をBTU内で通気する。栄養素の含有量を減少するように、通気と組合せて廃水を有機物に暴露することを「生物学的処理」と言う。
【0029】
浄化
スクリーニングおよび生物学的処理の後に、廃水および蓄積した有機物を浄化プロセスに送る。浄化は、水または排水が固形物またはバイオソリッドとして知られる有機物から分離する場所である。一旦、生汚水に生物学的処理および浄化が行われると、バイオソリッド試料は、廃棄活性汚泥(WAS)であるとみなされる。この時点から、バイオソリッドは、典型的には、いくつかの種類の消化をするように移動する。
【0030】
消化
浄化後の蓄積したWASを、安全かつ効率の良い様式で処理および処分する必要がある。消化の目的は、固形物内に存在している有機物容量および病原菌数を減少することであり、および物質内の分解可能な有機物質を減少することである。最も一般的な処理選択肢は、嫌気性消化および好気性消化を含む。
【0031】
嫌気性消化は、酸素の欠如下で行う微生物プロセスである。このプロセスは、55℃の温度においてタンク内で汚泥を発酵させる好熱性消化、または概ね36℃の温度において中温性であり得る。より短い保持時間(および従ってより小さなタンク)を可能にするにもかかわらず、好熱性消化は、汚泥を加熱するためのエネルギー消費に関してより高価である。
【0032】
嫌気性消化は、Septic Tank内における家庭下水の最も一般的な(中温性)処理であり、該Tankは、普通、1日から2日下水を保持し、B.O.D.を約35%〜40%減少させる。この減少は、Sepic Tankに’Aerobic Treatment Units’(ATU)を取り付けることによって、嫌気性および好気性の組合せにより向上できる。
【0033】
好気性消化は、酸素の存在下で起こる微生物プロセスである。好気性条件下において、微生物は、有機物を急速に処理して、それを二酸化炭素に転化する。酸素をプロセスに添加するのに必要である送風機、ポンプおよびモーターにより用いられるエネルギーに起因して、作業コストは、好気性消化のために特徴的にずっと大きかった。
【0034】
脱水
浄化および全ての後続の処理工程に続く工程として、WASは、それらを有益に再利用する前に脱水され得る。WASは、しばしば、たった3パーセント〜5パーセントの固形物であり、従って、物質からの水の除去は、重量と、更なる処理または処分もしくは再利用のコストとを減少するのに不可欠である。ベルトプレス、遠心分離機、および他の装置を含む様々な技術が、脱水バイオソリッドに用いられる。
【0035】
酸化還元電位(ORP):
酸化還元電位(レドックス電位、酸化/還元電位またはORPとしても知られる)は、化学種が電子を要するおよび従って還元される傾向の尺度である。ORPは、ボルト(V)またはミリボルト(mV)で測定される。各々の種は、独自の固有の還元電位を有する;電位が高いほど、電子に対する当該種の親和力および還元される傾向が大きくなる。異なる生物学的プロセスは、異なる条件下またはORP範囲において生じる。例えば、メタン生成細菌は、非常に低いORP(約−300mV)において機能する。硫黄還元細菌は、約−50mV〜約0mVのORPレベルではあまり機能しない。二酸化塩素が完全に減少した後のORPの急速な減少は、実際に、嫌気性消化によるメタンの製造を促進する可能性があり、二酸化塩素の添加により生じるORPの上昇およびORPを正のmV範囲で維持する、後の通気は、好気性消化または堆肥化中に堆肥化堆積物内において嫌気性条件が発生することおよび硫黄還元細菌の活性を妨げることができる。
【0036】
100万分の1(PPM):
100万分の1は、非常に希釈された濃度の物質を表現する方法である。パーセントが「100のうちの(当たり)」を意味するのと同様に、100万分の1またはppmは、「100万のうちの(当たり)」を意味する。通常、水または土壌の中の何かの濃度を説明する。1ppmは、水の1リットル当たりの何かの1ミリグラム(mg/l)または土壌のキログラム当たりの何かの1ミリグラム(mg/kg)に相当する。
【実施例】
【0037】
実施例1
都市汚泥内の病原体および従属栄養素微生物の集団を減少させるように二酸化塩素を使用することを評価した。
【0038】
消化されていない廃水汚泥の二酸化塩素による処理は、クラスBスタンダード(<2,000,000の糞便性大腸菌)よりもずっと低いレベルまで糞便性大腸菌濃度を減少することによって、物質が消化(15分未満の接触時間を伴う)前におけるクラスB病原体減少要件を満たすことを可能にする。得られたバイオソリッドケーキは、臭気を有さない。二酸化塩素の様々な添加速度における糞便性大腸菌減少の例を表1に示す。
【表1】

【0039】
この試験では、二酸化塩素を、その場で発生させ、および4インチの直径のパイプを通過する100ガロン/分の汚泥流れに(様々な濃度で)注入した。パイプ長さは、物質を脱水する前における汚泥と二酸化塩素の間の10分の接触時間を可能にするのに充分であった。
【0040】
低コストにおけるクラスBバイオソリッドおよび減少した臭気の生成は、多くの装置に完璧であるが一方で、本発明は、市政機関のためのいくつかの付加的な選択肢を提供する。本発明により処理されたWASを、迅速にかつ経済的にクラスAスタンダードに堆肥化できる。脱水後に、この方法により処理されたバイオソリッドに、所望の微生物を接種し、および50%以下の全ての固形物までケーキを乾燥するように乾燥台(またはベッド、bed)に配置し、または空気を堆積物に通過可能にするように植物性廃棄物と混合した。バイオソリッドは、次いで、ウィンドロー(windrow)において、または強制換気静的堆積法(forced air static pile method)を用いて堆肥化した。糞便性大腸菌を減少した後の適切な微生物による接種は、より早い堆肥化のためのより良い環境をもたらす。容器内の堆肥化(強制換気静的堆積法のバリエーション)は、臭気を最小限にし、およびプロセスの変化について更なる制御をもたらす。消化されていない「調整された」バイオソリッドは更に即座に分解するので、WASの使用は、堆肥化プロセスが急速に生じ、堆積物が、より高温をより速く達成するのを可能にする。
【0041】
堆肥化プロセスにおいて活発な微生物の集団は、存在しているStreptomycesおよびBacillus種の混合物、および多くの非胞子形成微生物により、いくらか多様である。非胞子形成微生物は、典型的には、より低温(55℃より低い)で存在している。最も多くのBacillus種は、55℃〜69℃の範囲である温度間で存在している。
【0042】
分解作用、または堆肥化プロセスの消化速度は、60℃を越える温度により悪影響を受ける(このことは、堆肥化の主因である微生物を不活性にするので)。病原体の不活性化が迅速に始まる温度(55℃)に到達しおよび次いで温度が、基質物質の生物学的分解の主因である細菌を不活性にしないように堆肥化の強制換気静的堆積法の使用を通じて温度を制限する能力は、堆肥化都市バイオソリッドの他の方法よりも顕著な利益を提供する。
【0043】
実施例2
本発明の第2の実施形態において、WASを、第1の実施形態と同じまたは高い添加量により処理でき、および長い接触時間を可能にし、より大きい程度の酸化、細胞溶解および細胞内の物質の放出をもたらし、利用可能な更に多い栄養素をもたらし、および従ってより大きく向上した微生物活性をもたらすことができる。更なる特定の実施形態において、二酸化塩素の添加速度は、50mg/L〜150mg/Lであり、および汚泥を、24時間に亘り保持する。二酸化塩素は汚泥内の物質を酸化させるので、二酸化塩素は亜塩素酸塩に還元される。亜塩素酸塩もまた酸化剤であり、および有機物質との接触により更に還元される。得られた汚泥は、細菌のための食物源として、顕著に更に多い容量の生物学的に利用可能な物質を含む(残りの殺菌特性を有さないけれども)。メタン製造の実質的な向上は極端に低コストであると認識され得るので、この第2の実施形態は、次の消化プロセスが嫌気性である場合にとりわけ重要である。
【0044】
汚泥を可溶化し、栄養素を生物学的に利用可能にしおよびこの物質を設置された嫌気性消化槽に供給する(一旦、二酸化塩素残留物が減少すると)ように、消化されていない廃水汚泥を二酸化塩素によって処理することは、嫌気性消化槽における気体(メタン)の製造を改善する。35℃におけるメタンの製造に対して概して容認される推定量は、消費されるkgCOD当たりの0.25kgのメタンである。メタン1kモルは、16kgの質量に相当する。定義により、メタンの1kモルのCOD当量は、式によれば、完全な酸化に必要である酸素量の質量である:
CH+2O→CO+2H
2Oの質量は、酸素2kモルまたは64kgである。従って、64kgの酸素要求量は、メタン16kgに相当し、または酸素要求量(COD)の1kgは、16/64=0.25kgのメタンに相当する。
【0045】
図1は、このプロセスの結果、および様々な添加速度において時間に対する可溶性化学的酸素要求量(s−COD)の得られた増加を示す。廃棄活性汚泥(WAS)は、地方の都市WWTP(cBODのみを除去しおよび純酸素システムを用いる)から得られた。同様の実験条件を達成しおよびこれまでの予備的実験と矛盾しないように、固形物濃度を、約7g/Lに調整した。3つの消化槽を、配置しおよびそれぞれ100mg/L、150mg/Lおよび200mg/Lの二酸化塩素添加により処理した。消化槽を24時間に亘って作動させた。異なる接触時間を示すように10分、1時間、6時間、12時間および24時間の時間間隔で、試料を取り出した。
【0046】
可溶性CODのこの増加は、汚泥の全COD濃度の10%〜11%を表し、および可溶性CODの2000%の増加を表す。s−CODが高いほど、メタン製造のための能力が高いと考えられる。嫌気性消化のこの向上の結果得られたメタン製造の増加は、この方法を利用した50%よりも大きい増加として測定されており、および予め処理されていないWASよりも100%以上の範囲であると予測される。施設が、加熱(600BTU/ft以下)のためにまたは電気発生のためにこの捕捉されたバイオガスを用いると、この経済的な影響は顕著である。
【0047】
接触時間が、二酸化塩素の添加量の差異よりも可溶性COD濃度の増加(図1)に対して大きな影響を有することが見出された。24時間の最も長い接触時間において、二酸化塩素添加量が、それぞれ、100mg/Lから150mg/Lおよび200mg/Lまで増加した場合に、可溶性COD濃度は、913mg/Lから984mg/Lおよび965mg/Lまで増加した。このことは、二酸化塩素の接触時間が、WAS可溶化のための重要な要因であるということを確認した。増加した可溶性COD濃度は、相当に顕著であるTCODの10%〜11%として表され得る。6時間の接触時間における可溶性COD濃度は、24時間において可溶性CODの約55%〜約65%であることも観察された。このことは、二酸化塩素処理による急速なWAS可溶化が最初の6時間で生じているということを示唆した。可溶性CODの増加は、異なる二酸化塩素処理添加量による4%〜6%の揮発性固形物の破壊に対応した。
【0048】
図2に示すように、NHの増加は、3mg/L〜5.2mg/Lであり、および全ての二酸化塩素処理において観察された。このことは、重要ではないと考えられる。POの増加は、ずっと高く、および24時間後において16mgP/L〜28.3mgP/Lに相当した。窒素よりも高いホスフェート放出は、結合されていないオルトホスフェートPO−Pの放出をもたらす細胞壁を破壊する二酸化塩素処理に寄与できる。細胞内の窒素は、有機性窒素(アミノ酸)の形態であり、および酵素は、有機性窒素をアンモニア窒素に転化するのに必要である。二酸化塩素処理から得られる低いpHは、酵素作用を不活性化したかもしれず、従って、NH−Nの増加が、無い/わずかに検出された。
【0049】
実施例3
二酸化塩素によって消化されていない汚泥を処理しおよび次いで嫌気性条件下において適切な有機物を物質に接種することは、バイオガスの製造を改善できる。この方法は、典型的な嫌気性消化のようなメタン生成の前に、異なって水素を生成する、または水素を「収集」するように、所定プロセスと併せて用いる場合に同じ利益を有する。この水素製造の1つの例は、水素ガスを発生させるように生物電気的に支援される微生物反応器と組合せて用いる場合である。この反応器の例は、米国特許第7,491,453号公報である。従って、別の実施形態では、本発明は、生汚泥試料、生分解可能な固形物を含む廃水または他の試料を得ること、試料内の微生物を減少または排除するのに充分な所定量の二酸化塩素を試料に付すこと、二酸化塩素で処理された試料に、嫌気性条件下において活性化された有益な微生物の接種物を接種すること、および接種した試料を、生体電気的に支援された嫌気性消化を促進する条件下に置くことによって水素ガスを発生させる方法または水素ガスを製造する同様の方法、ならびに前記水素ガスを収集することを有する。
【0050】
本明細書に参照された全ての特許、特許出願、特許公開、技術的刊行物、科学的刊行物、および他の参照は、本発明が有する技術を更に充分に説明するように本出願の参照によって本明細書に組み込まれることを念頭に置かれたい。
【0051】
とりわけ、バッファー、媒体、試薬、細胞または培養条件等もしくはそのいくつかの部分集合への言及は、限定されるものではないが、当業者が、特定の内容(その記載が示す)において利益または価値があると認識する全てのこのような関連物質を含むと解されるべきである。例えば、1つのバッファーシステムまたは培養媒体を他のものに代えることはしばしば可能であり、異なるが既知の方法は、提案された方法、物質または組成の使用がターゲットにするそれらと同じ目標を達成するのに用いられる。
【0052】
本明細書に用いる全ての技術的および科学的用語は、本明細書で規定されない限り、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有することが意図されることに留意することは、本発明の理解に重要である。本明細書に用いる技術は、別段の指定がない限り、当業者に知られているそれらでもある。本明細書に開示されおよび特許請求の範囲に示された本発明の理解を更に明確に容易にするために以下の定義を付する。
【0053】
本発明の多くの実施形態は、本明細書の本文中に示されおよび説明されるが一方で、このような実施形態は、単なる例示として付され、および限定するものではない。当業者は、本明細書の本発明から実質的に逸脱せずに、多くのバリエーション、変形および置換を考える。例えば、本発明は、本明細書に開示されるベストモードに対して限定される必要がない。なぜなら、他の適用は、同様に、本発明の教示から利益になり得るからである。また、特許請求の範囲において、ミーンズプラスファンクションおよびステッププラスファンクションクローズは、列挙した機能を果たすようにそれぞれ本明細書に記載された構造および行為、および構造の均等物または行為の均等物だけではなく等しい構造または等しい行為も含むことが意図される。従って、全てのこのような改良は、それらの解釈について関連法に従って以下の請求項で規定されるような本発明の特許請求の範囲の技術的範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
都市汚泥消化の改善方法であって、前記方法が:
廃棄活性汚泥(WAS)試料を得て;
前記WAS試料の10分以上の接触時間を可能にする条件下において前記WAS試料に二酸化塩素を投与して、処理されたWAS試料を生成し;
前記処理されたWAS試料に嫌気性消化または好気性消化を行う、
ことを含む、都市汚泥消化の改善方法。
【請求項2】
接触時間が、6時間以上であり、および嫌気性消化容器内において、処理されたWAS試料に嫌気性消化を行ってメタンを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱水したケーキ物質を生成するように、処理されたWAS試料を脱水し、および脱水したケーキ物質を堆肥化によって好気的に消化するための微生物を含む接種物を、脱水したケーキ物質に接種することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
堆肥化前に、脱水したケーキ物質を木材廃棄物または植物性廃棄物と混合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記脱水したケーキ物質に、堆肥化によって好気性消化を行うことを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記接種工程が、存在している堆肥化堆積物からの浸出液を前記脱水したケーキ物質に投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記投与工程が、6時間〜24時間の接触時間を可能にする条件下において容器内で前記WAS試料を二酸化塩素に付する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
浄化器から、浄化器と保持タンクの間において拡張している保持タンクに、WASを移動する配管内において、前記投与する工程を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
都市汚泥消化の改善方法であって、前記方法が:
廃棄活性汚泥(WAS)試料を得て:
二酸化塩素を前記WAS試料に投与して、処理されたWAS試料を生成し;
前記処理された(WAS)試料を脱水して、脱水したバイオソリッド試料を生成し;および
前記脱水したバイオソリッド試料を好気性条件下において堆肥化する、
ことを含む、都市汚泥消化の改善方法。
【請求項10】
堆肥化が、クラスAバイオソリッド試料を作り出す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
廃水処理システムであって:
a.バイオソリッドを含む廃水を処理するための生物学的処理ユニット;
b.廃棄活性汚泥(WAS)を生成するように水を前記廃水から除去するための、前記生物学的処理ユニットと流体連結している浄化器;
c.前記浄化器からWASを輸送するための第1配管;
d.処理されたWASを生成するように、二酸化塩素を前記WASに供給するように前記配管と流体連結している二酸化塩素源;
e.調整されたWASを生成するように、処理されたWASを予め決められた時間に亘って保持する大きさおよび寸法にされており前記配管と流体連結している保持タンク;
f.前記調整されたWASを消化してメタンガスを生成する、前記保持タンクと流体連結している好気性消化槽、
を含む廃水処理システム。
【請求項12】
前記消化槽と流体連結している脱水タンクを更に含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記処理されたWAS試料に、好気性消化に適している微生物を含む接種物を接種することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
処理されたWASが、処理されていないWASと比較して、揮発性固形物の促進された減少を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
処理されたWASが、処理されていないWASと比較して、VanKleek法により求めて少なくとも38%の促進された揮発性固形物の減少を達成する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−515600(P2013−515600A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546249(P2012−546249)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/062106
【国際公開番号】WO2011/079318
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512148780)ビーシーアール・エンバイロンメンタル・コーポレーション (3)
【氏名又は名称原語表記】BCR ENVIRONMENTAL CORPORATION
【Fターム(参考)】