説明

廃水処理方法

【課題】嫌気性アンモニア酸化細菌を用いて効率よく脱窒できる、廃水処理方法を提供する。
【解決手段】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を含む廃水24が処理反応槽14に供給される。処理反応槽14内で嫌気性アンモニア酸化細菌22により廃水24が脱窒処理され、窒素が除去される。処理反応槽14内の廃水24中に、ニッケルが0.05mg−Ni/Lを超え2mg−Ni/L以下の範囲で存在し、銅が0.06mg−Cu/Lを超え2mg−Cu/L以下の範囲で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,窒素廃水を生物学的に脱窒する廃水処理方法に関し、特に、アンモニアと亜硝酸を含有する廃水を独立栄養性の脱窒細菌を利用し脱窒する廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
閉鎖系水域における富栄養化の原因となる廃水中の窒素を除去することが求められている。窒素は下水や各種産業廃水に主にアンモニア性窒素の形態で含まれている。廃水中のアンモニア性窒素を除去する方法としては、一般的に活性汚泥に含まれる硝化細菌および脱窒細菌を用いて窒素ガスに変換し除去する方法が知られている。
【0003】
近年、新しい窒素除去方法として嫌気性アンモニア酸化法による窒素除去が注目されている(例えば特許文献1)。
【0004】
この嫌気性アンモニア酸化法は、処理する窒素含有水中のアンモニアを電子供与体とし、亜硝酸を電子受容体として、独立栄養細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌群により、アンモニアと亜硝酸の窒素を同時脱窒する方法である。この反応は以下に示した実験式で脱窒されると提唱されている。
【0005】
NH+1.32NO+0.066HCO+0.13H → 1.02N+0.26NO+0.066CH0.50.15+2.03H
これにより、従来の硝化・脱窒細菌による処理法と比較して、メタノール等の使用量を大幅に削減できることや、汚泥の発生量を削減できる等のメリットがある。したがって、窒素除去方法として省スペース・省エネルギー型の有効な方法であると考えられている。
【0006】
しかしながら、この嫌気性アンモニア酸化細菌群はまだ発見されてから多くの時間がたっていない。そのため、詳細な培養・馴養方法および培養・馴養に必要な基質成分、または阻害物質について不明な点が多い。
【0007】
嫌気性アンモニア酸化細菌群の多くの研究および文献にしたがえば、基本的に、非特許文献1に記載されている基質を用いて、培養運転、試験されていることが多い。非特許文献1では、窒素源のほか、無機炭素塩、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が記載されている。さらには微量元素として鉄、亜鉛、コバルト、マンガン、銅、モリブデン、ニッケル、セレン、ホウ素が添加されている。
【0008】
特許文献1は、アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素を含む廃水を独立栄養性脱窒微生物(嫌気性アンモニア酸化細菌群)により脱窒するとき、モリブデンを添加することにより、その細菌群の活性を高く維持し、効率よく脱窒できることを記載している。
【0009】
なお、2010年12月末現在での環境省における一律廃水基準に銅3mg/L、亜鉛2mg/Lが指定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−074111号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A.A. van de Graaf, P. Bruijn, L.A. Robertson, M.S.M. Jetten and J.G. Kuenen (1996) Autotrophic growth of anaerobic ammonium-oxidizing micro-organisms in a fluidized bed reactor. Microbiology, 142, 2187-2196.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記の通り、嫌気性アンモニア酸化細菌群はまだ発見されてから多くの時間を経過していない。したがって、嫌気性アンモニア酸化細菌群の活性を高く維持し、効率よく脱窒するための必要基質およびその量が明確になっていない。
【0013】
非特許文献1に記載のこれらの添加物は、嫌気性アンモニア酸化細菌群に限られるものではない。非特許文献1は、微生物の培養に一般的に必要とされている微量元素を広く記載しているだけであり、その量も一般的な範囲を記載しているだけである。また、非特許文献1は、増殖、活性に対しての効果等を開示していない。
【0014】
また、特許文献1は、コバルト、ニッケル等を添加しても嫌気性アンモニア酸化細菌の活性低下を防止したり、活性を上昇させたりすることはできないことを示している。
【0015】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、所定の微量元素と所定の濃度を廃水中に添加することで、嫌気性アンモニア酸化細菌を用いて効率よく脱窒できる、廃水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様の廃水処理方法は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を含む廃水を処理槽に供給する工程と、前記処理槽内で嫌気性アンモニア酸化細菌により前記廃水を脱窒処理する工程と、を含み、前記処理槽内の前記廃水中に、ニッケルが0.05mg−Ni/Lを超え2mg−Ni/L以下の範囲で存在し、銅が0.06mg−Cu/Lを超え2mg−Cu/L以下の範囲で存在することを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様の廃水処理方法は、好ましくは、前記処理槽内の前記廃水中に、さらに、亜鉛が0.1mg−Zn/Lを超え2mg−Zn/L以下の範囲で存在し、コバルトが0.06mg−Co/Lを超え1mg−Co/L以下の範囲で存在する。
【0018】
本発明の他の態様の廃水処理方法は、好ましくは、前記処理槽内の前記廃水中のモリブデンを0.1mg−Mo/L以下に維持する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の廃水処理方法によれば、嫌気性アンモニア酸化細菌が重金属の影響を受けることなく、嫌気性アンモニア酸化細菌により廃水中の窒素成分を効率よく脱窒することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】廃水処理装置の一例を示す構成図である。
【図2】ニッケルと銅の濃度と嫌気性アンモニア酸化細菌の活性比率との関係を示すグラフ。
【図3】各微量元素の濃度と嫌気性アンモニア酸化細菌の活性比率との関係を示すグラフ。
【図4】亜鉛の濃度と嫌気性アンモニア酸化細菌の活性比率との関係を示すグラフ。
【図5】コバルトの濃度と嫌気性アンモニア酸化細菌の活性比率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1は,本実施形態に係わる廃水処理方法を行うための廃水処理装置の一例を示す構成図である。廃水処理装置10は、送水ライン12、処理反応槽14、排水ライン16、処理反応槽14の底面に設置された攪拌装置18、微量元素注入ライン20を備える。処理反応槽14内には嫌気性アンモニア酸化細菌22が含まれている。
【0023】
次に廃水処理方法について説明する。少なくともアンモニアおよび亜硝酸を含む廃水24が送水ライン12を介して処理反応槽14に送水される。処理反応槽14内には嫌気性アンモニア酸化細菌22が含まれており、嫌気性アンモニア酸化細菌22により廃水24中に含まれるアンモニアと亜硝酸とが同時脱窒される。廃水24は排水ライン16から処理水として排出される。撹拌装置18により、嫌気性アンモニア酸化細菌22と廃水24とを効率よく接触させることが好ましい。
【0024】
処理反応槽14に送水される廃水24中のアンモニア性窒素濃度は20〜5000mg/Lであることが好ましい。アンモニアを処理するために必要な亜硝酸量は、アンモニア性窒素量に対して亜硝酸の亜硝酸性窒素量が1〜1.5倍の範囲であることが好ましい。
【0025】
嫌気性アンモニア酸化細菌22は高濃度の亜硝酸に阻害を受ける。したがって、処理反応槽14内の亜硝酸濃度は、300mg−N/L、特には100mg−N/L以下に維持することが、好ましい。
【0026】
嫌気性アンモニア酸化細菌22は嫌気性細菌である。処理反応槽14内の溶存酸素量(DO)に関して、嫌気性アンモニア酸化細菌22に対する反応阻害が起きない限り、その値は何ら限定されない。但し、反応阻害を避けるためには、溶存酸素量は、1mg/L以下であることが好ましい。また、pHはpH6〜8であることが好ましい。
【0027】
窒素含有廃水の容積負荷は窒素量として0.5〜10.0kg−N/m/dayが最も好ましい。処理反応槽14内には、嫌気性アンモニア酸化細菌22が含まれているが、この菌の固定形態は特に限定されない。浮遊状態や自己造粒したグラニュール状態、固定床や流動床、揺動床などへの付着固定や包括固定化状態が可能である。
【0028】
処理反応槽14では箱型の反応槽を示しているが、菌の固定化形態に応じて、円筒型や沈殿地型など固液分離可能な形態を採用することができる。また、廃水の入り口としては上向流式での流れも可能である。さらには連続式に廃水を流入させる場合に加えて、回分式、半回分式に運転することも可能である。また循環ラインを設けることもできる。
【0029】
本実施の形態で使用される嫌気性アンモニア酸化細菌22は、アンモニア性窒素を電子供与体、亜硝酸性窒素を電子受容体として窒素ガスを生成させる独立栄養性の脱窒細菌である。嫌気性アンモニア酸化細菌22は、例えば特開2006−246847号公報に記載されている培養方法で採取可能である。
【0030】
本実施の形態では処理反応槽14内の廃水24中に、ニッケルが0.05mg−Ni/Lを超え2mg−Ni/L以下の範囲で存在し、銅が0.06mg−Cu/Lを超え2mg−Cu/L以下の範囲で存在する。これらの微量元素により嫌気性アンモニア酸化細菌22の活性比率を向上することができる。
【0031】
ニッケルに関して、例えば塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケルなどのニッケル化合物のほか、ニッケルが含まれる排液等を使用することができる。固体または粉、水溶液状にしたものを処理対象の廃水24に、例えば微量元素注入ライン20から添加することができる。
【0032】
廃水24中にニッケルを存在させることにより、嫌気性アンモニア酸化細菌22の活性を上昇させることができる。また、活性の維持、活性低下の防止をすることができる。廃水24中に共存させるニッケル濃度は0.05mg−Ni/Lを超え2mg−Ni/L以下の範囲である。
【0033】
銅に関して、例えば塩化第一銅、塩化第二銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅などの銅化合物のほか、銅が含まれる排液等を使用することができる。固体または粉、水溶液状にしたものを処理対象の廃水24に、例えば微量元素注入ライン20から添加することができる。
【0034】
廃水24中に銅を存在させることにより、嫌気性アンモニア酸化細菌22の活性を上昇させることができる。また、活性の維持、活性低下の防止をすることができる。廃水24中に共存させる銅濃度は0.06mg−Cu/Lを超え2mg−Cu/L以下の範囲である。
【0035】
本実施の他の形態では処理反応槽14内の廃水24中に、さらに、亜鉛を0.1mg−Zn/Lを超え2mg−Zn/L以下の範囲で、コバルトを0.06mg−Co/Lを超え1mg−Co/L以下の範囲で含ませることができる。
【0036】
亜鉛に関して、例えば硝酸亜鉛、炭酸亜鉛などの亜鉛化合物のほか、亜鉛が含まれる排液等を使用することができる。固体または粉、水溶液状にしたものを処理対象の廃水24に、例えば微量元素注入ライン20から添加することができる。
【0037】
廃水24中に亜鉛を存在させることにより、嫌気性アンモニア酸化細菌22の活性を上昇させることができる。また、活性の維持、活性低下の防止をすることができる。廃水24中に共存させる亜鉛濃度は0.1mg−Zn/Lを超え2mg−Zn/L以下の範囲である。図4は、亜鉛の濃度と嫌気性アンモニア酸化細菌の活性比率との関係を示すグラフである。このグラフによれば、0.1mg−Zn/Lを超え2mg−Zn/L以下の範囲とすることで、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性の維持、および活性低下の防止をすることができる。
【0038】
コバルトに関して、例えば塩化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルトなどのコバルト化合物のほかコバルトが含まれる排液等を使用することができる。固体または粉、水溶液状にしたものを処理対象の廃水24に、例えば微量元素注入ライン20から添加することができる。
【0039】
廃水24中にコバルトを存在させることにより、嫌気性アンモニア酸化細菌22の活性を上昇させることができる。また、活性の維持、活性低下の防止をすることができる。廃水24中に共存させるコバルト濃度は0.06mg−Co/Lを超え1mg−Co/L以下の範囲である。図5は、コバルトの濃度と嫌気性アンモニア酸化細菌の活性比率との関係を示すグラフである。このグラフによれば、0.06mg−Co/Lを超え1mg−Co/L以下の範囲とすることで、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性の維持、および活性低下の防止をすることができる。
【0040】
本実施の他の形態では、処理反応槽14内の廃水24中のモリブデンを0.1mg−Mo/L以下に維持する。
【0041】
モリブデンに関して、例えばモリブデン酸ナトリウム、塩化モリブデン、モリブデン酸アンモニウムなどのモリブデン化合物のほか、モリブデンが含まれる排液等を使用することができる。固体または粉、水溶液状にしたものを処理対象の廃水24に、例えば微量元素注入ライン20から添加することができる。
【0042】
微量のモリブデンの共存下では、嫌気性アンモニア酸化細菌22はその活性を下げる。したがって、活性低下防止のために,廃水24中に共存させるモリブデン濃度は0.1mg/L以下であることが好ましい。
【0043】
本実施の形態では、各微量元素を微量元素注入ライン20により廃水24中に添加した。しかし、これに限定されない。例えば、廃水24を貯留するピットタンクに微量元素注入ラインを設けることができる。この微量元素注入ラインからピットタンク内の廃水に各微量元素を添加できる。また、これらを複合的に組み合わせて各微量元素を添加することも可能である。
【0044】
さらに、これらの微量元素に加えて他の重金属類を含有することは可能である。他に無機炭素、リン等の基質を添加することも可能である。これらにより,嫌気性アンモニア酸化細菌群の活性を下げることなく、脱窒することができる。
【0045】
[実施例]
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0046】
[実施例1]
本例では嫌気性アンモニア酸化細菌をPEG系のゲルで包括固定化した担体を使用した。廃水として、非特許文献1に示される組成の無機合成廃水を基本とした。アンモニア濃度は約160mg−N/L、亜硝酸濃度は約200mg−N/L、表1の微量元素を含有させたものを使用した。本例では500mLの処理反応槽を使用した。処理反応槽内に嫌気性アンモニア酸化細菌の担体を100mL添加した。水温30℃,pH7.6、原水DO=約0.5mg/L以下の条件で原水ポンプを介して同合成廃水を処理反応槽に連続通水し、定常的に窒素除去活性を得ているものを使用した。
【0047】
図2は、ニッケルと銅の濃度と嫌気性アンモニア酸化細菌の活性比率との関係を示すグラフである。
【0048】
原水槽に貯留される廃水について、表1に示された微量元素のうち、NiCl・6HOを0.05mg−Ni/Lから0mg−Ni/L、およびCuSO・5HOを0.06mg−Cu/Lから0mg−Cu/Lに変化させた。嫌気性アンモニア酸化細菌の活性は、約6%低下した。
【0049】
次に、原水槽に貯留される廃水について、表1に示された微量元素のうち、NiCl・6HOを0.05mg−Ni/Lから0.5mg−Ni/L、およびCuSO・5HOを0.06mg−Cu/Lからから0.5mg−Cu/L、合計1mg−Ni+Cu/Lに変化させた。嫌気性アンモニア酸化細菌の活性は約15%上昇した。
【0050】
次に、原水槽に貯留される廃水について、表1に示された微量元素のうち、NiCl・6HOを0.05mg−Ni/Lから1mg−Ni/L、およびCuSO・5HOを0.06mg−Cu/Lからから1mg−Cu/L、合計2mg−Ni+Cu/Lに変化させた。嫌気性アンモニア酸化細菌の活性は約16%上昇した。
【0051】
廃水中にニッケルと銅とを、合計で0.11mg−Ni+Cu/Lを超え、2mg−Ni+Cu/Lの範囲の濃度を添加することで、嫌気性アンモニア酸化細菌群の活性をさらに高め、効率よく脱窒できる。
【0052】
【表1】

【0053】
[実施例2]
本例では嫌気性アンモニア酸化細菌をPEG系のゲルで包括固定化した担体を使用した。廃水は非特許文献1に示される組成の無機合成廃水を基本とした。アンモニア濃度は約160mg−N/L、亜硝酸濃度は約200mg−N/L、表1の微量元素を含有させたものを使用した。本例では500mLの処理反応槽を使用し、そこに嫌気性アンモニア酸化細菌の担体を100mL添加した。水温30℃,pH7.6、原水DO=約0.5mg/L以下の条件で原水ポンプを介して同合成廃水を反応槽に連続通水し、定常的に窒素除去活性を得ているものを使用した。
【0054】
次に、原水槽に貯留される本廃水のアンモニア濃度を約70mg−N/L、亜硝酸濃度を約70mg−N/Lとしたもの、または、アンモニア濃度を約310mg−N/L、亜硝酸濃度を約400mg−N/Lとしたもの、つまり、窒素濃度が異なる廃水を用意した。
【0055】
さらにその中の、微量元素のうち、NiCl・6HOを0.05mg−Ni/Lを中心に、0〜1mg−Ni/L、およびCuSO・5HOを0.06mg−Cu/Lを中心に、0〜1mg−Cu/L、(合計:0〜2mgNi+Cu/L)に設定した廃水を通水した。
【0056】
その結果を表2に示す。表2にしたがえば、廃水中の窒素濃度によらず、廃水中にニッケルと銅とを合計で0.11mg/Lを超え、2mg/Lの範囲の濃度を添加することで、嫌気性アンモニア酸化細菌群の活性をさらに高めることができる。
【0057】
【表2】

【0058】
[実施例3]
本例では嫌気性アンモニア酸化細菌をPEG系のゲルで包括固定化した担体を使用した。廃水は非特許文献1に示される組成の無機合成廃水を基本とした。アンモニア濃度は約160mg−N/L、亜硝酸濃度は約200mg/L、表1の微量元素を含有させたものを使用した。本例では500mLの処理反応槽を使用し、そこに嫌気性アンモニア酸化細菌の担体を100mL添加した。水温30℃,pH7.6、原水DO=約0.5mg/L以下の条件で原水ポンプを介して同合成廃水を連続通水し、定常的に窒素除去活性を得ているものを使用した。図3は、各微量元素の濃度と嫌気性アンモニア酸化細菌の活性比率との関係を示すグラフである。
【0059】
次に、原水槽に貯留される廃水について、表1に示された微量元素のうち、NaMoO・2HOのみを0.1mg−Mo/Lから0.001mg−Mo/L程度に変更させた。嫌気性アンモニア酸化細菌の活性は、変化しなかった。
【0060】
モリブデンを0.2mg−Mo/Lとなるように追加した。その結果、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性は、モリブデンを追加する前の活性より約70%低下した。また0.5mg−Mo/Lとなるように追加した。その結果、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性は、モリブデンを追加する前の活性より約90%低下した。
【0061】
次に、原水槽に貯留される廃水について、表1に示された微量元素のうち、NaMoO・2HOを0.001mg−Mo/L、NiCl・6HOを0.5mg−Ni/L、ZnSO・7HOを0.5mg−Zn/L、CuSO・5HOを0.5mg−Cu/L、CoCl・6HOを0.5mg−Co/Lとなるようにそれぞれ追加した。その結果、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性は、上記4つの微量元素を追加する前の活性より、約6%上昇した。
【0062】
以上詳述した通り、本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌による廃水処理方法によれば、廃水中に微量元素をコントロールすることで、嫌気性アンモニア酸化細菌群の活性を高め、または活性を下げることなく、効率よく脱窒することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…廃水処理装置は、12…送水ライン、14…処理反応槽、16…排水ライン、18…攪拌装置、20…微量元素注入ライン、22…嫌気性アンモニア酸化細菌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を含む廃水を処理槽に供給する工程と、
前記処理槽内で嫌気性アンモニア酸化細菌により前記廃水を脱窒処理する工程と、を含み、
前記処理槽内の前記廃水中に、ニッケルが0.05mg−Ni/Lを超え2mg−Ni/L以下の範囲で存在し、銅が0.06mg−Cu/Lを超え2mg−Cu/L以下の範囲で存在することを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
前記処理槽内の前記廃水中に、さらに、亜鉛が0.1mg−Zn/Lを超え2mg−Zn/L以下の範囲で存在し、コバルトが0.06mg−Co/Lを超え1mg−Co/L以下の範囲で存在する請求項1記載の廃水処理方法。
【請求項3】
前記処理槽内の前記廃水中のモリブデンを0.1mg−Mo/L以下に維持する請求項1又は2に記載の廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232262(P2012−232262A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103057(P2011−103057)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 省水型・環境調和型水循環プロジェクト 水循環要素技術研究開発 高効率難分解性物質分解技術の開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】