説明

廃水処理装置

【課題】安定した処理の実現を可能にし、処理設備の設置スペースを大幅に縮減できる廃水処理装置を提供すること。
【解決手段】廃水を、生物反応槽に導入して、該反応槽内の活性汚泥により生物処理を行う廃水処理装置において、前記生物反応槽に、網状回転式バチルス接触体装置を設け、該網状回転式バチルス接触体装置は、回転軸と、該回転軸の周りに所定間隔に並設された複数の網状回転式バチルス接触体とからなり、該網状回転式バチルス接触体には、バチルス種混合菌を優占種にした微生物フィルムが付着されており、前記生物反応槽内の活性汚泥は、バチルス種混合菌を優占種にした微生物であり、前記複数の網状回転式バチルス接触体の下方領域部位が、該生物反応槽内の活性汚泥に浸漬するように設置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理装置に関し、詳しくは、有機物濃度の変動する廃水を効率的に処理する廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水などのような大量に排出される廃水は、活性汚泥法による処理装置が採用されている。
【0003】
活性汚泥法は、生物反応槽内に活性汚泥を入れておき、廃水を導入して、生物反応槽内を空気曝気して、好気的な環境下で、生物化学的に処理する手法である。
【0004】
活性汚泥法の担い手である活性汚泥は、従来、ズーグレア主体の好気性微生物が中心であったが、近年、新たな微生物培養技術によって土壌菌の1種であるバチルス菌が培養され、それらの菌体が、有機物の処理に有効に機能することが発見された。
【0005】
特許文献1は、バチルス菌種混合菌を優占種にした微生物フィルムが付着された網状回転式バチルス接触体を用いた生物処理を行った後に、生物反応槽において曝気式の活性汚泥処理を行う処理方式が開示されている。
【0006】
この方式により有機物を高度に処理できるようになり、下水処理分野でも注目される処理方式となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−253948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、いまだ改良すべき課題が残されている。微生物処理においては、廃水から供給される有機物の負荷が変動することにより、生物反応槽内の微生物が死滅したりすることが見られた。時には、優先種となったバチルス菌の菌数が少なくなるという現象が発生することがあった。
【0009】
このような負荷変動に対して、特許文献1では、水量調整槽(水量バッファータンク)を設けているが、下水のような大量の廃水の場合には、水量調整するために、大きな水槽を準備しなければならなくなり、設備コストを低減できない課題があった。
【0010】
有機物を含む下水などの廃水の排出量は、1日のうちの時間帯によって大幅に変動し、例えば昼間はほとんど排出する廃水が少なく、夜間に大量に排出することがある。このような場合、生物反応槽に均等の水量で供給し、有機物負荷を均一にしようとすると、さらに大きな水量調整槽が必要となる。水量調整しなければ負荷変動によって安定な処理が実現できない課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、安定した処理の実現を可能にし、処理設備の設置スペースを大幅に縮減できる廃水処理装置を提供することを課題とする。
【0012】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0014】
(請求項1)
廃水を、生物反応槽に導入して、該反応槽内の活性汚泥により生物処理を行う廃水処理装置において、
前記生物反応槽に、網状回転式バチルス接触体装置を設け、
該網状回転式バチルス接触体装置は、回転軸と、該回転軸の周りに所定間隔に並設された複数の網状回転式バチルス接触体とからなり、
該網状回転式バチルス接触体には、バチルス種混合菌を優占種にした微生物フィルムが付着されており、
前記生物反応槽内の活性汚泥は、バチルス種混合菌を優占種にした微生物であり、
前記複数の網状回転式バチルス接触体の下方領域部位が、該生物反応槽内の活性汚泥に浸漬するように設置される
ことを特徴とする廃水処理装置。
【0015】
(請求項2)
前記生物反応槽は、生物処理を多段階で行うために複数の水槽によって構成され、
複数の生物反応槽のうちの、廃水が導入される最初の生物反応槽に、網状回転式バチルス接触体装置を設けることを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【0016】
(請求項3)
前記最初の生物反応槽は、対向する壁面を少なくとも2つ有する方形状の水槽からなり、
該対向する壁面の各々の上部に、軸受を設置し、
該対向する軸受に、前記回転軸の両側部を回動可能に設けて、
前記複数の網状回転式バチルス接触体の下方領域部位が、該生物反応槽内の活性汚泥に浸漬しながら、該網状回転式バチルス接触体が回動する
ことを特徴とする請求項2記載の廃水処理装置。
【0017】
(請求項4)
前記最初の生物反応槽内の活性汚泥の濃度(MLSS)が、3000〜15000mg/Lの範囲に維持され、活性汚泥の水深が、2〜5mの範囲であることを特徴とする請求項2又は3記載の廃水処理装置。
【0018】
(請求項5)
前記最初の生物反応槽内の底部近傍に、前記対向する壁面に平行に散気管を設け、該散気管は、前記網状回転式バチルス接触体の回転領域幅の外側に設置されることを特徴とする請求項3又は4記載の廃水処理装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生物反応槽に、網状回転式バチルス接触体装置を設け、しかも、該網状回転式バチルス接触体装置は、回転軸と、該回転軸の周りに所定間隔に並設された複数の網状回転式バチルス接触体とからなり、該網状回転式バチルス接触体には、バチルス種混合菌を優占種にした微生物フィルムが付着されており、前記生物反応槽内の活性汚泥は、バチルス種混合菌を優占種にした微生物であり、前記複数の網状回転式バチルス接触体の下方領域部位が、該生物反応槽内の活性汚泥に浸漬するように設置されているから、一つの生物反応槽において、バチルス種混合菌を優占種にした微生物による有機物の処理と、網状回転式バチルス接触体に付着したバチルス種混合菌を優占種にした微生物フィルムによる有機物の処理が同時に行われる。
【0020】
従って、曝気槽による生物反応槽と網状回転式バチルス接触体装置とを別々に設置するのと比べると、設置スペースが約半分に縮小され、処理スペースが縮減できる。
【0021】
またバチルス種混合菌を優占種にした微生物は、生物反応槽内に懸濁状態で存在するだけでなく、網状回転式バチルス接触体に付着して存在するので、一つの生物反応槽内の微生物の絶対量は、生物反応槽のみに存在する微生物量と比較すれば、大幅に増量しており、また網状回転式バチルス接触体に付着して存在する微生物量と比較しても大幅に増量している。従って、一つの生物反応槽で、大量の負荷有機物を処理できる。つまり、高負荷の廃水処理が可能となる。
【0022】
有機物の負荷が変動しても、大量の微生物が存在すれば、その変動を容易に吸収できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の廃水処理装置の一例を示す要部断面図
【図2】図1の平面図
【図3】図1のIII−III線断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
図1は本発明の廃水処理装置の一例を示す要部断面図、図2は図1の平面図、図3は図1のIII−III線断面図である。
【0026】
図1〜3において、1は生物反応槽であり、内部にバチルス種混合菌を優占種にした微生物からなる活性汚泥が所定液面まで入れてある。
【0027】
バチルス種混合菌は、グラム陽性真性細菌の桿菌であり、単細胞性として分離した環境条件の下では内生胞子を形成して休眠に入っていく。好気性または通性嫌気性菌として、これを利用する下水浄化処理方法で、上記のバチルス種混合菌は、標準活性スラッジ法で生育される微生物群の中にも含まれていており、これを優占培養することから以下のような独特な特性を持っている。
【0028】
(1)グラム陽性真性細菌として、内生胞子という特異な形態の休眠細胞を生成する。菌の大きさは0.5〜2.5×1.2〜10μmの桿菌である。
(2)活発に分裂・増殖する間には内生胞子が形成されないが、有機栄養物質が枯渇すると、栄養細胞群は、対数成長期から停止期に接近する時、胞子への分化が始まる。
(3)一般的に、一つの栄養細胞から一つの内生胞子だけが形成される。
(4)内生胞子は、熱、紫外線、電離放射線、多くの毒性化学物質に対して抵抗性が強い。
(5)単細胞性内生胞子形成菌は、全て二分法で増殖し、殆ど桿菌である。
(6)バチルス種混合菌は、グラム陽性好気性、または、通性嫌気性胞子形成桿菌で、殆どは周毛性鞭毛を持ち、長い連鎖相をなし、集落はR型を表す。殆どの菌種はカタラーゼ(catalase)陽性である。
(7)化学従属栄養生成物の桿菌として、好気性、窒酸(嫌気性)呼吸または発酵により有機化合物を異化する。
(8)典型的な棲息地は土壌で、殆どが非病原性である。
(9)バチルス種混合菌等の炭素源は、糖、有機酸、アルコールなどで、窒素原は、アンモニウムであり、これらが含まれている下水で微好気の状態(DO0.5〜1.0mg/l)で良く生長する。
(10)殆どのバチルス種混合菌は、多糖類、蛋白質、核酸、油脂粉、難分解性有機物などを分解する強力な加水分解酵素であるカタラーゼ(Catalase)と、スーパーオキサイドディスムターゼ(Superoxidedismutase)を生産するが、このような物質は、炭素源と電子供与体で利用できるように分解する。
(11)バチルス種の中にはバクトラシン(Bactracin)、ポリミキシン(Polymixin)、チロキシン(Thyrocin)、グラミシジン(Gramicidin)、サークリン(Circulin)、コリスチン(Colistin)等の抗生物質を分泌するが、これらの生産は、胞子形成と関連があり、抗生物質の分泌は、培養体が停止期に入っていく時で、その以後に胞子形成が始まる。沈降されたスラッジ状態で他の微生物は、これらの抗生物質によって溶菌または死滅され、純粋バチルス種混合菌の胞子だけが生存するようになって搬送と内部曝気液の循環時に優占化を促進するようになる。これらの抗生物質は、多量に生産されて商品化されている。
(12)また、胞子形成の時に胞子壁の周囲にEPS(ExtracellularPolymeric Substance)を形成してお互いに絡まり、周囲の浮遊物質と原生動物類などを吸着させることで、群れ(Flock)を大きくし、比重を高めて沈澱池で固液分離が良く起こるようになり、剰余スラッジを脱水器で脱水する時、脱水効率を高め、凝集薬品の投入量を顕著に減らしてくれる役割をする。
(13)桿菌のバチルス種混合菌は、分裂を続けながら糸状体で成長をするが、成長促進剤として微量の珪素を含む物質を投与する。胞子化の促進及び生長増殖のために微量のマグネシウムを含む物質を投与する。マグネシウムは、リボソーム、細胞膜及び核酸などを安定化させて、多くの酵素の内、リン酸転移酵素の酵素として作用するが、一般的に、グラム陽性菌は、グラム陰性菌より10倍程度以上要求する。また、微量のマンガンを含む物質を一緒に投与すると、マンガンは、リン酸塩を含有する物質に作用する色々な酵素の活性剤で作用し、微生物に有毒な酸素誘導体を害毒し、難分解性有機物を分解するのに重要な役割を持っている不均等化酵素(スーパーオキサイドディスムターゼ(Superoxidedismutase))の分泌に関与する。
(14)バチルス種混合菌は、アンモニア、硫化水素、アミン類、メルカプタンなどが酸化される前に直接摂取して代謝するので、処理過程で悪臭が発生せず、別途の悪臭処理設備が要らない。
【0029】
バチルス種混合菌を培養して生物反応槽内に生息し、その濃度はMLSS濃度として、3000〜15000mg/Lの範囲に維持される。
【0030】
生物反応槽内のバチルス種混合菌である活性汚泥の水深は、通常の曝気式活性汚泥法で採用されている汚泥水深と同様の所定の深さであり、本発明では、2〜5mの範囲であることが好ましい。
【0031】
生物反応槽1の底部には、散気管10が設置され、散気管10は、図示しない送風機に配管を介して接続され、散気管10に空気を供給できるようになっている。
【0032】
生物反応槽1は複数の水槽によって構成することもできるが、その場合、少なくとも廃水が導入される最初の水槽は、曝気されるように構成することが好ましい。
【0033】
例えば4室で構成された生物反応槽における空気からの酸素供給は、生物反応槽の最初の第1室に集中曝気し、バチルス種混合菌の糸状化を促進するために、微生物活性剤を投与すると同時に溶存酸素(DO)を1mg/L程度となるように調節する。
【0034】
バチルス種混合菌の個体数を一定に維持するために、図示しない沈殿槽からのスラッジを最初の(第1室)生物反応槽に返送したり、最後の第4室から返送して循環させながら、バチルス種混合菌の最適成長条件を作り、生物反応槽の第2室以降からは乏しい栄養状態にしながら、徐々に溶存酸素を0.1mg/L以下となるようにすることが好ましい。
【0035】
本発明では、例えば、4つの水槽からなり、3つの水槽は、曝気するが、その最後の生物反応槽は曝気することなく、微生物の沈降を防止する程度の機械攪拌を行うことも好ましい。
【0036】
このように曝気をせずに、バチルス種混合菌の栄養細胞が生きられない最悪の条件を造成して、全てが内生胞子を形成するように誘導すると共に、空気曝気攪拌に比べて抗生物質の分泌が増し、大腸菌群の殺菌効果がより向上する。
【0037】
このような曝気をしない状態の飢餓状態の微生物を、最初の生物反応槽に循環返送すると、生物反応槽内の有機物を急速に捕捉し、分解する。
【0038】
以上の生物反応槽の形状は格別限定されないが、対向する壁面を少なくとも2つ有する方形状の水槽からなる。例えば、長方形、正方形、多角形などが挙げられる。水槽はコンクリート水槽でも、鋼板製水槽、樹脂製水槽などのいずれでもよい。
【0039】
図1〜3において、2は網状回転式バチルス接触体装置であり、該装置2は、回転軸20と、該回転軸20の周りにスペーサー21により所定間隔に並設された複数の網状回転式バチルス接触体22とを備える。
【0040】
最初の生物反応槽1は、図2に示すように、対向する壁面11、11と12、12を2つ有する長方形の水槽であり、その対向する壁面11、11の各々の上部に、軸受23、23を各々設置する。該対向する軸受23、23に、前記回転軸20の両側部を回動可能に設ける。回転軸20は回転可能な駆動機構24に連結されている。
【0041】
駆動機構24は、図示しない回転速度変換装置により、回転速度を制御可能に構成されている。
【0042】
通常、回転軸20には、10〜30枚程度の円形の網状型回転式バチルス接触体22が設置されている。
【0043】
複数の円形の網状回転式バチルス接触体22、22・・・・は、下方領域部位を生物反応槽1内の活性汚泥に浸漬し、残りを大気中に露出させるように設置される。なお本発明において下方領域部位とは、バチルス接触体の下方(下端)から、直径長さの20%〜50%、好ましくは30%〜40%の領域部位である。
【0044】
回転軸20が適当な速度で回転すると、網状形回転式バチルス接触体22を形成する網状形繊維組織に付着させたバチルス種混合菌の活動に必要とされる酸素と、下水浄化処理に必要とされる酸素が、空気中から供給される。
【0045】
各網状形回転式バチルス接触体22は、ポリビニリデン・クロライドのような剛性を持った合成繊維材を適当に屈曲加工したものを不規則に網状形になるようにして、ポリビニリデン・クロライド系の接着剤をスプレー方式で散布して付着させ、各繊維の交点部分において、上述した接着剤の接着凝結によって一体化させている。
【0046】
本発明において、合成繊維材は見かけ比重が0.04〜0.08g/cm、孔隙率が97%以上であることが好ましく、これにより、回転の際、活性汚泥と空気の網状組織に対する出入が易しく、バチルス種混合菌を主体にしたバチルス種混合菌の生育を旺盛にして良好な処理効果を得るようになる。
【0047】
生物反応槽1内で、散気管10から排出された空気は、活性汚泥に酸素を供給するのみならず、活性汚泥を攪拌して、微生物と廃水の接触効率を上昇させる役割を果たす。そのような役割を十分果たすためには、空気は汚泥液面から外部に抜け出でないようにするために、網状形回転式バチルス接触体22を散気管10の上部に配置したところ、攪拌効果が減少する傾向にあることがわかった。
【0048】
そこで、本発明では、最初の生物反応槽1内の底部近傍に、前記対向する壁面12、12に平行に散気管10を設け、該散気管10は、前記網状回転式バチルス接触体22の回転領域幅の外側に設置されることが好ましい。このような配置にすると、生物反応槽1内で散気管10からの空気曝気による微生物への酸素供給と、微生物攪拌の両方が効果的に実施でき、また曝気した空気が直接網状回転式バチルス接触体22に当たることがないので、微生物の剥離という問題を引き起こすこともない。回転体領域の両側の散気管10の存在により、生物反応槽1内の微生物が、網状回転式バチルス接触体22側に押しやられるので、微生物フィルムの付着促進効果がある。
【0049】
本発明によれば、生物反応槽1に、網状回転式バチルス接触体装置2を設け、しかも、該網状回転式バチルス接触体装置2は、回転軸20と、該回転軸20の周りに所定間隔に並設された複数の網状回転式バチルス接触体22とからなり、該網状回転式バチルス接触体22には、バチルス種混合菌を優占種にした微生物フィルムが付着されており、前記生物反応槽1内の活性汚泥は、バチルス種混合菌を優占種にした微生物であり、前記複数の網状回転式バチルス接触体22の下方領域部位が、該生物反応槽1内の活性汚泥に浸漬するように設置されているから、一つの生物反応槽1において、バチルス種混合菌を優占種にした微生物による有機物の処理と、網状回転式バチルス接触体22に付着したバチルス種混合菌を優占種にした微生物フィルムによる有機物の処理が同時に行われる。
【0050】
従って、曝気槽による生物反応槽と網状回転式バチルス接触体装置とを別々に設置するのと比べると、設置スペースが約半分に縮小され、処理スペースが縮減できる。
【0051】
またバチルス種混合菌を優占種にした微生物は、生物反応槽1内に懸濁状態で存在するだけでなく、網状回転式バチルス接触体22に付着して存在するので、一つの生物反応槽1内の微生物の絶対量は、生物反応槽1のみに存在する微生物量と比較すれば、大幅に増量しており、また網状回転式バチルス接触体22に付着して存在する微生物量と比較しても大幅に増量している。従って、一つの生物反応槽1で、大量の負荷有機物を処理できる。つまり、高負荷の廃水処理が可能となる。
【0052】
有機物の負荷が変動しても、大量の微生物が存在すれば、その変動を容易に吸収できる効果がある。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記に限定されず、例えば、上記の4つの生物反応槽の最初の水槽以外に、第2槽、第3槽に、網状回転式バチルス接触体装置2を設置することもできる。また第4槽に設けることもでき、その場合、第4槽の散気管10からの曝気を停止することもできる。その場合には、第2槽から第3槽を経るに従って、廃水中の有機物はほとんど分解され、第4槽においては栄養源はなくなっている状況にある。バチルス菌の栄養源がなくなっている状況下で、曝気空気も与えられない過酷な環境に置かれたバチルス菌は飢餓状態に置かれ胞子化する。その胞子化されたバチルス菌が第1槽に返送されると、廃水中の有機物と接触し、急激に有機物を捕捉し、分解する。この現象は、第1槽において、生物反応槽1のみならず、網状回転式バチルス接触体装置22も設置され、その付着したバチルスフィルムが有機物捕捉、分解を行うので、処理効率が倍増する。
【0054】
また第1槽、第2槽の生物反応槽を設け、第1槽と第2槽で、各々硝化と脱窒を行うこともできる。その場合、第1槽では、網状回転式バチルス接触体22を活性汚泥中に浸漬させ、嫌気下で脱窒を行い、第2槽では、図1に示すように、網状回転式バチルス接触体22を設置し、好気的な硝化を行うこともできる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0056】
(実施例1)
生物反応槽を4槽設け、最初の生物反応槽(第1槽)に、図1に示すように網状回転式バチルス接触体装置(網状形回転式バチルス接触体の枚数:30枚、網状形回転式バチルス接触体の直径(φ):2m、回転速度(周速度):31.4m/分)を設置した。網状回転式バチルス接触体には、バチルス種混合菌を優占種にした微生物フィルムが付着されている。成長促進剤として微量の珪素及びマグネシウムを含む物質を投与してバチルス種混合菌を優占種にした。
【0057】
有機物の負荷変動が激しい屠場廃水を生物反応槽(汚泥水深:3m、汚泥濃度:5000mg/L)に導入し、曝気処理と網状回転式バチルス接触体による処理を行った。
【0058】
網状形回転式バチルス接触体の下部の約30%(接触体の下端から約60cmまでの領域部位)を、第1槽の活性汚泥中に浸漬させた。
【0059】
この処理施設を建設して試運転を経て正常運転が始まった3ヶ月以後に、原水のBOD、COD、SS、T−N及びT−Pの平均値、及び、反応槽から取り出した汚泥を沈殿槽で固液した後の処理水のBOD、COD、SS、T−N及びT−Pの最大値について分析した。
分析結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
実施例1において、網状回転式バチルス接触体装置を設置しない以外は、同様にして処理を行い、処理水のBOD、COD、SS、T−N及びT−Pの最大値について分析した。
分析結果を表1に示す。
【0061】
【表1】


(実施例2)
実施例1において、廃水を、有機物の負荷変動が激しい納豆製造廃水に代えた以外は同様にして処理し、原水のBOD、COD、SS、T−N及びT−Pの平均値、及び、処理水のBOD、COD、SS、T−N及びT−Pの最大値について分析した。
分析結果を表2に示す。
【0062】
(比較例2)
実施例2において、網状回転式バチルス接触体装置を設置しない以外は、同様にして処理を行い、処理水のBOD、COD、SS、T−N及びT−Pの最大値について分析した。
分析結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【符号の説明】
【0064】
1:生物反応槽
10:散気管
11、12:壁面
2:網状回転式バチルス接触体装置
20:回転軸
21:スペーサー
22:網状回転式バチルス接触体
23:軸受
24:駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水を、生物反応槽に導入して、該反応槽内の活性汚泥により生物処理を行う廃水処理装置において、
前記生物反応槽に、網状回転式バチルス接触体装置を設け、
該網状回転式バチルス接触体装置は、回転軸と、該回転軸の周りに所定間隔に並設された複数の網状回転式バチルス接触体とからなり、
該網状回転式バチルス接触体には、バチルス種混合菌を優占種にした微生物フィルムが付着されており、
前記生物反応槽内の活性汚泥は、バチルス種混合菌を優占種にした微生物であり、
前記複数の網状回転式バチルス接触体の下方領域部位が、該生物反応槽内の活性汚泥に浸漬するように設置される
ことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項2】
前記生物反応槽は、生物処理を多段階で行うために複数の水槽によって構成され、
複数の生物反応槽のうちの、廃水が導入される最初の生物反応槽に、網状回転式バチルス接触体装置を設けることを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記最初の生物反応槽は、対向する壁面を少なくとも2つ有する方形状の水槽からなり、
該対向する壁面の各々の上部に、軸受を設置し、
該対向する軸受に、前記回転軸の両側部を回動可能に設けて、
前記複数の網状回転式バチルス接触体の下方領域部位が、該生物反応槽内の活性汚泥に浸漬しながら、該網状回転式バチルス接触体が回動する
ことを特徴とする請求項2記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記最初の生物反応槽内の活性汚泥の濃度(MLSS)が、3000〜15000mg/Lの範囲に維持され、活性汚泥の水深が、2〜5mの範囲であることを特徴とする請求項2又は3記載の廃水処理装置。
【請求項5】
前記最初の生物反応槽内の底部近傍に、前記対向する壁面に平行に散気管を設け、該散気管は、前記網状回転式バチルス接触体の回転領域幅の外側に設置されることを特徴とする請求項3又は4記載の廃水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−187450(P2012−187450A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50692(P2011−50692)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(598135599)
【Fターム(参考)】