説明

廃油・廃タイヤ等処理方法

【課題】ファン等の動力を用いずに実施でき、廃油、廃タイヤ等の処理物の完全燃焼処理が可能であり、小工場、一般家庭等の自家設備用として、また、農業用ハウスの補助暖房として、更には災害時の緊急設備として実施するのに好適な、自然燃焼式の廃油・廃タイヤ等処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】処理物を燃焼室1に投入する工程と、処理物を燃焼させる工程と、燃焼ガスを多数の空気取り入れ用小孔を有する上昇筒2を通して渦流を起こさせつつ渦流室4に導入する工程と、渦流室4内において燃焼ガスaを、比較的比重の小さい完全燃焼ガスcと比較的比重の大きい不完全燃焼ガスbとにそれらの比重差を利用して自然分離させる工程と、分離された完全燃焼ガスcを大気放出すると共に不完全燃焼ガスbを下降筒3を通して渦流室4内の室内圧によって燃焼室1内に戻す工程と、燃焼室1内に戻した不完全燃焼ガスbを再燃焼する工程とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃油・廃タイヤ等処理方法、より詳細には、何の動力も用いず、しかも、有害ガスを放出することなく、産業廃棄物として生ずる各種廃油、廃タイヤ、廃プラスティック等の自然燃焼処理が可能な自然燃焼式の廃油・廃タイヤ等処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両、船舶、工場、厨房等から生ずる廃油の処分は、一般に焼却により行われている。廃油の焼却に際しては、不完全燃焼による黒煙や有害物質が発生しやすいので、その発生を防止するための廃油焼却装置として種々のものが提唱されている(例えば、特開2003−336822号公報、特開2002−22135号公報、特開2001−56112号公報、特開2000−74348号公報等)。その多くは、燃焼室に給気装置を備えた比較的大型のものであり、それなりの設備コストと運転コストがかかるため、小規模な工場や施設、あるいは、一般家庭等の自家設備としては適さない。
【0003】
ところで、近時、バイオディーゼル燃料(BDF)がカーボンニュートラルな軽油代替燃料として注目されつつあるが、その製造時には、副産物として原料油脂の10パーセント程度のグリセリンが生成される。通常このグリセリンには、触媒や未変換の脂肪酸などが混入しているために有効な利用用途が見出せないところから、そのまま放置されているのが現状であり、その処理のための有効手段が求められている。
【0004】
また、廃タイヤの処理は、焼却や乾留炭化処理によることが多いが、その場合は有害な黒煙や悪臭が発生するため、その処理装置には十分な有害ガス対策が要求される。そのためにその装置は複雑化且つ大型化し、設置コストも嵩むため、小規模な工場や施設に設置するのに適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−336822号公報
【特許文献2】特開2002−22135号公報
【特許文献3】特開2001−56112号公報
【特許文献4】特開2000−74348号公報
【特許文献5】特開2007−315658号公報
【特許文献6】特開2003−176483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したとおり、従来提唱されている廃油・廃タイヤ等処理方法は、いずれも給気装置を備えた比較的大型且つ複雑な機構を用いるもので、自家設備用として設置して実施するにはスペース的にもコスト的にも問題があり、それらは、近時問題になっているグリセリン処理の有効手段ともなっていない。また、廃タイヤの処理についても同様の問題がある。
【0007】
そこで本発明は、ファンによる給気機構等の動力を用いない小型且つシンプルな方法であって、比較的低廉にて実施できて廃棄物の完全燃焼が可能であり、小工場、一般家庭等の自家設備用として、また、農業用ハウスの補助暖房として、更には災害時の緊急設備として利用するのに好適であり、しかも、グリセリンの処理にも有効な、自然燃焼式の廃油・廃タイヤ等処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、処理物を燃焼する工程と、前記燃焼により生ずる燃焼ガスに渦流を起こさせることにより、前記燃焼ガスを、比較的比重の小さい完全燃焼ガスと比較的比重の大きい不完全燃焼ガスとにそれらの比重差を利用して自然分離させる工程と、分離された前記完全燃焼ガスを大気放出すると共に、分離された前記不完全燃焼ガスを前記処理物燃焼工程に戻して再燃焼する工程、とから成る廃油・廃タイヤ等処理方法である。
【0009】
また、上記課題を解決するための請求項2に記載の発明は、処理物を燃焼室に投入する工程と、前記燃焼室内において前記処理物を燃焼させる工程と、前記燃焼に伴う燃焼ガスを、多数の空気取り入れ用小孔を有していて前記燃焼室から立ち上がる太径筒を通して渦流を起こさせつつ渦流室に導入する工程と、前記渦流室内において前記燃焼ガスを、比較的比重の小さい完全燃焼ガスと比較的比重の大きい不完全燃焼ガスとにそれらの比重差を利用して自然分離させる工程と、分離された前記完全燃焼ガスを大気放出すると共に、分離された前記不完全燃焼ガスを、前記太径筒より細径の細径筒を通して前記渦流室内の室内圧によって前記燃焼室内に戻す工程と、前記燃焼室内に戻した前記不完全燃焼ガスを前記燃焼室内において再燃焼する工程とから成る廃油・廃タイヤ等処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る廃油・廃タイヤ等処理方法は、構成簡易で廉価にて供給でき、燃焼室内に処理物を供給して点火するだけで、何らの動力も用いることなく、処理物を自動的に完全燃焼して無害化した燃焼ガスのみを放出することができる非常に有用なものであって、小工場や一般家庭等の自家設備用として、また、農業用ハウスの補助暖房設備として、更には災害時の緊急設備として実施するのに好適なる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る方法の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ説明する。以下の説明は廃油を処理物とした場合についてのものであるが、廃タイヤその他の処理物の場合においても特に変わりはない。
【0013】
本発明に係る方法は、廃油燃焼工程と、前記燃焼により生ずる燃焼ガスに渦流を起こさせることにより、前記燃焼ガスを、比較的比重の小さい完全燃焼ガスと比較的比重の大きい不完全燃焼ガスとにそれらの比重差を利用して自然分離させる工程と、分離された前記完全燃焼ガスを大気放出すると共に、分離された前記不完全燃焼ガスを前記廃油燃焼工程に戻して再燃焼する工程とから成る。
【0014】
本発明に係る方法を廃油を廃棄物として実施した場合についてより詳細に説明すると、本発明に係る方法の第一工程は、焼却処理すべき廃油を、開閉可能な廃油投入口を有する燃焼室1内に、その廃油投入口を開けて流し込み、点火燃焼させる工程である。燃焼室1には、適宜エア導入口が設けられることは言うまでもない。燃焼室1の上面には、多数の空気取り入れ用小孔を設けた上昇筒2と、上昇筒2より細径の下降筒3が立設され、上昇筒2と下降筒3の上端は渦流室4に接続される。
【0015】
本発明に係る方法の第二工程は、第一工程で発生する燃焼ガスaを、上昇筒2を通して渦流を起こさせつつ渦流室4に導入する工程である。その燃焼ガスaは、上昇筒2内を通過中に、空気取り入れ用小孔から導入されるエアの影響を受け、螺旋状に渦を巻いて上昇する。この渦流の発生を促進するためには、小孔を、隣接するもの同士が少しずつ上下にずれるように形成すればよい。エアの空気取り入れ用小孔からの導入は、燃焼ガスaが上昇筒2内を上昇することにより、上昇筒2が負圧になることにより促進される。
【0016】
本発明に係る方法の第三工程は、上昇筒2内を渦流を起こしつつ上昇する燃焼ガスaを、その渦巻き状態のまま渦流室4に導入する工程である。渦流室4内に導入された燃焼ガスaは、比較的比重の小さい完全燃焼ガスcと比較的比重の大きい不完全燃焼ガスbが混在したものであるが、渦流室4内で大きく渦を巻くことにより、完全燃焼ガスcよりも比重の大きい不完全燃焼ガスbが、その比重差によって自然に、より外周側に、また、より下側に移動する。
【0017】
本発明に係る方法の第四工程は、渦流室4内を外周側に、且つ、下側に移動してくる不完全燃焼ガスbを、燃焼ガスaが次々と上昇筒2内を上昇して流入してくることによって高まる渦流室4の室内圧によって、下降筒3を通して燃焼室1内に戻すと共に、渦流室4の中央部に集まる比較的比重の小さい完全燃焼ガスc、即ち、無害化された排気ガスを適宜大気中に排出する工程である。
【0018】
本発明に係る方法の第五工程は、第四工程で燃焼室1内に戻した不完全燃焼ガスbを、再燃焼させる工程である。
【0019】
本発明に係る方法は上述したとおりのものであるため、その方法を実施するための装置は、非常にシンプルでコンパクトなものとなる。そして、本方法によれば、一旦第一工程を実施した後、即ち、一旦燃焼室内にグリセリンその他の廃油を供給して点火した後は、ファン等の動力による給気なしに、燃焼室1内の廃油がなくなって火勢が衰えるまで、上記各工程が自動的に反復され、廃油を完全燃焼して無害化した排気ガスのみを放出することができるので、小規模な工場や施設、あるいは、一般家庭の自家設備用として好適であるだけでなく、農業用ハウスの補助暖房用として、あるいは、災害時等における緊急設備用として適用するのに好適である。
【0020】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0021】
1 燃焼室
2 上昇筒
3 下降筒
4 渦流室
a 燃焼ガス
b 不完全燃焼ガス
c 完全燃焼ガス



【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理物を燃焼する工程と、
前記燃焼により生ずる燃焼ガスに渦流を起こさせることにより、前記燃焼ガスを、比較的比重の小さい完全燃焼ガスと比較的比重の大きい不完全燃焼ガスとにそれらの比重差を利用して自然分離させる工程と、
分離された前記完全燃焼ガスを大気放出すると共に、分離された前記不完全燃焼ガスを前記処理物燃焼工程に戻して再燃焼する工程とから成る廃油・廃タイヤ等処理方法。
【請求項2】
処理物を燃焼室に投入する工程と、
前記燃焼室内において前記処理物を燃焼させる工程と、
前記燃焼に伴う燃焼ガスを、多数の空気取り入れ用小孔を有していて前記燃焼室から立ち上がる上昇筒を通して渦流を起こさせつつ渦流室に導入する工程と、
前記渦流室内において前記燃焼ガスを、比較的比重の小さい完全燃焼ガスと比較的比重の大きい不完全燃焼ガスとにそれらの比重差を利用して自然分離させる工程と、
分離された前記完全燃焼ガスを大気放出すると共に、分離された前記不完全燃焼ガスを、前記上昇筒より細径の下降筒を通して前記渦流室内の室内圧によって前記燃焼室内に戻す工程と、
前記燃焼室内に戻した前記不完全燃焼ガスを前記燃焼室内において再燃焼する工程とから成る廃油・廃タイヤ等処理方法。




【図1】
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【公開番号】特開2011−75267(P2011−75267A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230500(P2009−230500)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BDF
【出願人】(506317565)株式会社コスモウィングス (3)
【Fターム(参考)】