説明

廃油浄化燃料装置

【課題】 従来の廃油浄化燃料装置は固定式で処理容量が大きく、設置を導入する為にはその処理量を満たすため、廃棄物処理場のように広範囲な地域から回収する組織が必要であり、一般の人々が取り組むことが出来なかった。
【解決手段】 必要機器を立体的に配置し、ポンプの可逆転操作など組み入れ、全装置を一個の箱体の中に収めて、運転操作及び運搬据付、保守点検が容易に出来るコンパクトな装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、料理等にした食用油の廃油を浄化して精製油とし、これに他の燃料油を混合してリサイクル活用した燃料油を製造する廃油浄化燃料装置に関し、殊に、装置一式をフォークリフトやトラック等に積載可能な小型のユニットタイプにして現地で使いやすい廃油浄化燃料装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現状で廃食油を浄化して燃料にするリサイクル方法は各種のものが提案されている。その場合に、既存の廃油浄化燃料装置の設置導入が積極的に進んでいないのは、該廃油浄化燃料装置の価格を含めた設置経費が高いうえに、従来の装置は定置式の装置で一度設置したら移動が困難であり、且つ処理能力も大きく、一度に多量の廃食油を処理することを目的に設定されているため、該廃油浄化燃料装置の効率的な運用面からも広大な範囲の地域からの回収が必要となり、行政等でなければ取り組めない状況であった。そのため従来に比較して安価で機能的な普及型の設備にして、場合によっては現地のリサイクル状況に応じて移動運搬も可能な機動性のある設備の提供が望まれていた。
【0003】
廃食油の浄化装置としては、特許文献1に人工ゼオライト粒(粒径0.5〜5.0mm)を用いた触媒処理による浄化装置が開示されている。また、特許文献2に廃食油を水溶液化し、「酸化カリウム・酸化マグネシウム・硫酸・鉄」などの触媒を使用する廃食油の再生処理方法及びその処理システムが開示されている。
しかしながらこれらの装置には基本的な考え方は開示されているが、例えば、装置一式をフォークリフトやトラック等に積載可能な小型のユニットタイプにして、どこにも運搬できる機動性を持たせる構成にするなどの現地のリサイクル状況に応じた実用化タイプにするには更に改善の必要があるものである。
【特許文献1】特開2001−170421号公報
【特許文献2】特開2004−190022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食用油を取扱う事業所では、これまでは廃油の処理を産業廃棄物処理業者に委託するしかなく、委託費用の低減等の目的から独自で処理する方法が模索されていた。しかし、従来の廃食油浄化燃料装置を導入設置する為には、廃棄物処理場のように、広範囲な地域から回収する組織が必要であり、一般の人々が取り組むことが出来なかった。そこで処理量が小さく、大きな組織を必要とせず、廃食油の再資源化を容易に出来る様々な使用形態に対応する移動可能な装置を必要としていた。
【0005】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、廃油浄化燃料装置の設置面積を大幅に縮小し、土地が狭く暗い場所等にも使用可能な構造とし、装置全体を一括運搬できる形態にして、機能性・操作性を重視した廃油浄化燃料装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題解決のために、第一に、投入した廃油を貯留して加熱しながら触媒と混合する廃油加熱攪拌槽と、該廃油加熱手段で加熱攪拌された廃油を濾過して精製油を精製する濾過装置に移送する圧送ポンプと、前記濾過装置で精製された精製油を受けて混合攪拌しながら貯留する燃料混合攪拌槽と、装置外にある廃油を前記廃油加熱攪拌槽に投入する油ポンプと、前記燃料混合攪拌槽から精製油を装置外部に搬出する油ポンプと、前記各機器の運転制御を行う操作制御盤等必要な付属品の全てを、屋根部及び正面と後面の壁が開閉自由である箱体の中に配備し、装置全体を一括可搬できる構造とした。
【0007】
箱体のほぼ中央部分に架台を設け、前記架台の上部に濾過装置を、下部に圧送ポンプを配して濾過装置と圧送ポンプが箱体内部に占める面積を縮小した。
【0008】
油ポンプを可逆圧送可能な構造とし、廃油加熱攪拌槽に投入する油ポンプを逆転して燃料混合攪拌槽の精製油を廃油加熱攪拌槽へ移送し、又燃料混合攪拌槽から精製油を装置外部に排出する油ポンプを逆転して、装置外部から新たな油を燃料混合攪拌槽に投入することを、配管途中に逆止弁を組み入れて、油ポンプの可逆転の切り替のみで操作できるようにした。
【0009】
箱体のほぼ中央部の長手方向に回動可能な固定したヒンジを設け、前記ヒンジを回動点として屋根部が両方の側面側から上に向かって開き、屋根部中央の固定部分の内側に照明器具を設けて、狭く暗い箇所に設置しても保守点検が容易に出来る構造とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、小さな箱体内に一連の機器を組み付けた装置は、従来の定置されたプラントに比較して一回の処理容量は小さいが同様な精製を手軽に行うことが出来る。箱体内に効率よく収納するために、該箱体の中央部に架台を設け該架台の上部に濾過装置、下部に圧送ポンプを配し、該架台の四方に四角形の廃油加熱攪拌槽、四角形の燃料混合攪拌槽、操作制御盤、及び油ポンプ2台をそれぞれ配することにより、装置全体を簡単に運搬できるコンパクトな形状を構成した。
【0011】
運転操作時には該箱体の屋根部分を開放し、従来からの定置されたプラントと同様に機器の動作を見ながら操作できる。
【0012】
保守点検の場合は、箱体正面の左下部に、操作制御盤を取り付けた外部に開閉する扉を開放し、また逆止弁を配管内に装着し可逆転できる油ポンプを選択することにより、該油ポンプが4台必要なところを2台に台数を減じることができ、それで生じた空間を利用して油ポンプ部分に容易に点検者が入り、屋根中央の固定部分に設置された照明器具で隅々まで見渡せ保守点検を行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明が目的とする輸送を簡単にするため、可搬式とした姿を図1に示す。
【実施例】
【0014】
以下、実施例に関する図面に基づいて、運搬及び据付、保守点検が容易に出来るコンパクトな装置で廃食油の精製をする一実施例について述べる。
図1は、本発明に係わる廃油浄化燃料装置の箱体7を運搬車15で搬送する一例を示したものであり、図2は、本発明に係わる廃油浄化燃料装置の構成を示すもので、前記箱体7内の装置の配置を示す。箱体7の下部に平面方向にベース基台Bが配設され、該ベース基台B中央部に櫓型の架台8を配置し、該櫓型の架台8の上部にフィルタープレス(加圧複式フィルター型)からなる濾過装置2を搭載し、下部空間を利用してここに圧送ポンプ3をベース基台B上に設置する。箱体7後部側には燃料混合攪拌槽4と、油ポンプ5a、5bを位置させ、箱体7正面右部には廃油加熱攪拌槽1を位置させ、これらの機器を各々ベース基台B上に設置する。また、箱体7正面左部の壁面の内側には操作制御盤6を取付け、壁面の一部7aが縦軸芯X−1回りに想像線7aのように水平方向に開閉できる構造とした。また箱体7後部の壁面7bも同様に縦軸芯X−2回りに想像線7bのように開閉し、箱体7内に存在する上記に説明した各機器の保守点検を容易にした。
【0015】
図3は、箱体7中央部の断面で、装置内部の上下の位置関係を示す。箱体7の中央上部の長手方向に、回動可能な固定したヒンジ10を設け、前記ヒンジ10を回動点として屋根部11が正面・後面の両方の側面側から上に向かって開閉自由である。また、箱体7中央上部の固定部分の内側には、照明器具12を設置して運転操作及び保守点検を容易にした。
また、前記濾過装置2の濾過作用により該濾過装置2に堆積した残渣を取り除く場合は、該濾過装置2と圧送ポンプ3の中間にあり架台8に傾斜状に固定された残渣受台13に残渣を受けて傾斜下端方向の外部に排出する。
【0016】
図4は、屋根部11を上部に開いた状態を正面から示す。箱体7のベース基台Bの下部には台座14を設け、図1に示すように装置を運搬するとき、該台座14の間にフォークリフト等の運搬車15の爪16を挿入し容易に搬送作業ができるようにしたものである。
【0017】
図5は、廃食油が燃料油に精製されるときの油の移動を例図して示す配管図である。図示省略した吸い込みホース等が取り付けられている等の取入口21より油ポンプ5aが正転回転して吸込まれた廃食油は逆止弁9a、9bを通過して廃油加熱攪拌槽1に至り、レベル1bまで貯留される。貯留された廃食油は攪拌装置1aによって攪拌されながら、適宜ゼオライト等の触媒を添加するとともに加熱ヒーター1cによって80℃程度に加熱されたのち、触媒処理による浄化作用が完了すると、圧送ポンプ3により吸引され、加圧複式フィルター型の濾過装置2を通過して、濾過装置2の濾過作用により濾過精製された油が濾過燃料混合攪拌装置4に貯留される。
燃料混合攪拌装置4に貯留された精製油は、油ポンプ5bが正転回転することで吸出され、逆止弁9c、9dを通過して精製油排出口23より装置外に排出される。燃料混合攪拌装置4に貯留された精製油に新たな油(A重油)を混合して燃料油を生成する場合は、精製油が燃料混合攪拌槽4に貯留された後、油ポンプ5bを逆回転させることにより取入口22より新たな油(A重油)を吸込み、逆止弁9g、9hを通過して燃料混合攪拌槽4に至りレベル4bまで追加貯留し、攪拌装置4aを稼動して攪拌する。これにより、所望の燃料油を生成することができる。また次回運転時、燃料混合攪拌槽4に残った油があり廃油加熱攪拌槽1に移送する必要が生じた場合は、油ポンプ5aを逆転して、逆止弁9e、9fを通過して廃油加熱攪拌槽に至る。
【0018】
図6は、自動運転操作の作動手順の一例を示す。廃食油を油ポンプ5aの正回転により廃油加熱攪拌槽1に投入し50リットルに達するとレベル1bが通電し、 タイマーaが作動し18秒間油ポンプ5aを逆回転し、燃料混合攪拌槽4に残っている油を廃油加熱攪拌槽1に移送して停止する、と同時に攪拌装置1a及び加熱ヒーター1cが作動する。次に人力によって廃油加熱攪拌槽1にゼオライト等の触媒を投入する。廃油加熱攪拌槽1の温度が80℃に達すると温度センサー1dが通電し、タイマーbが10分間作動して停止後加熱ヒーター1cの作動が停止する。と同時に圧送ポンプ3が作動し、廃油加熱攪拌槽1内の加熱攪拌された廃油の量がレベル1e迄低下すると、攪拌装置1aが停止しタイマーcが作動し始め75秒間経過して圧送ポンプ3を停止し、精製作業は終了する。
新たな油と精製油を等量混合する場合は、油ポンプ5bを逆転して取入口22から新たな油を燃料混合攪拌槽4に取入、100リットルのレベル4b迄達すると油ポンプ5bは停止し新たな油の投入は終わる。次に、運転者によって攪拌のスイッチを投入すると攪拌装置4aが回転し、同時にタイマーdが作動して15分後に攪拌装置4aは停止する。その後油ポンプ5bを正回転して取出口23に製品を排出する。
【産業上の利用可能性】
【0019】
今日、多種多様な方面で環境問題が取り上げられており、廃食油の処理もその一つである。従来の廃食油の処理装置は、自治体など運営コストを他の財源で補填できる箇所しか採用できなかったが、本発明により処理装置が小型で低コスト化し、民間での採用や小さな集落・農業での採用が容易になった。故に、現在、廃食油を産業廃棄物として引き取り依頼している事業所での自己処理、また、農業における農業機械・ハウスのボイラー燃料の代替として本発明により精製された製品を環境負荷低減燃料として使用する等の方法がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】箱体を搬送する一例を示した説明側面図である。
【図2】箱体内の機器の配置を示した平面図である。
【図3】箱体の中心近くを切断した側断面図である。
【図4】箱体屋根部を開いた状態の正面図である。
【図5】油ポンプと逆止弁の関係を示す配管フロー図である。
【図6】自動運転操作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0021】
1 廃油加熱攪拌槽
1a 攪拌装置
1b レベルセンサー
1c 加熱ヒーター
1d 温度センサー
1e レベルセンサー
2 濾過装置
3 圧送ポンプ
4 燃料混合攪拌槽
4a 攪拌装置
4b レベルセンサー
5a 油ポンプ
5b 油ポンプ
6 操作制御盤
7a 壁面想像線
7b 壁面想像線
8 架台
9a 逆止弁
9b 逆止弁
9c 逆止弁
9d 逆止弁
9e 逆止弁
9f 逆止弁
9g 逆止弁
9h 逆止弁
10 ヒンジ
11 屋根部
12 照明器具
13 残渣受台
14 台座
15 運搬車
16 爪
21 廃食油取入口
22 新たな油取入口
23 精製油排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入した廃油を貯留して加熱しながら触媒と混合する廃油加熱攪拌槽と、該廃油加熱手段で加熱攪拌された廃油を濾過して精製油を精製する濾過装置に移送する圧送ポンプと、前記濾過装置で精製された精製油を受けて混合攪拌しながら貯留する燃料混合攪拌槽と、装置外にある廃油を前記廃油加熱攪拌槽に投入する油ポンプと、前記燃料混合攪拌槽から精製油を装置外部に搬出する油ポンプと、前記各機器の運転制御を行う操作制御盤等必要な付属品の全てを、屋根部及び正面と後面の壁が開閉自由である箱体の中に配備し、装置全体を一括可搬できる構造とした廃油浄化燃料装置。
【請求項2】
請求項1の廃油浄化燃料装置において、箱体のほぼ中央部分に架台を設け、前記架台の上部に濾過装置を、下部に圧送ポンプを配して濾過装置と圧送ポンプが箱体内部に占める面積を縮小した廃油浄化燃料装置。
【請求項3】
請求項1の廃油浄化燃料装置において、油ポンプを可逆圧送可能な構造とし、廃油加熱攪拌槽に投入する油ポンプを逆転して燃料混合攪拌槽の精製油を廃油加熱攪拌槽へ移送し、又燃料混合攪拌槽から精製油を装置外部に排出する油ポンプを逆転して、装置外部から新たな油を燃料混合攪拌槽に投入することを、配管途中に逆止弁を組み入れて、油ポンプの可逆転の切り替のみで操作できるようにした廃油浄化燃料装置。
【請求項4】
請求項1の廃油浄化燃料装置において、箱体のほぼ中央部の長手方向に回動可能な固定したヒンジを設け、前記ヒンジを回動点として屋根部が両方の側面側から上に向かって開き、屋根部中央の固定部分の内側に照明器具を設けて、狭く暗い箇所に設置してもメンテナンスが容易に出来る構造とした廃油浄化燃料装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−316235(P2006−316235A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167436(P2005−167436)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(505212670)株式会社コウノ (1)
【Fターム(参考)】