説明

廃液処理装置及び方法

【課題】簡便な処理により、十分に液体と微粒子を分離することができる廃液処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明の廃液処理装置(1)は、液体中に微粒子を分散させたコロイド状の廃液を処理する装置であって、廃液を凍結させる製氷装置(4)と、この製氷装置(4)によって凍結された廃液を受け入れ、融解する融解槽(6)と、この融解槽(6)において融解された廃液から液体を分離する液体分離手段(8、10)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液処理装置及び方法に関し、特に、液体中に微粒子を分散させたコロイド状の廃液を処理する廃液処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界の様々な分野において、液体中に微粒子を分散させたコロイド状の廃液が生成される。このような廃液を低コストで処理するためには、廃液中の液体と微粒子を分離し、処理すべき廃液の量を減量することが必要になる。このような廃液の中でも、ガラス基板の表面仕上げ研磨等に使用される、水の中に超微粒子のシリカ(二酸化珪素)を分散させたコロイダルシリカは、液体と粒子を分離することが困難な廃液である。
【0003】
例えば、株式会社フジミインコーポレイテッド製のスラリーCOMPOL−EX3、超高純度コロイダルシリカGLANZOX、電気化学工業社製の微粒子球状シリカUFP−80、三興コロイド化学株式会社製のシリカロイド等のような、水の中に平均粒子径50nm(ナノメートル)以下の微粒子シリカが分散されている廃液は、長時間安置しても粒子が沈殿されることはなく、また、種々の凝集剤を添加しても殆ど水を分離させることができない。さらに、このような廃液は、蒸留装置により水分を分離させると、蒸留用の釜に分離された微粒子シリカが強固にこびりつくので、これを釜から除去することが非常に困難になり、蒸留装置を使用することもできない。
【0004】
特開2003−290780号公報(特許文献1)には、微粒子シリカ含有アルカリ性廃液の凝集・沈殿処理方法が記載されている。この処理方法においては、廃液を所定範囲のpHになるように酸性化合物で調整した後、所定の水溶性高分子凝集剤を添加することにより微粒子シリカを沈殿させている。
【0005】
しかしながら、この特開2003−290780号公報記載の方法においては、廃液のpHを調整する必要があると共に、微粒子シリカを十分に沈殿させることができないという問題がある。
【0006】
また、特許第2780957号公報(特許文献2)には、廃液の凍結処理方法が記載されている。この処理方法においては、廃液を層状凍結させ、この凍結された第一原氷層から遠心分離により第一濃縮廃液を分離させ、残った第一氷層を融解した後、再び凍結させて第二原氷層を生成し、この第二原氷層から遠心分離により第二濃縮廃液を分離している。
【0007】
しかしながら、この特許第2780957号公報に記載された廃液の凍結処理方法においては、第一原氷層から第一濃縮廃液を分離させ、さらに第二原氷層から第二濃縮廃液を分離させることができるように、廃液を凍結させる温度及び時間を厳密に管理する必要があると共に、遠心分離を必要とする等、装置が大がかりになるという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開2003−290780号公報
【特許文献2】特許第2780957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、簡便な処理により、十分に液体と微粒子を分離することができる廃液処理装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の廃液処理方法は、液体中に微粒子を分散させたコロイド状の廃液を処理する方法であって、廃液を凍結させる段階と、この凍結された廃液を融解させる段階と、この融解された廃液から液体を分離する段階と、を有することを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明においては、廃液は、まず凍結され、次に凍結された廃液が融解される。一旦凍結され、融解された廃液は、その性状が変化し、従来の方法により、容易に液体と微粒子を分離させることができるようになる。
このように構成された本発明によれば、簡便な処理により、液体と微粒子を容易に分離することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、液体を分離する段階は、融解された廃液の蒸留である。
このように構成された本発明によれば、廃液から液体を十分に分離することができるので、廃液を大幅に減容することができる。
【0013】
本発明の廃液処理装置は、液体中に微粒子を分散させたコロイド状の廃液を処理する装置であって、廃液を凍結させる製氷装置と、この製氷装置によって凍結された廃液を受け入れ、融解する融解槽と、この融解槽において融解された廃液から液体を分離する液体分離手段と、を有することを特徴としている。
【0014】
このように構成された本発明においては、廃液は製氷装置により凍結され、次に、凍結された廃液は融解槽により融解される。一旦凍結され、融解された廃液は、その性状が変化し、従来の液体分離手段により、容易に液体と微粒子を分離させることができるようになる。
このように構成された本発明によれば、簡便な装置により、液体と微粒子を容易に分離することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、融解槽は、製氷装置から排出された排熱を利用して、凍結された廃液を融解する。
このように構成された本発明によれば、製氷装置の排熱を利用して廃液を融解させるので、無駄なエネルギーを消費することなく、凍結された廃液を迅速に融解することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、液体分離手段は、融解された廃液中の微粒子を沈殿させて液体を分離する沈殿槽を有する。
このように構成された本発明によれば、性状が変化した廃液から、簡便な機構で液体を分離させることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、液体分離手段は、さらに、沈殿槽により分離された液体を蒸留する蒸留装置を有する。
このように構成された本発明によれば、沈殿槽により分離された液体内に残留した微粒子を、効果的に分離することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の廃液処理装置及び方法によれば、簡便な処理により、十分に液体と微粒子を分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態による廃液処理装置全体を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の廃液処理装置1は、処理すべき廃液を貯留する貯留槽2と、貯留槽2に貯留された廃液をブロック状に凍結させる製氷装置4と、この製氷装置によって凍結された廃液を融解する融解槽6と、を有する。さらに、廃液処理装置1は、融解槽6により融解された廃液から液体を分離する液体分離手段である沈殿槽8及び蒸留装置10を有する。
【0020】
本実施形態の廃液処理装置は、処理すべき廃液を製氷装置4により凍結させ、凍結された廃液を融解槽6において融解し、これにより性状が変化された廃液を沈殿槽8及び蒸留装置10に導いて液体と微粒子を分離させるものである。
【0021】
貯留槽2は、処理すべき廃液を貯留する水槽であり、その底部には、槽内に貯留されている廃液を製氷装置4に圧送するための圧送ポンプ2aが配置されている。なお、本実施形態においては、処理すべき廃液として、水中に水と同量の二酸化珪素微粒子が分散されているコロイダルシリカスラリーが、貯留槽2内に貯留されている。また、圧送ポンプ2aとしては、コロイダルシリカスラリーを圧送可能な、スネークポンプ等を使用することができる。
【0022】
製氷装置4は、圧送ポンプ2aにより貯留槽2から送られた廃液を冷却して凍結させるように構成されている。製氷装置4には、送られた廃液を受け入れて冷却するための製氷皿4aと、この製氷皿4aで凍結されたブロック状の凍結された廃液を保持するためのバスケット4bと、廃液を冷却する冷却器4cと、送られた廃液を製氷皿4aに供給、停止する開閉弁4dと、を有する。
【0023】
融解槽6は、製氷装置4によりブロック状に凍結された廃液を受け入れ、融解するように構成されている。融解槽6の内部には、凍結された廃液を保持するための網6aが張られており、この網6a上で融解された廃液が網6aの下に流下し、融解槽6の底部に溜まるように構成されている。また、融解槽6の側壁面には温風吹出口6bが設けられており、この温風吹出口6bには、冷却器4cからの暖かい排気がファン6cを介して導かれるように構成されている。これにより、製氷装置4からの排熱が、凍結された廃液の融解に利用される。
【0024】
沈殿槽8は、融解槽6内で融解された廃液を受け入れて、廃液中の微粒子を沈殿させ液体を分離するように構成されている。なお、製氷装置4により一旦凍結され、融解槽6において融解された廃液は、その性状が変化し、通常の沈殿槽8により微粒子が沈殿されるようになる。また、沈殿槽8内における微粒子の沈殿を促進するために、沈殿槽8内の廃液に凝集剤等を適宜添加しても良い。
【0025】
沈殿槽8は、融解された廃液を受け入れる第1槽8aと、この第1槽8a内で微粒子を沈殿させた上澄みの液体が流入される第2槽8bと、これら第1槽8aと第2槽8bの間に設けられ、第1槽8a内の上澄みの液体を溢れさせる堰部8cと、を有する。また、融解槽6と第1槽8aは、融解槽6の底部から延びる管路により接続されており、融解槽6内で融解された廃液は、管路に設けられた融解廃液移送用ポンプ8dにより、第1槽8aに移送されるように構成されている。また、第1槽8a内で沈殿された微粒子は、第1槽8aの底部から延びる管路を介して微粒子移送用ポンプ12aにより、微粒子タンク12に移送されるように構成されている。なお、融解廃液移送用ポンプ8dとしては、コロイド状の溶液を移送可能なスネークポンプ等を使用することができ、微粒子移送用ポンプ12aとしては、微粒子を移送可能なスネークポンプ、モノポンプ等を使用することができる。
【0026】
蒸留装置10は、沈殿槽8により分離された液体を加熱して蒸留することにより、上澄みの液体から水を分離するように構成されている。第2槽8b内の上澄みの液体は、上澄み移送用ポンプ10aにより蒸留装置10に内蔵された凝縮釜(図示せず)に導入され、ここで加熱されて上澄みの液体中の水分を蒸発させるように構成されている。蒸発された水分は冷却されて凝縮され、蒸留水となって蒸留水タンク14に排出される。一方、蒸留装置10において水分が分離され、濃縮された上澄みの液体は、逆送用ポンプ10bにより沈殿槽8の第1槽8aに逆送され、第1槽8a内で再び微粒子わ沈殿させるように構成されている。
【0027】
次に、本発明の実施形態による廃液処理方法、及び廃液処理装置1の作用を説明する。
まず、貯留槽2内に貯留されている廃液は、圧送ポンプ2aにより製氷装置4内の製氷皿4aに導入される。廃液が所定時間供給され、製氷皿4aの凹部が廃液により満たされると開閉弁4dが閉鎖され、廃液の供給が停止される。製氷皿4aに受け入れられた廃液は、冷却器4cにより冷却され凍結される。廃液の導入後所定時間経過すると、製氷皿4aは上下反転され、凍結されたブロック状の廃液が製氷皿4aの下方のバスケット4bに落下する。
【0028】
バスケット4bに落下した凍結された廃液は、さらに、融解槽6の網6aの上に落下する。一方、冷却器4cから排出される温風は、ファン6cにより融解槽6に導かれ、網6a上の凍結された廃液を融解させる。網6a上で融解された廃液は、網6aの下に流下し、融解廃液移送用ポンプ8dにより、沈殿槽8の第1槽8aに移送される。移送された廃液中の微粒子は、第1槽8aの底に沈殿する。沈殿した微粒子は、微粒子移送用ポンプ12aにより微粒子タンク12に移送される。微粒子タンク12に移送された微粒子は産業廃棄物として処理される。
【0029】
本実施形態において処理しているコロイダルシリカスラリーでは、廃液を約−18゜Cの温度で約1時間かけて凍結させた後、これを融解することにより、微粒子が沈殿槽で容易に沈殿されるように廃液の性状が変化した。また、廃液を約−18゜Cの温度で約24時間かけて凍結させた場合には、微粒子はさらに急速に沈殿されるようになった。なお、廃液を凍結させる温度が、0゜C程度であっても、廃液中の水分が全体的に凍結されていれば、廃液の性状を同様に変化させる効果を得ることができる。
【0030】
第1槽8aにおいて微粒子が沈殿された後の上澄みの液体は、堰部8cから溢れて第2槽8bに流入する。第2槽8b内の上澄みの液体は、上澄み移送用ポンプ10aにより蒸留装置10に導入される。蒸留装置10では、上澄みの液体を加熱して蒸留し、上澄みの液体中の水分が蒸留水として分離される。分離された蒸留水は蒸留水タンク14に排出される。蒸留水タンク14に排出された蒸留水は、適切な処理を施した後、下水に放流される。なお、一旦凍結された後、融解された廃液は、その性状が変化しているため、蒸留装置10により蒸留した場合にも、微粒子が凝縮釜にこびりつくことはない。
【0031】
一方、蒸留装置10内で濃縮された上澄みの液体は、逆送用ポンプ10bにより、沈殿槽8の第1槽8aに戻される。第1槽8aにおいて、濃縮液体中に残った微粒子が再び沈殿される。
【0032】
このように、コロイダルシリカスラリーから水分を分離することにより、産業廃棄物として処理する必要のある廃液は大幅に減容される。
本発明の実施形態の廃液処理方法によれば、一旦凍結され、融解された廃液は、その性状が変化し、従来の方法により液体と微粒子を分離させることができるようになるので、簡便な処理により、液体と微粒子を容易に分離することができる。
【0033】
また、本実施形態の廃液処理方法によれば、沈殿槽で微粒子を沈殿させた後の上澄みの液体を蒸留しているので、蒸留水を下水に排出することができ、産業廃棄物として処理すべき廃液を、大幅に減容することができる。
【0034】
さらに、本発明の実施形態の廃液処理装置によれば、一旦凍結され、融解された廃液は、その性状が変化し、従来の装置により液体と微粒子を分離させることができるようになるので、簡便な装置により、液体と微粒子を容易に分離することができる。
【0035】
また、本実施形態の廃液処理装置によれば、製氷装置から排出された排熱を利用して凍結された廃液を融解しているので、無駄なエネルギーを消費することなく、凍結された廃液を迅速に融解することができる。
さらに、本実施形態の廃液処理装置によれば、沈殿槽を使用して、非常に簡単な装置で微粒子と液体を分離させることができる。
【0036】
また、本実施形態の廃液処理装置によれば、沈殿槽の上澄みの液体を蒸留装置により蒸留しているので、上澄みの液体に残留した微粒子を、効果的に分離することができ、これにより液体を下水に放流することを可能にしている。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、廃液を製氷装置によりブロック状に凍結させていたが、液体をフレーク状に凍結させる製氷装置を使用することができる。
【0038】
また、上述した実施形態においては、凍結させた廃液を、専用の融解槽において融解させていたが、融解槽を他の装置と兼用にしても良い。例えば、凍結された廃液を沈殿槽の第1槽に直接投入し、第1槽の中で融解及び沈殿を行うように本発明を構成することもできる。この場合には、沈殿槽の第1槽が融解槽として機能する。
【0039】
さらに、上述した実施形態においては、凍結、融解された廃液を、沈殿槽及び蒸留装置により処理していたが、沈殿槽及び蒸留装置の何れか一方を省略することもできる。或いは、沈殿槽及び蒸留装置に代えて、従来知られている他の装置により、液体と微粒子を分離することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態による廃液処理装置全体を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
1 本発明の実施形態による廃液処理装置
2 貯留槽
2a 圧送ポンプ
4 製氷装置
4a 製氷皿
4b バスケット
4c 冷却器
4d 開閉弁
6 融解槽
6a 網
6b 温風吹出口
6c ファン
8 沈殿槽(液体分離手段)
8a 第1槽
8b 第2槽
8c 堰部
8d 融解廃液移送用ポンプ
10 蒸留装置(液体分離手段)
10a 上澄み移送用ポンプ
10b 逆送用ポンプ
12 微粒子タンク
12a 微粒子移送用ポンプ
14 蒸留水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に微粒子を分散させたコロイド状の廃液を処理する方法であって、
上記廃液を凍結させる段階と、
この凍結された廃液を融解させる段階と、
この融解された廃液から上記液体を分離する段階と、
を有することを特徴とする廃液処理方法。
【請求項2】
上記液体を分離する段階が、融解された廃液の蒸留である請求項1記載の廃液処理方法。
【請求項3】
液体中に微粒子を分散させたコロイド状の廃液を処理する装置であって、
上記廃液を凍結させる製氷装置と、
この製氷装置によって凍結された廃液を受け入れ、融解する融解槽と、
この融解槽において融解された廃液から上記液体を分離する液体分離手段と、
を有することを特徴とする廃液処理装置。
【請求項4】
上記融解槽は、上記製氷装置から排出された排熱を利用して、上記凍結された廃液を融解する請求項3記載の廃液処理装置。
【請求項5】
上記液体分離手段は、上記融解された廃液中の微粒子を沈殿させて液体を分離する沈殿槽を有する請求項3又は4記載の廃液処理装置。
【請求項6】
上記液体分離手段は、さらに、上記沈殿槽により分離された液体を蒸留する蒸留装置を有する請求項5記載の廃液処理装置。

【図1】
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