説明

廃熱利用水素製造装置および廃熱利用水素製造方法

【課題】エネルギーの有効利用を図るために、飛散し易い熱エネルギーを用いて、貯蔵が容易な化学エネルギーとしての水素を効率良く安定して製造することができる水素製造装置および素製造方法を提供する。
【解決手段】高炉のように、繰り返し熱サイクルの比較的少なく、年中安定して高温の廃熱が得られる箇所に、耐熱温度の高い熱電素子を有する熱電発電装置(熱電変換モジュール11)を設置して熱電発電を行うとともに、同じく廃熱を利用して、給水タンク21からの水を水蒸気発生装置(水蒸気加熱器12、熱交換器14)によって1000℃程度の高温水蒸気あるいは600℃程度の中温水蒸気にした上で、前記の発電電力を用いて、電気化学装置(電解装置13)によって、前記の水蒸気を電気分解して水素と酸素を製造し、製造した水素を水素タンク23に、酸素を酸素タンク24にそれぞれ貯蔵する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーの有効利用を図るために、製鉄所において高温部位から放出される熱輻射や伝導等による廃熱を回収し、回収した廃熱を利用して、化学エネルギーとしての水素を製造する廃熱利用水素製造装置および廃熱利用水素製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エネルギーの有効利用を図るために、放散し易い熱エネルギー等を、貯蔵が容易な化学エネルギーに変換することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、太陽エネルギーを利用して太陽電池によって発電を行い、その電力を用いて水の電気分解を行って、水素を製造することが行われている。
【0004】
ただし、水の電気分解する場合の理論エネルギーは、水温を25℃とすると、水素を1モル製造する場合、286kJ必要であり、効率は80%程度のため、必要な正味エネルギーは約357kJである。太陽電池の発電量は0.16kW/m程度なので、1時間当り1モルの水素を製造するのに、約0.67mの太陽電池が必要となり、工業規模で水素を製造することを考えると莫大な受光面積が必要となり、その設備費も膨大となる。
【0005】
そこで、特許文献1においては、太陽熱を利用して熱電変換体によって発電を行うとともに、太陽熱を利用して水蒸気を得た上で、前記の発電電力を用いて、前記の水蒸気を電気分解することで、水素を製造するという太陽熱利用水素製造装置が提案されている。これによって、1時間当り1モルの水素を製造するのに必要な受熱面積が0.21m〜0.34mになり、上述した太陽電池を用いて水素を製造する場合に比べて、必要面積が1/3〜1/5に減少するとされている。
【0006】
また、特許文献2には、ごみ焼却場、火力発電所のような燃焼設備の廃熱を利用して熱電素子により電力を生成し、電力を用いて水を電気分解し、水素を製造する方法が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、原子力発電所のような発電施設に用いられている低温の熱源を利用して、発電した電気で低温の熱源を加熱し、水蒸気を電気分解して水素を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−009769号公報
【特許文献2】特開2001−192877号公報
【特許文献3】特開2006−307290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の太陽熱利用水素製造装置を用いたとしても、工業規模で水素を製造することを考えると、まだまだ大きな受熱面積が必要であり、その設備費も高額となる。また、太陽エネルギーの利用は、夜間には適用できないとともに、気象条件に大きく影響され、安定性に欠ける。
【0010】
また、特許文献2に記載の方法では、熱電発電の具体的説明がなく、効率的に発電できない。加えて、常温の水を電気分解して水素を製造する方法であり、水素の製造効率も劣る。
【0011】
また、特許文献3に記載の方法では、600K(327℃)程度の比較的低温の熱源を利用しており、廃熱源の温度域が低く、水素製造のために廃熱より生成させた水蒸気を900K(627℃)、そして1000K(727℃)までと300〜400K以上電気加熱するという追加工程が必要で、効率が悪い。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、エネルギーの有効利用を図るために、放散し易い熱エネルギーを用いて、貯蔵が容易な化学エネルギーとしての水素を効率良く安定して製造することができる水素製造装置および水素製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、太陽エネルギーの利用に替えて、製鉄所(製鉄プロセス)において高温部位(例えば、高炉等の各種炉)から放出される輻射熱や伝導等による比較的高温の廃熱を利用することを着想した。すなわち、製鉄所(製鉄プロセス)における高炉等からの廃熱は、比較的高温であって大きな熱エネルギーを有しているとともに、定常的に放出されている。したがって、このような製鉄所(製鉄プロセス)における比較的高温の廃熱を利用することによって、熱電発電で電気を製造して、水素を効率良く安定して製造することができると考えた。
【0014】
上記の着想に基づいて、本発明は以下の特徴を有している。
【0015】
[1]高温に晒される高温側及び低温に晒される低温側を持ち、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電装置と、水蒸気を得るための水蒸気発生装置と、前記水蒸気発生装置で得られた水蒸気から前記熱電発電装置で得られた電気エネルギーを用いた電気分解により水素を製造する電気化学装置とを備え、そのエネルギー源として、製鉄プロセスで放出される廃熱を利用していることを特徴とする廃熱利用水素製造装置。
【0016】
[2]熱電発電装置の低温側は水冷管を用いて冷却することを特徴とする前記[1]に記載の廃熱利用水素製造装置。
【0017】
[3]製鉄プロセスで放出される廃熱を前記熱電発電装置および前記水蒸気発生装置に直接および/または間接利用することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の廃熱利用水素製造装置。
【0018】
[4]前記熱電発電装置の高温側の温度を所望とする温度に制御するため、熱媒体を用い、所望とする温度以上の熱エネルギーは前記水蒸気発生装置に用いることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の廃熱利用水素製造装置。
【0019】
[5]前記熱電発電装置の出力に応じて前記電気化学装置における水素の製造量を調整することを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の廃熱利用水素製造装置。
【0020】
[6]前記熱電発電装置は、高温側が少なくとも800℃まで使用可能な酸化物系、ハーフホイスラー系の熱電素子、或いは、高温側が少なくとも600℃まで使用可能なスクッテルダイト系、シリサイド系の熱電素子を用いていることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の廃熱利用水素製造装置。
【0021】
[7]高温に晒される高温側及び低温に晒される低温側を持った熱電発電装置によって熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電工程と、水蒸気を得るための水蒸気発生工程と、前記水蒸気発生工程で得られた水蒸気から前記熱電発電工程で得られた電気エネルギーを用いた電気分解により水素を製造する電気化学工程とを備え、そのエネルギー源として、製鉄プロセスで放出される廃熱を利用していることを特徴とする廃熱利用水素製造方法。
【0022】
[8]熱電発電装置の低温側は水冷管を用いて冷却することを特徴とする前記[7]に記載の廃熱利用水素製造方法。
【0023】
[9]製鉄プロセスで放出される廃熱を前記熱電発電工程および前記水蒸気発生工程に直接および/または間接利用することを特徴とする前記[7]または[8]に記載の廃熱利用水素製造方法。
【0024】
[10]前記熱電発電装置の高温側の温度を所望とする温度に制御するため、熱媒体を用い、所望とする温度以上の熱エネルギーは前記水蒸気発生工程に用いることを特徴とする前記[7]〜[9]のいずれかに記載の廃熱利用水素製造方法。
【0025】
[11]前記熱電発電装置の出力に応じて前記電気化学工程における水素の製造量を調整することを特徴とする前記[7]〜[10]のいずれかに記載の廃熱利用水素製造方法。
【0026】
[12]前記熱電発電装置は、高温側が少なくとも800℃まで使用可能な酸化物系、ハーフホイスラー系の熱電素子、或いは、高温側が少なくとも600℃まで使用可能なスクッテルダイト系、シリサイド系の熱電素子を用いていることを特徴とする前記[7]〜[11]のいずれかに記載の廃熱利用水素製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、高温で大きな熱エネルギーを有し、定常的に放出されている、製鉄所(製鉄プロセス)における比較的高温の廃熱を利用しているので、水素を効率良く安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1を示す図である。
【図2】本発明の実施形態2を示す図である。
【図3】本発明の実施形態3を示す図である。
【図4】本発明の実施形態4を示す図である。
【図5】本発明の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は本発明の実施形態1に係る廃熱利用水素製造装置10Aを示し、図2は本発明の実施形態2に係る廃熱利用水素製造装置10Bを示し、図3は本発明の実施形態3に係る廃熱利用水素製造装置10Cを示し、図4は本発明の実施形態4に係る廃熱利用水素製造装置10Dを示している。
【0031】
本発明の実施形態1〜4では、太陽エネルギーではなく、製鉄プロセスにおける比較的高温(例えば800℃以上)の廃熱を活用して水素を製造する。例えば、高炉のように、繰り返し熱サイクルの比較的少なく、年中安定して高温の廃熱が得られる箇所に、耐熱温度の高い熱電素子を有する熱電発電装置(熱電変換モジュール11)を設置して熱電発電を行うとともに、同じく廃熱を利用して、給水タンク21からの水を水蒸気発生装置(水蒸気加熱器12、熱交換器14)によって1000℃程度の高温水蒸気あるいは600℃程度の中温水蒸気にした上で、前記の発電電力を用いて、電気化学装置(電解装置13)によって、前記の水蒸気を電気分解して水素と酸素を製造し、製造した水素を水素タンク23に、酸素を酸素タンク24にそれぞれ貯蔵する。なお、熱電発電装置、水蒸気発生装置、電気化学装置は、廃熱源からの廃熱の供給を考慮した適切な配置にして水素を製造する。
【0032】
ここで、本発明の実施形態1〜4で用いる熱電発電装置(熱電変換モジュール11)、水蒸気発生装置(水蒸気加熱器12、熱交換器14)、電気化学装置(電解装置13)について述べる。
【0033】
(1)熱電発電装置
熱電変換モジュール(熱電発電モジュール)11は10kW/m程度の発電量が得られ、太陽電池を使用するものと比較して約1/60の0.01mの受熱面積で同量の水素を製造することができ、コンパクトな設備となりうる。また、31kW/m程度の発電量が得られる熱電変換モジュール(熱電素子)も報告されており、今後さらなるコンパクト化、設備低廉化が期待できる。
【0034】
熱電変換モジュール11は、高温側11aと低温側11bとの温度差が大きい程、発電効率がよくなるので、廃熱源の温度を考慮して、高温側11aが少なくとも800℃まで使用可能な酸化物系、ハーフホイスラー系の熱電素子、或いは、高温側11aが少なくとも600℃まで使用可能なスクッテルダイト系、シリサイド系の熱電素子を用いることが好ましい。その熱電素子の使用可能最大温度近傍(例えば、高温側800℃、低温側30℃(常温))で使用することで、良好な発電効率を得ることができる。すなわち、設置箇所の温度に応じて使用する熱電素子の種類を変更する。なお、温度安定化のため、均熱媒体としてPCM(相変化物質)を用いることが好ましい。
【0035】
そして、廃熱源との温度対応のため、所望の熱流束に応じて、熱電素子11の厚みを決定する。具体的には、その厚みは熱電素子11の熱伝導率に高温側11aと低温側11bの温度差を乗じたものから所望の熱流束を割った値として与えられ、例えば、熱流束が5〜6×10W/m、熱伝導率が3W/mK、温度差が750Kの場合、熱電素子11の厚みは3.75〜4.5mmとする。
【0036】
また、高温側、熱電変換モジュール、低温側の接触状態を良好にするため、モジュールをきっちり拘束するよう、押さえ圧力を付与することが好ましい。これにより、熱電変換モジュールにおける熱抵抗を低減でき、効率的に発電が可能となる。
【0037】
(1.1)熱電発電装置の高温側
熱電発電装置11の高温側11aは、廃熱源から直接的或いは間接的に廃熱が供給される位置に設置する。
【0038】
例えば、図1に示す実施形態1のように、廃熱源から廃熱が直接供給されるように、廃熱源近傍に設置しても良い。この場合、熱電発電装置11の耐熱温度(使用可能最大温度)まで使用できる。熱電発電装置11での熱電発電により温度が低下した廃熱は、水蒸気加熱器12に供給して、600℃程度の中温水蒸気を発生させることに使用する。
【0039】
また、図2に示す実施形態2のように、廃熱源から直接廃熱が供給された水蒸気加熱器12の廃熱(間接廃熱)が供給される位置に設置しても良い。この間接廃熱で熱電発電を行う。
【0040】
また、図3に示す実施形態3のように、電気分解を行う電解装置13の下流側に設置しても良い。例えば、1000℃の高温水蒸気を電気分解する場合、製造された水素と酸素から600℃程度の熱を得ることが可能である。この熱で熱電発電を行う。
【0041】
なお、図4に示す実施形態4では、廃熱源から熱電発電装置11の高温側11aに廃熱が直接供給されるようになっているとともに、水蒸気加熱器12にも廃熱源から廃熱が直接供給されるようになっている。
【0042】
そして、熱電発電装置11の高温側11aにおいては、気体でなく、固体/液体と接触させることで、効率よく高温廃熱を取り込むことが可能となる。
【0043】
なお、熱電発電装置11の高温側11aの温度を所望とする温度に制御するため、熱媒体を用い、所望とする温度以上の熱エネルギーは水蒸気加熱器12に用いるようにしてもよい。
【0044】
(1.2)熱電発電装置の低温側
熱電発電装置11の低温側11bは、温度を上昇させないように、水冷管等を設置して給水タンク21、22からの水で冷却する。低温側11bの温度が上昇すると、高温側11aとの温度差が小さくなり、発電量が減少するためである。低温側11bは熱伝導のよい銅ブロックを用いることが好ましい。
【0045】
なお、図2に示す実施形態2のように、低温側11bを冷却した後の水を熱交換器14に送り、電解装置13で製造された水素や酸素との熱交換によって温度上昇させてから、水蒸気加熱器12に供給するようにしてもよい。
【0046】
また、更なる温度安定化のため、均熱媒体としてPCMを用いてもよい。例えば、PCMは融点が約58℃である酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)を用いれば、低温側11bをこの温度で安定して使用できる。
【0047】
(2)水蒸気発生装置
水の電気分解に必要なエネルギーは高温になるほど少なくなる。従って、高温の水蒸気を電気分解すれば必要な電気量を少なくすることができる。
【0048】
例えば、1000℃の水蒸気で電気分解を実施すると、水蒸気1モルの電気分解において49.5Wの電気エネルギーと20Wの熱エネルギーでよい。
【0049】
そこで、1000℃程度の高温水蒸気や600℃程度の中温水蒸気を得るために、製鉄プロセスの廃熱を直接および/または間接に利用する。
【0050】
例えば、図1に示す実施形態1のように、廃熱源から廃熱が直接供給された熱電発電装置11の廃熱を水蒸気加熱器12に供給して、熱交換器14で水素や酸素との熱交換によって温度上昇した水をさらに加熱し、中温水蒸気を得てもよい。一例として、廃熱源から800℃の廃熱を熱電発電装置11に供給して発電した後の廃熱を水蒸気加熱器12に供給することで、600℃の中温水蒸気を得ることが可能である。
【0051】
また、図2に示す実施形態2や図4に示す実施形態4のように、廃熱源から廃熱を水蒸気加熱器12に直接供給して、熱交換器14で水素や酸素との熱交換によって温度上昇した水をさらに加熱し、高温水蒸気や中温水蒸気を得てもよい。
【0052】
また、図3に示す実施形態3のように、廃熱源から廃熱を水蒸気加熱器12に直接供給して、熱電発電装置11の低温側11bを冷却して温度上昇した水をさらに加熱し、高温水蒸気や中温水蒸気を得てもよい。
【0053】
(3)電気化学装置部
電気化学装置部(電解装置13)においては、熱電発電装置(熱電変換モジュール11)で熱電発電した電力を用いて、水蒸気発生装置(水蒸気加熱器12、熱交換器14)によって1000℃程度の高温水蒸気あるいは600℃程度の中温水蒸気にした水蒸気を電気分解して水素と酸素を製造する。
【0054】
その際に、水蒸気1モルが電気分解されると、水素1モルと酸素1/2モルが発生する。発生した水素と酸素はそれぞれ水素タンク23と酸素タンク24に貯蔵される。なお、配管等によって搬送し、そのままエネルギーとして使用してもよい。
【0055】
電解装置13としては、1000℃で電気分解を行う高温水蒸気電解装置を使用すればよいが、600℃で電気分解を行う中温水蒸気電解装置を用いてもよい。この中温水蒸気電解装置は、電解質としてプロトン伝導体(SrZr0.5Ce0.40.13−a)を用い、電極として、水を分解するアノードには、高活性であるSm0.5Sr0.5CoOという組成の酸化物電極、また、水素発生極であるカソードにはニッケル電極と電解質の間にセレート系のプロトン伝導体の薄い層を挿入する構造を採用することにより、600℃、0.2A/cmの条件で、0.3Vという低い過電圧で作動する。
【0056】
なお、ここでは、熱電発電装置11の出力に応じて電解装置13における水素の製造量を調整する。このように、電力変動に応じた水素製造を行うことで、従来の発電と比較し、レギュレータが不要もしくはその費用を大幅に削減可能である。
【0057】
また、製鉄プロセスの廃熱を利用することにより発生する熱変動すなわち熱電発電力変動を水素製造というバッファによって緩和する。仮に製鉄プロセスの廃熱が一時的にゼロとなっても水素は溜めておくことが可能である。
【0058】
上記のようにして、本発明の実施形態においては、従来の太陽エネルギーからではなく、製鉄プロセスにおいて定常的に放出されている高温の廃熱を活用し、熱電発電装置11の高温側11aと低温側11bの温度差を大きくとることで、太陽光利用に比べて大幅に高い発電効率で熱電発電を行うことができるとともに、高温水蒸気や中温水蒸気での電気分解を行うことで、熱電発電した電力を用いて効率良く安定して水素を製造することができ、エクセルギー効率を高めることができる。
【実施例1】
【0059】
本発明例として、本発明を高炉に適用した。ちなみに、高炉の融着帯温度は1500K(1227℃)、滴下帯温度は2600K(2327℃)に達することから、これらの廃熱を利用することにした。
【0060】
本発明例では、図5に示すように、高炉30の側壁面の1/5(約250m)の冷却ステーブ31に熱電変換モジュール(熱電発電モジュール)11を埋め込んだ。
【0061】
その際に、熱電発電モジュール11は、高温でも使用可能なものを選定した。例えば、
(a)熱電発電モジュールK(4.2mm×50mm×50mm)
熱電発電性能は10kW/mであり、2500kWの熱電発電が可能であった。
(b)熱電発電モジュールT(6mm×40mm×40mm)
熱電発電性能は31kW/mであり、7750kWの熱電発電が可能であった。
【0062】
なお、通常の高炉操業では、冷却ステーブ31で炉体を積極的に冷却しており、熱電発電モジュール11によって廃熱を回収しても操業条件に全く影響は無かった。
【0063】
そして、水蒸気加熱器12や電解装置13は、一般的に使用されているものを用いた。その際、電解装置13では電解効率80%で水素製造を行った。
【0064】
その結果、本発明例においては、素子面積(受熱面積)250mに対して、水素発生量が18.7〜57.9kmol/hであった。したがって、1時間当り1molの水素を製造するのに必要な受熱面積は0.004〜0.01mでよかった。
【0065】
これに対して、前記特許文献1に記載された太陽熱利用水素製造装置を用いた場合(従来例1)では、1時間当り1molの水素を製造するのに必要な受熱面積が0.21m〜0.34mであった。
【0066】
したがって、従来例と同量の水素を製造する場合には、本発明例では受熱面積が従来例1の1/20〜1/50で済んだ。言い換えれば、同じ受熱面積の場合、本発明例では、従来例1に比べて20〜50倍の水素が製造可能であった。
【0067】
さらに、太陽エネルギーを利用する従来例1に比べ、本発明例では日照条件等の環境影響がなく、24時間・1年中安定して水素製造が可能であった。
【0068】
また、前記特許文献2に記載された水素製造方法を用いた場合(従来例2)では、熱電発電装置を単に設置しただけでは約60W/mの出力しか得られず、水素製造のために必要な電力を得るための受熱面積が大きくなってしまうとともに、水素の製造も常温の水の電気分解であり、水素製造効率が劣るため、1時間当り1molの水素を製造するのに必要な受熱面積が約9mと莫大になった。
【0069】
また、前記特許文献3に記載された水素製造方法を用いた場合(従来例3)では、生成させた水蒸気を600K(327℃)から900K(627℃)、そして1000K(727℃)まで昇温させるために原子力発電で発電した電気を使用したので、水蒸気電解の他に電気代が掛かった。一方、本発明例では、従来棄てていた廃熱を利用して熱電発電により電気を発生させたので、水蒸気の昇温のために電気を購入することは無く、また水蒸気電解にもその廃熱を利用した熱電発電による電気を使用したことから、エネルギーの効率的な利用が図られている。
【符号の説明】
【0070】
10A 廃熱利用水素製造装置
10B 廃熱利用水素製造装置
10C 廃熱利用水素製造装置
10D 廃熱利用水素製造装置
11 熱電変換モジュール
11a 熱電変換モジュールの高温側
11b 熱電変換モジュールの低温側
12 水蒸気加熱器
13 電解装置
14 熱交換器
21 給水タンク
22 給水タンク
23 水素タンク
24 酸素タンク
30 高炉
31 冷却ステーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温に晒される高温側及び低温に晒される低温側を持ち、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電装置と、水蒸気を得るための水蒸気発生装置と、前記水蒸気発生装置で得られた水蒸気から前記熱電発電装置で得られた電気エネルギーを用いた電気分解により水素を製造する電気化学装置とを備え、そのエネルギー源として、製鉄プロセスで放出される廃熱を利用していることを特徴とする廃熱利用水素製造装置。
【請求項2】
熱電発電装置の低温側は水冷管を用いて冷却することを特徴とする請求項1に記載の廃熱利用水素製造装置。
【請求項3】
製鉄プロセスで放出される廃熱を前記熱電発電装置および前記水蒸気発生装置に直接および/または間接利用することを特徴とする請求項1または2に記載の廃熱利用水素製造装置。
【請求項4】
前記熱電発電装置の高温側の温度を所望とする温度に制御するため、熱媒体を用い、所望とする温度以上の熱エネルギーは前記水蒸気発生装置に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃熱利用水素製造装置。
【請求項5】
前記熱電発電装置の出力に応じて前記電気化学装置における水素の製造量を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の廃熱利用水素製造装置。
【請求項6】
前記熱電発電装置は、高温側が少なくとも800℃まで使用可能な酸化物系、ハーフホイスラー系の熱電素子、或いは、高温側が少なくとも600℃まで使用可能なスクッテルダイト系、シリサイド系の熱電素子を用いていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の廃熱利用水素製造装置。
【請求項7】
高温に晒される高温側及び低温に晒される低温側を持った熱電発電装置によって熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電工程と、水蒸気を得るための水蒸気発生工程と、前記水蒸気発生工程で得られた水蒸気から前記熱電発電工程で得られた電気エネルギーを用いた電気分解により水素を製造する電気化学工程とを備え、そのエネルギー源として、製鉄プロセスで放出される廃熱を利用していることを特徴とする廃熱利用水素製造方法。
【請求項8】
熱電発電装置の低温側は水冷管を用いて冷却することを特徴とする請求項7に記載の廃熱利用水素製造方法。
【請求項9】
製鉄プロセスで放出される廃熱を前記熱電発電工程および前記水蒸気発生工程に直接および/または間接利用することを特徴とする請求項7または8に記載の廃熱利用水素製造方法。
【請求項10】
前記熱電発電装置の高温側の温度を所望とする温度に制御するため、熱媒体を用い、所望とする温度以上の熱エネルギーは前記水蒸気発生工程に用いることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の廃熱利用水素製造方法。
【請求項11】
前記熱電発電装置の出力に応じて前記電気化学工程における水素の製造量を調整することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の廃熱利用水素製造方法。
【請求項12】
前記熱電発電装置は、高温側が少なくとも800℃まで使用可能な酸化物系、ハーフホイスラー系の熱電素子、或いは、高温側が少なくとも600℃まで使用可能なスクッテルダイト系、シリサイド系の熱電素子を用いていることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の廃熱利用水素製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−208242(P2011−208242A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78022(P2010−78022)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】