説明

建具の外れ止め装置およびこれを備えた建具

【課題】 外れ止めの作動を円滑且つ安定に行わせることができると共に、コンパクトに構成することができる建具の外れ止め装置および建具を提供する。
【解決手段】 けんどんの上げ動作で相対的に下動すると共に、けんどんの下げ動作で相対的に上動する外れ止め手段6と、外れ止め手段6の下動に伴って回動始端位置から一方向に回動すると共に、回動終端位置で前記上動した外れ止め手段6に係合しこれを位置規制する逆止めストッパ7と、前記一方向への回動の途中から前記逆止めストッパ7を回動終端位置に向かって付勢するストッパ付勢手段8と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網戸等の建具が建具枠から外れるのを防止する建具の外れ止め装置およびこれを備えた建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の外れ止め装置として、網戸に設けられ、網戸を建具枠の上枠レールおよび下枠レールにけんどん動作で建て付けることにより、このけんどん動作を利用して外れ止めを作動させるものが知られている(特許文献1参照)。
この外れ止め装置は、網戸の上框に固定したケースと、ケースの上端から出没するようにケースに上下回動自在に支持されたストッパ(外れ止め部材)と、ストッパを突出する方向に付勢する捻りコイルばねと、ストッパに係合し、ストッパの下方への回動を阻止するロック位置と下方への回動を許容するアンロック位置との間で、ケースにスライド自在に取り付けられたスライダ(逆止めストッパ)と、スライダをロック位置に向かって付勢するコイルばねと、で構成されている。
初期状態でストッパは、アンロック位置にあるスライダに係合しており、この状態から建具枠に網戸をけんどん動作で建て付けると、ストッパは下方に回動する。この回動によりストッパとスライダとの係合が解かれ、スライダはコイルばねによりロック位置に向かって前進する。さらに網戸の建て付けが終了する、ストッパは上方に回動(戻る)し、スライダはストッパの下側に潜り込むようにしてロック位置に達する。これにより、けんどん動作のみにより、外れ止めを作動させることができるようになっている。
【特許文献1】実用新案登録第2539192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の外れ止め装置では、建て付けのけんどん動作のみで外れ止めを作動(ストッパをロック)させることができるが、スライダがケースにスライド自在に設けられているため、ケースのスライド溝とスライダとを所定の寸法公差となるように精度良く形成しないと、スライダがスライド溝内で円滑にスライドしなくなる問題があった。同様に、スライド溝に異物や塵埃等が付着しても、スライダが円滑に作動しなくなる。また、スライダとこれを付勢するコイルばねとを並べて配設する必要があり、装置全体がスライダのスライド方向に長くなり、装置が大型化する問題があった。
【0004】
本発明は、外れ止めの作動を円滑且つ安定に行わせることができると共に、コンパクトに構成することができる建具の外れ止め装置およびこれを備えた建具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の建具の外れ止め装置は、建具枠の上枠レールおよび下枠レールに上げ下げけんどん動作で装着される建具の上端部に設けられ、装着した建具の上下両枠レールからの離脱を阻止する建具の外れ止め装置において、けんどんの上げ動作で相対的に下動すると共に、けんどんの下げ動作で相対的に上動する外れ止め手段と、外れ止め手段の下動に伴って回動始端位置から一方向に回動すると共に、回動終端位置で上動した外れ止め手段に係合しこれを位置規制する逆止めストッパと、一方向への回動の途中から逆止めストッパを回動終端位置に向かって付勢するストッパ付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、初期状態で外れ止め手段は上動位置にあり、この状態から建具枠に建具を上げ下げけんどん動作で建て付けると、先ずけんどんの上げ動作で上枠レールに当接した外れ止め手段は相対的に下動する。また、この外れ止め手段の下動に伴って逆止めストッパが、回動始端位置から一方向に回動する。続いて、けんどんの下げ動作に移行すると、外れ止め部材はこれに倣って上動するが、逆止めストッパはストッパ付勢手段に付勢されて回動終端位置に達する。そして、外れ止め部材が上動位置に戻ると、逆止めストッパは外れ止め部材に係合しこれを位置規制する。すなわち、けんどんの建て付け動作により、外れ止めを作動させることができる。この場合、逆止めストッパが回動自在に構成されているため、構造的に作動不良になり難く、安定した作動を維持することができると共に、比較的小スペースに配置することができる。
【0007】
この場合、外れ止め手段は、支軸を中心に上下方向に回動自在に構成された外れ止め部材と、外れ止め部材を上動方向に付勢する戻しばねと、を有していることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、外れ止め部材も回動自在に構成されているため、この点でも、安定した作動を維持することができると共にスペース効率を向上させることができる。また、外れ止め手段を、ばね性を有する外れ止め部材で構成する(一体型)ことも可能であるが、別途設けた戻しばねにより、外れ止め部材を上動方向に付勢するようにしているため、外れ止め部材をけんどんの下げ動作に倣って、確実に上動させることができる。
【0009】
これらの場合、ストッパ付勢手段は、その付勢方向が、逆止めストッパの回動支軸に対し死点越えするように配設した双方向ばね、で構成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ストッパ付勢手段の付勢方向が、死点に対し回動始端位置側にあるときには、ストッパ付勢手段は逆止めストッパを回動始端位置に向かって付勢し、死点に対し回動終端位置側にあるときには、ストッパ付勢手段は逆止めストッパを回動終端位置に向かって付勢する。すなわち、ストッパ付勢手段は、回動範囲の略中間点(死点)を境に逆止めストッパを逆方向に付勢する。これにより、外れ止め手段が上動位置にある初期状態では、逆止めストッパを回動始端位置に移動させておくことができるため、運搬や保管時に逆止めストッパが回動終端位置に移動してしまうのを防止することができる。一方、けんどんの下げ動作で外れ止め手段が上動したときに、逆止めストッパを独自に回動終端位置に確実に移動させることができる。しかも、逆止めストッパ上記の動作を、単一のストッパ付勢手段により達成することができる。
【0011】
これらの場合、外れ止め手段は、回動始端位置から回動終端位置に回動する逆止めストッパの摺動を案内するガイド部と、回動終端位置に回動した逆止めストッパに係合する係合部と、を有し、逆止めストッパは、外れ止め手段の下動に伴いガイド部または係合部に接触する被係合部を有し、被係合部は、回動始端位置ではガイド部と間隔をおいて位置し、回動終端位置では係合部と近接することが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、階段状になったガイド部と係合部との高さの差によって確実に外れ止め状態と外れ止め解除状態を切り替えることができると共に、外れ止め手段と逆止めストッパとの相互の摺接および係合を円滑に行わせることができる。
【0013】
これらの場合、逆止めストッパは、逆止めストッパを、ストッパ付勢手段に抗して回動終端位置から回動始端位置に逆方向に回動させるための操作部を有していることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、操作部により、逆止めストッパを回動終端位置から回動始端位置に回動させる(回動始端位置にリセット)ことで、外れ止め状態を簡単に解除することができる。なお、装置の構成部品がケース(フレーム)等に収容されている場合、ユーザによる上記の解除操作を容易にすべく、操作部は、逆止めストッパを回動終端位置に移動した状態で外部に露出していることが好ましい。
【0015】
これらの場合、操作部は、回動始端位置に回動した前記逆止めストッパを、回動終端位置に回動操作可能に構成されていることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、建具を建具枠に適切に装着した後、誤って逆止めストッパが回動終端位置から回動始端位置に解除操作してしまった場合、これを簡単に戻す(外れ止め状態にセット)ことができる。この場合も、操作部の少なくとも一部は、逆止めストッパを回動始端位置に移動した状態で外部に露出していることが好ましい。
【0017】
本発明の建具は、上記した外れ止め装置を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、けんどんの建て付け動作のみで、外れ止め装置を自動的に作動させることができる。また、外れ止め装置自体、作動の安定性とコンパクト性を併せ持つものであるため、建具に改良を必要とすることなく、簡単に取り付けることができる。なお、請求項に言う「建具」は、網戸をはじめ各種の引き戸(障子)等を含む概念である。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明の建具の外れ止め装置および建具によれば、建て付け動作により外れ止めを作動させることができると共に、外れ止めの作動を円滑且つ安定に行わせることができる。また、装置全体をコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る外れ止め装置が設けられた網戸(建具)3付きの引違い窓の正面図であり、図2は、その拡大縦断面図である。両図に示すように、引違い窓は、窓枠(建具枠)1と、窓枠1に開閉自在に装着した外障子2aおよび内障子2bと、外障子2aの屋外側に組み込んだ網戸3と、を備えている。窓枠1は上枠11、下枠12および左右の縦枠13,13により枠組みされており、上枠11には最外端部に位置して垂設した上網戸レール(上枠レール)14が、下枠12には最外端部に位置して立設した下網戸レール(下枠レール)15が設けられている。網戸3は、上框31、下框32および左右の縦框33,33により框組みした框体と、縦框33,33間に水平に渡した中桟34と、中桟34により分割された上下の框内空間に張設した一対の網体35,35と、を有している。また、網戸3は、屋内側の上端部に見付け方向に離間するように配設した一対のスライドブロック36と、屋内側の下端部に見付け方向に離間するように配設した一対の戸車ブロック(図示省略)と、を有している(図2参照)。各スライドブロック36には、上記の上網戸レール14にスライド自在に係合すると共に網戸3のけんどんによる装着を許容する二股係合片37が設けられ、また各戸車ブロック38には、上記の下網戸レール15上を転動する戸車39が設けられている。各スライドブロック36は、上框31の上框中空部310上端から屋内側に延びる上水平片311の内側に位置して、上框中空部310の見付け面に固定され、同様に各戸車ブロック38は、下框の下框中空部312から屋内側に延びる下水平片313の内側に位置して、下框中空部312の見付け面に固定されている。これにより、網戸3は、その網体35が上下両網戸レール14,15から幾分屋外側に張り出すように装着されている。さらに、網戸3は、各スライドブロック36に組み込むようにして一対の外れ止め装置4,4を有している。各外れ止め装置4は、上記の二股係合片37より幾分上げ底で上網戸レール14にスライド自在に係合しており、けんどん動作による網戸3の上下両網戸レール14,15からの離脱を阻止している。なお、外れ止め装置4は2つに限ることはなく何個でもよい。また、外れ止め装置4および戸車39を直接框体に設けるようにしてもよい。
【0021】
次に、図3ないし図5によりこの各外れ止め装置4について詳細に説明する。外れ止め装置4は、網戸3の上框31に固定されるフレーム5と、フレーム5とともに上網戸レール14を挟み込み上下動する外れ止め手段6と、外れ止め手段6を外れ止め状態にロックする逆止めストッパ7と、逆止めストッパ7を付勢するストッパ付勢手段8とを備えている。また、外れ止め手段6は、上下動する外れ止め部材61と、外れ止め部材61を上方向に付勢する戻しばね611とで構成されている。
【0022】
フレーム5は、正面板51と、背面板52と、底板53とからなり、上を開放するように断面略コ字状に折り曲げて形成されている。底板53の中央には長方形の下部開口部54が形成されている。背面板52の左右両端部には、それぞれ2つの長孔55が形成されており、この長孔55により、外れ止め装置4は、スライドブロック36を介して上框31に螺子止めされている。また、正面板51は背面板52より上方に突出しており、背面板52から突出した外れ止め部材61とともに上網戸レール14を挟み込むように係合する。さらに、外れ止め部材の近傍に位置して正面板51には、切り起こすようにストッパ突起56が設けられており、戻しばね611により付勢された外れ止め部材61の上動位置を位置規制している。
【0023】
前記外れ止め部材61は、先端側のヘッド部62と基端側のアーム部63とで断面略鈎型に一体に形成されており、アーム部63の基部において支軸64を介してフレーム5に回動自在に軸支されている。ヘッド部62の上面には変形山形に湾曲したレール当接面68と、レール当接面68を挟んでフレーム5の正面板51に対峙するガイド壁部69とが設けられており、レール当接面68が上網戸レール14の下端面に当接して網戸3の離脱を阻止する一方、ガイド壁部69がフレーム5の正面板51との間に上網戸レール14を挟み込んで網戸の開閉をガイドする。また、ヘッド部62とアーム部63との連係部分の下面には、外れ止め解除状態から下動することで逆止めストッパ7を下動させる押圧部65と、逆止めストッパ7の摺動を案内するガイド部66と、外れ止め状態で逆止めストッパ7に保持されて下方向への移動を規制される係合部67とが形成されている。外れ止めを作動させるけんどんの初期状態では、逆止めストッパ7は押圧部65に当接しており、この状態から外れ止め部材61が回動を開始すると、逆止めストッパ7との当接点はガイド部66に移動し、ガイド部66に当接した時点で外れ止め部材61の回動が止まり、外れ止め部材61が復帰すると、当接点はガイド部65を乗り越えて係合部67に係合する。
【0024】
支軸64にはこれに巻回するようにして戻しばね611が設けられており、戻しばね611はレール当接面68が上方向に移動するように外れ止め部材61に回転を与えるよう付勢している。戻しばね611は捻りコイルばねで構成され、図示では省略したが、支軸64に巻回された状態で一端をフレーム5に、他端をアーム部63に係止されている。よって、外れ止め解除状態(初期状態)の外れ止め部材61は戻しばね611により上動位置に移動してフレーム5のストッパ突起56に当接しており、これにストッパ付勢手段8より付勢された逆止めストッパ7が下側から当接している。外れ止め部材61は、けんどんの上げ動作で相対的に下動すると共に、けんどんの下げ動作で相対的に上動する。本実施形態での戻しばね611は、支軸64に巻回した捻りコイルばねであるが外れ止め部材61を上方向に付勢するものであればなんでもよく、例えば、コイルばね、板ばねでもよく、また、アーム部63を薄肉としてばね性を持たせることにより外れ止め部材61と一体型として外れ止め手段6を構成してもよい。
【0025】
逆止めストッパ7は、フレーム5の背面板52に設けた片持ちの回動支軸71により回動自在に支持されており、扇状に形成された支持板部72と、支持板部72からフレーム5の正面板51側に突出するように設けた略「T」状の操作部73とを備えている。支持板部72は、扇状の先端位置にストッパ付勢手段8を係止する付勢手段係止部74を有している。また、操作部73は、支持板部72が見付け方向に突出する操作部本体75と、支持板部72から見付け方向に突出する被係合部77と、で略「T」字状に形成されている。被係合部77は、外れ止め部材61に下側から臨み、下動する外れ止め部材61に対し、その押圧部65、ガイド部66および係合部67に順次係合する。このとき、外れ止め解除状態にある外れ止め部材61に下側から当接している逆止めストッパ7の位置が回動始端位置であり、また、外れ止め状態で被係合部77が係合部67近傍にある状態の逆止めストッパ7の位置が回動終端位置であり、逆止めストッパ7は回動始端位置と回動終端位置との間を回動自在に構成されている。この実施形態の外れ止め部材61の支持板部72との正面視オーバーラップ部分が切り欠かれており(図示省略)、支持板部72が外れ止め部材61と屋内外方向干渉せず、操作部73の被係合部77が外れ止め部材61と適宜係合する。これにより、外れ止め部材61と逆止めストッパ7とを可能な限り近づけて配設することができ、外れ止め装置4の小型化が図られている。なお、操作部73の基端側が被係合部77を兼ねているが操作部本体75と被係合部77とは別々に設けてもよい。また、逆止めストッパ7が回動始端位置に移動した状態で、操作部本体75はフレーム5内に隠蔽され、回動終端位置に移動した状態においてフレーム5の下部開口部54から下方に突出する。これにより、逆止めストッパの操作(外れ止め解除操作)が容易になり、また、回動始端位置においてフレーム5から突出してないので外れ止め状態かどうかを目視しやすい。また、操作部本体75の外面は手で滑らず操作しやすいようにギザギザ形状の凹凸を有しているがこれに限るものではなく、例えばレバー的なものであってもよい。
【0026】
逆止めストッパ7とは若干距離をおいた位置にストッパ付勢手段8が設けられている。ストッパ付勢手段8は、所望のばね定数を有する捻りコイルばねを改良したものであり、回動始端位置と回動終端位置との略中間点から回動始端位置側に移動した逆止めストッパ7を回動始端位置に向かって付勢する一方、回動終端位置側に移動した逆止めストッパ7を回動終端位置に向かって付勢する、双方向ばねの機能を有している。ストッパ付勢手段8の一端である折曲げ端部81は、逆止めストッパ7の付勢手段係止部74に係止され、他端である支持端部82は、正面板51と背面板52との間に渡した支持ピン83に巻回支持されている。
【0027】
上記の略中間点は、ストッパ付勢手段8の折曲げ端部81における付勢方向の延長線が逆止めストッパ7の回動支軸71の軸線に交わる状態の、逆止めストッパ7の位置に相当し、ストッパ付勢手段8の付勢方向がいわゆる死点越えする状態となる。したがって、けんどんの上げ動作により、戻しばね611に抗して相対的に下動する外れ止め部材61に対し、逆止めストッパ7はストッパ付勢手段8によりこれに当接した状態で回動始端位置から回動を開始する。外れ止め部材61の下動が進んで、やがてストッパ付勢手段8が死点越えをすると、ストッパ付勢手段8は逆止めストッパ7を回動終端位置側に付勢し、逆止めストッパ7は外れ止め部材61から離れて回動終端位置に達する(実際には、いったんガイド部66に当接し外れ止め部材61の上動で回動終端位置に達する)。一方、外れ止め部材61は更に下動するが、やがてけんどんの上げ動作が下げ動作に移行することで、今度は上動に転じ上動位置に戻る。この状態では、外れ止め部材61の係合部67が逆止めストッパ7の被係合部77と対峙しており、外れ止め部材61の下動が規制される(外れ止め状態)。また、この外れ止め状態から、ストッパ付勢手段8に抗して逆止めストッパ7を回動始端位置に向かって回動操作すると、ストッパ付勢手段8が死点越えをした瞬間に、逆止めストッパ7は引き込まれるようにして回動始端位置に復帰する(外れ止め解除状態)。なお、本実施形態ではストッパ付勢手段8を改良型の捻りコイルばねで構成しているが、ばねは略く字状でなくてもよく、またばねに限らず、伸縮自在で伸びる方向に付勢されていればなんでもよい。
【0028】
以上のように外れ止め装置4が構成されており、以下に網戸3の建て付けの手順と併せて外れ止め装置4の動作を簡単に説明する。網戸3を取付ける場合、外れ止め装置4は図3(a)状態にある。すなわち、初期状態で外れ止め部材61は上動位置にあり、逆止めストッパ7は回動始端位置にある。この状態では、外れ止め手段6は逆止めストッパ7に規制されてないため自由に下動できる。そこから窓枠1に網戸3を上げ下げけんどん動作で建て付けるが、けんどんの上げ動作で上枠レール14に当接した外れ止め手段6は相対的に下動する。また、この外れ止め手段6の下動に伴って逆止めストッパ7が、回動始端位置から回動終端位置に向かって一方向に回動する。それに伴いストッパ付勢手段8もフレーム5に支持された支持端部82を中心に逆止めストッパ7とは逆回転を始める。
【0029】
回転を始めた段階ではストッパ付勢手段8は回動始端位置方向に付勢されている。逆止めストッパ7の回動支軸71に対して死点越えしたストッパ付勢手段8は逆止めストッパ7を回動終端位置方向へ付勢することで逆止めストッパ7は回転し、外れ止め部材61のガイド部66に当接する。こうして外れ止め部材61は、図3(b)のようにガイド部66が逆止めストッパ7に当接する位置まで下動できる。
【0030】
続いて、けんどんの下げ動作に移行すると、外れ止め部材61は戻しばね611により上動するが、ガイド部66から外れた逆止めストッパ7はストッパ付勢手段8に付勢されて回動終端位置に達する。そして、外れ止め手段6が上動位置に戻ると、図3(c)のように逆止めストッパ7の被係合部77が外れ止め部材61の係合部67の下方に位置することで、外れ止め部材61は逆止めストッパ7により下方向への移動を規制される。すなわち、けんどんの建て付け動作により、外れ止めを作動させることができる。
【0031】
また、外れ止め装置4を解除する場合は、逆止めストッパ7に設けられた操作部73を操作して逆止めストッパ7を回動始端位置方向に回転させ、死点越えした時点で逆止めストッパ7は回動始端位置方向へ付勢され自ら回転を始めて回動始端位置へ移動する。これにより外れ止め解除状態となるため、外れ止め部材61は下動することができ、けんどん動作により簡単に網戸3を窓枠1から取り外すことができる。また、前記構造により、逆止めストッパ7は、回動始端位置にまで完全に操作部73を操作しなくても回動始端位置まで自動復帰するので誤動作がなく簡単かつ確実に外れ止めを解除できる。
【0032】
また、逆止めストッパ7が回動終端位置にあるとき操作部73はフレーム5の下部開口部54から突出しており、逆止めストッパ7が回動始端位置にあるとき操作部73はフレーム5の中に納まっている。こうすることで逆止めストッパ7が回動終端位置にあるか回動始端位置にあるかが簡単に目視でき、かつ保管時や運搬時等において逆止めストッパが回動終端位置に移動してしまうのを確実に防止できる。
【0033】
さらに、外れ止め装置4は網戸3の上框31室内側に張り出して設けてあるため操作部73が外れ止め装置4の下部開口部54に出没する構造で操作しやすい。よって、室内側から容易に外れ止め装置4を解除することができる。しかしこれに限らず、網戸3の上框31の上水平片311および下框32の下水平片313をなくして、上框31内に外れ止め装置4を収納させ、下框32内に戸車38を収納させてもよい。そのときには操作部73を上框室内面に突出させるなどして室内側から操作しやすくするのが望ましい。
【0034】
次に図6を参照して、本発明の外れ止め装置の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の部分については説明を省略する。第2実施形態の外れ止め装置40は、第1実施形態のものと同様のフレーム5、戻しばね611、ストッパ付勢手段80と、第1実施形態ものと形状や位置関係が相違する外れ止め部材610、逆止めストッパ70とを備えている。
【0035】
外れ止め部材610は、支軸640を中心に回動自在であり、支軸640から斜め上方に延びた一端上面にはレール当接面680が上網戸レール14に当接することにより上下動するように配置されている。また、支軸640から斜め下方に延びた他端上面には押圧部650とガイド部660と係合部670とが形成されている。
【0036】
逆止めストッパ70は、回動支軸710を中心に回動自在に支持された断面略台形状の支持板部720と、支持板部720の一端に設けた操作部730とを備える。支持板部720は外れ止め部材610と室内外方向同一面にあるため適宜係合するが、一方、操作部730は外れ止め部材610と室内外方向に位置ずれしていてお互い干渉しない。支持板部720は、一端にはガイド部660および係合部670に当接する被係合部770を備え、他端には押圧部650に当接する被押圧部750と、付勢手段係止部740とを備える。
【0037】
以上の構成で第2実施形態の外れ止め装置40が構成されており、以下に網戸3の建て付けに沿いながら動作を説明する。網戸3を取付ける場合、外れ止め装置40は図6(a)のようにまず、初期状態でレール当接面680が最大限上方に移動した上動位置にあり、これに対応して逆止めストッパ70を回動始端位置に移動している。そこから窓枠1に網戸3を上げ下げけんどん動作で建て付けると、けんどんの上げ動作により外れ止め部材610が回動し、被押圧部750が押圧部650に押されることで逆止めストッパ70も一方向に回動する。
【0038】
これに伴い回動するストッパ付勢手段80は、縮みながら逆止めストッパ70を回動始端位置方向に付勢しているが、途中で逆止めストッパ70の回動支軸710に対して死点越えすることで逆止めストッパ70をこんどは回動終端位置方向へ付勢し、被係合部770がガイド部660に当接する(図6(b)参照)。
【0039】
続いて、けんどんの下げ動作に移行すると、外れ止め手段60はこれに倣って回動するが、ガイド部660から外れた逆止めストッパ70はストッパ付勢手段80に付勢されて回動終端位置に達する(図6(c)参照)。すなわち、第2実施形態の外れ止め装置40によっても、けんどんの建て付け動作により、外れ止めを作動させることができる。
【0040】
次に図7を参照して、本発明の外れ止め装置の第3の実施形態について説明する。この外れ止め装置45の第1実施形態と異なるところは、逆止めストッパ7が回動始端位置にある状態で操作部735はフレーム5から突出している。すなわち、第3実施形態の操作部735は、第1実施形態の操作部73より十分に長く形成されており、初期状態でフレーム5から操作可能に突出している。こうすることで、外れ止め手段6を下動させて自動で外れ止めをかける機能に加えて、操作部73を操作して逆止めストッパ7を回動始端位置から回動終端位置へ移動させて手動で外れ止めをかけることができるので、誤作動で外れ止めを解除してしまったときなどにけんどん動作により外れ止めをかける必要がなく操作部73により外れ止めをかけることができる。
【0041】
なお、本発明の外れ止め装置は、横けんどん式で取り付けられる網戸にも適用可能である。かかる場合には、外れ止め装置を網戸の横框に装着するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の外れ止め装置を用いた網戸と引き違いサッシの正面図
【図2】外れ止め装置を用いた網戸と引き違いサッシの縦断面図
【図3】(a)外れ止め装置の外れ止め解除状態図、(b)外れ止め部材が許容位置にある状態図、(c)外れ止め装置の外れ止めがかかった状態図
【図4】外れ止め装置の前面の分解斜視図
【図5】外れ止め装置の背面の分解斜視図
【図6】(a)第2実施形態の外れ止め装置の外れ止め解除状態図、(b)第2実施形態のけんどんによる上げ動作の状態図、(c)第2実施形態の外れ止め装置の外れ止めがかかった状態図
【図7】第3実施形態の外れ止め装置の外れ止め解除状態図
【符号の説明】
【0043】
1…建具枠 3…建具 4、40、45…外れ止め装置 6、60…外れ止め手段 7、70…逆止めストッパ 8…ストッパ付勢手段 14…上枠レール 15…下枠レール 61、610…外れ止め部材 64、640…支軸 66、660…ガイド部 67、670…係合部 71、710…回動支軸 73、730、735…操作部 611…戻しばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具枠の上枠レールおよび下枠レールに上げ下げけんどん動作で装着される建具の上端部に設けられ、装着した前記建具の前記上下両枠レールからの離脱を阻止する建具の外れ止め装置において、
前記けんどんの上げ動作で相対的に下動すると共に、前記けんどんの下げ動作で相対的に上動する外れ止め手段と、
前記外れ止め手段の前記下動に伴って回動始端位置から一方向に回動すると共に、回動終端位置で前記上動した前記外れ止め手段に係合しこれを位置規制する逆止めストッパと、
前記一方向への回動の途中から前記逆止めストッパを前記回動終端位置に向かって付勢するストッパ付勢手段と、を備えたことを特徴とする建具の外れ止め装置。
【請求項2】
前記外れ止め手段は、支軸を中心に上下方向に回動自在に構成された外れ止め部材と、前記外れ止め部材を上動方向に付勢する戻しばねと、を有していることを特徴とする請求項1に記載の建具の外れ止め装置。
【請求項3】
前記ストッパ付勢手段は、その付勢方向が、前記逆止めストッパの回動支軸に対し死点越えするように配設した双方向ばね、で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の建具の外れ止め装置。
【請求項4】
前記外れ止め手段は、前記回動始端位置から前記回動終端位置に回動する前記逆止めストッパの摺動を案内するガイド部と、前記回動終端位置に回動した前記逆止めストッパに係合する係合部と、を有し、
前記逆止めストッパは、前記外れ止め手段の下動に伴い前記ガイド部または前記係合部に接触する被係合部を有し、
前記被係合部は、回動始端位置では前記ガイド部と間隔をおいて位置し、前記回動終端位置では前記係合部と近接することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の建具の外れ止め装置。
【請求項5】
前記逆止めストッパは、当該逆止めストッパを、前記ストッパ付勢手段に抗して前記回動終端位置から前記回動始端位置に逆方向に回動させるための操作部を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の建具の外れ止め装置。
【請求項6】
前記操作部は、前記回動始端位置に回動した前記逆止めストッパを、前記回動終端位置に回動操作可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の建具の外れ止め装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の建具の外れ止め装置を備えたことを特徴とする建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−70990(P2007−70990A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262415(P2005−262415)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】