説明

建具用枠体の形成方法

【課題】作業性と安全性の高い建具用枠体の形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の建具用枠体の形成方法は、まず、支持棒を、枠体を形成する位置の近傍に鉛直方向に配置する。つぎに、支持手段を、横枠が所定の高さに配置するように、支持棒固定部により支持棒に固定する。つぎに、支持手段における横枠載置部上に横枠を水平方向に載置し、支持手段における横枠固定部により横枠を固定する。その後、縦枠が鉛直方向に配置するように、縦枠を横枠に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具用枠体の形成方法に関するものであり、特に、作業性と安全性に優れる建具用枠体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋の開口部に設置する開閉扉には、開き戸、引き戸、折り戸等がある。これらの建具のうち、開き戸は、蝶番(ちょうつがい)を軸にして開閉するタイプであり、防音性と気密性に優れ、プライベートルームやトイレ等に使われる。また、引き戸は、扉を左右にスライドさせて開閉し、扉の前後に開閉にともなうスペースが不要なため、狭い空間でも使用することができる。一方、折り戸は、扉自体を折り畳むことによって開閉する扉であり、間口が広い等のメリットがあり、クローゼット等に多用される。
【0003】
図2は、従来の開き戸の形成方法を模式的に示す斜視図である。開き戸を形成するときは、図2(a)に例示するように、縦枠21と横枠22とを枠組立用ビス23で接合することにより枠体を形成する。その後、家屋の開口部の壁材(図示していない。)に枠体固定用ビス24により枠体を固定し、縦枠21が鉛直方向に配置し、横枠22が水平方向に配置するように固定する。つぎに、図2(b)に示すように、戸当り29を取り付け、ハンドル25と錠26を付設した扉27と枠体とを蝶番28(扉側蝶番28a、枠体側蝶番28b)により連結し、開き戸を形成する(非特許文献1参照)。
【0004】
引き戸及び折り戸の形成方法も、開き戸の場合と同様に、最初に縦枠と横枠を接合し、枠体を形成した後、家屋の開口部の壁材に枠体を固定する。その後、引き戸の場合には、レールを付設した敷居と扉等を枠体に取り付け、折り戸の場合には、横枠にレールを設けた後、蝶番の付いた扉等を取り付ける。
【0005】
しかし、縦枠と横枠を接合して枠体を形成する作業は、枠材を水平に倒した状態で行う場合、作業スペースを確保する必要があり、接合後、枠体を鉛直方向に立てるときに安全上及び作業上の問題が多い。一方、縦枠を鉛直方向に立てた状態で接合する場合、補助者の助けが必要となり、作業性が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】DAIKEN,業務用2010総合カタログ,「設計・施工資料」2009年10月発行,p.339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、作業性と安全性の高い建具用枠体の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鉛直方向に配置する縦枠と、縦枠と接合し、水平方向に配置する横枠とにより構成される建具用枠体の形成方法であって、支持棒と、支持棒に固定する支持手段とを使用し、支持手段は、支持棒に固定する支持棒固定部と、横枠を載置する横枠載置部と、横枠を固定する横枠固定部とを有する。枠体を形成するには、支持棒を、枠体を形成する位置の近傍に鉛直方向に配置し、支持手段を、横枠が所定の高さに配置するように支持棒固定部により支持棒に固定する。つぎに、支持手段における横枠載置部上に横枠を水平方向に載置し、支持手段における横枠固定部により横枠を固定する。その後、縦枠が鉛直方向に配置するように、縦枠を横枠に接合する。
【0009】
支持棒の好ましい態様は、支持棒の下端が当接する当接手段を備え、当接手段は、支持棒の下部が嵌合する嵌合部と、支持棒の下端が当接する可動楔とを有する。可動楔は、一方の楔面が水平に配置し、他方の楔面が支持棒の下端に当接し、可動楔の峰部から、可動楔におけるテーパ部の先端に向かって可動楔を前進させてから可動楔を固定する。また、支持棒の別の好ましい態様は、内管と外管とを備える多重構造であり、外管は、内管の外壁を圧接して内管と外管とを固定する内管固定部材を備える。内管は、内管の外壁のうち、内管固定部材により圧接される領域に溝部を有し、溝部は、溝部の深さが、内管の上方に行くにつれて浅くなるようなテーパを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により形成する枠体は、縦枠が鉛直方向に配置し、横枠が水平方向に配置するため、枠体の形成後、家屋の開口部に枠体を固定するときに、枠体の移動する距離が短く、枠体の向きを変える必要がない。また、枠体の形成に際して補助者の協力も不要である。したがって、本発明の枠体の形成方法は、作業性と安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の建具用枠体の形成方法を説明する断面図である。
【図2】従来の開き戸の形成方法を模式的に示す斜視図である。
【図3】図1におけるIII−IIIにより支持棒を切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の建具用枠体の形成方法を説明する断面図である。本発明の建具用枠体の形成方法では、図1に示すように、支持棒1と、支持棒1に固定する支持手段2を使用する。支持手段2は、支持手段2を支持棒1に固定する支持棒固定部2aと、横枠22を載置する横枠載置部2bと、横枠22を固定する横枠固定部2cとを有する。横枠22が短小であるような場合には、1本の支持棒と支持手段を、横枠22の中央部に配置することにより、本発明の形成方法を実施することができる。一方、横枠22が長大であるような場合には、2本または3本以上の支持棒と支持手段を用いる方が、施工の精度と安全性を高める点で好ましい。
【0013】
開き戸、引き戸、折り戸等の建具に使用する枠体を形成するときは、最初に、支持棒1を、枠体を形成する位置の近傍に鉛直方向に配置する。後の工程で縦枠と横枠とを接合し、枠体を形成するが、枠体を形成する位置の近傍とは、かかる枠体を形成する位置の近くという意味である。また、縦枠と横枠とを接合し、得られた枠体は家屋の開口部にまで移動し、固定する。したがって、枠体の移動距離を減らし、作業性と安全性を高めるために、家屋の開口部における枠体を固定する位置の近くに支持棒1を配置するのが好ましい。本明細書において、鉛直方向とは、正確に鉛直方向である場合のほか、建具の施工において許容される範囲内でおよそ鉛直方向である場合が含まれ、正確に鉛直な方向を基準にして±5度以内が好ましく、±3度以内がより好ましく、±2度以内が特に好ましい。
【0014】
つぎに、支持手段2を、横枠22が所定の高さに配置するように、支持棒固定部2aにより支持棒1に固定する。図1には、支持棒1が、支持手段2の中に上下移動自在に嵌入し、支持手段2における支持棒固定部2aで支持棒1と支持手段2とを固定する例を示す。図1に示す例では、支持手段2に、貫通するネジ穴を形成し、支持棒固定部2aである摘みネジをネジ穴に装着し、摘みネジで支持棒1の外壁を圧接することにより、支持手段2と支持棒1とを固定する。後の工程で横枠22と縦枠とを接合し、得られた枠体を家屋の開口部に移動し、枠体を開口部に固定する。したがって、横枠22が所定の高さに配置するようにとは、枠体の移動と固定を容易にし、安全性を高めることができる点で、開口部における横枠を形成する高さ、またはその少し上方に横枠を配置するという意味である。本発明の方法によれば、横枠の高さの微調整を容易に行うことができる。また、建具の中でも窓のように、2本以上の横枠を形成する必要があるときは、横枠の本数と高さに合わせて、複数の支持手段を支持棒に固定する。
【0015】
つぎに、支持手段2における横枠載置部2b上に横枠22を水平方向に載置し、その後、支持手段2における横枠固定部2cにより横枠22を固定する。図1には、横枠固定部2cが、補助部材2c1と摘みネジ2c2とから構成される例を示す。図1に示す例では、横枠載置部2bが、補助部材2c1の中に移動自在に嵌入する。また、補助部材2c1に、貫通するネジ穴を形成し、ネジ穴に摘みネジ2c2を装着し、摘みネジ2c2で横枠載置部2bの外壁を圧接することにより補助部材2c1と横枠載置部2bとを固定することができる。また、同時に支持棒1と補助部材2c1との間に横枠22を圧接して横枠22を固定することができる。
【0016】
その後、縦枠(図1には図示していない。)が鉛直方向に配置するように、縦枠を横枠22に接合することにより建具用枠体を形成することができる。つぎに、横枠固定部2cを緩めて支持棒と支持手段を取り外した後、家屋の開口部に枠体を設置する。かかる方法により形成する建具用枠体は、縦枠が鉛直方向に配置し、縦枠と接合する横枠が水平方向に配置するため、枠体形成後、枠体を設置するまでの枠体の移動距離が短く、枠体の向きを変える必要がない。また、枠体の形成に際して補助者の協力も不要である。したがって、本発明の枠体の形成方法は作業性と安全性に優れる。本明細書において、水平方向とは、正確に水平方向である場合のほか、建具の施工において許容される範囲内でおよそ水平方向である場合が含まれ、正確に水平な方向を基準にして±5度以内が好ましく、±3度以内がより好ましく、±2度以内が特に好ましい。設置する建具により、横枠には3本以上の縦枠を接合し、たとえば引き戸では方立を横枠に接合する。また、必要に応じて、敷居等の横枠を接合する。さらに、本発明の方法により、木製の枠体のほか、金属製またはプラスティック製等の枠体を形成することができる。
【0017】
支持棒と支持手段としては、木製、金属製、プラスティック製のものを任意に使用することができる。また、亜鉛メッキ、ABS樹脂またはナイロン等でコーティングしたものやステンレススティール製のものは、錆が生じないため、長期間使用することができる。さらに、支持棒は、適当な長さの柱状体を使用できるため、施工現場にある適当な廃材を切断して、支持棒として利用することも可能である。また、支持棒として、角柱状または円柱状のものを好ましく使用することができ、鉛直方向に起立する既存の柱も、支持棒として有効に利用することができる。このような柱には、たとえば、横枠に縦枠を接合して枠体を形成した後、枠体を設置する柱がある。家屋の開口部の周囲の壁を後から調製するような場合には、開口部に起立する柱を支持棒として好ましく使用することができる。
【0018】
本発明の枠体の形成方法では、支持棒は、枠体を形成する位置の近傍に鉛直方向に配置する。支持棒は、家屋の壁面に立てかけることにより、枠体を形成する位置の近傍に配置しても、本発明の効果を得ることができる。しかし、施工精度を高める点で、図1に示すように、支持棒1を天井面3と床面4に固定する態様が好ましい。かかる態様は、つぎの構成により得ることができる。
【0019】
たとえば、図1に示すように、支持棒1が、支持棒1の下端と当接する当接手段5を備え、当接手段5は、支持棒1の下部が上下移動自在に嵌合する嵌合部5aと、支持棒1の下端が当接する可動楔5bとを有する。可動楔5bは、一方の楔面5b1が水平に配置し、他方の楔面5b2が支持棒1の下端に当接し、可動楔5bの峰部5b4から、可動楔5bにおけるテーパ部の先端5b3に向かって前進させてから、可動楔5bを固定する。図1には、固定台51のネジ穴に、ボルト52を装着した例を示す。図1に示す例では、ボルト52を回転することにより、峰部5b4からテーパ部の先端5b3に向かって可動楔5bを前進させ、固定することができる。かかる操作により、支持棒1を鉛直方向に保った状態で、支持棒1を上方に移動することができるため、支持棒1により天井面3と床面4を適度の力で加圧し、支持棒1を固定することができる。
【0020】
支持棒が、図1に示すように、内管11と外管12とを備える多重構造であり、内管11が上下移動自在に外管12に嵌合し、外管12は、内管11の外壁を圧接して内管11と外管12とを固定する内管固定部材12aを備える態様が好ましい。かかる態様の支持棒は、枠体の形成時には、外管12の中から内管11を引き出し、外管と内管を固定して使用するが、支持棒として使用しない時は、内管を外管に収納し、短くすることができるため、持ち運びが容易である。図1に示す例では、外管12に、貫通するネジ穴を形成し、内管固定部材12aである摘みネジをネジ穴に装着し、摘みネジで内管11の外壁を圧接することにより、内管11と外管12とを固定する。また、上述のように支持棒1を天井面3と床面4との間に固定するときは、最初に、固定台51を床面4上に配置する。つぎに、当接手段5に嵌合する外管12の中に収納している内管11を引き出して、内管11の上端が天井面3に接した状態で、内管固定部材12aにより内管11と外管12とを固定する。つぎに、可動楔5bにより、支持棒1を上昇すると、容易に支持棒1を天井面3と床面4との間に固定することができる。
【0021】
図1に示すように、支持棒1が、内管11と外管12とを備え、外管が、内管の外壁を圧接して内管と外管とを固定する内管固定部材12aを備える場合、内管は、内管の外壁のうち、内管固定部材12aにより圧接される領域に溝部11bを有する態様が好ましい。図3は、図1におけるIII−IIIにより支持棒を切断したときの断面図である。図3に示すように、内管11に溝部11bを設けることにより、内管固定部材12aの圧接部12a1が溝部11b内に挿入するため、内管11と圧接部12a1とがずれることがなくなり、内管の固定を容易にすることができる。また、図1に示すように、溝部11bは、溝部の深さが、内管の上方に行くにつれて浅くなるようなテーパを有する態様が好ましい。溝部11bが、かかるテーパを有することにより、内管固定部材12aを少し緩めたときに、内管11が急激に落下するという問題を容易に解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
建具用枠体を、作業性と安全性の高い方法により形成することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 支持棒
2 支持手段
2a 支持棒固定部
2b 横枠載置部
2c 横枠固定部
2c1 補助部材
2c2 摘みネジ
3 天井面
4 床面
5 当接手段
5a 嵌合部
5b 可動楔
5b1,5b2 楔面
11 内管
11b 溝部
12 外管
12a 内管固定部材
21 縦枠
22 横枠
51 固定台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に配置する縦枠と、該縦枠と接合し、水平方向に配置する横枠とにより構成される建具用枠体の形成方法であって、
支持棒と、該支持棒に固定する支持手段とを使用し、
該支持手段は、支持棒に固定する支持棒固定部と、横枠を載置する横枠載置部と、横枠を固定する横枠固定部とを有する枠体の形成方法であって、
前記支持棒を、枠体を形成する位置の近傍に鉛直方向に配置する工程と、
支持手段を、横枠が所定の高さに配置するように支持棒固定部により支持棒に固定する工程と、
前記支持手段における横枠載置部上に横枠を水平方向に載置する工程と、
前記支持手段における横枠固定部により横枠を固定する工程と、
縦枠が鉛直方向に配置するように、縦枠を前記横枠に接合する工程と
を備える建具用枠体の形成方法。
【請求項2】
前記支持棒は、支持棒の下端が当接する当接手段を備え、
該当接手段は、支持棒の下部が嵌合する嵌合部と、支持棒の下端が当接する可動楔とを有し、
前記可動楔は、
一方の楔面が水平に配置し、他方の楔面が前記支持棒の下端に当接し、
可動楔の峰部から、可動楔におけるテーパ部の先端に向かって前進させてから固定される請求項1に記載の建具用枠体の形成方法。
【請求項3】
前記支持棒は、内管と外管とを備える多重構造であり、前記外管は、内管の外壁を圧接して内管と外管とを固定する内管固定部材を備える請求項1または2に記載の建具用枠体の形成方法。
【請求項4】
前記内管は、内管の外壁のうち、前記内管固定部材により圧接される領域に溝部を有し、該溝部は、溝部の深さが、内管の上方に行くにつれて浅くなるようなテーパを有する請求項3に記載の建具用枠体の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77540(P2012−77540A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224889(P2010−224889)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(510264420)
【Fターム(参考)】