説明

建具

【課題】採光性や意匠性を向上できる建具を提供すること
【解決手段】戸10は、上枠21および下枠22を備える建具枠20と、障子42とを備える。障子42は、金属製の板材で形成された左右の縦框52と、前記縦框間に取り付けられた面材50と、縦框52の下端部に取り付けられた摺動部材70とを備える。上枠21は下面に開口する溝を有する。下枠22は上面に開口する溝を有し、この溝内にはレールが設けられる。縦框52および面材50の上端部は、上枠21の溝内に挿入される。縦框52および面材50の下端部は、下枠22の溝内に挿入される。摺動部材70は下枠22の溝内に設けられたレール部材31,32の突条部314,324上を摺動して移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下枠を有する建具枠と、この上下枠で案内される障子とを有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な引違い形式のサッシ窓(引違いサッシ)は、窓枠と、障子とで構成される(例えば、特許文献1参照)。障子は、ガラス等の面材の四辺にそれぞれ金属製の框(上框、下框、左右の縦框)を嵌め込んで構成される。窓枠の上下枠には、障子を案内するレールが形成される。そして、障子の上框を上枠のレールで案内し、障子の下框の戸車を下枠のレールで案内することで、障子を開閉自在に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−353434公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的な引違いサッシでは、ガラスの周囲に嵌め込まれる上下框および縦框が存在するため、障子の見付け面の面積に比べて、ガラスの見付け面の面積が小さくなる。このため、従来の障子では、採光性や意匠性を向上することが難しいという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、採光性や意匠性を向上できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、上枠および下枠を備える建具枠と、前記上枠および下枠に沿って移動する障子とを備える建具であって、前記障子は、金属製の板材で形成された左右の縦框と、前記縦框間に取り付けられた面材と、前記縦框の下端部に取り付けられた移動部材とを備え、前記上枠には下面に開口する溝が形成され、前記下枠には上面に開口する溝が形成され、前記障子は、縦框および面材の上端部が前記上枠の溝内に挿入され、縦框および面材の下端部が前記下枠の溝内に挿入され、前記移動部材が前記下枠の溝内を移動することで、前記障子は前記建具枠の上枠および下枠に沿ってスライド移動することを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、障子は、面材および縦框で構成され、上下框を無くしたので、上下框が存在する場合に比べて、面材の見付け面の面積を大きくすることができる。このため、面材の意匠性を向上でき、面材としてガラス等の透光性を有する部材を用いた場合には、採光面が大きくなって採光性を向上できる。
また、障子に上下框を設けなくても、上枠および下枠に溝を形成し、縦框および面材の上端部および下端部を各溝に呑み込ませているので、障子を上下枠の溝に沿って面内方向(見付け方向)にスライド移動できる。
なお、前記移動部材は、戸車でもよいし、摺動部材でもよい。移動部材として戸車を用いる場合は、前記下枠の溝内にレールを形成し、このレールで縦框の下端部に取り付けた戸車を案内すればよい。移動部材として摺動部材を用いる場合には、前記下枠の溝内に摺動面を形成し、この摺動面上に縦框の下端部に取り付けた摺動部材を接触させて移動すればよい。
【0008】
この際、前記下枠は、前記溝を区画形成する一対の立上り部を備え、前記各立上り部から溝内部に突出する突出片が形成され、前記突出片間の見込み方向の幅寸法は前記溝の見込み方向の幅寸法よりも小さくされ、前記移動部材は、前記溝内に配置されて前記突出片間の幅寸法よりも大きく、前記溝の幅寸法よりも小さい幅寸法の係止部を備えていることが好ましい。
【0009】
この発明によれば、前記下枠の溝を区画形成する一対の立上り部から突出片が突出され、突出片間の見込み方向の幅寸法が溝内部よりも小さくなる。また、移動部材は、この突出片間の幅寸法よりも大きな幅寸法の係止部を備えている。
このため、障子の開閉時に障子の転びで一方の縦框側が上方に移動したり、暴風などで障子が浮き上がった場合に、前記移動部材の係止部が前記下枠の突出片に当たって係止されるので、障子が下枠から外れて脱落することを防止できる。
さらに、この障子の外れ防止用の係止部は、縦框側に形成することもできるが、その場合は縦框の加工が複雑になる。これに対し、本発明では、縦框に取り付けられる別体の移動部材に係止部を形成しているので、縦框の構成を簡易にできて容易に加工できる。
【0010】
また、前記縦框は、金属製の板材からなり前記面材を室外側から保持する室外側保持板と、金属製の板材からなり前記面材を室内側から保持する室内側保持板とを備えて構成され、前記室外側保持板および室内側保持板は、縦框の見込み方向に延長された見込み面部と、前記見込み面部から縦框の見付け方向に延長された見付け面部とを備え、前記室外側保持板および室内側保持板は、見込み面部同士を連結して一体化され、前記室外側保持板および室内側保持板の見付け面部で面材を挟持して保持することが好ましい。
【0011】
この発明によれば、前記室外側保持板および室内側保持板は、金属製の板材を折り曲げて形成できる。そして、各見込み面部をリベット等で連結して一体化しているので、縦框として必要な剛性を確保でき、別途、骨材を用いる必要がないため、部材点数を少なくできてコストを抑えることができる。
また、1枚の板材で前記面材を保持する溝部を構成した場合に、曲げ加工が複雑になる。また、前記溝部内に接着剤を注入して面材を固定する場合、前記接着剤をムラ無く注入することが難しい。これに対し、本発明では、室外側保持板および室内側保持板の2つの部材を備えているので、曲げ加工も例えば各保持板をL字状に折曲するだけでもよく、簡単に加工できる。また、室外側保持板および室内側保持板を一体化する前に、見付け面部に接着剤を塗布することもでき、接着剤を均一に塗布して面材の接着を確実に行うことができる。
【0012】
本発明において、前記移動部材は、前記室外側保持板の見付け面部および室内側保持板の見付け面部を挟持する框材保持部を備えることが好ましい。
この発明によれば、室外側保持板、室内側保持板の見付け面部を框材保持部で挟持するので、面材を保持する各保持板の見付け面部が広がることを防止できる。また、移動部材の框材保持部が、各保持板の見付け面部に係合するため、移動部材が回転することも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の建具である防火戸を開いた状態を示す正面図である。
【図2】前記防火戸を閉めた状態を示す正面図である。
【図3】建物の窓および防火戸を示す縦断面図である。
【図4】建物の窓および防火戸を示す横断面図である。
【図5】前記防火戸の建具枠および先付けブラケットを示す斜視図である。
【図6】前記防火戸の下枠を示す縦断面図である。
【図7】前記下枠の要部を示す縦断面図である。
【図8】前記建具の要部を示す斜視図である。
【図9】前記外障子および内障子の召合せ部を示す横断面図である。
【図10】前記外障子の突合せ部を示す横断面図である。
【図11】変形例の防火戸を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜5に示すように、本実施形態に係る建具は、建物の外壁1の開口部に設置される窓2の屋外側に設けられる防火戸10である。
窓2は、建物の開口部に固定される窓枠3と、窓枠3に支持される一対の障子4と、一対の障子4よりも屋外側にて窓枠3に支持される網戸5とを備えた一般的な引き違い窓である。なお、図1では網戸5を省略している。
【0015】
防火戸10は、前記窓2の室外側に配置される。この防火戸10は、所定の耐火性能を確保するとともに、シャッターや雨戸と同様に強風時の飛来物によって窓2のガラスが破損することを防止できる。
この防火戸10は、建物の外壁1に固定される建具枠20と、この建具枠20に支持される四枚建ての障子40とを備える。障子40は、防火戸10の見付け方向中央部で互いに突き合わされる2枚の外障子(突合せ障子)41と、外障子41の内側に配置される2枚の内障子42とで構成される。
【0016】
建具枠20は、図5にも示すように、スチール製の上枠21、下枠22および左右の縦枠23を枠組みして構成されている。縦枠23は、上枠21、下枠22の両端部から所定寸法内側の位置で上枠21、下枠22間に配置されている。すなわち、上枠21および下枠22の両端側は、縦枠23よりも所定寸法突出している。この縦枠23から上枠21、下枠22の両端部分までの見付け寸法は、後述するように、防火戸10を開いた際に各障子41,42が納まる寸法とされている。
また、上枠21、下枠22と、縦枠23は、図3,4に示すように、L形ブラケット24にそれぞれボルト止めされて連結されている。すなわち、L形ブラケット24の垂直面部に縦枠23がねじ止めされている。このねじの先端には袋ナットが取り付けられている。また、L形ブラケット24の水平面部は縦枠23の上下両端に形成された切欠に配置され、この水平面部に裏板を用いて上枠21、下枠22がねじ止めされている。
【0017】
[下枠の構成]
下枠22は、図6にも示すように、下枠本体220と、レール部材31,32とを備えて構成されている。
下枠本体220は、主に2枚のスチール板221、222によって構成されている。スチール板221、222は、厚さ寸法がt0.8〜t1.5の鋼板であり、防火設備(防火戸)として求められる構造規定を満たすものである。
スチール板221は、外壁1に固定される固定部221Aと、この固定部221Aから水平方向に折曲されて下枠22の下面を構成する平面部221Bと、この平面部221Bの室外側端縁から上側に折曲され、さらに上端側においてヘミング加工で折り返された外面部221Cとを備えている。
スチール板222は、外壁1に固定される固定部222Aと、この固定部222Aから水平方向に折曲されて下枠22の上面を構成する平面部222Bと、この平面部222Bの室外側端縁から垂直方向下側に折曲された垂直壁部222Cと、垂直壁部222Cの下端から水平方向室外側に折曲された底面部222Dと、底面部222Dの室外側端縁から垂直方向下側に折曲された外面部222Eと、外面部222Eの下端から室内側に折曲された固定部222Fとを備えている。
【0018】
そして、スチール板221,222は、外面部221Cに外面部222Eを当接させた状態で、平面部221Bの上に固定部222Fを載置し、平面部221Bおよび固定部222Fを貫通して裏板223にねじ込まれた固定ねじ224で固定されている。
また、下枠22の長手方向端面には、図5に示すように、端部キャップ25が取り付けられている。この端部キャップ25には、図示しないが平面部222Bに固定される固定片と、平面部221Bに固定される固定片を備えている。従って、各スチール板221,222は、端部キャップ25を介しても連結されている。
【0019】
下枠22は、外壁1側つまり室内側に開口された開口部226を備えている。この開口部226は、2枚のスチール板221,222間の空間で構成されており、固定部221A,222A間に開口されている。
一方、窓2の下側の外壁1には、図5に示すように、平面コ字状の先付けブラケット26が固定されている。先付けブラケット26は、スチール板を折り曲げて構成され、外壁1に固定される固定部261と、固定部261に連続する支持部262とを備えている。
下枠22は、先付けブラケット26を開口部226に挿入した状態で外壁1に固定される。この際、先付けブラケット26は、支持部262が垂直面となる向きに固定されており、下枠22の支持強度を高めている。
下枠22は、図6にも示すように、固定部221A,222Aに所定間隔で形成された長孔227から固定ねじ27をねじ込むことで外壁1に固定される。なお、固定ねじ27の頭部はカバー材271で被覆されて外部に露出しない。
【0020】
下枠22の底面部222Dには、図7にも示すように、断面L字状のアングル材28が後述するレール部材32の固定用の皿ネジ35で取り付けられている。このアングル材28もスチール材で構成されている。また、アングル材28はピース材であり、下枠本体220の長手方向に沿って複数個配置されている。このアングル材28の配置箇所は、前記レール部材32の固定ねじによる固定箇所に合わせている。
また、図示を略すが、後述するレール部材31の固定箇所にもアングル材28と同様のアングル材が配置され、レール部材31の固定ねじで固定されている。なお、前記アングル材28は、立上り部がレール部材32の室外側に配置されているが、レール部材31の下面側に配置されるアングル材は、立上り部がレール部材31の室内側に配置されている。
これにより、下枠22の上面には、2つの凹溝部22A,22Bが形成されている。外側の凹溝部22Aは、室外側壁部としての外面部221C、底面部222D、室内側壁部としての図示略のアングル材で構成される。また、内側の凹溝部22Bは、室外側壁部としてのアングル材28、底面部222D、室内側壁部としての垂直壁部222Cで構成される。なお、アングル材28はピース材であるため、各アングル材28の間に排水用の隙間が形成されている。
【0021】
[下レール部材の構成]
これらの凹溝部22A,22Bには、障子41,42を案内するレール部材31,32が配置されている。
レール部材31は外障子41を案内する外レール部材であり、レール部材32は内障子42を案内する内レール部材である。
外レール部材31は、凹溝部22Aに配置される。外レール部材31は、図7にも示すように、断面略コ字状のアルミ形材であり、底面部222Dに対向する水平面部311と、水平面部311の室外側端縁から連続する第1の立上り部312と、水平面部311の室内側端縁に連続する第2の立上り部313とを備える。
水平面部311の上面には、突条部314が形成されている。突条部314は、後述するように外障子41の摺動部材70を案内するレールである。
また、各立上り部312,313の上端には、外レール部材31の内周側に延長された突出片316がそれぞれ形成されている。従って、突出片316は互いに近づく方向に延長され、外レール部材31の開口幅寸法を、各立上り部312,313間の寸法よりも短くしている。
【0022】
外レール部材31の水平面部311の所定箇所には、図4、7に示すように、突条部314の外側および内側(外障子41の外側および内側)に、調整孔315がそれぞれ形成されている。本実施形態では、少なくとも、外障子41を閉めた際の突合せ位置から左右方向(外レール部材31の長手方向)に、それぞれ60mm離れた位置に形成されている。すなわち、外障子41の突合せ部に合わせて、少なくとも4つの調整孔315が形成されている。
調整孔315は、図4にも示すように、外レール部材31の長手方向に延長された長孔であり、水平面部311を貫通して形成されている。
【0023】
調整孔315の位置に合わせて、調整部材である調整ねじ33が設けられている。調整ねじ33は、頭部の表面が球面状に湾曲されて十字溝が形成された一般的なねじである。
この調整ねじ33の頭部の直径は、前記調整孔315の長手方向の寸法以下であり、かつ、長手方向に直交する幅寸法よりも大きく設定されている。従って、調整ねじ33の頭部は、十字穴が形成された頂部側が前記調整孔315に係合するとともに、調整孔315の長手方向の両端部側では、調整ねじ33との間に隙間が形成されている。このため、調整孔315に水が入り込んだ場合、その水は前記隙間を通して凹溝部22Aの底面部222D上に流れる。凹溝部22Aの長手方向(見付け方向)の両端部には、凹溝部22A内の水を下枠22の外部に排水する図示略の排水孔があり、前記調整孔315から凹溝部22Aに流れ込んだ水は排水孔から下枠22の外部に排水される。
なお、水平面部311には、前記調整孔315に連通するV溝が形成され、水平面部311上に入った水をスムーズに調整孔315に流すことができる。
【0024】
前記調整ねじ33は、底面部222Dを貫通し、底面部222Dの裏面に取り付けられた裏板34にねじ込まれている。この裏板34は、固定用のねじ(図示略)で底面部222Dに固定されている。
調整ねじ33の十字溝は、前記調整孔315に露出している。このため、調整ねじ33は、ドライバーで回すことで、高さ位置を調整できる。この調整ねじ33の高さ位置を調整すれば、調整ねじ33に載置されている外レール部材31の高さ位置も調整できる。すなわち、室内外の各調整ねじ33の高さを調整することで、外レール部材31の室内外方向の傾きを調整できる。また、外障子41の突合せ部を挟んで設けられた各調整ねじ33の高さを調整することで、外レール部材31の長手方向の傾きを調整できる。これにより、後述するように、外障子41を正しく立てることができ、外障子41の突合せ部分に隙間が生じることを防止できる。
【0025】
なお、外レール部材31の各立上り部312,313は、水平面部311から下方にも延長されており、外レール部材31を底面部222Dに載置した際に、水平面部311および底面部222D間に所定寸法の隙間が形成される。この隙間に、前記各調整ねじ33、固定用のねじの頭部が配置されている。このため、調整ねじ33を最も低い位置に設定した場合でも、前記水平面部311および底面部222D間に隙間が形成されることになる。
【0026】
内レール部材32は、凹溝部22Bに配置される。内レール部材32は、断面略コ字状のアルミ形材であり、底面部222Dに対向する水平面部321と、水平面部321の室外側端縁から連続する第1の立上り部322と、水平面部321の室内側端縁に連続する第2の立上り部323とを備える。
水平面部321の上面には、突条部324が形成されている。突条部324は、内障子42の摺動部材70を案内するレールである。
立上り部322はアングル材28に沿って配置される。立上り部322の上端には、室外側に延長されて前記外レール部材31に当接するカバー部325が形成されている。
また、各立上り部322,323の上端には、内レール部材32の内周側に延長された突出片326がそれぞれ形成されている。従って、突出片326は互いに近づく方向に延長され、内レール部材32の開口幅寸法を、各立上り部322,323間の寸法よりも短くしている。
【0027】
これらのレール部材31,32は、皿ネジ35によって下枠本体220に固定されている。
また、前記突出片316,326には、図4に示すように、障子41,42の幅寸法に合わせて切欠部316A、326Aが形成されている。この切欠部316A、326Aに後述する摺動部材70の係止部714を配置することで、係止部714をレール部材31,32の溝内部に配置したり、溝内部から取り外すことができるように構成されている。
【0028】
[上枠の構成]
上枠21は、図3に示すように、2枚のスチール板211、212によって構成された上枠本体210を備えている。スチール板211、212は、厚さ寸法がt0.8〜t1.5の鋼板であり、防火設備として求められる構造規定を満たすものである。
スチール板211は、上枠21の上面を構成するとともに、前記スチール板212との間に凹溝部21Aを構成している。
スチール板212は、上枠21の下面を構成するとともに、凹溝状に折曲されて凹溝部21Bを構成している。
これらのスチール板211,212は、凹溝部21B部分で上下に重なっており、この部分で固定ねじを用いて互いに固定されている。
【0029】
[上レール部材]
前記凹溝部21A,21Bには、障子41,42の上端部を案内するレール部材36,37が、スチール板211,212にねじ止めされている。
レール部材36は外障子41の上端部を案内する外レール部材であり、レール部材37は内障子42の上端部を案内する内レール部材である。
【0030】
外レール部材36は、図8にも示すように、凹溝部21Aに配置される。外レール部材36は、断面略コ字状のアルミ形材であり、スチール板211に固定される水平面部361と、水平面部361の室外側端縁から連続する第1の立下り部362と、水平面部361の室内側端縁に連続する第2の立下り部363とを備える。
立下り部362,363の内面には、モヘア38が外レール部材36の長手方向に沿って連続して取り付けられている。
【0031】
内レール部材37は、凹溝部21Bに配置される。内レール部材37も外レール部材36と同様に、断面略コ字状のアルミ形材であり、スチール板212に固定される水平面部371と、水平面部371の室外側端縁から連続する第1の立下り部372と、水平面部371の室内側端縁に連続する第2の立下り部373とを備える。
立下り部372,373の内面には、モヘア38が内レール部材37の長手方向に沿って連続して取り付けられている。
【0032】
上枠21の長手方向の端面には、図5に示すように、下枠22と同様の端部キャップ25が取り付けられ、スチール板211,212はこの端部キャップ25によっても連結されている。
また、上枠21は、図3に示すように、スチール板211に所定間隔で形成された長孔217から固定ねじ27をねじ込むことで外壁1に固定される。固定ねじ27の頭部はカバー材271で被覆されている。
【0033】
[縦枠の構成]
縦枠23は、図4、5にも示すように、断面略コ字状のスチール材で構成されている。縦枠23は、厚さ寸法がt0.8〜t1.5の鋼板であり、防火設備として求められる構造規定を満たすものである。
この縦枠23は、外壁1に固定される固定部23Aと、固定部23Aから直交方向に折曲されて見込み方向に延びる縦枠本体部23Bと、縦枠本体部23Bの室外側端部から折曲された係合部23Cとを備える。
固定部23Aの見付け寸法は、係合部23Cよりも長くされており、固定部23Aから固定ねじ27をねじ込むことで、縦枠23は外壁1に固定されている。
【0034】
[障子の構成]
次に、障子40の構成について説明する。障子40は、2枚の外障子41および2枚の内障子42からなる四枚建ての障子である。
各障子41,42は、図4、8に示すように、面材50と、面材50の左右の端部を保持する縦框51、52、53、54、55を備えている。
面材50は、障子41,42として必要な剛性と、暴風時の飛来物などによる破損を防止する強度と、耐火性とを有する面材で構成される。本実施形態の面材50は、耐火強化ガラスが用いられているが、スチール板や耐火ボードなどの面材を用いてもよい。
面材50として用いられる耐火強化ガラスは、光をやわらげて採り入れるとともに、プライバシーを守る目隠し効果を発揮するため、ミスト調ガラスが用いられている。
また、面材50である耐火強化ガラスの外周端面には、ガラス輸送時の破損などを防止するため、図8,9に示すように、保護シール50Aが貼られている。
【0035】
内障子42は、図4,8に示すように、外障子41、内障子42を閉めた際に、建具枠20の縦枠23に係合する縦框51と、外障子41に係合する縦框52とを備えている。
外障子41は、図4,8に示すように、外障子41、内障子42を閉めた際に、内障子42に係合する縦框53と、外障子41の突合せ部に設けられる突合せ框である縦框54,55とを備えている。
【0036】
図9には、外障子41および内障子42の召合せ部の縦框52、53を示す。
内障子42の縦框52は、面材50を室内外から挟持する室外側保持板521、室内側保持板522で構成される。室外側保持板521は、断面略L字状に折曲された厚さ寸法がt0.5の化粧鋼板で構成されている。また、室内側保持板522は、断面略コ字状に折曲された厚さ寸法がt0.5の化粧鋼板で構成されている。
室外側保持板521および室内側保持板522は、縦框52の見込み方向に延長された見込み面部521A,522Aと、各見込み面部521A,522Aから縦框52の見付け方向に延長された見付け面部521B、522Bとを備えている。
【0037】
これらの室外側保持板521および室内側保持板522は、見込み面部521A,522Aが重なって配置された縦框52の見込み面でリベット止めされて一体化されている。
また、見付け面部521B、522Bの端部は、ヘミング曲げ加工が施されている。そして、この見付け面部521B、522B間に面材50が保持されている。
なお、面材50と見付け面部521Bとの間には、ヘミング曲げによって形成される室外側保持板521の板厚分の空間が形成される。この空間に接着剤59が塗布され、面材50が接着されている。
【0038】
外障子41の縦框53も、図9に示すように、面材50を室内外から挟持する室外側保持板531、室内側保持板532で構成される。室外側保持板531は、断面略コ字状に折曲された厚さ寸法がt0.5の化粧鋼板で構成されている。また、室内側保持板532は、断面略L字状に折曲された厚さ寸法がt0.5の化粧鋼板で構成されている。
室外側保持板531および室内側保持板532は、縦框53の見込み方向に延長された見込み面部531A,532Aと、各見込み面部531A,532Aから縦框53の見付け方向に延長された見付け面部531B、532Bとを備えている。
【0039】
これらの室外側保持板531および室内側保持板532も、見込み面部531A,532Aが重なって配置された縦框53の見込み面でリベット止めされて一体化されている。
また、見付け面部531B、532Bの端部は、ヘミング曲げ加工が施され、この見付け面部531B、532B間に面材50が保持されている。
さらに、面材50と見付け面部531Bとの間には、ヘミング曲げによって形成される室外側保持板531の板厚分の空間が形成されて接着剤59が塗布され、面材50が接着されている。
【0040】
さらに、室内側保持板522および室外側保持板531には、他方の縦框に向かって突出する煙返し部522C、531Cが形成されている。
これらの縦框52、53は、室外側保持板521、531の見付け面部521B、531Bに接着剤59を塗布して面材50を接着した後、室外側保持板521、531、室内側保持板522、532を、縦框52,53の見込み面でリベット止めすることで組み立てられる。
【0041】
図10には、外障子41の突合せ部の縦框54、55を示す。
外障子41の縦框54は、凹部を形成する嵌合部材545を備え、この嵌合部材545に他方の縦框55を嵌合するように構成している。
すなわち、突合せ部における一方の縦框54は、図10に示すように、面材50を室内外から挟持する室外側保持板541、室内側保持板542と、各保持板541、542間の開口を塞ぐ閉塞板543とで構成される。
【0042】
室外側保持板541は、断面略コ字状に折曲された厚さ寸法がt0.5の化粧鋼板で構成されている。室内側保持板542は、断面略L字状に折曲された厚さ寸法がt0.5の化粧鋼板で構成されている。また、閉塞板543は、断面略コ字状に折曲された厚さ寸法がt0.5の化粧鋼板で構成されている。
室外側保持板541、室内側保持板542は、縦框54の見込み方向に延長された見込み面部541A、542Aと、各見込み面部541A,542Aから縦框54の見付け方向に延長された見付け面部541B、542Bとを備えている。見付け面部541B、542Bのヘミング加工や接着剤59の塗布は、縦框52、53と同じであるため説明を略す。閉塞板543は、見込み面部543Aを備えている。
【0043】
嵌合部材545は、断面コ字状のスチール製の補強材546と、補強材546の外表面を被覆する化粧鋼板547とで構成されている。
縦框54は、室外側保持板541の見付け面部541Bに接着剤59を塗布して面材50を接着し、室外側保持板541、室内側保持板542、閉塞板543、嵌合部材545を、縦框54の見込み面でリベット止めすることで組み立てられる。
【0044】
一方、突合せ部の他方の縦框55は、嵌合部材545が設けられていない以外は、縦框54と同じ構成である。すなわち、縦框55は、室外側保持板551、室内側保持板552、閉塞板553を備え、見付け面部551B、552B間で面材50を挟持し、見込み面部551A,552A、553Aで一体化されている点で縦框54と同じである。
【0045】
なお、内障子42の縦框51は、縦框53と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0046】
外障子41を閉めて突合せた際に、凹部となる嵌合部材545の開口内に、凸部となる縦框55が挿入して配置される。このため、外障子41の突合せ部は、外障子41の外観側から内観側につながる空間が、ジグザク状の迷路形状となる。このため、火災等で外障子41に熱が加わって反っても、縦框55が縦框54から外れることがなく、各外障子41間に貫通口が発生することがない。このため、防火性能を確保できる。
なお、外障子41と内障子42の召合せ部も前記縦框52,53の煙返し部522C、531Cが設けられ、内障子42と縦枠23の召合せ部も前記縦框51や係合部23Cが煙返しとなり、障子41,42の外観側から内観側につながる空間がジグザク状の迷路形状となる。このため、これらの召合せ部にも貫通口が発生せず、防火性能を確保できる。
【0047】
なお、2枚の外障子41間の突合せ部と、外障子41および内障子42の召合せ部と、内障子42の縦枠23に係合する係合部には、それぞれ熱膨張耐火材60が貼られている。この熱膨張耐火材60は、熱が加わると膨張する耐火材である。火災時には、熱膨張耐火材60が膨張し、各外障子41、内障子42間の隙間などを塞ぐことで、防火戸10は必要な防火性能を確保できる。なお、熱膨張耐火材60の一部は、他の部材の説明上、図示を略している。
【0048】
[摺動部材]
各障子41,42の縦框51〜55には、前記レール部材31,32の突条部314,324上をスライド移動する摺動部材70が取り付けられている。従って、本実施形態では、摺動部材70によって、下枠22の溝内(凹溝部22A,22B内)を移動する移動部材が構成されている。
摺動部材70は、図7,8に示すように、各縦框51〜55の見込み面の下端に取り付けられたステンレスなどの金属製の外れ止め部71と、この外れ止め部71の下面に固定された摺動部72とで構成されている。
【0049】
外れ止め部71は、金属板を折り曲げて形成されたものである。この外れ止め部71は、固定部711と、面材支持部712と、框材保持部713と、係止部714とを備える。
固定部711は、縦框51〜55の見込み面にビス止めされている。面材支持部712は、固定部711の下端から水平方向に延長されている。この面材支持部712上に面材50の下端面が載置されている。
【0050】
框材保持部713は、面材支持部712の延長方向の中間位置から立ち上がって設けられた一対の突出片で構成されている。この框材保持部713は、面材50を保持する各見付け面部を室内外から押さえることで、見付け面部521B、522B、531B、532B、541B、542B、551B、552Bが広がることを防止している。また、框材保持部713が見付け面部に係合するため、固定部711のみでビス止めされた摺動部材70が回転することも防止している。
【0051】
係止部714は、面材支持部712の先端部から見込方向に突出して形成されている。この係止部714の幅寸法(見込み寸法)は、レール部材31,32の突出片316、326間の開口幅寸法よりも大きくされている。このため、障子41,42を持ち上げても、前記係止部714は突出片316,326で係止されるため、障子41,42が下レール部材31,32から外れることを防止できる。
なお、前述したように、突出片316,326には切欠部316A、326Aが形成されている。このため、障子41,42を下枠22から着脱する場合には、前記係止部714を切欠部316A、326Aの位置に合わせて障子41,42を上下に移動すればよい。
【0052】
係止部714の下面には、摺動部72がビス止めされている。摺動部72は、フッ素樹脂シートのように摩擦係数の小さいシートで構成されている。この摺動部72は、幅寸法が前記係止部714よりも大きくされ、係止部714の端面よりも突出している。このため、障子41,42の下端部が室内側や室外側にずれた場合も、摺動部72が立上り部312、313、322、323に当接し、金属製の係止部714が当接して下レール部材31,32が傷つくことを防止している。
【0053】
この摺動部材70は、障子41,42の縦框51〜55の下部に取り付けられ、突条部314,324上をスライド移動する。これにより、障子41,42は、一般的な戸車を用いることなく、移動することができる。
この際、障子41,42の下端部は下框が設けられてないので、面材50の下端部が露出する。この面材50は、摺動部材70の面材支持部712および摺動部72の厚さ寸法分だけ、突条部314,324の上方に離れており、障子41,42のスライド移動を阻害することはない。
また、図8に示すように、障子41の上端部も上框が設けられていないので、面材50の上端部が露出する。この面材50の上端部は、縦框51〜55の上端部とともに、前記レール部材36、37のモヘア38で挟持され、障子41,42の上端部はモヘア38で案内されてスライド移動する。
【0054】
図9に示すように、内障子42の縦框52の高さ方向の略中央部には、略Z字状の係合部材66がビス止めされている。
また、図示しないが、外障子41の突合せ部の各縦框54,55には、錠および錠受を取り付けて施錠できるようにしてもよい。
【0055】
[防火戸の開閉操作]
外障子41を開いた場合には、最初は外障子41のみが移動し、外障子41が係合部材66に当接すると、外障子41の移動に連動して内障子42も移動する。そして、係合部材66が縦枠23に当接すると、外障子41および内障子42は停止する。この停止位置が障子41,42の全開位置であり、この際、外障子41および内障子42は内外方向に重なって配置される。また、この全開位置は、窓2のガラス部分の殆どが露出する位置とされ、室内からの眺めを遮ることがないようにされている。
一方、外障子41を全開位置から閉めると、最初は外障子41のみが移動し、外障子41の召合せ部の縦框53が、内障子42の召合せ部の縦框52に係合すると、外障子41の移動に連動して内障子42も移動する。そして、内障子42の戸先側の縦框51が縦枠23に当接すると、外障子41および内障子42は停止する。この停止位置が障子41,42の全閉位置である。
【0056】
このような本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
障子41,42は、ガラス製の面材50と、面材50の左右両端に取り付けられた縦框51〜55と、縦框51〜55の下端部に取り付けられた摺動部材70とで構成され、上框や下框は設けていない。このため、上框や下框で隠れる部分が無い分、面材50の見付け面の面積を大きくでき、採光性も向上できる。
また、上下框が設けられている場合は、上下框が上枠21、下枠22に沿って露出するが、本実施形態では、図1、2に示すように、上下框がなく、障子41,42の上下両端部は上枠21、下枠22の溝内に呑み込まれているので、上下枠部分の意匠がシンプルなものとなり、防火戸10の意匠性も向上できる。特に、本実施形態では、障子41,42は、見付け面の幅寸法に比べて高さ寸法が大きいスリムな障子であるため、上下方向に長い面材50および縦框51〜55のみが露出することで意匠性を向上できる。
【0057】
また、前記縦框51〜55の下端部に摺動部材70を取り付けており、この摺動部材70をレール部材36、37上で摺動させているので、戸車を設ける場合に比べて構造を簡単にできてコストを低減できる。
さらに、縦框51〜55の下端に戸車を設ける場合に比べて、縦框51〜55の見付け寸法および見込み寸法を小さくできて、スリムな意匠デザインにできる。この点からも、採光性や意匠性を向上できる。
【0058】
さらに、摺動部材70に係止部714を形成し、下枠22のレール部材36、37に突出片316,326を形成したので、障子41,42の開閉時にその転びで一方の縦框側が上方に移動したり、暴風などで障子41,42が浮き上がった場合に、前記係止部714が前記突出片316,326に当接するので、障子41,42が下枠22から外れて脱落することを防止できる。
さらに、係止部714を摺動部材70に形成しているので、縦框51〜55に形成する場合に比べて、縦框51〜55の加工、組立が容易になり、生産効率も向上できる。
【0059】
また、縦框51〜55は、金属製の板材を折り曲げて形成した室外側保持板521、531、541、551および室内側保持板522、532、542、552で構成されている。このため、1枚の板材で縦框を構成する場合に比べて、曲げ加工が簡単になり、また、面材50を固定する接着剤59も均一に塗布することができ、面材50を確実に接着できる。
さらに、室外側保持板521、531、541、551および室内側保持板522、532、542、552は、各見込み面部をリベット等で連結して一体化しているので、縦框51〜55として必要な剛性を確保でき、別途、骨材を用いる必要がないため、部材点数を少なくできてコストを抑えることができる。
【0060】
また、縦框51〜55において、面材50を保持する部分の端部はヘミング曲げ加工で構成している。このため、面材50と縦框51〜55の見切り部分の意匠性を向上できる。また、ガラス製の面材50との接点をなめらかにでき、縦框51〜55のエッジがガラスに当たって割れてしまうことを防止できる。
さらに、ヘミング曲げ加工で形成される隙間を、接着剤59を塗布する目地に利用でき、接着剤59がヘミング曲げ加工部分を乗り越えてはみ出すことを防止できる。
また、接着剤59は、面材50の室外側のみに設けているので、外部からの炎で接着剤59が発火した場合に、接着剤59の炎が室内側に吹き込むことを防止できる。
【0061】
外レール部材31は調整ねじ33の上面に載置されているので、調整ねじ33の高さ位置を調整することで適切な高さに調整できる。この際、調整ねじ33を調整孔315の位置に合わせて配置しているので、調整孔315からドライバーを用いて操作することで調整ねじ33の高さ位置を調整できる。このため、外障子41を取り外すことなく外レール部材31の高さ位置の調整作業を行うことができる。従って、障子の建て付けが悪くなっても、障子を外すことなく容易に調整でき、メンテナンス性を向上できる。
また、調整ねじ33を突条部314の内側および外側にそれぞれ設けているので、外レール部材31の傾きも調整できる。このため、外レール部材31上に外障子41を正しく立てることができる。
さらに、調整ねじ33が、外障子41の突合せ部に設けられているため、互いに突き合わされる外障子41同士が見付け方向に傾いたり、見込み方向に傾くことを直すことができる。このため、外障子41の突合せ部に隙間が生じることを防止でき、水密性能や防火性能が低下することを防止できる。
【0062】
調整孔315は調整ねじ33の高さ位置調整用だけでなく、排水孔を兼ねているので、外レール部材31上に入り込んだ水を調整孔315から凹溝部22Aに排出でき、凹溝部22Aから下枠22の外部に排水できる。このため、ねじ穴に水が溜まって排水できなくなる問題を防止できる。
また、外レール部材31の立上り部312,313は、水平面部311よりも下方に突出しているので、調整ねじ33を最も低い位置に調整した場合でも、水平面部311および底面部222D間に隙間を確保でき、排水性が低下することを防止できる。
その上、調整ねじ33上にレール部材31,32が載置されるため、調整ねじ33はレール部材31,32の上面から突出しない。また、レール部材31,32を下枠本体220に固定する皿ネジ35も上面から突出しない。このため、調整ねじ33や皿ネジ35が障子41の移動を阻害することを防止でき、障子41をスムーズに移動できる。
【0063】
調整部材を調整ねじ33で構成し、調整孔315を長孔で構成しているので、ねじ頭部と調整孔315間に排水用の隙間を確実に形成できる。本実施形態では、調整ねじ33の頭部が球面状とされているので、調整孔315の長手方向の寸法を幅寸法よりも大きくすれば、調整孔315の長手方向の両端部側に調整ねじ33との隙間を形成できる。特に、調整孔315の長さ寸法を調整ねじ33の頭部の直径以上とすれば、ねじ頭部と調整孔315間に排水用の隙間を確実に形成できる。このため、調整孔315を排水孔に兼用させるための構成もシンプルにでき、コストも安価にできる。
また、調整ねじ33をドライバーで回すだけで高さ調整が行えるので、調整部材の構成も簡易にでき、コストをより低減できる。その上、調整ねじ33はドライバーによる回転数によってその高さを微調整できるため、外レール部材31の高さ位置も微妙に調整でき、調整作業性も向上できる。
【0064】
下枠本体220をスチール材で構成しているので、火災によりアルミ製のレール部材31,32が損傷しても、レール部材31,32よりも溶融温度が高い下枠本体220で障子41,42を支持できる。このため、火災時に障子41,42が脱落してしまうことを防止できる。
【0065】
また、レール部材31,32やレール部材36、37をアルミ材で構成しているので、突条部314,324などを有する断面形状が複雑なレール部材31,32,36,37を、スチール材で構成する場合に比べて容易に製造できる。
さらに、レール部材31,32,36,37を断面コ字状に形成しているので、長尺なレール部材31,32,36,37の剛性を確保できて、レールの歪みや撓みを無くすことができる。さらに、レール部材31,32,36,37を凹溝部21A,21B,22A、22Bの室内側壁部や室外側壁部に当接させることができるので、凹溝部22A、22B内に対するレール部材31,32,36,37の位置決めを容易に行うことができる。
【0066】
建具枠20の上枠21、下枠22、縦枠23と、障子41,42の係合部に熱膨張耐火材60を設けたので、防火ラインを確実に構成でき、防火戸10は十分な防火性能を確保できる。特に、外障子41の突合せ部を、縦框54、55によって凹凸嵌合構造としたので、火災時に外障子41が反っても突合せ部に隙間が生じることがなく、防火性を確保できる。
【0067】
外壁1に先付けブラケット26を取り付けているので、下枠22の開口部226を差し込んで支持させることができる。このため、建具枠20を外壁1に仮置きすることができ、建具枠20の取付作業性を向上できる。
また、先付けブラケット26は下枠22内に納まるため、外部に露出せず、意匠性も向上できる。
さらに、先付けブラケット26が下枠22内に納まっているので、下枠22の強度を向上できる。特に、障子41,42の重量の一部を先付けブラケット26でも支持できるため、下枠22が障子41,42の荷重で垂れることもなく、障子41,42の支持強度も向上できる。
【0068】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、防火戸10として、四枚建ての障子41,42で構成していたが、図11に示すように、2枚の外障子41のみで構成した防火戸10Aとしてもよい。すなわち、窓2の開口寸法が小さい場合には、2枚の外障子41のみを有する防火戸10Aを設ければよい。この場合、上枠21、下枠22には、1つの凹溝部21A,22Aを設ければよい。このため、スチール板212、スチール板222の形状を、凹溝部21A,22Aが1つ形成されるように設計すればよい。また、窓2の開口寸法が大きい場合には、5枚以上の障子を設けて構成してもよい。
【0069】
前記実施形態では、外障子41の突合せ部のみに調整孔315、調整ねじ33からなる高さ調整機構を設けていたが、外レール部材31に所定間隔で複数の調整孔315を形成し、下枠本体220側にそれらの調整孔315に対応して複数の調整ねじ33を設けてもよい。この場合、外レール部材31の全体の高さ位置を自由に調整できる。
また、前記実施形態では、外障子41のみに高さ調整機構を設けていたが、内障子42にも設けてもよい。特に、内障子42と外障子41や縦枠23との召合せ部に高さ調整機構を設ければ、召合せ部における各障子間や縦枠との間隔を一定にでき、内障子42を正しい向きに設置できる。ただし、召合せ部は、見込み方向に障子41,42や縦枠23が重なるため、召合せ部において障子41,42が多少傾いていても、耐火性に影響するような隙間が生じるおそれがない。従って、前記実施形態のように、少なくとも外障子41の突合せ部に高さ調整機構を設ければよい。
【0070】
また、上枠本体210や下枠本体220とレール部材31,32,36,37は、スチール材とアルミ材との異なる材質の部材で構成されていたが、ともにスチール材で構成してもよいし、アルミ材で構成してもよい。例えば、耐火性を求められない建具の場合には、上枠本体210、下枠本体220およびレール部材31,32,36,37をアルミ製としてもよい。
【0071】
レール部材31,32の高さを調整する調整部材としては、調整孔315からの操作で高さ調整できるものであれば、前記調整ねじ33に限定されない。また、調整ねじ33としても前記実施形態で用いたバインドねじに限らず、皿ねじ等でもよく、レール部材31,32を載置できてその高さを調整できるものであればよい。
また、前記実施形態では、先付けブラケット26は、下枠22を支持する位置に設けていたが、上枠21の開口部に挿入されて上枠21を支持する位置に設けてもよい。この場合も、建具枠20を先付けブラケット26で仮固定できて作業性を向上でき、かつ、防火戸10の支持強度も向上できる。
さらに、上枠21および下枠22の両方を先付けブラケット26で支持してもよい。この場合は、防火戸10の支持強度をより一層向上できる。
【0072】
前記縦框51〜55の下端部に取り付けられる移動部材としては、前記突条部(レール)314,324上を移動する戸車でもよい。戸車を用いれば、移動部材として摺動部材70を用いた場合に比べて、障子41,42のスライド移動をよりスムーズに行うことができる。
また、本実施形態のレール部材31,32の突条部314,324は、戸車のレールとしても兼用できるので、戸車用のレール部材を別途用意する必要が無く、コストも低減できる。
【0073】
移動部材として摺動部材70を用いる場合に、レール部材31,32の突条部314,324は戸車のレールを兼用できるものに限らない。すなわち、前記実施形態の突条部314,324は、戸車のレールも兼用できるように幅寸法を小さくしており、突条部314,324上面の摺動部材70に接触する摺動面の幅寸法も小さいものであった。これに対し、突条部の幅寸法を大きくして摺動面の幅寸法を前記実施形態に比べて大きくしてもよい。この場合、摺動部材70に接触する面積が広くなり、摺動部材70をより安定して案内できる。また、突条部としては、水平面部311,321から円弧状に突出した断面形状を有するものでもよい。
さらに、レール部材31,32には、水平面部311,321から突出する突条部を形成せずに、水平面部311,321の表面を平らに形成して摺動面とし、摺動部材70の摺動部72に下方に突出する突出部を形成し、前記摺動面に接触させてもよい。
【0074】
本発明の建具としては、防火戸10に限らない。例えば、防火性能を有さない雨戸やシャッターとして用いてもよい。さらに、建物の窓2の外側に装着されるものに限らず、建物の開口部に設けられる窓や戸として利用してもよい。すなわち、引き違い窓や引戸に本発明を適用してもよい。
【0075】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
2…窓、10、10A…防火戸、20…建具枠、21…上枠、22…下枠、22A、22B…凹溝部、23…縦枠、31…外レール部材、32…内レール部材、33…調整ねじ、36…外レール部材、37…内レール部材、38…モヘア、40…障子、41…外障子、42…内障子、50…面材、51、52、53、54、55…縦框、60…熱膨張耐火材、70…摺動部材、71…外れ止め部、72…摺動部、314,324…突条部、316,326…突出片、521、531、541、551…室外側保持板、522、532、542、552…室内側保持板、713…框材保持部、714…係止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠および下枠を備える建具枠と、前記上枠および下枠に沿って移動する障子とを備える建具であって、
前記障子は、
金属製の板材で形成された左右の縦框と、
前記縦框間に取り付けられた面材と、
前記縦框の下端部に取り付けられた移動部材とを備え、
前記上枠には下面に開口する溝が形成され、
前記下枠には上面に開口する溝が形成され、
前記障子は、前記縦框および面材の上端部が前記上枠の溝内に挿入され、縦框および面材の下端部が前記下枠の溝内に挿入され、
前記移動部材が前記下枠の溝内を移動することで、前記障子は前記建具枠の上枠および下枠に沿ってスライド移動する
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記下枠は、前記溝を区画形成する一対の立上り部を備え、
前記各立上り部から溝内部に突出する突出片が形成され、前記突出片間の見込み方向の幅寸法は前記溝の見込み方向の幅寸法よりも小さくされ、
前記移動部材は、前記溝内に配置されて前記突出片間の幅寸法よりも大きく、前記溝の幅寸法よりも小さい幅寸法の係止部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記縦框は、
金属製の板材からなり前記面材を室外側から保持する室外側保持板と、
金属製の板材からなり前記面材を室内側から保持する室内側保持板とを備えて構成され、
前記室外側保持板および室内側保持板は、
縦框の見込み方向に延長された見込み面部と、
前記見込み面部から縦框の見付け方向に延長された見付け面部とを備え、
前記室外側保持板および室内側保持板は、見込み面部同士を連結して一体化され、
前記室外側保持板および室内側保持板の見付け面部で面材を挟持して保持する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記移動部材は、
前記室外側保持板の見付け面部および室外側保持板の見付け面部を挟持する框材保持部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−49994(P2013−49994A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189078(P2011−189078)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)