説明

建物、及びその構築方法

【課題】外周架構を有する建物に係り、外周架構の内方に区画される空間を拡大するとともに、窓配置等の外装デザインの自由度を高め、更には、外周架構の施工性を高める。
【解決手段】建物の外周に沿って配された鉄骨造の外周架構を有する建物である。該外周架構は、前記外周に沿って並べられた複数のフィーレンデール形式の鋼製枠部材が連結されて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造躯体としての外周架構を有する建物、及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事務所ビル等の建物の構造形式は、図1Aの斜視図に示すようなラーメン構造が一般的である。また、その利便性の観点からは、同図1Aのように、各階が、1フロアに亘って無柱空間(四側面が室内に露出した柱が無い空間のこと)であることが望まれる。この無柱空間は、一般に、柱111,111…を各階の外周にのみ立設するとともに、梁121,121…をロングスパン化して達成される。しかし、その場合には、強度上の理由から梁121や柱111が大断面化されるために、図1Bの平断面図に示すように、各階の内壁面191から柱111の一部111p(所謂柱型)や梁121の一部121pが突出してしまい、その階の室内空間SPrの効率的利用が阻まれる。例えば、柱111の一部111pが飛び出した壁面191の周辺には物を配置し難くなる等デッドスペース化し易くなる。また、梁121の大断面化に伴って梁せいも大きくなるので、階高の割には天井高が低くなってしまうこともある。
【0003】
この点につき、特許文献1には、RC(鉄筋コンクリート)造の複数のPCパネルを建物の外周に沿って配置することによって、建物の外周架構を形成することが記載されており、この方法によれば、外周架構の内方に、無柱空間を形成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−291477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1の方法では、窓の配置パターンが縦連窓形式に限られるというように、外装デザイン上の制約が生じてしまう。すなわち、外周架構は、複数のPCパネルを上方に積み重ねてなるPCパネル群が、建物の外周に沿って複数群配置されて形成されている。そして、このとき、建物の外周方向に隣り合うPCパネル群同士は、当該外周方向に間隔を隔てながら境界梁によって連結一体化され、これにより、当該間隔が鉛直方向に連続して縦連窓となっているが、窓の配置パターンは、当該縦連窓に限られ、窓を自由に配置することができない。
【0006】
また、この特許文献1には、外周架構をRC造のPCパネルで形成することについては具体的に記載されているが、鉄骨造で形成することについては具体的に記載されていない。ここで、外周架構を鉄骨造で形成すれば、同一断面サイズにおいてRC造よりも強度向上を図れることから、この強度向上分だけ断面サイズを縮小できて、結果、外周架構の内方の空間を更に拡大可能と考えられる。更に、鉄骨造は、RC造と比べて軽量のため、外周架構の自重を軽くできて耐震性の向上を図れるとともに、外周架構の施工時の揚重性も良好になる等、施工し易いものになると考えられる。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、外周架構を有する建物に係り、外周架構の内方に区画される空間を拡大するとともに、窓配置等の外装デザインの自由度を高め、更には、外周架構の施工性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
建物の外周に沿って配された鉄骨造の外周架構を有する建物であって、
該外周架構は、前記外周に沿って並べられた複数のフィーレンデール形式の鋼製枠部材が連結されて形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記請求項1に示す発明によれば、枠部材は鋼製であり、RC造よりも高強度である。よって、枠部材を構成する柱材や梁材の断面サイズを小さくすることができる。結果、外周架構の内方の空間たる内部空間への枠部材の突出量(例えば、上記枠部材が具備する柱材や梁材の突出量)を縮小できて、当該内部空間を広くすることができる。また、枠部材に係る梁材の梁せいを縮小できるので、階高の割に高い天井高を確保可能となり、このことも、内部空間の拡大に寄与する。
また、枠部材は鋼製なので、外周架構の軽量化を図れる。よって、耐震性の向上を図れ、また施工時の枠部材の揚重性も良好になる等、施工し易いものとなる。
【0010】
更には、枠部材はフィーレンデール形式で組まれているので、複数の四角形の開口部を有している。よって、これら開口部を窓に用いたり、或いは塞いで外壁にすることもできて、結果、その設定によっては、窓の配置を縦連窓(複数の窓が鉛直方向に連なって並んだ配置パターン)や横連窓(複数の窓が水平方向に連なって並んだ配置パターン)にもできるし更には略市松模様状にすることも可能であり、つまり外装デザインの自由度に長けたものとなる。
【0011】
また、外周架構は、複数の鋼製枠部材が連結して形成されている。よって、各鋼製枠部材を予め工場等にて効率良く製造しておくことができる。そして、これら鋼製枠部材を施工現場へ搬入後に、計画位置に配置して連結すれば、容易にフィーレンデール形式の外周架構に形成可能であり、よって、施工現場での施工性を高めることができる。
【0012】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の建物であって、
前記鋼製枠部材は、一対の柱材と、前記一対の柱材同士を繋ぐ梁材と、を有し、
前記柱材の断面形状は、強軸方向と、該強軸方向に直交する方向であって前記強軸方向よりも断面二次モーメントが小さい弱軸方向と、を有し、
前記柱材の強軸方向は、前記外周に沿っていることを特徴とする。
【0013】
上記請求項2に示す発明によれば、柱材の強軸方向が、外周架構の外周に沿っているので、柱材の剛性や強度を、外周架構の外周に沿う方向に高めることができて、全体として外周架構の水平剛性や水平強度の向上を図れる。これにより、その剛性や強度向上分だけ柱材の断面サイズを小さくすることができて、結果、外周架構の内部空間への枠部材の突出量の縮小化を通して、内部空間の拡大や、フィーレンデール形式に係る四角形の開口部の拡大を図れる。
また、柱材の断面サイズを小さくできるので、外周架構の軽量化を図れる。
【0014】
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の建物であって、
前記外周架構によって内方に区画された内部空間を横断して設けられた鋼製の梁部材であって、前記複数の鋼製枠部材のうちで、前記内部空間を隔てて互いに対向する鋼製枠部材同士に架け渡された前記梁部材を複数有し、
前記梁部材は、梁端にて、対応する前記鋼製枠部材にピン接合されていることを特徴とする。
【0015】
上記請求項3に示す発明によれば、梁部材は、梁端にて鋼製枠部材にピン接合されているので、梁部材の梁端への曲げモーメントの入力が軽減され、その軽減分だけ、梁端の梁せいを小さくすることができる。よって、梁部材の梁端を、外周架構の鋼製枠部材に隠し易くなり、その結果、当該梁端を、屋外(外周架構の外方)から見え難くすることができて、建物外観の意匠性を高めることができる。
また、梁部材は鋼製なので、RC造と比べて断面サイズを小さくすることができる。よって、梁部材の梁せいを縮小できて、結果、階高の割に高い天井高を確保可能となる。
【0016】
更には、上記の梁部材を複数有しているので、これら梁部材の上方に床部が配されてこれら梁部材が床部の自重を支持する場合に、当該床部の自重を複数の梁部材に分散して負担させることができる。これにより、梁部材一本当たりが担うべき負荷が軽減されて、各梁部材の梁せいを小さくできて、このことも上述の高い天井高の確保に寄与する。
【0017】
請求項4に示す発明は、請求項3に記載の建物であって、
前記梁部材の梁せいは、前記梁端において縮小されていることを特徴とする。
【0018】
上記請求項4に示す発明によれば、梁部材の梁せいは、梁端において縮小されているので、同梁端を、外周架構の鋼製枠部材に隠し易くなり、その結果、当該梁端を、外周架構の屋外から見え難くすることができて、建物外観の意匠性を高めることができる。また、窓際に沿って配置されるべきカーテンボックス等の屋内装備品の設置スペースを確保することもできる。
【0019】
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の建物であって、
前記鋼製枠部材は、一対の柱材と、前記一対の柱材同士を繋ぐ複数の梁材と、を有し、
前記鋼製枠部材の前記梁材の断面形状は、強軸方向と、該強軸方向に直交する方向であって前記強軸方向よりも断面二次モーメントが小さい弱軸方向とを有し、
前記梁材の強軸方向は、鉛直方向を向いており、
前記梁材は、前記一対の柱材の間の空間を複数の開口部に区分するように、鉛直方向に間欠的に並んで配置されていることを特徴とする。
【0020】
上記請求項5に示す発明によれば、梁材の強軸方向が、鉛直方向を向いているので、梁材の剛性や強度を鉛直方向に高めることができて、これにより間接的に、鋼製枠部材の剛性や強度を建物の外周に沿う方向に高めることが可能となって、全体として外周架構の水平剛性や水平強度の向上を図れる。これにより、その剛性や強度向上分だけ梁材の断面サイズを小さくすることができて、結果、外周架構の内部空間への鋼製枠部材の突出量の縮小化を通して、当該内部空間の拡大や、フィーレンデール形式に係る四角形の開口部の拡大を図れる。
また、梁材の断面サイズを小さくできるので、外周架構の軽量化を図れる。
更には、鋼製枠部材の梁材は、一対の柱材の間の空間を複数の開口部に区分するように配置されているので、鋼製枠部材は少なくとも3本以上の梁材を有している。よって、梁材一本当たりの負荷荷重の軽減を図れ、各階の床部高さに位置する梁材の梁せいを小さくすることができる。そして、これにより、梁材の梁せい起因で階高が高くなってしまうことを回避可能となる。
【0021】
請求項6に示す発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の建物であって、
前記複数の鋼製枠部材は、前記外周に沿って間欠的に配置されており、
前記複数の鋼製枠部材のうちで前記外周に沿う方向に互いに隣り合う鋼製枠部材同士は、前記梁材とは別の第2の梁材を介して連結されていることを特徴とする。
【0022】
上記請求項6に示す発明によれば、鋼製枠部材同士は、第2の梁材を介して連結されているので、鋼製枠部材の柱材同士が隣接配置されずに済んで、外周架構の外周面に占めるフィーレンデール形式に係る四角形の開口部の面積比率を高めることができて、より開放感のある建物にすることができる。
【0023】
請求項7に示す発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の建物であって、
前記鋼製枠部材は、前記建物の複数階分に相当するサイズに形成されていることを特徴とする。
【0024】
上記請求項7に示す発明によれば、鋼製枠部材を一層分設けるだけで、複数階分に相当する外周架構を完成させることができるので、施工手順の簡素化を通して工期短縮等を図れる。
【0025】
請求項8に示す発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の建物であって、
前記建物が具備すべき階数に対応させて、複数の前記鋼製枠部材が鉛直方向に積み重ねられていることを特徴とする。
【0026】
上記請求項8に示す発明によれば、建物の階数に応じた数の鋼製枠部材が鉛直方向に積み重ねられているので、任意の階数の建物の外周架構であっても、鋼製枠部材で形成可能となる。
【0027】
請求項9に示す発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の建物であって、
前記複数の鋼製枠部材のうちの幾つかには、前記外周架構の振動エネルギーを吸収する制振部材が組み込まれていることを特徴とする。
【0028】
上記請求項9に示す発明によれば、鋼製枠部材には制振部材が組み込まれているので、外周架構の振動を有効に減衰して抑制することができる。
また、制振部材は鋼製枠部材に組み込まれているので、外周架構の内部空間に、別途制振部材を設けずに済み、結果、内部空間を広く確保可能となる。
【0029】
請求項10に示す発明は、請求項1乃至9の何れかに記載の建物であって、
前記複数の鋼製枠部材のうちの幾つかには、前記外周架構の変形を抑制する耐震部材が組み込まれていることを特徴とする。
【0030】
上記請求項10に示す発明によれば、鋼製枠部材には耐震部材が組み込まれているので、外周架構の耐震性を高めることができる。
また、耐震部材は鋼製枠部材に組み込まれているので、外周架構の内部空間に、別途耐震部材を設けずに済み、結果、内部空間を広く確保可能となる。
【0031】
請求項11に示す発明は、建物の外周に鉄骨造の外周架構を有する建物の構築方法であって、
前記外周に沿って複数のフィーレンデール形式の鋼製枠部材を並べて連結することにより、前記外周架構を形成する工程を有することを特徴とする。
【0032】
上記請求項11に示す発明によれば、請求項1と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
請求項12に示す発明は、請求項11に記載の建物の構築方法であって、
前記外周架構を形成する工程は、複数の前記鋼製枠部材を前記外周に沿って地面の基礎に配置する枠部材配置工程と、配置された複数の前記鋼製枠部材を前記外周に沿って連結する枠部材連結工程と、を有し、
更に、前記外周架構によって内方に区画された内部空間を、鋼製の梁部材に横断させながら、前記梁部材を、互いに対向する前記鋼製枠部材同士に架け渡す梁部材架け渡し工程と、
前記梁部材の上に床部を形成する床部形成工程と、を有することを特徴とする。
【0034】
上記請求項12に示す発明によれば、複数の鋼製枠部材を地面の基礎に配置し、配置された鋼製枠部材を連結して外周架構を形成するが、当該枠部材は、予め工場等にて効率良く製造しておくことができる。よって、施工現場での施工性を高めることができる。
また、外周架構の内部空間を隔てて対向する鋼製枠部材同士に梁部材を架け渡すので、当該梁部材により外周架構は補剛・補強され、結果、外周架構の倒壊を有効に防ぐことができる。
【0035】
請求項13に示す発明は、請求項11又は12に記載の建物の構築方法であって、
形成された前記外周架構の上に、更に鋼製枠部材を積み重ねる枠部材積み重ね工程と、
積み重ねた前記鋼製枠部材を、前記外周に沿って連結する枠部材連結工程と、を有することを特徴とする。
【0036】
上記請求項13に示す発明によれば、揚重機等の関係で鋼製枠部材の高さ寸法に制限がある場合にも、任意の高さの外周架構を形成可能となり、もって、外周架構を形成し易くなる。
【0037】
請求項14に示す発明は、請求項11乃至13の何れかに記載の建物の構築方法であって、
前記鋼製枠部材は、前記建物の複数階分に相当するサイズに形成されていることを特徴とする。
【0038】
上記請求項14に示す発明によれば、鋼製枠部材を一層分設けるだけで、複数階分に相当する外周架構を形成することができるので、施工手順の簡素化を通して工期短縮等を図れる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、外周架構を有する建物に係り、外周架構の内方に区画される空間を拡大でき、また、窓配置等の外装デザインの自由度を高め、更には、外周架構の施工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1Aは従来の建物の概略斜視図であり、図1Bは同平断面図である。
【図2】第1実施形態の建物5の概略斜視図である。
【図3】図3A及び図3Bは、第1実施形態の建物5の構築手順の説明図である。
【図4】図4A及び図4Bは、同構築手順の説明図である。
【図5】建物5の外周架構10の拡大三面図(側面図、上面図(側面図中のB−B矢視図)、縦断面図(側面図中のC−C矢視図))である。
【図6】鋼製枠部材F10の三面図(側面図、上面図(側面図中のB−B矢視図)、縦断面図(側面図中のC−C矢視図))である。
【図7】外周架構10の概略上面図である。
【図8】図8Aは、梁部材50と柱材11との連結構造の平断面図であり、図8Bは、同縦断面図である。
【図9】図9Aは、梁部材50と梁材21との連結構造の平断面図であり、図9Bは、図9A中のB−B断面図である。
【図10】図10Aは、制振部材80を組み込んだ枠部材F10の正面図であり、図10Bは、耐震部材85として鋼板耐震壁85を組み込んだ枠部材F10の正面図である。
【図11】建物5の一階分の高さに相当するサイズの枠部材F10a,F10bの正面図である。
【図12】第1実施形態の枠部材F10の複数倍の幅寸を有する枠部材F10c,F10dの正面図である。
【図13】第2実施形態の建物5’の概略斜視図である。
【図14】図14A乃至図14Cは、第2実施形態の建物5’の構築手順の模式図であり、何れの図も、左側に側面図を示し、右側には上面図を示している。
【図15】図15A及び図15Bは、同構築手順の模式図であり、何れの図も、左側に側面図を示し、右側には上面図を示している。
【図16】枠部材F10,F10…を用いて形成されるその他の種類の外周架構10’’の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
===第1実施形態===
図2は、第1実施形態の建物5の概略斜視図である。また、図3A乃至図4Bは、建物5の構築手順の説明図である。なお、図2や図4Bでは、外壁材や屋根材等の建物5の一部の構成を省略して示している。
【0042】
この建物5は、例えば複数階の一例としての二階建ての事務所ビルであり、地面Gに埋設されたコンクリート製の基礎3上に構築されている。この建物5は、その構造躯体として、基礎3の上面のうちで、構築されるべき建物5の外周に相当する部位に沿って連続して環状に配された鉄骨造の外周架構10と、外周架構10によって内方に区画された空間(以下、内部空間SP10とも言う)を横断して設けられた複数の鋼製の梁部材50,50…(図4Aを参照)とを有している。そして、梁部材50,50…には二階用の床部60が設けられ、また、外周架構10の上部には不図示の屋根材が設けられ、更に、外周架構10の側部には不図示の外壁材や窓枠等が設けられている。
【0043】
基礎3は、建物5の平面外形よりも大きい平面形状を有する。そして、基礎3には、外周架構10を当該基礎3に固定するための不図示の鋼材が埋設されている。よって、例えば、当該鋼材に、外周架構10の柱材11,11…を剛接合することで外周架構10は基礎3に一体的に連結される。ちなみに、剛接合とは、外力を受けても接合状態が変化しない接合方式のことであり、これにより、曲げモーメントも速やかに伝達される。この剛接合は、溶接接合やボルト接合により実現される。
【0044】
外周架構10は、複数の鋼製の柱材11,11…と複数の鋼製の梁材21,21…とを組んで形成されており、その骨組み構造として、フィーレンデール形式が使用されている。フィーレンデール形式とは、柱材11と梁材21とが剛接合されたラーメン構造形式の一種であって、四角形を基本とする骨組み構造形式のことである。よって、基本的に、柱材11は、その長手方向を鉛直方向に向けて設けられ、梁材21は、その長手方向を水平方向に向けて設けられており、図2の例の外周架構10は、その外周面に、全体として略格子状に複数の四角形の開口部OP,OP…を有している。
【0045】
なお、これら開口部OP,OP…については、窓枠を設けて窓にしたり、外壁材で塞いで外壁とすることもできて、結果、その設定によっては、窓の配置を縦連窓や横連窓にもできるし更には市松模様状にすることも可能である。
また、これら柱材11や梁材21を、窓枠や外壁材等の外装仕上げ材の支持部材として用いることもできるので、外装マリオンの縮小化を図ることもできる。
【0046】
各柱材11は、建物5の外周に沿う方向(以下、建物外周方向とも言う)に沿って間欠的に配されている。そして、各柱材11は、その配置位置において基礎3の鋼材と剛接合されており、これにより基礎3と連結一体化されている。また、建物外周方向に隣り合う柱材11,11同士は、梁材21によって連結されている。梁材21は、鉛直方向に間欠的に並んで複数本配置されている。例えば、図示例では、柱材11の上下の各端部にそれぞれ一本ずつ梁材21が設けられ、その間の範囲を複数等分の一例として六等分するように5本の梁材21,21…が配置されている。そして、これにより、隣り合う柱材11,11同士の間の空間は、六つの開口部OP,OP…に区分されている。
【0047】
更に詳しくは、図5の外周架構10の拡大三面図(側面図、上面図(側面図中のB−B矢視図)、縦断面図(側面図中のC−C矢視図))に示すように、隣り合う柱材11,11同士は、互いに面11fsでもって対向しており、これら面11fs,11fs同士の間に梁材21が介装されつつ、当該梁材21の両端の小口面21ssが面11fsに突き合わされる形で剛接合されている。例えば、後述するように、ここでは柱材11及び梁材21としてH形鋼が使用されているが、建物外周方向に隣り合う柱材11,11同士は、互いにフランジ面11fs,11fsを対向させており、このフランジ面11fsに梁材21のH形の小口面21ssが突き合わされて、溶接接合やボルト接合によって剛接合されている。そして、これにより、外周架構10の内部空間SP10への柱材11や梁材21の突出を有効に抑制し、内部空間SP10の拡大を図っている。なお、柱材11のH形鋼の一対のフランジ11f,11f及びウエブ11wに適宜ダイアフラム(不図示)を架け渡して設け、これにより、柱材11における梁材21の連結部位を補強しても良い。
【0048】
また、図2の例では、建物5の平面外形形状が矩形である。よって、建物5の四つの各辺を外周として、柱材11,11…は当該各辺に沿って略等ピッチで立設されている。但し、建物5の平面外形形状は、何等これに限らず、例えば、入り隅を屋外に有した平面視L字状の外形形状でも良いし、三角形等の矩形以外の多角形でも良いし、円形でも良く、更には、これら多角形や円形を複数組み合わせてなる複合形状であっても良い。
【0049】
ところで、本発明にあっては、施工現場での施工性向上等の観点から、工場等において予め、外周架構10に係る柱材11,11と梁材21,21…とを、フィーレンデール形式の枠部材F10の一例として梯子状の枠部材F10に組んでユニット化している。すなわち、図6の三面図(側面図、上面図(側面図中のB−B矢視図)、縦断面図(側面図中のC−C矢視図))に示すように、当該枠部材F10は、複数階の一例としての二階分の高さに相当する長さの一対の柱材11,11と、これら一対の柱材11,11を繋ぐべく鉛直方向に間欠的に並んで水平に配置された複数(ここでは7本)の梁材21,21…とを有している。
そして、これら枠部材F10,F10…を施工現場に搬入し、図3Aのように建物5の外周たる各辺に沿って間欠的に配置して基礎3に固定した後に、図3Bのように建物外周方向に互いに隣り合う枠部材F10,F10同士を、鋼製の連結部材J10を介して順次連結し、これにより、外周架構10が形成される。
【0050】
なお、この図の例では、枠部材F10の梁材21は、一対の柱材11,11の間の空間を六つの開口部OPに区分すべく7本設けられているが、これは、図2で既述のように、外周架構10において互いに隣り合う柱材11,11同士の間の空間が六つの開口部OP,OP…に区分されているためである。
【0051】
また、図6の例では、柱材11の上端部の小口面11ssの高さ位置を、その近傍たる最上段の梁材21の上面21usと面一に揃え、また、柱材11の下端部の小口面11ssの高さ位置を、その近傍たる最下段の梁材21の下面21dsと面一に揃えているが、何等これに限るものではなく、柱材11の各端部を、それぞれ対応する梁材21の上面21usや下面21dsよりも鉛直方向に若干飛び出させても良い。
【0052】
図3Bや図7の外周架構10の概略上面図に示すように、上記の連結部材J10としては、基本的には枠部材F10の梁材21と同様、水平方向に真っ直ぐな梁材21が使用される。例えば、建物5の四つの隅角部5c以外の部位に配置される連結部材J10a、つまり建物5の四つの各辺に配置される連結部材J10aには、真っ直ぐな梁材21(「第2の梁材」に相当)が使用される。これにより、後に各辺に形成されるべき内壁面を突出部の無い略平坦面にすることができる。これに対して、建物5の四つの隅角部5cに配置される連結部材J10cにあっては、各隅角部5cの形状に対応させてL字状の屈曲部を有した梁材21c(「第2の梁材」に相当)が使用されるか、或いは、L字状の梁材21c(「第2の梁材」に相当)及び真っ直ぐな梁材21(「第2の梁材」に相当)が柱材11に剛接合されてなる部材のどちらかが使用される。
【0053】
ここで望ましくは、上記の各辺に配置される連結部材J10aについては、図5に示すように、枠部材F10の梁材21と全く同仕様(つまり、同じ断面形状で同じ長さ)の梁材21を使用し、そして、その設置高さや鉛直方向の設置数を、枠部材F10の梁材21に揃えると良い。そうすれば、図5中の側面図に示すように、外周架構10における枠部材F10,F10同士の間の部分も、枠部材F10と完全に同仕様の梯子状になるので、建物外周方向の位置に応じて外周架構10の強度や剛性が変化することを防止できる。また、隅角部5cに配置される連結部材J10cの梁材21c,21についても、その設置高さや鉛直方向の設置数を、枠部材F10の梁材21に揃えると良く、そうすれば、隅角部5cにおいても概ね枠部材F10と類似の梯子状仕様になるので、建物外周方向の略全周に亘って、外周架構10の強度や剛性を略均等にすることができる。
【0054】
また、柱材11の断面形状が、強軸方向と、該強軸方向に直交する方向であって強軸方向よりも断面二次モーメントが小さい弱軸方向とを有している場合には、望ましくは、柱材11の強軸方向を、建物外周方向に沿わせると良い。図5の例では、柱材11としてH形鋼を使用しており、かかるH形鋼の強軸方向は、H形鋼のウエブ面11wsと平行な方向であり、換言すると、H形鋼のフランジ面11fsの法線方向である。よって、図7に示すように、ウエブ面11wsが建物外周方向に沿うように柱材11は配されており、換言すると、フランジ面11fsの法線方向が建物外周方向に沿うように柱材11は配されている。
【0055】
そして、このように柱材11の強軸方向を建物外周方向に沿わせれば、柱材11の剛性や強度を、外周架構10の外周に沿う方向に高めることができて、全体として外周架構10の水平剛性や水平強度の向上を図れる。これにより、その剛性や強度向上分だけ柱材11の断面サイズを小さくすることができて、結果、外周架構10の内部空間SP10への枠部材F10の突出量の縮小化を通して、内部空間SP10の拡大や、フィーレンデール形式に係る四角形の開口部OPの拡大を図れる。
【0056】
なお、図7の例では、外周架構10が具備する全ての柱材11,11…について、その強軸方向を建物外周方向に沿わせているが、何等これに限るものではなく、これらのうちの幾つかの柱材11,11…については、強軸方向を建物外周方向に沿わせ、残りの柱材11,11…については、その強軸方向を建物外周方向に沿わせなくても良い。例えば、建物外周方向に沿って一つおき又は複数おきに、柱材11の強軸方向を建物外周方向に沿わせても良いし、又は、建物5の四辺の各辺につき、少なくとも一つの柱材11の強軸方向を建物外周方向に沿わせるようにしても良い。
【0057】
また、柱材11は、何等H形鋼に限るものではなく、溝形鋼でも良いし、断面長方形形状の鋼製パイプでも良い。
【0058】
また、この強軸方向をどの方向に向けるかについては、枠部材F10の梁材21や連結部材J10a,J10cの梁材21,21cにも望ましい向きが存在する。すなわち、これら梁材21,21cの断面形状が、強軸方向と、該強軸方向に直交する方向であって強軸方向よりも断面二次モーメントが小さい弱軸方向とを有している場合には、望ましくは、梁材21,21cの強軸方向を、鉛直方向に沿わせると良い。図5の例では、梁材21,21cに、H形鋼が使用されているので、H形鋼のウエブ面21wsが、鉛直方向に沿うように梁材21,21cは配されている。
【0059】
そして、このようにすれば、梁材21,21cの剛性や強度を、鉛直方向に高めることができて、これにより、間接的に、枠部材F10や連結部材J10a,J10cの剛性や強度を建物外周方向に高めることができ、結果、全体として外周架構10の水平剛性や水平強度の向上を図れる。これにより、その剛性や強度向上分だけ梁材21,21cの断面サイズを小さくすることができて、結果、外周架構10の内部空間SP10への梁材21,21cの突出量の縮小化を通して、内部空間SP10の拡大や、フィーレンデール形式に係る四角形の開口部OPの拡大を図れる。
なお、柱材11の場合と同様、梁材21,21cも何等H形鋼に限るものではなく、溝形鋼でも良いし、断面長方形形状の鋼製パイプでも良い。
【0060】
ところで、図2を参照して既述のように、外周架構10には、その内部空間SP10を横断して複数の鋼製の梁部材50,50…が架け渡されている。そして、その上方には、梁部材50,50…との間で架け渡し方向を直交させつつ複数枚の波形のデッキプレート62,62…が設けられて梁部材50,50…に載置支持され、更に、デッキプレート62,62…の上方から不図示のコンクリートが打設されて、これにより2階の床部60が形成されている。
【0061】
各梁部材50,50…は、図2や図4Aに示すように、建物5の短辺方向を架け渡し方向としており、よって、建物5の長辺方向には、複数の梁部材50,50…が間欠的に並んで配されている。なお、架け渡し方向を、建物5の短辺方向にしているので、梁部材50の下方の撓み変形は抑制され、その分だけ、梁部材50の断面サイズを小さくできる。また、そもそも梁部材50は鋼製なので、RC造と比較して高強度であり、その分だけ断面サイズを小さくすることもできて、結果、梁部材50の梁せいの縮小を通して、階高の割に高い天井高を確保可能となる。更には、梁部材50を複数本有しているので、床部60の重量の支持を複数本の梁部材50,50…に分担させることができる。つまり、梁部材50一本当たりの荷重負荷の軽減を図れ、各梁部材50の梁せいを小さくできて、このことも、上述の高い天井高の確保に寄与する。また、全ての梁部材50の架け渡し方向が一方向たる短辺方向に平行に揃っているので、空調ダクト等の長尺の屋内装備品を、梁部材50,50同士の間の空間に配置できて、当該長尺の屋内装備品の設置性に優れる。
【0062】
なお、かかる梁部材50,50…は、上述のように二階の床部60を支持する床梁として機能するので、各梁部材50は、梁端にて、柱材11の長手方向の略中間部位に連結され、これにより、柱材11,11に両端支持されている。図8A及び図8Bは、この連結構造の説明図である。図8Aに平断面図を示し、図8Bには縦断面図を示している。なお、図8Aは、図8B中のA−A断面図でもあり、図8Bは、図8A中のB−B断面図でもある。
【0063】
図8A及び図8Bに示すように、この例では、梁部材50もH形鋼である。そして、下方への撓み抑制の観点から、梁部材50の強軸方向は、鉛直方向に向けられている。すなわち、梁部材50の上部と下部とに、それぞれフランジ50f,50fが位置しており、これらフランジ50f,50f同士の間にウエブ50wが位置している。
【0064】
ここで、梁部材50の梁端は、柱材11のウエブ11wにピン接合されている。詳しくは、柱材11のウエブ11wからは、当該ウエブ11wに剛接合されたガセットプレート15が梁部材50の方へ延出しており、このガセットプレート15と梁部材50のウエブ50wとが互いの側面にて重なり合った状態で、水平ピン又はボルト等の連結部材17を介して連結されている。ここで、ピン接合とは、連結位置での相対回転を許容しつつ、これ以外の相対移動を不能に規制する接合構造である。そのため、梁部材50の梁端には、専ら梁部材50及び床部60の自重のみが作用して、曲げモーメントの入力は軽減されるので、その軽減分だけ、梁部材50の梁端の梁せいを縮小可能となる。よって、図8Bの例では、梁部材50の梁端の下部を段状に切り欠き、梁端の梁せいh50eを梁部材50の中央部などの定常部分の梁せいh50cよりも縮小させている。そして、これにより、梁部材50の梁端を、外周架構10に隠し易くなり、結果、当該梁端を、屋外から見え難くすることができて、建物5の外観の意匠性を良好にしている。
【0065】
より詳しく説明すると、この例では、外周架構10の梁材21,21…のうちで高さ方向の中間に位置する梁材21が、二階の床面高さに最も近い梁材21であるので、この梁材21の上面21usと梁部材50の上面50usとが高さ方向にほぼ揃うように梁部材50は配されている。また、この例では、外周架構10の梁材21の梁せいh21よりも、梁部材50の梁せいh50cの方が大きくなっている。そのため、この梁せいh50cが大きい分だけ、梁部材50が梁端において梁材21よりも下方に突出してしまい、これにより、屋外から梁部材50の梁端が見え易くなり、その結果、建物5の外観の意匠性を損ねてしまう。しかし、この点につき、上述のように梁部材50の梁せいh50eを梁端において縮小しておけば、当該梁端での梁せいh50eを梁材21の梁せいh21に概ね揃えることができて、その結果、梁部材50の梁端を、外周架構10の梁材21や柱材11の影に隠して屋外から見え難くすることが可能となる。
また、このように梁部材50の梁端を切り欠けば、当該切り欠き部50kの下方に形成された空間を、カーテンボックスやブラインドボックス等の屋内装備品の設置スペースとして利用することもできる。なお、この梁端の切り欠き部50kの切り欠き形状は、何等図8Bの段状に限るものではなく、梁端へ向かうに従って梁せいh50eが漸減するテーパー形状にしても良いし(図9B)、これ以外の形状でも構わない。
また、望ましくは、ガセットプレート15を上下から補強する目的で、柱材11のウエブ11wに上下一対の水平プレート(不図示)を設け、これら水平プレートによってガセットプレート15を上下から挟みつつ剛接合しても良い。
【0066】
また、上述の例では、柱材11,11…の柱割に合わせて梁部材50,50…を配置していた関係上、梁部材50を柱材11に連結していたが、何等これに限るものではない。例えば、諸事情のために柱材11の配置位置と梁部材50の配置位置とが異なってしまう場合には、梁部材50を外周架構10の梁材21に連結しても良い。図9A及び図9Bは、その連結構造の説明図であり、図9Aには平断面図を示し、図9Bには図9A中のB−B断面図を示している。この例では、外周架構10の梁材21のウエブ21wからガセットプレート15が梁部材50の方へ延出して設けられている。そして、このガセットプレート15と梁部材50のウエブ50wとが互いの側面にて重なり合った状態で、水平ピンやボルト等の連結部材17を介して連結されており、これにより、梁部材50は外周架構10の梁材21にピン接合されている。
【0067】
ところで、場合によっては、枠部材F10内に、制振部材80や耐震部材85を組み込んでおいても良い。ここで、制振部材80とは、オイルダンパーや摩擦ダンパー等の外周架構10の振動エネルギーを吸収する部材のことであり、そして、かかる制振部材80は、例えば、図10Aに示すように、枠部材F10の四角形の開口部OP毎にその対角方向に架け渡されて設けられる。また、耐震部材85とは、ブレースや鋼板耐震壁85等の外周架構10の変形を抑制する部材のことであり、前者のブレースについては、枠部材F10の四角形の開口部OP毎にその対角方向に架け渡して設けられ、後者の鋼板耐震壁85にあっては、図10Bに示すように、枠部材F10が有する開口部OP毎に、その幾つかの開口部OP,OP…又は全部の開口部OP,OP…を覆って設けられる。
【0068】
そして、このような制振部材80や耐震部材85を枠部材F10内に組み込んでおけば、外周架構10の内部空間SP10に、別途制振部材80や耐震部材85を設けずに済み、その結果、内部空間SP10を広く確保可能となる。また、かかる制振部材80や耐震部材85を、予め工場等において枠部材F10に組み込み搭載しておけば、施工現場での作業負荷を軽減できる。
【0069】
ここで、この建物5の構築方法について図3A乃至図4Bを参照して説明する。
先ず、専用の加工装置等を備える工場等において、柱材11及び梁材21を組んで枠部材F10を製造する(枠部材製造工程)。また、これと併せて連結部材J10(J10a,J10c)や梁部材50も製造する。なお、枠部材F10にあっては、必要に応じて制振部材80や耐震部材85も組み込んでおく。そして、これら枠部材F10等を、建物5の構築場所たる施工現場へ搬送する。
【0070】
次に、施工現場の地面Gに設けられたコンクリート製の基礎3(図3A乃至図4Bでは不図示)の上面に、複数の枠部材F10,F10…を配置する(枠部材配置工程)。このとき、各枠部材F10は、構築されるべき建物5の外周に沿って、つまり建物外周方向に沿って間欠的に配置される。そして、各配置位置において各枠部材F10の柱材11の下端部が、同配置位置の基礎3の鋼材に剛接合され、これにより各枠部材F10は基礎3に連結一体化される。
【0071】
そうしたら、図3Bに示すように、建物外周方向に隣り合う枠部材F10,F10同士を、連結部材J10(J10a,J10c)によって順次連結する(枠部材連結工程)。これにより、建物外周方向の全周に亘って連続した環状の外周架構10が完成する。
【0072】
次に、図4Aに示すように、外周架構10の短辺方向を架け渡し方向として、複数の梁部材50,50…を外周架構10に架け渡す(梁部材架け渡し工程)。詳しくは、外周架構10の長辺に位置する各柱材11に、それぞれ一本ずつ梁部材50をピン接合で連結して各梁部材50を両端支持させる。そして、図4Bに示すように、これら梁部材50,50…の上方に複数の鋼製デッキプレート62,62…を載置後、デッキプレート62,62…上に不図示のコンクリートを打設して建物5の二階の床部60を形成する(床部形成工程)。
【0073】
そうしたら最後に、外周架構10の上部を不図示の屋根材で覆い、また、外周架構10の側部に適宜不図示の外壁材や窓枠を設置等して、以上をもって建物5が完成する。
【0074】
ちなみに、上述の第1実施形態では、建物5が二階建てであったので、図6の枠部材F10の柱材11として、建物5の二階分の高さに相当する長さの一本もののH形鋼を用い、これにより、枠部材F10を建物5の二階分に相当するサイズに形成していたが、この枠部材F10のサイズは、何等これに限るものではなく、例えば一階分にしても良い。その場合には、図11の左側に示すように、枠部材F10a,F10bとして、例えば一階用の枠部材F10aと二階用の枠部材F10bとの二種類が用意される。どちらの枠部材F10a,F10bも、一階分の高さに相当する長さの一対の柱材11,11と、これら一対の柱材11,11同士を連結する複数の梁材21,21…とを有するが、一階用の枠部材F10aが、柱材11の上下の各端部にそれぞれ梁材21を有しているのに対して、二階用の枠部材F10bにあっては、柱材11の下端部の梁材21が省略されている。これは次の理由による。外周架構10の構築時には、一階用の枠部材F10aの上方に二階用の枠部材F10bを積み重ねるべく、一階用の枠部材F10aの柱材11の上端の小口面11ssと二階用の枠部材F10bの柱材11の下端の小口面11ssとを突き合わせて剛接合することになるが、このときに、一階用の枠部材F10aの上端部の梁材21を、二階の枠部材F10bの下端部の梁材21に兼用するためである。但し、何等これに限るものではなく、例えば、当該一階用の枠部材F10aと同構造のものを、一階だけでなく二階に用いても良いし、また、逆に、当該二階用の枠部材F10bを、二階だけでなく一階に用いても良い。
【0075】
更には、図11の左側の例では、一、二階用の各枠部材F10a,F10bの両者につき、柱材11の上端部の小口面11ssの高さ位置を、その近傍たる最上段の梁材21の上面21usと面一に揃えていたが、何等これに限るものではなく、図11の右側に示すように、一階用の枠部材F10aの柱材11の上端部を、梁材21の上面21usよりも鉛直方向の上方に若干飛び出させても良く、また、二階用の枠部材F10bの柱材11の上端部も、同様に上方に飛び出させても良い。
【0076】
また、枠部材F10の幅寸を、上述の第1実施形態の複数倍の寸法にしても良い。図12には、複数倍の一例として二倍及び三倍の場合を例示しているが、かかる複数倍の幅寸を有した枠部材F10c,F10dの形成は、枠部材F10の側方に、一本の柱材11と、複数の梁材21,21…とを一組とする拡幅用部品P10を、目標の幅寸になるまで連ねて設けることでなされる。例えば、二倍の場合には、枠部材F10の側方に拡幅用部品P10を一つ追設すれば良く、三倍の場合には、枠部材F10の側方に拡幅用部品P10を二つ連ねて追設すれば良い。そして、この構成によれば、拡幅された枠部材F10c,F10dの柱材11の配置ピッチは、第1実施形態の枠部材F10の柱材11の配置ピッチと同じになるので、枠部材F10c,F10dの剛性や強度を枠部材F10と同じレベルに維持可能となる。ちなみに、図12を参照してわかるように、かかる枠部材F10c,F10dの外観は、梯子状というよりは格子状を呈するが、いずれの枠部材F10c,F10dも、四角形の開口部OPを有しているので、フィーレンデール形式の枠部材の一種である。
【0077】
更に、構築すべき建物5が三階建てや四階建ての場合には、枠部材F10,F10c,F10dの柱材11として、三階分や四階分の高さに相当する長さの一本ものの柱材11を用いて、これにより、枠部材F10,F10c,F10dを建物5の三階分や四階分に相当するサイズに形成しても良い。
【0078】
===第2実施形態===
図13は、第2実施形態の建物5’の概略斜視図である。なお、この図13でも、外壁材や屋根材等の建物5’の一部の構成を省略して示している。
【0079】
前述の第1実施形態の建物5は二階建てであったが、この第2実施形態の建物5’は三階建てであり、この点で主に相違し、これ以外の点は概ね同じである。よって、以下の説明では、主に相違点について述べ、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して、その説明については省略する。
【0080】
この建物5’は、三階分の高さの外周架構10’を有する。この外周架構10’は、基本的には、第1実施形態に係る二階分の高さの外周架構10の各枠部材F10の上方に、それぞれ、更に一階分の高さの枠部材F10bを積み重ねるとともに、これら積み重ねた複数の枠部材F10b,F10b…のうちで、建物外周方向に互いに隣り合う枠部材F10b,F10b同士を連結部材J10a,J10c’で連結して形成される。
【0081】
なお、ここで、積み重ねられるべき「一階分の高さの枠部材F10b」には、例えば、図11を参照して既述した枠部材F10b、つまり柱材11の下端部の梁材21が省略された枠部材F10bが使用される。また、これら枠部材F10b,F10b同士を連結する連結部材J10a,J10c’については、建物5’の隅角部5c’配置用として連結部材J10c’が用意され、また、建物5’の各辺配置用として連結部材J10aが用意されている。前者の隅角部5c’配置用の連結部材J10c’としては、第1実施形態の連結部材J10cを単に一階分の高さに変更したものが使用され、後者の各辺配置用の連結部材J10aとしては、第1実施形態と同様に梁材21が使用される。
【0082】
この外周架構10’の内部空間SP10’には、階毎に床部60が設けられており、つまり二階の床部60(2F)と三階の床部60(3F)とが設けられている。各床部60は、それぞれ床部60の直下に架け渡された梁部材50(図13では不図示)に支持されている。なお、これら床部60や梁部材50の構造は、第1実施形態で述べたものと同じである。また、外周架構10’の上部には不図示の屋根材が設けられ、更に、外周架構10’の側部には不図示の外壁材や窓枠等が設けられている。
【0083】
このような三階建ての建物5’は、次のようにして構築される。図14A乃至図15Bは、この構築手順の説明用の模式図であり、何れの図も、左側に側面図を示し、右側には上面図を示している。
【0084】
先ず、第1実施形態の場合と同じ手順で、地面Gの基礎3上に二階分の高さの外周架構10を形成し、その内部空間SP10に梁部材50,50…を横断して設置し、梁部材50,50…上に二階の床部60(2F)を形成する。これにより、建物5’は、図14A(図4B)の状態にまで構築される。なお、場合によっては、この時点では二階の床部60については形成せずに、梁部材50の設置までに留めておいても良い。その場合、床部60(2F)の形成作業は、三階の床部60(3F)の形成と同タイミングで行っても良いし、或いは、最後、つまり三階分の高さの外周架構10’の完成後に行っても良い。ちなみに、この時点において、この形成途中段階たる二階分の高さの外周架構10に対して、少なくとも梁部材50,50…だけは設置しておく理由は、外周架構10の倒壊防止である。
【0085】
次に、図14Bに示すように、この二階分の高さの外周架構10の上端部に複数の梁部材50,50…を架け渡す(梁部材架け渡し工程)。これらの梁部材50,50…は、この後で形成される三階の床部60を支持する床梁となる。そして、この梁部材50の設置にあっては、二階の梁部材50と同様に、梁部材50の両端部が、外周架構10の対応する各柱材11,11にピン接合され、これにより、各梁部材50は、外周架構10に両端支持された状態となる。なお、このピン接合の接合構造は、前述の第1実施形態の梁部材50の場合と同様である。
【0086】
そして、図14Cに示すように、これら梁部材50,50…の上方に複数のデッキプレート62,62…を載置後、これらデッキプレート62,62…上に不図示のコンクリートを打設して建物5’の三階の床部60(3F)を形成する。なお、前述したように、この時点で未だ二階の床部60(2F)が未形成の場合には、このタイミングで、二階の床部60(2F)と三階の床部60(3F)の両者を形成しても良いし、或いは、二階の床部60(2F)の形成作業を最後に後回しにしたのに倣って、この三階の床部60(2F)の形成作業も最後に行うことにして、ここでは行わないようにしても良い。
【0087】
そうしたら、図15Aに示すように、二階分の高さの外周架構10の各枠部材F10の上方に、それぞれ、一階分の高さの枠部材F10bを積み重ねる(枠部材積み重ね工程)。このとき、外周架構10の各枠部材F10の柱材11の上端の小口面に、積み重ねられるべき一階分の高さの枠部材F10bの柱材11の下端の小口面を突き合わせて剛接合する。そして、このような枠部材F10bの積み重ね作業を、外周架構10が具備する全ての枠部材F10に対して行い、これにより、外周架構10の上方には、一階分の高さの枠部材F10b,F10b…が、建物外周方向に間欠的に配置された状態になる。
【0088】
そうしたら、図15Bに示すように、建物外周方向に隣り合う枠部材F10b,F10b同士を、連結部材J10a,J10c’によって順次連結し(枠部材連結工程)、これにより、三階分の高さの環状の外周架構10’が完成する。
【0089】
そして最後に、外周架構10’の上部を不図示の屋根材で覆い、また、外周架構10’の側部に不図示の適宜外壁材や窓枠等を設置して、以上をもって建物5’が完成する。なお、この時点において未だ、二階や三階の床部60(2F),60(3F)を形成していない場合には、このときにこれら床部60(2F),60(3F)の形成も行う。
【0090】
ところで、上述の第2実施形態では、建物5’が3階建てであったが、建物5’の階数は、これより多くても良い。そして、その場合の構築方法の一例としては、途中階まで形成された外周架構10’の上端部に対して、上述の「梁部材架け渡し工程」と「枠部材積み重ね工程」と「枠部材連結工程」とを、外周架構10’が目標階の高さになるまで繰り返し行うことが挙げられる。なお、その際、積み重ねるべき枠部材F10bとしては、何等上述の「一階分の高さの枠部材F10b」に限るものではなく、二階分の高さの枠部材F10や、三階分の高さの枠部材等を適宜用いても良く、つまり枠部材のサイズは、その施工状況に応じて随時選択して構わない。
【0091】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0092】
上述の実施形態では、枠部材F10,F10同士を梁材21等の連結部材J10によって連結していたが、場合によっては、連結部材J10を使用しなくても良い。すなわち、図16の外周架構10’’の側面図に示すように、建物外周方向に互いに隣り合う枠部材F10,F10同士の間に間隔を設けずに枠部材F10,F10同士を当接し、これら枠部材F10,F10同士を直接剛接合しても良い。そして、この構成によれば、連結部材J10を省略できて外周架構10’’の構成部品の種類を減らすことができる。但し、この構成の場合には、枠部材F10の柱材11と、その隣の枠部材F10の柱材11とが、間隔を空けずに二本隣接して並ぶことになるので、前述の実施形態よりも、外周架構10’’の外周面のうちで開口部OPが占める面積の割合が低くなってしまう。そのため、開放感のある建物5,5’を指向する場合には、前述の第1、第2実施形態のように、枠部材F10,F10同士を梁材21等の連結部材J10で連結する方が好ましい。
【0093】
上述の実施形態では、各階のフロアを、幾つかの部屋に分割する間仕切り壁を例示していなかったが、何等これに限るものではなく、間仕切り壁を設けても良い。
【0094】
上述の実施形態では、建物5,5’が二階建て以上の場合を例示したが、何等これに限るものではなく、一階建てたる平屋でも良い。そして、その場合には、図11の枠部材F10a又は枠部材F10bが使用される。つまり、柱材11の長さが、一階分の高さに相当する長さに設定された枠部材F10a,F10bが使用される。
【符号の説明】
【0095】
3 基礎、5 建物、5c 隅角部、
10 外周架構、10’ 外周架構、10’’ 外周架構、
11 柱材、11f フランジ、11fs フランジ面、11ss 小口面、
11w ウエブ、11ws ウエブ面、
15 ガセットプレート、17 連結部材、
21 梁材、21c 梁材、21ss 小口面、21us 上面、21ds 下面、
21w ウエブ、21ws ウエブ面、
50 梁部材、50f フランジ、50k 切り欠き部、50us 上面、
50w ウエブ、
60 床部、62 デッキプレート、
80 制振部材、85 鋼板耐震壁(耐震部材)、
OP 開口部、
F10 鋼製枠部材、F10a 鋼製枠部材、
F10b 鋼製枠部材、F10c 鋼製枠部材、
J10 連結部材、J10a 連結部材、J10c 連結部材、J10c’ 連結部材、
P10 拡幅用部品、
SP10 内部空間、SP10’ 内部空間、
G 地面、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外周に沿って配された鉄骨造の外周架構を有する建物であって、
該外周架構は、前記外周に沿って並べられた複数のフィーレンデール形式の鋼製枠部材が連結されて形成されていることを特徴とする建物。
【請求項2】
請求項1に記載の建物であって、
前記鋼製枠部材は、一対の柱材と、前記一対の柱材同士を繋ぐ梁材と、を有し、
前記柱材の断面形状は、強軸方向と、該強軸方向に直交する方向であって前記強軸方向よりも断面二次モーメントが小さい弱軸方向と、を有し、
前記柱材の強軸方向は、前記外周に沿っていることを特徴とする建物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建物であって、
前記外周架構によって内方に区画された内部空間を横断して設けられた鋼製の梁部材であって、前記複数の鋼製枠部材のうちで、前記内部空間を隔てて互いに対向する鋼製枠部材同士に架け渡された前記梁部材を複数有し、
前記梁部材は、梁端にて、対応する前記鋼製枠部材にピン接合されていることを特徴とする建物。
【請求項4】
請求項3に記載の建物であって、
前記梁部材の梁せいは、前記梁端において縮小されていることを特徴とする建物。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の建物であって、
前記鋼製枠部材は、一対の柱材と、前記一対の柱材同士を繋ぐ複数の梁材と、を有し、
前記鋼製枠部材の前記梁材の断面形状は、強軸方向と、該強軸方向に直交する方向であって前記強軸方向よりも断面二次モーメントが小さい弱軸方向とを有し、
前記梁材の強軸方向は、鉛直方向を向いており、
前記梁材は、前記一対の柱材の間の空間を複数の開口部に区分するように、鉛直方向に間欠的に並んで配置されていることを特徴とする建物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の建物であって、
前記複数の鋼製枠部材は、前記外周に沿って間欠的に配置されており、
前記複数の鋼製枠部材のうちで前記外周に沿う方向に互いに隣り合う鋼製枠部材同士は、前記梁材とは別の第2の梁材を介して連結されていることを特徴とする建物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の建物であって、
前記鋼製枠部材は、前記建物の複数階分に相当するサイズに形成されていることを特徴とする建物。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の建物であって、
前記建物が具備すべき階数に対応させて、複数の前記鋼製枠部材が鉛直方向に積み重ねられていることを特徴とする建物。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の建物であって、
前記複数の鋼製枠部材のうちの幾つかには、前記外周架構の振動エネルギーを吸収する制振部材が組み込まれていることを特徴とする建物。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の建物であって、
前記複数の鋼製枠部材のうちの幾つかには、前記外周架構の変形を抑制する耐震部材が組み込まれていることを特徴とする建物。
【請求項11】
建物の外周に鉄骨造の外周架構を有する建物の構築方法であって、
前記外周に沿って複数のフィーレンデール形式の鋼製枠部材を並べて連結することにより、前記外周架構を形成する工程を有することを特徴とする建物の構築方法。
【請求項12】
請求項11に記載の建物の構築方法であって、
前記外周架構を形成する工程は、複数の前記鋼製枠部材を前記外周に沿って地面の基礎に配置する枠部材配置工程と、配置された複数の前記鋼製枠部材を前記外周に沿って連結する枠部材連結工程と、を有し、
更に、前記外周架構によって内方に区画された内部空間を、鋼製の梁部材に横断させながら、前記梁部材を、互いに対向する前記鋼製枠部材同士に架け渡す梁部材架け渡し工程と、
前記梁部材の上に床部を形成する床部形成工程と、を有することを特徴とする建物の構築方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の建物の構築方法であって、
形成された前記外周架構の上に、更に鋼製枠部材を積み重ねる枠部材積み重ね工程と、
積み重ねた前記鋼製枠部材を、前記外周に沿って連結する枠部材連結工程と、を有することを特徴とする建物の構築方法。
【請求項14】
請求項11乃至13の何れかに記載の建物の構築方法であって、
前記鋼製枠部材は、前記建物の複数階分に相当するサイズに形成されていることを特徴とする建物の構築方法。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−246628(P2012−246628A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117256(P2011−117256)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)