説明

建物の床構造

【課題】建物の床に床開口部を設ける床構造において、設計自由度の向上を図ることが可能な建物の床構造を提供すること。
【解決手段】床FLの一部に開口された床開口部16と、床桁大梁11に取り付けられた桁大梁補強部材40及び床妻大梁12に取り付けられた妻大梁補強部材30と、桁大梁補強部材40及び妻大梁補強部材30により支持されて床FLよりも低い位置に配置された小梁部材60と、床開口部16の端縁部において床桁大梁11,11の間に架け渡された第1間仕切下床小梁21と、床開口部16を横切って妻大梁補強部材30と第1間仕切下床小梁21との間に架け渡された第2間仕切下床小梁22と、床開口部16の一部を覆って第2間仕切下床小梁22に支持され、床桁大梁11に沿う方向に床FLに連続する付加床を形成する付加床材と、を備えていることを特徴とする建物の床構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床構造に関し、特に、建物ユニットにおいてバスユニットを設置するのに好適な床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、骨格部材を備えた建物ユニットに浴室を設置する場合、骨格部材を構成する床小梁の上に、バスユニットを設置するのが一般的である。
【0003】
また、バスユニットの床面と、浴室に隣接された部屋の床面との間に段差が生じないようにするため、建物ユニットに対するバスユニット及び浴槽の設置高さを床面よりも低くしたものも知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
このうち特許文献2には、建物ユニットにおいて、骨格部材の床小梁を取り除いて床に開口部を形成し、この開口部に落とし込み床を形成し、この落とし込み床にバスユニットを設置した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−4429号公報
【特許文献2】特開2010−159602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献2に記載の技術では、建物ユニットの設置後のリフォームなどにおいて床小梁を切除して、建物ユニットの全幅に亘って床開口部を形成し、この床開口部にバスユニットを設置した構造となっていた。
このため、バスユニットは、建物ユニットの全幅に亘る大きさのものに制約されているとともに、浴室外の居室空間もバスユニットにより制約を受け、設計自由度が制限されていた。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決することを目的とするものであり、建物の床に床開口部を設ける床構造において、設計自由度の向上を図ることが可能な建物の床構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、建物の骨格を形成する骨格部材に設けられ、床の四周に設置された一対の床妻大梁及び一対の床桁大梁と、前記床において、前記一対の床妻大梁の一方から前記床桁大梁に沿う方向の前記床の一部であって、前記床妻大梁に沿う方向の全幅に亘って開口された床開口部と、前記床開口部に面して、前記一対の床桁大梁に取り付けられた桁大梁補強部材及び前記床妻大梁に取り付けられた妻大梁補強部材と、前記桁大梁補強部材及び前記妻大梁補強部材により支持されて前記床よりも低い位置に配置された小梁部材と、前記床開口部の前記既設の床側の端縁部において前記床桁大梁の間に架け渡された第1下床小梁と、前記床開口部において、前記既設の床よりも低い高さに配置され、かつ、前記床開口部を前記床桁大梁に沿う方向に横切って前記妻大梁補強部材と前記第1下床小梁との間に架け渡された第2下床小梁と、前記床開口部の一部を覆って前記第2下床小梁に支持され、前記床桁大梁に沿う方向に前記既設の床に連続する付加床を形成する付加床材と、を備えていることを特徴とする建物の床構造とした。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物の床構造において、前記第2下床小梁は、長手方向の両端部が、前記妻大梁補強部材と前記第1下床小梁とにそれぞれ結合された小梁支持ブラケットに支持されていることを特徴とする建物の床構造とした。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の建物の床構造において、前記付加床材の下側に、床断熱材が設けられていることを特徴とする建物の床構造とした。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の建物の床構造において、前記小梁部材に落とし込み床材が支持されて、前記床よりも低い位置に落とし込み床が形成され、前記落とし込み床材の下側に、床断熱材が設けられ、前記落とし込み床の側縁と、前記床桁大梁及び床妻大梁との間に、側部断熱材が設けられていることを特徴とする建物の床構造とした。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の建物の床構造において、前記床開口部を通して前記小梁部材に、バスユニットが支持されていることを特徴とする建物の床構造とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、床桁大梁間の全幅に亘って形成された床開口部の一部に、床開口部の外部の既設の床に連続する付加床を設定し、その残りの開口部分に、小梁部材を既設の床よりも低く設置した構造とした。
このため、床の造形バリエーションが増え、設計自由度が向上する。加えて、床開口部の周縁の床下には、第1下床小梁及び第2下床小梁を設置しているため、既設の床及び付加床の支持強度も確保できる。
【0010】
さらに、請求項2に記載の発明では、第2下床小梁は、床開口部の両端部に配置された妻大梁補強部材と第1下床小梁とに結合された小梁支持ブラケットにより支持するようにした。このため、第2下床小梁による支持強度を確保できる。
また、請求項3に記載の発明では、付加床材の下側に床断熱材を設けたため、床開口部に新設した付加床の断熱性を確保することができる。
さらに、請求項4に記載の発明では、落とし込み床材を小梁部材により支持して形成した落とし込み床において、落とし込み床材の下側に床断熱材を設け、落とし込み床の側縁と床桁大梁及び床妻大梁との間に側部断熱材を設けたため、床開口部から落とし込んで設けた落とし込み床において高い断熱性を確保できる。
加えて、請求項5に記載の発明では、小梁部材によりバスユニットを支持しているため、落とし込みタイプのバスユニットの設置自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の建物の床構造を適用した建物ユニットの骨格部材を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施の形態の建物の床構造を適用した建物ユニットの床構造部分を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のSb−Sb線の位置で切断した状態を示す断面図である。
【図3】図3は、実施の形態の建物の床構造を構築するための作業手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施の形態の建物の床構造の構築時の床小梁の撤去作業を説明する斜視図であり、(a)は撤去前、(b)は撤去途中、(c)は撤去後の状態を示す。
【図5】図5は、実施の形態の建物の床構造の構築時の第1間仕切下床小梁取付作業を示す斜視図である。
【図6】図6は、実施の形態の建物の床構造の構築時の妻大梁補強部材取付作業を示す斜視図である。
【図7】図7は、実施の形態の建物の床構造の構築時の桁梁補強部材取付作業を示す斜視図である。
【図8】図8は、実施の形態の建物の床構造の構築時の小梁受金具取付作業を示す斜視図である。
【図9】図9は、実施の形態の建物の床構造の構築時の小梁部材取付作業を示す斜視図である。
【図10】図10は、実施の形態の建物の床構造の構築時の小梁部材取付作業において小梁部材の取付時の状態を図9とは視点を変えて示す斜視図である。
【図11】図11は、実施の形態の建物の床構造の構築時の小梁部材取付作業において第1間仕切下小梁の取付時の状態を図9とは視点を変えて示す斜視図である。
【図12】図12は、実施の形態の建物の床構造の構築時の床根太取付作業を示す斜視図である。
【図13】図13は、実施の形態の建物の床構造の構築時の床断熱材設置作業を示す斜視図である。
【図14】図14は、実施の形態の建物の床構造の構築時の床材設置作業を示す斜視図である。
【図15】図15は、実施の形態の建物の床構造の構築時の側部断熱材設置作業を示す斜視図である。
【図16】図16は、実施の形態の建物の床構造を用いたリフォームを説明するための図であり、(a)はリフォーム前のユニット建物の平面図であり、(b)はリフォーム後のユニット建物の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
なお、本実施の形態では、図16(a)に示すユニット建物Hの1階部分を同図(b)に示すようにリフォームするのにあたり、特に、床上設置タイプのバスユニットBUbから、浴槽底部が床下に配置された落とし込みタイプのバスユニットBUに変更する場合について説明する。
【0013】
以下に、実施の形態の床構造について図1〜図16に基づいて説明する。
図16に示すユニット建物Hは、複数の建物ユニットUNを結合して構成されている。各建物ユニットUNは、周知のように、図1に示す骨格となる金属製の骨格部材10を備えている。
【0014】
骨格部材10は、その床構造部分は、図2(a)の平面図に示すように、一対の床桁大梁11,11と一対の床妻大梁12,12とにより長方形の枠状に形成され、床桁大梁11,11の間には、複数の金属製の床小梁13が架け渡されている。
また、天井部分も、天井桁大梁17,17と天井妻大梁18,18とにより長方形の枠状に形成され、長方形の四隅で柱19により床構造部分と結合されて箱枠状に形成されている。
【0015】
図2(a)に示すように、床妻大梁12,12の間には、木製の床根太14が架け渡されている。なお、この床根太14は、図2(b)に示すように、床小梁13の上に設置されており、また、床根太14の上には、床材15が設けられている。
【0016】
本実施の形態では、建物ユニットUNにおいて、図2に示す設置領域SUに、他の領域の既設の床FLの高さよりも低い落とし込み床DFL(図15参照)を形成する。すなわち、本実施の形態では、住宅のリフォームにあたって、設置領域SUにバスユニットBU(図16参照)を設置する。このバスユニットBUは、その内部である浴室の床FL3(図16参照)と隣接する部屋の既設の床FL(図5参照)との段差を無くすと共に、浴室の床FL3から浴槽の縁までの立ち上がりの高さを、20cm〜45cm程度とした、いわゆる落とし込みタイプのものである。このため、設置領域SUに、浴室外の部屋の床FLの高さよりも低く落とし込み床DFL(図15参照)を形成するものである。
【0017】
そこで、本実施の形態では、まず、設置領域SUに落とし込み床DFLを形成するまでの作業手順を説明し、これに基づいて、実施の形態の建物の床構造を説明する。
【0018】
図3は、作業手順を示すフローチャートである。
最初のステップS1では、床材、床根太、床小梁の撤去作業を行う。
次のステップS2では、第1間仕切下床小梁取付作業を行う。
次のステップS3では、妻大梁補強部材取付作業を行う。
次のステップS4では、桁大梁補強部材取付作業を行う。
次のステップS5では、小梁受金具取付作業を行う。
次のステップS6では、小梁部材取付作業を行う。
次のステップS7では、床根太取付作業を行う。
次のステップS8では、床断熱材設置作業を行う。
次のステップS9では、床材設置作業を行う。
次のステップS10では、側部断熱材設置作業を行う。
次のステップS11では、配管及び床材気密作業を行う。
次のステップS12では、バスユニット設置作業を行う。
【0019】
以下に、各作業について、詳細に説明する。
(床板、床根太、床小梁の撤去作業)
床材15、床根太14、床小梁13の撤去作業では、まず、図2に示す設置領域SUを含み、バスユニットBUbが設置されていた範囲において、木製の床材15及び床根太14を撤去し、さらに、金属製の床小梁13を撤去する。
本実施の形態では、2本の床小梁13,13(図2(a)において13(a)の符号を付したもの)を撤去する。この場合、図4(a)に示す床小梁13の長手方向両端に結合されていると共に床桁大梁11に結合された小梁受フランジ13aを、例えば、レシプロソーなどの切断機Cを用いて切断し、図4(b)(c)に示すように床小梁13を撤去する。
これにより、図5に示すように、床FLにおいて、設置領域SUを含んで建物ユニットの全幅(床妻大梁12に沿う方向の全幅)に亘って床開口部16が開口される。
【0020】
(第1間仕切下床小梁取付作業)
第1間仕切下床小梁取付作業は、床FLの床開口部16において、同ユニットの既設の床材15の端縁から少し間隔を空けた位置に第1間仕切下床小梁(第1下床小梁)21を設置する作業である。
【0021】
すなわち、バスユニットBUの設置位置には、図16(b)に示すように浴室を仕切るための第1間仕切壁W1及び第2間仕切壁W2を立設する。この第2間仕切壁W2を支持するために、その下方位置に、第1間仕切下床小梁21を設置する。
第1間仕切下床小梁21は、金属チャンネル状の本体21aと、その上面に本体21aに沿って螺子などにより固定された木桟21bとを備えている。そして、第1間仕切下床小梁21の本体21aの長手方向両端に結合された取付ブラケット21c,21cを、床桁大梁11に締結する。
【0022】
また、本体21aには、図6に示すように、床妻大梁12に対向する側面に小梁支持ブラケット23が取り付けられている。この小梁支持ブラケット23は、後述する第2間仕切下床小梁(第2下床小梁)22を支持するためのもので、図11にも示すように、水平方向の支持板23aの両側から側板23b,23bを立ち上げて、上方に開口したU字断面形状に形成されている。
【0023】
(妻大梁補強部材取付作業)
妻大梁補強部材取付作業は、図6に示すように、床妻大梁12に後述する小梁部材60及び第2間仕切下床小梁22(図9参照)を支持するための妻大梁補強部材30を取り付ける作業である。
【0024】
妻大梁補強部材30は、金属製のベース部材31と受金具支持ブラケット32,32と小梁支持ブラケット33とを備えている。
ベース部材31は、C型チャンネル状の床妻大梁12の下側フランジ12aと側板12bとに沿うことが可能なL字断面形状に形成されている。
受金具支持ブラケット32は、後述する小梁部材60を支持するための小梁受金具50(図8参照)を取り付けるためのブラケットで、ベース部材31から水平方向に突出されて溶接などにより一体に結合されている。この受金具支持ブラケット32は、一対の側板32a,32aと、これら側板32a,32aの上端を結ぶ上板32bとにより、逆U字断面形状に形成されている。
小梁支持ブラケット33は、後述する第2間仕切下床小梁22を支持するためのブラケットで、図11にも示すように、水平方向の支持板33aの両側から側板33b,33bを立ち上げて、上方に開口したU字断面形状に形成されている。
なお、この小梁支持ブラケット33は、前述した小梁支持ブラケット23と、水平方向で対向して配置されている。
【0025】
妻大梁補強部材30は、図7に示すように、床妻大梁12に結合する。この結合は、ベース部材31の複数箇所にあらかじめ下孔を開け、STロックなどと称される一方からの作業で締結できる締結具を用いるのが好ましい。なお、ベース部材31と床妻大梁12の下側フランジ12aとの間には、シート状のスペーサ39を介在させる(図6参照)。
【0026】
(桁梁補強部材取付作業)
桁梁補強部材取付作業は、図7に示すように、床桁大梁11,11に後述する小梁部材60を支持するための一対の桁大梁補強部材40を取り付ける作業である。
【0027】
桁大梁補強部材40は、金属製のベース部材41と3つの受金具支持ブラケット42,42,42とを備えている。
ベース部材41は、C型チャンネル状の床桁大梁11の下側フランジ11aと側板11bとに沿うことが可能なL字断面形状に形成されている。
受金具支持ブラケット42は、溶接などにより一体に結合されており、一対の側板42a,42aと、これら側板42a,42aの上端を結ぶ上板42bとにより、逆U字断面形状に形成されている。なお、一対の桁大梁補強部材40は、各受金具支持ブラケット42が、後述する小梁部材60の設置位置に応じ、床妻大梁12に沿う方向に対向して配置されている。
【0028】
この桁大梁補強部材40の床桁大梁11への結合は、ベース部材41の複数箇所にあらかじめ下孔を開け、STロックなどと称される一方からの作業で締結できる締結具を用いるのが好ましい。なお、ベース部材41と床桁大梁11の下側フランジ11aとの間には、シート状のスペーサ49を介在させる。
【0029】
(小梁受金具取付作業)
小梁受金具取付作業は、各補強部材30,40の受金具支持ブラケット32,42に、それぞれ、小梁部材60を支持するための小梁受金具50を取り付ける作業である。
【0030】
小梁受金具50は、図8に示すように、Z型鋼製のベース51の両側に側部フランジ52,52を立ち上げ、ベース51の上裏側と下表側とに箱状の上側受部53と下側受部54とが形成されている。
【0031】
すなわち、ベース51は、受金具支持ブラケット32,42の上板32b,42bの上面に被せられる上部フランジ51aと、この上部フランジ51aから略直角に折曲されて下方に延在された脚板51bと、この脚板51bの下端部から裏側の上部フランジ51aとは逆に表側に略直角に折曲されて後述する小梁部材を受け止める下部フランジ51cとを備えている。
側部フランジ52,52は、脚板51bの側端縁に結合されると共に、上部フランジ51aと下部フランジ51cとの両側縁に結合されている。
したがって、図8において拡大して示すように、小梁受金具50の脚板51bの表面側の下端部には、脚板51bと、下部フランジ51cと、その左右の側部フランジ52,52により箱状に囲まれた下側受部54が形成されている。
これと同様に、小梁受金具50の脚板51bの裏面側の上端部には、脚板51bと、上部フランジ51aと、その左右の側部フランジ52,52により箱状に囲まれた上側受部53が形成されている。
【0032】
このような小梁受金具50を、各補強部材30,40の受金具支持ブラケット32,42に取り付ける場合、図8において拡大して示しているように、上部フランジ51aを各受金具支持ブラケット32,42の上側から被せるようにして、各受金具支持ブラケット32,42の外周に上側受部53を装着して、締結材により締結して固定する。
【0033】
(小梁部材取付作業)
小梁部材取付作業では、図9に示す小梁部材60及び第2間仕切下床小梁22を、骨格部材10に取り付ける。
小梁部材60は、図10に示すように、金属製で長方形筒状に形成されている。さらに、3本の小梁部材60のうちで、床妻大梁12の近傍に設置される小梁部材60には、床妻大梁12の方向に突出した連結受具63が設けられている。
【0034】
各小梁部材60は、長手方向両端部を、小梁受金具50の下側受部54において下部フランジ51cの上に載置し、切欠部64の上方から、ボルトなどの締結具を用いて小梁受金具50に締結して固定される。
なお、床妻大梁12の近傍に設置される小梁部材60は、隣り合う小梁部材60と連結小梁65により連結される。
【0035】
また、第2間仕切下床小梁22は、小梁部材60と同様に、金属製で四角筒状に形成されており、長手方向両端部を、小梁支持ブラケット23,33に、ボルトなどの締結具を用いて結合される。
【0036】
(床根太取付作業)
床根太取付作業は、各間仕切下床小梁21,22と床桁大梁11及び床小梁13との間に第1付加根太24a及び第2付加床根太24bを掛け渡す作業である。
すなわち、第1付加根太24aは、既設の床根太14に接して配置されて、第1間仕切下床小梁21とこれに隣り合う床小梁13との間に掛け渡されて固定されている。
【0037】
また、第2間仕切下床小梁22も、第1間仕切下床小梁21と同様に、その上面に木桟22bが固定されている。そして、第2付加床根太24bは、第2間仕切下床小梁22と床桁大梁11との間に掛け渡されて固定されている。
【0038】
(床断熱材設置作業)
床断熱材設置作業は、床開口部16において、床面の下方位置に、図13に示すように板状の床断熱材71a,71bを設置する作業である。
【0039】
すなわち、本実施の形態では、床開口部16には、図15に示すように、新に、設置領域SUに隣り合って既設の床FLと同じ高さに連続するように付加された付加床AFLと、既設の床FLよりも低い位置の落とし込み床DFLと、を設置する。
【0040】
床断熱材71a,71bは、これらの落とし込み床DFLと付加床AFLとに設置する。
この設置にあたり、詳細な図示は省略するが、小梁部材60及び第2付加床根太24bから、その下面の高さに水平方向に支持材(図示省略)を延ばしておく。また、床断熱材71a,71bは、小梁部材60の間の空間、及び第2付加床根太24bの間の空間の平面形状に一致する形状に切断した上で、この空間内に配置し、前述した支持材(図示省略)によりその下面を支持するようにして設置する。
なお、板状の床断熱材71a,71bとしては、例えば、フェノール樹脂を発泡硬化させたものを用いる。
【0041】
(床材設置作業)
床材設置作業は、図14に示すように、落とし込み床DFLと付加床AFLとの位置(図15参照)及び第1間仕切壁W1及び第2間仕切壁W2(図16参照)の設置位置に、それぞれ、落とし込み床材15bと第1付加床材15c及び第2付加床材15dを設置する。
【0042】
すなわち、落とし込み床材15bは、小梁部材60に螺子止めし、第1付加床材15cは、第2付加床根太24bに螺子止めし、第2付加床材15dは、第1付加床根太24aに螺子止めする。
なお、第2付加床材15dは、第2間仕切壁W2を支持するための床材であって、第2間仕切壁W2の厚みと略同一の幅に形成されている、
(側部断熱材設置作業)
側部断熱材設置作業は、落とし込み床DFLの側面に、側部断熱材72を設置する作業である。
本実施の形態では、側部断熱材72として変形容易なグラスウールを用い、図15に示すように、落とし込み床DFLの側面の全周に亘って隙間無く敷き込み、図示を省略した鋲打機などを用いて針などの固定具により固定する。なお、この側部断熱材72は、気密性を有した接着テープにより上面を覆って気密性を確保するのが好ましい。
【0043】
(配管及び床材気密作業)
配管及び床材気密作業は、以上のようにして形成した落とし込み床DFLの必要箇所に穴を開けて配管を行い、第1付加床材15cの間の隙間や、配管による穴の隙間などを、接着テープ(図示省略)などによりシールして気密性を確保する作業である。
【0044】
(バスコア設置作業)
バスコア設置作業は、図16(b)に示すバスユニットBUを、落とし込み床DFLに設置する作業である。さらに、このバスユニットBUの設置に伴い、各間仕切下床小梁21,22の上方位置に、各間仕切壁W1,W2を設置する。
【0045】
この第2間仕切壁W2の設置状態で、付加床AFLは、図16(b)に示すように、浴室の外部の玄関スペースに含まれることになる。
【0046】
以上のようにして構成された実施の形態の建物の床構造は、建物ユニットUNの骨格を形成する骨格部材10において、床妻大梁12に沿う方向の全幅に亘って開口された床開口部16と、床開口部16に面して、床桁大梁11,11に取り付けられた桁大梁補強部材40及び床妻大梁12に取り付けられた妻大梁補強部材30と、桁大梁補強部材40及び妻大梁補強部材30により支持されて既設の床FLよりも低い位置に配置された小梁部材60と、床開口部16の端縁部に配置されて、床桁大梁11,11の間に架け渡された第1間仕切下床小梁21と、床開口部16において、既設の床FLよりも低い高さに配置され、かつ、床開口部16を床桁大梁11に沿う方向に横切って、妻大梁補強部材30と第1間仕切下床小梁21との間に架け渡された第2間仕切下床小梁22と、第2間仕切下床小梁22に支持され、床開口部16の一端部を覆って床桁大梁11に沿って既設の床FLに連続する付加床AFLを形成する第1付加床材15cとを備えていることを特徴とする建物の床構造である。
【0047】
また、第2間仕切下床小梁22は、長手方向の両端部が、妻大梁補強部材30と第1間仕切下床小梁21とに結合された小梁支持ブラケット23,33に支持されている。
さらに、第1付加床材15cの下側に、板状の床断熱材71bが設けられている。
そして、小梁部材60に落とし込み床材15bが支持されて、既設の床FLよりも低い位置に落とし込み床DFLが形成され、落とし込み床DFLの下側に、床断熱材71aが設けられ、落とし込み床DFLの側縁と、床桁大梁11,11及び床妻大梁12との間に、側部断熱材72が設けられている。
また、床開口部16を通して小梁部材60に、バスユニットBUが支持されている。
【0048】
以上のように構成された実施の形態の建物の床構造は、以下に列挙する効果を有している。
a)建物の床FLに床開口部16を設けて落とし込み床DFLを形成した床構造において、床開口部16の一部に付加床AFLを設定したため、床開口部16の一部のみを落とし込み床DFLとした設定が可能となった。
したがって、床開口部16の全体を落とし込み床とするもののみの場合と比較して、設計自由度が向上する。
具体的には、落とし込み床DFLに落とし込みタイプのバスユニットBUを設置する場合、設置するバスユニットBUの大きさの自由度が広がる。加えて、付加床AFLは、実施の形態で示したように、バスユニットBUを設置する建物ユニットUNの外部の玄関スペースと繋げて使用することも可能となり、この点でも設計自由度が向上する。
【0049】
b)第1間仕切壁W1及び第2間仕切壁W2の設置位置には、その下方に第1間仕切下床小梁21及び第2間仕切下床小梁22を設置しているため、各間仕切壁W1,W2に対する十分な支持強度を確保することができる。しかも、両間仕切下床小梁21,22は、骨格部材10の床桁大梁11,11及び床妻大梁12に、直接あるいは間接的に結合しているため、両間仕切下床小梁21,22による支持強度も確保できる。
【0050】
c)付加床AFLの端部であって、第1間仕切壁W1を支持する第2間仕切下床小梁22は、床開口部16の端部に配置され、かつ、金属製で強度を有した妻大梁補強部材30と第1間仕切下床小梁21とに結合された小梁支持ブラケット33,23により支持するようにした。このため、第2間仕切下床小梁22による支持強度を確保できる。
【0051】
d)床開口部16に設けた床である落とし込み床DFL及び付加床AFLには、それぞれ落とし込み床材15b及び第1付加床材15cの下面に床断熱材71a,71bを設置した。このため、浴室のみならず、建物ユニットUNの断熱性を確保できる。
加えて、落とし込み床DFLには、その側面部分である落とし込み床材15bと、各大梁11,11,12及び第1間仕切下床小梁21との間に、側部断熱材72を設けた。このため、建物ユニットUNと外部との間に、各断熱材71a,71b,72が敷き詰められて、さらに断熱性に優れたものとすることができる。
【0052】
e)小梁部材60を、各大梁11,12よりも低い位置で支持するための小梁受金具50は、各補強材30,40において、水平方向に突出させた受金具支持ブラケット32,42に支持させるようにした。
このため、各大梁11,12の下方にコンクリート製などの基礎が存在する場合も、小梁受金具50及び小梁部材60を、基礎と干渉すること無くその内側に配置することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0054】
例えば、実施の形態では、建物として建物ユニットを結合させて形成したユニット建物を例示したが、建物としては、ユニット建物以外の建物にも適用することができる。
【0055】
また、実施の形態では、落とし込み床にバスユニットを設置した例を示したが、バスユニットを設置するものに限定されず、例えば、リビングなど住居空間のバリエーションとして床の一部に落とし込み床を形成するのに適用してもよい。
【0056】
また、第1間仕切下床小梁は、既設の床の端縁部の下側に設置してもよく、この場合、第2付加床材の設定は不要となる。
【0057】
また、小梁部材は、その形状や数は、実施の形態で示したものに限定されず、任意に設定してよい。
【0058】
また、第1及び第2下床小梁として、間仕切壁の下方に配置される第1及び第2間仕切下床小梁を示したが、これら各下床小梁は、既設の床の端縁あるいは、付加床材を支持するものであれば、間仕切壁を支持しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 骨格部材
11 床桁大梁
12 床妻大梁
15 床材
15b 落とし込み床材
15c 第1付加床材
16 床開口部
21 第1間仕切下床小梁(第1下床小梁)
22 第2間仕切下床小梁(第2下床小梁)
23 小梁支持ブラケット
30 妻大梁補強部材
33 小梁支持ブラケット
40 桁大梁補強部材
50 小梁受金具
60 小梁部材
71a 床断熱材
71b 床断熱材
72 側部断熱材
AFL 付加床
BU バスユニット
DFL 落とし込み床
FL 床
H ユニット建物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の骨格を形成する骨格部材に設けられ、床の四周に設置された一対の床妻大梁及び一対の床桁大梁と、
前記床において、前記一対の床妻大梁の一方から前記床桁大梁に沿う方向の前記床の一部であって、前記床妻大梁に沿う方向の全幅に亘って開口された床開口部と、
前記床開口部に面して、前記一対の床桁大梁に取り付けられた桁大梁補強部材及び前記床妻大梁に取り付けられた妻大梁補強部材と、
前記桁大梁補強部材及び前記妻大梁補強部材により支持されて前記床よりも低い位置に配置された小梁部材と、
前記床開口部の前記既設の床側の端縁部において前記床桁大梁の間に架け渡された第1下床小梁と、
前記床開口部において、前記既設の床よりも低い高さに配置され、かつ、前記床開口部を前記床桁大梁に沿う方向に横切って前記妻大梁補強部材と前記第1下床小梁との間に架け渡された第2下床小梁と、
前記床開口部の一部を覆って前記第2下床小梁に支持され、前記床桁大梁に沿う方向に前記既設の床に連続する付加床を形成する付加床材と、
を備えていることを特徴とする建物の床構造。
【請求項2】
前記第2下床小梁は、長手方向の両端部が、前記妻大梁補強部材と前記第1下床小梁とにそれぞれ結合された小梁支持ブラケットに支持されていることを特徴とする請求項1に記載の建物の床構造。
【請求項3】
前記付加床材の下側に、床断熱材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建物の床構造。
【請求項4】
前記小梁部材に落とし込み床材が支持されて、前記床よりも低い位置に落とし込み床が形成され、
前記落とし込み床材の下側に、床断熱材が設けられ、
前記落とし込み床の側縁と、前記床桁大梁及び床妻大梁との間に、側部断熱材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建物の床構造。
【請求項5】
前記床開口部を通して前記小梁部材に、バスユニットが支持されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の建物の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−28972(P2013−28972A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166227(P2011−166227)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)