説明

建物の耐震診断方法および装置

【課題】建物が地震等の外力を受けた際に、建物のどの部分の耐震性が低下しているのかを容易に知ることができる建物の耐震診断方法および装置を提供する。
【解決手段】建物20を複数に分けた各仮想ブロックB内にある構造材にそれぞれ設置された三軸加速度センサS(S1〜S27)と、各三軸加速度センサSが接続され、外力によって建物20が変位した際に、各三軸加速度センサSからの検出信号によって、各仮想ブロックB内にある構造材の変位をそれぞれ測定し、これら測定された測定値と、予め設定された各仮想ブロックB内にある構造材の変位許容値とに基づいて、建物20の耐震性を診断する測定診断部とを備えているので、建物が地震等の外力を受けた際に、建物20のどの部分の耐震性が低下しているのかを容易に知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の耐震診断方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に行われている建物の耐震性の診断方法においては、目視調査を中心に耐力壁の壁量などから耐震性を判定することが多く、その調査手法そのものが、調査の範囲が限定されたり、部分的な要素調査から建物全体の耐震性評価をすることの限界を有しており、耐震性の診断についても信頼性の低いものであった。
また、建物の耐震診断方法の一例として、特許文献1に記載のものが知られている。この耐震診断方法は、建物の微動を測定して得られる振動データを解析して該建物の固有振動数を算出すると共に、該建物の構造に関する建物情報及び建物の壁要素の微動剛性に関する壁要素情報に基づいて該建物の重量及び微動剛性を算出し該重量及び該微動剛性から該建物の固有振動数を推定し、前記振動データに基づき算出した前記固有振動数と、前記建物情報及び前記壁要素情報に基づき推定した前記固有振動数とを比較することにより、前記建物の耐震性を診断するものである。
【特許文献1】特開2003−41781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記建物の耐震診断方法では、建物の耐震性を診断することはできるが、建物のどの部分の耐震性が低下しているのか、つまり、地震等の外力によって建物の構造材が変位したり、破損した場合に、建物のどの部分がそうなっているのかを知ることは困難である。したがって、建物の耐震性を回復させるのに、どの部分を修復したり補強したりすればよいか、また、修復等をしなくても十分に耐震性を有しているかを容易に知ることはできなかった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、建物が地震等の外力を受けた際に、建物のどの部分の耐震性が低下しているのかを容易に知ることができる建物の耐震診断方法および装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図3に示すように、建物20が複数の仮想ブロックB(B1〜B27)に分けられ、各仮想ブロックB内にある構造材にそれぞれ設置された三軸加速度センサS(S1〜S27)と、
前記各三軸加速度センサSが接続され、外力によって建物20が変位した際に、前記各三軸加速度センサSからの検出信号によって、各仮想ブロックB内にある構造材の変位をそれぞれ測定し、これら測定された測定値と、予め設定された各仮想ブロックB内にある構造材の変位許容値とに基づいて、建物20の耐震性を診断する測定診断部とを備えていることを特徴とする。
【0006】
ここで、建物20の耐震性を診断する場合、例えば、前記測定値と前記変位許容値とを比較して、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した三軸加速度センサが設置された構造材を有する仮想ブロック内の耐震性が低下していると診断する。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、外力によって建物20が変位した際に、三軸加速度センサSからの検出信号によって、各仮想ブロックB内にある構造材の変位を測定診断部がそれぞれ測定し、これら測定値と、前記各仮想ブロックB内にある構造材の変位許容値とに基づいて、建物の耐震性を前記測定診断が診断するので、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した三軸加速度センサSが設置された仮想ブロックBおよび構造材を知ることができる。したがって、建物が地震等の外力を受けた際に、建物20のどの部分の耐震性が低下しているのかを容易に知ることができる。
また、測定診断部によって、各仮想ブロックB内にある構造材の変位量を測定できるので、この構造材の耐震性の低下量を知ることができ、建物20の耐震性を回復させるための修復等を効率的に行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物の耐震診断装置において、
前記測定診断部は、前記変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した前記三軸加速度センサSが設置された構造材を有する仮想ブロックBの位置を、表示部4に表示させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、建物20が外力によって変位した際に、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した三軸加速度センサSが設置された構造材を有する仮想ブロックBの位置が表示部4に表示されるので、建物20のどの部分の耐震性が低下しているのかを視覚的に知ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の建物の耐震診断装置において、
前記測定診断部は、前記測定値が前記変位許容値を超えた際に、警告部(例えばスピーカ6、表示部4)から警告せしめることを特徴とする
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、建物20が外力によって変位した際に、前記測定値が前記変位許容値を超えた際に、警告部が警告するので、建物20の耐震性が低下しているのを素早く知ることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、建物20を複数の仮想ブロックB(B1〜B27)に分け、各仮想ブロックB内にある構造材にそれぞれ三軸加速度センサS(S1〜S27)を設置しておき、
外力によって建物20が変位した際に、前記三軸加速度センサSからの検出信号によって、各仮想ブロックB内にある構造材の変位をそれぞれ測定し、
これら測定値と、前記各仮想ブロックB内にある構造材の変位許容値とに基づいて、建物20の耐震性を診断することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した三軸加速度センサSが設置された仮想ブロックBおよび構造材を知ることができるので、建物20が地震等の外力を受けた際に、建物20のどの部分の耐震性が低下しているのかを容易に知ることができる。
また、各仮想ブロックB内にある構造材の変位量を測定できるので、この構造材の耐震性の低下量を知ることができ、建物の耐震性を回復させるための修復等を効率的に行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の建物の耐震診断方法において、
前記変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した前記三軸加速度センサSが設置された構造材を有する仮想ブロックBの位置を表示することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、建物20が外力によって変位した際に、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した三軸加速度センサSが設置された構造材を有する仮想ブロックBの位置を表示するので、建物20のどの部分の耐震性が低下しているのかを視覚的に知ることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の建物の耐震診断方法において、
前記測定値が前記変位許容値を超えた際に、警告することを特徴とする
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、建物20が外力によって変位した際に、前記測定値が前記変位許容値を超えた際に、警告するので、建物の耐震性が低下しているのを素早く知ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外力によって建物が変位した際に、三軸加速度センサからの検出信号によって、各仮想ブロック内にある構造材の変位を測定診断部がそれぞれ測定し、これら測定値と、前記各仮想ブロック内にある構造材の変位許容値とに基づいて、建物の耐震性を前記測定診断が診断するので、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した三軸加速度センサが設置された仮想ブロックおよび構造材を知ることができる。したがって、建物が地震等の外力を受けた際に、建物のどの部分の耐震性が低下しているのかを容易に知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る建物の耐震診断装置(以下、耐震診断装置と略称する。)を示すブロック図である。この耐震診断装置は、CPU(Central Processing Unit)1と、RAM(Random Access Memory)2と、入力部3と、表示部4と、記憶装置5と、スピーカ6と、接続部7とを備え、それらはバス8や各種インターフェースを介して接続されている。さらに、耐震診断装置は、複数の三軸加速度センサ(以下、加速度センサという。)S・・・を備えており、これら加速度センサS・・・は接続部7にそれぞれ接続されている。
【0020】
CPU1は、記憶装置5に格納されているシステムプログラム、各種アプリケーションプログラム、入力部3から入力される各種指示信号、加速度センサS・・・から接続部6を介して入力される検出信号等をRAM2に格納し、この指示および検出信号に応じてRAM2内に展開したアプリケーションプログラムに従って各種処理を実行し、その処理結果をRAM2に一時的に格納する。また、CPU1は、一部或いは全部の処理結果情報を、記憶装置5に記憶させるようになっている。
記憶装置5は、プログラムやデータ等が予め記憶されたハードディスク装置であり、このハードディスク装置のハードディスクには、プログラム記憶部5a、建物情報記憶部5b、変位許容値記憶部5c、測定値記憶部5d等が設けられている。
【0021】
前記複数の加速度センサS・・・は、それぞれX方向、Y方向、Z方向の3軸方向の傾きを測定可能なものであり(図3参照)、建物20の所定の位置に設置されている。
すなわちまず、図2および図3に示すように、建物20は複数の仮想ブロックBに分けられている。具体的には建物20は、27個の立方体状の仮想ブロックB1〜B27に分けられている。仮想ブロックB(B1〜B27)は、建物20を仮想的に分けてなるものであり、平面視において縦横にそれぞれ3個、高さ方向に3個の合計27個の等しい大きさの仮想ブロックB1〜B27に分けられている。
【0022】
一方、加速度センサSは、前記仮想ブロックBの数だけあり、つまり27個あり、それぞれ加速度センサS1〜S27となっている。加速度センサS1〜S27は、図3に示すように、それぞれ前記仮想ブロックB1〜B27に設置されている。つまり、各仮想ブロックBに一つずつ加速度センサSが設置されている。
加速度センサSを仮想ブロックBに設置する場合、仮想ブロックB内にある構造材に加速度センサSを接着剤等によって取り付けることにより行う。構造材としては、例えば、柱、梁、壁(特に耐力壁)等が挙げられ、これら柱、梁、壁等に取り付ける。
【0023】
建物が図4に示すように、在来の木造軸組工法によるものであれば、加速度センサSは、柱pや梁bに取り付ける。この場合、図8(a)に示すように、仮想ブロックB内にある柱pと梁bの交差部に加速度センサSを取り付ける。建物が地震等の外力を受けると、柱pと梁bの交差部に力が集中し、この部分の変位(傾き)が大きくなるので、この部分に加速度センサSを取り付ける。
また、建物が図5に示すように、パネル工法によるものであれば、加速度センサSは、耐力壁を構成する壁パネルwpや床パネルfpに取り付ける。この場合、図8(b)に示すように、仮想ブロックB内にある壁パネルwpと床パネルfpの交差部の中央に加速度センサSを取り付ける。建物が地震等の外力を受けると、壁パネルwpと床パネルfpの交差部の中央に力が集中し、この部分の変位(傾き)が大きくなるので、この部分に加速度センサSを取り付ける。
また、建物が図6に示すように、ツーバイフォー工法によるものであれば、加速度センサSは、壁内の柱pや、床内の根太n等に取り付ける。
また、建物が図7に示すように、軽量鉄骨による軸組工法によるものであれば、加速度センサSは、柱pや梁bに取り付ける。
【0024】
前記仮想ブロックB1〜B27は、それらに番号(例えばB1〜B27)が付与されたうえで、これらの番号に、仮想ブロックB1〜B27の位置情報が対応付けられて、仮想ブロック情報として前記建物情報記憶部5bに記憶されている。仮想ブロックB1〜B27の位置情報としては、例えば、建物20が27個の仮想ブロックBに分けられているので、各仮想ブロックBの中心点を三次元(X軸、Y軸、Z軸)座標の座標値として与えればよい。
また、前記加速度センサS1〜S27は、それらに番号(例えばS1〜S27)が付与されたうえで、これらの番号に、仮想ブロックB1〜B27の番号がそれぞれ対応付けられ、さらに、加速度センサS1〜S27が取り付けられた各構造材には、例えば、K1〜K27の番号が付与され、加速度センサS1〜S27の番号に、構造材の番号(K1〜K27)が対応付けられて、加速度センサ情報として前記建物情報記憶部5bに記憶されている。
さらに、構造材には各仮想ブロックB1〜B27内における位置情報が三次元(X軸、Y軸、Z軸)座標の座標値として付与されるとともに、構造材の種類(柱、梁、壁等)名が付与されている。
したがって、外力によって建物が変位して、構造材の変位(傾き)を加速度センサSが検知した場合、この検知した加速度センサSが設置されている仮想ブロックBの位置や、構造材の種類名、位置が分るようになっている。
【0025】
また、耐震診断装置は、測定診断部を備えている。この測定診断部は、CPU1と、RAM3と、プログラム記憶部5aに記憶されている測定診断プログラムとによって構成されている。
測定診断プログラムは、前記加速度センサS1〜S27からの検出信号に基づいて、仮想ブロックB1〜B27内にある構造材の変位をそれぞれ測定(算出)する処理を行うようになっている。なお、この構造材の情報は、前記仮想ブロックB1〜B27の番号に対応付けられて、前記建物情報記憶部5bに記憶されている。構造材の情報としては、柱、梁、壁の種類や機械的強度等がある。
また、各仮想ブロックB内にある構造材の変位許容値が、前記仮想ブロックB1〜B27の番号に対応付けられて、前記変位許容値記憶部5cに記憶されている。構造材の変位許容値は、構造材の材質、種類、大きさ等や、建物の建築工法等によって異なる。このような変位許容値は、前記入力部3から入力されて、前記変位許容値記憶部5cに記憶されている。
前記測定された測定値は、前記仮想ブロックB1〜B27の番号に対応付けられて、測定値記憶部5dに記憶されている。
また、前記測定診断プログラムは、前記測定された測定値と、予め設定された各仮想ブロックB1〜B27内にある構造材の変位許容値とを比較する処理を行うようになっている。
【0026】
また、前記測定診断部は、前記変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した加速度センサSが設置された構造材を有する仮想ブロックBの位置、つまり大きく変位または破損した構造材を有する仮想ブロックBの位置や構造材の位置や種類を表示部4に表示させるようになっている。この表示部4は、例えば、液晶ディスプレイ、プリンタ等によって構成されている。表示部4に、大きく変位または破損した構造材を有する仮想ブロックB(以下、異常仮想ブロックという)の位置を表示する場合、例えば、液晶ディスプレイに、図2に示すような、仮想ブロック分けされた建物を表示するとともに、異常仮想ブロックBを透明な赤色に着色するようにすればよい。また、建物の内部に異常仮想ブロックBがある場合、仮想ブロック分けされた建物を水平面または垂直面で分割した断面図を表示し、異常仮想ブロックBを透明な赤色に着色するようにすればよい。また、大きく変位または破損した構造材を表示部4に表示する場合、前記透明な赤色に着色された仮想ブロック内に、この構造材を表示すればよい。
【0027】
さらに、前記測定診断部は、前記測定値が前記変位許容値を超えた際に、警告部から警告せしめるようになっている。警告部としては、例えば、前記バス8に接続されたスピーカ6や、前記表示部4等によって構成されている。警告部がスピーカ6の場合は、スピーカ6から警告音が発せられ、また、警告部が表示部4の場合は、表示部4に警告文字を表示したり、警告色を点滅させたりする。
【0028】
次に、上記構成の耐震診断装置を使用した、建物の耐震診断方法について説明する。
まず、各仮想ブロックB(B1〜B27)内にある構造材に設置した加速度センサS(S1〜S27)のゼロポイントを設定する。これは、耐震診断装置の表示部4に、構造材に設置した状態における加速度センサS(S1〜S27)の初期の傾きが表示されるので、この初期の傾きを「ゼロ」として補正するものであり、補正する場合、入力部3のテンキー等から「0」を入力することによって行う。
【0029】
そして、常時、加速度センサS(S1〜S27)からの検出信号を検出していき、この検出信号によって、各仮想ブロックB(B1〜B27)内にある構造材の変位(傾き)をそれぞれ、前記測定診断部によって測定し、その測定値を前記測定値記憶部5dに記憶していく。
検出信号を検出する場合、一定時間間隔で検出していくことによって、構造材の傾きを一定時間間隔で測定する。これによって、各仮想ブロックB(B1〜B27)内にある構造材の傾きの経時変化を検出することができる。
この構造材の傾きの経時変化は、例えば、プログラム記憶部5aに記憶されているグラフ化プログラムによってグラフ化されて、表示部4に表示できるとともに、測定値記憶部5dにも記憶される。
なお、建物は、地震等の大きな外力の他に、風や交通振動によっても外力を受けるので、この外力によって、建物が微動し、この結果、構造材が若干傾き、これを加速度センサSによって検出していき、構造材の傾きの経時変化としてグラフ化され、表示部4に表示される。
【0030】
建物が地震によって大きな外力を受けると、上記と同様にして、加速度センサS(S1〜S27)からの検出信号によって、各仮想ブロックB(B1〜B27)内にある構造材の変位(傾き)をそれぞれ、前記測定診断部によって測定し、その測定値を前記測定値記憶部5dに記憶していく。
次に、これら測定値と、各仮想ブロックB(B1〜B27)内にある構造材の変位許容値とに基づいて、建物の耐震性を診断する。つまり、地震中に測定した各仮想ブロックB(B1〜B27)内にある構造材の変位(傾き)のうちの、最大変位量(測定値)と、前記変位許容値記憶部5cに記憶されている各構造材の変位許容値とを比較する。
そして、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した加速度センサSが設置された構造材を有する仮想ブロック(異常仮想ブロック)Bの位置を表示すとともに、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した加速度センサSが設置された構造材を有する仮想ブロック(異常仮想ブロック)B内の耐震性が低下していると診断する。
異常仮想ブロックBの位置を表示する場合、例えば上述したように、液晶ディスプレイに、図2に示すような、仮想ブロック分けされた建物を表示するとともに、異常仮想ブロックBを透明な赤色に着色するようにすればよい。
また、測定値が前記変位許容値を超えた際は、前記スピーカ6や表示部4等によって警告する。この場合、例えば上述したように、スピーカ6から警告音が発せられたり、また、表示部4に警告文字を表示したり、警告色を点滅させたりする。
【0031】
さらに、地震時における測定値を測定値記憶部5dに記憶しているので、この測定値に基づいて、傾いた構造材を建物とともに前記表示部4に表示することによって、変形した建物を表示できる。つまり、構造材の傾きのデータ全体から建物の変形を算出して、この変形した建物を表示部4に表示する。
【0032】
本実施の形態によれば、地震等の外力によって建物が変位した際に、加速度センサSからの検出信号によって、各仮想ブロックB内にある構造材の変位を測定診断部がそれぞれ測定し、これら測定値と、各仮想ブロックB内にある構造材の変位許容値とに基づいて、建物の耐震性を測定診断が診断するので、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した加速度センサSが設置されたブッロクBおよび構造材を知ることができる。したがって、建物が地震等の外力を受けた際に、建物のどの部分の耐震性が低下しているのかを容易に知ることができる。
また、測定診断部によって、各仮想ブロックB内にある構造材の変位量(傾斜角)を測定できるので、その構造材の耐震性の低下量を知ることができ、建物の建物の耐震性を回復させるための修復等を効率的に行うことができる。
【0033】
また、建物が地震等の外力によって変位した際に、変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した加速度センサSが設置された構造材を有する仮想ブロックBの位置が表示部4に表示されるので、建物のどの部分の耐震性が低下しているのかを視覚的に知ることができる。
さらに、建物が地震等の外力によって変位した際に、測定値が変位許容値を超えた際に、スピーカ6や表示部4が警告するので、建物の耐震性が低下しているのを素早く知ることができる。
【0034】
また、このような耐震診断装置を、所定の区域内にあるほとんどの建物に装着することによって、各建物の変位量を知ることができるので、地震波の解析等にも役立つものとなる。
【0035】
なお、本発明では、建物を27個の仮想ブロックに分けたが、耐震診断をさらに精密に行うために、建物をさらに多くの仮想ブロックに分けてもよいし、多くの仮想ブロックに分けるとともに、各仮想ブロックの構造材に複数の加速度センサSを取り付けてもよい。
このようにすれば、地震等の外力によって変位または破損した部分を細かく絞り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る建物の耐震診断装置の一例を示すもので、その仮想ブロック図である。
【図2】同、建物を複数の仮想ブロックに分けた状態を示す斜視図である。
【図3】同、建物を複数の仮想ブロックに分けた状態を加速度センサとともに示す模式図である。
【図4】同、本発明に係る耐震診断装置を装着する、在来の木造軸組工法による建物の骨組を示す斜視図である。
【図5】同、本発明に係る耐震診断装置を装着する、パネル工法による建物の骨組を示す斜視図である。
【図6】同、本発明に係る耐震診断装置を装着する、ツーバイフォー工法による建物の骨組を示す斜視図である。
【図7】同、本発明に係る耐震診断装置を装着する、軽量鉄骨軸組工法による建物の骨組を示す斜視図である。
【図8】同、加速度センサを取り付ける位置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
1 CPU
2 RAM
3 入力部
4 表示部
5 記憶装置
6 スピーカ
7 接続部
20 建物
S(S1〜S27) 三軸加速度センサ
B(B1〜B20) 仮想ブロック
p 柱(構造材)
b 梁(構造材)
wp 壁パネル(構造材)
fp 床パネル(構造材)
n 根太(構造材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物が複数の仮想ブロックに分けられ、各仮想ブロック内にある構造材にそれぞれ設置された三軸加速度センサと、
前記三軸加速度センサが接続され、外力によって建物が変位した際に、前記各三軸加速度センサからの検出信号によって、各仮想ブロック内にある構造材の変位をそれぞれ測定し、これら測定された測定値と、予め設定された各仮想ブロック内にある構造材の変位許容値とに基づいて、建物の耐震性を診断する測定診断部と、
を備えていることを特徴とする建物の耐震診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建物の耐震診断装置において、
前記測定診断部は、前記変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した前記三軸加速度センサが設置された構造材を有する仮想ブロックの位置を、表示部に表示させることを特徴とする建物の耐震診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建物の耐震診断装置において、
前記測定診断部は、前記測定値が前記変位許容値を超えた際に、警告部から警告せしめることを特徴とする建物の耐震診断装置。
【請求項4】
建物を複数の仮想ブロックに分け、各仮想ブロック内にある構造材にそれぞれ三軸加速度センサを設置しておき、
外力によって建物が変位した際に、前記三軸加速度センサからの検出信号によって、各仮想ブロック内にある構造材の変位をそれぞれ測定し、
これら測定値と、前記各仮想ブロック内にある構造材の変位許容値とに基づいて、建物の耐震性を診断することを特徴とする建物の耐震診断方法。
【請求項5】
請求項4に記載の建物の耐震診断方法において、
前記変位許容値を超えた測定値に対応する検出信号を出力した前記三軸加速度センサが設置された構造材を有する仮想ブロックの位置を表示することを特徴とする建物の耐震診断方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の建物の耐震診断方法において、
前記測定値が前記変位許容値を超えた際に、警告することを特徴とする建物の耐震診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−127764(P2010−127764A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302642(P2008−302642)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000137649)株式会社ミサワホーム総合研究所 (4)
【Fターム(参考)】