説明

建物の配管構造及び建物の配管構築方法

【課題】媒体搬送管をスムーズに挿通することができる建物の配管構造4を提供する。
【解決手段】建物に配置されて媒体を搬送する媒体搬送管11−14と、媒体搬送管11−14を保護する保護管2と、を備える建物の配管構造4である。
そして、保護管2には保護管2より小径かつ媒体搬送管11−14より大径のさや管31−34が挿通されており、さや管31−34に媒体搬送管11−14が挿通されている。
さらに、建物5は、上階部70及び下階部80を有しており、下階部80には床81から天井82まで達する配管用空間A1が設けられるとともに、配管用空間A1に下階部80の床81から上階部70の床71まで貫通する保護管2が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の配管構造及び建物の配管構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の内部に給水、給湯、空調用冷媒管などの媒体搬送管を設置するために、様々な構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上階住戸用の空調室内機と下階住戸の屋外に設けられた空調室外機とを結ぶ冷媒管を、パイプスペースを上下に貫通している保護管内に通す建物の配管構造が開示されている。
【0004】
この構成によれば、下階居室内に作業者が立ち入ることなく、上階居室及び屋外からの作業によって上階居室用の空調室内機の冷媒管等の取り付け及び取外しが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−170381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の構成は、保護管に冷媒管やドレン管などの媒体搬送管を直接に収容するものであるため、保護管の内部で媒体搬送管が引っ掛かってスムーズに挿通できない可能性があった。特に、媒体搬送管が多くなると、媒体搬送管どうしが絡まったり擦れ合ったりしてスムーズに挿通することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、媒体搬送管をスムーズに挿通することができる建物の配管構造と、この建物の配管構造を構築する建物の配管構築方法と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の建物の配管構造は、建物に配置されて媒体を搬送する媒体搬送管と、前記媒体搬送管を保護する保護管と、を備える建物の配管構造であって、前記保護管には前記保護管より小径かつ前記媒体搬送管より大径のさや管が挿通されており、前記さや管に前記媒体搬送管が挿通されることを特徴としている。
【0009】
加えて、前記保護管には、複数の前記さや管が挿通されるとともに、前記さや管のそれぞれに、前記媒体搬送管が挿通される構成とすることができる。
【0010】
また、前記建物は、上階部及び下階部を有しており、前記下階部には床から天井まで達する配管用空間が設けられるとともに、前記配管用空間に、前記下階部の床から前記上階部の床まで貫通する前記保護管が設置される構成とすることができる。
【0011】
さらに、前記さや管は、屈曲可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
そして、前記保護管は、前記下階部の床から天井までの高さより短い下管部と、前記下管部の上に継手を介して接続される上管部と、を有する構成とすることができる。
【0013】
また、本発明の建物の配管構築方法は、上記の建物の配管構造を構築する建物の配管構築方法であって、前記下階部の床に設けた取付孔に前記下管部の下部を挿入しつつ立設する下管部設置工程と、前記上階部から前記上階部の床及び前記下階部の天井に設けた取付孔を通じて前記下管部の上に継手を介して前記上管部を接続する上管部設置工程と、前記上管部及び前記下管部が接続されて構成された前記保護管に前記上階部から前記さや管を挿通するさや管設置工程と、前記さや管に前記上階部から前記媒体搬送管を挿通する媒体搬送管設置工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の建物の配管構造は、媒体搬送管と保護管とを備える建物の配管構造であって、保護管には保護管より小径かつ媒体搬送管より大径のさや管が挿通されており、さや管に媒体搬送管が挿通されている。
【0015】
したがって、媒体搬送管ごとに個別に配置されたさや管によって各媒体搬送管を案内することができるため、保護管に媒体搬送管を挿通する際に、スムーズに媒体搬送管を挿通することができる。
【0016】
加えて、保護管に複数のさや管が挿通されるとともに、さや管のそれぞれに媒体搬送管が挿通されることで、媒体搬送管が複数ある場合でも、それぞれのさや管に挿通されるため、整列された状態でスムーズに挿通することができる。
【0017】
また、建物は上階部及び下階部を有しており、下階部には床から天井まで達する配管用空間が設けられるとともに、配管用空間に下階部の床から上階部の床まで貫通する保護管が設置されることで、下階部に立ち入ることなく上階部の媒体搬送管を維持・管理できる。
【0018】
さらに、さや管は屈曲可能に構成されていることで、建物の構造部分を構築した後にさや管を設置できるようになるため、下階部から上階部にわたって継目のないさや管を用いることができる。
【0019】
そして、保護管は、下階部の床から天井までの高さより短い下管部と、下管部の上に継手を介して接続される上管部と、を有することで、建物の構造部分を構築した後に、下階部から上階部まで貫通する保護管を設置できる。
【0020】
また、本発明の建物の配管構築方法は、上記の建物の配管構造を構築する建物の配管構築方法であって、下階部の床に設けた取付孔に下管部の下部を挿入しつつ立設する下管部設置工程と、上階部の床及び下階部の天井に設けた取付孔を通じて下管部の上に継手を介して上管部を接続する上管部設置工程と、上管部及び下管部が接続されて構成された保護管に上階部からさや管を挿通するさや管設置工程と、さや管に上階部から媒体搬送管を挿通する媒体搬送管設置工程と、を備えている。
【0021】
このため、建物の構造部分を構築した後であっても、保護管とさや管と媒体搬送管とを設置できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の建物の配管構造の構成を説明する斜視図である。
【図2】建物の全体構成を説明する説明図である。
【図3】本発明の建物の配管構造の構成を説明する断面図である。
【図4】キャップの構成を説明する正面図である。(a)はさや管の径が等しい場合であり、(b)はさや管の径が異なる場合である。
【図5】建物の配管構築方法を説明する説明図である。(a)は下管部設置工程であり、(b)は上管部設置工程である。
【図6】建物の配管構築方法を説明する説明図である。(a)はさや管設置工程であり、(b)は媒体搬送管設置工程である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0024】
まず、図2を用いて本発明の建物の配管構造4を備える建物としてのユニット建物5の全体構成を説明する。
【0025】
本発明の建物の配管構造4を備える建物としてのユニット建物5は、図2に示すように、基礎部及び下階部80の床81で囲まれた床下部90と、基礎の上に設置された下階部80と、下階部80の上に設置された上階部70と、を備えている。
【0026】
このユニット建物5は、工場で製作される複数の建物ユニットをトレーラ等で現場まで運搬し、クレーンによって基礎部の上に並べて設置することで構築される。
【0027】
なお、各建物ユニットは、建物の構造体として、矩形の頂点に配置された4本の柱と、この柱の下端間を連結した4本の床梁と、この柱の上端間を連結した4本の天井梁と、からなる骨組み構造体を備えている。
【0028】
そして、下階部80は、床81と天井82と壁によって形成されており、この床81及び天井82には、保護管2の外径よりもやや大きい径の取付孔81a,82aが設けられている。
【0029】
同様に、上階部70は、床71と天井72と壁によって形成されており、この床71には、保護管2の外径よりもやや大きい径の取付孔71aが設けられている。
【0030】
さらに、このユニット建物5は、集合住宅として構成されており、上階部70と下階部80のそれぞれに風呂73,83、図示しないキッチン、トイレ、洗面所などが配置されている。
【0031】
したがって、上階部70に給水・給湯等するために、他者が居住する下階部80を通過するようにして媒体搬送管を設置する必要が生じてくる。このため、下階部80及び上階部70には、共用スペースである配管用空間A1,A2が形成されている。
【0032】
この配管用空間A1,A2は、上階部70及び下階部80それぞれの洗面台の背面側に形成されているもので、壁によって居住空間と隔てられている。そして、この壁には媒体搬送管のメンテナンス用に開閉可能な点検口が設けられている。
【0033】
そして、本実施例の建物の配管構造4は、図1,3に示すように、建物に配置される媒体搬送管としての給水管11、給湯管12、風呂の追焚用の行き管13及び戻り管14と、これらの複数の媒体搬送管を収容して保護する保護管2と、を備える建物の配管構造4である。
【0034】
さらに、この保護管2には保護管2よりも小径でかつ媒体搬送管よりも大径のさや管31,32,33,34が挿通されており、このさや管31,32,33,34にそれぞれの媒体搬送管が挿通されている。
【0035】
この保護管2は、硬質塩化ビニルなどの難燃性の合成樹脂によって円筒状に形成されるもので、上端を塞ぐキャップ21と、600mm程度の長さの上管部22と、上管部22と下管部24を連結する継手23と、2400mm程度の長さの下管部24と、下端を塞ぐキャップ25と、を備えて構成されており、全体として下階部80の床81から上階部70の床71まで貫通する長さに形成されている。
【0036】
キャップ21,25は、硬質塩化ビニルなどの難燃性の合成樹脂によって円筒容器状に形成されるもので、底板部には媒体搬送管を挿通するための挿通孔21a−21dが媒体搬送管と同数又は同数以上設けられている。
【0037】
そして、保護管2に収容される各媒体搬送管の径が等しい場合には、図4(a)に示すように、挿通孔21a−21dはすべて同じ大きさに形成されて、90度ずつ回転した位置に均等に配置される。
【0038】
一方、保護管2に収容される媒体搬送管のうち、1つだけ他の媒体搬送管よりも大きい媒体搬送管がある場合には、図4(b)に示すように、1つの挿通孔21aのみが大きく、他の挿通孔21b−21dは小さく形成されて、大径の挿通孔21aがやや中央寄りに配置されるとともに小径の挿通孔21b−21dは均等に配置される。
【0039】
また、下管部24の長さは、下階部80の床81から天井82までの高さから余裕代を差し引いた長さに形成され、上管部22の長さは、下管部24の上に繋いだ状態で上階部70の床71から突出してホルダ26の上面位置まで達する長さに形成される。
【0040】
また、さや管31−34は、図1,3に示すように、保護管2内に収容されて媒体搬送管を案内するもので、ポリエチレンなどの可撓性を有する合成樹脂によって、じゃばら構造で屈曲可能な長尺円筒状に形成されている。
【0041】
加えて、このさや管31−34は、屈曲可能に構成されることで、保護管2の構築後に上方から挿入できるため、保護管2の内部で切れ目なく連続しており、じゃばら構造とともに通管性を向上させている。
【0042】
さらに、このさや管31−34は、媒体搬送管を収容できるように媒体搬送管の外径よりも内径が大きく、保護管2内に収まるように保護管2の内径よりも外径が小さく形成されている。好ましくは、このさや管31−34の内径は媒体搬送管の外径よりも若干大きい程度にするのがよい。
【0043】
具体的には、図4(a)のように4本が同一径の場合は、保護管2の呼び径が75mmで内径が77mmであれば、さや管31−34の外径が30.5mmで内径が24.5mmで、媒体搬送管としての給水管11、給湯管12、行き管13及び戻り管14の外径が17.0mmとなる。
【0044】
また、図4(b)のように1本だけ径が異なる場合には、保護管2の呼び径が75mmで内径が77mmであれば、小径のさや管32,33,34の外径が27.5mmで内径が22.0mmで、給湯管12、行き管13及び戻り管14の外径が17.0mmとなり、大径のさや管31の外径が42.0mmで内径が34.0mmで、給水管11の外径が27.0mmとなる。
【0045】
さらに、給水管11及び給湯管12は、上階部70の給水用及び給湯用の媒体搬送管で、架橋ポリエチレンなどの柔軟性を有する合成樹脂によって、屈曲自在の長尺円筒状に形成されている。
【0046】
そして、給水管11及び給湯管12の下流側には分岐用のヘッダ110,120が接続されており、この分岐用のヘッダ110,120の下流側にはキッチンやトイレや洗面台の蛇口等が接続されている。
【0047】
同様に、行き管13及び戻り管14は、上階部70の風呂73の追焚用の媒体搬送管で、架橋ポリエチレンなどの柔軟性を有する合成樹脂によって、屈曲自在の長尺円筒状に形成されている。
【0048】
そして、この行き管13及び戻り管14の一端には上階部70の風呂73が接続されているとともに、他端には給湯器91が接続されている。
【0049】
つづいて、本実施例の建物の配管構築方法について、図5,6を用いて説明する。本実施例の建物の配管構築方法は、下管部設置工程と、上管部設置工程と、さや管設置工程と、媒体搬送管設置工程と、をこの順に実行することで達成される。
【0050】
まず、あらかじめ、建物の構造部分を構築しておく。すなわち、工場で製作された各建物ユニットをトレーラに積載して現場まで運搬し、クレーンなどで所定の位置に並べて設置することで建物の構造部分を構築する。
【0051】
さらに、上階部70の床71、下階部80の床81及び天井82には、保護管2の外径と同じ径の取付孔71a,81a,82aを設けておく。
【0052】
はじめに、下管部設置工程では、図5(a)に示すように、下階部80の床81に設けた取付孔81aに下管部24の下部を挿入しつつ立設する。
【0053】
すなわち、下管部24をホルダ28に通した状態で両者を接着するとともに、下管部24の下部にキャップ25を嵌め合わせて接着し、下部を取付孔81aに挿入する。そして、下管部24の上部を図示しない支持具(ブラケット)で壁に固定する。
【0054】
次に、上管部設置工程では、図5(b)に示すように、下階部80(又は上階部70)から上階部70の床71及び下階部80の天井82に設けた取付孔71a,82aを通じて下管部24の上に継手23を介して上管部22を接続する。
【0055】
すなわち、立設された下管部24の上に継手23を突き当てて接着し、下階部80から、下階部80の天井82に設けた取付孔82aを通じて、上管部22をいったん持ち上げて上階部70の床71に設けた取付孔71aに挿通させる。その後、持ち上げた上管部22を下ろし、ホルダ27(図2参照)を嵌め合わせつつ、継手23に突き当てて接着する。さらに、上管部22の上部にホルダ26(図2参照)を嵌め合わせて両者を接着する。
【0056】
つづいて、さや管設置工程では、図6(a)に示すように、上管部22及び下管部24が接続されて構成された保護管2に上階部70からさや管31−34をねじれないように整列させた状態で挿通する。
【0057】
すなわち、保護管2の上側のキャップ21に設けた挿通孔21a−21dに、上方からさや管31−34を挿入していき、下側のキャップ25に設けた孔25a−25dと位置合わせする(図3では孔25a,25cは省略)。
【0058】
なお、この位置合わせの際には、下方のキャップ25の孔25a−25dにシノなどの棒状部材を挿して孔25a−25dの位置にさや管31−34を誘導する。
【0059】
最後に、媒体搬送管設置工程では、図6(b)に示すように、さや管31−34に上階部70から媒体搬送管としての給水管11、給湯管12、行き管13及び戻り管14をそれぞれ別個に挿通する。この媒体搬送管設置工程では、さや管31−34によってそれぞれの媒体搬送管が個別に案内される。
【0060】
以上のようにして建物の配管構築方法が実行されることで、建物の配管構造4が構築される。
【0061】
そして、メンテナンスの際には、さや管31−34内部の媒体搬送管のみを引き抜いたり、挿入したりすることで点検や交換が容易になる。すなわち、さや管31−34によって媒体搬送管はそれぞれ別個に案内されるため、媒体搬送管どうしが絡まったり擦れ合ったりすることはない。
【0062】
次に、本実施例の建物の配管構造4の作用について説明する。
【0063】
(1)このように、本発明の建物の配管構造4は、媒体搬送管としての給水管11、給湯管12、追焚用の行き管13及び戻り管14と、これらの媒体搬送管を収容する保護管2とを備える建物の配管構造4である。
【0064】
したがって、メンテナンスの際などには、この保護管2の内部の媒体搬送管のみを抜き挿しして、媒体搬送管の点検・交換をおこなうことができる。
【0065】
そして、保護管2には保護管2より小径かつ媒体搬送管より大径のさや管31−34が挿通されており、このさや管31−34に給水管11などの媒体搬送管が挿通されている。
【0066】
したがって、媒体搬送管ごとに個別に配置されたさや管31−34によって各媒体搬送管を案内することができるため、保護管2に媒体搬送管を挿通する際に、スムーズに挿通することができる。
【0067】
すなわち、それぞれの媒体搬送管に対応してさや管31−34が別々に設けられていれば、媒体搬送管の経路が限定されているため、抜き挿しする際に媒体搬送管が保護管2内面に引っ掛かることはなくなる。
【0068】
また、保護管2を設置する都合から保護管2の途中には継目が生じてしまうが、さや管31−34には継目がないので、スムーズに媒体搬送管を挿通することができる。
【0069】
つまり、建物の配管構造4の全体が直立するために必要な剛性を外側の保護管2で確保しつつ、さや管31−34によって媒体搬送管の挿通性を確保することができる。
【0070】
また、上述したように保護管2とさや管31−34の二重構造とすれば、保護管2として難燃性の硬質塩化ビニル管などを用いることで、延焼を防ぐことができるようになるため、準耐火構造の防火区画を貫通する給水管等の基準(建設省告示第1422号)を満足することができる。
【0071】
加えて、このさや管31−34は、その内径が媒体搬送管の外径と略同一になるように形成することで、さや管31−34内部で媒体搬送管がばたつく余裕が少なくなり、よりスムーズに挿通できるようになる。
【0072】
さらに、このように保護管2とさや管31−34によって二重に媒体搬送管を覆うことで、ウォータハンマ現象による媒体搬送管のばたつきを抑制して防音性能を向上させることができる。この場合、媒体搬送管の外周に消音テープを巻くことでいっそう防音性能を向上させることができる。
【0073】
(2)加えて、保護管2に複数のさや管31−34が挿通されるとともに、さや管31−34のそれぞれに媒体搬送管が挿通されることで、媒体搬送管が複数ある場合でも、それぞれのさや管31−34に挿通されるため、整列された状態でスムーズに挿通することができる。
【0074】
つまり、保護管2内において整列して配置されたさや管31−34のそれぞれに、別個に媒体搬送管を挿通することで、媒体搬送管を抜き挿しする際に媒体搬送管どうしが絡まったり擦れ合ったりすることがなくなる。
【0075】
(3)また、建物としてのユニット建物5は、上階部70及び下階部80を有しており、下階部80には床81から天井82まで達する配管用空間A1が設けられるとともに、この配管用空間A1に下階部80の床81から上階部70の床71まで貫通する保護管2が設置されることで、下階部80に立ち入ることなく上階部70の媒体搬送管を維持・管理できる。
【0076】
例えば、給水管11を点検する際には、元栓を締めた後に、床下部90に作業員が入って継手部分で給水管11などを取外すとともに、上階部70の配管用空間A2に通じる点検口を開いてヘッダ110に接続されている給水管11を取外して、さや管31から給水管11を抜き取って点検や交換できる。
【0077】
(4)さらに、さや管31−34は屈曲可能に構成されていることで、建物の構造部分を構築した後にさや管31−34を設置できるようになるため、下階部80から上階部70にわたって継目のないさや管31−34を用いることができる。
【0078】
すなわち、建物に固定される保護管2は設置する際の制約から継目が生じてしまうが、内側のさや管31−34は折り曲げた状態で運搬・設置できるため継目が生じることはない。
【0079】
(5)そして、保護管2は、下階部80の床81から天井82までの高さより短い下管部24と、下管部24の上に継手23を介して接続される上管部22と、を有することで、建物の構造部分を構築した後に、下階部80から上階部70まで貫通する保護管2を設置できる。
【0080】
(6)また、本実施例の建物の配管構築方法は、上記の建物の配管構造4を構築する建物の配管構築方法であって、下階部80の床81に設けた取付孔81aに下管部24の下部を挿入しつつ立設する下管部設置工程と、上階部70の床71及び下階部80の天井82に設けた取付孔71a,82aを通じて下管部24の上に継手23を介して上管部22を接続する上管部設置工程と、上管部22及び下管部24が接続されて構成された保護管2に上階部70からさや管31−34を挿通するさや管設置工程と、さや管31−34に上階部70から媒体搬送管を挿通する媒体搬送管設置工程と、を備えている。
【0081】
このため、建物の構造部分を構築した後であっても、保護管2とさや管31−34と媒体搬送管とを設置できるようになる。特に、建物がユニット建物5の場合、各建物ユニットは内装まで工場で製作したうえで、別々に運搬して組み立てられるため、構築途中で上下階に連続する媒体搬送管を設置することはできないので、この効果は大きいといえる。
【0082】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0083】
例えば、前記実施例では、建物としてユニット建物5について説明したが、これに限定されるものではなく、在来工法の建物やパネル工法の建物にも本発明を適用できる。
【0084】
また、前記実施例では、媒体搬送管として給水管11、給湯管12、追焚用の行き管13、戻り管14などの流体搬送管を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、媒体搬送管として空調用の冷媒管やドレン管などにも本発明を適用できる。
【0085】
さらに、前記実施例では、保護管2の内部にさや管31−34が4本配置される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、1本のみ設置されるものでもよく、2本でもよく、4本以上でもよい。
【0086】
そして、前記実施例では、保護管2は直管である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、保護管は途中で屈曲部を有する曲管でもよく、さや管及び媒体搬送管が屈曲可能であれば、スムーズに媒体搬送管を挿通することができる。
【符号の説明】
【0087】
A1,A2 配管用空間
11 給水管(媒体搬送管)
12 給湯管(媒体搬送管)
13 行き管(媒体搬送管)
14 戻り管(媒体搬送管)
2 保護管
21,25 キャップ
22 上管部
23 継手
24 下管部
31,32,33,34 さや管
4 建物の配管構造
5 ユニット建物(建物)
70 上階部
71 床
71a 取付孔
80 下階部
81 床
81a 取付孔
82 天井
82a 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に配置されて媒体を搬送する媒体搬送管と、前記媒体搬送管を保護する保護管と、を備える建物の配管構造であって、
前記保護管には前記保護管より小径かつ前記媒体搬送管より大径のさや管が挿通されており、前記さや管に前記媒体搬送管が挿通されることを特徴とする建物の配管構造。
【請求項2】
前記保護管には、複数の前記さや管が挿通されるとともに、前記さや管のそれぞれに、前記媒体搬送管が挿通されることを特徴とする請求項1に記載の建物の配管構造。
【請求項3】
前記建物は、上階部及び下階部を有しており、前記下階部には床から天井まで達する配管用空間が設けられるとともに、前記配管用空間に、前記下階部の床から前記上階部の床まで貫通する前記保護管が設置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物の配管構造。
【請求項4】
前記さや管は、屈曲可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の建物の配管構造。
【請求項5】
前記保護管は、前記下階部の床から天井までの高さより短い下管部と、前記下管部の上に継手を介して接続される上管部と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の建物の配管構造。
【請求項6】
請求項5に記載の建物の配管構造を構築する建物の配管構築方法であって、
前記下階部の床に設けた取付孔に前記下管部の下部を挿入しつつ立設する下管部設置工程と、
前記上階部の床及び前記下階部の天井に設けた取付孔を通じて、前記下管部の上に継手を介して前記上管部を接続する上管部設置工程と、
前記上管部及び前記下管部が接続されて構成された前記保護管に、前記上階部から前記さや管を挿通するさや管設置工程と、
前記さや管に、前記上階部から前記媒体搬送管を挿通する媒体搬送管設置工程と、を備えることを特徴とする建物の配管構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−158004(P2011−158004A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18498(P2010−18498)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】