説明

建物内の作業用電動車両管理システム

【課題】建物内に配車した作業用電動車両の所在場所、稼動時間、作業終了後の充電状態、交換時期を確実に管理することができる建物内に配車した作業用電動車両の管理システムを提供する。
【解決手段】建物内に配車した作業用電動車両5にこの作業用電動車両5の情報を書き込む情報書き込み装置が搭載され、情報書き込み装置に書き込まれた作業用電動車両5の情報を読み込み、この読み込まれた情報を、PLCを介して作業用電動車両管理用サーバ2へ送信するとともに、作業用電動車両5のバッテリーを充電するための充電コードが接続される充電コンセントを備えたIDを持つ中継用通信機器4が設置され、中継用通信機器4からPLCにより送信されてきた作業用電動車両5の情報が入力され管理作業用電動車両管理用サーバ2を備える建物内の作業用電動車両管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設中の建物内に配車した作業用電動車両を、その所在位置や充電状態を把握して管理するための建物内の作業用電動車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設中の高層ビルなどでは、作業中のフロアに資材を運搬するためのフォークリフトや天井作業のための昇降リフトなどバッテリを動力源とする作業用電動車両が利用されている。
【0003】
ビル建設では、作業するフロアに作業用電動車両が配車されていなかったり、作業用電動車両が前日充電されていなかったために運転できなかったりすると、当日の作業を効率よく行うことができなくなる。そのため、1日の作業終了後、翌日の作業工程を計画する上で、作業用電動車両の所在位置、作業用電動車両の充電状態などを把握しておくことが重要である。
【0004】
また、建設中の建物内では複数の作業者が作業用電動車両を利用する可能性が高いので、誰がどれくらい利用しているかを把握する必要も出てくることがある。さらに、それぞれの作業用電動車両が累積としてどれだけ稼動したかを知ることにより、点検時期やバッテリー交換時期にあるか否かを判定することも必要である。
【0005】
建築現場に配車した作業用車両がどのフロアに所在するのかを把握するため、建築現場担当者が建築現場のフロアごとに探しまわって作業用車両を探し出し、また点検確認しなければならず、この作業が非効率で、特に高層階の建築では使用する作業用車両の台数が多いだけでなく、フロア数も多いことからその作業は多くの時間と労力を要していた。
【0006】
そこで、特許文献1には、従来、高層階の建築現場に配車した作業用車両がどのフロアに所在しているのかを把握するのが困難であること、さらには、高層建築現場作業担当が建築現場のフロアごとに探しまわって作業用車両を探し出して点検確認しなければならず、作業が非効率であるということから、高層階の建築作業現場の各フロアで作業する作業用車両を管理するシステムが開示されている。
【0007】
このシステムでは、高層階の建築作業現場の各フロアで作業する作業用車両を通信手段を介して管理するシステムにおいて、各フロアの出入口近傍に備えた各ID情報を有する非接触型受発信手段と、作業用車両に備えた該IDの非接触型受発信手段とのデータ送受信手段と、作業用車両管理手段と、前記作業用車両に備えた通信手段を介してサーバとのデータを送受信することにより、高層階の建築現場における各作業用車両の所在位置及び各作業用車両を管理するシステムである。
【特許文献1】特開2007−73017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1のシステムでは、無線LANが使用されるが、建設現場ではサーバと作業現場が遠く離れているとノイズが多く、無線LANが使えない現場もあることから、建設中の建物内に配車した作業用電動車両がどこにいて、誰にどのくらい利用されたか、作業終了後充電されているか、交換時期に来ているのかを遠隔から正確に把握することができない場合がある。また、無線LANを活用する場合には階層が増えるごとに無線LANのアクセスポイントの設置工事をしなければならない。
【0009】
そこで、本発明は、建設中の建物内に配車した作業用電動車両の所在場所、稼動時間、作業終了後の充電状態、交換時期を確実に管理することができる建物内に配車した作業用電動車両の管理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、建物内に配車した作業用電動車両の情報をPLCを介して作業用電動車両管理用サーバに送信して作業用電動車両を管理する建物内の作業用電動車両管理システムにおいて、作業用電動車両にこの作業用電動車両の情報を書き込む情報書き込み装置が搭載され、情報書き込み装置に書き込まれた作業用電動車両の情報を読み込み、この読み込まれた情報を、PLCを介して作業用電動車両管理用サーバへ送信するとともに、作業用電動車両のバッテリーを充電するための充電コードが接続される充電コンセントを備えたIDを持つ中継用通信機器が設置され、中継用通信機器からPLCにより送信されてきた作業用電動車両の情報が入力される、作業用電動車両を管理する作業用電動車両管理用サーバを備えていることを特徴とする。
【0011】
作業用電動車両管理用サーバに入力される情報は、作業用電動車両のID、作業用電動車両の利用者のID、作業用電動車両の稼働時間、および充電中の作業用電動車両あるいは充電していない作業用電動車両の情報である。
【0012】
情報書き込み装置の作業用電動車両の情報は、情報書き込み装置により書き込まれた無線タグを介して中継用通信機器へ送信され、情報書き込み装置は無線タグアンテナを周辺機器に持つCPUを備え、CPUは当該作業用電動車両のIDを記憶するとともに車両の稼働時間を読み込み、無線タグアンテナは利用者IDを読み込み、稼動中に無線タグに作業用電動車両ID、利用者ID、稼働時間を書き込み、中継通信機器は充電用コンセントと無線タグアンテナを周辺機器に持つCPUを備え、CPUは当該中継通信機器のIDを記憶するとともに中継通信機器の充電時に作業用電動車両の情報を無線タグから読み込む。
【0013】
また、情報書き込み装置の作業用電動車両の情報がPLCを介して充電コードから充電コンセントを通して中継用通信機器へ送信される場合は、情報書き込み装置は無線タグアンテナを周辺機器に持つCPUを備え、CPUは当該作業用電動車両のIDを記憶するとともに車両の稼働時間を読み込み、無線タグアンテナは利用者IDを読み込み、中継通信機器は充電用コンセントを周辺機器に持つCPUを備え、CPUは当該中継通信機器のIDを記憶するとともに中継通信機器の充電時に作業用電動車両の情報をPLCを介して充電コードから充電コンセントを通して読み込む。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、送信距離が短くノイズに影響されることがない無線タグ、あるいはPLCにより、どの利用者がどの作業用電動車両をどれだけ稼動させ、作業用電動車両をどの中継通信機器に返却して充電コンセントに充電コードを接続して充電中か、あるいはどの作業用電動車両が充電作業を行っていないかの作業車両の情報を作業用電動車両管理用サーバに確実に送信して管理することができる。その結果、工程に合わせた効率的な移動指示、稼働時間にあわせた点検、充電不足の解消が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の作業用電動車両管理システムの全体を示すブロック図である。
【0016】
作業用電動車両を管理する事務所と作業用電動車両が配置された建設中の建物の各ブロック作業現場(図1ではA〜Cブロック作業現場)とは、電力線1により電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)ができるように構成する。すなわち、事務所のコンセントと建物の各ブロック作業現場の充電コンセントにはPLCモデムがセットされており、事務所では、作業用電動車両管理用サーバ(PC)2がPCLモデムを介して電力線のコンセントに接続されている。このPLCにより電力線に作業用電動車両の情報の信号を流して事務所の作業用電動車両管理用サーバ2へ送信可能となっている。
【0017】
建物内では、作業現場のブロック毎に分電盤3が設置されており、分電盤3から分岐された電力線に充電コンセントが設けられている。充電コンセントに作業用電動車両5の充電用コードを接続してバッテリーを充電する。
【0018】
分電盤3の近傍にはIDを持つ中継用通信機器4が設置されている。中継用通信機器4は、分電盤3から分岐された電力線1にPLCモデムを介して接続される。
【0019】
中継用通信機器4に読み込まれた作業用電動車両5の情報と、当該中継用通信機器4のIDを作業用電動車両管理用サーバ3に送信すると、作業用電動車両管理用サーバ3には事前に中継用通信機器4のIDとその場所が登録されているので、そのIDからどの中継用通信機器4かが把握できてその所在場所が分かり、作業用電動車両5がどこで充電されているかが分かる。
【0020】
作業用電動車両IDを持つ作業用電動車両5は、当該作業用電動車両5の情報が書き込む情報書き込み装置を備える。情報書き込み装置11(図2、図3)には、作業用電動車両ID、利用者ID、稼働時間などの情報が入力される。情報書き込み装置に書き込まれた情報はPLCを介して中継用通信機器4へ送るか、あるいは無線タグを介して中継用通信機器4へ送る。
【0021】
以上の構成により、情報書き込み装置11に記憶された作業用電動車両5の情報が無線タグ又はPLCを介して中継用通信機器4へ送られ、中継用通信機器4のIDとともにPLCにより事務所の作業用電動車両管理用サーバ2へ送信される。作業用電動車両管理用サーバ2に入力される、作業用電動車両のID、作業用電動車両の利用者のID、作業用電動車両の稼働時間、および充電中の作業用電動車両あるいは充電していない作業用電動車両の情報により作業用電動車両を管理することが可能となる。
【実施例1】
【0022】
図2は本発明の作業用電動車両管理システムの実施例を示すブロック図である。本実施例は作業用電動車両5の情報の送信に、無線タグを利用した例を示すものである。
【0023】
図1と同様に、PLCにより電力線を介して作業用電動車両5の情報が事務所の作業用電動車両管理用サーバ2へ送信可能となっている。
【0024】
作業現場には、分電盤3から分岐された電力線1に充電コンセント6が配置され、充電コンセント6に作業用電動車両の充電用コードを接続してバッテリーを充電する。充電コンセント6は、分電盤3の近傍に配置された中継用通信機器4に設けられ、中継用通信機器4は分電盤3から分岐された電力線1にPLCモデムを介して接続される。
【0025】
中継用通信機器4は、充電用コンセント6と無線タグアンテナ7を周辺機器に持つCPU8を備えている。このCPU8は当該中継用通信機器4のIDが記憶されており、また、充電時に無線タグ12に書き込まれた情報を読み込む。作業用電動車両管理用サーバ3に事前に中継用通信機器4のIDとその場所を登録しておけば、送信されてきた中継用通信機器4のIDから当該中継用通信機器4の所在場所が分かり、作業用電動車両5がどこで充電されているかが把握できる。
【0026】
作業用電動車両5には、無線タグアンテナ9を周辺機器に持つCPU10を備えた情報書き込み装置11が搭載されている。CPU10は、作業用電動車両5のIDが記憶されており、また、当該作業用電動車両5の稼働時間を読み込み、無線タグアンテナ9で利用者IDを読み込み、稼動中に無線タグ12に作業用電動車両ID、利用者ID、稼働時間を書き込むようにすることができる。また、CPU10は利用者タグ13を認証して車両SWのON/OFFを許可する。無線タグ12は充電コードに装着しておけば、充電コードを充電コンセント6に差し込んだ際に、無線タグ12が中継用通信機器4に近接して位置するのでノイズの影響がなくなり、確実に情報を送信することができる。
【0027】
事務所では、作業用電動車両管理用サーバ2がPCLモデムを介して電力線のコンセントに接続され、PLCにより作業現場の作業用電動車両5の情報が中継用通信機器4を介して送信されてくる。
【0028】
本実施例の動作について説明する。
【0029】
作業用電動車両5の利用者は、作業用電動車両5の情報書き込み装置11のCPU10で利用者タグ13を認証させて車両SWのON/OFFの許可を得る。CPU10は車両SWがONされている時間をカウントして、充電時に利用される充電コードに装着されている無線タグ12に、稼働時間を書き込むとともに、作業用電動車両ID、利用者IDを書き込む。
【0030】
作業終了後、中継用通信機器4の充電コンセント6に作業用電動車両5の充電コードが差し込まれた際に、作業用電動車両5の充電コードに装着されている無線タグ13に書き込まれている作業用電動車両ID、利用者ID、稼働時間の情報が通信機器4へ送信され読み込まれる。
【0031】
中継用通信機器4に読み込まれた無線タグ13の情報と、中継用通信機器4のIDがPCLを介して作業用電動車両管理用サーバ2へ送信される。
【0032】
作業用電動車両管理用サーバ2では、送信されてきた情報に基づいて、当該作業用電動車両の利用者、作業用電動車両の稼働時間、および充電中の作業用電動車両あるいは充電していない作業用電動車両を把握して作業用電動車両を管理することができる。
【実施例2】
【0033】
図3は本発明の作業用電動車両管理システムの別実施例を示すブロック図である。図2と同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0034】
本実施例は作業用電動車両の情報を、無線タグを用いることなく、作業用電動車両の充電コードを中継用通信機器の充電を接続し、PCLを介して中継用通信機器4へ送信するものである。
【0035】
情報書き込み装置11はPLCを介して充電コード14に接続されている。情報書き込み装置11の無線タグアンテナ16は利用者タグ13のIDを読み込むものである。
【0036】
中継用通信機器4はPLCにより通信するので、外部からの不要な信号を遮断するブロッキングフィルター15が設けられている。
【0037】
情報書き込み装置11の無線タグアンテナ16は利用者タグ13のIDを読み込むものである。
【0038】
本実施例の動作について説明する。
【0039】
図2に示す実施例1が無線タグを利用して作業用電動車両5の情報を中継用通信機器4に送信するのに対して、本実施例では作業用電動車両5の情報を充電コード14を中継用通信機器4の充電コンセント6に差し込んでPLCを介して送信するものである。
【0040】
その後は、実施例1と同様に、中継用通信機器4に読み込まれた情報と、中継用通信機器4のIDがPCLを介して作業用電動車両管理用サーバ2へ送信され、作業用電動車両が管理される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の作業用電動車両管理システムの全体を示すブロック図である。
【図2】本発明の作業用電動車両管理システムの実施例を示すブロック図である。
【図3】本発明の作業用電動車両管理システムの別実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
1:電力線
2:分電盤
3:作業用電動車両管理用サーバ
4:中継用通信機器
5:作業用電動車両
6:充電コンセント
7:無線タグアンテナ
8:CPU
9:無線タグアンテナ
10:CPU
11:情報書き込み装置
12:無線タグ
13:利用者タグ
14:充電コード
15:ブロッキングフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に配車した作業用電動車両の情報をPLCを介して作業用電動車両管理用サーバに送信して作業用電動車両を管理する建物内の作業用電動車両管理システムにおいて、
作業用電動車両にこの作業用電動車両の情報を書き込む情報書き込み装置が搭載され、
情報書き込み装置に書き込まれた作業用電動車両の情報を読み込み、この読み込まれた情報を、PLCを介して作業用電動車両管理用サーバへ送信するとともに、作業用電動車両のバッテリーを充電するための充電コードが接続される充電コンセントを備えたIDを持つ中継用通信機器が設置され、
中継用通信機器からPLCにより送信されてきた作業用電動車両の情報が入力される、作業用電動車両を管理する作業用電動車両管理用サーバを備えていることを特徴とする建物内の作業用電動車両管理システム。
【請求項2】
作業用電動車両管理用サーバに入力される情報が、作業用電動車両のID、作業用電動車両の利用者のID、作業用電動車両の稼働時間、および充電中の作業用電動車両あるいは充電していない作業用電動車両の情報であることを特徴とする請求項1記載の建物内の作業用電動車両管理システム。
【請求項3】
情報書き込み装置の作業用電動車両の情報が情報書き込み装置により書き込まれた無線タグを介して中継用通信機器へ送信されることを特徴とする請求項1又は2記載の建物内の作業用電動車両管理システム。
【請求項4】
情報書き込み装置の作業用電動車両の情報がPLCを介して充電コードから充電コンセントを通して中継用通信機器へ送信されることを特徴とする請求項1又は2記載の建物内の作業用電動車両管理システム。
【請求項5】
情報書き込み装置は無線タグアンテナを周辺機器に持つCPUを備え、CPUは当該作業用電動車両のIDを記憶するとともに車両の稼働時間を読み込み、無線タグアンテナは利用者IDを読み込み、稼動中に無線タグに作業用電動車両ID、利用者ID、稼働時間を書き込み、
中継通信機器は充電用コンセントと無線タグアンテナを周辺機器に持つCPUを備え、CPUは当該中継通信機器のIDを記憶するとともに中継通信機器の充電時に作業用電動車両の情報を無線タグから読み込ことを特徴とする請求項3記載の建物内の作業用電動車両管理システム。
【請求項6】
情報書き込み装置は無線タグアンテナを周辺機器に持つCPUを備え、CPUは当該作業用電動車両のIDを記憶するとともに車両の稼働時間を読み込み、無線タグアンテナは利用者IDを読み込み、
中継通信機器は充電用コンセントを周辺機器に持つCPUを備え、CPUは当該中継通信機器のIDを記憶するとともに中継通信機器の充電時に作業用電動車両の情報をPLCを介して充電コードから充電コンセントを通して読み込むことを特徴とする請求項4記載の建物内の作業用電動車両管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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