説明

建物

【課題】 合理性の高い架構を備えた建物を提供する。
【解決手段】 建物平面での中央部に、上下階に連続した筒状に配された耐震壁1が設けられている建物において、建物平面での耐震壁1より外周側に、複数の柱2を環状に且つ複数重に配置したラーメン構造部3を設け、ラーメン構造部3の内の内周側の柱2aから、耐震壁1にわたって大梁6を跳ね出し状態に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物平面での中央部に、上下階に連続した筒状に配された耐震壁が設けられ、その耐震壁で耐震性を向上させてある建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の建物としては、図4に示すように、前記耐震壁1に内周側の柱の機能も付加する一方、建物外周部には複数の柱2を環状位置に配置し、内周側の耐震壁と外周側の柱とにわたるラーメン構造部20を形成してあるものがあった(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−121922号公報(図1〜5)
【特許文献2】特開2002−121923号公報(図1〜5)
【特許文献3】特開2002−121924号公報(図1〜5)
【特許文献4】特開2002−121925号公報(図1〜5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の建物によれば、耐震壁部分と、建物外周部に立設された柱とのスパンが大きくなり易く、その結果、ラーメン構造部の梁成や床スラブの厚みを大きく確保する必要がある。
従って、階高さを一定とした場合は、室内高さが低くなり、居住性が低下する一方、室内高さを一定とした場合は、階高さが高くなり易く、所定の建物高さ内においては階数が少なくなる等、合理性に欠けた架構設計となり易い問題点があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、合理性の高い架構を備えた建物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、建物平面での中央部に、上下階に連続した筒状に配された耐震壁が設けられている建物において、建物平面での前記耐震壁より外周側に、複数の柱を環状に且つ複数重に配置したラーメン構造部を設け、前記ラーメン構造部の内の内周側の柱から、前記耐震壁にわたって大梁を跳ね出し状態に設けてあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、建物平面での前記耐震壁より外周側に、複数の柱を環状に且つ複数重に配置したラーメン構造部を設け、前記ラーメン構造部の内の内周側の柱から、前記耐震壁にわたって大梁を跳ね出し状態に設けてあるから、ラーメン構造部における内・外周の各柱のスパンが従来に比べて小さくなり、ラーメン構造部の梁成や床スラブの厚みを小さくすることが可能となる。その結果、階高さを一定とした場合は、室内高さを高く確保して、居住性を向上させたり、室内高さを一定とした場合は、階高さを低くでき、所定の建物高さ内における階数を増加させる等、架構の合理性が高い建物とすることが可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記耐震壁は、前記大梁によって支持されているところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、耐震壁は大梁を介してラーメン構造部で支持されることとなるから、ラーメン構造部の基礎構造部によって耐震壁をも支持させることが可能となる。その結果、耐震壁の下方に専用の基礎を設けなくてもよい設計が可能となり、下階の平面計画を、前記耐震壁の無いラーメン構造として実施する等、建物の平面計画の自由性を向上させることが可能となる。一例として、上階を住居として設計する一方、下階を、テナントビルとした用途に設計すると言ったことが挙げられ、建物の用途計画が非常に容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1、図2は、本発明の建物の一つ目の実施形態である高層住宅Bを示すもので、中央部に吹き抜け空間A1が形成されており、その周りに住居空間A2が形成されている。本実施形態においては、全階にわたってほぼ同様の架構に構成した鉄筋コンクリート造の高層住宅Bを例に挙げて説明する。
【0012】
建物の平面構成を説明すると、前記吹き抜け空間A1を囲む状態に、筒状の耐震壁1が設けられ、その外周側には、複数の柱2を複数重(当該実施形態では2重)の環状位置に配置したラーメン構造部3が設けられている。
前記ラーメン構造部3は、各柱2にわたって架設された大梁4、各大梁4にわたって設けられたスラブ5を備えて構成されている。
また、環状内周側の柱2aには、前記耐震壁1にわたって大梁6を跳ね出し状態に設けてある。
そして、各柱2、及び、耐震壁1は、それぞれ基礎によって支持されている。
尚、大梁4、大梁6、耐震壁1で囲まれた範囲にもスラブ7が設けられている。
【0013】
本実施形態の建物によれば、前記耐震壁1によって建物としての耐震性能の向上を図りながら、短スパン構成のラーメン構造部3によって、梁成やスラブ厚さを小さくすることが可能となり、例えば、階高さを一定とした場合は、室内高さを高く確保して、居住性を向上させたり、室内高さを一定とした場合は、階高さを低くでき、所定の建物高さ内における階数を増加させる等、架構の合理性が高い建物とすることができる。
【0014】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の建物の二つ目の実施形態を示すもので、先の実施形態と共通する部分の説明は割愛し、異なった構成を主として説明する。
当該建物は、上階には第一実施形態と同様の吹き抜け空間A1が設けてあり、下階は吹き抜け空間A1が無い一連の室内空間A3が設けられた架構が採用されている。
【0015】
即ち、上階の前記耐震壁1は、各大梁6によって支持されている。また、下階の大梁8は、吹き抜け空間A1の下方において、各柱2にわたって架設されて、下階ラーメン構造部9が構成されている。
【0016】
従って、耐震壁1は、その荷重を前記大梁6,8を介して下階ラーメン構造部9によって支持されるから、耐震壁1単独の基礎は設けられていない。
一方、下階ラーメン構造部9は、柱2下方を基礎によって支持されている。
【0017】
本実施形態の建物によれば、前記耐震壁1によって建物としての耐震性能の向上を図りながら、上階においては、短スパン構成のラーメン構造部3によって、梁成やスラブ厚さを小さくすることが可能となり、先の実施形態と同様に、架構の合理性が高い建物とすることができる。更には、耐震壁1が大梁6で支持されていることによって、ラーメン構造部9の基礎構造部によって耐震壁1をも支持させることが可能となり、耐震壁1の下方に専用の基礎を設けなくてもよい設計が可能となる。即ち、下階の平面計画を、前記耐震壁1の無いラーメン構造として実施する等、建物の平面計画の自由性を向上させることが可能となり、建物の用途計画を非常に容易に行うことが可能となる。
【0018】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0019】
〈1〉 本発明の建物は、先の実施形態で説明した平面計画のものに限るものではなく、例えば、柱配置や本数等は、適宜変更が可能である。従って、柱の二重環状配置に限るものではなく、三重以上の環状配置であってもよい。
〈2〉 耐震壁で囲まれた範囲は、先の実施形態で説明した吹き抜け空間に限るものではなく、例えば、エレベータや配管ダクト等が納められた空間として構成することも可能である。また、耐震壁は、平面の一部が切り欠かれた略筒状のものであってもよく、それらを含めて筒状の耐震壁と言う。
〈3〉 当該発明の建物は、先の実施形態で説明した高層住宅に限るものではなく、例えば、事務所ビルやホテルや病院や学校等、様々な用途の建物として構成することが可能である。
【0020】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態の建物の平面図
【図2】第一実施形態の建物の側面視断面図
【図3】第二実施形態の建物の側面視断面図
【図4】従来の建物の平面図
【符号の説明】
【0022】
1 耐震壁
2 柱
2a 環状内周側の柱
3 ラーメン構造部
6 大梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物平面での中央部に、上下階に連続した筒状に配された耐震壁が設けられている建物であって、
建物平面での前記耐震壁より外周側に、複数の柱を環状に且つ複数重に配置したラーメン構造部を設け、前記ラーメン構造部の内の内周側の柱から、前記耐震壁にわたって大梁を跳ね出し状態に設けてある建物。
【請求項2】
前記耐震壁は、前記大梁によって支持されている請求項1に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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