説明

建築材料の製造方法

【課題】施工性に優れた建築材料を製造可能な建築材料の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】建築材料1は、合板2および中密度繊維板3を準備する工程と、合板2および中密度繊維板3を積層接着して基板5を作成する工程と、基板5および化粧板6を積層接着する工程とに大別される。中密度繊維板3の準備段階において、中密度繊維板3は乾燥室内において乾燥された後、密閉梱包した状態で乾燥室から取り出され、放冷される。このようにして、表面含水率が2%以下となるように乾燥された中密度繊維板3を、合板2と接着接合すると、合板2側から中密度繊維板3側に水分が移行し、基板5が中密度繊維板側3に向けて反った状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合板に中密度繊維板(MDF)を積層した基板に単板等の化粧板を接着した建築材料の製造方法に関するものである。
【0002】
従来より、合板に中密度繊維板を積層したものを基板とし、これに化粧板を接着した建築材料が提供されている。かかる構成の建築材料を作成する場合、基板が合板側に突出してしまい、中密度繊維板側に凹状(合板側に凸状)の形状となってしまうことがある。このように中密度繊維板側に凹状の基板を用いて作成した建築材料は施工性が悪いという問題がある。
【0003】
そこで、かかる問題を解決すべく、従来技術では、下記特許文献1に開示されているように、合板と中密度繊維板とを積層するのに先だって合板の表面含水率を約10%前後に調整すると共に、中密度繊維板を絶乾状態とする方策が提供されている。このように、表面含水率が調整された合板と中密度繊維板とを積層して貼り合わせると、下記特許文献2等に詳述されているような原理に基づいて中密度繊維板側に凸(山ぞり)の状態となる傾向にあり、比較的施工性に優れた建築材料を提供することができる。
【特許文献1】特開平10−151603号公報
【特許文献2】特開平6−108626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記したような従来技術の建築材料の製造方法を採用する場合は、中密度繊維板の表面含水率が合板よりも低くなるように調整しなければならない。また、中密度繊維板と合板との表面含水率の差がある程度大きくないと、両者を積層して貼り付けて形成される基板において中密度繊維板側に突出する突出量(反り)が小さくなってしまい、この基板に対して化粧板を積層して最終形態である建築材料の状態にすると、合板側に凸の形状となってしまう可能性が高い。そのため、上記したようにして建築材料を作成する場合は、基板の作成前に中密度繊維板の表面含水率を可能な限り低くしておく必要があった。しかし、従来技術では、中密度繊維板の表面含水率を合板に対して大幅に低くすることが困難であり、施工性に優れた建築材料を提供できないという問題があった。
【0005】
また通常の施工現場では、多数の建築材料が使用されるため、建築材料の反りはロットによらず略均一であることが望ましい。しかし、上記したように、従来技術では、中密度繊維板の表面含水率を精度良く調整することができなかったため、建築材料のロット毎に微妙に反りが異なることがあり、その分だけ施工性に劣ったり、施工に不向きな不良品が発生する可能性が高いという問題があった。
【0006】
さらに、従来技術の製造方法によって建築材料を作成する場合は、中密度繊維板を乾燥した後、これを常温に温度低下させる間に中密度繊維板が水分を吸収してしまう。この際、従来技術のような製造方法を採用すると、場合によっては中密度繊維板全体において均一に水分をしないことがある。このような場合は、中密度繊維板の部位毎に表面含水率が異なることとなり、単一の建築材料において反りの大小が発生することがあるという問題があった。
【0007】
そこでかかる問題に鑑み、本発明では、合板に中密度繊維板を積層した基板に単板等の化粧板を接着することにより作成しても施工性に優れた建築材料を製造可能な建築材料の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、合板に中密度繊維板及び化粧板を積層してなる建築材料の製造方法において、中密度繊維板を、高温の乾燥室内に置き、前記乾燥室から取り出した中密度繊維板を樹脂シートで覆って密閉梱包した状態で常温まで温度低下させ、前記密閉梱包を解いて合板に積層接着することを特徴とする建築材料の製造方法である。
【0009】
本発明の建築材料の製造方法では、中密度繊維板を高温の乾燥室内に置いて乾燥させた後、中密度繊維板を常温まで温度低下させる間に中密度繊維板が吸湿してしまうのを防止すべく、乾燥室から取り出した中密度繊維板を樹脂シートで覆って密閉梱包した状態とし、密閉梱包を解いて合板に積層接着することとしている。そのため、本発明の建築材料の製造方法によれば、中密度繊維板と合板との積層接着時における中密度繊維板の表面含水率を精度良く調整できる。従って、本発明の建築材料の製造方法によれば、ロットや部位によらず反りが略均一で、施工性に優れた建築材料を製造することができる。
【0010】
また、本発明の建築材料の製造方法によれば、乾燥室内で乾燥させた中密度繊維板を常温まで温度低下させるまでの間における吸水を防止できるため、中密度繊維板の表面含水率を合板に対して大幅に低くすることができる。そのため、本発明によれば、中密度繊維板と合板とを積層した状態において、これの反りを建築材料の施工に適した状態とすることができる。
【0011】
ここで、上記したように、本発明者等は、中密度繊維板の乾燥後における吸水を防止し、中密度繊維板の表面含水率を極めて低くすることができることを見いだした。そこで、本発明者らは、中密度繊維板の表面含水率を低くした場合に、中密度繊維板および合板の表面含水率をそれぞれどの程度に調整すれば、施工性に優れた建築材料を提供できるかについて鋭意研究した。
【0012】
上記した本発明者らの研究結果に基づいて提供される請求項2に記載の発明は、合板に中密度繊維板及び化粧板を積層してなる建築材料の製造方法において、中密度繊維板の表面含水率を0〜2%に調整し、前記中密度繊維板を表面含水率6%以上の合板に接着剤によって接着積層し、その後に化粧板を接着剤によって接着積層することを特徴とする建築材料の製造方法である。
【0013】
本発明の建築材料の製造方法によれば、施工性に優れた建築材料を提供することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、中密度繊維板を、高温の乾燥室内に置き、前記乾燥室から取り出した中密度繊維板を密閉梱包した状態で常温まで温度低下させ、前記密閉梱包を解いて合板に積層接着することを特徴とする請求項2に記載の建築材料の製造方法である。
【0015】
本発明の建築材料の製造方法では、中密度繊維板を乾燥室内で乾燥させた後、これを密閉梱包した状態で常温まで温度低下させることとしている。そのため、本発明の建築材料の製造方法によれば、ロットや部位によらず表面含水率が略均一であり、表面含水率が極めて低い中密度繊維板を用意することができる。
【0016】
本発明の建築材料の製造方法によれば中密度繊維板の表面含水率を極めて低く調整することができるため、中密度繊維板と合板との接着積層する際における両者の表面含水率の差を大きくとることができる。従って、本発明のようにして中密度繊維板を用意すれば、中密度繊維板と合板とを接着積層することによって中密度繊維板側に凸(山ぞり)の状態とすることができ、施工性に優れた建築材料を製造することができる。
【0017】
本発明の建築材料の製造方法では、中密度繊維板を乾燥させた後、密閉梱包した状態で常温まで温度低下させるため、中密度繊維板の吸水率をロットや部位によらず略均一とすることができる。そのため、本発明によれば、ロットや部位によらず反りが略均一で、施工性に優れた建築材料を製造することができる。
【0018】
ここで、上記請求項1又は3に記載の建築材料の製造方法において、密閉梱包は、樹脂シートで中密度繊維板を覆うことによって行われてもよい(請求項4)。
【0019】
本発明によれば、乾燥室において乾燥された中密度繊維板を常温まで温度低下させる間に中密度繊維板が吸水するのを確実に防止することができる。
【0020】
また、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の建築材料の製造方法において、乾燥室内の雰囲気温度は90℃〜120℃に調整されることが望ましい(請求項5)。
【0021】
かかる構成によれば、中密度繊維板の表面含水率を十分低下させることができ、施工性に優れた建築材料を提供することができる。
【0022】
さらに、上記請求項1乃至5のいずれかに記載の建築材料の製造方法において、合板に積層接着する際の中密度繊維板の表面含水率は1.5%未満であることが望ましい(請求項6)。
【0023】
本発明のように、中密度繊維板の表面含水率を十分低下させた状態で、中密度繊維板と合板とを接着積層すれば、施工性に優れた建築材料を提供することができる。
【0024】
また、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の建築材料の製造方法は、合板に中密度繊維板を積層接着して構成される基板の中密度繊維板側の面に、前記中密度繊維板よりも表面含水率の高い化粧板を積層接着することを特徴とするものであってもよい(請求項7)。
【0025】
本発明のように基板に対して積層接着される化粧板の表面含水率を中密度繊維板の表面含水率よりも高くすると、化粧板側から中密度繊維板側に水分が移行し、中密度繊維板側への反りの程度がある程度緩和される。そのため、本発明の建築材料の製造方法によれば、中密度繊維板側への反りの程度をより一層施工に適切な状態とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、施工性に優れた建築材料を製造可能な建築材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
続いて、本発明の一実施形態にかかる建築材料の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、1は本実施形態の建築材料である。建築材料1は、図示するように合板2と中密度繊維板3とを積層接着して基板5を作成し、これに対して化粧板6をさらに積層接着して作成される。本実施形態の建築材料1の製造方法は、図2に示すように、合板2および中密度繊維板3を準備する工程(ステップ1−1)と、合板2と中密度繊維板3とを積層接着して基板5を作成する工程(ステップ1−2)と、基板5に対して化粧板6を積層接着する工程(ステップ1−3)とに大別される。
【0028】
合板2は、従来公知のものと同様に薄い単板(図示せず)をその繊維方向が互いに直交するように接着剤で貼り合わせて一枚の板としたものである。本実施形態では、6%以上の表面含水率を有する合板2が基板5の作成用として準備される。
【0029】
中密度繊維板3(Medium Density Fiberboad,MDF)には、従来公知のものと同様に木材を粉々にして繊維状にしたものを成型したものが使用される。ここで、中密度繊維板3は、保存条件等によっても異なるが、通常の保存状態において3〜4%程度の表面含水率を有する。本実施形態の建築材料の製造方法では、中密度繊維板3をそのまま基板5の作成に使用されるのではなく、図2のステップ1−1に示す中密度繊維板3の準備段階において表面含水率を調整してから基板5の作成に使用される。
【0030】
中密度繊維板3の表面含水率の調整は、図3に示すような手順で実施される。さらに詳細には、中密度繊維板3の表面含水率を調整する場合は、図3に示すように先ずステップ2−1において雰囲気温度が100℃以上(本実施形態では100℃〜105℃)であり、湿度が極めて低い(0%近傍)乾燥室内に約7日間にわたって配される。
【0031】
上記したようにして中密度繊維板3が乾燥室内で乾燥されると、図3のステップ2−2に示すように中密度繊維板3が樹脂シートによって覆われ、密閉梱包される。ここで使用される樹脂シートは、例えばポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のように水分透過性がない、あるいは、水分透過性が極めて低いものが使用される。また、乾燥室内で乾燥された中密度繊維板3は、乾燥室内で加熱され高温になっているため、乾燥室の雰囲気温度(100℃〜105℃)程度の温度において十分耐熱性を有するものであることが望ましい。中密度繊維板3は、図3のステップ2−3に示すように、上記したようにして密閉梱包された状態で乾燥室の外に取り出されるなどして常温(40℃以下)まで放冷される。これにより、中密度繊維板3は、表面含水率が2%以下に調整された状態になる。
【0032】
上記したようにして中密度繊維板3の表面含水率が2%以下となるように調整されると、図4(a)に示すように合板2と中密度繊維板3とを積層接着して一体化することにより基板5が作成される(図2のステップ1−2参照)。さらに具体的には、ステップ1−1において準備された合板2の片面に中密度繊維板3が積層され、両者の間に水性ビニルウレタン系等のように、水性で木材の接着に適した接着剤が塗布される。本実施形態では、合板2と中密度繊維板3とを積層したものを100組分積み重ねた状態とし、これを0℃〜40℃の温度雰囲気下において5Kg/cm2〜15Kg/cm2の圧力で30分〜60分にわたってプレスされる。これにより、合板2と中密度繊維板3とが積層され接着接合された状態になり、基板5が形成される。
【0033】
ここで、上記したようにステップ1−1で準備された合板2の表面含水率が6%程度であるのに対して、中密度繊維板3の表面含水率は2%以下に調整されている。換言すれば、中密度繊維板3の表面含水率は合板2の表面含水率よりも十分低く、その差は4%以上とされている。そのため、図4(a)に示すように合板2に対して中密度繊維板3を積層し、両者を接着すると、合板2に含まれている水分が中密度繊維板3側に移動する。これにより、表面含水率の低い中密度繊維板3は吸湿して伸び、表面含水率が高い合板2は放湿して収縮する。これにより、基板5は、図4(b)に示すように全体として中密度繊維板3側の面が山反りとなるように反った状態になる。
【0034】
上記したようにして合板2と中密度繊維板3とが積層接着され基板5が作成されると、図4(c)に示すように、基板5のうち中密度繊維板3側の面に化粧板6が積層接着され、建築材料1が形成される。ここで、本実施形態で使用される化粧板6は、表面含水率が上記した中密度繊維板3の表面含水率よりも高い。そのため、基板5の中密度繊維板3側の面と化粧板6との間に水性ビニルウレタン系等の接着剤を塗布してプレスすると、化粧板6に含まれている水分が中密度繊維板3側に移動する。これにより、表面含水率の低い中密度繊維板3は吸湿してある程度伸び、表面含水率が高い化粧板6は放湿してある程度収縮する。これにより、建築材料1は、図4(d)に示すように全体として中密度繊維板3側に凸状態(合板2側に凹状態)、あるいは、ほぼ平坦な状態になる。
【0035】
本発明の建築材料1の製造方法では、基板5用の合板2や中密度繊維板3の準備段階(ステップ1−1)において、中密度繊維板3を高温の乾燥室内に配置して乾燥させた後、中密度繊維板3を樹脂シートで覆って密閉梱包した状態とすることにより、中密度繊維板3が放冷中に吸湿するのを防止している。そのため、上記した建築材料1の製造方法によれば、ロットや部位によらず中密度繊維板3の表面含水率を略均一に調整することができる。
【0036】
また、上記実施形態の製造方法では、合板2と積層接着する際に表面含水率を2%以下まで低下させた中密度繊維板3が使用されるため、基板5を中密度繊維板3側に凸の状態とすることができる。そのため、上記実施形態の製造方法によれば、建築材料1および基板5の反りを、施工上都合のよい状態とすることができる。
【0037】
本実施形態の製造方法のように、中密度繊維板3側に凸の状態になった基板5に対して中密度繊維板3よりも表面含水率の高い化粧板6を積層接着してプレスすることにより、建築材料1をほぼ平坦な状態とすることができる。従って、本実施形態の製造方法によれば、施工性に優れた建築材料1を製造することができる。
【0038】
上記実施形態では、合板5に積層接着する際の中密度繊維板3の表面含水率は2%以下に調整されていたが、基板5を中密度繊維板3側に反った状態とするためには1.5%未満に調整することがより一層好ましい。
【0039】
上記したように、本実施形態の製造方法では、中密度繊維板3の準備段階において中密度繊維板3を乾燥室から出して放冷させる際に、中密度繊維板3を樹脂シートで覆って密閉梱包する構成としている。そのため、上記した製造方法によれば、乾燥室において乾燥された中密度繊維板3が放冷する間に吸湿するのを確実に防止することができる。
【0040】
上記実施形態では、樹脂シートによって中密度繊維板3を乾燥室から取り出す際に中密度繊維板3を密閉梱包する例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば水分の透過性が殆どない材質で作成された箱等に中密度繊維板3を収容した状態で常温まで放冷させる構成としてもよい。また、中密度繊維板3を樹脂シートによって密閉梱包する場合は、中密度繊維板3を一枚ずつ梱包しても、複数枚ずつ梱包してもよい。また、樹脂シートを袋状にしておき、これに中密度繊維板3を収容して密閉する構成としてもよい。すなわち、中密度繊維板3の放冷時にこれが吸湿するのを防止可能であれば、中密度繊維板3はいかなる方法で密閉梱包されてもよい。
【0041】
上記実施形態では、乾燥室内の雰囲気温度を100℃〜105℃程度に調整して中密度繊維板3を乾燥する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、90℃〜120℃程度の範囲内で適宜調整してもよい。かかる構成によれば、中密度繊維板3の材質や乾燥速度等の条件に応じて最適な状態で中密度繊維板3を十分乾燥させることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、中密度繊維板3の準備段階において湿度が約0%の乾燥室内に7日間にわたって中密度繊維板3を配して乾燥する方法を例示したが、ここで示した乾燥室内の湿度や乾燥期間等の条件についても一例を示したものに過ぎず、適宜調整することができる。
【0043】
上記実施形態では、合板2の準備段階において、合板2に特別な処理を施さなかったが、本発明はこれに限定されるものではなく、合板2の準備段階において合板2を吸湿させ、表面含水率を向上させる構成としてもよい。かかる構成によれば、基板5の作成時における合板2と中密度繊維板3との表面含水率の差がさらに顕著となり、基板5がさらに中密度繊維板3側に反った状態とすることができる。かかる方法を採用すれば、基板5の反りをより一層広範囲にわたって調整することができ、基板5の反りを建築材料1の作成に適した状態に調整することができる。
【0044】
また同様に、上記実施形態の製造方法は、化粧板6の表面含水率を特に調整するものではなかったが、本発明はこれに限定されるものではなく、化粧板6の表面含水率を適宜調整する構成としてもよい。かかる構成によれば、建築材料1の反りをより一層的確に調整することができる。
【0045】
また、建築材料1の作成時に使用される接着剤は、合板2や中密度繊維板3、化粧板6を接着するのに最適なものを適宜選択できるが、本実施形態に示した製造方法では合板2と中密度繊維板3との間や、中密度繊維板3と化粧板6との間における水分の移動を伴うため、水性の接着剤が使用されることが望ましい。
[実施例]
続いて、本発明の実施例について説明する。表1は、合板2および中密度繊維板3の表面含水率を様々に変更した場合における基板5およびこれを用いて作成される建築材料1の幅方向(短手方向)および長手方向の反りを調べた試験結果である。
【0046】
【表1】

【0047】
本実施例では、表1に示すように基板5の作成時における合板2および中密度繊維板3の表面含水率の異なるサンプルを4種類(サンプルA〜D)作成した。さらに詳細には、サンプルAは、表面含水率が8〜10%の範囲となるように調整した表面含水率の高い合板2と、上記実施形態で示したようにして表面含水率を2%以下に調整した、表面含水率の低い中密度繊維板3を用いて作成したものである。サンプルAは、上記実施形態において変形例の一例として示したものに相当する。また、サンプルBは、表面含水率が6〜8%の範囲内にある表面含水率の高い合板2と、表面含水率が2%以下で表面含水率の低い中密度繊維板3を用いて作成したものである。サンプルBは、上記実施形態に示した製造方法で作成された建築材料1や基板5に相当するものである。
【0048】
サンプルCは、表面含水率が8〜10%の範囲となるように調整した表面含水率の高い合板2と、表面含水率が3〜4%であり表面含水率の高い中密度繊維板3とを用いて作成したものである。サンプルDは、表面含水率が6〜8%の範囲となるように調整した表面含水率の高い合板2と、表面含水率が3〜4%で表面含水率の高い中密度繊維板3とを用いて作成したものである。
【0049】
本実施例で作成したサンプルA〜Dは、いずれも幅W(短手方向の長さ)が300mmであり、長さL(長手方向の長さ)が1800mmであった。また、サンプルA〜Dを構成する合板2の厚みは、5mmであり、中密度繊維板3の厚みは3mm 、化粧板6の厚みは2mmであった。
【0050】
本実施例では、上記した各サンプルA〜Dについて、基板5の状態における幅反りおよび長手反りと、基板5の中密度繊維板3側の面に化粧板6を積層接着した建築材料1の状態における幅反りおよび長手反りについて調べた。その結果を表1に示す。
【0051】
ここで、「幅反り」とは、建築材料1や基板5を、長手方向一端側の端部から観察した際の反り(図1において矢印X方向に観察した際の矢高)を指す。また、「長手反り」とは、建築材料1や基板5を、短手方向一端側の端部から観察した際の反り(図1において矢印Y方向に観察した際の矢高)を指す。また、表1において幅反りや長手反りの値が正である場合は、建築材料1や基板5が中密度繊維板3側に凸形状(合板2側に凹形状)であることを示し、幅反りや長手反りの値が負である場合は、建築材料1や基板5が中密度繊維板3側に凹形状(合板2側に凸形状)であることを示す。表1に示す試験結果は、各サンプルA〜Dをそれぞれ15枚作成した際の幅反りや長手反りの平均値である。
【0052】
表1に示すように、中密度繊維板3の表面含水率を2%以下に調整したサンプルA,Bは、基板5の状態において、幅反りおよび長手反りの双方とも中密度繊維板3の表面含水率が3〜4%であるサンプルC,Dよりも中密度繊維板3側への反りが大きかった。また、サンプルA,Bは、建築材料1の状態において、合板2側への幅反りが中密度繊維板3の表面含水率が3〜4%であるサンプルC,Dよりも小さかった。
【0053】
また、合板2の含水率が同程度であるサンプル同士(サンプルAとサンプルC、サンプルBとサンプルD)について、建築材料1の状態における長手反りを比較すると、サンプルA,Bの長手反りは、それぞれサンプルC,Dの長手反りよりも小さかった。そのため、サンプルA,Bのように中密度繊維板3の表面含水率を2%以下に調整することにより、最終製品である建築材料1の状態における合板2側への反り(幅反り、長手反り)を抑制でき、特に幅反りについては中密度繊維板3の表面含水率を2%以下に調整することにより合板2側への反りを最小限に抑制できることが判明した。
【0054】
また、表1に示すように、中密度繊維板3の表面含水率が同程度であるサンプル同士(サンプルAとサンプルB、サンプルCとサンプルD)について合板2の含水率の差と建築材料1および基板5の状態における幅反りおよび長手反りについて比較すると、合板2の表面含水率が高いサンプルA,Cの方が、合板2の表面含水率が低いサンプルB,Dよりも中密度繊維板3側に凸形状(合板2側に凹形状)となる傾向にあることが判明した。従って、合板2と中密度繊維板3の表面含水率の差を大きくすることにより、幅反りおよび長手反りの双方とも中密度繊維板3側に凸形状(合板2側に凹形状)とすることができ、施工性に優れた建築材料1を提供できることが判明した。
【0055】
続いて、上記したサンプルB,Dを多数作成した場合における建築材料1の幅反りのばらつきについて調べた結果を表2に示す。表2では、幅反りが0.50mm以上であるもの、0mm以上0.50mm未満であるもの、0mm以下であるものに分類している。サンプルBの試験結果については、600枚の建築材料1や基板5について調べた。また、サンプルDについては、23564枚の建築材料1や基板5について調べた。
【0056】
【表2】

【0057】
表2に示すように、中密度繊維板3の表面含水率を2%以下に抑制したサンプルBについては、幅反りが0.50mm以上であるものが大半を占め、0mm以上0.50mm未満であるものについてはごく僅かであった。また、サンプルBについては、幅反りが0mm以下であるものがなく、いずれも中密度繊維板3側に凸形状(合板2側に凹形状)であった。
【0058】
一方、合板2の表面含水率がサンプルBと略同一であり、中密度繊維板3の表面含水率がサンプルBよりも高い(3〜4%)であるサンプルDは、幅反りが0.50mm以上であるものと、0mm以上0.50mm未満であるものがほぼ同程度あった。サンプルDについては、幅反りが0mm以下であるもの、すなわち中密度繊維板3側に凹形状(合板2側に凸形状)であり、施工上好ましくないものが3.8%発生した。これにより、サンプルBは、サンプルDよりも中密度繊維板3側に凸形状(合板2側に凹形状)になる傾向が高いことが判明した。
【0059】
ここで、建築材料1は、幅反りが0.50mm以上であるものが好適に施工でき、幅反りが0mm以上0.50mm未満のものは一部を施工用として使用できる。また、幅反りが0mm以下であるものは、施工に不向きであると想定される。そのため、サンプルBのように基板5の作成時における中密度繊維板3の表面含水率を2%以下に抑制することにより、好適に施工可能な建築材料1を作成できることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は本発明の一実施形態にかかる製造方法で作成される建築材料を示す斜視図であり、(b)は(a)に示す建築材料の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる建築材料の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】中密度繊維板の準備にかかる工程を示すフローチャートである。
【図4】(a)〜(d)は本発明の一実施形態にかかる建築材料の製造工程の各段階における合板や中密度繊維板、化粧板の状態を模式的に示す概念図である。
【符号の説明】
【0061】
1 建築材料
2 合板
3 中密度繊維板
5 基板
6 化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板に中密度繊維板及び化粧板を積層してなる建築材料の製造方法において、中密度繊維板を、高温の乾燥室内に置き、前記乾燥室から取り出した中密度繊維板を樹脂シートで覆って密閉梱包した状態で常温まで温度低下させ、前記密閉梱包を解いて合板に積層接着することを特徴とする建築材料の製造方法。
【請求項2】
合板に中密度繊維板及び化粧板を積層してなる建築材料の製造方法において、中密度繊維板の表面含水率を0〜2%に調整し、前記中密度繊維板を表面含水率6%以上の合板に接着剤によって接着積層し、その後に化粧板を接着剤によって接着積層することを特徴とする建築材料の製造方法。
【請求項3】
中密度繊維板を、高温の乾燥室内に置き、前記乾燥室から取り出した中密度繊維板を密閉梱包した状態で常温まで温度低下させ、前記密閉梱包を解いて合板に積層接着することを特徴とする請求項2に記載の建築材料の製造方法。
【請求項4】
密閉梱包は、樹脂シートで中密度繊維板を覆うことによって行われることを特徴とする請求項1又は3に記載の建築材料の製造方法。
【請求項5】
乾燥室内の雰囲気温度は90℃〜120℃であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の建築材料の製造方法。
【請求項6】
合板に積層接着する際の中密度繊維板の表面含水率が1.5%未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の建築材料の製造方法。
【請求項7】
合板に中密度繊維板を積層接着して構成される基板の中密度繊維板側の面に、前記中密度繊維板よりも表面含水率の高い化粧板を積層接着することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の建築材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−196517(P2007−196517A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17651(P2006−17651)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】