説明

建築材

【課題】 季節の温度変化によって歪むことのない建築材を提供する。
【解決手段】 建築材1を平板状をなす芯材2と、この芯材2の上下両面に固着された壁紙や樹脂フィルムからなる化粧材3とで構成する。芯材2は、プラスチックからなる母材中に木片等の介在片を混在させてなる複合材によって構成する。各介在片は、それぞれの長手方向がランダムな方向を向くように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床板、壁パネル又は家具材等に用いられる建築材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、床板等の建築材としては、木材が多用されている。しかし、木材を多用すると資源の枯渇及び環境破壊を招くという問題がある。そこで、この出願の発明者は、建築材として複合材を用いること思い至った。
【0003】
従来の複合材は、下記特許文献1に記載されているようにして製造されている。すなわち、廃棄されたプラスチック及び木材をそれぞれ所定の大きさに破砕する。そして、プラスチックの破砕片及び木片(介在片)を所望の割合で混合して押出機に投入する。押出機は、シリンダとその内部に回転可能に設けられたスクリューとを有しており、スクリューを回転させると、破砕片及び木片が前方へ送られつつ混合される。しかも、破砕片は、シリンダの内周面及びスクリューの外周面と破砕片との間に発生する摩擦熱や破砕片が砕かれるときに発生する熱により、流動性を有する状態になるまで加熱軟化される。この結果、プラスチックからなる母材中に木片がほぼ均質に分散される。このようにして混練された木片入りのプラスチックは、板状に成形された後、冷却固化される。これによって、複合材が製造される。
【0004】
【特許文献1】特開平11−156853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにして製造された複合材においては、木片がプラスチックの破砕片と同時に押出機に投入されており、長い距離にわたって破砕片と一緒に送られる。このため、ほとんど全ての木片が、それぞれの長手方向を送り方向に向けた状態で母材中に混在する。このような複合材では、木片の長手方向のおける熱膨張量が小さいのに対し、木片の長手方向と直交する方向における熱膨張量が大きくなる。つまり、複合材の熱膨張量が方向毎に異なる。このため、従来の複合材で建築材を構成した場合には、季節の温度差によって建築材が熱膨張、収縮したときに建築材に歪が発生するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、芯材の表面部に所定の形状の模様が印刷されてなる建築材において、上記芯材が、プラスチックからなる母材中に長手方向を有する介在片を混在させてなる複合材によって構成されており、上記介在片がその長手方向をランダムな方向に向けて上記母材中に混在されていることを特徴としている。
この場合、上記芯材の表面に壁紙や樹脂フィルム等の膜状体が固着され、この膜状体の表面に上記模様が印刷されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明の建築材によれば、芯材を構成する複合材の各介在片がその長手方向を同一方向に向けることなくランダムな方向に向けている。つまり、各介在片の長手方向を向く割合がいずれの方向についても均一になっている。したがって、芯材は、いずれの方向に関してもほぼ均一に熱膨張する。よって、季節の温度変化によって建築材に歪が発生することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る複合材が用いられた建築材1を示す。この建築材1は、例えば床材、壁パネル又は家具材等として用いられるものであり、平板状をなす芯材2と、この芯材2の上両(表面)面及び下面(表面)に接着等の固着手段によってそれぞれ固着された化粧材3とによって構成されている。化粧材3は、芯材2の上面又は下面のいずれか一方にだけ固着されることもある。
【0009】
芯材2は、図2に示すように、プラスチックからなる母材2aと、この母材2a中に混在する多数の介在片2bとからなる複合材によって構成されている。母材2aと介在片2bとは、重量比(体積比)で前者が20〜80%で、後者が80〜20%になるように混合される。特に、前者を40〜60%とし、後者を60〜40%にするのが望ましい。
【0010】
母材2aを構成するプラスチックとしては、従来の複合材の母材を構成するものと同様のプラスチックが用いられる。例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)等の各種のプラスチックが用いられる。プラスチックは、バージン材であってもよく、廃棄プラスチックを再利用したものであってもよい。
【0011】
介在片2bも、従来の複合材に混入される介在物と同様のものが用いられる。すなわち、母材2aを構成する樹脂が流動性を有するまで加熱されたとしても固体状態を維持するもの、例えば木片、糸屑、紙屑が用いられる。勿論、それらもバージン材であってもよく、廃棄材を破砕したものであってもよい。介在片2bは、その幅及び厚さに対する長さ又はその外径に対する長さが2倍〜3倍以上のもの、つまり長手方向を有するが用いられる。通常、介在片2bの長さは、その幅及び厚さ又はその外径に対して2倍以上で5倍以下に設定される。この実施の形態では、介在片2bとして、広葉樹、針葉樹等の木片が用いられており、図3に示すように、厚さTが1〜5mm、幅Wが1〜5mmで、長さLが5〜20mmであるものが用いられている。
【0012】
各介在片2bは、母材2a中にほぼ均一な密度で混合されている。しかも、各介在片2bは、それぞれの長手方向が同一方向を向くことなく、ランダムな方向を向くように配置されている。つまり、各介在片2bの長手方向が、母材2aの全方向に対して一方向に偏ることなく、どの方向にもほぼ均一になっている。
【0013】
化粧材3は、壁紙や樹脂フィルム等の柔軟性を有する(腰が柔らかい)膜状体からなるものであり、その背面が芯材2に固着されている。化粧材3の表面には、建築材1の使用目的に応じて木目等の所定の模様が印刷されている。
【0014】
上記構成の建築材1においては、芯材2が複合材によって構成されており、複合材の介在物2bがその長手方向をランダムな方向に向けているから、芯材2の熱膨張量が360°どの方向に対してもほぼ一定である。したがって、建築材1は外気温度の変化によって歪むことがない。
【0015】
図4は、上記芯材2を製造するための製造装置10の概略構成を示す。この製造装置10は、第1押出機(押出機)20、この第1押出機20の後段に配置された第2押出機30及びこの第2押出機30の後段に配置された成形機40を備えている。
【0016】
第1押出機20は、円筒状をなす第1シリンダ21と、この第1シリンダ21の内部に回転可能に設けられた第1スクリュー22とを有している。第1シリンダ21の基端部の上部には、第1ホッパ23が設けられている。この第1ホッパ23は、第1シリンダ21の基端部内にプラスチックの固形片(図示せず)を投入するためのものである。プラスチックの固形片の大きさは、第1シリンダ21の内径、第1スクリュー22の山の径(外径)、谷の径及びピッチ、並びにプラスチックの種類等に応じて適宜定められるが、通常は、10mm程度の仮想の立方体内に入り込むような大きさに定められる。
【0017】
第1押出機20は、回転駆動機構(図示せず)によって第1スクリュー22を回転させることにより、プラスチックの固形片が第1シリンダ21の基端部から先端部に向かって移送する。プラスチックの固形片は、第1シリンダ21の先端部まで送られる間に、固形片どうしの摩擦熱、固形片と第1シリンダ21の内周面及び第1スクリュー22の外面との間の摩擦熱、並びに固形片が破断される際に発生する熱により、所望の流動性を有する状態になるまで加熱される。勿論、プラスチック全体が均一な流動性を有するように、第1スクリュー22によって混練される。なお、第1シリンダ21には、プラスチックを補助的に加熱するためのヒータを設けてもよい。
【0018】
第2押出機30は、円筒状をなす第2シリンダ31と、この第2シリンダ31内に回転可能に設けられた第2スクリュー32とを有している。第2シリンダ31の基端部は、連結筒11を介して第1シリンダ21の先端部に連通している。したがって、第2シリンダ31の基端部には、第1押出機30によって加熱混練された流動性を有するプラスチックが連結筒11を介して送り込まれる。
【0019】
第2シリンダ31の基端部の上部には、第2ホッパ33が設けられている。この第2ホッパ33は、第2シリンダ31の基端部内に固体の介在片2bを投入するためのものであり、第2ホッパ33内には、介在片33がその長手方向をランダムな方向に向けた状態で収容されている。第2ホッパ33から第2シリンダ31の基端部内に投入された介在片2bは、第2スクリュー32を回転駆動機構(図示せず)によって回転させることにより、第1押出機30から第2シリンダ31内に供給されたプラスチックと一緒に第2シリンダ31の基端部から先端部に向かって送られるとともに、プラスチックと混練される。
なお、この実施の形態においては、ねじ山が第2スクリュー32のほぼ全長にわたって形成されているが、中央部の所定の長さを有する範囲を除く第2スクリュー32の両端部にのみねじ山を形成して、当該所定範囲の外周面に綾目のローレット状の凹凸部を形成してもよい。その場合、凹凸部の外径は、ねじ山の外径より若干小径に、例えば2〜3mm程度小径にする。また、凹凸部の長さは、第2スクリュー32の全長の1/4〜1/3程度にし、凸部の高さは第2スクリューの外径の1/10〜1/6程度にする。
【0020】
ここで、第2押出機30の全長のうちのプラスチックと介在片3とを混練する部分の長さ、つまり、ホッパ33の略中央部から第2スクリュー32の先端部までの長さL2は、プラスチックと介在片2bとを混練することにより、介在片2bをプラスチック内にほぼ均一に混在させることができる範囲において出来る限り短く設定されている。すなわち、仮に長さL2が、第1押出機20の全長のうちの固形片を混練する部分の長さ、つまりホッパ23の略中央部から第1スクリュー22の先端部までの長さL1と同程度の長さであると、介在片2bがプラスチックと一緒に送られる距離が長くなるため、プラスチック及び介在片2bが第2シリンダ31の先端部まで送られる間に、ほとんど全ての介在片2bの長手方向がプラスチックの移送方向を向いてしまう。そこで、長さL1を長さL2より短くすることは勿論のこと、介在片2bをプラスチック内にほぼ均一に混在させることができる範囲において出来る限り短くしている。このようにすると、介在片2bが第2ホッパ33から第2シリンダ31内に投入されたときの状態、つまり介在片2bの長手方向がランダムな方向を向いた状態が、プラスチック及び介在片2bが第2シリンダ31の先端部に達するまで維持される。したがって、第2押出機30から押し出されるプラスチック内には、密度及び方向性がほぼ均一になった状態の介在片2bが混在する。
【0021】
長さL2についてさらに述べると、長さL2は、第2シリンダ31の内径、並びに第2スクリュー32の山の径、谷の径及びピッチ等により、実験に基づいて定められる。具体例を挙げると、第2シリンダ31の内径を200mmとし、第2スクリュー32の山の径を199.2mm、谷の径を130〜175mm、ピッチを100mmとし、さらに第2スクリュー32の中央部に形成された凹凸部の外径を198mmとし、その長さを500〜600mmとし、凸部の高さを20〜35mmとしたとき、長さL2は1500〜2000mmとされる。なお、第1シリンダ21の内径を200mmとし、第1スクリュー22の山の径を199.2mm、谷の径を130〜175mm、ピッチを100mmとし、PEの固形片の大きさを10mmの立方体内に入り込む程度の大きさとしたとき、長さL1は2600mmとされる。
【0022】
上記成形機40は、圧延機50、前プレス機60及び後プレス機70を有している。圧延機50は、所定の間隔をもって互いに平行に、かつ水平に配置された一対の圧延ロール51,52を有している。圧延ロール51,52の上部間には、第2押出機30から押し出された流動性を有するプラスチックと固体の介在片2bとが混練された物(以下、混練物4と称する。)がフレキシブル管12を介して供給される。図4に示すように、フレキシブル管12の先端部は、圧延ロール51,52の軸線方向へ所定範囲にわたって往復動する。これにより、圧延ロール51,52の上端部間の所定範囲に混練物4がほぼ均一な状態で溜まる。混練物4は、一対の圧延ロール51,52間を下方に向かって通過することによって所定の厚さの板状に成形される。圧延機50によって圧延された板状の混合物4は、ガイド53によって圧延ロール51から剥がされるとともに、ガイド53及びガイドロール54によって後段の前プレス機60に供給される。
【0023】
前プレス機60は、上プレス機60Aと下プレス機60Bとを有している。上プレス機60Aは、水平に配置された押圧部61と、この押圧部61の下面に接した状態で回転する無端帯62とを有している。無端帯62は、ローラ63によって矢印方向に回転させられる。下プレス機60Bは、上プレス機60Aと上下対称に構成されている。上下のプレス機60A,60Bの無端帯62,62の間隔は、一対の圧延ロール51,52の間隔より狭くなっている。したがって、板状に成形された混練物4は、無端帯62,62間を通過する間に所定の量だけ薄くなるようにさらに圧延される。
【0024】
上プレス機60Aと下プレス機60Bとは、混練物4の移送方向に沿って所定距離だけ移動した後、混練物4から上下方向へそれぞれ離間する。そして、混練物4の移送方向と逆方向へ移動した後、上下方向へ接近移動させられて元の位置に戻る。これを繰り返すようになっている。混練物4の移送方向への上下のプレス機60A,60Bの移動速度及び無端帯62の回転速度は、混練物4の移送速度及び圧延量に応じて適宜に定められる。上下のプレス機60A,60Bは、位置固定してもよい。
【0025】
後プレス機70は、前プレス機60と同様に構成されており、押圧部71、無端帯72及びローラ73からなる上プレス機70Aと、この上プレス機70Aと上下対称に構成された下プレス機70Bとを有している。後プレス機70は、前プレス機60と同期して混練物4の移送方向に沿う移動を繰り返す。後プレス機70によって所定の厚さに圧延された混練物4は、所定の長さに切断された後、水冷等によって冷却固化される。これによって、板状をなす芯材2が製造される。
【0026】
なお、この発明は上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、芯材2に化粧材3を固着し、この化粧材3の表面に模様を印刷しているが、化粧材3を用いなくてもよい。その場合には、芯材2の表面に模様が直接印刷される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に係る建築材の一実施の形態を示す断面図ある。
【図2】同実施の形態に用いられている芯材の内部構造を模式的に示す拡大断面図である。
【図3】同芯材の構成要素の一つである介在片を拡大して示す斜視図である。
【図4】同芯材を製造するための製造装置の概略構成を示す図である。
【図5】同製造装置のフレキシブル管と一対の圧延ロールとの関係を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 建築材
2 芯材
2a 母材
2b 介在片
3 化粧材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材の表面部に所定の形状の模様が印刷されてなる建築材において、
上記芯材が、プラスチックからなる母材中に長手方向を有する介在片を混在させてなる複合材によって構成されており、上記介在片がその長手方向をランダムな方向に向けて上記母材中に混在されていることを特徴とする建築材。
【請求項2】
上記芯材の表面に壁紙や樹脂フィルム等の膜状体が固着され、この膜状体の表面に上記模様が印刷されていることを特徴とする請求項1に記載の建築材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−7803(P2009−7803A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169169(P2007−169169)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(507182911)株式会社泰成企画 (5)
【Fターム(参考)】