建築構造物

【課題】カバー部材の端面と他方の部材の側面との間の隙間を塞ぐ作業を低コストでかつ簡単に行えるようにする。
【解決手段】無目カバー５の端面５ｅと方立３の側面３ｅとの間の隙間Ｓに、方立３の側面３ｅに当接する側面当接部１２と、無目２と方立３とを連結する無目連結ブラケット４を通すブラケット挿通溝１３と、無目カバー５の端面５ｅの縁部を覆う被覆壁１４を具備した目地カバー１０を設けた。

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明が属する技術分野】本発明は、一方の部材と、他方の部材と、一方の部材を他方の部材に連結する連結部材と、一方の部材の連結部材が位置する側に装着したカバー部材を備えた建築構造物に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】従来、上記したような建築構造物としては、例えば、無目（一方の部材）と、方立（他方の部材）と、無目を方立に連結するブラケット（連結部材）と、無目のブラケットが位置する側に装着されてその端面を方立の側面に対向させた無目カバー（カバー部材）を備えたカーテンウォールがあった。
【０００３】このカーテンウォールの無目と方立との連結部分において、無目カバーの端面と方立の側面との間には、無目カバーの熱伸びや長さ寸法誤差、方立の取り付け位置誤差、あるいは、無目カバーと方立との相互の傾き誤差を吸収するための隙間が設けてあり、従来においては、例えば、無目カバーにおける端部の内側にあらかじめシール受けを装着しておき、無目に無目カバーを取り付けた後、無目カバーの端面と方立の側面との間からシール受けにシーリング材を流し込んで、隙間を埋めるようにしていた。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のカーテンウォール（建築構造物）にあっては、無目カバーにシール受けを装着する作業および現場においてシール受けにシーリング材を流し込む作業が必要であることから、隙間閉塞コストが高くつき、加えて、シーリング材の流し込み作業は意匠性を考慮して慎重かつ丁寧に行わなくてはならないので、この作業が簡単であるとは言い難いという問題を有していた。
【０００５】また、無目カバーの端面と方立の側面との間のシーリング材に汚れが付着しやすいため、カーテンウォールをクリーニングする場合には、シーリング材を避けながら行わなくてはならず、その分だけ手間がかかってしまうという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【０００６】
【発明の目的】本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、一方の部材に装着するカバー部材の端面と他方の部材の側面との間の隙間を塞ぐ作業を低コストでかつ簡単に行うことができ、加えて、クリーニングの手間を軽減することが可能である建築構造物を提供することを目的としている。
【０００７】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項１に係わる建築構造物は、一方の部材と、他方の部材と、一方の部材を他方の部材に連結する連結部材と、一方の部材の連結部材が位置する側に装着して端面が他方の部材の側面に隙間をもって対向するカバー部材を備え、他方の部材の側面とカバー部材の端面との間に、他方の部材の側面と当接する側面当接部と、連結部材挿通部と、カバー部材の端面の縁部と重なり合う重合部を具備した目地カバーを設けた構成としたことを特徴としており、この建築構造物の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【０００８】本発明の請求項２に係わる建築構造物において、目地カバーはカバー部材の端面に当接して側面当接部を他方の部材の側面に押圧する押圧部を具備している構成としている。
【０００９】本発明の請求項３に係わる建築構造物において、目地カバーの重合部はカバー部材の端面の縁部を覆っている構成としている。
【００１０】本発明の請求項４に係わる建築構造物において、目地カバーの連結部材挿通部は一方の部材側で開口している構成としている。
【００１１】本発明の請求項５に係わる建築構造物において、目地カバーは抜け止めを具備している構成とし、本発明の請求項６に係わる建築構造物において、目地カバーの押圧部は抜け止めを兼ねている構成としている。
【００１２】
【発明の作用】本発明の請求項１に係わる建築構造物では、連結部材挿通部に連結部材を通した状態で他方の部材の側面とカバー部材の端面との間に、目地カバーを位置させれば、側面当接部が他方の部材の側面と当接すると共に、重合部がカバー部材の端面の縁部と重なり合うので、シール受けを装着したり、このシール受けにシーリング材を流し込しこんだりする作業を必要とすることなく、カバー部材の端面と他方の部材の側面との間の隙間が塞がれることとなり、したがって、この隙間閉塞作業のコスト低減および隙間閉塞作業の容易化が図られるうえ、汚れの着きやすいシーリング材で隙間を塞ぐ場合と比較してクリーニングの手間が軽減される。
【００１３】また、目地カバーの側面当接部と、重合部と重なり合うカバー部材の端面との間に生じる隙間が、カバー部材の熱による伸び、カバー部材の長さ寸法の誤差、他方の部材の取り付け位置の誤差、カバー部材および他方の部材の相互の傾き誤差を吸収することから、カバー部材に歪みが生じたり、他方の部材に凹みや反りが生じたりするなどといった不具合が発生することが回避されることとなる。
【００１４】本発明の請求項２に係わる建築構造物では、上記した構成としているので、目地カバーの側面当接部と他方の部材の側面との間に隙間が生じるのが回避され、意匠性が向上することとなる。
【００１５】本発明の請求項３に係わる建築構造物では、上記した構成としているので、カバー部材の内周側にタッピングホールなどの突起部分が形成されている場合であったとしても、支障なく他方の部材の側面とカバー部材の端面との間の隙間が塞がれることとなる。
【００１６】本発明の請求項４に係わる建築構造物では、上記した構成としているので、他方の部材の側面に側面当接部を当接させつつ他方の部材の側面とカバー部材の端面との間に目地カバーを挿入すれば、連結部材挿通部に連結部材を通した状態で重合部がカバー部材の端面の縁部と重なり合って、他方の部材の側面とカバー部材の端面との間の隙間が塞がれるので、この隙間閉塞作業がより一層簡単になされることとなる。
【００１７】本発明の請求項５に係わる建築構造物では、いたずらによる目地カバーの取り外しが阻止されることとなり、本発明の請求項６に係わる建築構造物では、目地カバーの側面当接部と他方の部材の側面との間に隙間が生じるのが回避されるのと同時に、いたずらによる取り外しが阻止されることとなる。
【００１８】
【実施例】以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【００１９】図１〜図３は本発明に係わる建築構造物の一実施例を示しており、この実施例では、本発明に係わる建築構造物がカーテンウォールである場合を示す。
【００２０】図３に部分的に示すように、建築構造物としてのカーテンウォール１は、無目（一方の部材）２と方立（他方の部材）３を備えており、無目２と方立３は、図１に示すように、無目連結ブラケット（連結部材）４によって連結してあって、無目２には、室内側に露出する無目連結ブラケット４を覆う無目カバー（カバー部材）５が取り付けてある。
【００２１】この無目カバー５は、その内側に設けた上下の係止片５ａ，５ｂを無目２の室内側に設けた突片２ａ，２ｂに、図示しないカバー受け部材を介してそれぞれ係止させることによって、無目２に取り付けるようになっており、その端面５ｅは方立３の側面３ｅと隙間Ｓをおいて対向するようになっている。
【００２２】この隙間Ｓを塞ぐ目地カバー１０は硬質の合成樹脂よりなるものであり、方立３の側面３ｅと当接する側面当接部１２と、この側面当接部１２の中央に設けられて無目２側で開口する無目連結ブラケット４を通すためのブラケット挿通溝（連結部材挿通部）１３と、このブラケット挿通溝１３を囲む側面当接部１２の三つの片１２ａ，１２ｂ，１２ｃの互いに連続する縁部から無目カバー５側（図１（ｃ）では左側）に延出して無目カバー５の端面５ｅの縁部を覆う被覆壁（重合部）１４を具備している。
【００２３】また、この目地カバー１０は、側面当接部１２の対向する片１２ａ，１２ｃに、方立３の側面３ｅとは反対側に突出する押圧片（押圧部）１５，１５を一体で設けており（図３では片１２ｃの押圧片１５のみ示す）、この場合、これらの押圧片１５，１５の先端部分に、図２にも示すように、鋸歯面１５ａ，１５ａをそれぞれ設けることによって、押圧片１５が抜け止めとしても機能するようにしてある。これらの押圧片１５，１５は、無目カバー５の端面５ｅと方立３の側面３ｅとの間の隙間Ｓに目地カバー１０を室内側から挿入した状態において、各々の鋸歯面１５ａ，１５ａを無目カバー５の上下の係止片５ａ，５ｂにそれぞれ係止させて抜け止めとして機能しつつ、方立３の側面３ｅ側にそれぞれ弾性変形して側面当接部１２を方立３の側面３ｅに押圧するものとなっている。
【００２４】上記したカーテンウォール１では、その無目２と方立３との連結部分において、無目２に装着した無目カバー５の端面５ｅと方立３の側面３ｅとの間の隙間Ｓを塞ぐ場合、図３に示すように、方立３の側面３ｅに側面当接部１２を当接させつつ無目カバー５の端面５ｅと方立３の側面３ｅとの間に目地カバー１０を挿入すると、ブラケット挿通溝１３に無目連結ブラケット４を通した状態で被覆壁１４が無目カバー５の端面５ｅの室内側に位置する縁部を覆うので、シール受けを装着したり、このシール受けにシーリング材を流し込しこんだりする作業を必要とすることなく、無目カバー５の端面５ｅと方立３の側面３ｅとの間の隙間Ｓが塞がれることとなり、したがって、この隙間閉塞作業のコスト低減および隙間閉塞作業の容易化が図られると共に、汚れの着きやすいシーリング材で隙間を塞ぐ場合と比べてクリーニングの手間が軽減され、加えて、この隙間閉塞作業が目地カバー１０を挿入する行為のみでなされるので、隙間閉塞作業がより一層簡単になされることとなる。
【００２５】また、このカーテンウォール１において、目地カバー１０の側面当接部１２と、無目カバー５の端面５ｅとの間には、上記隙間Ｓよりも側面当接部１２の厚み分だけ小さい隙間が被覆壁１４の内側において生じるので、この隙間が、無目カバー５の熱伸びや、無目カバー５自体の長さ寸法誤差や、方立３の取り付け位置誤差などによる２ｍｍ程度の長さの誤差、ならびに、無目カバー５および方立３の相互の±３゜程度の傾き誤差を吸収することから、無目カバー５に歪みが生じたり、方立３に凹みや反りが生じたりするなどといった不具合が発生することが阻止されることとなり、加えて、このカーテンウォール１では、被覆壁１４が無目カバー５の端面５ｅの縁部を覆うようにしているので、無目カバー５の内周側にタッピングホールなどの突起部分が形成されている場合であったとしても、支障なく方立３の側面３ｅと無目カバー５の端面５ｅとの間の隙間Ｓが塞がれることとなる。
【００２６】さらに、このカーテンウォール１では、無目カバー５の端面５ｅと方立３の側面３ｅとの間の隙間Ｓに目地カバー１０をセットした状態において、無目カバー５の上下の係止片５ａ，５ｂに当接して方立３の側面３ｅ側にそれぞれ弾性変形することによって側面当接部１２を方立３の側面３ｅに押圧する押圧片１５，１５を側面当接部１２に設けているので、方立３の側面３ｅと側面当接部１２との間に隙間が生じるのが回避され、その結果、意匠性が向上することとなり、さらにまた、これらの押圧片１５，１５の先端部分に、無目カバー５の上下の係止片５ａ，５ｂにそれぞれ係止する鋸歯面１５ａ，１５ａをそれぞれ一体で設けているので、側面当接部１２を方立３の側面３ｅに押圧するのと同時に抜け止めとして機能して、目地カバー１０がいたずらにより取り外されるのが阻止され、加えて、鋸歯面１５ａ，１５ａを有する押圧片１５，１５を側面当接部１２に一体で設けているので、その分だけ、部品点数の削減がなされ、隙間閉塞コストがより一層低く抑えられることとなる。
【００２７】なお、上記した実施例では、本発明に係わる建築構造物がカーテンウォールである場合を示したが、これに限定されるものではなく、本発明に係わる建築構造物は、例えば、カーポートやテラスであってもよい。
【００２８】また、本発明に係わる建築構造物の詳細な構成は上記した実施例に限定されるものではなく、他の構成として、例えば、目地カバーの連結部材挿通部を側面当接部の中央に設けた連結部材挿孔とする構成としてもよいほか、目地カバーの側面当接部１２に、押圧片１５に代えて板ばねやコイルばねを押圧部として別個に設ける構成とすることも可能である。
【００２９】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明の請求項１に係わる建築構造物では、上記した構成としたから、シール受け装着作業やシーリング材流し込み作業を必要とすることなく、カバー部材の端面と他方の部材の側面との間の隙間を塞ぐことができ、その結果、隙間閉塞コストの低減および隙間閉塞作業の容易化を実現できると共に、クリーニングの手間を軽減することが可能であり、加えて、カバー部材および他方の部材に歪みや凹みや反りなどの不具合が発生するのを防止することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【００３０】本発明の請求項２に係わる建築構造物では、上記した構成としているので、請求項１に係わる建築構造物と同じ効果が得られるうえ、他方の部材の側面と目地カバーとの間に隙間が生じるのを阻止することができ、その結果、意匠性の向上が実現可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【００３１】本発明の請求項３に係わる建築構造物では、上記した構成としているため、カバー部材の内周側にタッピングホールなどの突起部分が形成されている場合であったとしても、支障なくカバー部材の端面と他方の部材の側面との間の隙間を塞ぐことができ、本発明の請求項４に係わる建築構造物では、上記した構成としていることから、他方の部材の側面にカバー部材の端面を対向させた状態でカバー部材の端面と他方の部材の側面との間に目地カバーを挿入することができ、したがって、隙間閉塞作業をより一層簡単に行うことができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【００３２】本発明の請求項５に係わる建築構造物では、目地カバーがいたずらによって取り外されるのを防ぐことができ、本発明の請求項６に係わる建築構造物では、目地カバーの側面当接部と他方の部材の側面との間に隙間が生じるのを防ぐと同時に、この目地カバーがいたずらによって取り外されるのを防ぐことができ、したがって、カバー部材の端面と他方の部材の側面との間の隙間を効率良く塞ぐことができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係わる建築構造物の一実施例を示す無目カバー（カバー部材）の端面と方立（他方の部材）の側面との隙間を目地カバーによって塞いだ状態の平面説明図（ａ），側面説明図（ｂ）および目地カバーの背面説明図（ｃ）である。
【図２】図１に示した目地カバーの拡大水平断面説明図である。
【図３】図１における建築構造物の無目カバーの端面と方立の側面との間に目地カバーを挿入する状況を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
１カーテンウォール（建築構造物）
２無目（一方の部材）
３方立（他方の部材）
３ｅ方立の側面
４無目連結ブラケット（連結部材）
５無目カバー（カバー部材）
５ｅ無目カバーの端面
１０目地カバー
１２側面当接部
１３ブラケット挿通溝（連結部材挿通部）
１４被覆壁（重合部）
１５押圧片（押圧部）
Ｓ隙間

【特許請求の範囲】
【請求項１】一方の部材と、他方の部材と、一方の部材を他方の部材に連結する連結部材と、一方の部材の連結部材が位置する側に装着して端面が他方の部材の側面に隙間をもって対向するカバー部材を備え、他方の部材の側面とカバー部材の端面との間に、他方の部材の側面と当接する側面当接部と、連結部材挿通部と、カバー部材の端面の縁部と重なり合う重合部を具備した目地カバーを設けたことを特徴とする建築構造物。
【請求項２】目地カバーはカバー部材の端面に当接して側面当接部を他方の部材の側面に押圧する押圧部を具備している請求項１に記載の建築構造物。
【請求項３】目地カバーの重合部はカバー部材の端面の縁部を覆っている請求項１または２に記載の建築構造物。
【請求項４】目地カバーの連結部材挿通部は一方の部材側で開口している請求項１〜３のいずれかに記載の建築構造物。
【請求項５】目地カバーは抜け止めを具備している請求項１〜４のいずれかに記載の建築構造物。
【請求項６】目地カバーの押圧部は抜け止めを兼ねている請求項５に記載の建築構造物。

【図１】