説明

建築用ガラスブロック及びガラスブロック壁面構造

【課題】火災や地震さらには暴風等が発生してガラスブロックに熱応力や外力が加えられた場合に、透光面の割れ及びこれに起因する爆縮に先立って、ガラスブロックの内外気圧差をなくすべく亀裂を確実に生じさせ、爆縮に伴う弊害の発生を有効に防止する。
【解決手段】本発明の建築用ガラスブロック11は、一対の有底無蓋の箱型形状を有し、底部が透光面11cとなるガラス成形体11aが、互いの開放端縁で溶着一体化されてなり、側面11dの内外気圧差に起因する引張り歪発生領域Tbに、亀裂誘発部Sが形成されている。また、本発明のガラスブロック壁面構造は、側面11dに亀裂誘発部Sが形成された複数の建築用ガラスブロック11と、これらの相互間に配設される固定材、補強筋及び目地材とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性、遮音性及び透光性に優れ、外壁用や内壁用として広く利用される建築用ガラスブロック及びそれを用いたガラスブロック壁面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、採光の態様やデザイン面で有利な効果を発揮するガラスブロック壁は、建築用ガラスブロックを用いて構築されるのが通例であって、建物の外壁や内壁あるいはベランダの壁部等に広く使用されている。図4(A)、(B)に示すように、このガラスブロック1は、一対の有底無蓋の箱型形状を呈し且つ底部が透光面1cとなるガラス成形体1a、1aを、互いの開放端縁で溶着一体化させることによって作製される中空の建築材料であり、その表裏面の双方には、額縁1b、1bに囲まれた透光面1c、1cが形成されている。そして、このガラスブロック1は、奥行き方向の中央部に突条をなす溶着部1eが形成された側面1dにより囲繞され、その内部1fは密閉空間とされているのが通例である。
【0003】
因みに、現在市販されている通常サイズのガラスブロック1は、145mm×145mm×95mm、又は190mm×190mm×95mmの寸法を有しており、肉厚は、透光面1cから額縁1bに到る部分が最も大きく、溶着部1eに向かって小さくなっている。
【0004】
上記の建築用ガラスブロック1を作製する際の溶着作業は、高温の雰囲気中で行うため、溶着後に常温まで冷却すると、その内部1fに閉じこめられた空気が収縮し、内気圧が0.3気圧程度の減圧状態となる。そのため、大気圧を1気圧とすると、ガラスブロック1の外表面には約0.7気圧の圧力がかかることになり、透光面1c及び側面1dが常に内方へ押圧されることになる。その結果、透光面1cの外面側の額縁1b近傍の領域Ta及び側面1d中央の領域Tbに、局所的に曲げモーメントが作用して引張り応力が現れる。このガラスブロック1の外表面における領域Taの最大応力を歪みゲージ法で求めたところ、7.4MPaの大きな引張り応力が生じていることが判明した。尚、この歪みゲージ法とは、ガラスブロック1の最大引っ張り応力が現れる位置にゲージ端子を貼り付けた後、ガラスブロック1に通気孔を穿孔し、内部を大気圧にした時の測定値から換算する手法である。
【0005】
このような内外の気圧差に起因して建築用ガラスブロック1の領域Taに生じる引張り応力は、ガラスブロック1の透光面1cの表面積が増加するに伴って大きくなることが知られており、特に、透光面1cの1面当たりの表面積が600cm2以上となるような大型ガラスブロックの場合には、領域Taに生じる引張り応力が非常に大きくなるため、透光面1cに割れが生じ易くなる。
【0006】
ガラスブロック1の耐圧強度を高め、領域Taの引張り応力が大きくならないようにするには、その肉厚を大きくすれば良いが、大型のガラスブロック1の肉厚をあまり大きくすると、製品重量が重くなり過ぎて取り扱いが困難になる。さらに、一般的なガラスブロック1の溶着部1eの肉厚は6mm程度であるが、この肉厚が一定以上(具体的には8mm以上)になるとガラス成形体1a同士を良好に溶着することが非常に困難になる。すなわち、このような構成の下では、溶着後のアニール時に溶着部1eが破損したり、溶着部1eの機械的強度が不足して施工時にクラックが入るといった製造上の問題が発生することになる。
【0007】
また、何らかの原因でガラスブロック1が破壊を起こした場合、内外の気圧差によって常に内側方向に圧力がかかっているため、爆縮を起こすおそれがある。ガラスブロック1が大型化するほど、爆縮の衝撃力も増すことになり、建物に施工した後に、このような爆縮が起こることは好ましくない。
【0008】
特に、火災の際に、内外の気圧差に起因して引張り応力が常に現れている透光面1cの領域Taに、さらに火炎によりガラスブロック1の表裏面に温度差が生じることにより発生する熱応力が集中して、透光面1cの表面に割れが発生し、その直後に爆縮が起こると、爆縮したガラスブロック1の損傷箇所がガラスブロック壁面の貫通穴となり、火炎が非加熱側へ通り抜けて延焼するおそれがある。
【0009】
また、地震時や台風時にも、常に引張り応力が生じているガラスブロック1の透光面1cの領域Taに、さらに揺れによる荷重や、暴風により飛来する物品の衝突等による外力が加わることで、爆縮が起きてガラスブロック壁面に貫通穴が空くと、その後、外壁として風雨を防ぐことができなくなり、プライバシーの保護にも問題が生じる。
【0010】
そこで、爆縮の防止対策として、本願出願人による特許文献1〜3には、ガラスブロックの側面に通気孔を設けて内外の気圧差をなくす発明の開示がある。また、特許文献4には、ガラスブロックの側面に、亀裂誘発部を形成して、この亀裂誘発部に亀裂が生じた時点で、内外の気圧差をなくすことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−314202号公報
【特許文献2】特開2000−314203号公報
【特許文献3】実開昭63−98352号公報
【特許文献4】特開2006−29066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特許文献1〜3に記載された発明では、ガラスブロックの側面に通気孔を設けて内外の気圧差をなくしているため、爆縮を起こすことはないが、内部に熱の伝導体及び音の伝播体として機能する空気等が多く入っており、従来のガラスブロックが有していた断熱性及び遮音性のレベルが低下するという問題がある。そのため、内外の気圧差を解消したガラスブロックは、これらの性能が要求される外壁用には適さないという致命的な問題を有している。
【0013】
一方、特許文献4には、ガラスブロックの側面に、亀裂誘発部を形成することが開示されているが、この対策は、火災や地震さらには暴風等に起因して熱応力が発生したり或いは揺れ等による外力が加わった場合に、ガラスブロックの側面に形成された亀裂誘発部に亀裂を積極的に生じさせることを目的とするものである。したがって、理論上は、火災、地震及び暴風等が発生した場合に、ガラスブロックの側面に亀裂が生じ、これによりガラスブロックの内外気圧差が徐々になくなり、爆縮の発生を防止できるというものである。
【0014】
しかしながら、同文献における亀裂誘発部は、ガラスブロックの側面における内外気圧差に起因する引張り歪発生領域を除く領域に形成されているため、上述の如くガラスブロックに熱応力や外力が加わった場合に、引張り応力が常に現れている透光面の一部領域の割れ及びこれに起因する爆縮発生の前段階で、亀裂誘発部に亀裂が必ずしも生じるとは限らない。すなわち、ガラスブロックの内外気圧差に起因して引張り応力が常に生じている側面と透光面とを比較すれば、透光面の方が熱や外力の影響を受け易いものであるから、側面に亀裂誘発部を形成しておいても、その形成位置が適切でなければ所期の目的を達成し得ず、亀裂誘発部に亀裂が生じる前段階で、透光面に割れ等が発生してしまうおそれがある。そして、このような事態が生じたならば、ガラスブロックが爆縮して、壁面に貫通穴が形成されることになるため、火炎の延焼や室内への風雨の侵入を防止することができなくなり、防災面や安全面に支障を来たすおそれがある。
【0015】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、亀裂誘発部を適切な位置に形成することにより、火災や地震さらには暴風等が発生してガラスブロックに熱応力や外力が加えられた場合に、透光面の割れ及びこれに起因する爆縮に先立って、ガラスブロックの内外気圧差をなくすべく亀裂を確実に生じさせ、爆縮に伴う弊害の発生を有効に防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記技術的課題を解決するために創案された本発明に係る建築用ガラスブロックは、底面が透光面である有底無蓋の箱型形状を有する一対のガラス成型体が、互いの開放端縁で溶着一体化されたガラス中空体よりなる建築用ガラスブロックであって、前記ガラス中空体の側面の内外気圧差に起因する引張り歪発生領域に、亀裂誘発部が形成されてなることに特徴づけられる。ここで、「亀裂」とは、ガラス中空体の側面の内外を貫通する裂け目を意味する(以下、同様)。
【0017】
このような構成によれば、亀裂誘発部が、ガラス中空体の側面の引張り歪発生領域に形成されていることから、火災や地震さらには暴風等が発生してガラスブロックに熱応力や外力が加えられた場合には、透光面の割れに先立って、側面に発生している引張り応力(このような場合には引張り応力は増大している)の作用により亀裂誘発部に亀裂が生じる。すなわち、透光面にも引張り歪み発生領域が存在しているものの、この領域には亀裂或いは割れ等を積極的に誘発するようなものは何も存在していないのに対して、側面の引張り歪み発生領域には亀裂を積極的に誘発する亀裂誘発部が形成されているため、透光面に割れが発生する以前に亀裂誘発部に亀裂が生じることになる。したがって、透光面に割れが生じる前段階で、側面に生じた亀裂を通じて外部から内部に外気が徐々に侵入することによりガラスブロックの内外気圧差がなくなる。これにより、ガラスブロックの爆縮及びこれに起因する当該壁面における貫通孔の発生が回避されて、火炎の延焼や室内への風雨の侵入を未然に防止することができ、防災面や安全面で優れた機能を発揮することが可能となる。
【0018】
この場合、前記亀裂誘発部は、前記側面に形成された溝または凹部とすることができる。
【0019】
このようにすれば、ガラスブロックの側面に溝または凹部を形成するだけで亀裂誘発部としての機能を十分に発揮できるばかりでなく、溝または凹部の一部を起点として確実に亀裂を生じさせ得ることになり、亀裂誘発部の形成作業が容易化されると共に、亀裂を生じさせる機能面においても優れたものとなる。尚、亀裂誘発部が溝または凹部で形成される場合の断面形状としては、V字形、台形、U字形、矩形等の形状を挙げることができる。また、亀裂誘発部の深さは、亀裂を発生させるためには0.1mm以上であればよく、且つ建築用ガラスブロックに必要な強度を確保できる範囲内の深さであればよい。尚、亀裂を確実に発生させるためには、亀裂誘発部の深さは0.5mm以上であることが好ましい。
【0020】
また、前記亀裂誘発部は、表面を火造り面とすることができる。
【0021】
このようにすれば、仮に、亀裂誘発部の表面が火造り面でない場合には、亀裂誘発部の大きさや深さ等によっては、内外気圧差に起因する引張り応力により平常時に亀裂誘発部に亀裂が生じることを完全に否定することはできないが、火造り面であれば、例えば溝や凹部の表面が滑らかになるので、そのような不具合を回避する上で有利となる。この場合、表面が火造り面とされた亀裂誘発部としては、溶融ガラスのゴブをプレス成型してガラスブロックを形成する際に、同時にプレス成型により亀裂誘発部を形成したもの、或いは、亀裂誘発部を仕上げる前段階で概略形状の溝や凹部等を刻設し、この刻設部位に、ヒーターの熱線、レーザー光、バーナー炎等によるファイヤーポリッシュ加工を施したもの等を挙げることができる。
【0022】
この場合、前記亀裂誘発部は、プレス成型により形成することが好ましい。
【0023】
このようにすれば、溶融ガラスのゴブをプレス成型するだけで、亀裂誘発部(表面が火造り面の亀裂誘発部)が形成されたガラスブロックを得ることができるため、亀裂誘発部を形成するために別途作業を行う必要がなくなり、時間短縮ひいては作業能率の向上が図られる。この場合、亀裂誘発部の形状が、ガラス成型体をプレス成型する金型の抜け勾配が考慮された楔形、笹の葉形等の平面形状で、且つ上方に開いていく台形やV字形等の断面形状であると、ガラス成型体をプレス成型する際に同時に亀裂誘発部を良質に形成することができ、製品の品質向上及び製造コストの低廉化が図られる。
【0024】
また、前記亀裂誘発部は、細長形状を呈すると共に、該亀裂誘発部の長さ方向が、前記透光面に垂直な透光軸方向に対して±15°以内の角度になるように形成することができる。
【0025】
このようにすれば、亀裂誘発部に亀裂を生じさせて、ガラスブロックの内外気圧差をなくし、爆縮の防止を確実化するという観点から有利となる。すなわち、亀裂誘発部の長さ方向の角度が透光軸方向に対して15°を超えて傾いていると、換言すれば、亀裂誘発部が透光面に対して75°未満に傾いていると、亀裂誘発部が亀裂初期状態となっても、透光面と平行な引張り応力の主応力がその亀裂初期位置に効率よく作用しないため、ガラス中空体の内部まで亀裂が進展するという現象が生じ難くなる。その結果、爆縮を防止するという要請に対しては、確実さに欠けることになる。また、亀裂誘発部の当該角度が15°を超えて傾いていると、亀裂誘発部から上記主応力以外の方向の引張り応力により亀裂が発生する場合があり得るので、火災等以外の想定外の場合にガラスブロックの破壊が生じるおそれもあるが、亀裂誘発部の当該角度が15°以内に形成されていれば、亀裂の発生に対する予測性が高まり、そのような想定外の破壊を防止する上で有利となる。そして、亀裂誘発部の当該角度が15°以内であれば、火災等によりガラス中空体の側面に発生する透光面と平行な引張り応力の主応力と、亀裂誘発部の長さ方向とが直交もしくは略直交するので、主応力が亀裂誘発部を引き裂く方向に効率よく作用することになり、爆縮を確実に防止する上で極めて有利となる。
【0026】
加えて、上記構成を備えたガラスブロックでは、内外の気圧差に起因する引張り応力が常に現れているガラスブロックの透光面の額縁近傍の領域(図1中の領域Ta)に、さらに火災の熱応力等が集中して破損が生じる前に、側面に亀裂を発生させてガラス中空体内部に外気を導入し、内部の減圧状態を解消させることで爆縮を確実に防止するためには、細長形状の亀裂誘発部の向きは、透光軸(図1中の矢印J)に平行であることが好ましい。
【0027】
上記の構成において、亀裂誘発部は、前記ガラス中空体の側面の中央を中心として透光面に平行な方向の長さの1/4以内の幅の範囲内に形成することが好ましい。
【0028】
このようにすれば、亀裂誘発部が、側面の中央を中心として透光面に平行な方向の長さの1/4以内の幅の範囲内(図1中の領域P)に形成されることになるため、透光面の領域Taに火災等による応力が集中して破損が生じる前に、亀裂誘発部に亀裂を発生させて、ガラス中空体内の減圧状態を徐々に解消させることが確実化され、爆縮を防止する上で極めて有利となる。これに対して、亀裂誘発部を上記1/4以内の幅の範囲外に設けると、内外の気圧差に起因する引張り歪が常に現れている領域(図1中の領域Tb)内であっても、その応力が小さいために、主応力との合力も小さいものとなり、亀裂誘発部から亀裂が発生しない場合や、亀裂初期状態となってもその状態が十分に進展せず、ガラス中空体の内部に亀裂が到達する確率が低くなる。したがって、亀裂誘発部は、上記1/4以内の幅の範囲内に設けることが好ましい。
【0029】
上記の構成において、亀裂誘発部は、透光面に垂直な透光軸に沿う方向の長さが3mm以上であることが好ましい。
【0030】
このようにすれば、ガラス中空体の側面に形成される亀裂誘発部は、透光軸に平行な方向に対する長さが3mm以上であるから、火災等によって透光面に破損が生じる前に、亀裂誘発部に引張り応力の主応力を十分に作用させ得ることになり、亀裂誘発部に確実に亀裂を発生させることが可能となる。このような観点から、亀裂誘発部の透光軸に平行な方向に対する長さは、10mm以上であることがさらに好ましい。尚、亀裂誘発部の透光軸に平行な方向に対する長さが3mm未満であると、亀裂誘発部が短尺すぎて引張り応力の主応力が十分に作用しなくなるため、亀裂初期に至らない場合や、亀裂初期に至ってもこれが十分に進展せず、ガラス中空体の内部に亀裂が到達する確率が低くなる。したがって、亀裂誘発部の上記の長さは、3mm以上(さらには10mm以上)とすることが好ましい。
【0031】
上記の構成において、亀裂誘発部は、溶着一体化されてなる一対のガラス成型体のそれぞれに形成されていることが好ましい。
【0032】
このようにすれば、構築したガラスブロック壁の内外何れのガラス成型体側から火災が起こった場合でも、加熱側の亀裂誘発部から適時に亀裂が発生して、ガラス中空体内部の減圧状態を解消させることが可能になり、爆縮を確実に防止する上で優れた構成となる。これに対して、亀裂誘発部が、溶着一体化されてなる一対のガラス成型体の一方のみに設けられていると、ガラスブロックの亀裂誘発部が設けられていないガラス成型体側が、火災によって加熱された場合には、ガラス中空体の側面に引張り応力の主応力が発生しても亀裂の発生が遅れて、爆縮が生じるおそれがある。したがって、亀裂誘発部は、一対のガラス成型体の双方に形成されていることが好ましい。
【0033】
上記の構成において、亀裂誘発部は、ガラス中空体の側面における透光面から透光部肉厚の1.5倍〜4倍の領域に始端を有し、内外気圧差に起因する引張り歪発生領域に終端を有することが好ましい。
【0034】
このようにすれば、亀裂誘発部は、透光面から適度に離隔した位置を始端として引張り歪発生領域に至る位置まで延びているため、亀裂誘発部としては、亀裂が発生し易い部位に形成されることになり、爆縮を有効に防止することが可能となる。これに対して、仮に透光面から透光軸と平行な方向に透光部肉厚の1.5倍未満の領域に亀裂誘発部を設けたのでは、亀裂が真っ直ぐに伸びない場合が多いという欠点がある。尚、亀裂誘発部の形状としては、細長形状に限られず、太短い形状や、透光面に平行な方向の割合が大きい形状、例えば、菱形、正方形、円形等であってもよいが、これらの形状であると、ガラス中空体側面に、透光面と平行な引張り応力の主応力が発生しても、この主応力は亀裂誘発部を引き裂く方向に効率よく作用せず、確実に亀裂を発生させるに至らないおそれがある。さらに、これらの形状であると、亀裂誘発部から上記主応力以外の方向の引張り応力により亀裂が生じる可能性が高くなり、火災等以外の想定外の場合にガラスブロックの破壊が生じるおそれがある。したがって、亀裂誘発部は、既述の細長形状であることが好ましいが、この細長形状としては、火災等が原因となってガラス中空体の側面に透光面に平行な引張り応力の主応力が発生した場合に、亀裂誘発部に亀裂初期の態様が発生し、その初期態様をガラス中空体内部まで進展させることができる形状であれば採用可能である。例えば、上記主応力が亀裂誘発部を引き裂く(劈開する)方向に効率的に作用する平面形状として、長方形、長円形、先細り形状である楔形、紡錘形、細長い菱形、笹の葉形、二円弧を合わせた形状等の細長形状であれば採用可能である。
【0035】
上記の構成において、一方の透光面の表面積は350cm2以上であることが好ましい。
【0036】
このようにすれば、一方の透光面の表面積が350cm2以上、すなわち一辺が187mm以上の正方形をなす大きい寸法のガラスブロックの場合には、図1中に示す透光面11cの領域Taに内外の気圧差に起因して現れる引張り応力が非常に大きくなるため、ガラスブロックが割れた際に爆縮を起こしやすくなる。そのため、爆縮を防止する上で、側面に亀裂誘発部が形成されてなることが、小さいサイズのガラスブロックよりも重要となる。また、一方の透光面の表面積が600cm2以上の大型ガラスブロックや、一辺が300mm(表面積が900cm2)以上のさらに大きいガラスブロックの場合には、側面に亀裂誘発部を形成することが特に有用となる。
【0037】
また、上記技術的課題を解決するために創案された本発明に係る壁面構造は、複数の建築用ガラスブロックと、該建築用ガラスブロックの相互間に配設される固定材、補強筋及び目地材とを備えるガラスブロック壁面構造であって、前記建築用ガラスブロックは、底面が透光面である有底無蓋の箱型形状を有する一対のガラス成型体が、互いの開放端縁で溶着一体化されたガラス中空体よりなるものであり、該ガラス中空体の側面の内外気圧差に起因する引張り歪発生領域に、亀裂誘発部が形成されてなることに特徴づけられる。
【0038】
この場合にも、亀裂誘発部は、溝または凹部として形成することができると共に、亀裂誘発部の表面を火造り面とすることができる。
【0039】
このような構成のガラスブロック壁面構造によれば、既述のように想定外の破壊を防止し、且つ火災等が発生した際に、割れや、その直後の爆縮を未然に防止することができる。
【0040】
また、上記の構成を備えたガラスブロック壁面構造に使用する固定材、目地材としては、現地で建築物に施工する際に使用する無定型のもの(モルタル、シリコーン充填剤等)や、予め工場でガラスブロックパネルに組み立てる際に使用する定形の加工品(成形目地剤等)を採用することが可能である。また、補強筋としては、溶接または螺子止めにより枠体等に固定できるものであればよい。
【0041】
さらに、上記のガラスブロック壁面構造を構築する建築用ガラスブロックとして、亀裂誘発部が、溶着一体化されてなる一対のガラス成形体の側面の双方における引張り歪発生領域に形成されてなるものが使用されると、ガラスブロック壁面構造の何れのガラス成形体側から火災等に起因する破壊応力が生じても適時に亀裂を発生させることが可能となる。
【0042】
また、亀裂誘発部を、ガラスブロックを構成するガラス成型体の各側面に一箇所設けておくと、ガラスブロックに熱応力が発生する火災時、ガラスブロックに大きな応力が発生する地震時、及びガラスブロックに衝撃が加わる台風時において、ガラスブロックの側面中央部に生じる主応力により亀裂誘発部から適時に亀裂を発生させ、ガラス中空体の内部に外気を導入する機能を十分に果たすことができる。
【発明の効果】
【0043】
以上のように本発明に係る建築用ガラスブロックによれば、亀裂誘発部が、当該ガラスブロックを構成するガラス中空体の側面の引張り歪発生領域に形成されていることから、火災や地震さらには暴風等が発生してガラスブロックに熱応力や外力が加えられた場合には、透光面の割れに先立って、側面に発生している増大した引張り応力の作用により亀裂誘発部に亀裂が生じる。このように、透光面に割れが生じる前段階で、側面に亀裂が生じることにより、ガラスブロックの内外気圧差がなくなるため、ガラスブロックの爆縮及びこれに起因する火炎の延焼や室内への風雨の侵入を未然に防止することができ、防災面や安全面で優れた機能を発揮することが可能となる。
【0044】
また、本発明に係る建築用ガラスブロック壁面構造によれば、上記と同様に亀裂誘発部がガラス中空体の側面の引張り歪発生領域に形成されてなる建築用ガラスブロックを用いて当該壁面が構築されているので、火災や地震さらには暴風等が発生した際に、割れやその直後の爆縮ひいては当該壁面における貫通孔の発生を未然に防止することが可能となり、防災面や安全面に優れた壁面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1(A)は、本発明の実施形態に係る建築用ガラスブロックを示す斜視図、図1(B)は、その建築用ガラスブロックの部分破断側面図である。
【図2】図2(A)は、前記建築用ガラスブロックに形成された亀裂誘発部の一例を示す平面図、図2(B)は、図2(A)のX−X線断面図、図2(C)は、図2(A)のY−Y線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るガラスブロック壁面構造を示す斜視図である。
【図4】従来の建築用ガラスブロックを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態に係る建築用ガラスブロック及びガラスブロック壁面構造を図面を参照しつつ説明する。尚、以下の説明では、建築用ガラスブロックについては図1及び図2を参照すると共に、ガラスブロック壁面構造については図3を参照する。
【0047】
図1(A)、(B)に示すように、建築用ガラスブロック(以下、単にガラスブロックという)11は、底面が透光面11cである有底無蓋の箱型形状を呈する一対のガラス成形体11aを、互いの開放端縁で溶着部11eを介して一体化されたガラス中空体である。このガラスブロック11の四つの側面11dには、表面に引張り応力が発生している領域(引張り歪発生領域)Tbがそれぞれ存在すると共に、透光面11cにも、表面に引張り応力が発生している領域Taが存在する。そして、このガラスブロック11の一つの側面には、引張り歪発生領域Tbに一部(全部でもよい)が存する亀裂誘発部Sが形成されている。尚、このガラスブロック11の透光面11cの外周縁部には、額縁11bが形成されている。
【0048】
詳述すると、このガラスブロック11は、亀裂誘発部Sが側面11dに形成されたガラス成型体11a(190mm×190mm×47.5mm、開放端縁部の肉厚5mm)の一対が、互いの開放端縁で溶着一体化されることによりガラス中空体(190mm×190mm×95mm、透光部の平均肉厚tが7mm)として形成されたものである。また、亀裂誘発部Sは、図1(B)に示すように、金型により溶融ガラスからガラス成型体11aをプレス成型する際に、側面11dの長手方向(透光面11cに平行な方向)に対する長さLの1/4以内とされた有効領域Pの長手方向中央部において、引張り応力が生じていない領域から、引張り応力が生じている領域Tbに亘って形成されている。この亀裂誘発部Sは、断面V字状の細長形状の溝であって、この溝の表面は金型表面が転写された火造り面とされている。これにより、ガラスブロック11の透光面11cに破損が想定される応力が発生する火災時等以外の平常時に、想定外の破壊が生じるおそれがなくなっている。
【0049】
さらに、図2(A)〜(C)に示すように、亀裂誘発部Sは、側面11dの長手方向中央部において、透光面11cから15mmの位置つまり透光面11cを始端として透光部の肉厚tの2.1倍となる位置から、溶着部11e(ガラス成型体11aの開放端縁)に向けて透光軸Jに平行に形成されている。この亀裂誘発部Sの平面形状は、透光面11cに向かって4°の拡開角度を有する楔形で、透光軸Jに対して±2°の角度をなすように形成され、その長さは32.5mmとされている。また、亀裂誘発部Sの断面形状は開口角が40°のV字状であり、亀裂誘発部Sの溝の底は透光軸Jに対して略平行になっている。この亀裂誘発部Sの溝の深さは、額縁11bに近い最も深い位置で3mmであり、額縁11bから遠ざかるに連れて徐々に浅くなって、溶着部11e(開放端縁)に近い位置では1mm未満になっている。
【0050】
上記の構成を備えたガラスブロック11を作製する場合には、先ず、図2(A)〜(C)に示す亀裂誘発部Sを有するガラス成型体11aが形成可能な寸法形状の雌金型を準備して、プレス成型機に装着して予熱し、雌金型内に所要体積のガラスゴブを供給する。次いで、プランジャーと称される雄金型でガラスゴブを押圧して雌金型との隙間内で圧延し、この圧延された軟質のガラスが冷却されて固化された後、雄金型を引き上げ、雌金型内から亀裂誘発部Sが形成された有底無蓋の箱型形状を有するガラス成型体11aを取り出す。その後、一対のガラス成型体11aを互いの開放端縁で突き合わせ、その突き合わせ部をバーナー炎で溶着一体化させて除歪することにより、ガラスブロック11を得る。この場合、一対のガラス成型体11aを溶着一体化させる際には、プレス成型で形成された亀裂誘発部Sの溶着部11eに近い部位(引張り応力が生じている領域Tbに位置する部位)に対して、バーナー炎で再度ファイヤーポリッシュ加工が施される。これにより、ガラス成型体11aの亀裂誘発部Sに細かな成型キズ等が生じている場合でも、得られるガラスブロック11においては、亀裂誘発部Sの領域Tbに位置する部位の表面が火造り面になる。
【0051】
一方、上記の構成を備えた複数個のガラスブロック11を縦横に配列させてなるガラスブロック壁面構造は、図3に示すように、躯体31に取り付けられた金属製の枠体32内にすべり材33とエキスパンション材34とアンカーピース35とが組み付けられており、このような状態の枠体32内に、側面11dに亀裂誘発部Sが設けられた複数のガラスブロック11が積み上げられている。これらガラスブロック11の適宜の縦横相互間には、横方向及び縦方向にそれぞれ延びるアンカーピース35の穴に挿入して固定されたはしご状の縦力骨36及び横力骨37(2本の筋の間隔は50mmと35mmの2種類がある)が配筋されている。尚、縦力骨36及び横力骨37は、径5.5mmのステンレス製筋の2本をつなぎ筋で溶接してなり、約620mm以下の間隔で配筋されて、充填されたモルタル38により目地内に固定されている。この目地部の表面には化粧目地材39が充填され、枠体32と隣り合う部分にはシリコーン系シーリング材40が配設されている。
【0052】
上記の構造を有するガラスブロック壁を施工する場合には、躯体31に取り付けられた金属製の枠体32内にすべり材33とエキスパンション材34とアンカーピース35とをセットし、このアンカーピース35の穴に縦力骨36となる50mm幅の筋を挿入し固定する。次に、ガラスブロック11を目地部にモルタル38を充填しながら積み上げて、横力骨37となる35mm幅の筋を縦力骨36の2本の筋の間に挿入する。この作業を繰り返してガラスブロック壁を施工していく。このブロック積みの作業が終了した後、目地部に化粧目地材39を充填し、枠体32と隣り合う部分にはシリコーン系シーリング材40を充填し、ガラスブロック壁の施工を終了する。
【実施例1】
【0053】
本発明の実施例1として、亀裂誘発部が側面の引張り歪み発生領域に形成されたガラスブロックを使用して試験体1〜5を製作すると共に、従来技術である比較例1として、亀裂誘発部が側面の引張り歪み発生領域を除く領域に形成されたガラスブロックを使用して試験体6、7を製作し、亀裂誘発部の効果が最も確実に現れる加熱試験により評価を行った。それらの試験体の仕様と評価の結果を、下記の表1及び表2に示す。試験方法は、加熱炉にガラスブロック壁をセットし、JIS A1304−1994規格「建築構造部分の耐火試験方法」(ISO 834 耐火試験に相当)に規定された標準加熱曲細長形に従って建築基準法に定める防火設備の規定に基づく20分間の加熱を行った。試験用のガラスブロック壁における枠体の開口部の寸法は、約2000mm×2000mmであり、ガラスブロックを10列×10段で合計100個を使用し、1仕様当り100個のガラスブロックを使用した。尚、ガラスブロックとガラスブロック壁の各部の形状・構造及び寸法は、ここで特に示す事項を除き、上述の実施形態に係るガラスブロック及びガラスブロック壁と同一である。
【0054】
【表1】

【0055】
上記の表1に示すように、実施例1における試験体1は、ガラスブロックの1側面に最大深さ3mmの楔形を呈する溝からなる亀裂誘発部を形成したものであり、加熱開始1分20秒で亀裂誘発部から最初の亀裂が発生し、加熱開始2分40秒で全てのガラスブロックに亀裂誘発部から亀裂が発生した。試験体2は、ガラスブロックの2側面に最大深さ3mmの楔形を呈する溝からなる亀裂誘発部を形成したものであり、加熱開始1分20秒で最初の亀裂が発生し、加熱開始2分45秒で全てのガラスブロックに亀裂が発生した。試験体3は、ガラスブロックの4側面に最大深さ3mmの楔形を呈する溝からなる亀裂誘発部を形成したものであり、加熱開始1分15秒で最初の亀裂が発生し、加熱開始2分30秒で全てのガラスブロックに亀裂が発生した。試験体4は、ガラスブロックの1側面に最大深さ2mmの楔形を呈する溝からなる亀裂誘発部を形成したものであり、加熱開始1分20秒で最初の亀裂が発生し、加熱開始3分で全てのガラスブロックに亀裂が発生した。試験体5は、ガラスブロックの1側面に最大深さ3mmの断面形状が台形を呈する溝からなる亀裂誘発部を形成したものであり、加熱開始1分40秒で最初の亀裂が発生し、加熱開始3分15秒で全てのガラスブロックに亀裂が発生した。また、試験体1〜5は、その後も爆縮は発生せず、加熱終了の20分まで非加熱側への貫通穴は発生せず優れた遮炎性能を有することが確認された。
【0056】
これに対して、下記の表2に示す比較例1の試験体6は、ガラスブロックの4側面に打痕による点状の亀裂誘発部を形成したものであり、比較例1の試験体7は、ガラスブロックの4側面にサンドブラスト加工による線状の亀裂誘発部を形成したものである。
【0057】
【表2】

【0058】
上記の表2に示すように、比較例1の試験体6では、加熱開始1分30秒で亀裂誘発部に亀裂初期状態が発生し、加熱開始3分10秒までに大半のガラスブロックの亀裂誘発部に亀裂初期状態が発生したものの、いずれも側面の内外を貫通する亀裂には進展せず、加熱開始3分30秒〜50秒の間に3個の爆縮が発生し、破損したガラス片が散乱し非加熱側への貫通穴が開いた。試験体7では、加熱開始3分を経過した時点で亀裂誘発部に亀裂初期状態が発生したが、その後、爆縮が多く発生し、最終的には13個のガラスブロックに爆縮による貫通穴が開くに至った。
【実施例2】
【0059】
本発明の実施例2として、300mm×300mm×95mm厚のガラスブロックの側面にプレス成型により亀裂誘発部を形成した製品を使用して7列×7段の試験体を作製し、加熱試験を実施した。また、比較例2として、300mm×300mm×95mm厚のガラスブロックの側面に亀裂誘発部を形成していない製品を使用して7列×7段の試験体を作製し、同様の加熱試験を実施した。試験方法は、加熱炉にガラスブロック壁をセットし、JIS A1304−1994規格「建築構造部分の耐火試験方法」(ISO 834 耐火試験に相当)に規定された標準加熱曲細長形に従って建築基準法に定める防火設備の規定に基づく20分間の加熱を行った。それらの試験体の仕様と評価の結果を下記の表3に示す。尚、ガラスブロックとガラスブロック壁の各部の形状・構造及び寸法は、ここで特に示す事項を除き、上述の実施形態に係るガラスブロック及びガラスブロック壁と同一である。
【0060】
【表3】

【0061】
上記の表3に示すように、実施例2の試験体は、ガラスブロックの1側面に最大深さ3mmの楔形を呈する溝からなる亀裂誘発部を形成したものであり、加熱開始1分20秒で亀裂誘発部から最初の亀裂が発生し、加熱開始2分40秒で全てのガラスブロックに亀裂誘発部から亀裂が発生した。そして、この試験体は、爆縮が発生せず貫通穴も無く、防火性能上、安全であることを確認した。一方、比較例2の試験体は、加熱後2分10秒から爆縮が発生し、10個の貫通穴が生じた5分経過の時点で試験を終了した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ガラスブロック以外の陶器、セラミックスその他の脆性材からなる中空部が減圧されたブロック及びこのような中空ブロックを用いた壁にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
11 ガラスブロック
11a ガラス成形体
11b 額縁
11c 透光面
11d 側面
11e 溶着部
31 躯体
32 枠体
33 すべり材
34 エキスパンション材
35 アンカーピース
36 縦力骨
37 横力骨
38 モルタル
39 化粧目地材
40 シーリング材
J 透光軸
L ガラス中空体側面の透光面に平行な方向の長さ
P 有効領域
S 亀裂誘発部
Ta 透光面の引張り歪発生領域
Tb 側面の引張り歪発生領域
t 透光面の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面が透光面である有底無蓋の箱型形状を有する一対のガラス成型体が、互いの開放端縁で溶着一体化されたガラス中空体よりなる建築用ガラスブロックであって、
前記ガラス中空体の側面の内外気圧差に起因する引張り歪発生領域に、亀裂誘発部が形成されてなることを特徴とする建築用ガラスブロック。
【請求項2】
前記亀裂誘発部は、前記側面に形成された溝または凹部であることを特徴とする請求項1に記載の建築用ガラスブロック。
【請求項3】
前記亀裂誘発部は、表面が火造り面であることを特徴とする請求項1または2に記載の建築用ガラスブロック。
【請求項4】
前記亀裂誘発部は、プレス成型により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の建築用ガラスブロック。
【請求項5】
前記亀裂誘発部は、細長形状を呈していると共に、該亀裂誘発部の長さ方向が、前記透光面に垂直な透光軸方向に対して±15°以内の角度になるように形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の建築用ガラスブロック。
【請求項6】
前記亀裂誘発部は、前記ガラス中空体の側面の中央を中心として前記透光面に平行な方向の長さの1/4以内の幅の範囲内に形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の建築用ガラスブロック。
【請求項7】
前記亀裂誘発部は、前記透光面に垂直な透光軸に沿う方向の長さが3mm以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の建築用ガラスブロック。
【請求項8】
前記亀裂誘発部は、溶着一体化されてなる一対のガラス成型体のそれぞれに形成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の建築用ガラスブロック。
【請求項9】
前記亀裂誘発部は、ガラス中空体の側面の透光面から透光部肉厚の1.5倍〜4倍の領域に始端を有し、内外気圧差に起因する引張り歪発生領域に終端を有することを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の建築用ガラスブロック。
【請求項10】
一方の透光面の表面積が350cm2以上であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の建築用ガラスブロック。
【請求項11】
複数の建築用ガラスブロックと、該建築用ガラスブロックの相互間に配設される固定材、補強筋及び目地材とを備えるガラスブロック壁面構造であって、
前記建築用ガラスブロックは、底面が透光面である有底無蓋の箱型形状を有する一対のガラス成型体が、互いの開放端縁で溶着一体化されたガラス中空体よりなるものであり、該ガラス中空体の側面の内外気圧差に起因する引張り歪発生領域に、亀裂誘発部が形成されてなるものであることを特徴とするガラスブロック壁面構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−242483(P2010−242483A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142205(P2009−142205)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)