説明

建築用パネル取付構造

【課題】建築用パネルの落下防止効果を得ることができ、安全性及び施工性に優れた建築用パネル取付構造を提供すること。
【解決手段】電気機器3を組み込んだ建築用パネル1を複数枚、隣接して天井又は壁に取り付ける建築用パネル取付構造であって、各建築用パネル1の隣接方向と直交する一側端部2aに、各建築用パネル1の隣接方向に沿って直線上に連なるように形成される配線用空間部8をそれぞれ設けると共に、各配線用空間部8に臨ませて上記電気機器3に電気的に接続される電気的接続部4をそれぞれ設け、上記配線用空間部8に沿って配線される渡り配線18を用いて隣合う電気的接続部4同士を順次接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器を組み込んだ建築用パネルの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、天井面に暖房パネルヒータを取り付け、またそれらに電源電線を配線する天井輻射暖房構造が多用化されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、天井面への暖房パネルヒータの施工途中で万が一外れると、暖房パネルヒータが脱落・落下して作業者に当たる可能性がある。そのため、作業者が複数人で暖房パネルヒータを支えながら取り付け工事や配線工事を行なう必要があり、施工に手間がかかるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−242249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、建築用パネルの落下防止効果を得ることができ、安全性及び施工性に優れた建築用パネル取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、電気機器3を組み込んだ建築用パネル1を複数枚、隣接して天井又は壁に取り付ける建築用パネル取付構造であって、各建築用パネル1の隣接方向と直交する一側端部2aに、各建築用パネル1の隣接方向に沿って直線上に連なるように形成される配線用空間部8をそれぞれ設けると共に、各配線用空間部8に臨ませて上記電気機器3に電気的に接続される電気的接続部4をそれぞれ設け、上記配線用空間部8に沿って配線される渡り配線18を用いて隣合う電気的接続部4同士を順次接続してなることを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、渡建築用パネル1の施工途中或いは施工後に渡建築用パネル1が万が一、天井又は壁から外れた場合でも、各建築用パネル1間にわたって直線上に連なる配線用空間部8に沿って渡り配線18が繋がっていることによって、渡り配線18が各建築用パネル1の荷重を支える形となり、建築用パネル1が落下してしまうことを防止でき、施工の安全性を確保できる。
【0008】
また、上記各渡建築用パネル1は長方形状であり、各渡建築用パネル1を長辺2b同士が互いに隣接するように並列配置すると共に、各渡建築用パネル1の対向する両側の短辺2cにそれぞれ上記電気的接続部4及び配線用空間部8を設けるのが好ましく、この場合、渡建築用パネル1の長辺方向の両端2箇所でそれぞれ渡り配線18によるパネル落下防止効果が得られ、一層の安全化を図ることができると共に、各建築用パネル1の両側の短辺2cに電気的接続部4及び配線用空間部8を配置することで、隣合う電気的接続部4相互間の距離Hを短くでき、これに伴い、建築用パネル1の外れ時に渡り配線18に対して加わる荷重を軽減できるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、建築用パネルに組み込んだ電気機器に対して渡り配線を行なう際に、該渡り配線を利用して、建築用パネルの落下を防止できるものであり、安全性及び施工性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に用いる内装パネル(建築用パネル)の外れ状態を説明する側面図、(b)は他の外れ状態を説明する側面図である。
【図2】(a)は同上の電気機器の電気的接続部に対する渡り配線構造を説明する斜視図、(b)は同上の電気的接続部を収納凹所に収納した状態を説明する斜視図、(c)は同上の電気的接続部を収納凹所から引き出した状態を説明する斜視図である。
【図3】同上の電気的接続部に対する渡り配線の接続完了後の状態を説明する正面図である。
【図4】同上の電気的接続部対する渡り配線の接続が不完全な状態の場合を説明する正面図である。
【図5】同上の複数枚の内装パネルを互いに隣接して並列配置した状態で取付面の一部に取り付けた場合の斜視図である。
【図6】(a)(b)(c)は同上の複数枚の内装パネルの取り付け手順を説明する斜視図である。
【図7】同上のパネル本体の渡り配線構造を説明する正面図である。
【図8】本発明の一実施形態に用いる内装パネル(建築用パネル)を構成するパネル本体と電気機器の分解斜視図である。
【図9】図7の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0012】
本実施形態は、電気機器3として面状ヒータ3Aを内蔵した複数枚の建築用パネル(以下、「内装パネル1」と称する)を例示する。
【0013】
各内装パネル1は、それぞれ、長方形状のパネル本体2とこれに組み込まれる面状ヒータ3Aとで構成されている。
【0014】
パネル本体2は、図8に示すように、基材9と、基材9の表面側に設けられた凹み部11内に嵌め込まれる断熱材10a,10bと、基材9の表面を覆う木製又は樹脂製の表面板12とで構成される。上記基材9は、自己保形性を有する硬質発泡樹脂製或いは木製からなる枠体19とその背後に裏打ちされる背面板13とが一体、或いは、別体で構成されている。上記断熱材10a,10bのうち、背面側に位置する断熱材10aはウレタン等の補強用断熱層として機能し、表面側に位置する断熱材10bは、真空断熱材からなる軽量断熱層として機能する。なお、基材9と補強用の断熱材10aとを別体で構成する以外に、一体に構成することも可能である。
【0015】
上記パネル本体2の短辺2c側の一側端部2aには、図2(a)に示すように、背面板13の側端部13aが基材9を構成する枠体19の側端部19aよりも外方に突出していると共に、表面板12の側端部12aは枠体19の側端部19aとほぼ重なるように配置されている。
【0016】
さらに上記パネル本体2の短辺2c側の一側端部2aには、配線用空間部8が形成される。この配線用空間部8は、該一側端部2aと略直交する方向及び該一側端部2aと隣接する両側の長辺側の他側端部2b,2bにそれぞれ開放されている。図8中の矢印A、C、Cは一側端部2aの開放方向を示している。これにより、複数枚のパネル本体2の他側端部2b,2b同士を互いに隣接して並列配置した状態(図7)では、各パネル本体2の配線用空間部8が一直線上に連続するようになっている。
【0017】
上記配線用空間部8には外部電源供給用の渡り配線18,18a,18bが納められる。本例の配線用空間部8の中央部には、パネル本体2の内側に向けて凹むように収納凹所5が形成されている。この収納凹所5は、後述する中継器4Aを出し入れ可能に収納するものであり、中継器4Aを収納凹所5と配線用空間部8との間で引き出し自在となっている。
【0018】
さらに上記配線用空間部8における収納凹所5とは別の部位、本例では収納凹所5を挟んでその両側に、パネル本体2の内側に向けて凹むように余剰配線収納部20(図3)が設けられており、配線用空間部8に沿って配線される渡り配線18(18a,18b)の余剰部分18cが収納可能とされている。
【0019】
一方、パネル本体2に組み込まれる面状ヒータ3Aは、図8に示すように、パネル本体2の断熱材10bと表面板12との間に介挿されている。面状ヒータ3Aは例えばPTCヒータからなり、風のない輻射方式で室温上昇を抑えつつ、人や布団等を直接暖めることができ、無駄な熱ロスをなくして節電が図られるものであり、しかも空気を過乾燥させず、ハウスダストを巻き上げず、安全でクリーンな輻射暖房を実現できる。本例では、2枚の面状ヒータ3A,3Aを備え、各面状ヒータ3Aが図7に示すパネル本体2の側端部2a,2aに各々配置される電気的接続部4を構成する中継器4Aに電気的に接続されている。なお、面状ヒータ3Aの数は2つに限らず、1つの大面積の面状ヒータ3A(図9)、或いは3つ以上の小面積の面状ヒータであってもよい。これら面状ヒータ3Aは室内に設けた操作器(図示せず)によって運転制御される。
【0020】
また、上記基材9を構成する枠体19の側端部19aに設けた配線溝31(図2(b)(c))を介して、基材9の面状ヒータ3A等を収納する凹み部11(図8)と上記収納凹所5とが互いに連通しており、この配線溝31に沿って面状ヒータ3Aからの給電線17が通線され、給電線17の先端に設けたコネクタ14が上記収納凹所5内に収納された中継器4Aの後端の接続部に接続されている。この給電線17は中継器4Aの引き出し時に追随して引き出され、中継器4Aの押し込み時には無理なく押し込まれるようにしてある。
【0021】
なお、電源側に最も近い配置される一段目のパネル本体2の中継器4A(図2)の片面には、電源供給用の渡り配線18(図2(a))が結線される接続部が設けられ、他面には渡り配線18aの一方のコネクタ15が接続される接続部が設けられる。二段目以降の中継器4A(図3、図4)の両面には、上記渡り配線18aの他方のコネクタ16が接続される接続部と、別の渡り配線18bの一方のコネクタ15が接続される接続部とが設けられる。最終段の中継器4Aの片面には、上記渡り配線18bの他方のコネクタ15(図7)が接続される接続部が設けられる。
【0022】
ここで本発明においては、上記隣合うパネル本体2の電気的接続部4同士を順次接続する電源供給用の渡り配線18,18a,18bが、パネル本体2が取付面30から外れた際のパネル落下防止部材を兼用するものである。そのため渡り配線18,18a,18bは、パネル本体2の外れ時に内装パネル1全体の荷重に対して、千切れや断線が生じない程度の電線コード、例えばVVF電線が用いられる。
【0023】
さらに本例では収納凹所5近傍には、図2(b)(c)に示すように、中継器4Aに接続される渡り配線18a(18b)のコネクタ15(16)の外郭形状に合わせたコネクタ嵌合凹部6が凹設されている。このコネクタ嵌合凹部6は、中継器4Aに対してコネクタ15(16)を確実に接続した場合のみ該コネクタ15(16)がコネクタ嵌合凹部6に嵌合可能とするための不完全接続防止手段を構成する。
【0024】
次に、上記構成の内装パネル1を図5に示すように住宅の天井の一部の取付面30に取り付ける場合の施工手順の一例を説明する。
【0025】
先ず、図6(a)のように配線前の複数枚のパネル本体2を互いに隣接して並列配置した状態で取付面30上に固定ビスで固定する。その後、各パネル本体2の中継器4Aに対して室内側から配線作業を行なう。つまり図2(c)に示すように配線用空間部8を介して中継器4Aを収納凹所5から引き出した状態で、中継器4Aの片面の接続部に渡り配線18aのコネクタ15を接続する。なお中継器4Aの他面の接続部には例えば、図2(a)に示す渡り配線18、或いは、図3に示す渡り配線18bのコネクタ16のいずれか一方を接続する。その後、図2(b)に示すように、中継器4Aを収納凹所5内に押し込む。このとき中継器4Aに対する渡り配線18a(18b)の結線が不完全な場合には、図4に示すように、中継器4Aとコネクタ15(16)との間に隙間Gが発生してコネクタ15(16)がコネクタ嵌合凹部6に嵌まらなくなり、結果、矢印dの方向に押し戻せなくなるため、作業途中で接続不良を容易に確認できる。この要領で、各パネル本体2のそれぞれの中継器4Aに対して渡り配線18,18a,18bを順次接続していく(図7)。最後に、図6(b)(c)に示すように各パネル本体2の側端部2aに廻り縁となる端部カバー21を装着して、配線用空間部7を覆って作業を完了する。
【0026】
しかして、上記構成のパネル本体2を取付面30に取り付け施工した後に、パネル本体2の配線用空間部7に沿わせて、渡り配線18,18a,18bの接続ができ、室内側からの配線作業が容易にできるものである。従って、パネル本体2の施工工事と面状ヒータ3Aの電気配線工事とを分離でき、それぞれの工事を取合いに関係なく行なえるものとなる。
【0027】
ここにおいて、取付面30に対する複数枚の内装パネル1の施工途中で、図1(a)のように端部に位置するパネル本体2が万が一外れた場合、或いは、図1(b)のように中央に位置するパネル本体2が万が一外れた場合は、これらいずれの場合も、各建築用パネル1間にわたって直線上に連なる配線用空間部8に沿って渡り配線18,18a,18bが繋がっているため、これら渡り配線18,18a,18bが、電気機器3付き内装パネル1全体の荷重を支える形となり、内装パネル1が落下して作業者に当たったりする心配がない。従って、施工の安全性を確保しながら一人作業が可能となり、作業能率が向上する。勿論、施工時のみに限らず、施工後の地震等によっても渡り配線18,18a,18bによる落下防止効果によって安全性を長期に亘って維持できるものである。
【0028】
また本例の配線用空間部8は3方向A、C、Cだけでなく正面方向B(図2(a))にも開放されているので、パネル本体2を取付面30に取り付けた状態では配線用空間部8は横方向のみならず下方向にも開放された状態となるため、熟練工でなくても下からの配線作業がよりスムーズにできるようになる。しかも各パネル本体2の対向する両側の側端部2aの各中継器4A同士を、渡り配線18,18a,18bで順次接続することによって、各パネル本体2の両端2箇所で、それぞれ、渡り配線18,18a,18bによるパネル落下防止効果が得られ、一層の安全化を図ることができる。
【0029】
しかも各パネル本体2の短辺2c側に中継器4Aを配置することで、隣合う中継器4A相互間の距離H(図1)が短くなり、これに伴い、パネル本体2の外れ時に渡り配線18,18a,18bに対して加わる荷重が小さくなる。そのうえパネル本体2に内蔵される面状ヒータ3Aや断熱材10a,10b等は比較的軽量であるため、渡り配線18,18a,18bにかかる負担をより軽減化でき、施工の安全をより確保できる。さらに薄型形状によって意匠性が向上するうえに、天井等の取付面30に対して後付け可能となるので、内装パネル1の移設や増設にも容易に対処できる利点もある。
【0030】
さらに本例の渡り配線18,18a,18bには、図3に示す余剰部分18cが存在しているため、余裕をもって中継器4Aに対して配線作業ができると共に、配線後は配線用空間部8の途中に設けた余剰配線収納部20に収納できるので、配線用空間部8の外部に余剰部分18cがはみ出すこともない。さらに配線後は廻り縁となる端部カバー21によって配線用空間部7を覆うことにより、中継器4A及び渡り配線18,18a,18bがそれぞれ外部に露出しなくなる。そのうえパネル本体2の表面板12の一部に配線作業を行なうための作業用開口部を設けたりする必要もないため、内装パネル1全体の見栄えが一層良好となる。
【0031】
なお図7に示すパネル本体2の対向する両側での渡り配線構造に限定されず、例えば図9に示すような片側渡り配線構造であってもよい。
【0032】
また前記実施形態では、内装パネル1を天井面の一部の取付面30に天井輻射暖房パネルとして取り付けた場合を説明したが、壁面の一部に取り付けて壁輻射暖房パネルとしての使用も可能である。
【0033】
さらに電気機器3として、パネル本体2内部に組み込まれる面状ヒータ3Aに限らず、パネル本体2の外部に露出して設けられる電気暖房器具であってもよく、さらには照明、音響の各種設備を備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 内装パネル(建築用パネル)
2 パネル本体
2a 側端部
2b 長辺
2c 短辺
3 電気機器
4 電気的接続部
18 渡り配線
30 取付面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を組み込んだ建築用パネルを複数枚、隣接して天井又は壁に取り付ける建築用パネル取付構造であって、各建築用パネルの隣接方向と直交する一側端部に、各建築用パネルの隣接方向に沿って直線上に連なるように形成される配線用空間部をそれぞれ設けると共に、各配線用空間部に臨ませて上記電気機器に電気的に接続される電気的接続部をそれぞれ設け、上記配線用空間部に沿って配線される渡り配線を用いて隣合う電気的接続部同士を順次接続してなることを特徴とする建築用パネル取付構造。
【請求項2】
上記各建築用パネルは長方形状であり、各建築用パネルを長辺同士が互いに隣接するように隣接配置すると共に、各パネル本体の対向する両側の短辺にそれぞれ上記電気的接続部及び配線用空間部を設けてなることを特徴とする請求項1記載の建築用パネル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−180564(P2010−180564A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23139(P2009−23139)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】