説明

建築用パネル

【課題】山部を有していても厚み方向への反り変形を生じさせない建築用パネルを提供する。
【解決手段】2枚の金属外皮2,3の間に樹脂芯材4を充填すると共に一方の金属外皮2に外方に突出する山部5が形成されて成る建築用パネル1である。山部5の内側面部と山部5内に充填された樹脂芯材4との間に離型材料7を介装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチ構造の建築用パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、2枚の金属外皮2,3の間に樹脂芯材4を充填して成るサンドイッチ構造の建築用パネル1には、図3のように、隣接する建築用パネル1同士を連結させたり、意匠性を向上させたりする等の理由から、パネル前面を構成する金属外皮2を外方に折り曲げて山部5を突出形成することが行われている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このサンドイッチ構造の建築用パネル1にあって樹脂芯材4は、溶融状態で金属外皮2,3間に充填した後に冷却、固化するのであって、この冷却過程で充填時の体積から多少の収縮が生じる。金属外皮2,3間に充填した樹脂芯材4は自己接着力により金属外皮2(3)の内面に接着するから、上記収縮する樹脂芯材4によると金属外皮2(3)に内側に引っ張るような収縮力が作用する。
【0004】
山部5が形成されたパネルの箇所では、平板状のパネル基部8の箇所に比べて樹脂芯材4の充填量が多いことからこれに比例して樹脂芯材4の収縮量、ひいては金属外皮2にかかる収縮力が大きくなるのであり、そして、図4のように、金属外皮2で構成される山部5の一対の側面部6は、その前端部分では山部5の前面部9を構成する金属外皮2で連結されているものの、その他の部位では樹脂芯材4を介して対向する関係にあるから、上記樹脂芯材4による収縮力(矢印A)を受けて山部5の突出基部側ほど内方に凹むような変形が生じ易く、結果、厚み方向に建築用パネル1が反り変形してしまう不具合が発生することとなっていた。
【特許文献1】特開2004−150259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて為したものであって、山部を有していても厚み方向への反り変形を生じさせない建築用パネルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る建築用パネルは、2枚の金属外皮2,3の間に樹脂芯材4を充填すると共に一方の金属外皮2に外方に突出する山部5が形成されて成る建築用パネル1であって、山部5の内側面部と山部5内に充填された樹脂芯材4との間に離型材料7を介装したことを特徴とする。山部5の内側面部に配置した離型材料7によると、山部5の内側面に樹脂芯材4を接着させない状態にでき、つまり冷却、固化する際に収縮する樹脂芯材4による収縮力を山部5の側面部6に作用させないようにできるから、山部5の側面部6に変形を生じさせないようにできるのであり、結果、この山部5の側面部6の変形に起因して発生する建築用パネル1の厚み方向への反り変形を生じさせないようにできる。
【0007】
また、請求項2に係る建築用パネルは、請求項1において、上記離型材料7を、金属板材7aで構成したことを特徴とする。これによると、金属板材7aで構成した離型材料7によって、建築用パネル1に反り変形を生じさせないことに加えて、山部5の側面部6を補強できる。
【0008】
また、請求項3に係る建築用パネルは、請求項1において、上記離型材料7を、山部5の内側面に塗布した離型剤で構成したことを特徴とする。これによると、離型材料7を構成する離型剤は山部5の内側面の隅々にまで漏れなく塗布することが容易であり、山部5の側面部6と樹脂芯材4とを確実に縁切りできて建築用パネル1の反り変形の防止を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、山部内に充填された樹脂芯材の収縮時の収縮力を金属外皮で構成される山部の側面部に作用させずに、山部の側面部の変形ひいては建築用パネルの厚み方向への反り変形を防止できる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0011】
本例の建築用パネル1は、屋根パネルや壁パネルとして利用されるものであって、図1のように、パネル前面を構成する金属外皮2とパネル後面を構成する金属外皮3との間に樹脂芯材4を充填して成るサンドイッチ構造に形成されており、平板状のパネル基部8から前方に突出した山部5を備えている。ここで、金属外皮2,3としてはガルバリウム鋼板が、樹脂芯材4としてはポリイソシアヌレートフォームや硬質ポリウレタン等の断熱性能に優れた発泡性樹脂が好適に用いられる。詳しくは、建築用パネル1の一側端部にはパネル接続用の山部5aが形成されており、他側端部にはパネル前面の金属外皮2を側方に延出して成る被覆片10が突設されている。被覆片10の突出先端部と突出基端部には凸状にされた係止部11がそれぞれ設けられており、山部5の両側面部6の突出基部に形成された凹部12に上記係止部11をそれぞれ係止させることで、左右に隣接する建築用パネル1の間で被覆片10が山部5に被覆した状態で取り付いて、上記隣接する建築用パネル1同士が連結されるようになっている(図2)。また、この建築用パネル1の左右中央部には、上記パネル接続用の山部5aに被覆片10を被着した外観と略同じ外観になるような化粧用の山部5bが形成されている。この山部5bの側面部6の突出基部にも凹部12が形成されているが、この凹部12は施工者が建築用パネル1を掴み持って運ぶ際の指の引っ掛け部分として機能する。
【0012】
詳しくは、山部5は、その表面がパネル前面の金属外皮2で形成されており、内部には樹脂芯材4が充填されている。詳しくは、山部5の両側面部6はパネル基部8の前面から前方に屈曲させた金属外皮2の部位で構成されており、山部5の前面部9は上記側面部6の前端同士間を連結するような金属外皮2の部位で構成されている。そして、この山部5にあっては、山部5の内側面部(山部5の側面部6の内面部分)と、山部5内に充填された樹脂芯材4との間に、離型材料7が介装されている。自己接着力を有した樹脂芯材4はそのままでは金属外皮2の内面に接着してしまうのであるが、離型材料7を所定位置に配置した後に樹脂芯材4を充填させることで、上記離型材料7によって樹脂芯材4と金属外皮2で構成された山部5の側面部6の内面とを非接着状態にさせている。
【0013】
樹脂芯材4は冷却、固化する際に体積を縮小させるように収縮するのであって、特に山部5が形成されたパネルの箇所では平板状のパネル基部8の箇所に比べて樹脂芯材4の収縮量、その収縮力が大きいのであるが、上記のように離型材料7によって山部5の側面部6の内面に樹脂芯材4を接着しない状態にできたことから、冷却、固化する際に収縮する樹脂芯材4による収縮力を山部5の側面部6に作用させないようにできるのであり、しかして、この山部5の側面部6に変形を生じさせないようにできるのであって、結果、山部5の側面部6の変形に起因して発生する建築用パネル1の厚み方向(前後方向)への反り変形を生じさせないようにできたものである。
【0014】
ここで、本例の離型材料7としては山部5の側面部6の内面に沿って配置した金属板材7aで構成させている。樹脂芯材4は山部5の側面部6の内面の代わりに離型材料7としての金属板材7aに自己接着力によって接着するのであって、収縮した樹脂芯材4はこの離型材料7としての金属板材7aを変形させるのであるが、上記樹脂芯材4が接着されない山部5の側面部6は変形されないのである。更に言うと、本例の離型材料7としては、金属外皮2で構成した山部5の表面の全内面に沿うように配置した1枚の金属板材7aが用いられている。つまり、この1枚の金属板材7aは山部5の外形形状を一廻り小さくしたような形状に形成されている。山部5の側面部6の内面を被覆するには、山部5の側面部6にのみ沿わせて配置した2枚の金属板材7aを用いることもできるが、本例のように山部5の表面の全内面に沿わせた1枚の金属板材7aを用いることで、離型材料7を山部5内の所定箇所に簡単に配置できて建築用パネル1の製造性の向上が図られている。無論、この山部5の表面の全内面に沿わせて配置した離型材料7によると、山部5の側面部6はもとより、金属外皮2で構成される山部5の前面部9への樹脂芯材4の接着も防止できるから、樹脂芯材4の収縮に起因する山部5全体の変形防止も図られている。
【0015】
また、離型材料7に金属板材7aを用いた場合にはこの金属板材7aが山部5の補強材としても機能する。パネル接続用の山部5aには被覆片10が取り付けられて隣接する建築用パネル1同士の接続が行われるのであって、つまり山部5の側面部6には凹部12が形成されると共にこの凹部12に被覆片10の係止部11が係止されて建築用パネル1同士の接続強度を確保することとなるので、山部5の側面部6を構成するパネル表面側の金属外皮2には高い剛性強度が必要とされるのであり、そのため従来ではパネル表面側の金属外皮2には特に高い剛性強度が必要とされないパネル後面側の金属外皮3に比べて厚みの厚い金属外皮用板材を用いることも行われていたが、本例のように離型材料7としての金属板材7aが山部5の側面部6を補強したことによると、山部5の側面部6を構成するパネル表面側の金属外皮2にパネル後面側の金属外皮3と同様の比較的薄い金属外皮用板材を用いることができ、建築用パネル1のコストの低廉化を図ることができる。
【0016】
また、離型材料7としては樹脂芯材4が密着できない任意の材料を用いることができる。たとえば、離型材料7として離型紙や、油剤やワックス剤などの離型剤を用いることができる。離型材料7としての離型紙や離型剤は先の金属板材7aに比べてコストが安いという利点があり、また、離型材料7として離型剤を用いた場合には、山部5の内側面(山部5の側面部6を構成する金属外皮2の内面)の隅々にまで漏れなく塗布することが容易であり、山部5の側面部6と樹脂芯材4とを確実に縁切りできて建築用パネル1の反り変形の防止を確実に図ることができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の例の建築用パネルの断面斜視図である。
【図2】同上の建築用パネル同士を接続した状態の断面図である。
【図3】従来技術の例の建築用パネルの断面図である。
【図4】同上の建築用パネルの問題点を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 建築用パネル
2 金属外皮
3 金属外皮
4 樹脂芯材
5 山部
6 側面部
7 離型材料
7a 金属板材
8 パネル基部
9 前面部
10 被覆片
11 係止部
12 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の金属外皮の間に樹脂芯材を充填すると共に一方の金属外皮に外方に突出する山部が形成されて成る建築用パネルであって、山部の内側面部と山部内に充填された樹脂芯材との間に離型材料を介装したことを特徴とする建築用パネル。
【請求項2】
上記離型材料を、金属板材で構成したことを特徴とする請求項1記載の建築用パネル。
【請求項3】
上記離型材料を、山部の内側面に塗布した離型剤で構成したことを特徴とする請求項1記載の建築用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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