説明

建築用型枠およびそのアッセンブリタイ

【課題】 複数の断熱パネルを連結バーを介して鉛直方向に順次に立て込んで形成される建築用断熱型枠において、上下に接合される断熱パネルの接合面間に打設コンクリートが入り込むのを低減して、断熱型枠の断熱性を高める。
【解決手段】 内、外の断熱型枠Mi,Moの連結バーJ同士をアッセンブリタイ20により連結してなる建築用型枠において、アッセンブリタイ20の、上下段の断熱パネル1,1の接合面1u,1d間に挟まれる部分には凹部22を形成し、その凹部22に断熱パネル1の突条部4が入り込んで密に着座される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート躯体を成形すべく、コンクリートの打設空間を存して立て込まれる内、外断熱型枠よりなる建築用型枠およびそれに直接使用されるアッセンブリタイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物において、そのコンクリート躯体を成形するための建築用型枠を、コンクリート打設空間をあけて互いに平行に立て込まれる、内、外の断熱型枠と、それらの断熱型枠を一体に橋架結合する複数のかすがい状のアッセンブリタイとより構成したもの公知である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−76396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記特許文献1に開示される建築用型枠は、複数段に鉛直方向に積み重ねられる断熱パネルの接合面間にそれぞれバー部材を差込んで、各上下段の断熱パネルを連結して内、外の断熱型枠を建て込み、それら内、外の断熱型枠の相対応するバー部材同士を、アッセンブリタイにより橋架結合して構成されている。そのため、互いに接合される上下段の断熱パネルの接合面間の内面側(コンクリート打設側)には、バー部材の厚さと、アッセンブリタイの太さの和に相当する隙間が形成される(前記特許文献1の図6参照)のを余儀なくされ、コンクリートを打設した際に、打設コンクリートの一部が前記隙間に入り込んで、内、外の断熱型枠に断熱欠損を生じてその断熱性が損なわれるばかりでなく上下段の断熱パネルの接合面の取り合いが悪くコンクリート打設時の圧力で断熱パネルに倒れ現象を生じるという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、前記問題を解決できるようにした、新規な建築用型枠およびその型枠に直接使用するアッセンブリタイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、コンクリートの打設空間を存して互いに平行に立て込まれる内、外の断熱型枠を、上下方向に複数段に積み込まれる複数の断熱パネルと、各上下段の断熱パネルの接合面間に差し込まれて、上下段の断熱パネルをそれぞれ結合する複数の連結バーとより構成し、内、外の断熱型枠の相対応する連結バー同士を複数のアッセンブリタイにより一体に連結してなる建築用型枠において、
前記アッセンブリタイは、中間部分と、その中間部分の両端より略直角に折り曲げられる両折曲端部とを有し、前記両折曲端部は前記連結バーに穿設した差込孔に差し込まれ、また、前記直状部分の、上下段の断熱パネルの接合面間に挟まれる部分には凹部が形成され、その凹部に断熱パネルの接合面に形成した突条部が密に着座されることを特徴としている。
【0006】
また、上記目的を達成するために、請求項2記載の発明は、前記請求項1記載のものにおいて、上下段の断熱パネルの互いに接合される接合面のうち、直接接合する部分は相互に密接されることを特徴としている。
【0007】
さらに、上記目的を達成するために、請求項3記載の発明は、建築用型枠に直接使用されるアッセンブリタイであって、金属線材によりかすがい状に形成されており、直状の中間部分と、その中間部分の両端から折り曲げれる左右端部分よりなり、前記中間部分の、左右端部寄りの部分には、その中間部分の上下厚さよりも薄い平坦部を有する凹部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本請求各項記載の発明によれば、断熱パネルの互いに接合される断熱パネルの接合面間に形成される隙間を極力小さくすることができるので、それらの接合面間に打設コンクリートが入り込むのを可及的に低減することができ、断熱型枠の断熱欠損を大幅に減少させてその断熱性を高めることができる。また上下段の断熱パネルの接合面の取り合いがよくなるため、断熱パネルの倒れを防止して建築用型枠の施工精度を大幅に向上させることができる。
【0009】
また、特に請求項2記載の発明によれば、上下段の断熱パネルの接合面の取り合いが一層よくなり、断熱パネルの倒れをより確実に防止することができる。
【0010】
さらに、特に請求項3記載の発明によれば、建築用型枠に使用されるアッセンブリタイは、従来のものに僅かな改良を加えることで構成されるので、廉価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0012】
図1は、断熱パネルおよびアッセンブリタイの斜視図、図2は、図1の2−2線に沿う断面図、図3は、図2の3矢視仮想線囲い部分の拡大図、図4は図3の4−4線に沿う断面図、図5は、図1の5矢視仮想線囲い部分の拡大図、図6は、組み立てられた建築用型枠の断面図である。
【0013】
図1〜4において、型枠パネルとしての断熱パネル1は、硬質の断熱合成樹脂材により、全体が横長の長方形の板状に形成されており、その上端面1uには、後述の連結バーJが、該断熱パネルの全長にわたり固定される。
【0014】
前記断熱パネル1は、高断熱性であり、しかも軽量であるポリスチレン、ポリウレタンなどの硬質の発泡合成樹脂材により横長の長方形に構成されている。断熱パネル1の外面1oおよび内面1iは、いずれも平坦面に形成されている。また、断熱パネル1の接合面となる、上端面1uおよび下端面1dには、その全長にわたりその厚み方向の中間部にスリット2が形成される。さらに、断熱パネル1に下端面の内面側1i寄りには、前記スリット2と平行に凹溝3が形成されるとともの内面1i側の下端に突条部4が形成されている。
【0015】
図1〜4において、前記連結バーJは、金属板または硬質合成樹脂板により形成され、断熱パネル1の横方向の長さと略同じ長さを有しており、平坦な板状に形成される水平部10と、この水平部10の一端(図2,3左端)より上下方向に略直角に対称的に起立形成される上、下差込部11U,11Dとを備えて横断面横T状に形成され、その幅は、断熱パネル1の厚さよりも短く形成されている。上、下差込部11U,11Dの肉厚t1 は、水平部10の肉厚t2 よりも若干厚く形成されている。また、水平部10には、その長手方向に間隔をあけて複数の差込孔14…がそれぞれ穿設され、それらの差込孔14…に後述するアッセンブリタイ20の折曲部20eがそれぞれ差込み連結される。
【0016】
図2,3に明瞭に示すように、断熱パネル1の水平部10は、断熱パネル1の厚み幅よりも幅狭に形成されて、断熱パネル1が立て込まれるとき、それらの上端面1uと下端面1dとの間に挟持される。また、前記上、下差込部11U,11Dは、それらの先端に鋸歯状の抜止め歯11tが一体に形成され、断熱パネル1のスリット2に差し込み結合される際に、抜止め歯11tはスリット2に食い込んでその抜け出しが防止される。
【0017】
前記連結バーJは、予め工場などで断熱パネル1の接合面、すなわち上端面1uに固定しておく。この固定状態では、図3に示すように、連結バーJの一方の下差込部11Dは、断熱パネル1のスリット2内に差し込み固定され、その水平部10は、断熱パネル1の上端面1uに当接される。この場合、断熱パネル1と連結バーJは、接着剤により接着する。
【0018】
以上のように、接合面となる上端面に連結バーJを固定した断熱パネル1は、建築現場などに搬送されて、建築用型枠Mの組み付けに供される。
【0019】
図6に示すように、コンクリートの打設空間Sを存して互いに平行に立て込まれる断熱パネル1,1は、複数のアッセンブリタイ20によりを一体に連結される。
【0020】
図5に最も明瞭に示すように、アッセンブリタイ20は、鉄線などの断面円形の金属線材により、全体が「かすがい」状に形成されており、直状の中間部分20nと、その中間部分20nの両端から略直角に折曲される、両折曲端部20e,20eとを有しており、それらの折曲端部20e,20eの先端は、斜めにカットされて先鋭に形成されていて、前記連結バーJの差込孔14に差し込み易くしてある。また、アッセンブリタイ20の中間部分20nの、折曲端部20eに近い部分、すなわち上下段の断熱パネル1,1の上、下端面、すなわち接合面1u,1d間に挟まれる部分には、その中間部分20nの上下厚さよりも薄い平坦部21を有する凹部22が一体に形成されている。この凹部22には、下段の断熱パネル1に、上段の断熱パネルを接合するとき、上段の断熱パネルの内側面1iの下端に形成される突条部4が密に着座され、上下段の断熱パネル1,1の接合面1u,1d間の間隙dが狭まるようにされている。
【0021】
また両折曲端部20e,20eの基部の外周面の内側(中間部側)には、その外周面より外方に隆起する隆起部30が一体に突出加工されている。この隆起部30は、この実施例では、ポンチの打込みにより形成される円錐状の凹部31の外周部分に突出加工される。
【0022】
なお、前記隆起部30の加工は、他の加工手段により行ってもよい。
【0023】
断熱パネル1にアッセンブリタイ20を連結するには、図2に示すように、断熱パネル1の上端面に予め固定されている連結バーJの差込孔14に、その上方からアッセンブリタイ20の一方の折曲端部20eを差し込み連結する。このとき、折曲端部20eの隆起部30は差込孔14の縁に引っ掛かるので、アッセンブリタイ20をその上方から押し込むか、叩くようにする。これにより、隆起部30は差込孔14を貫通して、該差込孔14の縁に係合されて、アッセンブリタイ20を差込孔14に確りと差し込み連結することでき、打設生コンクリートの圧力で、緊結部材20が差込孔14から浮き上がって、抜け出ることが防止される。
【0024】
つぎに、図6を参照して、断熱パネル1、連結バーJおよびアッセンブリタイ20を用いて、建築用型枠Mを組み付ける手順について説明する。
【0025】
建築用型枠Mは、基礎上に、コンクリート打設空間Sを存して互いに平行に立て込まれる内、外の断熱型枠Mi,Moにより構成される。
【0026】
なお、以下の説明において、上段の断熱パネル1に符号(U)を、下段の断熱パネル1に符号(D)を添字する。
【0027】
下段の断熱パネル1(D)に、上段の断熱パネル1(U)を建て込み連結するに際し、予め連結バーJを固定した、内、外の下段の断熱パネル1(D),1(D)を、鉛直状態に保持し、それら両断熱パネル1(D),1(D)の連結バーJ,Jの複数の差込孔14,14に、前述のようにアッセンブリタイ20の折曲端部20eを差し込み連結する。これにより、内、外の下段の断熱パネル1(D),1(D)同士は、コンクリート打設空間Sをあけて鉛直状態に堅固に保持される。
【0028】
つぎに、下段の断熱パネル1(D)上に上段の断熱パネル1(U)を立て込む。このとき、図3に示すように、上段の断熱パネル1(U)のスリット2は、連結バーJの上差込部11Uに差込み固定されると同時に上段の断熱パネル1(U)の凹溝3内にアッセンブリタイ20の中間部分20nの端部が受容されると共に上段の断熱パネル1(U)の突条部4が、アッセンブリタイ20の薄肉の平坦部21を有する凹部22に密に着座される。これにより、下段の断熱パネル1(D)と上段の断熱パネル1(U)の接合面1d,1u間にアッセンブリタイ20が挟まれていても、それらの接合面1d,1u間の隙間d(図3,4参照)を極力縮小することができ、それらの接合面1d,1u間への打設コンクリートの入り込みを可及的に減少させることができる。さらに、下段の断熱パネル1(D)の接合面1uと上段の断熱パネル1(U)の接合面1dのうち、直接接触する部分z(連結バーの存在しない部分、図3参照)は密接されるので、前記構成と相俟って下段の断熱パネル1(U)と上段の断熱パネル1(U)との接合面の取り合いか極めてよくなり、断熱パネル1(D)上に上段の断熱パネル1(U)を堅固に安定支持することができ、打設コンクリートからの側圧を受けても上段の断熱パネル1(U)が倒れることが抑止される。
【0029】
さらに、生コンクリートの打設時には、内、外断熱パネル1,1を連結しているアッセンブリタイ20には、生コンクリートの打設圧力によって、浮き上がり方向、すなわち抜き方向の力が作用するが、緊結部材20の両折曲端部20e,20eに加工した隆起部30,30は、連結片13,13の差込孔14,14に係合しているので、緊結部材20が、生コンクリートの打設圧力により浮き上がることがない。
【0030】
コンクリート躯体の成形完了後は、内、外側の断熱パネル1は、そのまま断熱建材として使用することができ、その際に、それらの平坦な外面1oには、モルタルなどの湿式外装材、あるいはタイルなどの乾式外装材を積層するのが容易である。また、内、外側の断熱パネル1は、コンクリート躯体から解体して通常の型枠パネルとして再利用することもできる。
【0031】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】断熱パネルおよびアッセンブリタイの斜視図
【図2】図1の2−2線に沿う断面図
【図3】図2の3矢視仮想線囲い部分の拡大図図3の4矢視仮想線囲い部分の拡大図
【図4】図4は図3の4−4線に沿う断面図
【図5】図1の5矢視仮想線囲い部分の拡大図
【図6】組み立てられた建築用型枠の断面図
【符号の説明】
【0033】
1・・・・・・・・・・断熱パネル
4・・・・・・・・・・突条部
14・・・・・・・・・・差込孔
20・・・・・・・・・・アッセンブリタイ
20n・・・・・・・・・中間部分
20e・・・・・・・・・折曲端部
21・・・・・・・・・・平坦部
22・・・・・・・・・・凹部
J・・・・・・・・・・連結バー
Mi・・・・・・・・・内断熱型枠
Mo・・・・・・・・・外断熱型枠
S・・・・・・・・・・・コンクリート打設空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの打設空間(S)を存して互いに平行に立て込まれる内、外の断熱型枠(Mi,Mo)を、上下方向に複数段に積み込まれる複数の断熱パネル(1)と、各上下段の断熱パネル(1,1)の接合面(1u,1d)間に差し込まれて、上下段の断熱パネル(1,1)をそれぞれ結合する複数の連結バー(J)とより構成し、内、外の断熱型枠(Mi,Mo)の相対応する連結バー(J)同士を複数のアッセンブリタイ(20)により一体に連結してなる建築用型枠において、
前記アッセンブリタイ(20)は、中間部分(20n)と、その中間部分(20n)の両端より略直角に折り曲げられる両折曲端部(20e,20e)とを有し、前記両折曲端部(20e,20e)は前記連結バー(J)に穿設した差込孔(14)に差し込まれ、また、前記直状部分(20n)の、上下段の断熱パネル(1,1)の接合面(1u,1d)間に挟まれる部分には凹部(22)が形成され、その凹部(22)に断熱パネル(1)の接合面(1d)に形成した突条部(4)が密に着座されることを特徴とする、建築用型枠。
【請求項2】
上下段の断熱パネル(1,1)の互いに接合される接合面(1u,1d)のうち、直接接合する部分(z)は相互に密接されることを特徴とする、前記請求項1記載の建築用型枠。
【請求項3】
建築用型枠に直接使用されるアッセンブリタイ(20)であって、金属線材によりかすがい状に形成されており、直状の中間部分(20n)と、その中間部分(20n)の両端から折り曲げれる左右端部分(20e,20e)よりなり、前記中間部分(20n)の、左右端部(20e,20e)寄りの部分には、その中間部分(20n)の上下厚さよりも薄い平坦部(21)を有する凹部(22)が形成されていることを特徴とする、建築用型枠のアッセンブリタイ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−150884(P2008−150884A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340829(P2006−340829)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(500310432)株式会社ヒーローライフカンパニー (7)
【出願人】(501044138)株式会社スターハウス・インターナショナル (6)