説明

建設機械のステップ付きキャブフロントガード

【課題】工具等を用いないで、フロントガードとしての使用とステップとしての使用とを短時間で切り換えられる建設機械のステップ付きキャブフロントガードを実現する。
【解決手段】キャブフロントガード2aの裏面には複数段に亘ってステップ4が設けられている、また、キャブフロントガード2aの表面には、特に図示されていないが、作業中に飛来する岩石の破片や小枝からキャブ20の表面ガラスを保護するために、縦横格子状の棒体が設けられている。このキャブフロントガード2aは、キャブ20の下部又はフレーム1に設けられたヒンジ3を支点として回動自在に構成されている。このような構成により、キャブフロントガード2aが下方へ回動したときはステップ4が昇降用の足場となる。従って、キャブ20の前面に設けたキャブフロントガード2aを昇降用の梯子となるステップ4として利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械のステップ付きキャブフロントガードに関するものであり、特に、キャブの前面に取り付けられているキャブフロントガードをステップ(昇降用の足場)として兼用できるように構成した、建設機械のステップ付きキャブフロントガードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械は、下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置(エンドアタッチメント)とによって大略構成されている。また、上部旋回体のフレーム上には運転室を構成するキャブが設けられている。該キャブの運転席の前面には、岩石の破片、土砂、あるいは小枝などの飛来を阻止するためのキャブフロントガードが設置されることがあり、また、該キャブの前面下部には、運転室の前面ガラスの清掃や各種のメンテナンス等を行うための昇降用の足場(梯子)となるステップが取り付けられることがある。このようなステップは、例えば、ボルト、ナットなどによってキャブの側面などに固定的に設置されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)
【0003】
ところが、特許文献1、2に開示されたような従来の建設機械では、キャブの前面や側面にキャブフロントガードとステップを個別に備えなければならないので、キャブの構造が複雑になってしまう。また、キャブの前面や側面にキャブフロントガードとステップの両方を設けた場合はキャブ前部の重量が増加してしまう。さらに、ステップが運転室前面の下部に突き出したままの状態であると、建設機械の作業時において、油圧ショベル等のアームの先端に取り付けられたバケットやエンドアタッチメント等がステップに接触して、これらのバケットやエンドアタッチメント及びステップを損傷させるおそれがある。
【0004】
そこで、このような不具合を回避するために、運転室の前面下部に取り付けられたキャブフロントガードの全部又は一部を前側に倒すことによってスッテップとして使用できるように、キャブフロントガードとステップとが兼用できるように構成されたキャブフロントガード兼用ステップの技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この技術によれば、建設機械の作業中は通常のキャブフロントガードとして使用するが、該建設機械のメンテナンス時などにおいては、このキャブフロントガードを前側に回動させて、水平状態又は梯子の状態の位置で固定することによって昇降用のステップとして使用することができる。したがって、建設機械を停止させてメンテナンス等を行うときはキャブフロントガードを前側に倒してステップとして使用し、建設機械の作業中にはキャブ前面の位置に戻して通常のキャブフロントガードして使用することができる。
【0005】
また、関連技術として、油圧によってキャブ昇降シリンダを伸縮作動させることによってキャブを昇降させる技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この技術によれな、オペレータがキャブに昇降するときやメンテナンスを行うときは、キャブ昇降シリンダによってキャブ自体を所望の高さに昇降させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−45297号公報
【特許文献2】特開2008−95326号公報
【特許文献3】特開平10−147956号公報
【特許文献4】特開2007−106564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に開示された技術では、キャブの前面と側面にキャブフロントガードとステップを個別に設けなければならないので、キャブ前部における重量が増加して建設機械の安定性が悪くなってしまう。さらに、ステップが運転室の側面に突き出したままの状態であるので、建設機械の幅方向の長さが長くなるため、走行時や作業時において幅方向にゆとりがなくなり、該建設機械の走行性や作業性が悪くなってしまう。
【0008】
また、上記特許文献3に開示されたキャブフロントガード兼用ステップは、運転室前面の下部に取り付けられたキャブフロントガードを水平方向又は下方向へ前倒ししてストッパで固定すればステップとして使用することができるが、キャブの前面側に閉じてキャブフロントガードとして使用するときにはステップを水平位置又は下方向の位置から垂直方向に持ち上げ、キャブ前面の所定位置で該キャブフロントガードの上端部分をボルト締めして固定しなければならない。従って、キャブフロントガードとして使用したりステップとして使用したりする場合は、その都度、スパナなどのボルト・ナット締め工具が必要になると共に、キャブフロントガードとステップとの切り換え作業に時間がかかってしまう。
【0009】
さらに、特許文献4の技術は、キャブ昇降シリンダを伸縮させることによってキャブを任意の高さに昇降させることができるが、キャブが高い位置にあるときにキャブ昇降シリンダ等が故障してキャブが昇降不能になった場合には、該キャブの後面ガラスを取り外すか又は破損して、緊急避難用の昇降手段から脱出しなければならない。
【0010】
すなわち、キャブ昇降装置によってキャブを昇降させることができる建設機械においては、該キャブ昇降装置等の故障によってキャブが上昇したまま降下不能になった場合は、キャブの後方に取り付けられたキャブ昇降装置に付設された緊急用ステップ(緊急用梯子)を利用してキャブから脱出しなければならない。このような場合は、キャブの後面ガラスを割るか取り外すかしてから緊急用ステップに移動しなければならないので、緊急時の脱出作業が極めて面倒である。
【0011】
そこで、工具等を用いることなく、キャブフロントガードとしての使用とステップとしての使用とを短時間で切り換えられることができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードを実現するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、キャブの前面に設けたキャブフロントガードを、昇降用のステップとして兼用することができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードであって、前記キャブフロントガードは、一面に前記ステップを備えると共に、前記キャブの下部又はフレームに設けられたヒンジを支点として回動自在に連結され、該キャブフロントガードが下方へ回動したときは、前記ステップが昇降用の足場となることを特徴とする建設機械のステップ付きキャブフロントガードを提供する。
【0013】
この構成によれば、キャブフロントガードは一面(例えば、裏面)にステップを備えると共に、該キャブフロントガードはキャブの下部又はフレームに設けられたヒンジを支点として自在に回動できるようになっている。従って、キャブフロントガードを下方へ回動させれば、キャブフロントガードの一面(例えば、裏面)に付設されたステップを昇降用の足場として使用することができるので、キャブフロントガードを昇降用のステップとして兼用することが可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明は、キャブの前面に設けたキャブフロントガードを、昇降用のステップとして兼用することができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードであって、前記キャブフロントガードは、一面に前記ステップを備えると共に、前記キャブの前面に設けられたガイドレールを自在に摺動できるように取り付けられ、該キャブフロントガードが下方へ摺動したときは、前記ステップが昇降用の足場となることを特徴とする建設機械のステップ付きキャブフロントガードを提供する。
【0015】
この構成によれば、キャブフロントガードは一面(例えば、表面)にステップを備えると共に、該キャブフロントガードはキャブの前面に設けられたガイドレールを自在に摺動できるようになっている。従って、キャブフロントガードを下方へ摺動させれば、キャブフロントガードは一面(例えば、表面)に付設されたステップを昇降用の足場として使用することができるので、キャブフロントガードを昇降用のステップとして兼用することが可能となる。
【0016】
請求項3記載の発明は、キャブの前面に設けたキャブフロントガードを、昇降用のステップとして兼用することができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードであって、前記キャブフロントガードは、縦方向に複数個に分割されていると共にそれぞれの一面に前記ステップを備え、且つ、分割されたそれぞれのキャブフロントガードのうちの1つは前記キャブの下部又はフレームに設けられたヒンジを支点として回動自在に連結されると共にその他のキャブフロントガードは隣接するキャブフロントガードにヒンジを支点として個別に回動自在に連結され、前記キャブの下部又はフレームに回動自在に連結されたキャブフロントガード及び隣接するキャブフロントガードに回動自在に連結されたキャブフロントガードが回動することで、それぞれのキャブフロントガードのステップが縦方向に連続されて昇降用の足場となることを特徴とする建設機械のステップ付きキャブフロントガードを提供する。
【0017】
この構成によれば、キャブフロントガードは縦方向に複数個に分割されていると共にそれぞれの一面にステップを備えている。さらに、分割されたそれぞれのキャブフロントガードは連結されたヒンジを支点として個別に回動自在に構成されている。従って、分割されたキャブフロントガードを下方へ回動させれば、それぞれのキャブフロントガードのステップが縦方向に連続されて昇降用の足場となる。これにより、キャブが高い位置へ上昇した場合でも、キャブフロントガードを昇降用のステップとして利用することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、キャブの前面に設けたキャブフロントガードを、昇降用のステップとして兼用することができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードであって、前記キャブフロントガードは、縦方向に複数個に分割されていると共にそれぞれの一面に前記ステップを備え、且つ、分割されたそれぞれのキャブフロントガードは前記キャブの前面に設けられたガイドレールを自在に摺動できるように取り付けられ、分割されたキャブフロントガードが下方へ摺動したときは、それぞれのキャブフロントガードのステップが縦方向に連続されて昇降用の足場となることを特徴とする建設機械のステップ付きキャブフロントガードを提供する。
【0019】
この構成によれば、キャブフロントガードは縦方向に複数個に分割されていると共にそれぞれの一面にステップを備えている。さらに、分割されたそれぞれのキャブフロントガードは、キャブの前面に設けられたガイドレールを自在に摺動できるように構成されている。従って、分割されたキャブフロントガードを下方へ摺動させれば、それぞれのキャブフロントガードのステップが縦方向に連続されて昇降用の足場となる。これにより、キャブが高い位置へ上昇した場合でも、キャブフロントガードを昇降用のステップとして利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、ヒンジを支点としてキャブフロントガードを下方へ回動させれば、該キャブフロントガードの裏面に設けられたスッテップが昇降用に足場となる。このようにして、キャブフロントガードを昇降用のステップとして兼用することができるので、キャブフロントガードとステップの両方を設ける必要がなくなる。従って、建設機械の軽量化、簡素化、及び低コスト化を実現することができる。また、建設機械の作業時にステップの張り出しがなくなるので、エンドアタッチメントやバケットとステップとが干渉するおそれもなくなる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、キャブに設けたガイドレールに沿ってキャブフロントガードを下方へスライドさせれば、該キャブフロントガードの表面に設けられたスッテップが昇降用に足場となる。このようにして、キャブフロントガードを昇降用のステップとして兼用することができるので、キャブフロントガードとステップの両方を設ける必要がなくなる。従って、建設機械の軽量化、簡素化、及び低コスト化と作業性の改善を図ることができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、縦方向に複数個に分割されたキャブフロントガードを下方へ回動させれば、それぞれのキャブフロントガードのステップが縦方向に連続されて昇降用の足場となる。これにより、キャブが高い位置へ上昇した場合でも、キャブフロントガードを昇降用のステップとして利用することができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、縦方向に複数個に分割されたキャブフロントガードの何れかをガイドレールに沿って下方へ摺動させれば、それぞれのキャブフロントガードのステップが縦方向に連続されて昇降用の足場となる。これにより、キャブが高い位置へ上昇した場合でも、キャブフロントガードを昇降用のステップとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に適用されるキャブ昇降装置付き建設機械の側面図。
【図2】図1に示すキャブ昇降装置の部分拡大図。
【図3】図1に示す建設機械においてステップ付きキャブフロントガードを閉じた状態を示す実施例1のキャブ付近の部分斜視図。
【図4】図1に示す建設機械においてステップ付きキャブフロントガードを開いた状態を示す実施例1のキャブ付近の部分斜視図。
【図5】図1に示す建設機械において摺動式のステップ付きキャブフロントガードを下方へスライドした状態を示す実施例2のキャブ付近の部分斜視図
【図6】図1に示す建設機械において複数に分割したステップ付きキャブフロントガードを用いた実施例3のキャブ付近の部分斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、工具等を用いることなく、フロントガードとしての使用とステップとしての使用を短時間で切り換えられることができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードを実現させるという目的を達成するために、キャブの前面に設けたキャブフロントガードを、昇降用のステップとして兼用することができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードであって、前記キャブフロントガードは、一面に前記ステップを備えると共に、前記キャブの下部又はフレームに設けられたヒンジを支点として回動自在に連結され、該キャブフロントガードが下方へ回動したときは、前記ステップが昇降用の足場となることを特徴とする建設機械のステップ付きキャブフロントガードを提供することにより実現した。
【0026】
以下、本発明に係るキャブ昇降装置付きの建設機械におけるステップ付きキャブフロントガードについて、図1乃至図6を参照しながら好適な実施例の幾つかを詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
先ず、本発明に適用されるキャブ昇降装置付きの建設機械の全体構成について説明する。例えば、建設作業や港湾荷役作業などを行う建設機械は、キャブ内のオペレータから作業箇所の内部がよく見えるように、必要に応じて、キャブ昇降装置によってキャブを持ち上げて高くすることができるように構成されている。そこで、本実施例では、このようなキャブ昇降装置付きの建設機械について説明する。
【0028】
図1は、本発明に適用されるキャブ昇降装置付き建設機械の側面図であり、図2は、図1に示すキャブ昇降装置の部分拡大図である。すなわち、図1に示すように、作業機としての建設機械10はキャブ昇降装置11を備えている。建設機械10は、下部走行体12を備え、該下部走行体12上に旋回機構13を介して上部旋回体14が旋回可能に搭載され、該上部旋回体14の前部一側部にはブーム15が上下回動可能に連結されている。また、該ブーム15の先端部には、アーム16が上下回動可能に枢着されている。
【0029】
さらに、前記ア−ム16の先端部にエンドアタッチメント(リフティングマグネット又はバケット)17が揺動可能に取り付けられている。なお、図中の符号18,19は、それぞれ前記ブーム15及び前記ア−ム16を駆動するためのシリンダである。
【0030】
また、前記上部旋回体14上には、前記ブーム15の側方に位置してキャブ20が前記キャブ昇降装置11を介して昇降可能に設けられている。
【0031】
前記キャブ昇降装置11は、図1及び図2に示すように、前記キャブ20を所定の姿勢に保つ昇降動用平行リンク機構21と、該昇降動用平行リンク機構21を駆動して前記キャブ20を昇降駆動するキャブ昇降シリンダ22を備えている。
【0032】
前記昇降動用平行リンク機構21は、前記上部旋回体14上に立設された支持塔体23と、前記キャブ20の下部に一体的に設けられ、該キャブ20を下側から支えているL形の架台24と、下端側ピン25,26及び上端側ピン27,28により上下端が回動自在に連結され、各々上下方向に回動される左右一対の上リンク29,29及び左右一対の下リンク30,30と、該上リンク29,29及び下リンク30,30の上下方向における回動を制御するキャブ昇降シリンダ22を具備している。
【0033】
前記キャブ昇降シリンダ22の基端は、前記支持塔体23の下部に一体に取付けられた軸受部(図示せず)に嵌着されたピン31により回動自在に軸支され、前記キャブ昇降シリンダ22のピストンロッド先端は、前記上リンク29,29間の連結部材(図示せず)にピン32で連結されている。
【0034】
このように構成されたキャブ昇降装置11は、前記キャブ昇降シリンダ22を伸縮動作させると、前記昇降動用平行リンク機構21を介して前記キャブ20が前記下端側ピン25,25、26,26を支点として弧を描きながら上下方向及び前後方向に移動する。
【0035】
そして、この昇降動用平行リンク機構21では、前記キャブ昇降シリンダ22の上下両端側の前記ピン31,32及び前記上リンク29の前記下端側ピン25の3点を結ぶことにより三角形が形成され、該三角形の構成部分は全体として高い剛性を有する。したがって、前記キャブ20を支持する前記上リンク29,29の前記上端側ピン27の支持強度が増大するので、前記上端側ピン27による前記キャブ20の支持力は十分確保される。
【0036】
次に、本発明に関わるステップ付きキャブフロントガードに付いて詳細に説明する。図3は、図1に示す建設機械においてステップ付きキャブフロントガードを閉じた状態を示す実施例1のキャブ付近の部分斜視図である。また、図4は、図1に示す建設機械においてステップ付きキャブフロントガードを開いた状態を示す実施例1のキャブ付近の部分斜視図である。
【0037】
図3に示すように、フレーム1の上に載置されたキャブ20の前面には、作業中に飛来する岩石の破片や木の枝などを避けるためのキャブフロントガード2aが設けられている。このキャブフロントガード2aは、キャブ20又はフレーム1の下部に取り付けられたヒンジ(連結ピン)3を介して上下方向へ回動自在に取り付けられている。そして、キャブフロントガード2aが図4に示すように前面下方へ回動して開いた状態において、オペレータを乗降可能にさせるための梯子となるステップ4が、キャブフロントガード2aの裏面側に複数段に亘って設けられている。
【0038】
従って、キャブフロントガード2aを上方へ閉じた状態では、図3に示すように、キャブ20の前面をガードするキャブフロントガード2aとして使用することができる。尚、キャブフロントガード2aを上方へ回動してキャブ20の前面側へ閉じるときは、ヒンジ3を回動支点として該キャブフロントガード2aを容易に上方へ回動させることができる。
【0039】
このような構成により、キャブフロントガード2aをキャブ20のフロントガラスの前面まで回動させると、図示しないロック機構によって、キャブフロントガード2aは図3に示すような所定の位置において固定される。これによって、建設機械で所定の作業を行っているときは、キャブフロントガード2aが下方へ開くおそれはないので、該キャブフロントガード2aによってキャブ20の前面をガードすることができる。
【0040】
次に、キャブフロントガード2aの上部の図示しないロック機構を外し、ヒンジ3を回動支点としてキャブフロントガード2aを下方へ開いたときは、図4に示すように、該キャブフロントガード2aの裏面側に設けられたステップ4が表面側に露出する状態となるので、該ステップ4をオペレータの乗降用の梯子として使用することができる。
【0041】
尚、キャブ20が昇降可能な建設機械においては、図1に示すように、キャブ20の後方に取り付けられたキャブ昇降装置11が該キャブ20を昇降させるような構成となっているものもある。従って、キャブ昇降装置11の故障などによってキャブが上昇したまま降下不能の状態となったときは、オペレータは、キャブ昇降装置11に取り付けられた避難用ステップ6を利用してキャブ20から脱出することができる。しかし、この場合、キャブ20の後面にドアが設置されていればそのドアから脱出して避難用ステップ6を降りればよいが、キャブ20の後面にドアが設置されていないときは、後面ガラス8を割るか取り外して脱出し、避難用ステップ6を降りなければならない。しかし、本実施例1のステップ付きキャブフロントガードによれば、キャブフロントガード2aを図4のように下方へ開いてステップ4を利用すればキャブ20から容易に脱出することができるので、緊急避難時であっても後面ガラス8を破損させる必要はなくなる。
【0042】
すなわち、本発明の実施例1に係る建設機械のステップ付きキャブフロントガードは、キャブフロントガード2aの一面にステップ4が設けられ、該キャブフロントガード2aは、キャブ20の下部又はフレーム1に設けられたヒンジ3を支点として回動自在に構成されている。このような構成により、キャブフロントガード2aが下方へ回動したときはステップ4が昇降用の梯子となる。従って、キャブ20の前面に設けたキャブフロントガード2aを昇降用のステップ4として利用することができる。
【実施例2】
【0043】
図5は、図1に示す建設機械において摺動式のステップ付きキャブフロントガードを下方へスライドした状態を示す実施例2のキャブ付近の部分斜視図である。図5に示すように、キャブ20の前面にはガイドレール7が設けられ、このガイドレール7に対してキャブフロントガード2bが上下方向へ摺動自在に取り付けられている。また、キャブフロントガード2bの前面には、オペレータが乗降可能な足場(梯子)となるステップ4が複数段に亘って設けられている。
【0044】
このような構成により、ガイドレール7によってキャブフロントガード2bを上方へスライドさせてキャブ20の前面の所定位置まで移動させると、図示しないロック機構によって、キャブフロントガード2bは所定位置で固定される。これによって、建設機械で所定の作業を行っているときは、キャブフロントガード2bが下方へスライドするおそれはないので、該キャブフロントガード2bによってキャブ20の前面をガードすることができる。
【0045】
また、キャブフロントガード2bの上部のロック機構(図示せず)を外したのち、ガイドレール7によって該キャブフロントガード2bを下方へスライドさせると、図5に示すように、キャブフロントガード2bに付設されたステップ4をオペレータの乗降用の梯子として利用することができる。
【0046】
すなわち、本発明の実施例2に係る建設機械のステップ付きキャブフロントガードは、キャブフロントガード2bの一面にはステップ4が設けられ、該キャブフロントガード2bはキャブ20の前面に設けられたガイドレール7を自在に摺動できるように構成されている。このような構成により、キャブフロントガード2bが下方へ摺動したときはステップ4が昇降用の足場(梯子)となる。従って、キャブ20の前面に設けたキャブフロントガード2aを昇降用のステップ4として利用することができる。
【実施例3】
【0047】
図6は、図1に示す建設機械において複数に分割したステップ付きキャブフロントガードを用いた実施例3のキャブ付近の部分斜視図である。図6に示すように、キャブフロントガード4は、縦方向に複数個(図6では、キャブフロントガード9a、9b、9cの3個)に分割されている。そして、それぞれのキャブフロントガード9a、9b、9cはその一端がヒンジ(連結ピン)3で連結されている。
【0048】
また、図6に示すように、各キャブフロントガード9a、9b、9cには、それぞれ、オペレータの乗降用の足場(梯子)となるステップ4a、4b、4cが複数段に亘って設けられている。尚、キャブフロントガード9aとキャブフロントガード9cは、キャブ20の前面でキャブフロントガードとして使用したときに表面側が足場となるようにステップ4a及びステップ4cが表面側に設けられている。また、キャブフロントガード9bは、キャブ20の前面からヒンジ3によって下方へ回動させたときに足場となるステップ4bが表側に来るように、キャブフロントガード9bの裏面側にステップ4bが設けられている。
【0049】
また、キャブ20の後方には、該キャブ20を昇降させるためのキャブ昇降装置11が設けられている。尚、キャブ昇降装置11には、図3に示すような避難用ステップ6を設けてもよいが、設けなくてもよい。
【0050】
このようなキャブ昇降装置11を備えてキャブ20を自在に昇降させることができる建設機械においては、図6に示すように、キャブ昇降装置11によってキャブ20が上昇した状態では、図4や図5に示すようなキャブフロントガード2a(2b)とステップ4の位置構成では、ステップ4の最下段がグランドレベルに近い位置に届かないために、オペレータが安全にステップ4を乗降できないおそれがある。
【0051】
そこで、図6に示すように、キャブ昇降装置11によってキャブ20が上昇したときは、ヒンジ3を回動支点としてキャブフロントガード9bのみをキャブ20の前面から下方へ回動させる。これによって、キャブ昇降装置11によりキャブ20を上昇させた状態でも、キャブフロントガード9bのステップ4bの最下段をグランドレベルに近づけることができる。
【0052】
これにより、キャブ昇降装置11によってキャブ20が上昇した状態のままでも、キャブ20内のオペレータは、キャブフロントガード9aのステップ4a(又はキャブフロントガード9cのステップ4c)とキャブフロントガード9bのステップ4bとを利用して安全に乗降することができる。尚、本実施形態では、キャブフロントガード9bを下方へ回動させたが、キャブフロントガード9a、9b、9cの何れを下方へ回動させてもよい。
【0053】
すなわち、本発明の実施例3に係る建設機械のステップ付きキャブフロントガードは、キャブフロントガードは縦方向に複数個(図6では3個)に分割されていると共に、各キャブフロントガード9a、9b、9cの一面にはそれぞれステップ4a、4b、4cが設けられている。さらに、分割されたそれぞれのキャブフロントガード9a、9b、9cは連結されたヒンジ3を支点として個別に回動自在に構成されている。このような構成により、分割されたキャブフロントガード9a、9b、9cの何れかが下方へ回動したときは、回動しないキャブフロントガード9a、9cのステップ4a、4cと回動したキャブフロントガード9bのステップ4bとが縦方向に連続されて昇降用の梯子となる。従って、キャブ20の前面に設けたキャブフロントガード9a、9b、9cを昇降用のステップ4として利用することができる。
【0054】
尚、実施例3の変形例として、ヒンジ3によってキャブフロントガード9bを回動させる構成ではなく、図5のように、ガイドレールによってキャブフロントガード9bを下方へスライドさせるように構成してもよい。この場合は、各キャブフロントガード9a、9b、9cは同じ面(表面側)にステップ4a、4b、4cを設ける必要がある。
【0055】
すなわち、本発明の実施例3の変形例に係る建設機械のステップ付きキャブフロントガードは、キャブフロントガードは縦方向に複数個(例えば、3個)に分割されていると共に、各キャブフロントガードの一面にはそれぞれステップが設けられている。さらに、分割されたそれぞれのキャブフロントガードは、キャブの前面に設けられたガイドレールを自在に摺動できるように構成されている。このような構成により、分割されたキャブフロントガードの何れかが下方へ摺動したときは、摺動しないキャブフロントガードのステップと摺動したキャブフロントガードのステップとが縦方向に連続されて昇降用の梯子となる。従って、キャブの前面に設けた複数個のキャブフロントガードを昇降用のステップとして利用することができる。
【0056】
すなわち、実施例3又はその変形例のステップ付きキャブフロントガードを用いれば、キャブ20が上昇したまま降下不能な状態になったときでも、図6に示すように、キャブ20からグランドレベルの位置までキャブフロントガードのステップを連続させて足場(梯子)とすることができる。従って、キャブ20の後面ガラスを破損して避難用ステップから脱出する必要はなくなる。
【0057】
以上、本発明の具体的な実施例の幾つかを説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る建設機械におけるステップ付きキャブフロントガードは、キャブフロントガードとステップとを1つの構成要素で実現することができ、かつ、ステップの高さを変えることもできるので、各種の建設機械等に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 フレーム
2a、2b、9a、9b、9c キャブフロントガード
3 ヒンジ(連結ピン)
4、4a、4b、4c ステップ
5 キャブ昇降装置
6 避難用ステップ
7 ガイドレール
8 後面ガラス
10 建設機械
11 キャブ昇降装置
12 下部走行体
13 旋回機構
14 上部旋回体
15 ブーム
16 アーム
17 エンドアタッチメント
18,19 シリンダ
20 キャブ
21 昇降動用平行リンク機構
22 キャブ昇降シリンダ
23 支持塔体
24 架台
25,26 下端側ピン
27,28 上端側ピン
29 上リンク
30 下リンク
31,32 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの前面に設けたキャブフロントガードを、昇降用のステップとして兼用することができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードであって、
前記キャブフロントガードは、一面に前記ステップを備えると共に、前記キャブの下部又はフレームに設けられたヒンジを支点として回動自在に連結され、
該キャブフロントガードが下方へ回動したときは、前記ステップが昇降用の足場となることを特徴とする建設機械のステップ付きキャブフロントガード。
【請求項2】
キャブの前面に設けたキャブフロントガードを、昇降用のステップとして兼用することができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードであって、
前記キャブフロントガードは、一面に前記ステップを備えると共に、前記キャブの前面に設けられたガイドレールを自在に摺動できるように取り付けられ、
該キャブフロントガードが下方へ摺動したときは、前記ステップが昇降用の足場となることを特徴とする建設機械のステップ付きキャブフロントガード。
【請求項3】
キャブの前面に設けたキャブフロントガードを、昇降用のステップとして兼用することができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードであって、
前記キャブフロントガードは、縦方向に複数個に分割されていると共にそれぞれの一面に前記ステップを備え、且つ、分割されたそれぞれのキャブフロントガードのうちの1つは前記キャブの下部又はフレームに設けられたヒンジを支点として回動自在に連結されると共にその他のキャブフロントガードは隣接するキャブフロントガードにヒンジを支点として個別に回動自在に連結され、
前記キャブの下部又はフレームに回動自在に連結されたキャブフロントガード及び隣接するキャブフロントガードに回動自在に連結されたキャブフロントガードが回動することで、それぞれのキャブフロントガードのステップが縦方向に連続されて昇降用の足場となることを特徴とする建設機械のステップ付きキャブフロントガード。
【請求項4】
キャブの前面に設けたキャブフロントガードを、昇降用のステップとして兼用することができる建設機械のステップ付きキャブフロントガードであって、
前記キャブフロントガードは、縦方向に複数個に分割されていると共にそれぞれの一面に前記ステップを備え、且つ、分割されたそれぞれのキャブフロントガードは前記キャブの前面に設けられたガイドレールを自在に摺動できるように取り付けられ、
分割されたキャブフロントガードが下方へ摺動したときは、それぞれのキャブフロントガードのステップが縦方向に連続されて昇降用の足場となることを特徴とする建設機械のステップ付きキャブフロントガード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188802(P2012−188802A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50572(P2011−50572)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】