説明

建設機械の作業部材の異常変位検出装置

【課題】ブームやアーム等の作業部材の異常変位を自動的に、かつ、確実に検出する。
【解決手段】作業アタッチメントを構成する作業部材としてのブーム5の基端部にレーザ発信機14A、先端部に受光部15Aを設けて変位測定装置16Aを構成し、コントローラ17Aにより、作業アタッチメントが無負荷状態であることを条件として、変位測定装置16Aからの変位信号に基づいてブーム5の異常変位を判断し、警報器18を作動させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショベルや解体機等の建設機械において、作業アタッチメントを構成する作業部材の異常変位を検出する作業部材の異常変位検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベルや、ショベルを母体として構成される解体機等の建設機械は、下部走行体上に上部旋回体を旋回自在に搭載してベースマシンを構成し、このベースマシン(上部旋回体)に作業アタッチメントを取付けて構成される。
【0003】
作業アタッチメントは、ブームを含む複数の作業部材によって構成される。
【0004】
たとえば解体機では、作業部材として、上部旋回体に起伏自在に取付けられたブームと、このブームの先端に水平軸まわりに回動自在に取付けられたアームを備え、このアームの先端に圧砕式その他の解体装置を取付けるとともに、ブームを起伏作動させるブームシリンダ、アームを作動させるアームシリンダ等の駆動アクチュエータを設けて構成される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−193543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業アタッチメントを構成する作業部材(上記例ではブーム及びアーム。以下、ブームを例にとって説明する)は、板材等の構成材を溶接して組立てる溶接構造物であるため、溶接部分から亀裂が発生する可能性がある。
【0007】
とくに作業アタッチメントの作業部材は長尺であるため、作業時の負荷モーメントが大きくて亀裂が進展し易く、ブームの折損、破断につながるおそれがある。
【0008】
このため、亀裂による作業部材の異常変位(たわみや変形)を監視する必要がある。
【0009】
ところが、従来はこの異常変位の検知を作業員による日常点検や、作業中のオペレータの目視による発見のみに頼っており、長尺ゆえに点検作業や監視が面倒、困難である上に、確実な検知はできないのが実情であった。
【0010】
また、作業中は負荷によって作業部材がたわみ変形するため、外観のみで異常変位を判断することはきわめて困難であるという事情もあった。
【0011】
そこで本発明は、ブームやアーム等の作業部材の異常変位を自動的に、かつ、確実に検出することができる建設機械の作業部材の異常変位検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、ブームを含む作業部材によって構成された作業アタッチメントをベースマシンに取付け、この作業アタッチメントによって作業を行う建設機械の作業部材の異常変位検出装置であって、異常変位を検出すべき作業部材である対象作業部材の長さ方向の一端部にレーザ光を発するレーザ発信機、他端部に上記レーザ光を受ける受光部をそれぞれ設けて変位測定装置を構成し、かつ、上記作業部材が無負荷状態であることを検出する無負荷検出手段と、上記変位測定装置からの変位信号及び上記無負荷検出手段からの検出信号が入力される制御手段を設け、上記制御手段は、上記対象作業部材が無負荷状態であることを条件として、上記変位信号に基づいて上記対象作業部材の異常変位を判断するように構成したものである。
【0013】
この構成によれば、検出対象となる作業部材の長さ方向の両端部間でレーザ光の授受を行い、受光量の有無や変化によって作業部材の異常変位を判断するため、異常検出を自動的にかつ確実に行うことができる。
【0014】
ところで、建設機械の作業アタッチメントを構成する作業部材は、作業時に作業負荷によってたわみ変形するため、この種の作業部材に特有の問題として、作業負荷による「作業時変位」を異常変位と混同して誤検出する可能性がある。
【0015】
この点、本発明によると、無負荷検出手段によって作業部材が無負荷状態であることを検出し、無負荷状態であることを条件として異常変位か否かを判断するため、異常変位を作業時変位と区別して正確に検出することができる。
【0016】
この場合、無負荷検出手段として、作業アタッチメント全体の負荷によって変化するブームシリンダの負荷圧を検出する圧力センサを設け、このブームシリンダ負荷圧に基づいて無負荷状態であることを判断するように構成してもよいし(請求項2)、ブームシリンダ負荷圧について、作業アタッチメントの作業姿勢に基づいて求められる基準値と圧力センサによる検出値を比較して無負荷状態であることを判断するように構成してもよい(請求項3)。
【0017】
また本発明においては、制御手段は、対象作業部材の異常変位を判断したときに警報器を作動させるように構成するのが望ましい(請求項4)。
【0018】
こうすれば、すぐさまオペレータに作業部材の異常を知らせ、機械の停止等の危険回避処理を促すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ブームやアーム等の作業部材の異常変位を自動的に、かつ、確実に検出し、作業部材の折損、破断を未然に防止して安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の適用対象である解体機の全体概略側面図である。
【図2】第1実施形態の異常変位検出装置のシステム構成を示す図である。
【図3】第1実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態の異常変位検出装置のシステム構成を示す図である。
【図5】第2実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態は解体機を適用対象とし、かつ、作業アタッチメントのブームを異常変位の検出対象としている。
【0022】
適用対象としての解体機は、図1に示すように下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回自在に搭載された上部旋回体2とによってベースマシン3が構成され、このベースマシン3の上部旋回体2に解体作業を行う作業アタッチメント4が取付けられて構成される。
【0023】
作業アタッチメント4は、溶接構造物であるブーム5の先端に、同じく溶接構造物であるアーム6が水平軸(ブームトップピン)7まわりに回動自在に取付けられるとともに、このアーム6の先端に作業装置としての圧砕装置8が水平軸(アームトップピン)9まわりに回動自在に取付けられて成り、ブーム5の基端部が上部旋回体2にブームフットピン10を中心として回動(ブーム起伏)自在に取付けられる。
【0024】
図1中、11はブーム5(作業アタッチメント全体)を起伏させるブームシリンダ、12はアーム6を上下回動させるアームシリンダ、13は圧砕装置8を上下回動させる圧砕装置シリンダである。
【0025】
第1及び第2両実施形態に共通の構成として、ブーム5の長さ方向の一端部、すなわちブームフットピン10の位置またはその近傍に、ブーム先端に向けてレーザ光を発するレーザ発信機14A,14B、他端部、すなわちブームトップピン7の位置またはその近傍に、レーザ光を受ける受光部15A,15Bがそれぞれ設けられて変位測定装置16A,16B(図2、図4に符号を付している)が構成されるとともに、上部旋回体2に制御手段としてのコントローラ17A,17Bと、このコントローラ17A,17Bからの作動指令に応じて作動する警報器18が設けられている。
【0026】
第1実施形態(図2,3参照)
第1実施形態においては、レーザ発信機14Aからのレーザ光を受光部15Aが受けているか否かによってブーム5の異常変位を判断する構成がとられている。
【0027】
詳述すると、ブーム5に異常変位がなければ、レーザ発信機14Aから放射されたレーザ光が受光部15Aで正常に受けられる。
【0028】
これに対し、ブーム5に異常変位が発生すると、図2中に二点鎖線で例示するようにブーム5とともに受光部15Aが移動して光路から外れるため、受光しなくなる。
【0029】
この受光部15Aでの受光状態がレーザ発信機14Aに反映されてコントローラ17Aに受光状態信号として送られ、コントローラ17Aで受光の有無がブーム異常変位の有無として判断される。
【0030】
この場合、ブーム5は、作業時であれば作業負荷によってたわみ変形し、この「作業時変位」により受光部15Aも移動するため、受光状態信号のみによると、作業時変位を異常変位と混同して誤検出する可能性がある。
【0031】
そこで、無負荷状態であることを検出する無負荷検出手段として、作業負荷がかかるブームシリンダ11の負荷圧(ヘッド側圧力)を検出する圧力センサ19が設けられ、検出されたブームシリンダ負荷圧がコントローラ17Aに送られる。
【0032】
コントローラ17Aは、このブームシリンダ負荷圧と受光状態信号とに基づき、作業アタッチメント4が無負荷状態であることを条件としてブーム5の異常変位を判断する。
【0033】
図3のフローチャートによって説明すると、ステップS1で受光部15Aがレーザ光を受光したか否かが判断され、NO(受光していない)の場合、ステップS2で無負荷状態か否かが判断される。
【0034】
ここでYES(無負荷状態)となると、ブーム5の異常変位であるとして警報器18を作動させる。
【0035】
この警報器18は、特定の警報音を発するものでもよいし、警報音とともに、あるいは単独で異常変位発生のメッセージを音声表示または画面表示するものでもよい。
【0036】
なお、ステップS1でYESの場合は異常変位無しとして、またステップS2でNOの場合は無負荷状態でないとしてそれぞれステップS1に戻る。
【0037】
このように、検出対象となるブーム5の長さ方向の両端部間でレーザ光の授受を行い、受光量の有無によってブーム5の異常変位を判断するため、異常検出を自動的にかつ確実に行うことができる。
【0038】
この場合、ブーム5が無負荷状態であることを検出し、無負荷状態であることを条件として異常変位か否かを判断するため、異常変位を作業時変位と区別して正確に検出することができる。
【0039】
また、ブーム5の異常変位を判断したときに警報器18を作動させるため、ブーム5の異常変位をすぐさまオペレータに知らせ、機械の停止等の危険回避処理を促すことができる。
【0040】
なお、異常発生時に警報器18の作動とともに機械の稼動を強制停止させるように構成してもよい。
【0041】
また、受光部15Aからコントローラ17Aに受光状態信号を送るようにしてもよい。
【0042】
第2実施形態(図4,5参照)
第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0043】
第2実施形態においては、第1実施形態との第1の相違点として、受光部15Bの受光量の変化からブーム5の変位量αを求め、この変位量が、異常変位を示す設定値以上のときに異常変位を判断するように構成されている。
【0044】
なお、この構成をとる場合、レーザ発信機14Bとして、プリズムユニットによって光路を受光部15Bに誘導し、そのときのプリズム回転角をパルスエンコーダで測定することによって受光部15Bの変位量(=ブーム変位量)αを計測する公知のレーザ発信機が用いられる。
【0045】
一方、ブームシリンダ負荷圧は、負荷そのものの変化に加えて作業アタッチメント4の作業姿勢によっても変化する。
【0046】
そこで、無負荷検出手段として、圧力センサ19に加えてブーム角度センサ20とアーム角度センサ21とが設けられ、コントローラ17Bにおいて、検出されるブーム角度及びアーム角度から作業アタッチメント4の作業姿勢を演算し、ブームシリンダ負荷圧について、作業姿勢に基づいて求められる基準値と圧力センサ19による検出値とを比較して無負荷状態であることを判断するように構成されている。
【0047】
図5のフローチャートによってまとめて説明すると、ステップS11でブーム変位量αが演算された後、ステップS12で、演算されたブーム変位量αが設定値以上か否かが判断される。
【0048】
ここでYESとなると、ステップS13において作業アタッチメント4の作業姿勢及びこれに基づくブームシリンダ負荷圧が演算され、シリンダシリンダ負荷圧の検出値と比較される。
【0049】
次いで、ステップS14で無負荷状態か否かが判断され、YESとなると、ブーム異常変位として警報器18を作動させる(ステップS15)。
【0050】
なお、ステップS12でNO(変位量αが設定値未満)の場合、及びステップS14でNO(無負荷状態でない)の場合はいずれもステップS11に戻る。
【0051】
この第2実施形態によると、ブーム異常変位をより正確に検出することができる。
【0052】
なお、第1、第2両実施形態を組み合わせ、たとえば受光部がレーザ光を受けているか否かの受光状態信号のみに基づいて、無負荷状態下で異常変位を判断する構成をとってもよい。
【0053】
他の実施形態
(1) レーザ発信機14A,14Bをブーム5の先端部に、受光部15A,15Bをブーム基端部にそれぞれ設けてもよい。
【0054】
(2) 図1に示す解体機においては、ブーム5とともに、あるいはブーム5に代えてアーム6の異常変位を検出することもできる。
【0055】
この場合、レーザ発信機と受光部の一方をアーム基端部に、他方をアーム先端部に設ければよい。
【0056】
(3) 本発明は、作業アタッチメントを構成する一つの長尺の個体としての作業部材の異常変位検出装置として広く適用可能であり、図1に示す解体機に限らず、ブームがメインブームとフロントブームで構成される解体機にも、また解体機に限らず、アームの先端にバケットを取付けるショベル等の他の建設機械のブームまたはアームの異常変位検出装置としても適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ベースマシンを構成する下部走行体
2 同、上部旋回体
3 ベースマシン
4 作業アタッチメント
5 作業アタッチメントを構成する対象作業部材としてのブーム
6 同、アーム
8 同、圧砕装置
11 ブームシリンダ
14A,14B レーザ発信機
15A,15B 受光部
16A,15B 変位測定装置
17A,17B 制御手段としてのコントローラ
18 警報器
19 無負荷検出手段としての圧力センサ
20 同、ブーム角度センサ
21 同、アーム角度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを含む作業部材によって構成された作業アタッチメントをベースマシンに取付け、この作業アタッチメントによって作業を行う建設機械の作業部材の異常変位検出装置であって、異常変位を検出すべき作業部材である対象作業部材の長さ方向の一端部にレーザ光を発するレーザ発信機、他端部に上記レーザ光を受ける受光部をそれぞれ設けて変位測定装置を構成し、かつ、上記作業部材が無負荷状態であることを検出する無負荷検出手段と、上記変位測定装置からの変位信号及び上記無負荷検出手段からの検出信号が入力される制御手段を設け、上記制御手段は、上記対象作業部材が無負荷状態であることを条件として、上記変位信号に基づいて上記対象作業部材の異常変位を判断するように構成したことを特徴とする建設機械の作業部材の異常変位検出装置。
【請求項2】
上記無負荷検出手段として、上記ブームを起伏作動させるブームシリンダの負荷圧を検出する圧力センサを設け、上記制御手段は、上記ブームシリンダの負荷圧に基づいて無負荷状態であることを判断するように構成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の作業部材の異常変位検出装置。
【請求項3】
上記無負荷検出手段として、上記ブームを起伏作動させるブームシリンダの負荷圧を検出する圧力センサと、上記作業アタッチメントの作業姿勢を検出する作業姿勢検出手段とを設け、上記制御手段は、上記ブームシリンダの負荷圧について、作業アタッチメントの作業姿勢に基づいて求められる基準値と上記圧力センサによる検出値を比較して無負荷状態であることを判断するように構成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の作業部材の異常変位検出装置。
【請求項4】
上記制御手段は、対象作業部材の異常変位を判断したときに警報器を作動させるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械の作業部材の異常変位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2255(P2013−2255A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138004(P2011−138004)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】