説明

建設機械の冷却装置

【課題】並列に配置された複数の熱交換器を備えた冷却装置において、そのコアを通過する冷却空気の風量の分布を最適化して冷却効率を改善する。
【解決手段】幅方向の両端に配置された第2及び第3の熱交換器40,50のコア41,51の高さは、中央に配置された第1の熱交換器30のコア31の高さよりも低く形成されている。これにより、第1乃至第3の熱交換器30,40,50のコア31,41,51は、冷却ファン25の投影面に対応した形状に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建設機械の冷却装置では、幅方向に並列に配置された複数の熱交換器のコアに対して、冷却ファンにより吸引される冷却空気を通風させて熱交換を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の冷却装置では、設置スペースの制約により、高さが異なる2つのコアが並列に配置されている。そして、冷却ファンの投影面が複数のコア面に納まらないコア間段差部を冷却ファンの径方向外側へ膨出させて形成した容積増加部を設けたり、コア背後の空気を導くバイパス風路を設けることで、振動や騒音を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−159691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却装置は、コアの高さが異なることに起因する振動や騒音を抑制することを主たる目的とした構成であり、コア間の通風抵抗の差によって風量格差が発生することについては何ら考慮されていない。
【0006】
具体的に、特許文献1に記載の冷却装置では、高さが高い方のコアは、冷却ファンの投影面よりも大きな外径の長方形状に形成されている。ここで、コアは長方形状であるのに対し、冷却ファンは円形状であるので、コアを通過する冷却空気の風量の分布は、冷却ファンの投影面に対応する領域に集中し、コアの角部には冷却空気が流れにくくなっている。そのため、コアの角部において風量が少なくなり、冷却効率が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、並列に配置された複数の熱交換器を備えた冷却装置において、そのコアを通過する冷却空気の風量の分布を最適化して冷却効率を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、幅方向に並列に配置された少なくとも3つの熱交換器と、該複数の熱交換器に対向して配置された冷却ファンとを備えた建設機械の冷却装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、前記複数の熱交換器のコアは、幅方向の両端に配置された該コアの高さが中央に配置された該コアの高さよりも低く形成されることで、前記冷却ファンの投影面に対応した形状に構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明では、複数の熱交換器のコアは、冷却ファンの投影面に対応した形状に構成される。つまり、幅方向の両端に配置されたコアの高さは、中央に配置されたコアの高さよりも低く形成される。
【0011】
このような構成とすれば、並列に配置された複数の熱交換器のコアを通過する冷却空気の風量の分布を最適化することができる。具体的に、コアは長方形状であるのに対し、冷却ファンは円形状であるので、コアを通過する風量の分布は、冷却ファンの投影面に対応する領域に集中し、コアの角部には冷却空気が流れにくくなる。
【0012】
これに対し、本発明では、複数の熱交換器のコアを、冷却ファンの投影面に対応した形状に構成すべく、両端に配置されたコアの高さを低くしているので、コアの表面積のうち、風量の多い冷却ファンの投影面に占める比率が高くなり、コアを通過する冷却空気の風量の分布を最適化することができる。これにより、冷却効率を改善することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、
前記複数の熱交換器のコアのうち、幅方向の両端に配置された該コアは、中央に配置された該コアよりもその高さ方向の両端部がそれぞれ窪んだ形状に構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
第2の発明では、幅方向の両端に配置されたコアは、中央に配置されたコアよりもその高さ方向の両端部がそれぞれ窪んだ形状に構成される。
【0015】
このような構成とすれば、両端に配置されたコアの上端部及び下端部を、中央に配置されたコアよりも窪ませることで、コアを通過する冷却空気の風量の分布をさらに最適化することができる。つまり、冷却ファンの投影面から外れた領域、すなわち、複数の熱交換器のコアを1つの全体コアとして見た場合の上側及び下側の角部に相当する領域にコア面を設けないようにすることで、複数のコアの表面積のうち、風量の多い冷却ファンの投影面に占める比率を高くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の熱交換器のコアを、冷却ファンの投影面に対応した形状に構成すべく、両端に配置されたコアの高さを低くしているので、コアの表面積のうち、風量の多い冷却ファンの投影面に占める比率が高くなり、コアを通過する冷却空気の風量の分布を最適化することができる。これにより、冷却効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る建設機械の全体構成を示す側面図である。
【図2】冷却装置を冷却ファン側から見たときの構成を示す斜視図である。
【図3】冷却装置を熱交換器側から見たときの構成を示す斜視図である。
【図4】冷却装置の構成を示す平面図である。
【図5】冷却装置の構成を示す側面断面図である。
【図6】熱交換器と冷却ファンの投影面との位置関係を示す正面図である。
【図7】本実施形態2に係る冷却装置の熱交換器と冷却ファンの投影面との位置関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
《実施形態1》
図1は、本発明を適用した建設機械の全体構成を示す側面図である。図1に示すように、この建設機械10は、クローラ式の下部走行体1の上に旋回可能な上部旋回体2(本体フレーム)が搭載された油圧ショベルである。上部旋回体2には、本体フレーム3や、この本体フレーム3にそれぞれ取り付けられる、アタッチメント4、キャブ5、機械室6、カウンターウエイト7等が備えられている。
【0020】
なお、本実施形態では、図1において、図面左側のアタッチメント4が配置された側を前側、紙面手前側のキャブ5が配置された側を左側とし、以下の説明では前後左右等の方向は特に言及しない限り、これに従うものとする。
【0021】
アタッチメント4は、上部旋回体2の前部中央に起伏可能に支持されており、本体フレーム3の略中央位置に設けられた一対の縦板(図示せず)に回動可能に支持された略く字形状のブーム11と、このブーム11の長手方向に延びてブーム11に回動可能に支持されたアーム12と、このアーム12に回動可能に支持されたバケット13とを有している。
【0022】
キャブ5は、その内部に運転シートや各種制御機器、操作機器等が装備された矩形箱型の運転室であり、アタッチメント4の左側に隣接して位置するように上部旋回体2の前部左側に配設されている。
【0023】
機械室6は、上部旋回体2の後部に左右両側間にわたって設けられている。機械室6の後側の左右両側間にわたる部分にはカウンターウエイト7が設けられている。機械室6の左側端部は、本体カバー17で覆われている。本体カバー17には、機械室6内に外気を取り込むための吸気口17aが開口している。機械室6の右側端部には、取り込まれた外気を排気する排気口(図示省略)が開口している。
【0024】
機械室6内には、冷却装置20が配設されている。図2から図5に示すように、この冷却装置20は、冷却ファン25と、冷却ファン25よりも空気流通方向の上流側に配置された第1乃至第3の熱交換器30,40,50と、冷却ファン25の外周を覆うシュラウド26とを備えている。
【0025】
冷却ファン25は、外気を吸気口17aから吸引し、冷却空気として機械室6内に流通させるものである。冷却ファン25により吸引された冷却空気は、第1乃至第3の熱交換器30,40,50を通過し、この際に、冷却水や作動油を冷却する。熱交換後の冷却空気は、シュラウド26によって冷却ファン25に向けて導かれ、エンジン等を冷却した後で排気口(図示省略)から外部へ排気される。
【0026】
第1乃至第3の熱交換器30,40,50は、縦長の長方形状に形成され、幅方向に並列に配置されている。ここで、第1の熱交換器30は、エンジン冷却用のラジエータ、第2の熱交換器40は、作動油冷却用のオイルクーラ、第3の熱交換器50は、ターボチャージャ用のインタークーラを構成している。
【0027】
第1の熱交換器30は、コア31と、コア31の上部及び下部にそれぞれ取り付けられ、エンジンの冷却水を一時的に貯留する上部タンク32及び下部タンク33を備えている。上部タンク32には、流入管32aが接続され、冷却水が流入する。下部タンク33には、流出管33aが接続され、コア31において冷却空気と熱交換された冷却水が流出する。
【0028】
第2の熱交換器40は、コア41と、コア41の上部及び下部にそれぞれ取り付けられ、作動油を一時的に貯留する上部タンク42及び下部タンク43を備えている。上部タンク42には、流入管42aが接続され、作動油が流入する。下部タンク43には、流出管43aが接続され、コア41において冷却空気と熱交換された作動油が流出する。
【0029】
第3の熱交換器50は、コア51と、コア51の上部及び下部にそれぞれ取り付けられ、過給機(図示省略)で圧縮された空気を一時的に貯留する上部タンク52及び下部タンク53を備えている。上部タンク52には、流入管52aが接続され、圧縮された空気が流入する。下部タンク53には、流出管53aが接続され、コア51において冷却空気と熱交換された空気が流出する。
【0030】
第1乃至第3の熱交換器30,40,50では、コア31,41,51の高さがそれぞれ異なっている。具体的に、図6に示すように、幅方向の両端に配置された第2及び第3の熱交換器40,50のコア41,51の高さは、中央に配置された第1の熱交換器30のコア31の高さよりも低く形成されている。
【0031】
つまり、第1の熱交換器30のコア31の両側縁と冷却ファン25の投影面の外周縁との交点位置と、第2及び第3の熱交換器40,50のコア41,51の上端位置とが略一致するように、第2及び第3の熱交換器40,50のコア41,51の高さが設定されている。これにより、第1乃至第3の熱交換器30,40,50のコア31,41,51は、冷却ファン25の投影面に対応した形状に構成されている。
【0032】
このような構成とすれば、第1乃至第3の熱交換器30,40,50のコア31,41,51の表面積のうち、風量の多い冷却ファン25の投影面に占める比率が高くなり、コア31,41,51を通過する冷却空気の風量の分布を最適化することができる。これにより、冷却効率を改善することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、第1乃至第3の熱交換器30,40,50の高さのみを変更し、下端は面一としているので、第1乃至第3の熱交換器30,40,50の設置面を平面とすることができ、設置作業がやりやすくなる。
【0034】
第1乃至第3の熱交換器30,40,50は、一対の収容フレーム21,21の間に収容されている。収容フレーム21は、断面凹状で高さ方向に延び、幅方向に間隔をあけて配置された一対の部材で構成されている。収容フレーム21の空気流通方向の上流側(図5で左側)の上部には、一対の収容フレーム21,21に跨って取付ブラケット22が取り付けられている。
【0035】
取付ブラケット22は、第1乃至第3の熱交換器30,40,50の上部タンク32,42,52をそれぞれ支持して、第1乃至第3の熱交換器30,40,50が収容フレーム21内で動かないように固定している。そして、取付ブラケット22を取り外すだけで、第1乃至第3の熱交換器30,40,50を収容フレーム21内から容易に取り外してメンテナンスすることができる。
【0036】
収容フレーム21の空気流通方向の下流側には、冷却ファン25が配置されている。冷却ファン25の外周は、シュラウド26で覆われている。シュラウド26は、収容フレーム21に取り付けられている。
【0037】
なお、本体カバー17と第1乃至第3の熱交換器30,40,50との間には、集塵フィルタ(図示省略)が設けられており、冷却ファン25により吸引された空気中に含まれる塵埃等の異物の進入を防止するようにしている。
【0038】
以上のように、本実施形態1に係る冷却装置20では、冷却ファン25の投影面から外れた領域、すなわち、第1乃至第3の熱交換器30,40,50のコア31,41,51を1つの全体コアとして見た場合の上側の角部に相当する領域にコア面を設けないようにしている。これにより、コア31,41,51を通過する冷却空気の風量の分布を最適化して、冷却効率を改善することができる。
【0039】
《実施形態2》
図7は、本実施形態2に係る冷却装置の熱交換器と冷却ファンの投影面との位置関係を示す正面図である。前記実施形態との違いは、各コア31,41,51の全長のみであるため、以下、実施形態を同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0040】
図7に示すように、幅方向の両端に配置された第2及び第3の熱交換器40,50のコア41,51は、中央に配置された第1の熱交換器30のコア31よりもその高さ方向の両端部がそれぞれ窪んだ形状に構成されている。
【0041】
つまり、第1の熱交換器30のコア31の両側縁と冷却ファン25の投影面の外周縁との上側の交点位置と、第2及び第3の熱交換器40,50のコア41,51の上端位置とが略一致するとともに、下側の交点位置と下端位置とが略一致するように、第2及び第3の熱交換器40,50のコア41,51の高さが設定されている。これにより、第1乃至第3の熱交換器30,40,50のコア31,41,51は、冷却ファン25の投影面に対応した形状に構成されている。
【0042】
このように、本実施形態2では、冷却ファン25の投影面から外れた領域、すなわち、第1乃至第3の熱交換器30,40,50のコア31,41,51を1つの全体コアとして見た場合の上側及び下側の角部に相当する領域にコア面を設けないようにしている。これにより、第1乃至第3の熱交換器30,40,50のコア31,41,51の表面積のうち、風量の多い冷却ファン25の投影面に占める比率が高くなり、コア31,41,51を通過する冷却空気の風量の分布を最適化して、冷却効率を改善することができる。
【0043】
《その他の実施形態》
なお、本実施形態の冷却装置20では、3つの熱交換器30,40,50を並列に配置した構成について説明したが、この形態に限定するものではなく、4つ以上の熱交換器を並列に配置した構成であってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、油圧ショベルの冷却装置20に本発明を適用した場合について説明したが、解体機、破砕機等を含めた各種の建設機械の冷却装置として広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明は、並列に配置された複数の熱交換器を備えた冷却装置において、そのコアを通過する冷却空気の風量の分布を最適化して冷却効率を改善することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0046】
10 建設機械
20 冷却装置
25 冷却ファン
30 熱交換器
31 コア
40 熱交換器
41 コア
50 熱交換器
51 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に並列に配置された少なくとも3つの熱交換器と、該複数の熱交換器に対向して配置された冷却ファンとを備えた建設機械の冷却装置であって、
前記複数の熱交換器のコアは、幅方向の両端に配置された該コアの高さが中央に配置された該コアの高さよりも低く形成されることで、前記冷却ファンの投影面に対応した形状に構成されていることを特徴とする建設機械の冷却装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の熱交換器のコアのうち、幅方向の両端に配置された該コアは、中央に配置された該コアよりもその高さ方向の両端部がそれぞれ窪んだ形状に構成されていることを特徴とする建設機械の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−188931(P2012−188931A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50560(P2011−50560)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)