説明

建設機械の滑り止め構造

【課題】ステップや機械上面等の足場となる基板において、十分な滑り止め効果及び耐久性を有し、且つ、作業者が手やひざをついても怪我をすることがない安全性に優れた滑り止め構造を提供する。
【解決手段】ステップや機械上面等の足場となる基板30に多数の凸部21を有するゴムシート20を設けてなる建設機械の滑り止め構造であって、前記ゴムシート20は段付きワッシャー22を介してボルト23にて基板30に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の滑り止め構造に関するものであり、特に、油圧ショベル等の建設機械のステップや機械上面等の足場に設置される滑り止め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に油圧ショベル等の建設機械では、作業者が運転席に乗降するために、或いは、エンジンや油圧機器のメンテナンスを行うために、機体にステップが設けられている。また、メンテナンスの際に作業者が機械の上面に乗るような場合もある。しかし、前記ステップや機械上面は鋼板にて形成されているため、作業者が前記ステップや機械上面等の足場となる基板に乗降或いは歩行するとき、足を滑らせる危険性を有している。
【0003】
前記ステップや機械上面等の足場となる基板の滑り止めとして、上板と下板とが上板端部においてヘム加工により接続し、上板と下板との間に所定の間隙を有したボックス構造に形成したカバーが知られている。上板は端部以外はへこみを有し且つその面上にへこみの深さと等しい高さの凸部が複数設けられている。下板はその幅方向に沿って複数列のビードが形成されているため、前記凸部によって滑り止めの効果を呈するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、前記ステップや機械上面等の足場となる基板に複数のバーリング孔を穿設し、該バーリング孔の周縁フランジを突起部として滑り止め効果を呈する構成も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−302723号公報
【特許文献2】特開2001−262619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2記載の発明は、何れも凸部や突起部が作業者の靴底に噛み合い係合するため、十分な滑り止め効果を発揮することができる。しかし、足場となる鋼板製の基板に鋭利な突起部を設けた構造であるため、作業者がステップや機械上面で手やひざ等を付いたときに、前記突起部によって怪我をする危険性があり、作業者の安全が十分に確保できないという問題があった。
【0006】
この危険性を回避するために、足場となる基板へノンスリップテープ(紙やすり状の感触を有するテープ)やゴムシートを両面テープや接着剤で貼着する構成も考えられるが、
油等が付着すると前記テープやゴムシートが剥離し易いという欠点がある。
【0007】
そこで、ステップや機械上面等の足場となる基板において、十分な滑り止め効果及び耐久性を有し、且つ、作業者が手やひざをついても怪我をすることがない安全性に優れた滑り止め構造を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ステップや機械上面等の足場となる基板に多数の凸部を有するゴムシートを設けてなる建設機械の滑り止め構造であって、前記ゴムシートは段付きワッシャーを介してボルトにて基板に固定された建設機械の滑り止め構造を提供する。
【0009】
この構成によれば、ステップや機械上面等の足場となる基板に設けられたゴムシートは、両面テープや接着剤で貼着するのではなく、段付きワッシャーを介してボルトにて基板へ確実に固定される。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記ゴムシートには止め孔を開穿し、上記基板には該止め孔に対応する位置にボルト挿通孔若しくはネジ孔を設け、上記段付きワッシャーの段部を前記止め孔に嵌挿するとともに、該段付きワッシャーにボルトを挿通して前記ゴムシートが基板に固定された建設機械の滑り止め構造を提供する。
【0011】
この構成によれば、ゴムシートに開穿された止め孔へ段付きワッシャーの段部を嵌挿し、該段付きワッシャーにボルトを挿通して基板のボルト挿通孔若しくはネジ孔へ螺着する。斯くして、ゴムシートは段付きワッシャーを介してボルトにて基板へ固定される。
【0012】
請求項3記載の発明は、上記段付きワッシャーは、上記止め孔に嵌挿される円筒形の段部と、該段部の上部に一体に設けられ且つ前記止め孔よりも大径の鍔部と、ボルト挿通用の孔部とからなる建設機械の滑り止め構造を提供する。
【0013】
この構成によれば、段付きワッシャーの段部が止め孔へ嵌挿されて、基板のボルト挿通孔若しくはネジ孔に対する位置決めとなり、孔部へボルトを挿通して螺着したときは鍔部がゴムシートを押し付けてゴムシートが基板に固定される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明は、ステップや機械上面等の足場となる基板に、鋼板製の基板に鋭利な突起部を設けた従来の構成とは異なり、多数の凸部を有するゴムシートを設けた構成であるため、作業者がステップや機械上面等の足場部分に手やひざ等を付いたとしても怪我をする虞がなく、作業の安全性を確保することができる。また、該ゴムシートは段付きワッシャーを介してボルトにて固定されているので、従来の両面テープや接着剤で貼着する構成に比べて油等が付着しても剥離することがなく、十分な滑り止め効果を有し且つ耐候性及び耐久性に優れている。
【0015】
請求項2記載の発明は、ゴムシートに開穿された止め孔へ段付きワッシャーの段部を嵌挿してボルトにて基板へ固定するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、ゴムシートがずれる虞がなく、確実にゴムシートを基板へ固定することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、段付きワッシャーは止め孔に嵌挿される段部と、該段部の上部に一体に設けられ且つ前記止め孔よりも大径の鍔部と、ボルト挿通用の孔部とから構成されているので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、段部により位置決めがなされてボルトによる固定が容易且つより一層確実となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る建設機械の滑り止め構造について、好適な実施例をあげて説明する。ステップや機械上面等の足場となる基板において、十分な滑り止め効果及び耐久性を有し、且つ、作業者が手やひざをついても怪我をすることがない安全性に優れた滑り止め構造を提供するという目的を、ステップや機械上面等の足場となる基板に多数の凸部を有するゴムシートを設けてなる建設機械の滑り止め構造であって、前記ゴムシートは段付きワッシャーを介してボルトにて基板に固定したことにより実現した。
【実施例1】
【0018】
図1は建設機械の一例として油圧ショベル10の側面を示し、下部走行体11の上に旋回機構12を介して上部旋回体13が旋回自在に載置されている。上部旋回体13にはその前方一側部にキャブ14が設けられ、且つ、前方中央部にブーム15が俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体13の後部にはエンジンや油圧機器(何れも図示せず)が搭載され、ハウスカバー16にて被蔽されている。更に、上部旋回体13の後端部にカウンタウエイト17が装着されている。また、前記ブーム15の先端にアーム18が上下回動自在に取り付けられ、該アーム18の先端にバケット19が取り付けられている。
【0019】
図2は上部旋回体13の平面を示し、説明の都合上、ブーム15等の作業アタッチメントを取り外した状態を示している。上部旋回体13には、作業者がハウスカバー16の上面へ乗降するためのステップや、ハウスカバー16の上面に乗ってエンジンや油圧機器のメンテナンスを行う際の足場となる基板30に、滑り止め用のゴムシート20が設けられている。
【0020】
図3及び図4は前記基板30に設けられたゴムシート20を示し、図5は要部の断面図である。該ゴムシート20の表面には適宜間隔に多数の凸部21,21…が設けられており、該ゴムシート20は段付きワッシャー22を介してボルト23にて基板30に固定されている。
【0021】
前記ゴムシート20の隅部近傍にはボルト23を挿通するための止め孔24を開穿し、基板30には該止め孔24に対応する位置にボルト挿通孔25を設け、ボルト挿通孔25の裏面側には基板30にナット26を溶着してある。なお、図示は省略するが、前記ボルト挿通孔25に代えてネジ孔を設けてもよい。
【0022】
また、前記段付きワッシャー22は止め孔24の直径よりもやや小径で且つ止め孔24に嵌挿される円筒形の段部22aと、該段部22aの上部に一体に設けられ且つ前記止め孔24よりも大径の鍔部22bと、ボルト挿通用の孔部22cとからなり、本実施例では後述するように、ボルト23をナット26へ螺着して締め付けたときに、前記段部22aの下面が基板30の表面に当接する程度の高さに形成してある。
【0023】
而して、前記ゴムシート20をハウスカバー16の足場となる基板30へ固定する際は、ゴムシート20の隅部近傍に設けられている止め孔24を基板30のボルト挿通孔25へ合致させ、先ず段付きワッシャー22の段部22aをゴムシート20の止め孔24へ嵌挿する。該段部22aはゴムシート20の止め孔24に対してあまりガタがないため、ボルト23を挿入する位置決めにもなる。また該段部22aと一体の鍔部22bは止め孔24よりも大径であるため、ゴムシート20の表面に載置された状態となり、ボルト23の頭部を受けて座金として作用する。
【0024】
前記ゴムシート20の止め孔24に段付きワッシャー22の段部22aを嵌挿した後、段付きワッシャー22の孔部22cへボルト25を挿入し、基板20のボルト挿通孔25の裏面に固着されているナット26へ該ボルト25を螺着する。前述したように、該ボルト23をナット26へ螺着して締め付けたときに、前記段部22aの下面が基板30の表面に当接するため、該ボルト23を必要以上に締めすぎてゴムシート20を傷損するような虞がない。
【0025】
斯くして、前記ゴムシート20が段付きワッシャー22を介してボルト23にて確実に基板30へ固定され、油等が付着しても剥離することがない。また、多数の凸部を有するゴム部材にて滑り止めを構成したので、作業者がステップや機械上面等の足場部分に手やひざ等を付いたとしても怪我をする虞がなく、作業の安全性を確保することができる。
【0026】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明が適用された油圧ショベルの側面図。
【図2】図1に示す油圧ショベルの上部旋回体の平面図。
【図3】本発明に係るゴムシートの平面図。
【図4】本発明に係るゴムシートの正面図。
【図5】図3のA−A矢視図。
【符号の説明】
【0028】
10 油圧ショベル
13 上部旋回体
16 ハウスカバー
20 ゴムシート
21 凸部
22 段付きワッシャー
22a 段部
22b 鍔部
22c 孔部
23 ボルト
24 止め孔
25 ボルト挿通孔
26 ナット
30 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップや機械上面等の足場となる基板に多数の凸部を有するゴムシートを設けてなる建設機械の滑り止め構造であって、
前記ゴムシートは段付きワッシャーを介してボルトにて基板に固定されたことを特徴とする建設機械の滑り止め構造。
【請求項2】
上記ゴムシートには止め孔を開穿し、上記基板には該止め孔に対応する位置にボルト挿通孔若しくはネジ孔を設け、上記段付きワッシャーの段部を前記止め孔に嵌挿するとともに、該段付きワッシャーにボルトを挿通して前記ゴムシートが基板に固定された請求項1記載の建設機械の滑り止め構造。
【請求項3】
上記段付きワッシャーは、上記止め孔に嵌挿される円筒形の段部と、該段部の上部に一体に設けられ且つ前記止め孔よりも大径の鍔部と、ボルト挿通用の孔部とからなる請求項1または2記載の建設機械の滑り止め構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−183302(P2006−183302A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376890(P2004−376890)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】