説明

建設機械の警告制御装置

【課題】 シール収容室への異物の侵入に伴う不具合を未然に防止することができる建設機械の警告制御装置を提供する。
【解決手段】 ハウジング(28)、ハウジングの外周面に軸受を介して回転自在に支持され内部の減速ギヤ室に減速ギヤ機構を収容したケーシング(32)、減速ギヤ室に隣接した環状のシール収容室(74)、シール収容室内に配置され外部に対してシール収容室を液密に密封する環状のフローティングシール(76)を有する減速装置(26)と、シール収容室内に配置され、シール収容室内の潤滑油の温度を検知する温度検出手段(66)と、温度検出手段にて検出した検出結果からフローティングシールによる摺動発熱量を判別し、この判別結果が異常と判定された場合には警告信号を出力するコントローラ(67)と、警告信号に基づき、警告を発生させる警告手段(94)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルやクローラキャリア等の種々の建設作業に使用される建設機械の警告制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建設機械、例えば油圧ショベルはクローラ形の下部走行体を備え、この下部走行体は、油圧による走行モータの出力が減速装置を介してクローラのスプロケットに伝達されることによって走行する。
より詳しくは、この減速装置は、走行モータを囲むハウジングと、このハウジングの外周面に軸受を介して回転自在に支持されたケーシングとを有し、これらケーシング及びハウジングは互いに協働してシール収容室を形成する。このシール収容室にはフローティングシールが配置され、フローティングシールは内部潤滑油のシール部材として機能する。
【0003】
そして、シール収容室内にはハウジングとケーシングとの隙間を通じて外部から土砂等の異物が侵入し得ることを鑑み、この隙間とフローティングシールとの間に別個のシール部材を配設させた技術が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】実開昭55−105661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記油圧ショベルは荒れ地、泥るみや岩石土壌等の悪路を走行する頻度が高く、その下部走行体は土砂等に埋もれた状態でも進むことが要求される。すなわち、土砂等の異物は下部走行体に向けて常に押し寄せ、この下部走行体には外部からシール収容室内に向かう大きな土圧が生ずることになる。
ここで、油圧ショベルの作業環境によっては、油圧ショベルには長時間に亘る連続走行が要求される場合がある。この連続走行時の土圧は、より大きな圧力を有し、継続してシール収容室内に向けて作用する。従って、特許文献1の如くのシール部材を単に設けるだけではシール収容室への異物の侵入防止が十分ではなく、また、仮に異物がシール収容室内に侵入した場合については格別な配慮がなされていない。
【0005】
そして、上記連続走行時において、異物が外部からシール収容室内に一旦侵入すればフローティングシールは異物によって押圧されて発熱する。これは、フローティングシールの破損を招き、潤滑油の密封性を長期に亘って維持することが困難になる。また、万一、油圧ショベルのオペレータが潤滑油漏れを気付かずに走行動作を続ければ、減速装置の破損にも繋がる。
【0006】
更に、上記フローティングシールの発熱はシール収容室を過熱させ、減速装置のヒートバランスが悪化するという問題も生ずる。つまり、摺動によって生ずる摺動熱がシール収容室内にこもり、これでは、減速ギヤ室内の潤滑油をも早期に劣化させ、この減速ギヤ室内の歯車や軸受等の寿命を短縮させる。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、シール収容室への異物の侵入に伴う不具合を未然に防止することができる建設機械の警告制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の建設機械の警告制御装置(請求項1)は、走行モータと、走行モータの出力を走行回転体に伝達する減速装置とを含む建設機械であって、走行モータを囲むハウジングと、ハウジングの外周面に軸受を介して回転自在に支持され、内部の減速ギヤ室に減速ギヤ機構を収容したケーシングと、ケーシングとハウジングとの間にケーシングの回転を許容して設けられ、軸受を介して減速ギヤ室に隣接した環状のシール収容室と、シール収容室内に配置され、外部に対してシール収容室を液密に密封する環状のフローティングシールとを有する減速装置と、シール収容室内に配置され、シール収容室内の潤滑油の温度を検知する温度検出手段と、温度検出手段にて検出した検出結果からフローティングシールによる摺動発熱量を判別し、この判別結果が異常と判定された場合には警告信号を出力するコントローラと、警告信号に基づき、警告を発生させる警告手段とを具備したことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の発明では、警告手段は車速の減速操作を促す警告を発生することを特徴としている。
更に、請求項3記載の発明では、警告手段は、警告として、車速の減速を強制的に行う信号を走行モータに出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、シール収容室への異物の侵入に伴ってフローティングシールで摺動熱が生じた場合であっても、この摺動熱による不具合を未然に防止することに着目したものである。
そして、請求項1記載における本発明の建設機械の警告制御装置によれば、フローティングシールによる摺動発熱量が判別され、その判別結果が異常高温と判定された場合には、コントローラを介して警告手段から警告が発せられ、建設機械のオペレータにその発熱状態について注意を喚起する。つまり、土圧により外部からシール収容室内に土砂等の異物が侵入し、フローティングシールによる摺動発熱量が異常に大きくなったとしても、警告信号によってシール収容室内における潤滑油の温度上昇が抑制される。
【0010】
この結果、建設機械の長期間に亘る連続走行に伴うフローティングシールの破損が未然に防止される。また、フローティングシールによる潤滑油の密封性が長期に亘って安定して維持可能となり、潤滑油の漏れによる減速装置の破損が未然に防止され、車体の走行不能状態を回避でき、且つ、環境汚染の防止にも寄与する。
更に、減速装置全体のヒートバランスも改善され、減速ギヤ室内の潤滑油が早期に熱劣化せず、この熱劣化に起因する減速ギヤ機構の歯車や軸受等の寿命が短くならない。
【0011】
また、請求項2記載の発明によれば、フローティングシールによる摺動発熱量が異常高温であると判定された時点で警告手段から車速の減速操作を促す警告が発せられる。従って、オペレータにその発熱状態を認知させ、オペレータ自身の減速操作によって減速させる。この結果、作業や走行動作を継続しつつ、フローティングシールの摺動熱に伴う不具合の未然防止が図られる。
【0012】
更に、請求項3記載の発明によれば、フローティングシールによる摺動発熱量が異常高温であると判定された時点で警告手段から減速指令が発せられ、強制的な減速、換言すれば、車速の自動的な規制が行われる。この結果、ヒューマンエラーが回避され、フローティングシールの摺動熱に伴う不具合の未然防止がより確実に図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を用い本発明の実施の形態について説明する。
図1は建設機械としての油圧ショベルを示す。油圧ショベルはクローラ形の下部走行体2と、この下部走行体2に旋回可能に設けられた上部旋回体4とを備え、この上部旋回体4上に運転室6、機械室8及び作業機本体10等が搭載されている。なお、この作業機本体10は、起伏ブーム12の先端にアーム14を回動可能に取付け、このアーム14の先端に回動可能なバケット16を取付けて構成されている。
【0014】
下部走行体2はそのクローラ18を走行させる走行装置20を備えており、この走行装置20の詳細を図2に示す。
走行装置20は、油圧による走行モータ22と、この走行モータ22の出力をクローラ18のスプロケット(走行回転体)24に伝達する減速装置26とからなる。
減速装置26は円筒状のハウジング28を有し、このハウジング28は走行モータ22の出力軸側を囲む。ハウジング28はその一端に取付けフランジ30を有し、この取付けフランジ30を介して下部走行体2のサイドフレームに連結されている。
【0015】
また、減速装置26は同じく円筒状のケーシング32を有し、このケーシング32の端壁33がハウジング28の他端部に複列の円錐ころ軸受(軸受)34を介して回転自在に支持されている。より詳しくは、ケーシング32はハウジング28側から、端壁33を有した駆動筒36、中空円筒38及び蓋40からなり、これらは互いに連結されてケーシング32内に減速ギヤ室42を形成する。なお、前述したスプロケット24は駆動筒36に取付けられている。
【0016】
減速ギヤ室42には減速ギヤ機構44が収容されており、例えば、減速ギヤ機構44は2段の遊星歯車機構からなる。詳しくは、減速ギヤ機構44は入力軸46を有し、この入力軸46はその一端が走行モータ22の出力軸23に連結されている。そして、入力軸46の他端には第1段の遊星歯車機構のサンギヤ48が一体に形成され、このサンギヤ48は複数の遊星ギヤ50を介して中空円筒38の内周面に形成された内歯52に噛み合っている。遊星ギヤ50はピン54を介してキャリア56に支持され、このキャリア56は第2段の遊星歯車機構のサンギヤ58と一体に回転する。サンギヤ58は入力軸46に回転自在に支持され、複数の遊星ギヤ60を介して中空円筒38の内歯52に噛み合い、そして、遊星ギヤ60はピン62を介してキャリア64に支持され、このキャリア64はハウジング28に回転不能に支持されている。
【0017】
従って、走行モータ22の出力は上述した減速ギヤ機構44を介して中空円筒38、つまり、ケーシング32に伝達され、この結果、ケーシング32とともにスプロケット24が回転される。
一方、ハウジング28の取付けフランジ30からはケーシング32の駆動筒36に向けて環状の固定スリーブ68が一体に突出している。これに対し、駆動筒36からは取付けフランジ30に向けて回転スリーブ70が一体に突出している。これら固定及び回転スリーブ68、70は、それらの先端が回転スリーブ70の回転を許容した状態で互いに係合し、ハウジング28の外周面及びケーシング32の端壁33と協働して環状のシール収容室74を形成している。
【0018】
シール収容室74は円錐ころ軸受34を介して減速ギヤ室42に隣接されており、減速ギヤ室42内の潤滑油は円錐ころ軸受34を通じてシール収容室74に流入可能である。それ故、シール収容室74内には環状のフローティングシール76が収容され、このフローティングシール76はシール収容室74から外部への潤滑油の漏出を防止し、潤滑油を密封する。
【0019】
このフローティングシール76は一対のシールリング78と、これらシールリング78をそれぞれ弾性的に支持するOリング80から構成されている。より詳しくは、一対のシールリング78はハウジング28の軸線方向に並置されて互いに当接し、これら当接面が摺接面82として形成されている。そして、一対のシールリング78にはそれらの外周面に互いに逆向きの雄テーパ面が形成されている。一方、固定及び回転スリーブ68、70の内周面はシールリング78の雄テーパ面に対応する雌テーパ面としてそれぞれ形成されており、これら雌雄の両テーパ面の間にOリング80が配置されている。これらOリング80は、対応するシールリング78と固定又は回転スリーブ68、70との間をシールする一方、一対のシールリング78を互いに押し付け、これらシールリング78の摺接面82を確実に密着させる。
【0020】
従って、ケーシング32が回転されると、回転スリーブ70側のシールリング78は固定スリーブ68側のシールリング78に対して摺接し、これらシールリング78はOリング80と協働してシール収容室74を外部に対して密封する。
ところで、フローティングシール76を収容したシール収容室74の適宜位置には油温センサ(温度検出手段)66が配置されている。この油温センサ66はシール収容室74内に流入した潤滑油の温度を検知し、その検出信号を警告コントローラ(コントローラ)67に送信する。この警告コントローラ67は中央処理装置(CPU)やROM、RAM等のメモリや、また、警告ランプ用ドライバ等の種々の周辺機器を含むマイクロコンピュータからなり、油温センサ66の検出結果からフローティングシール76による摺動発熱量を判別している。そして、警告コントローラ67はこの判別結果に基づき、警告信号をモニタパネル84の異常高温時の警告ランプ(警告手段)94に出力する。このモニタパネル84は運転室6に搭載され、油圧ショベルのオペレータにとって確認し易い位置に配置されている(図1)。
【0021】
このモニタパネル84の詳細を図3に示す。
モニタパネル84では各種の表示が視認される。より具体的には、水温や燃料量を示すメータ類86、エンジン回転速度や作動油温等を表示する液晶表示部88及び掘削作業モードを表示する作業表示部90や、水温や燃料量等に関する各種の警告を表示する警告ランプ92がパネルの適宜位置に配置されている。また、本実施の形態においては、異常高温時の警告ランプ94が上記警告ランプ92の右側に配置され、警告ランプ92の各表示に比して大きな表示で形成されている。
【0022】
本実施の形態における警告ルーチンでは、初めに、油温センサ66がシール収容室74内の潤滑油の温度、換言すれば、フローティングシール76或いはフローティングシール76の近傍の温度を検知する。次いで、警告コントローラ67は油温センサ66の検出結果からフローティングシール76による摺動発熱量を判別する。そして、シール収容室74内の潤滑油の温度が所定の閾値を超えて異常高温に達していると判定された場合には、警告信号を警告ランプ94に出力し、オペレータに警告する。
【0023】
詳しくは、まず、警告ランプ94は警告コントローラ67からの警告信号に応じて点灯する。この点灯の意味は、オペレータに認知させるべく油圧ショベルの取扱説明書にて、例えば、車速を高速から中速に減速して使用する旨が記載されており、警告ランプ94の点灯によってオペレータに注意を喚起する。
次いで、この異常温度が所定の設定時間、又は所定の設定回数を超えたまま走行動作が継続されたときには点滅する。つまり、警告ランプ94の表示が点灯から点滅に変化する。
【0024】
この点滅の意味もまた、例えば、車速を中速から低速に減速して使用し、且つ、早急なるサービス等への連絡及び減速装置26のメンテナンスを要する旨が取扱説明書に記載され、警告ランプ94の点滅によって更なる注意を喚起する。そして、連絡を受けたサービス側では減速装置26及びフローティングシール76を点検し、不具合があるときにはフローティングシール76の交換等を行う。
【0025】
以上のように、本実施の形態では、シール収容室74内の潤滑油の油温からフローティングシール76による摺動発熱量が判別される。そして、その判別結果が異常高温と判定された場合には、警告コントローラ67を介して警告ランプ94から点灯や点滅による警告が発せられ、オペレータにその発熱状態について注意を喚起する。従って、土圧により外部からシール収容室74内に土砂等の異物が侵入し、仮にフローティングシール76による摺動発熱量が異常に大きくなったとしても、警告ランプ94から車速の減速操作を促す警告が発せられ、オペレータ自身の減速操作によって減速され、シール収容室74内における潤滑油の温度上昇が抑制される。
【0026】
この結果、直ちに作業や走行動作を中断させない一方、警告による注意喚起によってフローティングシール76が破損する前には減速装置26のメンテナンスを行う機会が得られ、油圧ショベルの長期間に亘る連続走行に伴って生じ得るフローティングシール76の破損を未然に防止できる。
また、フローティングシール76による潤滑油の密封性が長期に亘って安定して維持可能となる。よって、潤滑油の漏れによる減速装置26の破損が未然に防止され、車体の走行不能状態を回避でき、且つ、環境汚染も防止できる。
【0027】
更に、減速装置26全体のヒートバランスも改善され、減速ギヤ室42内の潤滑油が早期に熱劣化し難くなる。また、この熱劣化に起因する減速ギヤ機構44の各種ギヤ48、50、52、60や円錐ころ軸受34等の寿命の短命化も回避される。
図4は、本発明の他の実施の形態を示す。当該実施の形態では警告の具体的な内容を除き、上記実施の形態と同一の構成からなる。よって、この警告内容について詳細に説明する。
【0028】
当該警告は、走行モータ22に対する作動油の供給流量を抑えて車速の減速を強制的に行う。より詳しくは、同図の油圧回路に示すように、走行モータ22は走行用制御弁100を介して可変容量形の主油圧ポンプ98に接続されている。
走行用制御弁100は4ポート3位置切換弁であり、スプリング或いはパイロット圧のいずれかの方式が選択されて作動し、作動油の流れ方向を切り換える。このパイロット圧の油圧P0はパイロットポンプ106から導かれており、左右のクローラ18に連動する走行レバー96の操作位置に応じて走行用制御弁100に供給される。なお、この走行レバー96は運転室6に設置されている(図1)。
【0029】
また、主油圧ポンプ98は走行モータ22に圧油を送油するが、その圧力はリリーフ弁102で制御され、回路を保護する。つまり、主油圧ポンプ98の吐出圧がリリーフ弁102に設けられるスプリング102Aにより設定された圧力よりも高くなると、主油圧ポンプ98から吐出された圧油がタンクに戻される。
一方、本実施の形態では、上記油圧回路に対して主油圧制御装置(警告手段)104が設けられている。この主油圧制御装置104は、電磁式の減圧弁108と、レギュレータ110とから構成され、減圧弁108はパイロットポンプ106に接続されている。
【0030】
そして、この減圧弁108は警告コントローラ67による警告信号に基づいて駆動され、パイロットポンプ106からの圧油は任意の圧力Pに制御されてレギュレータ110に供給される。なお、この減圧弁108にはOUT側のパイロット圧が導かれており、このパイロット圧が所定圧以上の値になればINとOUTとの間が閉塞され、レギュレータ110への供給が遮断される。
【0031】
図5は、本実施の形態に係る警告ルーチンのうち、主油圧制御装置104による走行モータ22の供給流量制御のフローチャートである。
同図のステップS501では、油温センサ66にてシール収容室74内の潤滑油の油温tが読み込まれ、ステップS502では、警告コントローラ67にて油温tが所定の閾値t0を超えているか否かが判別される。そして、油温tが異常高温に達し、フローティングシール76による摺動発熱量が異常であると判定された場合、すなわちYESのときには、ステップS503に進んで電磁式の減圧弁108に電流i(=i1)を出力してステップS504に進む。
【0032】
ステップS504では、減圧弁108にてパイロットポンプ106からの圧力P0が圧力P(例えばP0/2)に変更され、ステップS505では、レギュレータ110を介して主油圧ポンプ98の最大傾転角θmaxを抑制する。この抑制された最大傾転角θmaxにより、主油圧ポンプ98から吐出される最大供給流量Qmaxが制限され、走行用制御弁100を介して走行モータ22に供給される最大流量が少なくなり、車速を例えば自動的に中速から低速に設定する。
【0033】
なお、本実施の形態では、ステップS502で油温tが所定の閾値t0を超えているときには、警告コントローラ67は警告信号をモニタパネル84にも出力し、異常高温時の警告ランプ94を点灯させてオペレータに警告する。
一方、ステップS502において、油温tが所定の閾値t0を超えていないときにはステップS507に進み、警告コントローラ67は減圧弁108に電流i(=i0)を出力する。
【0034】
次いで、ステップS508では、減圧弁108の圧力Pがパイロットポンプ106からの圧力P0のまま維持され、ステップS509では主油圧ポンプ98の最大傾転角θmaxを維持する。これにより、走行モータ22への最大供給流量Qmaxが維持され、且つ、警告を発することなく一連のルーチンを終了する。
従って、本実施の形態によれば、フローティングシール76による摺動発熱量が異常高温であると判定された時点で警告ランプ94を点灯させると同時に、主油圧制御装置104からの減速指令が主油圧ポンプ98を介して走行モータ22に出力され、強制的な減速、つまり、車速の自動的な規制が行われる。この結果、作業や走行動作の継続を図りつつ、オペレータによる減速操作が不要になるのでヒューマンエラーが回避され、フローティングシールの摺動熱に伴う不具合の未然防止がより確実に図られる。
【0035】
以上で本発明の各実施の形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、警告内容としては、車速の減速の他、エンジン回転速度を低速に設定する、或いは、エンジンを停止させるものであっても良く、この場合にも上記と同様に、シール収容室74内の潤滑油の温度上昇は抑えられる。
【0036】
また、警告ランプ94を点灯させずに強制的な減速のみを行っても良い。更に、走行モータ22の出力が伝達される走行回転体としては、上記実施の形態の如くのスプロケット24の他、車輪であっても良い。
更にまた、点灯或いは点滅する警告ランプ94の他、鳴温するブザー音や音声で知らせるもの、又は、これらランプやブザー等の双方を含むものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施の形態の警告制御装置が適用される油圧ショベルの斜視図である。
【図2】図1の油圧ショベルの走行装置に組み込まれた減速装置の断面図である。
【図3】図1の油圧ショベルにおける警告手段の説明図である。
【図4】他の実施の形態における警告手段の説明図である。
【図5】図4の主油圧制御装置による走行モータの供給流量制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
20 走行装置
22 走行モータ
24 スプロケット(走行回転体)
26 減速装置
28 ハウジング
32 ケーシング
34 円錐ころ軸受(軸受)
42 減速ギヤ室
44 減速ギヤ機構
66 油温センサ(温度検出手段)
67 警告コントローラ(コントローラ)
74 シール収容室
76 フローティングシール
94 警告ランプ(警告手段)
104 主油圧制御装置(警告手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行モータと、該走行モータの出力を走行回転体に伝達する減速装置とを含む建設機械において、
前記走行モータを囲むハウジングと、該ハウジングの外周面に軸受を介して回転自在に支持され、内部の減速ギヤ室に減速ギヤ機構を収容したケーシングと、該ケーシングと前記ハウジングとの間に前記ケーシングの回転を許容して設けられ、前記軸受を介して前記減速ギヤ室に隣接した環状のシール収容室と、該シール収容室内に配置され、外部に対して該シール収容室を液密に密封する環状のフローティングシールとを有する前記減速装置と、
前記シール収容室内に配置され、該シール収容室内の潤滑油の温度を検知する温度検出手段と、
該温度検出手段にて検出した検出結果から前記フローティングシールによる摺動発熱量を判別し、この判別結果が異常と判定された場合には警告信号を出力するコントローラと、
前記警告信号に基づき、警告を発生させる警告手段と
を具備したことを特徴とする建設機械の警告制御装置。
【請求項2】
前記警告手段は、車速の減速操作を促す警告を発生することを特徴とする請求項1に記載の建設機械の警告制御装置。
【請求項3】
前記警告手段は、前記警告として、車速の減速を強制的に行う信号を前記走行モータに出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械の警告制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−38133(P2006−38133A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220227(P2004−220227)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】