説明

建設機械

【課題】 エンジンまたはその近傍に配置された機器を容易に点検できるようにし、点検作業の作業性を向上する。
【解決手段】 エンジン7の前側部位を覆うように設けられた運転席台座25のボックス取付部22には、オルタネータ9の近傍に位置して点検口22Dを設け、この点検口22Dは、ボックス取付部22に着脱可能に取付けられる点検カバー30によって覆う構成とする。これにより、ボックス取付部22から点検カバー30を取外すことにより、点検口22Dから運転席台座25に覆われたオルタネータ9の点検作業、整備作業を容易に行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、後側にエンジンが搭載された建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とによって大略構成されている。
【0003】
ここで、油圧ショベルには、狭い作業現場での作業に適したミニショベルと呼ばれる小型の油圧ショベルがあり、この小型の油圧ショベルでは、狭い場所でも旋回できるように上部旋回体が小さく形成されている。
【0004】
そして、小型の油圧ショベルの上部旋回体は、旋回フレームと、該旋回フレームの後側に位置して左,右方向に延在する横置き状態に搭載され、油圧ポンプを駆動するエンジンと、該エンジンの前側から上側を覆うように設けられた運転席台座と、該運転席台座上に設けられ、オペレータが着座する運転席と、前記運転席の左,右両側等に配設され、前記作業装置を操作する作業レバーとによって大略構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、エンジンには冷却ファンが設けられ、該冷却ファンに対面する位置にはラジエータ、オイルクーラ等が配設されている。さらに、エンジンは、例えば横向きに置かれた当該エンジンの前側(運転席側)にオルタネータ(発電機)を備え、該オルタネータは、冷却ファンと一緒にプーリ、ベルトを介して回転軸によって回転駆動される。
【0006】
【特許文献1】特開平11−200418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術による油圧ショベルでは、上部旋回体を小さく形成するために、エンジンの前側から上側を覆うように運転席台座を設けると共に、エンジンの冷却ファンに対面してラジエータ、オイルクーラ等を配設している。これにより、エンジンの前側の奥まった位置に配設されたオルタネータは、後側に設けられたエンジンカバー等を開いても、エンジン、運転席台座、ラジエータ等が障害になって直接目視することができず、また手も届き難い。
【0008】
このため、オルタネータの点検作業、該オルタネータを駆動するベルトのテンション調整作業を行なうためには、エンジンの前側部位を覆う運転席台座、作業レバー等を取外さなくてはならない。これにより、オルタネータの点検作業、ベルトのテンション調整作業に多大な労力と時間を要してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、エンジンまたはその近傍に配置された機器の点検作業を簡単にし、作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明による建設機械は、前側に作業装置が設けられた車体と、該車体の後側に搭載されたエンジンと、該エンジンの前側部位を覆うように設けられた運転席台座と、該運転席台座の上に設けられオペレータが着座する運転席とを備えている。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記運転席台座には、前記運転席の側方に位置し前記エンジンまたはその近傍に配置された機器を点検するための点検口を設け、該点検口は前記運転席台座に着脱可能に取付けられ、各種のスイッチ類が設けられたスイッチボックスによって覆う構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明が採用する構成の特徴は、前記運転席台座には、前記運転席の側方に位置し前記エンジンまたはその近傍に配置された機器を点検するための点検口を設け、該点検口は前記運転席台座に着脱可能に取付けられる点検カバーによって覆い、該点検カバーには、各種のスイッチ類が設けられたスイッチボックスを取付ける構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明によると、前記運転席台座と点検口は、前記運転席に着座したオペレータが足を乗せる床板と一緒にフロアベースを構成したことにある。
【0014】
請求項4の発明によると、前記エンジンは前記車体に対して左,右方向に延在する横置き状態に搭載し、前記運転席台座の点検口は前記エンジンに設けられたオルタネータの近傍に開口したことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、運転席台座には、運転席の側方に位置しエンジンまたはその近傍に配置された機器を点検するための点検口を設け、該点検口は運転席台座に着脱可能に取付けられるスイッチボックスによって覆う構成としている。従って、各種のスイッチ類が設けられたスイッチボックスを利用して運転席台座に設けた点検口を覆うことができる。また、運転席台座の点検口を覆うスイッチボックスを取外すことにより、点検口からエンジンまたはその近傍に配置された機器を目視によって容易に点検することができ、また点検口から手を差し入れることにより容易に整備することができる。
【0016】
この結果、点検口を覆うカバー等を別途設けることなく、既存のスイッチボックスを利用して点検口を覆うことができ、部品点数を削減して、組立作業性等を向上することができる。そして、直接目視することができず、また手も届き難い場所のエンジン、機器等を点検、整備する場合には点検口を開くことにより、この点検口から容易に作業することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、運転席台座には、運転席の側方に位置しエンジンまたはその近傍に配置された機器を点検するための点検口を設け、該点検口は運転席台座に着脱可能に取付けられる点検カバーによって覆う構成としている。従って、エンジンの前側部位を覆う運転席台座に設けた点検口を覆う点検カバーを取外すことにより、点検口からエンジンまたはその近傍に配置された機器を目視によって容易に点検することができ、また点検口から手を差し入れることにより容易に整備することができる。この結果、直接目視することができず、また手も届き難い場所のエンジン、機器等を点検、整備する場合でも、このときの作業性を向上することができる。
【0018】
また、点検カバーには、各種のスイッチ類が設けられたスイッチボックスを取付けているから、点検カバーと一緒にスイッチボックスも着脱することができ、これらの着脱作業を簡単に行なうことができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、運転席台座と点検口は、運転席に着座したオペレータが足を乗せる床板と一緒にフロアベースを構成しているから、部品点数を削減でき、車体に対する取付作業も容易に行なうことができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、エンジンは車体に対して左,右方向に延在する横置き状態に搭載し、運転席台座の点検口は前記エンジンに設けられたオルタネータの近傍に開口しているから、例えば奥まった位置に配置されたオルタネータを目視によって容易に点検することができ、またオルタネータを駆動するベルトのテンションの調整作業も容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に適用される建設機械として、キャノピ仕様の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
まず、図1ないし図11は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は第1の実施の形態に適用される建設機械としてのキャノピ仕様の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、下部走行体2と一緒に車体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行なう作業装置4とにより大略構成されている。また、下部走行体2の前側には、地均し作業等を行なう排土板5が設けられている。
【0023】
そして、上部旋回体3は、下部走行体2の車幅内でほぼ旋回できるように、上方からみて略円形状に形成されている(図3参照)。また、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム6、エンジン7、オルタネータ9、フロアベース19、運転席26、点検カバー30、スイッチボックス32等により大略構成されている。
【0024】
6は上部旋回体3のベースを構成する旋回フレームで、該旋回フレーム6は、図5等に示す如く、左,右方向の中間部を前,後方向に延びた平板状の底板6Aと、該底板6Aの上面側に左,右に離間して立設された一対の縦板6B,6Bと、該各縦板6Bの前端部に設けられ、作業装置4を支持する支持ブラケット6Cと、前側に位置して左,右方向に延びた前梁6Dと、前記各縦板6Bの後部位置で左,右方向に延びた中梁6Eと、前記前梁6Dと中梁6Eとの間に設けられたアンダカバー6F等により大略構成されている。また、前記前梁6Dは、後述するフロアベース19の前側を支持する支持台を構成している。
【0025】
7は旋回フレーム6の後側に搭載されたエンジンで、該エンジン7は、図5に示すように、車体を構成する上部旋回体3に対して左,右方向に延在する横置き状態に配置されている。そして、エンジン7の左側には油圧ポンプ8が取付けられ、該油圧ポンプ8はエンジン7によって駆動されることにより、下部走行体2、作業装置4等のアクチュエータに向け圧油を吐出するものである。
【0026】
また、エンジン7の右側には、図6に示す如く、下側寄りに位置してクランク軸(図示せず)に連なる出力軸7Aが突出して設けられている。また、出力軸7Aの上側には、後述する冷却ファン12を回転可能に支持するファン支持部7Bが設けられ、出力軸7A,ファン支持部7Bにはプーリ7C,7Dが取付けられている。さらに、エンジン7には、後述するオルタネータ9を位置調整可能に支持するブラケット7Eが設けられている。
【0027】
9はエンジン7の右前側に取付けられた発電用のオルタネータ(発電機)で、該オルタネータ9は、エンジン7の近傍に配置された機器の一つを構成している。そして、オルタネータ9は、図4に示すように、エンジン7の前側で後述するフロアベース19の運転席台座25の下側に配設されている。また、オルタネータ9は、一方の取付部9Aがエンジン7側にボルト10を用いて取付けられ、他方の取付部9Bはエンジン7のブラケット7Eにボルト10を用いて取付けられている。さらに、オルタネータ9には、エンジン7側のプーリ7C,7Dに対応するようにプーリ9Cが取付けられている。
【0028】
ここで、オルタネータ9は、各取付部9A,9Bを固定しているボルト10,10を緩めることにより、一方の取付部9Aをエンジン7側に取付けているボルト10を中心にして矢示A,B方向に位置調整することができる。
【0029】
11はエンジン7の出力軸7A、ファン支持部7Bおよびオルタネータ9を接続して設けられたベルトで、該ベルト11は、プーリ7C,7D,9Cに巻回されている。これにより、ベルト11は、出力軸7Aによってファン支持部7B(後述の冷却ファン12)とオルタネータ9とを回転駆動させるものである。
【0030】
ここで、オルタネータ9の他方の取付部9Bをエンジン7のブラケット7Eに沿って矢示A方向に移動させたときには、ベルト11のテンションを高めることができる。一方、オルタネータ9の他方の取付部9Bをエンジン7のブラケット7Eに沿って矢示B方向に移動させたときには、ベルト11を緩めることができる。なお、このベルト11のテンション調整は、後述の点検カバー30を取外すことにより運転席台座25を構成するボックス取付部22の点検口22Dから手を差し入れて簡単に行なうことができる。
【0031】
12はエンジン7の右側に位置してファン支持部7Bに取付けられた冷却ファンで、該冷却ファン12は、エンジン7によって回転駆動されることにより、後述のラジエータ13、オイルクーラ14に向けて冷却風を供給するものである。
【0032】
13は冷却ファン12に対面して設けられたラジエータ(図5参照)で、該ラジエータ13は、エンジン7の冷却水を冷却するもので、エンジン7の右側を覆うように旋回フレーム6上に取付けられている。また、14はラジエータ13に重ねて設けられたオイルクーラで、該オイルクーラ14は、後述の作動油タンク15に戻る作動油を冷却するものである。
【0033】
15はラジエータ13の前側に位置して旋回フレーム6の右側に設けられた作動油タンク、16は該作動油タンク15の前側に設けられた燃料タンクをそれぞれ示し、該燃料タンク16の上側にはバッテリ17が配設されている。また、18は旋回フレーム6の左側に設けられた制御弁を示している。
【0034】
19は旋回フレーム6上の左側寄りに設けられたフロアベースで、該フロアベース19の後側部分は、図4に示す如く、エンジン7の前側部位を覆っている。また、フロアベース19は、その前側位置が旋回フレーム6の前梁6Dに回動可能に支持され、後側位置が旋回フレーム6の後側に設けられた支持部材(図示せず)に支持され、これにより、前側位置を支点として後側位置を持上げる(チルトアップする)ことができるようになっている。そして、フロアベース19は、図7、図8に示す如く、後述の床板20、建屋取付板23、運転席台座25等によって大略構成されている。
【0035】
20はフロアベース19の前側部分を形成する床板で、該床板20は、後述の運転席26に着座したオペレータが足を乗せるもので、その前側部分は、後述の走行操作レバー・ペダル29等を取付けるためのレバー・ペダル取付部20Aとなっている。
【0036】
21は床板20の後側に設けられ、後述する前部台座24、ボックス取付部22と共に運転席台座25を構成する後部台座で、該後部台座21は、床板20の後側から立上がった後にエンジン7の上側を後方に延びて設けられている。これにより、後部台座21は、エンジン7の前側部位を覆っている。詳しくは、後部台座21は、図8に示すように、床板20の後端から上方に立上った立上り壁21Aと、該立上り壁21Aの上端から後方に延びた運転席支持板21Bと、該運転席支持板21Bの後端から上側に延びた背板部21Cとを有している。
【0037】
22は後部台座21の右側に設けられたボックス取付部で、該ボックス取付部22には、後述の点検カバー30を介してスイッチボックス32が取付けられる。また、ボックス取付部22は、エンジン7の右前側を覆う位置、詳しくはエンジン7の右前部位と、この右前部位に設けられたオルタネータ9等を上側から覆う位置に設けられている。
【0038】
また、ボックス取付部22は、図9に示す如く、後部台座21の立上り壁21Aの右側に立上って設けられた前面板22Aと、該前面板22Aの上部から建屋取付板23に向けて斜めに延びた斜面板22Bと、該斜面板22Bの左端縁から下向きに延びた側壁板22Cと、前記斜面板22Bに開口して設けられた点検口22Dとにより大略構成されている。さらに、ボックス取付部22の側壁板22Cには、前,後方向に離間して例えば2個のねじ穴22Eが設けられ、該各ねじ穴22Eには、後述の点検カバー30を固定するための蝶ボルト31が螺着される。
【0039】
ここで、ボックス取付部22に設けられた点検口22Dは、前,後方向に長尺な長方形状の開口として形成されている。また、点検口22Dは、図11に示す如く、オルタネータ9を目視等で点検することができ、しかも、ベルト11のテンションを調整するためにボルト10を緩めてオルタネータ9を矢示A,B方向に容易に位置調整できる位置、即ち、オルタネータ9の近傍で左斜め上方に開口している。そして、ボックス取付部22には、点検口22Dを覆うように斜面板22B上に後述の点検カバー30がスイッチボックス32と一緒に着脱可能に取付けられる。
【0040】
23は後部台座21、ボックス取付部22の上端部(後端部)から後側に張出した建屋取付板で、建屋取付板23は、上部旋回体3の円弧形状に沿うように、左側から後側に亘って円弧状に形成されている。そして、建屋取付板23は、エンジン7の上方位置で旋回フレーム6の後側に設けられた支持部材に支持されている。また、建屋取付板23には、後述するキャノピ37の後側部分が取付けられている。
【0041】
また、24はフロアベース19を構成する後部台座21の立上り壁21A前面に取付けられる前部台座で、該前部台座24は、後部台座21、ボックス取付部22と一緒に後述の運転席台座25を構成している。そして、前部台座24は、後部台座21の運転席支持板21Bと一緒に後述の運転席26を支持するものである。また、前部台座24には、前側を覆うようにカバー24Aが開,閉可能に取付けられている。
【0042】
25は床板20上に設けられた運転席台座で、該運転席台座25は、前述した後部台座21、ボックス取付部22および前部台座24により構成されている。そして、運転席台座25は、後述の運転席26を設置する台座を構成している。ここで、運転席台座25は、例えば後部台座21に装着される各種機器類(図示せず)のメンテナンス作業を容易に行なうことができるように、後部台座21に前部台座24を着脱可能に取付ける構成としている。従って、運転席台座25としては、後部台座21と前部台座24とからなる2部材とせず、両者を一体化した形状の台座部材として構成することもできる。
【0043】
26は運転席台座25上に設けられた運転席(図3、図4等参照)で、該運転席26は、油圧ショベル1を操縦するオペレータが着座するものである。また、運転席26の近傍には、後述の作業レバー27,28、走行レバー・ペダル29、スイッチボックス32等が配設されている。
【0044】
27は運転席26の左側に配設された左作業レバーで、該左作業レバー27は、ボックス状のコンソール27Aと、該コンソール27Aの前部に傾転可能に設けられたレバー本体27Bとにより大略構成されている。また、28は運転席26の右側に配設された右作業レバーで、該右作業レバー28は、左作業レバー27と同様に、コンソール28Aとレバー本体28Bとにより大略構成されている。そして、左,右の作業レバー27,28は、作業装置4を操作するものである。
【0045】
29は運転席26の前側に設けられた走行レバー・ペダルで、該走行レバー・ペダル29は、下部走行体2を走行させるもので、床板20のレバー・ペダル取付部20Aに傾転可能に取付けられている。
【0046】
30は運転席台座25のボックス取付部22に着脱可能に取付けられる点検カバーで、該点検カバー30は、斜面板22Bに開口した点検口22Dを覆うものである。また、点検カバー30は、後述のスイッチボックス32をボックス取付部22に取付けるブラケットを兼ねている。これにより、点検カバー30をボックス取付部22に対して着脱したときには、スイッチボックス32も一緒に着脱することができる。
【0047】
詳しくは、点検カバー30は、図9に示す如く、点検口22Dよりも大きな長方形状に形成された閉塞板30Aと、該閉塞板30Aの左端縁から下向きに屈曲した前,後の側板部30B,30Bと、前記閉塞板30Aの裏面側に前,後方向に延びて固着された係合板30Cと、前記閉塞板30Aの表面側に前,後方向に間隔をもって固着され、左,右方向に延びた両端部が上向きに屈曲した2個の取付ブラケット30D,30Dと、前記各側板部30Bにそれぞれ設けられた切欠溝30E,30Eとにより構成されている。
【0048】
ここで、係合板30Cは、図10に示すように、横断面がステップ状に形成され、ボックス取付部22の点検口22Dから斜面板22Bを挟むことにより、点検カバー30の右側をボックス取付部22に係合させている。また、各取付ブラケット30Dには、屈曲した両端部にナット30D1がそれぞれ溶接され、該ナット30D1には後述のスイッチボックス32を固定するためのボルト33が螺着される。さらに、各側板部30Bに設けられた切欠溝30Eは、ほぼ下向きに開口して形成され、点検カバー30をボックス取付部22に取付けたときに、側壁板22Cの各ねじ穴22Eに対応する位置に配設されている。
【0049】
そして、点検カバー30は、係合板30Cを点検口22Dの内縁部(斜面板22B)に係合させつつ、閉塞板30Aを斜面板22Bに取付ける。この状態では切欠溝30Eがねじ穴22Eに螺着された後述の蝶ボルト31に係合しているから、該蝶ボルト31を締め込むことにより、点検カバー30をボックス取付部22に固定することができ、この固定状態では閉塞板30Aにより点検口22Dを閉塞して覆い隠すことができる。一方、点検カバー30をボックス取付部22に固定した状態から、蝶ボルト31を緩めることにより、点検カバー30をボックス取付部22から簡単に取外すこともできる。
【0050】
31はボックス取付部22の各ねじ穴22Eに螺着される蝶ボルトで、該各蝶ボルト31は、点検カバー30の切欠溝30Eに係合した状態で締付けることにより、ボックス取付部22の側壁板22Cとの間に点検カバー30の側板部30Bを挟んで固定するものである。ここで、蝶ボルト31は、スパナ等の工具を用いることなく、指先で挟んで締付けたり緩めたりすることができるから、点検カバー30の着脱作業を簡単に行なうことができる。
【0051】
32は点検カバー30に取付けられたスイッチボックスを示している。このスイッチボックス32は、前面部32A、後面部32B(図3中に図示)、左側面部32C、右側面部32D(図4中に図示)および上面部32Eにより、有蓋な箱形状に形成されている。また、左,右の側面部32C,32Dは、上面部32Eをほぼ水平にするために後側に向けて漸次狭幅となるほぼ三角形状に形成されている。
【0052】
また、左,右の側面部32C,32Dには、それぞれ2個の切欠溝32F(左側面部32Cにのみ図示)が形成され、該各切欠溝32Fは、スイッチボックス32を点検カバー30に取付けたときに、各取付ブラケット30Dのナット30D1に対応する位置に形成されている。一方、スイッチボックス32の上面部32Eには、取付パネル32Gが取付けられ、該取付パネル32Gには、後述する各種のスイッチ34が取付けられている。
【0053】
そして、スイッチボックス32は、左,右の側面部32C,32Dによって点検カバー30の各取付ブラケット30Dを挟むように閉塞板30A上に配置する。この状態でボルト33を切欠溝32Fに通して各取付ブラケット30Dのナット30D1に螺着して締め込むことにより、スイッチボックス32は、点検カバー30に固定することができる。
【0054】
34はスイッチボックス32の取付パネル32Gに取付けられた各種のスイッチで、該各スイッチ34としては、例えば下部走行体2の走行速度を2段階に切換える速度切換スイッチ、ライト(図示せず)を点灯、消灯するライトスイッチ、アタッチメント(図示せず)を取付けたときに圧油の流量を大流量と小流量に切換える油量切換スイッチ、住宅街や夜に作業を行なうときに走行時に注意を促すためのアラームをキャンセルするアラームスイッチ等がある。そして、各スイッチ34は、それそれの配線34Aが束ねられ、例えば右作業レバー28からの配線と一緒にコントローラ(いずれも図示せず)に接続されている。
【0055】
なお、35はエンジン7の後側に位置して旋回フレーム6の後端部に取付けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト35は、作業装置4との重量バランスをとるもので、ほぼ円弧状に形成されている。
【0056】
36は運転席26(フロアベース19)の右側から後側にかけて設けられた外装カバーで、該外装カバー36は、各タンク15,16を覆うタンクカバー36Aと、カウンタウエイト35に取付けられ、該カウンタウエイト35に設けられた開口(図示せず)を開,閉するエンジンカバー36Bとによって大略構成されている。そして、エンジンカバー36Bを開くことにより、エンジン7の後側部位、エンジン7の後側に取付けられた機器を点検、整備することができる。
【0057】
また、37はフロアベース19上に設けられた建屋の具体例としてのキャノピで、該キャノピ37は、上側のルーフパネル(図示せず)によって運転席26の上側を覆うものである。また、キャノピ37は、例えば前,後と左,右に柱を有する4柱キャノピとして形成されている。なお、建屋の具体例としてキャノピ37を例示したが、運転席26の前,後、左,右、上方を覆うキャブボックスを建屋としてフロアベース19上に設ける構成としてもよい。
【0058】
第1の本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、以下、その作動について説明する。
【0059】
まず、運転席26に着座したオペレータは、走行レバー・ペダル29を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、左,右の作業レバー27,28を操作することにより、作業装置4等を駆動して土砂の掘削作業等を行なうことができる。
【0060】
次に、エンジン7や該エンジン7の近傍に配置されたオルタネータ9等の機器の点検、整備作業を行なう場合について説明する。
【0061】
まず、エンジン7の後側部位およびこの後側部位の近傍に配置された機器を点検、整備する場合には、外装カバー36を構成するエンジンカバー36Bを開くことにより、カウンタウエイト35に設けられた開口から点検、整備することができる。
【0062】
ここで、エンジン7の前側部位およびこの前側部位の近傍に配置された機器、例えばオルタネータ9は、右側のタンクカバー36Aを開いてもラジエータ13等が障害となり、エンジンカバー36Bを開いてもエンジン7が障害となって点検、整備することができない。
【0063】
そこで、オルタネータ9の点検やベルト11のテンション調整を行う場合の作業について説明する。この場合には、フロアベース19を構成するボックス取付部22に点検カバー30を固定している蝶ボルト31を緩め、スイッチボックス32と一緒に点検カバー30を取外す。これにより、ボックス取付部22の点検口22Dが開放されるから、作業者は、この点検口からオルタネータ9の点検作業等を簡単に行なうことができる。また、点検口22Dから手や工具を差し入れることにより、オルタネータ9を固定しているボルト10を緩めてベルト11のテンション調整を簡単に行なうことができる。そして、点検作業等が終了したら、点検カバー30をボックス取付部22に取付けて蝶ボルト31を締付けることにより、点検カバー30をスイッチボックス32と一緒にボックス取付部22に固定することができる。
【0064】
かくして、第1の実施の形態によれば、運転席台座25のボックス取付部22には、エンジン7の前側部位、オルタネータ9等を点検するための点検口22Dを設け、該点検口22Dは、ボックス取付部22に着脱可能に取付けられる点検カバー30によって覆う構成としている。
【0065】
従って、右側のタンクカバー36A、エンジンカバー36Bを開いても目視できず、また手も届かない例えばオルタネータ9を点検、整備する場合には、ボックス取付部22に設けた点検口22Dを覆う点検カバー30を取外すことにより、点検口22Dからオルタネータ9等を目視によって容易に点検することができる。また、点検口22Dから手を差し入れることにより容易に整備することができる。
【0066】
この結果、直接目視することができず、また手も届き難い場所のエンジン7の前側部位、オルタネータ9等を点検、整備する場合でも、フロアベース19を取外す(チルトアップする)ことなく、点検カバー30を取外すだけでこれらの点検、整備を行なうことができ、作業性を向上することができる。
【0067】
また、点検口22Dは、旋回フレーム6上に横置き状態に搭載されたエンジン7の前側部位に配設されたオルタネータ9の近傍に開口しているから、点検口22Dからエンジン7の前側部位、オルタネータ9等を目視によって容易に点検することができ、またオルタネータ9を駆動するベルト11のテンションの調整作業も容易に行なうことができる。
【0068】
一方、点検カバー30には、各種のスイッチ34が設けられたスイッチボックス32を取付けているから、点検カバー30と一緒にスイッチボックス32も着脱することができ、これらの着脱作業を簡単に行なうことができる。
【0069】
また、運転席台座25の後部台座21、点検口22Dが設けられたボックス取付部22は、床板20、建屋取付板23と一緒にフロアベース19を構成しているから、部品点数を削減でき、旋回フレーム6に対する取付作業も容易に行なうことができる。
【0070】
さらに、点検カバー30は蝶ボルト31を用いてボックス取付部22に取付ける構成としているから、スパナ等の工具を用いることなく、蝶ボルト31を緩めたり締付けたりすることができ、点検カバー30の着脱作業をより一層容易にすることができる。
【0071】
次に、図12ないし図14は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、点検口は運転席台座に着脱可能に取付けられ、各種のスイッチ類が設けられたスイッチボックスによって覆う構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0072】
図12において、41は運転席台座25のボックス取付部22に着脱可能に取付けられるスイッチボックスで、該スイッチボックス41は、図13、図14に示すように、斜面板22Bに開口した点検口22Dを覆うものである。また、スイッチボックス41には、後述のスイッチ42が取付けられている。
【0073】
そして、スイッチボックス41は、図13、図14に示す如く、前面部41A、後面部41B、左側面部41C、右側面部41Dおよび上面部41Eにより、有蓋な箱形状に形成されている。また、左,右の側面部41C,41Dは、上面部41Eをほぼ水平にするために後側に向けて漸次狭幅となるほぼ三角形状に形成されている。
【0074】
また、スイッチボックス41の左側面部41Cには、下側に延びる延長部41Fが設けられ、該延長部41Fには、ほぼ下向きに開口して2個の切欠溝41Gが形成されている。これら2個の切欠溝41Gは、スイッチボックス41をボックス取付部22に取付けたときに、側壁板22Cの各ねじ穴22Eに対応する位置に配設されている。
【0075】
一方、右側面部41Dの下端部には、図14に示すように、右側に開口する断面コ字状の係合部41Hが設けられ、該係合部41Hは、ボックス取付部22の点検口22Dから斜面板22Bを挟むことにより、スイッチボックス41の右側をボックス取付部22に係合させるものである。
【0076】
さらに、スイッチボックス41の上面部41Eには、取付パネル41Jが取付けられ、該取付パネル41Jには、第1の実施の形態によるスイッチ34と同様のスイッチ42が取付けられている。
【0077】
そして、第2の実施の形態によるスイッチボックス41は、係合部41Hを点検口22Dの内縁部(斜面板22B)に係合させつつ、各切欠溝41Gをボックス取付部22のねじ穴22Eに螺着された蝶ボルト31に係合させる。この状態で蝶ボルト31を締め込むことにより、スイッチボックス41をボックス取付部22に固定することができ、この固定状態では点検口22Dを閉塞して覆い隠すことができる。一方、スイッチボックス41をボックス取付部22に固定した状態から、蝶ボルト31を緩めることにより、該スイッチボックス41をボックス取付部22から簡単に取外すこともできる。
【0078】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、ボックス取付部22の点検口22Dは、スイッチ34を取付けるために設けられていたスイッチボックス41を利用して覆うことができる。従って、点検口22Dを覆うためのカバー等を別途設ける必要がないから、部品点数を削減することができ、組立作業性等を向上することができる。
【0079】
なお、第1の実施の形態では、スイッチボックス32には、速度切換スイッチ、ライトスイッチ、油量切換スイッチ、アラームスイッチ等のスイッチ34を取付けた場合を例示した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばスイッチ類としてはスイッチ34の操作状況を表示するモニタ、ランプ等も含み、これらをスイッチボックス32に取付ける構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0080】
一方、各実施の形態では、床板20、後部台座21、ボックス取付部22、建屋取付板23等を一体に形成してフロアベース19を構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、床板20、後部台座21、ボックス取付部22、建屋取付板23等を別個に設け、それぞれの部材を旋回フレーム6側に取付ける構成としてもよい。
【0081】
また、各実施の形態では、運転席台座25は、後部台座21と前部台座24との2つの部材によって構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば前部台座24を廃止し、後部台座21を前側に延ばすことにより単一の部材で運転席台座を構成してもよい。
【0082】
また、各実施の形態では、運転席26の上方を覆う4柱キャノピ37を用いたキャノピ仕様の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、2柱、3柱、5柱のキャノピを備えた油圧ショベル、運転席26の前,後、左,右、上方を覆うキャブボックスを用いたキャブ仕様の油圧ショベル等に適用してもよい。
【0083】
さらに、各実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1を例示した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイールローダ、ジラフ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す背面図である。
【図3】上部旋回体をキャノピのルーフパネルを省略した状態で示す平面図である。
【図4】タンクカバー、タンク、冷却ファン等を省略した上部旋回体を拡大して示す正面図である。
【図5】旋回フレーム上にエンジン、ラジエータ、タンク、制御弁等を搭載した状態を示す平面図である。
【図6】エンジンを図5中の矢示VI−VI方向から拡大して示す正面図である。
【図7】前部台座、点検カバー、スイッチボックスが取付けられたフロアベースを示す外観斜視図である。
【図8】フロアベースと点検カバーとスイッチボックスを分解した状態で示す分解斜視図である。
【図9】図8中のボックス取付部、点検カバー、スイッチボックス等を示す要部拡大の外観斜視図である。
【図10】ボックス取付部に対する点検カバーの取付状態を図9中の矢示X−X方向からみた要部拡大断面図である。
【図11】点検口を介してオルタネータ等を目視している状態をキャノピの斜め後方からみた要部拡大の外観斜視図である。
【図12】第2の実施の形態によるスイッチボックスが取付けられたフロアベースを示す外観斜視図である。
【図13】フロアベースとスイッチボックスを分解した状態で示す分解斜視図である。
【図14】ボックス取付部に対するスイッチボックスの取付状態を図13中の矢示XIV−XIV方向からみた要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
6 旋回フレーム
7 エンジン
9 オルタネータ(機器)
11 ベルト
19 フロアベース
20 床板
21 後部台座
22 ボックス取付部
22D 点検口
23 建屋取付板
24 前部台座
25 運転席台座
26 運転席
30 点検カバー
32,41 スイッチボックス
34,42 スイッチ(スイッチ類)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側に作業装置が設けられた車体と、該車体の後側に搭載されたエンジンと、該エンジンの前側部位を覆うように設けられた運転席台座と、該運転席台座の上に設けられオペレータが着座する運転席とを備えてなる建設機械において、
前記運転席台座には、前記運転席の側方に位置し前記エンジンまたはその近傍に配置された機器を点検するための点検口を設け、
該点検口は前記運転席台座に着脱可能に取付けられ、各種のスイッチ類が設けられたスイッチボックスによって覆う構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前側に作業装置が設けられた車体と、該車体の後側に搭載されたエンジンと、該エンジンの前側部位を覆うように設けられた運転席台座と、該運転席台座の上に設けられオペレータが着座する運転席とを備えてなる建設機械において、
前記運転席台座には、前記運転席の側方に位置し前記エンジンまたはその近傍に配置された機器を点検するための点検口を設け、
該点検口は前記運転席台座に着脱可能に取付けられる点検カバーによって覆い、
該点検カバーには、各種のスイッチ類が設けられたスイッチボックスを取付ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
前記運転席台座と点検口は、前記運転席に着座したオペレータが足を乗せる床板と一緒にフロアベースを構成してなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記エンジンは前記車体に対して左,右方向に延在する横置き状態に搭載し、前記運転席台座の点検口は前記エンジンに設けられたオルタネータの近傍に開口してなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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