説明

建設機械

【課題】簡単な構造で上部旋回体の旋回をロックでき、さらにロック時の操作性を高めた建設機械を提供する。
【解決手段】自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体6と、該上部旋回体6に形成されたキャブと、前記下部走行体2に対する前記上部旋回体6の旋回をロックするためのロック装置30とを備えた建設機械において、前記ロック装置30は前記旋回のロック及びアンロックを切り換えるための操作部50を含み、該操作部50は前記キャブ外に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部走行体に対する上部旋回体の旋回をロックするためのロック装置を有する油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の旋回ロック装置が特許文献1に開示されている。このロック装置は、旋回ロック装置を小型化してコンパクトに形成することを目的とし、省スペース化を図ることによってキャブ内の居住性、操作性等を向上するものである。したがって、ロック装置はブーム、アーム及びバケット等の操作装置やアクセル及びブレーキペダル等と同様にキャブ内に配設されることが前提となっている。また、ロック装置は、建設機械が走行を行う前に操作され、走行時に上部旋回体を下部走行体に対してロックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−70072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のロック装置は、キャブ内に設けられたロックレバーによって操作される。しかしながら、走行時における上部旋回体のロックの他、メンテナンス作業時においても上部旋回体をロックさせたい場合がある。建設機械のメンテナンス作業を行う場合、作業者は一度作業を中断してロックレバーの操作のためにキャブ内に乗り込む必要がある。建設機械のメンテナンスは車体の外側で行うため、このように一度キャブに乗り込んでロック装置のロック操作を行うことは作業者にとって大変煩わしく、メンテナンスにおける作業性の低下を招いていた。
【0005】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、簡単な構造で上部旋回体の旋回をロックでき、さらにロック時の操作性を高めた建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成すべく、請求項1の発明では、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に形成されたキャブと、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回をロックするためのロック装置とを備えた建設機械において、前記ロック装置は前記旋回のロック及びアンロックを切り換えるための操作部を含み、該操作部は前記キャブ外に設けられていることを特徴とする建設機械を提供する。
【0007】
また、請求項2の発明では、前記ロック装置は、前記上部旋回体に設けられた貫通孔と、該貫通孔を挿通するロックピンと、該ロックピンを前記貫通孔に挿通されている状態に保持するホルダとを有することを特徴としている。
また、請求項3の発明では、前記貫通孔は、前記上部旋回体の回転軸を中心とする同心円上に間隔を存して複数形成されていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項4の発明では、前記ロック装置は、前記貫通孔の長手方向に沿って内壁を切欠いた溝と、前記ロックピンから側方に突出して設けられ、前記溝を挿通するストッパとをさらに有し、前記ロックピンが前記貫通孔に挿通されている状態で、前記ストッパは前記貫通孔の外側且つ平面視にて前記溝とは異なる位置に配されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、下部走行体に対する上部旋回体の旋回をロック又はアンロックするための操作部がロック装置に備わり、この操作部がキャブ外に設けられている。このため、作業者はキャブ内への出入りを必要とせず、キャブ外から操作部を操作して上部旋回体のロック又はアンロックの切り換え操作を行うことができる。したがって、特にキャブへの出入りを必要としないメンテナンス時における作業性の向上を図ることができる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、下部走行体に形成されたホルダに対し、貫通孔に挿通された状態のロックピンを保持することで、ロックピンを介して上部旋回体が下部走行体に固定される。したがって、簡単な構造で下部走行体に対する上部旋回体の旋回をロックすることができる。
また、請求項3の発明によれば、上部旋回体に形成された複数の貫通孔のいずれかにロックピンを挿入することにより、下部走行体に対する角度を異ならせて上部旋回体の旋回をロックすることができる。したがって、用途に応じた適切な位置に上部旋回体を固定することができる。
【0011】
また、請求項4の発明によれば、ストッパを用いてロックピンのさらなる抜け止め防止を図れるため、上部旋回体のロック時における信頼性が向上する。すなわち、ロックピンがホルダに保持された状態(ロックされた状態)で、ストッパは貫通孔の外側且つ平面視にて溝とは異なる位置に配されているため、ロックピンが貫通孔から外れようとしても、ストッパによりロックピンの位置が貫通孔に挿通された状態に保持される。したがって、ロックピンが貫通孔から抜け落ちることはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る建設機械を示す概略側面図である。
【図2】下部走行体の概略平面図である。
【図3】上部旋回体の旋回フレームを示す概略平面図である。
【図4】ロック装置の概略図である。
【図5】図4の一部平面図である。
【図6】別のロック装置の概略図である。
【図7】図6に示すレバーガイドとロックレバーとの概略図である。
【図8】図6の一部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る建設機械について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明に係る建設機械(図では油圧ショベル)1は、車輪3により自走可能な下部走行体2を備えている。下部走行体2には、旋回輪4を介して上部旋回体6が旋回可能に取り付けられている。上部旋回体6の前側には運転室たるキャブ8が、後側にはエンジンやその他の機器類(例えば油圧ポンプ)が収容される機械室カバー12とカウンタウエイト14がそれぞれ形成されている。油圧ポンプはエンジンにより駆動され、後述する作業装置の油圧シリンダや下部走行体2の走行用モータに作動油を供給するものである。また、カウンタウエイト14は油圧ショベル1の作業時、その作業姿勢を安定させるものである。
【0014】
一方で、上部旋回体6には、さらに作業装置が取り付けられている。作業装置は、油圧ショベルの場合、ブーム10a、アーム10b及びこのアーム10bの先端のバケット10cに加え、これらを作動させる油圧シリンダ等(図示しない)で形成されている。これらの機器あるいは装置類は、後述する旋回台20(図3参照)上に載置あるいは取り付けられている。
【0015】
図2に示すように、下部走行体2は、シャーシ5と車輪3とを備えている。シャーシ5上に、上述した旋回輪4が配設されている。旋回輪4は、旋回中心O(上部旋回体6の回転軸O)を中心とする平面視略円形形状である。
図3に示すように、旋回台20は、センターフレーム7とサイドフレーム9、及びテールフレーム11とを有している。サイドフレーム9は旋回台20の両側に配設されている。センターフレーム7とテールフレーム11はサイドフレーム9に挟まれた位置にあり、テールフレーム11はセンターフレーム7の後方に配設されている。上述した機械室カバー12は両サイドフレーム9とテールフレーム11上にまたがって形成されている。また、上述したカウンタウエイト14はテールフレーム11に形成された取付部13に取り付けられる。一方のサイドフレーム9には、上述したキャブ8を取り付けるための取付部15が形成されている。また、上述した旋回輪4の旋回中心Oは、旋回台20の旋回中心Oと位置を合わせられて取り付けられる。
【0016】
センターフレーム7の下部には底板22が形成されている。センターフレーム7とサイドフレーム9の間において、底板22から立板24が立設されている。したがって、センターフレーム7とサイドフレーム9の上部空間は、この立板24で区画されている。また、センターフレーム7の前側中央部分において、底板22から2枚のリブ16が立設されている。このリブ16は、上述した作業装置、例えば不図示のブーム10a用の油圧シリンダを設けるためのものである。
【0017】
さらに、本発明に係る建設機械1には、下部走行体2に対する上部旋回体6の旋回をロックするためのロック装置30が設けられている。
先ず、図4及び図5を参照して第1実施例としてのロック装置30について説明する。
このロック装置30は、上述したリブ16の間に配設されている。このように、ロック装置30をセンターフレーム7に設けたのは、後述する操作部50に対して作業者が車外から手が届きやすい場所であり、操作性がよいからである。なお、立板24間には、補強板17が架け渡されている。リブ16間の底板22には、貫通孔32が設けられている。この貫通孔32の下側には、ホルダ40が設けられている。ホルダ40は、上部旋回体6の旋回動作による貫通孔32のシャーシ5上面の移動軌跡上の任意の位置に設けることができる。ロック装置30は、この貫通孔32とホルダ40とを有し、さらに貫通孔32を挿通可能であり、貫通孔32に挿通されている状態にホルダ40で保持される棒状のロックピン57とを有している。ロックピン57がホルダ40に保持されている状態、より詳しくはホルダ40に形成された穴42にロックピン57が挿入された状態、すなわち図4の状態が上部旋回体6の旋回がロックされている状態である。ロックピン57がホルダ40に形成された穴42から引き抜かれてホルダ40から離れると、上部旋回体6は下部走行体2に対して旋回可能となる。すなわち、アンロックの状態である。
【0018】
このロック及びアンロックは、ロック装置30に備わる操作部50で切り換えられる。操作部50は、一方の端部がロックピン57に接続された操作ロッド56を含む。操作ロッド56の他方の端部には、連続して下側に回転軸58が延びている。回転軸58は、底板22に形成された孔52を貫通している。回転軸58の下端近傍にはストッパ59が備わっている。このストッパ59により回転軸58が孔52から完全に抜けることを防止している。
【0019】
作業者が、操作ロッド56を掴み、ロックピン57を貫通孔32に挿通させてホルダ40の穴42に挿入させると上部旋回体6の旋回はロックされる。一方、作業者が操作ロッド56を掴み、これを上方に引き上げて、ロックピン57をホルダ40から離間させると、上部旋回体6は自由に旋回できる(アンロック)。さらに詳しくいえば、ロック状態において、作業者は操作ロッド56を上部旋回体6の底板22上まで引き上げ、この位置にて回転軸58を中心に操作ロッド56を回動させ(図5の矢印R方向)、ロックピン57を貫通孔32とは異なる位置に載置するとアンロック状態となる。このとき、ロックピン57をアンロック位置に保持するために底板22に穴を設けてもよい(図のA位置)。ロックする場合は、図のA位置から矢印R方向とは反対側の方向に操作ロッド56を回動させ、ロックピン57を貫通孔32に挿通させてホルダ40の穴42に挿入する。
【0020】
上記作業者の操作は、キャブ8外から行える。すなわち、下部走行体2に対する上部旋回体6の旋回をロック又はアンロックするための操作部50がロック装置30に備わり、この操作部50はキャブ8の外側に設けられている。このため、ロック操作のためにキャブ8内への出入りを必要とせず、キャブ8外から操作部50を操作して上部旋回体6のロック又はアンロックの切り換え操作を行うことができる。したがって、特にキャブ8への出入りを必要としないメンテナンス時における作業性の向上を図ることができる。なお、キャブ8に操作部50を設けてキャブ8内及びキャブ8外の両方からロック装置30を操作できるようにしてもよい。特にキャブ8内での操作は走行中に、キャブ8外での操作はメンテナンス時に行われる。
【0021】
また、上述したように、下部走行体2に形成されたホルダ40に対し、貫通孔32に挿通された状態のロックピン57を保持することで、ロックピン57を介して上部旋回体6が下部走行体2に固定される。したがって、簡単な構造で下部走行体2に対する上部旋回体6の旋回をロックすることができる。なお、ロックピン57と底板22との着色を異なるものとして、ロック又はアンロックの視認性を高めてもよい。また、便宜的にキャブ8から視認可能な位置でロックできるように貫通孔32の位置を設けてもよい。
【0022】
また、上部旋回体6の回転軸Oを中心とする同心円Q上に間隔を存して複数の貫通孔32を形成してもよい(図3参照)。このようにすれば、上部旋回体6に形成された複数の貫通孔32のいずれかにロックピン57を挿入することにより、下部走行体2に対する角度を異ならせて上部旋回体6の旋回をロックすることができる。したがって、用途に応じた適切な位置に上部旋回体6を固定することができる。なお、貫通孔32は、上部旋回体6の下側に取り付けられ、上部旋回体6の下面を保護するための板状のカバー(図示しない)に設けてもよい。これにより、カバーを利用して上部旋回体6の旋回ロックを行うことができる。したがって、上部旋回体6に貫通孔32を設けるための十分なスペースがない場合でもカバーを利用して上部旋回体6の旋回を確実にロックすることができる。
【0023】
次に、図6〜図8を参照して第2実施例のロック装置30について説明する。
この旋回ロック装置30では、ホルダ40が略中空円筒形状に形成され、このホルダ40は下部走行体2のシャーシ5から立設されている。ホルダ40には、長手方向全域に沿ってスリット62が形成されている。ホルダ40には、このスリット62と連続して、切欠き64が形成されている。ロックピン57には操作部50となる操作レバー70が突出して取り付けられている。この操作レバー70は、スリット62を摺動可能であり、さらに切欠き64に引っ掛けて固定可能である。
【0024】
アンロック状態では、操作レバー70がスリット62内に位置し、ロックピン57はホルダ40内に挿入されている。これをロック状態にするために、作業者はスリット62を摺動させながら操作レバー70を持ち上げて切欠き64に固定する。これにより、ロックピン57が上昇し、貫通孔32を挿通した状態で保持される。したがって、上部旋回体6の旋回はロックされる。
【0025】
また、ロックを確実なものとするため、底板22を貫通孔32の長手方向に沿って内壁を切欠いた溝36と、ロックピン57から側方に突出して設けられ、溝36を挿通するストッパ72とを設けてもよい。ロック状態にする際、ロックピン57の上昇とともにストッパ72は溝36を通過する。そして、ロック状態とするとき、作業者はロックピン57を回転させて操作レバー70を切欠き64に固定する。このような状態で、ストッパ72は貫通孔32の外側に位置し、且つ平面視にて溝36とは異なる位置に配されている(図8ではストッパ72は溝36に対して平面視90°の角度を有している)。
【0026】
このようにストッパ72を設けることで、ストッパ72を用いてロックピン57のさらなる抜け止め防止を図れるため、上部旋回体6のロック時における信頼性が向上する。すなわち、ロックピン57が貫通孔32に挿通された状態(ロックされた状態)で、ストッパ72は貫通孔32の外側且つ平面視にて溝36とは異なる位置に配されているため、ロックピン57が貫通孔32から外れようとしても、ストッパ72によりロックピン57の位置が貫通孔32に挿通された状態に保持される。したがって、ロックピン57が貫通孔32から抜け落ちることはない。なお、ストッパ72でロックピン57の回転を視認できるため、ストッパ72はロック又はアンロックの目印として利用できる。その他の構造や効果等は第1実施例と同様である。
【0027】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。
例えば、ロック装置30は、油圧ショベルに限らず、油圧クレーン等の旋回可能な上部旋回体を備えた建設機械であれば適用可能である。
また、上述したロック装置30と併せて、従来と同様なキャブ内から操作可能な旋回ロック装置をさらに設けてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 建設機械(油圧ショベル)
2 下部走行体
3 車輪
4 旋回輪
5 シャーシ
6 上部旋回体
7 センターフレーム
8 キャブ
9 サイドフレーム
10a ブーム
10b アーム
10c バケット
11 テールフレーム
12 機械室カバー
13 取付部
14 カウンタウエイト
15 取付部
16 リブ
17 補強板
20 旋回台
22 底板
24 立板
30 ロック装置
32 貫通孔
36 溝
40 ホルダ
42 穴
50 操作部
52 孔
56 操作ロッド
57 ロックピン
58 回転軸
59 ストッパ
62 スリット
64 切り欠き
70 操作レバー
72 ストッパ
O 旋回中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、
該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
該上部旋回体に形成されたキャブと、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回をロックするためのロック装置とを備えた建設機械において、
前記ロック装置は前記旋回のロック及びアンロックを切り換えるための操作部を含み、該操作部は前記キャブ外に設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記ロック装置は、
前記上部旋回体に設けられた貫通孔と、
該貫通孔を挿通するロックピンと、
前記下部走行体に形成され、該ロックピンが前記貫通孔に挿通されている状態に保持するホルダとを有することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記上部旋回体の回転軸を中心とする同心円上に間隔を存して複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ロック装置は、
前記貫通孔の長手方向に沿って内壁を切欠いた溝と、
前記ロックピンから側方に突出して設けられ、前記溝を挿通するストッパとをさらに有し、
前記ロックピンが前記貫通孔に挿通されている状態で、前記ストッパは前記貫通孔の外側且つ平面視にて前記溝とは異なる位置に配されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−219552(P2012−219552A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88162(P2011−88162)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)