説明

建造物における壁板構造

【課題】住宅、店舗などに用いて好適な建造物における壁板構造、特に、透明、不透明切換可能な壁板構造を提供する。
【解決手段】建造物に用いる壁板を、ガラス若しくはプラスチックの板素材全体に光散乱性粒子を有した壁板材1により構成し、該壁板材1の端面の少なくとも一部に、点灯、非点灯切換操作可能とした発光体を構成する照明具2を配設し、照明具2の非点灯により、壁板材1を透視可能な透明状態とし、該照明具2の点灯により、壁板材1を光散乱状態として透視困難若しくは実質的に透視不可能な不透明状態に切り換え自在とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、店舗などに用いて好適な建造物における壁板構造、特に、透明、不透明切換可能な壁板構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先に本出願人は、建物の耐力壁として透明な壁板材を用いることを提案した(下記特許文献1参照)。この透明壁板材は、建物の敷地面積が狭小であって、日照を十分に確保できない場合であっても、耐力壁としての強度を十分に確保しつつ、十分な採光面積を確保する上で有効である。
【0003】
ところがこのような透明壁板材を用いた場合には、その逆に外部から建物内部を容易に覗くことができるため、プライバシー確保の面からは好ましくない。
【0004】
透明壁板材を調光可能とし、必要時には採光を確保するとともに、不要時には遮光して建物内のプライバシーを確保するための簡単な手段として、透明壁板材に面してブライドなどの遮光カーテンを配置する、あるいは壁板材が二重である場合にはその空間内部にブラインドなどの遮光カーテンを配置し、スラットの角度調節により、調光を行えるようにしたものものもあるが、次に述べる問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2008−214154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
まず第1に、この種遮光カーテンを建物内に配置した場合には、その厚み分だけ室内面積が狭小化する。また、二重壁内部に遮光カーテンを配置する場合には、壁面間距離を遮光カーテンの厚み分大きくしなければならないため、やはり室内面積の狭小化につながる。加えて調光時には、室内の明るさとプライバシー確保との取り合いが問題となる。すなわち、室内の採光を十分に確保しようとする場合には、その分だけ外部から室内が見えやすくなり、室内のプライバシー確保を優先すると、採光が確保できず、内部が暗くなり、特に室内側からも外の景色が見えにくいものとなる。
【0007】
そこで本発明は、以上の課題を解決するものであり、その目的とするところは、壁板材の全面で散乱発光させ、採光を確保した状態で、壁板材で仕切られた空間同士の視認性を減少ないしは消失することにより、プライバシーを確保でき、意匠的にも新奇な建物における壁板材の遮光構造を提供するものである。また、本発明の他の目的は、この種遮光機能を備えた建造物の耐力壁としての壁板材の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の建造物における壁板構造は、建造物に用いる壁板を、透明、着色透明、又は半透明のガラス若しくはプラスチックの板素材全体に光散乱性粒子を有した壁板材1により構成し、該壁板材1の端面の少なくとも一部に、点灯、非点灯切換操作可能とした発光体を構成する照明具2を配設し、該照明具2の非点灯により、前記壁板材1を透明、着色透明、又は半透明による透視可能な透明状態とし、該照明具2の点灯により、前記壁板材1を光散乱状態として透視困難若しくは実質的に透視不可能な不透明状態に切り換え自在としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載されるように、前記壁板材1は、建造物の内外或いは建造物内を仕切る内外壁板、窓板、或いは、床若しくは天井板材として、用いることができる。壁板材2を、テラスや温室の外壁を構成する透明外壁として有効に用いることができる。
【0010】
請求項3に記載されるように、前記壁板材1は、ガラス若しくはプラスチックの板素材内部全体に光拡散性粒子又は発光性粒子等よりなる光散乱性粒子が混在された構造であることを特徴とする。
光散乱性粒子として、微細で光屈折率又は光反射率の大きいガラス若しくはプラスチックの光散乱性粒子を用いることができる。また、これら光散乱性粒子と蛍光体粉末のような発光性粒子との混合により、上記光散乱性粒子を構成することも可能である。
【0011】
請求項4に記載されるように、前記壁板材1は、ガラス若しくはプラスチックの板素材表面に上記のような光拡散性粒子又は発光性粒子等よりなる光散乱性粒子が混在され実質的に透明な膜が設けられた構造とすることができる。前記実質的に透明な膜は、壁板材1の表裏両面又は片面に形成させることができる。
【0012】
請求項5に記載されるように、前記壁板材1の端部を支持する略コ形又は略U形枠体4内に形成された閉空間内に、外部から点灯、非点灯のON,OFF切換操作可能とした光源となる前記照明具2を内蔵させたことを特徴とする。
【0013】
上記建造物における壁板構造では、照明具2の非点灯状態では、壁板材1は透明となり、内外方向に透視可能となる。また、照明具2の点灯状態では、壁板材1は実質的に不透明となり、内外方向、特に外部からの透視ができなくなる。また、このような不透明状態において、壁板材1は、光散乱状態で輝いて見え、電飾効果が発揮される。
【0014】
請求項6に記載される本発明の建造物における壁板構造は、上記壁板材の取付構造であって、図4の実施の形態に示すように、前記枠体4は、柱3の内面にその高さ方向に沿って固定される略L形断面の支持具6と、該支持具6の前記壁板材1取付け面にその高さ方向に適宜間隔をおいて形成された複数の取付孔6aに予め挿入固定された取付手段8と、前記壁板材1の端部を挟んだ状態で前記取付手段8が挿通される1対のスペーサプレート9と、前記支持具6とは反対面において前記取付手段8が挿通されるカバープレート10と、前記取付手段8のカバープレート10からの突出端に固定される固定手段11とを備え、前記支持具6の柱3に対する取付後に、順次スペーサプレート9、壁板材1、およびこの壁板材1の端縁に対面して前記照明具2を配置し、必要な配線を室内側に引きだした上で、前記カバープレート10を取付手段8に挿通し、固定手段11により固定させることにより、枠体4の組立と壁板材1の固定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上により、本発明の壁板構造にあっては、照明具2の非発光状態では、壁板材1が実質的に透明となることから、壁板材1で仕切られた空間同士の採光や視認性を確保でき、照明具2の点灯により不透明化でき、照明具2のON,OFF操作による簡単な機構及び操作で安全性が確保できる。
【0016】
特に夜間時などにおいて、室内が明るく、外が暗い場合などにおいて外側からは視認性は減少ないしは消失するため、プライバシー確保が容易にできる。またこの構造は夜間における壁板材1の面発光により、電飾機能が発揮され、ほの暖かい雰囲気を生ずるため、一般住宅のほか、店舗などに用いて好適である。
【0017】
また、請求項5の構造とすることにより、発光体としての照明具からの光が外に漏れることなく、効率的に面発光させることができる。
【0018】
さらに、請求項6による取付構造によれば、柱を挟む室内側あるいは、室外側からの一方から順次枠体を組み立てつつ、壁板材の固定ができ、さらには枠体内に形成される閉空間を利用してここに照明具を配置することができるため、作業が簡単で、迅速に行うことができるので、耐震改修工事や、プライバシーを確保した上の採光確保のための改修工事などに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による壁板材の構造を示す断面説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態による壁板材の構造を示す断面説明図である。
【図3】(a),(b)は、同壁板構造における消灯、点灯時の状態における室内の様子を外部側から見た場合を示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、第2の実施の形態における組立手順を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施の形態)
以下、本発明の実施の形態につき、添付図面を用いて説明する。図1は第1の実施の形態を示すものであり、建物内外あるいは建物内の左右空間を仕切る外壁材、内壁材、間仕切り壁材、あるいは、建造物の天板材を構成する天井材、一階と二階とを上下に仕切る天井または床材の一部を、透明ないしは半透明の壁板材1で構成している。
【0021】
この壁板材1は透明ないし半透明のアクリル樹脂、ポリカーボネート等の透明樹脂板、或いは強化板ガラスなどから構成されているとともに、予めその内部には光散乱性物質を混合分散するか、壁板材1の片面あるいは両面に光散乱性物質をコーティングしたものである。
【0022】
光散乱性物質は、それ自体は透明であるとともに、光照射により乱反射する物質であり、壁板材1の内部に分散させた場合には、壁板材1を構成する樹脂、ガラスの融点以上で変化しない特性を有する物質の中から選択され、コーティングする場合には、それらとの付着性や親和性、および耐久性などを考慮した物質や組成が選択される。
【0023】
壁板材1の両側端面には、これに沿って点灯、非点灯のON,OFF操作自在の照明具2が配置されており、照明具2の非点灯状態では、壁板材1が実質的に透明となり、壁板材1を通じて相互の視認性は確保できるが、照明具2を点灯することにより、壁板材1内に入射された光は散乱し、その表裏面全体から散乱光として出光するので、あたかも壁板材1の面全体で発光するかのような状態となり、かつ壁板材1を通じた相互の視認性は、極端に減少する、か消失し、これによって壁板材1を挟む相互間のプライバシーを確保し、電飾効果も得られる。
【0024】
前記照明具2としては、LED、蛍光灯、各種ランプなどのうちから、可級的に省電力のものを用いることが好ましい。照明具2として直線型蛍光灯を選択した場合には、壁板材1の縁部端面に沿って近接して平行配置することにより、効率のよい面発光を行うことができる。
【0025】
また、照明具2としてLEDを選択した場合には、RGB各色あるいは白色LEDの中から選択できるほか、各色を混合して用いることができるため、特異な意匠的色彩により面発光をさせる場合に好適である。
【0026】
さらには、照明具2がLEDや、各種ランプのような点光源の場合には、壁板材1の端縁の長手方向に沿って集光用のシリンドリカルレンズやリフレクタを介在させることにより、少数の光源でも効率のよい面発光が可能となる。
【0027】
(第2の実施の形態)
図2、3は、第2の実施の形態を示すものである。本実施形態では1対の柱3で仕切られる空間の面内に枠体4を介して建物外壁部における耐力壁として用いられる壁板材1の両側縁部を固定するとともに、枠体4の内部に形成された閉空間内に照明具2を内蔵させ、壁板材1の両縁部端面にその発光面を対向させている。
【0028】
従って、照明具2の消灯時には、図3(a)に示すように、壁板材1は、実質的に透明状態となり、壁板材1を通じて外部から室内の様子が見えてしまうが、照明具2を点灯すると、壁板材1そのものが面発光により不透明化し、図3(b)に示すように、外部からの視認性は極端に低下するか、あるいは全く見えなくなってしまうため、プライバシーを確保できることになる。加えて、夜間などの場合には壁板材1の全体が面発光することにより、直接には建物内部は見えないものの、明かりがついているということで、家屋内部にいる人などの存在が外部から間接的に確認できるため、防犯上も好ましく、しかも暖かな雰囲気を周囲に与え、電飾効果がある。
【0029】
図4は枠体4を用いた壁板材1の組立手順を示している。まず図4(a)に示すように、枠体4は、柱3の内側面における高さ方向に沿って複数箇所木ねじによる固定具5により固定される平面視L形断面の支持具6と、支持具6の壁板材1の取付側面の高さ方向に沿って所要間隔を開けて形成されたねじ孔よりなる取付孔6aにワッシャ7を介してねじ込み固定される取付用ねじよりなる取付手段8と、前記壁板材1を挟んで配置されるアルミ材からなる前後1対のスペーサプレート9と、同じくアルミ材からなるカバープレート10とを備えている。これらスペーサプレート9、カバープレート10および壁板材3の前記取付孔6aと対向する位置には、それぞれ挿通孔1a,9a,10aが開口されている。前記取付手段8のカバープレート10からの突出先端にはナットよりなる固定手段11が螺合されるようになっている。支持具6は、アルミ押し出し成形体からなる平面視L形断面の金具により構成される。
【0030】
従って、図4(b)に示すように、予め取付手段8を固定した支持具6を柱3の内側に固定具5により固定し、照明具2を支持具6の内側に沿って配置した後、取付手段8にスペーサプレート9,壁板材1、スペーサプレート9、カバープレート10の順にそれぞれの挿通孔1a,9a,10aを挿通し、最後にカバープレート10からの突出端に固定手段11をねじ込んで締め上げれば、図4(c)および図2、3に示すように、壁板材1の固定を完了する。なお、固定手段11を、袋ナットとしたのは、単なる見栄えの向上のためだけであり、他の装飾性のあるナット具や締結具を用いることも可能である。また、固定手段11を、溶接により構成させることもできる。
【0031】
照明具2のリード線などは、その組込み過程において、枠体4内外を通じて室内側に引き込めばよく、壁板材1の近傍の一般部壁面に壁用スイッチなどを設けることにより、照明具2の点灯、消灯を行うことができる。
【0032】
本実施の形態では、照明具2からの光が外部に漏れ出ることがないため、第1の実施の形態に比べてさらに効率のよい発光を行うことができる。また、柱3を挟む室内側あるいは、室外側からの一方から順次枠体4を組み立てつつ、壁板材1の固定ができ、さらには枠体4内に形成される閉空間を利用してここに照明具を配置することができるため、作業が簡単で、迅速に行うことができる。
【0033】
なお、本発明の壁板材1を一階と二階とを仕切る明かり取り用の天井または床材の一部として使用した場合には、例えば、壁板材1に対する踏み圧によりスイッチが入るようにした自動点灯機構なども採用できる。
【0034】
さらには各実施の形態では、壁板材1の両側縁端面に沿って照明具2を配置したが、壁板材1の面積が小さいか、あるいは照明具2の光量が充分大きい場合には一端縁に沿って配置しても均一な面輝度で散乱発光を行わせることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 壁板材
1a 挿通孔
2 照明具
3 柱
4 枠体
5 固定具
6 支持具
6a 取付孔
7 ワッシャ
8 取付手段
9 スペーサプレート
9a,10a 挿通孔
10 カバープレート
11 固定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に用いる壁板を、透明、着色透明、又は半透明のガラス若しくはプラスチックの板素材全体に光散乱性粒子を有した壁板材により構成し、該壁板材の端面の少なくとも一部に、点灯、非点灯切換操作可能とした発光体を構成する照明具を配設し、該照明具の非点灯により、前記壁板材を透明、着色透明、又は半透明による透視可能な透明状態とし、該照明具の点灯により、前記壁板材を光散乱状態として透視困難若しくは実質的に透視不可能な不透明状態に切り換え自在としたことを特徴とする建造物における壁板構造。
【請求項2】
前記壁板材は、建造物の内外或いは建造物内を仕切る内外壁板、窓板、或いは、床若しくは天井板材であることを特徴とする請求項1に記載の建造物における壁板構造。
【請求項3】
前記壁板材は、ガラス若しくはプラスチックの板素材内部全体に光拡散性粒子又は発光性粒子等よりなる光散乱性粒子が混在された構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の建造物における壁板構造。
【請求項4】
前記壁板材は、ガラス若しくはプラスチックの板素材表面に光拡散性粒子又は発光性粒子等よりなる光散乱性粒子が混在され実質的に透明な膜が設けられた構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の建造物における壁板構造。
【請求項5】
前記壁板材の端部を支持する枠体内に形成された閉空間内に、外部から点灯、非点灯のON,OFF切換操作可能とした前記照明具を内蔵させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の建造物における壁板構造。
【請求項6】
前記枠体は、柱の内面にその高さ方向に沿って固定される略L形断面の支持具と、該支持具の前記壁板材取付け面にその高さ方向に適宜間隔をおいて形成された複数の取付孔に予め挿入固定された取付手段と、前記壁板材の端部を挟んだ状態で前記取付手段が挿通されるスペーサプレートと、前記支持具とは反対面において前記取付手段が挿通されるカバープレートと、前記取付手段のカバープレートからの突出端に固定される固定手段とを備えたことを特徴とする請求項5に記載の建造物における壁板構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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