説明

弁制御装置、ガスタービン、及び弁制御方法

【課題】ガスタービンの負荷が低減した場合に、タービンの回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートをより安全に低減する、ことを目的とする。
【解決手段】弁制御装置44は、GVCSOを出力するGVCSO演算部50と、ガスタービンの負荷が低減してタービンの回転数が上昇した状態で、弁開度を第1開度まで小さくし、上昇したタービン回転数が下降に転じて基準回転数となった場合に、第2開度に達するまで、時間変化を伴って弁開度を大きくするMINCSOを出力するMINCSO演算部54と、を備える。さらに、弁制御装置44は、GVCSO演算部50から出力されたGVCSOとMINCSO演算部54から出力されたMINCSOのうち、より大きな開度を示している指令値を選択し、燃料制御弁42へ出力する選択部56を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁制御装置、ガスタービン、及び弁制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの運転が行われている間にガスタービンの負荷が低減すると、急激にタービンの回転数が上昇する場合がある。そこで、一般的なガスタービンの制御システムでは、ガスタービンの回転数があらかじめ設定された上限値を超過した場合にガスタービンを非常停止させるインターロックが備えられている。このため、ガスタービンの負荷が低減した場合にタービンの回転数の上昇を許容値内に抑えることは、ガスタービンの運用効率を向上させるために重要である。
【0003】
特許文献1には、発電用タービンの回転数の制御システムに関する技術が記載されており、第一の制御回路には、回転数の目標値と現在値との差に関係する偏差信号が供給され、負荷低減の際に偏差信号に関連してタービンの回転数制御に用いられる制御要素に閉成信号を供給し、負荷低減が発生した際のタービンの非常停止を回避させる技術が記載されている。すなわち、特許文献1に記載の技術では、ガスタービンの負荷が低減した直後に燃料制御弁等の制御要素に予め設定した最小値を出力することでタービンの回転数の上昇を抑制し、その後タービンの回転数が低下し目標値を下回った場合に、フィードバック制御系により目標値への追従制御を行う。特許文献1に記載の技術は、負荷低減直後のタービンの回転数のオーバーシュートを低減するだけでなく、アンダーシュートに関しても対処可能である点で有効な技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4073956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ガスタービンの回転数のアンダーシュート防止用のフィードバック制御系が機能するのは、ガスタービンの回転数が目標値を下回った後である。また、フィーバック制御系自体の制御動作遅れも考えると、アンダーシュート量の低減には限度があり、整定時間も長くなる。さらに、フィードバック制御系では、試運転時に制御系設定値(比例ゲイン・積分時間)を決めようとしても、ガスタービンを不安定にさせる危険のために十分なパラメータスタディを行うことが出来ず困難を伴う。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ガスタービンの負荷が低減した場合に、ガスタービンの回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートをより安全に低減できる、弁制御装置、ガスタービン、及び弁制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の弁制御装置、ガスタービン、及び弁制御方法は以下の手段を採用する。
【0008】
本発明の第一態様に係る弁制御装置は、燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器、前記燃焼器によって生成された燃焼ガスにより駆動するタービン、及び前記燃焼器へ供給する燃料の流量を制御する燃料制御弁を備えたガスタービンに設けられ、前記燃料制御弁の開度を制御する弁制御装置であって、前記ガスタービンの負荷が低減して前記タービンの回転数が上昇した場合に、前記燃料制御弁の開度を小さくし、上昇した前記タービンの回転数が下降に転じて定格回転数に達する前の所定回転数となった場合に、時間変化を伴って前記燃料制御弁の開度を大きくする。
【0009】
本構成によれば、弁制御装置は、燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器からの燃焼ガスにより駆動するタービン、及び燃焼器へ供給する燃料の流量を制御する燃料制御弁を備えたガスタービンに設けられ、燃料制御弁の開度を制御する。
【0010】
ガスタービンの運転中に負荷が下降すると、急激にタービンの回転数が上昇する。このタービンの回転数の上昇を低減させるためには、燃焼器へ供給する燃料の流量を減少させる必要がある。
そこで、弁制御装置は、ガスタービンの負荷が低減してタービンの回転数が上昇した場合に、燃料制御弁の開度を小さくする。これにより、タービンへ供給される燃焼ガスの供給が抑制されるので、タービンの回転数のオーバーシュートが低減される。
【0011】
そして、弁制御装置は、上昇したタービンの回転数が下降に転じて定格回転数に達する前の所定回転数となった場合に、時間変化を伴って燃料制御弁の開度を大きくする。タービンの回転数が上記所定回転数となった場合に、燃料制御弁の開度を大きくするということは、タービンの回転数が定格回転数より高い状態で燃料の供給量を上昇させることである。すなわち、タービンの回転数が定格回転数に達する前に、燃料が燃焼器へ先行的に供給されることとなる。これにより、タービンに対する燃焼ガスの供給量が少なすぎることが抑制されるため、タービンの回転数のアンダーシュート量が低減される。
【0012】
また、タービンの回転数が所定回転数となった場合に燃料制御弁の開度を大きくすることは、フィードバックを伴う制御ではないため、タービンを不安定にするような試験運転を必要としないので、より安全なタービンの制御が実現される。
【0013】
以上のことから、本構成は、ガスタービンの負荷が低減した場合に、タービンの回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートをより安全に低減できる。
【0014】
上記第一態様では、前記タービンの回転数を目標値と一致させるための燃料の流量に応じて、前記燃料制御弁の開度を変化させる第1開度指令値を出力する第1開度指令値出力手段と、前記ガスタービンの負荷が低減して前記タービンの回転数が上昇した状態で、前記燃料制御弁の開度を第1開度まで小さくし、上昇した前記タービンの回転数が下降に転じて前記所定回転数となった場合に、前記ガスタービンの無負荷運転において前記第1開度指令値で示される開度よりも小さな第2開度に達するまで、時間変化を伴って前記燃料制御弁の開度を大きくする第2開度指令値を出力する第2開度指令値出力手段と、前記第1開度指令値出力手段から出力された前記第1開度指令値と前記第2開度指令値出力手段から出力された前記第2開度指令値のうち、より大きな開度を示している指令値を選択し、前記燃料制御弁へ出力する選択手段と、を備えることが好ましい。
【0015】
本構成によれば、第1開度指令値出力手段によって、タービンの回転数を目標値と一致させるための燃料の流量に応じて、燃料制御弁の開度を変化させる第1開度指令値が出力される。第1開度指令値が作用することにより、タービンの回転数が目標値となるように制御されるので、ガスタービンの負荷が低減してもタービンの回転数のオーバーシュートが低減される。ところが、急激なタービンの回転数の上昇が生じると、第1開度指令値は、燃料の流量を急激に低減させることとなるため、タービンの回転数にアンダーシュートが発生する。
【0016】
そこで、第2開度指令値出力手段によって、第1開度指令値出力手段から出力される第1開度指令値とは異なる第2開度指令値が出力される。そして、選択手段によって、第1開度指令値出力手段から出力された第1開度指令値と第2開度指令値出力手段から出力された第2開度指令値とのうち、より大きな開度を示している指令値が選択され、燃料制御弁へ出力される。
【0017】
第2開度指令値出力手段は、ガスタービンの負荷が低減してタービンの回転数が上昇した状態で、燃料制御弁の開度を第1開度まで小さくする第2開度指令値を出力する。第1開度は、例えば燃料制御弁の最小開度である。この第2開度指令値は、第1開度指令値と同様にタービンの回転数のオーバーシュートを低減させることとなる。
【0018】
そして、第2開度指令値出力手段は、上昇したタービンの回転数が下降に転じて所定回転数となった場合に、ガスタービンの無負荷運転において第1開度指令値で示される開度よりも小さな第2開度に達するまで、時間変化を伴って燃料制御弁の開度を大きくする第2開度指令値を出力する。第1開度指令値は、タービンの回転数を目標値と一致させるための指令値であるため、時間遅れが生じ、第1開度指令値による燃料制御弁の制御では、アンダーシュートの低減量には限度がある。しかし、第2開度指令値は、タービンの回転数が定格回転数に達する前に、燃料を先行的に燃焼器へ供給するように燃料制御弁を制御することとなる。すなわち、第2開度指令値は、第1開度指令値よりも先行的に燃料制御弁の開度を大きくするので、第1開度指令値により示される開度よりも大きくなるので、選択手段によって、第2開度指令値が選択されて燃料制御弁へ出力される。これにより、燃焼器への燃料の供給量が少なすぎることが抑制されるため、タービンの回転数のアンダーシュート量が低減される。
【0019】
さらに、第2開度は、ガスタービンの負荷運転において第1開度指令値で示される開度よりも小さな開度である。このことは、第2開度指令値に基づく燃料制御弁の開度では、タービンの回転数が定格回転数に達する燃料を燃焼器へ供給できないことを意味する。一方、第1開度指令値は、タービンの回転数と目標値とが一致するように燃料制御弁の開度を大きくするので、目標値を定格回転数とすることで、タービンの回転数を定格回転数にできる。すなわち、第2開度指令値が、第1開度指令値よりも先行的に燃料制御弁の開度を大きくしても、何れ第1開度指令値により示される燃料制御弁の開度の方が大きくなり、選択手段によって第1開度指令値が燃料制御弁へ出力されることとなる。これにより、第1開度指令値によって、タービンの回転数が定格回転数で整定されることとなる。
【0020】
以上のことから、本構成は、ガスタービンの負荷が低減した場合に、タービンの回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートをより安全に低減でき、かつ変動したタービンの回転数を短時間で整定できる。
【0021】
上記第一態様では、前記タービンの回転数を逐次記憶する記憶手段を備え、前記第2開度指令値出力手段が、前記記憶手段に記憶された前記タービンの回転数に基づいて、前記タービンの回転数の増減を判断することが好ましい。
【0022】
本構成によれば、記憶手段に記憶されたタービンの回転数に基づいて、タービンの回転数の増減が判断されるので、簡易な構成でタービンの回転数の変化を検知できる。
【0023】
上記第一態様では、前記第2開度指令値出力手段が、上昇した前記タービンの回転数が下降に転じて前記所定回転数となった場合に、前記燃料制御弁の開度の上昇率が前記タービンの回転数の変動率に応じて変化する前記第2開度指令値を出力することが好ましい。
【0024】
本構成によれば、タービンの回転数が下降した後に燃焼器へ供給される燃料がタービンの回転数の変動率に応じて変化するので、アンダーシュート量の低減及び整定時間の短縮ができる。
【0025】
上記第一態様では、前記第2開度指令値出力手段が、前記第2開度を示す第2開度指令値を、前記燃焼器における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータに基づいて決定することが好ましい。
【0026】
本構成によれば、第2開度が燃焼器における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータに基づいて決定されるため、燃料制御弁に対する開度指令値が第2開度指令値から第1開度指令値に選択されるタイミングが該パラメータによって変化することとなる。なお、燃焼器における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータは、大気温度や燃料温度等である。このように本構成は、開度指令値が第2開度指令値から第1開度指令値に選択されるタイミングが、燃焼器における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータに応じてより適正なタイミングに変化することとなるので、アンダーシュート量の低減及び整定時間の短縮ができる。
【0027】
上記第一態様では、前記第2開度指令値出力手段が、少なくとも前記燃焼器が失火しない燃料を前記燃焼器へ供給する前記第1開度を示す第2開度指令値を、前記タービンの出力の変化に基づいて決定することが好ましい。
【0028】
本構成によれば、燃焼器の失火を防ぐと共に、タービンの回転数のオーバーシュート量及びアンダーシュート量を精度良く制御できる。
【0029】
上記第一態様では、前記第2開度指令値出力手段が、前記第1開度を示す第2開度指令値を、負荷が低減する前の前記タービンの出力、負荷が低減する前後のタービンの出力の差分、及び負荷が低減した後の前記タービンの出力に基づいて、決定することが好ましい。
【0030】
本構成によれば、タービンの回転数のオーバーシュート量及びアンダーシュート量をより精度良く制御できる。
【0031】
本発明の第二態様に係るガスタービンは、燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器によって生成された燃焼ガスにより駆動するタービンと、前記燃焼器へ供給する燃料の流量を制御する燃料制御弁と、上記記載の弁制御装置と、を備える。
【0032】
本発明の第三態様に係る弁制御方法は、燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器、前記燃焼器によって生成された燃焼ガスにより駆動するタービン、及び前記燃焼器へ供給する燃料の流量を制御する燃料制御弁を備えたガスタービンに設けられ、前記燃料制御弁の開度を制御する弁制御方法であって、前記ガスタービンの負荷が低減して前記タービンの回転数が上昇した状態で、前記燃料制御弁の開度を小さくする第1工程と、上昇した前記タービンの回転数が下降に転じて定格回転数に達する前の所定回転数となった場合に、時間変化を伴って前記燃料制御弁の開度を大きくする第2工程と、を含む。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ガスタービンの負荷が低減した場合に、タービンの回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートをより安全に低減できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガスタービンプラントの構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るガスタービンの負荷が低減し、急激にタービンの回転数が上昇した場合における、弁制御装置によって制御される燃料制御弁の開度の変化を示すグラフである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る弁制御装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るガスタービンの負荷が低減し、急激にタービンの回転数が上昇した場合における、MINCSO及びGVCSOの変化を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る弁制御装置が備えるMINCSO演算部の機能を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るガスタービンの負荷が低減し、急激にタービンの回転数が上昇した場合における、MINCSO及びGVCSOの変化を示すグラフである。
【図7】本発明の第3実施形態に係る弁制御装置が備えるMINCSO演算部の機能を示す機能ブロック図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るMINCSO演算部におけるMINCSO最小値を決定する機能を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明に係る弁制御装置、ガスタービン、及び弁制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0037】
図1は、第1実施形態に係るガスタービンプラント10の全体構成図である。ガスタービンプラント10は、ガスタービン12及び発電機14を備える。
【0038】
ガスタービン12は、圧縮機20、燃焼器22、及びタービン24を備える。
圧縮機20は、回転軸26により駆動されることで、空気取込口から取り入れた空気を圧縮して圧縮空気を生成する。燃焼器22は、圧縮機20から車室28へ導入された圧縮空気に燃料を噴射して高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。タービン24は、燃焼器22で発生した燃焼ガスによって回転駆動する。
【0039】
車室28と燃焼器22との間にはバイパス管30が設けられており、バイパス管30は、ガスタービン12の負荷変動により燃焼器22内の空気が不足する状態になった場合に、燃焼器バイパス弁32が開かれると車室28内の空気を燃焼器22内に導入する流路となる。また、圧縮機20とタービン24との間には、圧縮機20からタービン24へ冷却用の空気を導入させるための抽気管34が設けられている。
【0040】
なお、タービン24、圧縮機20、及び発電機14は、回転軸26によって連結され、タービン24に生じる回転駆動力は、回転軸26によって圧縮機20及び発電機14に伝達される。そして、発電機14は、タービン24の回転駆動力によって発電し、発電した電力を商用電力系統へ供給する。
【0041】
また、燃焼器22には、ノズル36が設けられている。ノズル36には、燃料制御弁42で流量が調整された燃料が供給される。そして、燃焼器22は、ノズル36から供給された燃料を、圧縮空気を用いて燃焼させる。
【0042】
燃料制御弁42の開度は、弁制御装置44によって制御される。
弁制御装置44は、ガスタービン12の負荷が低減してタービン24の回転数(以下、「タービン回転数」という。)が上昇した場合に、燃料制御弁42の開度(以下、「弁開度」という。)を小さくする。そして、弁制御装置44は、上昇したタービン回転数が下降に転じて定格回転数に達する間の所定回転数(以下、「基準回転数」という。)となった場合に、時間変化を伴って弁開度を大きくする。
【0043】
図2は、ガスタービン12の負荷が低減し、急激にタービン24の回転数が上昇した場合における、弁制御装置44によって制御される弁開度の変化を示すグラフである。
【0044】
図2に示されるように、ガスタービン12の負荷が下降したタイミングがTである。タービン24の運転中に負荷が下降すると、急激にタービン回転数が上昇する。このタービン回転数の上昇を低減させるためには、燃焼器22へ供給する燃料の流量を減少させる必要がある。そこで、弁制御装置44は、ガスタービン12の負荷が低減してタービン回転数が上昇した場合に、弁開度を一例として最小開度まで小さくする。これにより、タービン24へ供給される燃焼ガスの供給が抑制されるので、タービン回転数のオーバーシュートが低減される。
【0045】
そして、弁制御装置44は、上昇したタービン回転数が最大回転数ωMAXに達し、下降に転じて定格回転数ωRに達する前の基準回転数ωSとなったタイミングTで、時間変化を伴って弁開度を大きくする。タービン回転数が基準回転数ωSとなった場合に、弁開度を大きくするということは、タービン回転数が定格回転数ωRより高い状態で燃料の供給量を上昇させることである。すなわち、タービン回転数が定格回転数ωRに達する前に、燃料が燃焼器22へ先行的に供給されることとなる。これにより、タービン24に対する燃焼ガスの供給量が少なすぎることが抑制されるため、タービン回転数のアンダーシュート量が低減される。
なお、最大回転数ωMAXは、タービン24を停止させる必要が生じるタービン回転数よりも低いタービン回転数である。
【0046】
また、タービン回転数が基準回転数ωSとなった場合に弁開度を大きくすることは、フィードバックを伴う制御ではないため、タービン24を不安定にするような試験運転を必要としないので、より安全なタービン24の制御が実現される。
【0047】
図3は、第1実施形態に係る弁制御装置44の機能を示す機能ブロック図である。
弁制御装置44は、GVCSO演算部50、記憶部52、MINCSO演算部54、及び選択部56を備える。
【0048】
GVCSO演算部50は、タービン回転数を目標値(以下、「回転数目標値」という。)と一致させるための燃料の流量に応じて、弁開度を変化させる第1開度指令値(以下、「GVCSO」という。)を出力する。
【0049】
詳細には、GVCSO演算部50は、減算部60及び乗算部62を備える。
減算部60は、タービン回転数の回転数目標値及びタービン回転数が入力され、回転数目標値からタービン回転数を減算する。乗算部62は、減算部60から出力された減算値に比例ゲインを乗算し、乗算結果をGVCSOとして出力する。このように、GVCSO演算部50は、フィードバックによりGVCSOを演算することとなる。なお、GVCSOが上昇すると弁開度も大きくなり、GVCSOが下降すると弁開度も小さくなる。
【0050】
記憶部52は、タービン回転数を逐次記憶する。
【0051】
MINCSO演算部54は、記憶部52に記憶されたタービン回転数に基づいて、タービン回転数の増減を判断する。具体的には、MINCSO演算部54は、タービン回転数の現在値が入力されると共に、記憶部52から出力されたタービン回転数、すなわち所定時間前のタービン回転数が入力されることとなるので、これらのタービン回転数を比較(微分値又は差分値を算出)することによって、タービン回転数の増減を判断する。
【0052】
そして、MINCSO演算部54は、ガスタービン12の負荷が低減してタービン回転数が上昇した状態で、弁開度を第1開度まで小さくする第2開度指令値(以下、「MINCSO」という。)を出力する。なお、MINCSOが上昇すると弁開度も大きくなり、MINCSOが下降すると弁開度も小さくなる。
さらに、MINCSO演算部54は、上昇したタービン回転数が下降に転じて基準回転数ωSとなった場合に、第2開度に達するまで、時間変化を伴って燃料制御弁の開度を大きくするMINCSOを出力する。すなわち、第1開度はMINCSOの最小値であり、第2開度はMINCSOの最大値である。また、基準回転数ωSは予め設定されている。
【0053】
選択部56は、GVCSO演算部50から出力されたGVCSOとMINCSO演算部54から出力されたMINCSOのうち、より大きな開度を示している指令値を選択し、燃料制御弁42へ出力する。
【0054】
なお、本第1実施形態では、MINCSO及びGVCSOが上昇すると弁開度も大きくなる。
【0055】
次に、図4を参照して、ガスタービン12の負荷が低減してタービン回転数が上昇した場合に出力されるGVCSO及びMINCSOについて説明する。
【0056】
ガスタービン12の負荷が低減してタービン回転数が上昇すると、GVCSO演算部50によって、弁開度を小さくするためのGVCSOが出力される。GVCSOの作用により、タービン回転数が回転数目標値となるように制御されるので、ガスタービン12の負荷が低減してもタービン回転数のオーバーシュートが低減される。ところが、急激なタービン回転数の上昇が生じると、GVCSOは、燃料の流量を急激に低減させることとなるため、タービン回転数にアンダーシュートが発生する。
【0057】
一方、MINCSO演算部54は、ガスタービン12の負荷が低減してタービン回転数が上昇した状態で、弁開度を第1開度Dまで小さくするMINCSOを出力する。なお、第1開度Dは、例えば燃料制御弁42の最小開度である。このMINCSOは、GVCSOと同様にタービン回転数のオーバーシュートを低減させることとなる。
【0058】
そして、MINCSO演算部54は、上昇したタービン回転数が下降に転じて基準回転数ωSとなった場合に、第2開度Dに達するまで、時間変化を伴って弁開度を大きくするMINCSOを出力する。すなわち、タービン回転数が基準回転数ωSとなったタイミングTで、MINCSOで示される弁開度が上昇する。
【0059】
GVCSOは、タービン回転数を回転数目標値と一致させるためにフィードバックにより演算される指令値であるため、時間遅れが生じ、GVCSOによる燃料制御弁42の制御では、アンダーシュートの低減量には限度がある。しかし、MINCSOは、上述のように、タービン回転数が定格回転数ωRに達する前に、燃料を先行的に燃焼器22へ供給するように燃料制御弁42を制御することとなる。すなわち、MINCSOは、GVCSOよりも先行的に燃料制御弁42の弁開度を大きくするので、GVCSOよりも大きくなり、選択部56によって、MINCSOが選択されて燃料制御弁42へ出力される。これにより、燃焼器22への燃料の供給量が少なすぎることが抑制されるため、タービン回転数のアンダーシュート量が低減される。
【0060】
なお、図4に示される基準回転数ωSは一例であり、基準回転数ωSは上昇したタービンの回転数が下降に転じて定格回転数ωRに達する前であればよく、例えば最大回転数ωMAXを基準回転数ωSとしてもよい。また、MINCSOは、第2開度Dに達するまで直線状に徐々に大きくなるが、これに限らず、例えば、第2開度Dに達するまで曲線状に徐々に大きくなるとしてもよいし、MINCSOは、第2開度Dに達するまで段階的に徐々に大きくなるとしてもよい。
【0061】
また、第2開度Dは、ガスタービン12の無負荷運転においてCLCSOで示される開度よりも小さな開度である。このことは、MINCSOで示される弁開度では、タービン回転数が定格回転数ωRに達する燃料を燃焼器22へ供給できないことを意味する。一方、GVCSOは、タービン回転数と回転数目標値とが一致するように弁開度を大きくするので、回転数目標値を定格回転数ωRとすることで、タービン回転数を定格回転数ωRにできる。すなわち、MINCSOが、GVCSOよりも先行的に弁開度を大きくしても、何れMINCSOよりもGVCSOの方が大きくなり、選択部56によってGVCSOが選択され、燃料制御弁42へ出力されることとなる。これにより、GVCSOによって、タービン回転数が定格回転数ωRで整定されることとなる。
【0062】
すなわち、図4に示されるように、ガスタービン12の負荷が低減してタービン回転数が上昇したタイミングTから、MINCSOで示される弁開度とGVCSOで示される弁開度の大きさが逆転するタイミングTまで、選択部56は、MINCSOを選択し、燃料制御弁42へ出力する。そして、タイミングTからは、選択部56は、GVCSOを選択し、燃料制御弁42へ出力するので、燃料制御弁42は、タービン回転数と回転数目標値とに基づいてフィードバック制御されることとなる。
【0063】
なお、ガスタービン12の負荷が低減してタービン回転数が上昇しても、GVCSOで示される弁開度がMINCSOで示される弁開度よりも小さくならない限り、MINCSOで燃料制御弁42が制御されることはない。
【0064】
以上説明したように、本第1実施形態に係る弁制御装置44は、燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器22からの燃焼ガスにより駆動するタービン24、及び燃焼器22へ供給する燃料の流量を制御する燃料制御弁42を備えたガスタービン24に設けられ、弁開度を制御する。弁制御装置44は、ガスタービン12の負荷が低減してタービン回転数が上昇した場合に、弁開度を小さくし、上昇したタービン回転数が下降に転じて定格回転数に達する前の基準回転数となった場合に、時間変化を伴って燃料制御弁42の開度を大きくする。
【0065】
従って、本第1実施形態に係る弁制御装置44は、ガスタービン12の負荷が低減した場合に、タービン回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートをより安全に低減できる。
【0066】
また、本第1実施形態に係る弁制御装置44は、GVCSOを出力するGVCSO演算部50と、ガスタービン12の負荷が低減してタービン24の回転数が上昇した状態で、弁開度を第1開度まで小さくし、上昇したタービン回転数が下降に転じて基準回転数となった場合に、第2開度に達するまで、時間変化を伴って弁開度を大きくするMINCSOを出力するMINCSO演算部54と、を備える。さらに、弁制御装置44は、GVCSO演算部50から出力されたGVCSOとMINCSO演算部54から出力されたMINCSOのうち、より大きな開度を示している指令値を選択し、燃料制御弁42へ出力する選択部56を備える。
【0067】
従って、本第1実施形態に係る弁制御装置44は、ガスタービン12の負荷が低減した場合に、タービン回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートをより安全に低減でき、かつ変動したタービン回転数を短時間で整定できる。
【0068】
また、本第1実施形態に係る弁制御装置44は、記憶部52に記憶されたタービン回転数に基づいて、タービン回転数の増減が判断するので、簡易な構成でタービン回転数の変化を検知できる。
【0069】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0070】
なお、本第2実施形態に係るガスタービンプラント10及び弁制御装置44の構成は、図1に示す第1実施形態に係るガスタービンプラント10及び弁制御装置44の構成と同様であるので説明を省略する。
【0071】
本第2実施形態に係るMINCSO演算部54は、上昇したタービン回転数が下降に転じて基準回転数となった場合に、弁開度の上昇率がタービン回転数の変動率(下降率)に応じて変化するMINCSOを出力する。
【0072】
図5は、本第2実施形態に係る弁制御装置44が備えるMINCSO演算部54の機能を示す機能ブロック図である。
【0073】
MINCSO演算部54は、LPF(ローパスフィルタ)70、回転数変動率演算部72、MINCSO上昇率演算部74、及び信号生成部76を備える。
【0074】
LPF70は、タービン回転数の現在値が入力され、ノイズ成分を除去した後のタービン回転数を回転数変動率演算部72へ出力する。
【0075】
図6を参照して、回転数変動率演算部72及びMINCSO上昇率演算部74について説明する。
【0076】
回転数変動率演算部72は、下記(1)式に示すように、最大回転数ωMAXが基準回転数ωSに変化するまでに要した時間ΔT1に基づいて、タービン回転数の変動率(以下、「回転数変動率」という。)nを算出する。しかし、これに限らず、タービン回転数に対する微分処理(又は差分処理)等、他の処理方法により回転数変動率nを算出してもよい。
【数1】

【0077】
MINCSO上昇率演算部74は、下記(2)式に示すように、回転数変動率演算部72によって算出された回転数変動率nに基づいて、MINCSO上昇率mを算出する。
【数2】

(2)式におけるKは予め定められた定数である。また、ΔMINCSOは、第1開度Dと第2開度Dとの差であるため固定値である。そのため、MINCSO上昇率mを算出することは、第1開度Dから第2開度Dへ弁開度を変化させるために要する時間ΔTを算出することとなる。
【0078】
信号生成部76は、MINCSO上昇率演算部74で算出されたMINCSO上昇率mを用いて、第2開度Dを示すMINCSO最大値となるまで、時間変化を伴うMINCSOを生成し、燃料制御弁42へ出力する。
【0079】
これにより、回転数変動率nが大きいと、より速い時間で弁開度が、第1開度Dから第2開度Dへ変化するので、第2開度Dに応じた燃料が短時間で燃焼器22へ供給される。すなわち、タービン回転数の下降率が大きいと、アンダーシュート量も大きくなると考えられるので、アンダーシュート量を減らし、整定時間を短縮するために、燃料制御弁42は短時間で燃料を供給することとなる。
【0080】
以上説明したように、本第2実施形態に係る弁制御装置44は、タービン回転数が下降した後に燃焼器22へ供給される燃料がタービン回転数の変動率に応じて変化するので、アンダーシュート量の低減及び整定時間の短縮ができる。
【0081】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
【0082】
なお、本第3実施形態に係るガスタービンプラント10及び弁制御装置44の構成は、図1に示す第1実施形態に係るガスタービンプラント10及び弁制御装置44の構成と同様であるので説明を省略する。
【0083】
本第3実施形態に係るMINCSO演算部54は、第2開度を示すMINCSOの最大値を、燃焼器22における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータに基づいて決定する。
【0084】
図7は、本第3実施形態に係る弁制御装置44が備えるMINCSO演算部54の機能を示す機能ブロック図である。なお、図7における図5と同一の構成部分については図5と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0085】
本第3実施形態に係る弁制御装置44は、GVCSO整定値演算部80及びMINCSO最大値演算部82を備える。
【0086】
GVCSO整定値演算部80は、タービン回転数を整定させるためのGVCSOを算出する。具体的には、GVCSO整定値演算部80は、整定させたい目標となる整定目標タービン回転数、燃焼器22における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータに基づいてGVCSOを算出する。
燃焼器22における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータとは、例えば、大気温度や燃料温度等である。そして、例えば、GVCSOは、整定目標タービン回転数に応じた値に設定され、大気温度が高いほど空気の密度が低くなるためGVCSOは高く設定され、燃料温度が高いほど燃料の密度が低くなるためGVCSOは高く設定される。上記パラメータとして、燃料カロリー及び燃料供給圧力等を用いてもよい。
【0087】
MINCSO最大値演算部82は、GVCSO整定値演算部80から出力されたGVCSOに、予め定められた係数を乗算することによってMINCSO最大値を算出し、信号生成部76へ出力する。なお、該係数は、MINCSOがGVCSOを超えないように1未満とされている。
【0088】
そして、信号生成部76は、MINCSO最大値演算部82で算出されたMINCSO最大値となるまで、時間変化を伴うMINCSOを生成し、燃料制御弁42へ出力する。
【0089】
以上説明したように、本第3実施形態に係る弁制御装置44は、第2開度を示すMINCSO最大値を燃焼器22における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータに基づいて決定するため、燃料制御弁42に対する開度指令値がMINCSOからGVCSOに選択されるタイミングが該パラメータによって変化することとなる。従って、燃料制御弁42に対する開度指令値がMINCSOからGVCSOに選択されるタイミングが、燃焼器22における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータに応じてより適正なタイミングに変化することとなるので、本第3実施形態に係る弁制御装置44は、アンダーシュート量の低減及び整定時間の短縮ができる。
【0090】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
【0091】
なお、本第4実施形態に係るガスタービンプラント10及び弁制御装置44の構成は、図1に示す第1実施形態に係るガスタービンプラント10及び弁制御装置44の構成と同様であるので説明を省略する。
【0092】
本第4実施形態に係るMINCSO演算部54は、少なくとも燃焼器22が失火しない燃料を燃焼器22へ供給する第1開度を示すMINCSO最小値を、タービン24の出力(以下、「タービン出力」という。)の変化に基づいて決定する。なお、本第4実施形態では、MINCSO最小値は、負荷が低減する前のタービン出力、負荷が低減する前後のタービン出力の差分、及び負荷が低減した後のタービン出力に基づいて、決定される。
【0093】
図8は、本第4実施形態に係るMINCSO演算部54におけるMINCSO最小値を決定する機能を示す機能ブロック図である。
【0094】
本第4実施形態に係るMINCSO演算部54は、出力変化導出部90、MINCSO最小値出力部92A,92B,92C、及びMINCSO最小値選択部94を備える。
【0095】
出力変化導出部90は、タービン出力値が逐次入力される。そして、入力されたタービン出力値の時間変化に基づいて、負荷が低減する前のタービン出力値(以下、「負荷低減前出力値」という。)、負荷が低減する前後のタービン出力値の差分(以下、「出力変化値」という。)、及び負荷が低減した後のタービン出力値(以下、「負荷低減後出力値」という。)を導出する。
そして、出力変化導出部90は、負荷低減前出力値をMINCSO最小値出力部92Aへ出力し、出力変化値をMINCSO最小値出力部92Bへ出力し、負荷低減後出力値をMINCSO最小値出力部92Cへ出力する。
【0096】
MINCSO最小値出力部92Aは、入力された負荷低減前出力値に対応するMINCSO最小値を出力する。なお、MINCSO最小値出力部92Aは、負荷低減前出力値が大きいほど小さなMINCSO最小値を示すテーブル情報Aを記憶している。MINCSO最小値出力部92Aは、テーブル情報Aに基づいて入力された負荷低減前出力値に対応するMINCSO最小値を、MINCSO最小値選択部94へ出力する。
【0097】
負荷低減前出力値が大きいほど小さなMINCSO最小値とする理由を以下に述べる。
まず、ガスタービン12の負荷が急激に低減することに伴って燃料制御弁42の開度を小さくしても、燃料制御弁42から燃焼器22へ至るまでの配管内に燃料が残留している。このため、残留した燃料によって燃焼ガスが生成され、タービン24の回転が持続し、タービン回転数が上昇する。
【0098】
そして、負荷が低減する前のタービン出力値が大きいほど、残留した燃料が多くなるため、負荷低減前出力値が大きいほど小さなMINCSO最小値とし、燃焼器22へ供給される燃料をより少なくし、タービン24の回転数のオーバーシュートを抑制する。
【0099】
MINCSO最小値出力部92Bは、入力された出力変化値に対応するMINCSO最小値を出力する。なお、MINCSO最小値出力部94は、出力変化値が大きいほど小さなMINCSO最小値を示すテーブル情報Bを記憶している。MINCSO最小値出力部92Bは、テーブル情報Bに基づいて出力変化値に対応するMINCSO最小値を、MINCSO最小値選択部94へ出力する。
【0100】
出力変化値が大きいほど小さなMINCSO最小値とする理由は、上述した理由と同様であり、出力変化値が大きいほど、残留した燃料が低減した負荷に比較して多くなるためである。
【0101】
MINCSO最小値出力部92Cは、入力された負荷低減後出力値に対応するMINCSO最小値を出力する。なお、MINCSO最小値出力部92Cは、負荷低減後出力値が大きいほど大きなMINCSO最小値を示すテーブル情報を記憶している。MINCSO最小値出力部92Cは、テーブル情報Cに基づいて負荷低減後出力値に対応するMINCSO最小値を、MINCSO最小値選択部94へ出力する。
【0102】
負荷低減後出力値が大きいほど大きなMINCSO最小値とする理由は、タービン出力を維持するためである。
【0103】
MINCSO最小値選択部94は、入力された3つのMINCSO最小値を比較し、最も小さいMINCSO最小値を選択し、MINCSO最小値として出力する。最も小さいMINCSO最小値を選択する理由は、タービン24に対する安全を考慮し、タービン回転数の上昇を抑制するためである。このため、MINCSO最小値選択部94は、入力された3つのMINCSO最小値を比較し、最も大きなMINCSO最小値を選択してもよいし、2番目に小さなMINCSO最小値を選択しもよい。
【0104】
なお、MINCSO最小値選択部94は、少なくとも燃焼器22が失火しない燃料を燃焼器22へ供給する第1開度を示す最小MINCSOを記憶している。そして、MINCSO最小値選択部94は、選択したMINCSO最小値が、最小MINCSOよりも小さい場合は、選択したMINCSO最小値に替えて、最小MINCSOをMINCSO最小値として出力する。
【0105】
以上説明したように、MINCSO演算部54は、少なくとも燃焼器22が失火しない燃料を燃焼器22へ供給するMINCSO最小値を、タービン出力の変化に基づいて決定するので、燃焼器の失火を防ぐと共に、タービンの回転数のオーバーシュート量及びアンダーシュート量を精度良く制御できる。
【0106】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0107】
例えば、上記各実施形態では、弁開度を示す開度指令値であるMINCSO及びGVCSOが上昇すると弁開度も大きくなる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、開度指令値が下降すると弁開度が大きくなる形態としてもよい。この形態の場合、例えば、開度指令値が0のときの弁開度を100%とし、開度指令値が100のときの弁開度を0%とする。
【符号の説明】
【0108】
12 ガスタービン
22 燃焼器
24 タービン
42 燃料制御弁
44 弁制御装置
50 GVCSO演算部
52 記憶部
54 MINCSO演算部
56 選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器、前記燃焼器によって生成された燃焼ガスにより駆動するタービン、及び前記燃焼器へ供給する燃料の流量を制御する燃料制御弁を備えたガスタービンに設けられ、前記燃料制御弁の開度を制御する弁制御装置であって、
前記ガスタービンの負荷が低減して前記タービンの回転数が上昇した場合に、前記燃料制御弁の開度を小さくし、上昇した前記タービンの回転数が下降に転じて定格回転数に達する前の所定回転数となった場合に、時間変化を伴って前記燃料制御弁の開度を大きくする弁制御装置。
【請求項2】
前記タービンの回転数を目標値と一致させるための燃料の流量に応じて、前記燃料制御弁の開度を変化させる第1開度指令値を出力する第1開度指令値出力手段と、
前記ガスタービンの負荷が低減して前記タービンの回転数が上昇した状態で、前記燃料制御弁の開度を第1開度まで小さくし、上昇した前記タービンの回転数が下降に転じて前記所定回転数となった場合に、前記ガスタービンの無負荷運転において前記第1開度指令値で示される開度よりも小さな第2開度に達するまで、時間変化を伴って前記燃料制御弁の開度を大きくする第2開度指令値を出力する第2開度指令値出力手段と、
前記第1開度指令値出力手段から出力された前記第1開度指令値と前記第2開度指令値出力手段から出力された前記第2開度指令値のうち、より大きな開度を示している指令値を選択し、前記燃料制御弁へ出力する選択手段と、
を備えた請求項1記載の弁制御装置。
【請求項3】
前記タービンの回転数を逐次記憶する記憶手段を備え、
前記第2開度指令値出力手段は、前記記憶手段に記憶された前記タービンの回転数に基づいて、前記タービンの回転数の増減を判断する請求項2記載の弁制御装置。
【請求項4】
前記第2開度指令値出力手段は、上昇した前記タービンの回転数が下降に転じて前記所定回転数となった場合に、前記燃料制御弁の開度の上昇率が前記タービンの回転数の変動率に応じて変化する前記第2開度指令値を出力する請求項1又は請求項2記載の弁制御装置。
【請求項5】
前記第2開度指令値出力手段は、前記第2開度を示す第2開度指令値を、前記燃焼器における燃焼状態に影響を及ぼすパラメータに基づいて決定する請求項2から請求項4の何れか1項記載の弁制御装置。
【請求項6】
前記第2開度指令値出力手段は、少なくとも前記燃焼器が失火しない燃料を前記燃焼器へ供給する前記第1開度を示す第2開度指令値を、前記タービンの出力の変化に基づいて決定する請求項2から請求項5の何れか1項記載の弁制御装置。
【請求項7】
前記第2開度指令値出力手段は、前記第1開度を示す第2開度指令値を、負荷が低減する前の前記タービンの出力、負荷が低減する前後のタービンの出力の差分、及び負荷が低減した後の前記タービンの出力に基づいて、決定する請求項6記載の弁制御装置。
【請求項8】
燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼器によって生成された燃焼ガスにより駆動するタービンと、
前記燃焼器へ供給する燃料の流量を制御する燃料制御弁と、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の弁制御装置と、
を備えたガスタービン。
【請求項9】
燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器、前記燃焼器によって生成された燃焼ガスにより駆動するタービン、及び前記燃焼器へ供給する燃料の流量を制御する燃料制御弁を備えたガスタービンに設けられ、前記燃料制御弁の開度を制御する弁制御方法であって、
前記ガスタービンの負荷が低減して前記タービンの回転数が上昇した状態で、前記燃料制御弁の開度を小さくする第1工程と、
上昇した前記タービンの回転数が下降に転じて定格回転数に達する前の所定回転数となった場合に、時間変化を伴って前記燃料制御弁の開度を大きくする第2工程と、
を含む弁制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113154(P2013−113154A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258021(P2011−258021)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)