説明

弁部材及び該弁部材を使用した噴出ヘッド

【課題】断面がリング状をなす流路に装着して逆止弁を形成する弁部材であり、流通時,保管時或いは組み付け時に弁板11が損傷を受けることがなく、良好なシール性を発揮する弁部材を提案する。また、該弁部材を使用した噴出ヘッドを提案する。
【解決手段】流路の一方側壁面に嵌着させた装着筒10と、装着筒10よりテーパ状に延設して先端縁を他方側壁面に圧接した弁板11とを備え、弁板11の先端縁と離間位置の他方側壁面に嵌着したガードリング13を、弁板11の先端部より延設した連結片12を介して一体に延設した。これにより弁板11の先端縁が常時ガードリング13により保護される如く構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弁部材及び該弁部材を使用した噴出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
装着キャップにより容器体に固定したポンプ本体と、ポンプ本体の射出筒先端に連結した噴出口付き噴出ヘッドと、射出筒前部より揺動可能に垂設したトリガーとを備え、トリガーの操作による内臓ポンプ機構の作用で容器体内の液を吸い上げて噴出する如く構成したトリガー式ポンプが種々提案されている。(例えば特許文献1参照)
【0003】
市場における商品の多様化により上記した如きポンプ或いはスプレーもその担う役割が大きくなっており、その機能,品質,コストの安定優位性が求められている。生産する側では生産効率と歩留りがコストダウンを図る上で無視できない条件となっているが、ポンプ,スプレー等の繊細な機能を有するものは生産工程中の落下,衝撃等の外力で傷や変形が発生し、重要ポイントの機能を阻害することが多々あり、結果不良発生の増加の要因になっている。
【0004】
この様なポンプ或いはスプレーに於ける液流路の内特に噴出ヘッドの液流路の多くは環状に形成された形態のものが採用されている。特にこの種のポンプは霧状に液を噴出するためのノズルチップを先端に嵌着する形態が多く、その場合には環状に形成された液流路からのノズルチップへの液の導入が好ましい形態となる。
【特許文献1】特開2000−70795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した如きトリガー式液体噴出ポンプの噴出ヘッドの如く断面がリング状の流路に対応する弁部材を提案するものであり、しかも上記した現今の要求事項に則した流通時,保管時,或いは組み付け時等に弁板が損傷を受けることがなく、良好なシール性を得られる弁部材を提案する。また、形状も簡単で、複雑な金型を必要とせずに、製造効率の向上,コストの低減を図った弁部材を提案する。また、この様な弁部材を使用した噴出ヘッドを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁部材は、断面がリング状をなす流路に装着して逆止弁を形成するものであり、合成樹脂,エラストマー等により形成される。弁部材の基本構成は流路の一方側壁面に嵌着させた装着筒と、装着筒からテーパ状に延設して先端縁を他方側壁面に圧接した弁板とで構成した形態の弁構造を備えており、一方からの液圧で弁板と他方側壁面との圧接を離間して液を流通させ、他方からの液圧では弁板が他方側壁面へ圧接されて開かない逆止弁構造のものである。装着筒は流路の内側壁面に嵌合させる形態であっても或いは外側壁面に嵌合させる形態であっても良い。
【0007】
本発明の弁部材はこの様な形態の弁構造を備え、更に、弁板の先端縁と離間位置の他方側壁面に嵌着したガードリングを、弁板の先端部より延設した連結片を介して一体に延設した構造を備えている。これにより、弁部材製造後の保管時,流通時,或いは組み付け時に弁体の外力による損傷を極力防止できるものであり、その結果、組み付けられた弁部材が形成する逆止弁が液密性に優れた耐久性に富んだものとなる。
【0008】
連結片の数は単数であっても複数であっても良いが、初期の目的を達成するためには周方向等間隔に複数設けることが望ましく、その数も適宜選択して採用できる。連結片は、弁板先端縁が他方側壁面を液密シール可能な状態を維持できる如く弁板先端部に一端を連結していれば良いが、弁板の規則正しい弾性変形を現出するために、弁板先端部内面に下端部を一体に連結した形態がより好ましく採用できる。
【0009】
ガードリングは、上記した弁板先端縁と離間位置に連結片を介して延設するとの要件を満たせば具体的形態は種々選択できるが、弁板先端部の保護をより発揮するために、弁板先端縁より大外径の外周面を備えたものが好ましく採用できる。その場合には、内周面を嵌合する他方側壁面と同一面とするか或いは内周面を他方側壁面より大径となる如く構成すると良い。
【0010】
また、本発明の噴出ヘッドは上記した本発明の弁部材を採用して吐出弁を内蔵したものであり、トリガーを引くことにより装着した容器体内の液を噴出口より噴出する如く構成したトリガー式ポンプの噴出ヘッドである。噴出ヘッドは射出筒の先端に嵌着したスピンエレメントと、スピンエレメントに嵌合させた噴出ヘッド本体とを備えている。スピンエレメントには射出筒内と連通する断面がリング状をなす第1流路を備えており、この第1流路内に弁部材を装着している。また、噴出へッド本体は、第1流路と連通して噴出口に至る第2流路を備えている。
【0011】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、断面がリング状をなす流路の一方側壁面に嵌着させた装着筒10と、装着筒10よりテーパ状に延設して先端縁を他方側壁面に圧接した弁板11とを備え、弁板11の先端縁と離間位置の他方側壁面に嵌着したガードリング13を、弁板11の先端部より延設した連結片12を介して一体に延設してなることを特徴とする弁部材として構成した。
【0012】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、弁板11の内面先端部に連結片12の一端部を一体に連結した。
【0013】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、ガードリング13の外周面を弁板11先端部の外周より大径に形成した。
【0014】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段のいずれかの手段に於いて、連結片12を周方向等間隔に複数設けた。
【0015】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、射出筒先端に嵌着するとともに、射出筒と連通する断面リング状の第1流路p1を前方へ延設したスピンエレメントB1と、スピンエレメントB1に嵌合させるとともに、第1流路p1と連通して噴出口30に至る第2流路p2を有する噴出ヘッド本体B2とを備え、第1流路p1の一方側壁面に嵌合させた嵌合筒20より先端に向かって開くテーパ状の弁板11を延設するとともに、弁板11の先端縁を他方側壁面に圧接して吐出弁14を形成し、且つ、弁板11の先端縁と離間位置の他方側壁面に嵌着したガードリング13を、弁板11の先端部より延設した連結片12を介して一体に延設してなる弁部材Aを設けたことを特徴とする噴出ヘッドとして構成した。
【0016】
第6の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第5の手段に於いて、ガードリング13の内周面が他方側壁面と同径か又は大径となる如く嵌合する嵌合凹部6を第1流路p1の他方側壁面に形成し、嵌合凹部6内に嵌合させたガードリング13の内面と弁板11の先端部内面とを連結片12で連結一体化させた。
【発明の効果】
【0017】
本発明の弁部材Aは、ガードリング13の存在で、弁板11の損傷を限りなく減じることができ、弁部材Aの製造後の保管時、或いは流通時、或いは組み付け時に弁板11が外傷を受けることが極めて少なく、その結果、装着した流路に於ける弁板11のシール性を充分確保でき、弁部材としての機能を充分発揮させることができる。また、構造が簡単であるため、複雑な金型も必要なく、安価に且つ容易に製造できる利点も兼ね備えている。
【0018】
また、弁板11の内面先端部に連結片12の一端部を一体に連結した場合には、連結片12形成部分の弁板11を他方側壁面に不都合なく圧接しておくことができ、液の流出の際に連結片12間の弁板11が規則正しい変形を行えて、長期の使用に於いても弁板11が変形してしまうという様な不都合を極力防止できる。
【0019】
また、ガードリング13の外周面を弁板11先端部の外周より大径に形成した場合には常時弁板11の先端部がガードリング13により確実に防護され、流路に装着する前の保管,流通段階に於いても弁板11の先端部の損傷をより確実に防止することができる。
【0020】
また、連結片12を周方向等間隔に複数設けた弁部材Aの場合には、弁板が規則的に弾性変形して、弁板11に不都合な変形を引き起こすことが少なく、耐久性に優れたものとなる。
【0021】
本発明の噴出ヘッドは、吐出弁14を形成する弁部材Aが損傷を受けることがなく、良好なシール性を発揮することができ、円滑な液の噴出操作を行えるものである。また、噴出ヘッドB内に吐出弁14を形成しているため、射出筒上流のポンプ本体内に吐出弁を備えた形態のトリガー式ポンプに装着すれば二重の吐出弁を備えたものとなり、より耐久性に優れた、吐出弁効果を向上したポンプとして形成することができる。
【0022】
本発明の噴出ヘッドに於いて、ガードリング13の内周面が他方側壁面と同径か又は大径となる如く嵌合する嵌合凹部6を第1流路p1の他方側壁面に形成し、嵌合凹部6内に嵌合させたガードリング13の内面と弁板11の先端部内面とを連結片12で連結一体化させた場合には、弁部材Aの装着が容易となり、また、弁板11が液圧で変形する際に無理な弾性変形を引き起こさなくてすみ、弁板11が変形する等の不都合を極力防止でき、耐久性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本発明の弁部材Aを備えた本発明の噴出ヘッドBの一例を示すもので、該噴出ヘッドBは、スピンエレメントB1と、噴出ヘッド本体B2と、ノズルチップB3とを備えている。
【0025】
スピンエレメントB1は、トリガー式液体噴出ポンプの射出筒(図示せず)の先端に嵌着固定するもので、射出筒内と連通する透孔2を穿設した基板3を備え、基板3の前面より内筒4と外筒5とを二重筒状に前方へ突設して内筒4と外筒5との間に第1流路p1を画成している。第1流路p1は透孔2を介して射出筒内と連通する如く構成している。第1流路p1の外側壁面f1である外筒5の内周壁面を、その先端部に於いて拡径して後述するガードリングを嵌合する嵌合凹部6を形成しており、また、第1流路p1の内側壁面f2である内筒4の外周壁面を所定位置には係止突条7を突設している。更に、内筒4の外周先端部には、流路開閉手段を構成する一対の第1凹溝8を凹設している。
【0026】
弁部材Aは、図2及び図3に示す如く、円筒状の装着筒10の外周下端部より上方に開くテーパ状の弁板11を延設し、また、弁板11の対向する180度離間位置に設けた一対の連結片12を介して弁板11の上端縁と離間した上方位置に円筒状のガードリング13を延設している。ガードリング13の内周縁は弁板11の上端縁外周縁と同じか若干外方に位置しており、各連結片12は弁板11の内面上端部からガードリング13の内面上部に至る部分に一体に掛け渡されている。そして、内筒4の内側壁面f2に装着筒10を嵌着し、装着筒10の先端部は係止突条7により前方への抜け出し防止を図っている。また、装着筒10の外周後端部より前方へ延設した弁板11の先端縁を外側壁面f1に圧接して吐出弁14を形成している。ガードリング13は嵌合凹部6の後端部側に嵌着固定している。連結片12の無い部分に於ける弁板11の先端部は、図4(a)に示す如く、ガードリング13と離間して外側壁面f1に密嵌しており、またガードリング13の存在する部分では、図4(b)に示す如く、連結片12がガードリング13の内面と弁板11の内面とを連結する如く構成しているため、弁板11の先端外面は連結片12に邪魔されることなく密に外側壁面f1に密接している。
【0027】
噴出ヘッド本体B2は、外筒5外周に回動可能に嵌合させた嵌合筒20を備え、嵌合筒20前端縁より前板21を延設している。前板21の裏面からは外筒5の内周前部に液密回動可能に嵌合する第1シール筒22を後方へ突設し、また、内筒4外周に液密回動可能に嵌合させた第2シール筒23を後方へ突設している。第2シール筒23の内側所定位置には前記各第1凹溝8と流路開閉手段を構成する一対の第2凹溝24を凹設している。そして、図1の各第1凹溝8と各第2凹溝24とが連通する状態から、スピンエレメントB1に対して噴出ヘッド本体B2を所定角度回動させた際に各第1凹溝8と第2凹溝24とが非連通となり、流路が遮断される如く構成しいる。
【0028】
前板21の前面中央部から前方へ筒部25を突設し、筒部25内の前板21に窓孔26を開口しており、この窓孔26と第2凹溝24の先端開口とを連通する如く構成している。更に、窓孔26及び筒部25内中央には、周方向複数の支持板27により支持された芯部28を設けてその周囲に第1流路p1と連通する第2流路p2を画成している。芯部28は後部の小径部28a の後端部を内筒4内先端部に液密回動可能に嵌合させ、また、前部の大径部28b を筒部25内中央に、筒部25との間に隙間を形成して支持されている。
【0029】
ノズルチップB3は、中央に噴出口30を開口した前壁31の周縁部より後方へ筒壁32を延設し、筒壁32を筒部25と各支持板27との間に、筒部25との液密性を保ちつつ抜け出しを防止して嵌合させている。噴出口30の裏面には公知のスピン機構を刻設しており、第2凹溝24から第2流路p2を通り、スピン機構を介して噴出口30より噴出する如く構成している。
【0030】
上記の如く構成した噴出ヘッドBは、透孔2より導入された液が第1流路p1内の吐出弁14を開いて第1凹溝8及び第2凹溝24を介して第2流路p2内に至り、次いでスピン機構を介して噴出口30より噴出される。この際、弁板11の各連結片12の部分は液圧で動かず、各連結片12間の弁板11先端部分が内方へ弾性変形してそこから液が流出し、液圧の減少に伴って弁板11の弾性復元力により元の状態に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明噴出ヘッドの縦断面図である。(実施例1)
【図2】本発明弁部材の平面図である。(実施例1)
【図3】本発明弁部材の一部切欠き斜視図である。(実施例1)
【図4】本発明の弁部材シール部分の要部拡大断面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0032】
A…弁部材
10…装着筒,11…弁板,12…連結片,13…ガードリング,14…吐出弁
B…噴出ヘッド
B1…スピンエレメント
2…透孔,3…基板,4…内筒,5…外筒,6…嵌合凹部,7…係止突条,
8…第1凹溝,p1…第1流路,f1…外側壁面,f2…内側壁面
B2…噴出ヘッド本体
20…嵌合筒,21…前板,22…第1シール筒,23…第2シール筒,24…第2凹溝,
25…筒部,26…窓孔,27…支持板,28…芯部,28a …小径部,28b …大径部,
p2…第2流路
B3…ノズルチップ
30…噴出口,31…前壁,32…筒壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面がリング状をなす流路の一方側壁面に嵌着させた装着筒10と、装着筒10よりテーパ状に延設して先端縁を他方側壁面に圧接した弁板11とを備え、弁板11の先端縁と離間位置の他方側壁面に嵌着したガードリング13を、弁板11の先端部より延設した連結片12を介して一体に延設してなることを特徴とする弁部材。
【請求項2】
弁板11の内面先端部に連結片12の一端部を一体に連結してなる請求項1記載の弁部材。
【請求項3】
ガードリング13の外周面を弁板11先端部の外周より大径に形成してなる請求項1又は請求項2のいずれかに記載の弁部材。
【請求項4】
連結片12を周方向等間隔に複数設けてなる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の弁部材。
【請求項5】
射出筒先端に嵌着するとともに、射出筒と連通する断面リング状の第1流路p1を前方へ延設したスピンエレメントB1と、スピンエレメントB1に嵌合させるとともに、第1流路p1と連通して噴出口30に至る第2流路p2を有する噴出ヘッド本体B2とを備え、第1流路p1の一方側壁面に嵌合させた嵌合筒20より先端に向かって開くテーパ状の弁板11を延設するとともに、弁板11の先端縁を他方側壁面に圧接して吐出弁14を形成し、且つ、弁板11の先端縁と離間位置の他方側壁面に嵌着したガードリング13を、弁板11の先端部より延設した連結片12を介して一体に延設してなる弁部材Aを設けたことを特徴とする噴出ヘッド。
【請求項6】
ガードリング13の内周面が他方側壁面と同径か又は大径となる如く嵌合する嵌合凹部6を第1流路p1の他方側壁面に形成し、嵌合凹部6内に嵌合させたガードリング13の内面と弁板11の先端部内面とを連結片12で連結一体化させてなる請求項5記載の噴出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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