説明

引きずり検知能を有する電気外科用ペンシル

【課題】電気外科用ペンシルを提供すること。
【解決手段】電気焼灼ブレード(116)を支持するよう構成および適合された電気外科用ペンシル(100)。ひずみゲージ(130)は、電気焼灼ブレードの近位端に固定され、ブレードに対する抵抗および引きずり作用の結果としてブレードの移動を測定する。この電気外科用ペンシルはまた、電圧の変化、電流の変化、または光学波長の変化をモニタリングするための、ひずみゲージに電気的に接続されたメーターを備える。ひずみゲージにより測定されるブレードの移動の量は、外科医への表示のための利用可能であり、かつ/または発生器の出力波形を調節する電気外科用発生器(118)における制御回路のための検知入力として利用可能である。この電気外科用ペンシルはさらに、電気焼灼ブレードと電気外科用発生器との間に電気的に接続された制御回路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許出願番号60/398,620(2002年7月25日出願)および米国仮特許出願番号60/413,410号(2002年9月25日出願)の優先権を主張する。これらの出願の全内容は、本明細書中に参考として援用されている。
【0002】
(背景)
(1.技術分野)
本発明は、概して、電気外科用機器、より詳細には、引きずり検知能を有する電気外科用ペンシルに関する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連分野の背景)
電気外科用機器は、近年、外科医らに幅広く使用されるようになってきている。従って、取り扱いおよび操作が容易であり、信頼性があり、かつ安全である装置に対する必要性が高まっている。概して、ほとんどの電気外科用機器は、代表的に、無線(RF)電気エネルギーを組織部位に伝達する手持ち用装置(すなわち、ペンシル)を備える。この電気外科用エネルギーは、患者より下に配置された戻し電極パッド(return electrode pad)を介して(すなわち、単極システム構成)、または外科部位と物理的に接触させてもしくはすぐ隣に隣接するように配置可能なより小型の戻し電極を介して(すなわち、双極システム構成)、電気外科用供給源に戻される。RF源によって生成される波形は、所定の電気外科的効果を生じる(一般的に、電気外科的高周波療法として知られている)。
【0004】
特に、電気外科的高周波療法は、大きな切開を作製することなく、生物学的組織(例えば、生身の人間、内部器官の組織)へと電気的火花(electric spark)を適用することを含む。この火花は、適切な電気外科用発生器から生成された無線電気エネルギーの爆発(burst)により生成される。一般的に、高周波療法は、組織を脱水、収縮、壊死、または焦がすのに使用される。その結果、この機器は主に、出血および滲出を停止させるために使用されている。これらの操作は、用語「凝固」によって全体的に包括される。一方、電気外科的切断は、電気的火花を組織に適用し切断効果を生じるための使用を包含する。電気外科的焼付け(searing)は、電気外科用エネルギーおよび圧力の両方を用いて、組織コラーゲンを溶解し、融合塊にすることを含む。
【0005】
本明細書中で使用される場合、用語「電気外科用ペンシル」は、探査電極(active electrode)に取り付けられ、組織を凝固、切断、および/または焼付けするために使用されるハンドピースを有する機器を含むことを意図する。このペンシルは、ハンドスイッチまたはフットスイッチにより操作され得る。探査電極は、導電性要素であり、これは通常、細長であり、薄い平面ブレードの形状であり得、尖った遠位端または丸まった遠位端を有する。あるいは、探査電極は、細長円柱針を備え得、この針は、平坦な遠位端、丸まった遠位端、尖った遠位端、または歪んだ遠位端を有する中実または中空の針である。代表的に、この種類の電極は、「ブレード」、「ループ」または「スネア」、「針」または「ボール」電極として、当該分野で公知である。
【0006】
上述のように、このペンシルのハンドピースは、適切な電気外科用供給源(例えば、発生器(generator))に接続されており、このような発生器は、電気外科用ペンシルの操作に必要な無線電気エネルギーを生成する。一般的には、電気外科用ペンシルを用いて患者に対して手術が実施される場合、電気外科用発生器からの電気エネルギーは、探査電極を通って組織の操作部位に伝えられ、次いで、患者を通って戻し電極に戻される。戻し電極は代表的に、患者身体の都合の良い場所に配置され、そして導電性物質によって発生器に取り付けられる。
【0007】
手術時に電気外科用機器を用いる場合、組織が歪むかまたは組織の不一致に遭遇する場合に、探査電極の効果がより低くなり得る。これらの事例は、組織を通じて電極を通過させるのに必要とされる張力の変化として検知される(すなわち「引きずり(drag)」)。
【0008】
また、手術時に電気外科用機器を用いる場合、組織は、外科手順の間に焦げてしまい、探査電極に付着する傾向がある。探査電極が電気外科用ブレードである場合、焦げた組織は、いくつかの事例において、電気外科用ブレードの全体的な性能に影響を及ぼし得る。ブレードの性能障害は、手術の間の機器による効果を減少し得る。例えば、焦げた組織が探査電極上に堆積することで、ブレードの切断効果に影響を及ぼし得る。その結果、外科医は、切断ブレードの機能障害を補正するために、電気外科用ブレードへの電流を増加させる必要性を見出すことになる。このことは、組織と接触した際に組織がより容易かつ迅速に焦げる可能性を高めることになる。
【0009】
焦げた組織が探査電極上に堆積することから生じる別の関心は、焦げた組織が外科部位を破損および汚染し得、全体的な治癒プロセスを遅延させ得ることである。焦げた組織が探査電極上に堆積することはまた、引きずり(すなわち、身体組織が切断の間に示す抵抗の量)を増加させ得る。引きずりは、組織を歪め、解剖学的関係を変形し、結果として、適切な縫合に影響を及ぼし得、治癒を遅らせる可能性があり、肉眼で確認できる瘢痕が多くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、電気外科用ブレードに作用する引きずり力が所定の閾値レベルを超過し、かつ/または電気外科用ブレードが所定の許容可能なレベルを超えて移動した際に、操作者に適切に警告する引きずり検知能を有する電気外科用ペンシルに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要旨)
本願発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
電気外科用ペンシルであって:
細長ハウジングであって、その遠位端にブレード容器が提供されている、ハウジング;
該ブレード容器内に支持される電気焼灼ブレードであって、該ブレードは、該ハウジングから遠位方向に延びる遠位端および該ハウジングへと延びる近位端を有する、ブレード;
該ブレードに電気的に接続された起動ボタン;および
該電気焼灼ブレードの移動を測定するための、該ブレードに固定されたひずみゲージ、を備える、ペンシル。
(項目2)
前記起動ボタンが、前記ハウジング上に支持されている、項目1に記載の電気外科用ペンシル。
(項目3)
前記ひずみゲージが、前記電気焼灼ブレードの近位端に固定されている、項目1に記載の電気外科用ペンシル。
(項目4)
項目1に記載の電気外科用ペンシルであって:
電圧の変化、電流の変化、および光学的波長の変化のうちの少なくとも1つをモニタリングするためのメーターであって、電気的および光学的のうちの少なくとも一方で前記ひずみゲージに接続されている、メーター、
をさらに備える、ペンシル。
(項目5)
前記ひずみゲージが、ワイヤ、ホイル、半導体物質、および光学的変換器のうちの一つである、項目4に記載の電気外科用ペンシル。
(項目6)
前記ひずみゲージが、該ひずみゲージまたは温度補正された変換器のうちの一方に電気的に接続された温度補正用抵抗器を備え、該補正用抵抗器は、温度変化による移動の変動を補正するよう構成および適合されている、項目5に記載の電気外科用ペンシル。
(項目7)
前記半導体物質が、圧電抵抗物質である、項目5に記載の電気外科用ペンシル。
(項目8)
項目1に記載の電気外科用ペンシルであって、
前記ひずみゲージが所定のレベルを満たす前記ブレードの移動を測定する場合に、信号を生成する手段、
をさらに備える、ペンシル。
(項目9)
前記信号生成手段が、音響的信号および視覚的信号のうちの少なくとも一つを生成するフィードバックシステムを備える、項目8に記載の電気外科用ペンシル。
(項目10)
電気外科用機器であって:
ハウジング;
該ハウジング内に支持され該ハウジングから部分的に延びている電気焼灼ブレードであって、該ブレードは、該ブレードに電気外科用エネルギーを提供する電気外科用発生器に接続されている、ブレード;
該発生器に接続された起動スイッチであって、該電気焼灼ブレードの選択的な起動を可能にする、スイッチ;および
該電気焼灼ブレードの移動を測定するための、該電気焼灼ブレードと連絡状態にあるひずみゲージ、
を備える、電気外科用機器。
(項目11)
項目10に記載の電気外科用機器であって、
前記ひずみゲージを通過する電圧、電流、および光学的波長のうちの少なくとも一つをモニタリングするための手段、
をさらに備える、電気外科用機器。
(項目12)
項目10に記載の電気外科用機器であって、
電圧の変化、電流の変化、および光学的変換器のうちの少なくとも一つをモニタリングするための手段、
をさらに備える、電気外科用機器。
(項目13)
前記ひずみゲージが、ワイヤ、ホイル、半導体物質、および光学的変換器のうちの一つである、項目10に記載の電気外科用機器。
(項目14)
項目10に記載の電気外科用機器であって、
前記ひずみゲージが所定のレベルを満たす前記ブレードの移動を測定する場合に、信号を生成する手段、
をさらに備える、電気外科用機器。
(項目15)
前記電気外科用機器が、細長ハウジングを有する電気外科用ペンシルである、項目10に記載の電気外科用機器。
(項目16)
項目10に記載の電気外科用機器であって、
前記ひずみゲージが前記電気焼灼ブレードの移動を測定する場合に信号を生成するよう設計および構成された信号生成デバイスであって、該電気焼灼ブレードは、前記電気外科用発生器制御回路へと検知入力を提供し、該制御回路は次いで、該発生器の出力波形を変更する、デバイス、
をさらに備える、電気外科用機器。
(項目17)
項目10に記載の電気外科用機器であって、
前記電気焼灼ブレードと前記電気外科用発生器との間に電気的に接続された制御回路であって、該制御回路は、前記ひずみゲージによって測定される移動に基づき、該電気焼灼ブレードに供給される電力を制御するよう構成および適合されている、制御回路、
をさらに備える、電気外科用機器。
(項目18)
前記制御回路が、前記ひずみゲージによって測定される前記電気焼灼ブレードの移動がプリセット値より大きい場合に該電気焼灼ブレードに提供される電力を増加させ、該ひずみゲージによって測定さる該電気焼灼ブレードの移動がプリセット値より小さい場合に該電気焼灼ブレードに提供される電力を低下させる、項目17に記載の電気外科用機器。
【0012】
電気外科用ペンシルの切断先端が身体組織を通じて進む際に、その切断先端で生じる引きずりの程度をモニタリングする能力を操作者に提供するよう構成および適合された電気外科用ペンシルが開示される。この電気外科用ペンシルは、その遠位端にブレード容器が提供された細長ハウジング、ブレード容器内に支持される電気焼灼ブレード(electrocautery blade)(ここで、このブレードは、ハウジングから遠位方向に延びる遠位端およびハウジングへと延びる近位端を有する)、ブレードに電気的に接続された起動ボタン、および電気焼灼ブレードの移動を測定するためにブレードに固定されたひずみゲージ(strain guage)、を備える。好ましくは、ひずみゲージは、ワイヤ、ホイル、半導体物質、または光学的ひずみ変換器のいずれかである。
【0013】
好ましい実施形態において、ひずみゲージは、ひずみゲージまたは温度補正された変換器に電気的に接続された温度補正用抵抗器を備える。この補正用抵抗器は、温度変化による移動の変動を補正するよう構成および適合されている。
【0014】
さらなる好ましい実施形態において、起動ボタンは、ハウジング上に支持されている。別の好ましい実施形態において、ひずみゲージは、電気焼灼ブレードの近位端に機械的に接続されている。
【0015】
電気外科用ペンシル上に取り付けられたひずみゲージは、電圧の変化、電流の変化、および/または光学的波長の変化をモニタリングする適切な信号調節器(signal conditioner)に接続されることが企図される。
【0016】
電気外科用ペンシルは、ひずみゲージの信号の振幅という形で、組織を通るブレードの機械的抵抗の指標を提供することが企図される。このひずみ信号の出力は、電気外科用発生器の波形出力を制御する制御システムにおいて、検知フィードバックを提供する。
【0017】
電気外科用ペンシルは、好ましくは、ひずみゲージが所定のレベルを満たすブレードの移動を測定する場合に信号を生成する手段を備え、より好ましくは、所定のレベルが満たされた場合に音響的信号および/または視覚的信号を生成するフィードバックシステムを備えることがさらに企図される。
【0018】
代替の実施形態において、電気外科用機器は、電気焼灼ブレードと電気外科用発生器との間に電気的に接続された制御回路を備える。制御回路は、ひずみゲージによって測定される移動に基づき、電気焼灼ブレードに供給される電力を制御するよう構成および適合されている。好ましくは、制御回路は、ひずみゲージによって測定される電気焼灼ブレードの移動がプリセット値より大きい場合に電気焼灼ブレードに提供される電力を増加させ、ひずみゲージによって測定さる電気焼灼ブレードの移動がプリセット値より小さい場合に電気焼灼ブレードに提供される電力を低下させるよう構成および適合されている。
【0019】
これらおよび他の目的は、以下の図面の説明および好ましい実施形態の詳細な説明によってより明確に説明される。
【0020】
本明細書の一部に組み込まれ本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を説明し、かつ上記のような本発明の一般的な説明および以下の本発明の実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本開示に従う電気外科用ペンシルの実施形態の部分分解側正面図である。
【図2】図2は、本開示に従う電気外科用ペンシルの別の実施形態の部分分解側正面図である。
【図3】図3は、本開示に従う電気外科用ペンシルのさらに別の実施形態の部分分解側正面図であり、電気外科用発生器の出力の自動制御のための制御回路を説明している。
【図4】図4は、図3の電気外科用ペンシルと接続して使用される電気外科用発生器の概略フローチャートである。
【図5】図5は、制御回路の引きずり評価回路の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(詳細な説明)
本開示の電気外科用ペンシルの好ましい実施形態は、ここで、図面を参照して詳細に記載されている。図面において、同様の参照番号は、類似または同一の要素を識別している。本明細書中で使用される場合、用語「遠位」は、使用者から遠い方の部分をいい、用語「近位」は使用者に近い方の部分をいう。
【0023】
図1は、本発明に従って構築された電気外科用ペンシル(全体的に番号10で参照されている)の部分分解側正面図を示す。以下の説明は、電気外科用ペンシルに関するものであるが、本開示の本発明の特徴は、任意の電気外科型機器に適用され得ることが想定される。電気外科用ペンシル10は、その遠位端にブレード容器(blade receptacle)14を支持するよう構成および適合された細長ハウジング12を備え、ブレード容器は、取り外し可能な電気焼灼ブレード16をそれを通して収容する。ブレード16の遠位部分17は、容器14から遠位方向に伸び、ブレード16の近位部分15は、ハウジング12の遠位端内に保持されている。電気焼灼ブレード16は、導電型物質(すなわち、ステンレス鋼)からせ製造され得るか、または導電性物質でコーティングされ得ることが企図される。
【0024】
示されるように、電気外科用ペンシル10は、接続ワイヤ20を介して、従来の電気外科用発生器18に接続される。接続ワイヤ20は、電気外科用発生器18およびブレード16の近位端を電気的に相互接続する電流ワイヤ22、ならびに操作者の方に電流がそれるのを防止するための、電流ワイヤ22を電気的に絶縁し取り囲むコーティング21を備える。例示のみの目的として、電気外科用発生器18は、以下のいずれか1つまたはそれらの等価物であり得る:「FORCE FX」、「FORCE 2」、または「FORCE 4」発生器(Boulder,Co.のValleylab,Inc製)。理想的には、電気外科発生器は、組織切断に適切な第1の所定のRF信号(例えば、1〜300ワット)および組織凝固に適切な第2の所定のRF信号(例えば、1〜120ワット)を選択的に提供するよう予め設定(プリセット)され得る。
【0025】
電気外科用ペンシル10はさらに、ハウジング12の外表面上に支持された起動ボタン24を備える。起動ボタン24は、ブレード16に供給されるRF電気エネルギーを制御するために使用される降下スイッチ(depressible swich)26を制御するよう作用する。電気外科用ペンシル10はさらに、電流ワイヤ22と起動ボタン24との間で電気的に接続された電気制御回路(示さず)を備えることが企図される。1つの実施形態において、制御回路は、従来のオン/オフ接続能、および従来の抵抗行列を用いる高/低電力能を備える。降下スイッチ26とブレード容器14との間の電流ワイヤ22を通過する電気的エネルギーを調節/モニタリングする実質的に任意の制御回路が使用され得ることが当業者に明らかである。
【0026】
本発明に従って、電気外科用ペンシル10はさらに、ブレード16の近位端15の表面に取り付けられたひずみゲージ30(すなわち、機械的な移動(位置ずれ;displacement)/ゆがみを測定するために使用されるデバイス)を備える。ひずみゲージ30は、ひずみゲージ30と電気外科用発生器18を電気的に相互接続する一対の信号ワイヤ32またはそれらを光学的に相互接続する一対の光ファイバ33(図2を参照のこと)を備える。信号ワイヤ32および/または光ファイバ33は、ひずみゲージ30から、ハウジング12および接続ワイヤ20を通って、発生器18上に提供されるメーター36まで延びている。操作時には、ひずみゲージ30は、ブレード16の小さな機械的移動を、電気的信号または光学的信号に変換する。電気的信号は、移動の間のメーターの抵抗を反映する(すなわち、金属が伸びる場合その抵抗が増加し、または光学的変換器が伸びる場合、その光学的特性が変化する)。ひずみゲージ中の金属の抵抗の変化の測定は、使用者が、ブレード16における変化に対応する移動の程度を容易に決定することを可能にする。多くの異なる電気デバイスが、ひずみゲージから発生した電気的信号を測定するのに使用され得る(例えば、電圧メーター、アンプメーター等)。
【0027】
ひずみゲージ30は、ワイヤ、ホイル、または半導体物質から製造されることが企図される。ワイヤおよびホイル製のひずみゲージは、代表的に、紙またはエポキシの裏層に高抵抗物質を接着し、次いで、これを構造要素(すなわち、ブレード16の近位端15)に接着することによって構築される。より高い抵抗を得るために、ひずみゲージを構成するワイヤまたはホイルは、しばしば、裏層上で、ジグザグパターンで折り畳まれることが企図される。当該分野で公知のように、ひずみゲージ物質として所望の特性を有する多くのワイヤおよびホイルはまた、温度変化に敏感である。言い換えると、温度変化は、ワイヤの抵抗性を変更する。従って、ブレード16における温度変化の可能性がある本発明において、ひずみゲージ30に、補正用抵抗34が提供され、それがひずみゲージの近位に配置されることが企図される。好ましくは、抵抗34は、ひずみゲージ30によって測定される、ブレード16により生じる温度変化を補正するよう構成される。圧電抵抗性物質(通常は、シリコーン)で製造された半導体ひずみゲージが、使用されることがさらに企図される。操作時には、圧力(すなわち、引きずりに起因する抵抗)が基礎基板(すなわち、ブレード16)に適用される場合、ひずみゲージを構成する金属の抵抗は変化し、代表的には、出力電圧および/または電流の変化がモニタリングされ得る。あるいは、ひずみゲージ30は、光学的変換器であり得る。
【0028】
図2に詳細に見られるように、電気外科用ペンシル10のひずみゲージ30は、ひずみゲージ30と電気外科用発生器18を光学的に相互接続する一対の光ファイバ33を備える。光ファイバ33は、ひずみゲージ30から、ハウジング12および接続ワイヤ20を通って、発生器18上に提供されたメーター36まで延びている。指で作動する起動ボタン24の代わりに、電気外科用ペンシル10は、ブレード16に供給されるRF電気エネルギーを制御するために電気外科用発生器18を通じて電気的に接続されたフットスイッチ25を備えることがさらに企図される。
【0029】
本発明において使用される場合、操作者により適用される圧力および/またはブレード16上での焦げた組織の蓄積に起因してブレード16の遠位端17に対する引きずり作用が増加する場合、ブレード16の近位端15のたわみおよび/または移動(位置ずれ)もまた増加する。ブレード16の近位端15の移動は、ひずみゲージ30によって測定され、次いで、この移動は、発生器18上でモニタリングされ得る電気的信号または光学的信号に変換される。従って、操作者が、切断または凝固にペンシル10を使用する場合、操作者は、所定の閾値レベルを超える任意の有意な変化についてメーター36を継続的にモニタリングする。これらの変化は、操作者に以下のことを警告する:1)組織部位を通るブレード16の前進が速すぎて、組織が歪められ得ること;または2)焦げた組織がブレード16上に蓄積して、電気外科用ペンシル10の継続的前進が組織を歪めるレベルに達していること。
【0030】
電気外科用ペンシル10には、以下により詳細に記載されるように、電気外科用発生器に接続されたフィードバックシステムが提供され得ることが企図される。検知された引きずりのフィードバックは、発生器の出力波形を調節する、発生器における制御回路への入力に寄与する。例えば、増加した引きずりは、探査電極への出力電流を増加させる必要性を示す。
【0031】
電気外科用ペンシル10には、音響的または視覚的(すなわち、ライト)フィードバックシステム(示さず)が提供されることがさらに企図される。このようなフィードバックシステムは、ブレード16の遠位端に作用する引きずりが、所定の閾値レベルに等しくなるかまたはそれを超過した場合に操作者に通知する。例えば、フィードバックシステムは、メーター36のレベルが特定の所定数または範囲のレベルに到達した際に起動するよう設定された、ブザーおよび/またはライトを備え得る。この様式では、操作者は、積極的にメーター36をモニタリングする必要がない。代わりに、操作者は、標的組織部位に集中することができ、そして、ブレード16の遠位端の前進に対して作用する抵抗が所定の閾値レベルよりも高くなった場合に、ブザー音によって、光の点滅によって、またはその両方によって警告され得る。時間がたてば、電気外科用ペンシル10の操作者は、ブレード16の遠位端における抵抗が大きくなりすぎる場合を触覚的に認識するようになることが想定される。
【0032】
ここで、図3〜5を参照すると、電気外科用発生器118の自動制御のための構成および適合された制御回路110を有する電気外科用ペンシル100が開示される。図3に見られるように、電気外科用ペンシル100は、その遠位端でブレード容器114を支持するよう構成および適合された細長ハウジング112を備える。このブレード容器は、取り外し可能な電気焼灼ブレード116をそれを通して収容する。ブレード116の遠位端117は、容器114から遠位方向に延び、ブレード116の近位端115は、ハウジング112の遠位端内に保持されている。
【0033】
示されるように、電気外科用ペンシル100は、接続ワイヤ120を介して、従来の電気外科用発生器118に接続されている。接続ワイヤ120は、電気外科用発生器118とブレード116の近位端を電気的に相互接続する電流ワイヤ122、ならびに操作者の方に電流がそれるのを防止するための、電流ワイヤ122を電気的に絶縁し取り囲むコーティング121を備える。電気外科用ペンシル100はさらに、ハウジング112の外表面上に支持された起動ボタン124を備える。起動ボタン124は、ブレード116に供給されるRF電気エネルギーを制御するために使用される降下スイッチ126を制御するよう作用する。電気外科用ペンシル100はさらに、電流ワイヤ122と起動ボタン124との間で電気的に接続された電気制御回路110を備えることが企図される。1つの実施形態において、制御回路110は、従来のオン/オフ接続能、および従来の抵抗行列を用いる高/低電力能を備える。
【0034】
図3に見られるように、電気外科用ペンシル100はさらに、ブレード116の近位端115の表面に取り付けられたひずみゲージ130を備える。ひずみゲージ130は、ひずみゲージ130と電気外科用発生器118を電気的に相互接続する一対の信号ワイヤ132を備える。信号ワイヤ132は、ひずみゲージ130から、ハウジング112および接続ワイヤ120を通って、発生器118の電気制御回路110まで延びている。
【0035】
電気制御回路110の操作の一つの様式が、図4に最もよく説明されている。図4に見られるように、ひずみ測定デバイスまたはひずみゲージ130は、ブレード116の小さな機械的移動を、電気的信号に変換し、電気的信号は、信号ワイヤ132を通って、制御回路110の引きずり評価回路140に伝送される。引きずり評価回路140は、ひずみゲージ130から電気信号を受信するよう構成および適合されており、その電気信号をプリセット値(preset value)または既知の値に対して評価または比較することが想定される。引きずり評価回路140は次いで、評価信号を、制御回路110のフィードバック訂正回路(feedback correction circuit)142に伝送し、次いで、フィードバック制御信号が、電気外科用発生器118のRFエネルギー出力回路144に伝送される。RFエネルギー出力回路144は、電気外科用発生器118に、ブレード116に供給される電源、電流、または電圧を変化するよう指示する。
【0036】
制御回路110の操作は、ここでは、図5を参照して詳細に記載されている。電気外科用ペンシル100および電気外科用発生器118は、ブレード116のひずみゲージ130が初期引きずり値ゼロを生じるようキャリブレートされるように初期化される。次いで、外科医は、所望の「引きずり値」を電気外科用ペンシルに設定し、起動スイッチ124を押し込むことによって電気外科用ペンシル100を起動し、エネルギー(すなわち、電流、電圧等)をブレード116に流す。次いで、外科医は、ブレード116を標的外科部位(すなわち、身体組織、皮膚、器官等)に接触させることによって(その時に、ブレード116は、検知される引きずりに起因して移動し始める)、電気外科的手順を実行する。次いで、引きずりに起因する移動により、ひずみゲージ130は、引きずり信号を発生させ、この信号は、電気外科用発生器118の制御回路110に伝送する。制御回路110の引きずり評価回路142は、測定された引きずり信号を受信し、予め設定された(プリセット)「引きずり値」に対して測定された引きずり信号を評価または比較する。
【0037】
測定された引きずり信号が予め設定された(プリセット)「引きずり値」を超える場合、引きずり評価回路142は、フィードバック訂正回路144に信号を伝送し、次いで、電気外科用発生器118に、ブレード116へのエネルギー出力を増加させるよう指示する。さらに、フィードバック訂正回路144は、その「引きずり値」を、それより高い測定された引きずり信号の値に再設定する。測定された引きずり信号が予め設定された(プリセット)「引きずり」値を超えない場合、引きずり評価回路142は、測定された引きずり信号が予め設定された(プリセット)「引きずり値」より低いかどうかを見るよう評価する。測定された引きずり信号が予め設定された(プリセット)「引きずり値」よりも低い場合、引きずり評価回路142は、フィードバック訂正回路144に信号を伝送し、次いで、電気外科用発生器188に、ブレード116へのエネルギー出力を減少させるよう指示する。さらに、フィードバック訂正回路144は、「引きずり値」を、それより低い測定された引きずり信号の値に減少させる。測定された引きずり信号が、予め設定された(プリセット)「引きずり値」を下回らない場合、評価プロセスは、最初から繰り返される。
【0038】
この評価プロセスは、電気外科用ペンシル100が起動されている限り、継続的に進行される。好ましくは、評価プロセスは、100回/秒の割合で生じる。この様式において、ブレード116に送達される電力は、標的部位に最小限の外傷しか与えないように、定期的にモニタリングされ、調節される。評価率は、必要に応じて調節され得ることが想定される。例えば、より高い割合の評価が、より繊細な標的外科部位について所望されるが、減少された割合の評価が、より硬い標的部位について所望得ることが企図される。
【0039】
制御回路110には、カットオフ制御回路(示さず)が提供され得ることが想定される。カットオフ制御回路は、電気外科用ペンシル100が、標的外科部位に危険量のエネルギーを伝送することを防止するため、ブレード116に送達される電力が、閾値を超えるのを防止する。
【0040】
本発明は、好ましい実施形態を参照して詳細に示され、記載されているが、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、形式および詳細において前述のおよびその他の変更がなされ得ることが当業者に理解されるはずである。例えば、上述のように、本発明は、電気外科用ペンシルに関連して使用されるように記載されているが、本発明は、任意の電気焼灼デバイスと共に使用され得ることが企図されている。従って、上記の説明は、限定として解釈されるべきでなく、好ましい実施形態の例示にすぎないと解釈されるべきである。当業者は、本発明の範囲および意図の中で、他の改変を想起し得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の電気外科用ペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−240821(P2009−240821A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174830(P2009−174830)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【分割の表示】特願2004−524694(P2004−524694)の分割
【原出願日】平成15年7月23日(2003.7.23)
【出願人】(300044528)コヴィディエン アクチェンゲゼルシャフト (87)
【Fターム(参考)】