説明

引き戸用引手

【課題】 健常者はもちろんのこと、高齢者、身障者、幼児でも容易に引き戸を開け閉めできる引き戸の引手を提供すること。
【解決手段】引き戸Dの引手本体10内に、下部側を支軸20として外側に転倒可能な握り部2を取り付けてある。握り部2は、略直立姿勢にある引手本体10内の収容状態と、略水平姿勢にある引手本体10からの突出状態の範囲で、支軸を介して揺動する。引手本体10から突出する握り部2の長さは、70mm〜100mmとしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば襖、障子等の引き戸の引手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の襖や障子等の引き戸の引手は、引き戸に設けた開口部に、表面側と裏面側から背中合わせ状に嵌合用凹み板を嵌め込むようにして構成されており、引き戸の開け閉めは前記嵌合用凹み板に複数本の手指を引っ掛ける態様で行なわれる。
【0003】
しかしながら、上記引手の構造では、高齢者、身障者、幼児等(以下、高齢者等という)のような指力が弱いような人にとっては、引き戸の開け閉めが非常に負担になるような場合があった。
【0004】
ところで、上記問題を解決するための引手としては、例えば特許文献1に開示されている。この引手は基本的には、表面側から裏面側まで貫通している部分を設け、前記貫通部により指がかかる長さを大きくしている。
【0005】
しかしながら、このように改良された引手であっても、指力により引き戸を開け閉めすることには変わりないので、健常者はともかく高齢者や身障者にとっては負担になることには相違しないと考えられる。
【特許文献1】特開2002―266527号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこでこの発明は、健常者はもちろんのこと、高齢者、身障者、幼児でも容易に引き戸を開け閉めできる引き戸の引手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1記載の発明)
この発明の引き戸の引手は、引き戸の引手本体内に、下部側を支軸として外側に転倒可能な握り部を取り付けてあることを特徴とする引き戸の引手。
(請求項2記載の発明)
この発明の引き戸の引手は、上記請求項1記載の発明に関し、略直立姿勢にある引手本体内収容状態と、略水平姿勢にある引手本体からの突出状態の範囲で、支軸を介して揺動するようにしてある。
(請求項3記載の発明)
この発明の引き戸の引手は、上記請求項2記載の発明に関し、引手本体から突出する握り部の長さは、70mm〜110mmとしてある。
【発明の効果】
【0008】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0009】
この発明の引き戸の引手は、健常者はもちろんのこと、高齢者、身障者、幼児でも容易に引き戸を開け閉めできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1はこの発明の実施例1の引き戸Dの引手1の外観斜視図、図2は前記引手1の断面図を示している。
【0012】
(この引き戸Dの引手1の基本的構成について)
この引き戸Dは、図1に示すように、引手本体1内に、下部側を支軸20として外側に転倒可能な握り部2を取り付けてあり、前記握り部2は略直立姿勢にある引手本体10内での収容状態(図1、図2のニ点鎖線の状態)と、略水平姿勢にある引手本体10からの突出状態(図1、図2の実線の状態)との間で、支軸20を介して揺動できるようにしてある。ここで、前記引手1から突出する握り部2の長さは、握り部2が前記略水平姿勢にあるときにおいて、85mm程度となるように設定してある。
【0013】
(引き戸Dの構成について)
この引き戸Dは襖であり、図2に示すように、当該引き戸Dに設けた開口部dに、表面側と裏面側から背中合わせ状に嵌合用凹み板11を嵌め込むようにして引手本体10を構成してある。
【0014】
ここで、上記引手本体10は、横寸法50mm×縦寸法110mm×深さ寸法15mmを有しており、その開放面側の回りには幅寸法10mmのフランジが形成されている。なお、上記引手本体10を構成する板材は2mm程度の鋼板である。
【0015】
(握り部2、支軸20、これらに関連する構成について)
握り部2は、基本的には円柱状のものであり、引手本体10の下部に設けられたブロック30,30相互間に架け渡されている支軸20を介して揺動自在となっている。ここで、この実施例では、握り部2は通常、引手本体10からある程度の力(高齢者等でも引き出せる力)で引き出せるようにしてあり、これにより水平状態になし得るようにしてある。また、前記握り部2が水平状態で止まるようにする手段としては、図1に示すように当該握り部2と引手本体10との当たりを採用している。
【0016】
また、上記握り部2、支軸20及びブロック30,30は全て鋼材としてあるが、このうち手が触れる握り部2については発泡ウレタン、合成樹脂、又は革材等を巻き付けるようにしてある。これにより握り部2において温かみ等を感じると共に人体への外傷発生等を回避できることができる。
【0017】
(この引き戸Dの引手1の優れた作用・効果について)
この引き戸Dは、以下の手順(1)(2)により開閉できる。
(1)握り部2を、指により引手本体10から引き出し(この操作については大きな指力は必要としない)、図1や図2の二点鎖線で示す略直立姿勢にある引手本体10内の収容状態から、同図の実線で示す略水平姿勢にある引手本体10からの突出状態にする。
(2)上記状態において握り部2を手で握り、前記握り部2を介して引き戸Dを押し出す等(その他引き出す)すれば、健常者等でも容易に引き戸を開け閉めできる。要するにこの引き戸Dでは従来の如き指力をほとんど必要とせず、握り部2を手で握り、引き戸の移動方向に力又は体重をかければよいのである。
(3)なお、健常者の場合は、握り部2を使用しないで、通常に引手1に指を掛けて引き戸Dを開閉すればよい。
【0018】
(類似する構成について)
図3に示したものは、上記実施例と基本的構造は同様であるが、一つのブロック30の中央部分に上方に開放するU字状の凹み部31を形成し、この凹み部31の左右構成壁に支軸20を掛け渡すようにしている。したがって、前記支軸20に取り付けられている円柱状の握り部2は、略水平姿勢状態において空間を開けることなく綺麗に凹み部31に納まることになる。また、図3に示したものでは、先端部を球状とし意匠的にするれたものとしてある。
【0019】
図4及び図5に示したものは、長方形状の枠体を握り部2としたものであり、支軸20を介して握り部2を略直立姿勢にある引手本体10内での収容状態(図4、図5のニ点鎖線の状態)と、略水平姿勢にある引手本体10からの突出状態(図4、図5の実線の状態)との間で、揺動できるようにしてある。したがって、この引手1では、枠体形状の握り部2を把手の如き握り込んで、引き戸Dを開閉操作すればよい。
【実施例2】
【0020】
図6はこの発明の実施例2の引き戸Dの引手1の外観斜視図、図7は前記引手1の断面図を示している。
【0021】
(この引き戸Dの引手Hの基本的構成について)
この引き戸Dは、基本的には実施例1と同様、図6や図7に示すように、引手本体10内に、下部側を支軸20として外側に転倒可能な握り部2を取り付けてあり、前記握り部2は略直立姿勢にある引手本体10内での収容状態(図6の実線の状態)と、略水平姿勢にある引手本体10からの突出状態(図7の実線の状態)との間で、支軸20を介して揺動できるようにしてある。
【0022】
ここで、この実施例2の引手1では、図6の実線に示すように、握り部2の下端近傍に軸方向に延びる長孔21を形成すると共に引手本体10の両側壁相互間に架設された支軸20を前記長孔21に挿入してあり、更に、引張りコイルバネ22により握り部2を下方に付勢している。この引張りコイルバネ22の付勢力による握り部2の降下時においては、図6の実線に示すように、長孔21の最上部構成壁と支軸20とが当接状態になると共に握り部2の下端部分が引手本体10の下壁に設けた孔23から貫通突出しており、握り部2は傾倒できないようになっている。なお、上記握り部2を図6の二点鎖線の位置まで引き上げた場合、握り部2の下端は孔23から抜け出た状態になり、このとき初めて握り部2は揺動可能となる。
【0023】
次に、この実施例2の引手1では、上記の如く握り部2を手で揺動させ図7の実線で示す如き略水平状態になったときに手を離すと、引手本体10の奥壁下方に設けた孔24に対して握り部2の下端部分は貫通突出し、再び握り部2は揺動不能となる。したがって、握り部2を手で持って引き戸Dを開閉する際において、安定した状態で開閉操作できることとなる。この引手1においても実施例1の(この引き戸Dの引手1の優れた作用・効果について)で述べた効果を奏することは勿論である。
【0024】
(その他)
上記実施例1、2は、この発明を襖に採用したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、引き戸であれば全て採用できる。
【0025】
上記実施例1、2において、引手本体10から突出する握り部2の長さは、70mm〜110mmとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施例1の引き戸の引手の外観斜視図。
【図2】前記引手1の断面図。
【図3】この発明の実施例1と類似する引き戸の引手の外観斜視図。
【図4】この発明の実施例1と類似する引き戸の引手の外観斜視図。
【図5】図4の引手1の断面図。
【図6】この発明の実施例2の引き戸の引手の外観斜視図。
【図7】図6の引手の断面図。
【符号の説明】
【0027】
D 引き戸
d 開口部
1 引手
10 引手本体
11 嵌合用凹み部
2 握り部
20 支軸
30 ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き戸の引手本体内に、下部側を支軸として外側に転倒可能な握り部を取り付けてあることを特徴とする引き戸の引手。
【請求項2】
握り部は、略直立姿勢にある引手本体内収容状態と、略水平姿勢にある引手本体からの突出状態の範囲で、支軸を介して揺動するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の引き戸の引手。
【請求項3】
引手本体から突出する握り部の長さは、70mm〜110mmとしてあることを特徴とする請求項2記載の引き戸の引手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−101339(P2008−101339A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282506(P2006−282506)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(394014249)有限会社▲今▼岡製作所 (5)