説明

引き違い戸

【課題】 簡易な構造で引戸のガラス板に遮熱又は遮視の機能を付加することができ、機能シートを取り付けた場合でも、引戸の開閉操作に支障をきたすことがなく、さらに軽量で且つ低コストの引き違い戸を提供すること。
【解決手段】 造営物の壁面に設けた窓開口部に、矩形状の戸枠2にガラス板3を嵌合してなる引戸1が引き違い状に設置された引き違い戸である。遮熱又は遮視の少なくとも一方の機能を有する機能シート4と、該機能シート4を戸枠2の厚み寸法範囲S内に納まるようにして該戸枠2に嵌め込まれたガラス板3表面に沿って着脱可能に取り付けるための取付手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き違い戸に関し、詳しくはガラス板に遮熱又は遮視の機能を付加するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に窓ガラスに遮熱や遮視機能を付与する商品としては、屋内空間の光や熱環境をコントロールするルーバーやブラインド等が広く普及しているが、風によりぱたついたり、見栄えが悪いといった問題がある。
【0003】
そこで、ブラインドフィルムとこれを巻き取るロール部とをペアガラスの中空層に収納して、該ロール部を駆動機構により外部から回転操作できるようにし、夏場にはブラインドフィルムをロール部から引き出して中空層全体を遮蔽することで太陽熱により室内の温度が上昇しないように保ち、冬場にはブラインドフィルムをロール部に巻き取って中空層全体を開放することで太陽熱により室内の温度が下降しないように保つようにしたペアガラス構造が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら前記特許文献1、2に示された従来例では、ペアガラスの厚さが厚くなり、重量的にも重くなり、このため、採光や換気のために開閉する際に重く感じるといった問題、さらには高コストを招くといった問題がある。
【0005】
他の従来例として、断熱シートでガラス板全面を覆うと共に、断熱シートの外周部を戸枠に吸盤等で取り付けたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、前記特許文献3に示された従来例では、断熱シートが戸枠の外側にはみ出すようにして取り付けられるため、仮りに引き違い戸に適用しようとした場合、戸枠からはみ出した断熱シートが引っ掛って開閉できなくなるため、引き違い戸には不適であった。
【特許文献1】特開平5−231077号公報
【特許文献2】特開平9−256753号公報
【特許文献3】特開2000−5047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、簡易な構造で引戸のガラス板に遮熱又は遮視の機能を付加することができ、しかも機能シートを取り付けた場合でも引戸の開閉操作に支障をきたすことがなく、そのうえ軽量で且つ低コストの引き違い戸を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明にあっては、造営物の壁面に設けた窓開口部に、矩形状の戸枠2にガラス板3を嵌合してなる引戸1が引き違い状に設置された引き違い戸において、遮熱又は遮視の少なくとも一方の機能を有する機能シート4と、該機能シート4を戸枠2の厚み寸法範囲S内に納まるようにして該戸枠2に嵌め込まれたガラス板3表面に沿って着脱可能に取り付けるための取付手段5とを具備することを特徴としている。
【0009】
このような構成とすることで、外部との遮断機能及び採光機能しか持たないガラス板3に、機能シート4により遮熱或いは遮視の機能を選択的に付加することができる。例えば遮熱機能の機能シート4を使用した場合は、夏場には室内への太陽熱の入射を阻止でき、冷房負荷を軽減できるようになり、一方、冬場にはガラス板3から取り外しすることで、太陽熱を室内に十分に採り込んで暖房負荷を軽減できるようになる。しかも、ガラス板3の構造を従来のブラインドフィルム内蔵型ガラスよりも薄く且つ軽量化、低コスト化できるうえに、機能シート4が戸枠2からはみ出すことがないため、引戸1の開閉操作をスムーズに行なえるものである。
【0010】
また、前記ガラス板3の外周縁が、戸枠2に形成されたガラス受溝6内に嵌入されるパッキン材5Bにて保持され、前記取付手段5は、機能シート4の四辺部にそれぞれ取り付けられる複数の止め具5Cと、ガラス板3の外周部側に取り付けられる複数の取付金具5Aとからなり、該取付金具5Aの一端側にパッキン材5Bとガラス板3表面との間隙Gに抜き差し可能に差し込まれる差込部7を設けると共に、他端側に機能シート4の止め具5Cが取り外し可能に掛け止めされる引掛部9を設けてなるのが好ましく、この場合、取付金具5Aの一端側の差込部7をパッキン材5Bとガラス板3表面との間隙Gに差し込み、取付金具5Aの他端側の引掛部9に機能シート4の止め具5Cを掛け止めするだけで、機能シート4をガラス板3表面に沿って工具なしで簡易に取り付け可能となり、また取り外しも簡易にできるので、夏場の取り付け作業、冬場の取り外し作業がいずれも簡単に行なえるようになり、また、差込部7がパッキン材5Bに密着して抜けにくくなるため、取付金具5Aが安定良く取り付けられる結果、機能シート4の取り付けの信頼性が高まり、長期間の使用、さらに強い雨風等にも十分に耐え得る構造となる。そのうえ戸枠2に嵌め込まれるガラス板3とパッキン材5Bとが機能シート4を取り付ける役割を兼用することになり、部材の合理化を図ることができる。
【0011】
また、前記機能シート4を可撓性材料で形成するのが好ましく、この場合、ガラス板3から機能シート4を取り外した場合に、この機能シート4を小さく折り畳んで仕舞っておくことができ、収納性が良好となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る引き違い戸は、外部との遮断機能及び採光機能しか持たないガラス板に、機能シートにより遮熱或いは遮視の機能を選択的に付加することができ、しかも、ガラス板の構造を従来のブラインドフィルム内蔵型ガラスよりも薄く且つ軽量化、低コスト化でき、そのうえ、機能シートが戸枠からはみ出すことがないため、引き違い戸に最適に使用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
本実施形態の引き違い戸は、図3に示すように、矩形状の戸枠2の内側にガラス板3を嵌合してなる左右一対の引戸1が造営物の壁面に設けた窓開口部に引き違い状態に設置されている。ここで、図3中の12a,12bは屋外側の引戸1の上端部11a及び下端部11bを往復移動自在に支持する屋外側の上下のガイドレール、14a,14bは屋内側の引戸1の上端部13a及び下端部13bを往復移動自在に支持する屋内側の上下のガイドレールであり、15´は網戸、16´は網戸レールである。
【0015】
なお、戸枠2は、例えばアルミ押出し成形品からなる枠材を矩形状に枠組みして構成されており、その内周全周に亘ってガラス受溝6が凹設されている。
【0016】
またガラス板3は本例ではペアガラス(複層ガラス)を用いているが、シングルガラスであってもよい。またガラス板3表面には透明或いは半透明の熱線反射用フィルムとか断熱フィルム等を貼着したものであってもよい。この種のガラス板仕様は、例えば特開2000−5047号公報などにより公知となっている技術を採用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0017】
前記ガラス板3の屋外側の表面には、図1(a)に示すように、機能シート4が取り付け可能となっている。機能シート4は、戸枠2の外側にはみ出さず且つガラス板3表面にぴったりと嵌め込むことができる矩形状サイズに形成されており、遮熱又は遮視の少なくとも一方の機能を備えている。ここで、遮熱機能とは太陽熱エネルギーを反射する機能であり、透明或いは半透明のいずれでもよい。透明或いは半透明の場合においては、シート自体に様々な色彩或いは模様を施すことにより、ステンドガラス調等、様々なディスプレイ効果を得ることが可能となる。また、機能シート4が不透明の場合においては、遮視機能が付加され、カーテンのように目隠しをする効果が得られる。
【0018】
さらに、前記機能シート4は、不使用時における収納性の観点から、可撓性を有する材料、例えば合成繊維、不織布等で形成するのが好ましいが、例えば合成樹脂製板等のような硬質材料で形成されてもよい。
【0019】
前記機能シート4は、取付手段5を用いてガラス板3表面に着脱可能に取り付けられる。本例では、図1(a)に示すように、機能シート4の四辺部に、それぞれ、所定間隔をあけて複数(本例では各辺ごとに2個)の止め具5Cが取り付けられている。一方、ガラス板3の外周縁は、戸枠2のガラス受溝6内に嵌入されるパッキン材5Bに嵌合保持されている。パッキン材5Bは断面略Ω字状に形成され、内面側に左右一対の奥側舌片15と左右一対の入口側舌片16とが突設されている。パッキン材5Bは例えば半硬質の樹脂材で形成されている。
【0020】
前記パッキン材5Bとガラス板3表面との間隙Gには取付金具5Aが取り付け可能とされる。この取付金具5Aは、図1(b)に示すように略Z字型に形成され、一端側にガラス板3とパッキン材5Bとの間隙Gに抜き差し可能に差し込まれる平板状の差込部7が設けられ、中央側には該差込部7からL形に立ち上がる立上部8が設けられ、他端側には立上部8の先端から差込部7と平行に且つ差込部7から遠ざかる方向に平板状の引掛部9が延設されている。引掛部9には機能シート4の止め具5Cが掛け止めされる引掛孔10が穿設されている。
【0021】
しかして、図2に示すように、ガラス板3とパッキン材5Bとの間隙Gに取付金具5Aの差込部7を差し込んだ状態で、ガラス板3表面側に突出した引掛部9の引掛孔10に機能シート4の止め具5Cを掛け止めすることにより、機能シート4をガラス板3側に取り付けることができる。これにより、単に外部との遮断及び採光の機能しか持たないガラス板3に、遮熱或いは遮視の機能を選択的に付加できるようになる。ここにおいて、例えば遮熱機能を有する機能シート4を取り付けることで、夏場には室内への太陽熱の入射を阻止でき、冷房負荷を軽減できるようになり、さらにこの機能シート4に遮視機能を付加すれば、カーテン効果も同時に得られるようになる。一方、冬場には機能シート4を撤去することで、太陽熱を室内に十分に採り込んで暖房負荷を軽減できるようになる。なお、冬場には、遮視機能のみを有する機能シートに交換することも可能である。
【0022】
また本例ではガラス板3表面に取付金具5Aを介して機能シート4を取着する構造であるため、従来のブラインドフィルム内蔵型ガラスよりも簡易な構造となり、しかも薄く且つ軽量化を図ることができる。
【0023】
また本例の取付金具5Aは、工具なしで着脱が簡単にできるものであり、しかも略Z字型に形成しているので、図2のように機能シート4の止め具5Cを引掛ける引掛部9がガラス板3表面から離れた位置に配置されるようになり、機能シート4の掛け止め作業が容易となる。しかも取付金具5Aの差込部7はガラス板3表面に密着できるように薄肉平板状に形成されているため、ガラス板3側に対して取付金具5Aが安定良く且つガラス板3表面を傷付けることなく取り付け可能となり、またガラス板3とパッキン材5Bとを利用して取付金具5Aを取り付けることができるので、取付金具5Aを取り付けるための専用の部品を用いる必要がなく、部材の合理化を図ることができる。さらに機能シート4は、戸枠2の内側にぴったりと嵌め込むことができる矩形状サイズに形成されているため、ガラス板3の外周部からの光漏れを防ぐことができる利点があり、そのうえ、取付金具5Aの引掛部9をガラス板3表面から離して配置することで、機能シート4とガラス板3表面との間に若干の通気流路が確保されることとなり、機能シート4とガラス板3表面との間での結露を防止する利点もある。
【0024】
また機能シート4は戸枠2の厚み寸法範囲S内に納められるので、機能シート4が戸枠2からはみ出すことがないため、引戸1の開閉操作に支障をきたすこともない。ちなみに、機能シート4を吸盤や磁石等の吸着具を用いてガラス板3表面に取着することも可能であるが、この場合、機能シート4を戸枠2の厚み寸法範囲S内に納めることが困難であるため、上記構成の略Z字形の取付金具5Aを用いて取り付けるのが好ましい。
【0025】
さらに前記取付金具5Aを略Z字型にすることで、取付金具5Aの引掛部9が間隙Gから引き抜かれにくい構造となる。つまり、図2のように立上部8によって差込部7と引掛部9とが段違いに位置しているため、止め具5Cが引掛部9を引っ張る力(図2の下向きの力)は、立上部8の下端を支点として差込部7がパッキン材5Bに押し付ける方向に付勢する回転力(図2の左向きの力)となり、取付金具5Aを故意に間隙Gから引き抜かない限り、取付金具5Aは容易に外れることがない。しかも図1(a)のように機能シート4の四辺部をそれぞれ複数の取付金具5Aに取り付けているので、機能シート4をテンション張り状態でがたつきなく取り付け可能となり、これにより、機能シート4の取り付けの信頼性が高められ、長期間の使用、さらに強い雨風等にも十分に耐えることができる利点もある。
【0026】
また、機能シート4を可撓性材料で形成した場合は、ガラス板3から取り外した機能シート4を小さく折り畳んで仕舞っておくことができ、収納性が良好になる利点もある。
【0027】
なお、前記機能シート4は、ガラス板3の屋外側の面ではなく、屋内側の面に取り付けてもよいものである。
【0028】
また、本発明の機能シート4を装着した引き違い戸は、特に温度差の激しい季節や地域等に有効であるうえに、一般住宅をはじめ、学校、病院、オフィスビル等の窓に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態であり、(a)は引戸と機能シートの分解斜視図、(b)は取付金具の斜視図である。
【図2】同上の機能シートを取付手段を用いてガラス板表面に取り付けた状態を説明する断面図である。
【図3】同上の引戸が引き違い状に設置された引き違い戸の一例を説明する側面断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 引戸
2 戸枠
3 ガラス板
4 機能シート
5 取付手段
5A 取付金具
5B パッキン材
5C 止め具
6 ガラス受溝
7 差込部
9 引掛部
S 戸枠の厚み寸法範囲
G 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造営物の壁面に設けた窓開口部に、矩形状の戸枠にガラス板を嵌合してなる引戸が引き違い状に設置された引き違い戸において、遮熱又は遮視の少なくとも一方の機能を有する機能シートと、該機能シートを戸枠の厚み寸法範囲内に納まるようにして該戸枠に嵌め込まれたガラス板表面に沿って着脱可能に取り付けるための取付手段とを具備することを特徴とする引き違い戸。
【請求項2】
前記ガラス板の外周縁が、戸枠に形成されたガラス受溝内に嵌入されるパッキン材にて保持され、前記取付手段は、機能シートの四辺部にそれぞれ取り付けられる複数の止め具と、ガラス板の外周部側に取り付けられる複数の取付金具とからなり、該取付金具の一端側にパッキン材とガラス板表面との間隙に抜き差し可能に差し込まれる差込部を設けると共に、他端側に機能シートの止め具が取り外し可能に掛け止めされる引掛部を設けてなることを特徴とする請求項1記載の引き違い戸。
【請求項3】
前記機能シートを可撓性材料で形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の引き違い戸。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−56634(P2007−56634A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246657(P2005−246657)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】