説明

引戸の取手

【課題】 ワンタッチで引戸に簡単に取付け、しかも必要に応じて容易に取外すことができる。
【解決手段】 取手本体14の下側を引戸Bに固定する下部止め具16を、一端フリー状態で本体下側壁13bに取付けられるアーム19と、このアーム19と交差して結合した係止部材20とで構成する。係止部材20には、取手取付穴18の下面18bに係止する引戸側係止部22と、本体下側壁13bの窓穴17に係止する本体側両係止部23を設け、必要に応じて、本体側係止部23の係止状態を外部からの操作で解除することにより、係止部材20全体を回動させて固定力を解き、取手を取外すことができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は引戸の取手取付穴に嵌め込まれてワンタッチで取付けられる取手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引戸に用いられる公知のワンタッチ式の取手とその取付構造を図7,8に示す。
【0003】
この取手は、奥壁1の周囲にフランジ2付きの側壁3が設けられて断面凹状に形成された取手本体4と、この取手本体4の側壁上下両側の外面にスポット溶接等によって取付けられた止め具5とによって構成される。
【0004】
止め具5には舌片状の突起5aが切り起こし形成され、取手本体4が引戸Aの取手取付穴6に嵌め込まれた状態で、突起5aが取手取付穴6の周面上下両側(上、下面)6a,6bに食い込み係止することにより、取手本体4が引戸Aにワンタッチで取付けられる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−108750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記公知の取手によると、一旦取付後は、止め具5(突起5a)により取手全体が抜け止めされて取外し困難となるため、木製の引戸Aと金属製の取手を分別廃棄する場合の障害となっていた。
【0006】
また、引戸Aのクロス張替え時や取手の交換時等、取手を取外したい場合があるが、この要請にも応えられなかった。
【0007】
そこで本発明は、引戸にワンタッチで簡単にかつ強固に取付けることができ、しかも必要に応じて容易に取外すことができる引戸の取手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、次の構成を具備するものである。
【0009】
(A) 奥壁の周囲に側壁を有する断面凹状に形成された取手本体と、この取手本体の側壁外面に取付けられた止め具とを有すること。
【0010】
(B) 上記止め具が取付けられた取手本体の側壁に窓穴が設けられていること。
【0011】
(C) 上記止め具は、一端側が固定、他端側がフリーの状態で取手本体の側壁に設けられたバネ性を有するアームと、このアームのフリー側の端部にアームと交差して設けられた係止部材とから成ること。
【0012】
(D) この係止部材には、取手取付穴の周面に向かう引戸側係止部と、取手本体の側壁に向かう本体側係止部とが設けられていること。
【0013】
(E) 取手本体が引戸の取手取付穴に嵌め込まれた状態で、上記引戸側係止部が上記取手取付穴の周面に係止し、上記本体側係止部が上記窓穴に係止することによって取手本体が引戸に固定されるように構成されていること。
【0014】
(F) 上記窓穴に対する本体側係止部の係止状態が外部からの操作によって解除されることにより、上記係止部材がアームとの交差部分を支点に回動して上記取手取付穴の周面に対する引戸側係止部の係止状態が解除され、取手本体の固定力が解かれるように構成されていること。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、取手本体の側壁が奥壁に向かって先すぼまりに傾斜し、係止部材は、窓穴に対する本体側係止部の係止状態が解除された状態でこの側壁の傾斜に沿って回動するように構成されたものである。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、止め具のアームと係止部材とが別体に形成され、係止部材の中間部に係合部が設けられる一方、アームのフリー側端部に係合穴が設けられ、上記係合部がこの係合穴に係合することにより、この係合部を介して係止部材とアームとの間で力の伝達が行われるように構成されたものである。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、係止部材の本体側係止部に凸部が設けられ、本体側係止部は、この凸部のみが窓穴に嵌まり込む状態で本体側壁に係止するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、取手本体を引戸の取手取付穴に嵌め込んだ状態で、止め具における係止部材の引戸側係止部(前記した公知の取手の突起に相当する)が取手取付穴の周面に係止し、この係止力によって取手全体が固定される。
【0019】
すなわち、取手をワンタッチで簡単にかつ強固に取付けることができる。
【0020】
そして、取手を取外したいときは、本体側壁の窓穴に対する本体側係止部の係止状態を外部からの操作によって解除する。こうすると、係止部材がアームとの交差部分を支点に回動し、これによって取手取付穴の周面に対する引戸側係止部の係止状態も解除され、取手の固定力が解かれるため、取手を引戸から容易に取外すことができる。
【0021】
この場合、請求項2の発明によると、取手本体の側壁が奥壁に向かって先すぼまりに傾斜し、係止部材は、窓穴に対する本体側係止部の係止状態が解除されたときにこの側壁の傾斜に沿って回動するため、取手の固定力解除作用がスムーズにかつ確実に行われる。
【0022】
ところで、止め具のアームと係止部材を一体に形成した場合でも、アームの弾性変形作用を利用して上記固定力解除作用を得ることは可能である。
【0023】
ただし、請求項3の発明のように、止め具のアームと係止部材を別体とし、これらを互いの係合部と係合穴で係合させて止め具を構成すると、係止部材がアームとの交差部分を支点にスムーズに回動するため、固定力解除作用が無理なく確実に働く。
【0024】
また、請求項4の発明によると、係止部材の本体側係止部は、凸部のみが窓穴に嵌まり込む状態で本体側壁に係止するため、この係止部分の解除操作がより簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態を図1〜図6によって説明する。
【0026】
この実施形態にかかる取手は、奥壁11の周囲にフランジ12付きの側壁13が設けられて断面凹形状に形成された取手本体14と、この取手本体14の側壁上下両側(以下、本体上側壁、本体下側壁という)13a,13bの外面に取付けられた上部、下部両止め具15,16とによって構成される。
【0027】
本体上側壁13a及び同下側壁13bは、図示のように奥側に向かって先すぼまりとなる傾斜壁として形成され、このうち下部止め具16が設けられた本体下側壁13bの中間奥側の位置に四角形の窓穴17が設けられている。
【0028】
上部止め具15は、公知の取手の止め具5と同様に、舌片状に切り起こし形成された突起15aを備え、図2に示すように取手本体14が引戸Bの取手取付穴18に嵌め込まれた状態で、この突起15aが取手取付穴18の周面上側18a(以下、これを穴上面といい、周面下側18bを穴下面という)に食い込み係止する。
【0029】
一方、下部止め具16は、バネ鋼板等から成るバネ性を備えた板状のアーム19と、係止部材20とによって構成される。これらの詳細を図3〜図6に示す。
【0030】
アーム19は、後端側(取手本体14の奥側。これと反対側を前側という)がフリーの状態で、前端部が本体下側壁13bの外面にスポット溶接等によって取付けられる。
【0031】
このアーム19には、フリー側端部に平面視で凹形状の係合穴21(図5,6参照)が設けられている。
【0032】
係止部材20は、一端側に、穴下面18bに向う矢尻状の引戸側係止部22、他端側に、取手本体14の下側壁13bに向かう本体側係止部23をそれぞれ備えている。
【0033】
本体側係止部23は係合穴21の上面側に係止するように係合穴21よりも幅広に形成され、この本体側係止部23と引戸側係止部22との間に頸状にくびれた係合部24が形成されている。
【0034】
また、本体側係止部23の前端側の片面に凸部25が設けられている。
【0035】
この係止部材20とアーム19は、互いの係合部24と係合穴21が係合する状態で交差して結合され、上記係合部分を介してアーム19から本体側係止部23へ、またはその逆に力の伝達が行われる状態となる。
【0036】
この結合状態で、係止部材20は、図3,4に示すように後倒れの傾斜状態でアーム19に保持され、この状態で本体側係止部23が本体下側壁13bの窓穴17に裏側から係止される。
【0037】
この場合、本体側係止部23そのものは窓穴25よりも幅広に形成されているため、凸部25のみが窓穴17内に嵌まりこみ、本体側係止部23の本体部分は窓穴17の開口縁部に裏側突き当てられた状態となる。
【0038】
なお、実際の組立手順としては、アーム19と係止部材20を結合した後、アーム19の前端部を本体下側壁13bにスポット溶接等によって取付け、この後、本体側係止部23を窓穴17に係止させることとなる。
【0039】
この状態で、窓穴開口縁部に対する本体側係止部23の突き当て反力がアーム19に互いの係合部分を介して伝達されることにより、アーム19に図3,4中の矢印イで示すバネ力(復元力)が働く。
【0040】
こうして組立てられた取手を引戸Bの取手取付穴18に押し込むと、上部止め具15の突起15aが穴上面18aに食い込み係止することにより、取手本体14の上側が引戸Bに固定される。
【0041】
一方、取手下側(下部止め具16)においては、係止部材20の引戸側係止部22が穴下面18bに食い込み係止して固定力を発揮する。
【0042】
このときの係止反力は窓穴17に他する本体側係止部23の係止部分(本体下側壁13b)で受け止められ、これにより取手下側が引戸Bに固定される。
【0043】
すなわち、取手を引戸Bに対し、上下両側で強固に固定された状態でワンタッチで簡単に取付けることができる。
【0044】
ここで、下部止め具16における係止部材20の本体側係止部23は、凸部25のみが窓穴17に嵌まり込んだ状態で窓穴17の開口縁部に係止しているため、この係止状態を外部からの操作によって解除することが可能である。
【0045】
そこで、取手を取外したいときは、図4に示すように、外部からドライバー等の工具Tで凸部25を窓穴17から押し出すように操作して本体側係止部23の係止状態を解除する。
【0046】
こうすると、図3,4の矢印イで示すアーム19の回動力により、係止部材20が奥側に逃げながら中間点を支点として矢印ロ方向に回動する。
【0047】
この場合、本体下側壁13bは奥すぼまりに傾斜していることから、本体側係止部23がこの本体下側壁13bの傾斜面に沿って奥側に自然に移動するため、係止部材20が無理なくスムーズに回動する。
【0048】
この係止部材20の運動により、穴下面18bに対する引戸側係止部22の係止力、つまり、下部止め具16による取手固定力が解除されるため、この状態で取手下側を図4の二重線矢印ハで示すように前側に引き出すことができる。
【0049】
これにより、上部止め具15による固定力も解かれるため、取手全体を引戸Bから簡単に取外すことができる。
【0050】
このため、木製の引戸Aと金属製の取手を分別廃棄することが可能となる。また、引戸Bのクロス張替え時の取手の着脱が可能となるとともに、引戸Bを取り替える場合の取手の再利用、それに取手の取替えも可能となる。
【0051】
他の実施形態
(1) 上記実施形態では、係止部材20を後倒れの傾斜姿勢でアーム19に取付けるようにしたが、係止部材20を垂直またはやや前倒れ姿勢でアーム19に取付けてもよい。この構成によっても、係止部材20を外部からの操作で後倒れ方向に押すことにより同部材20を回動させ、固定力を解除することが可能となる。この場合、係止部材20にもバネ性を持たせるのが望ましい。
【0052】
ただし、上記実施形態のように係止部材20を当初から後倒れに傾斜させておけば、本体側係止部23の凸部25を窓穴17から押し出すだけで係止部材20が本体下側壁13bに沿って自動的に回動して固定力が解除されるため、操作が簡単となる。
【0053】
(2) 上記実施形態では、アーム19と係止部材20を別体とし、これらを結合して下部止め具16を構成したが、アーム19と係止部材20を一体に成形してもよい。この場合、一体物全体として十分なバネ性を持たせておけば上記実施形態の場合とほぼ同じ作用効果を得ることができる。
【0054】
(3) 上記実施形態では、本体上側壁13a及び下側壁13bを奥すぼまりに傾斜させたが、この両側壁13a,13bと穴上面18a及び下面18bとの間に止め具取付用の一定の隙間が形成されることを条件として、両側壁13a,13bを水平に形成してもよい。
【0055】
ただし、下部止め具16については、取手取外し時に係止部材20を固定解除方向にスムーズに回動させる上で本体下側壁13bを傾斜させるのが望ましい。
【0056】
(4) 上記実施形態とは逆に、下部止め具16を取手上側に、上部止め具15を下側に配置してもよい。あるいは、上下両側に上記実施形態の下部止め具16を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態にかかる取手の斜視図である。
【図2】同取手を引戸に取付けた状態の一部拡大断面図である。
【図3】図2のさらに一部を拡大した図である。
【図4】図3の状態から固定力を解除した状態の図である。
【図5】同取手に設けられる止め具の分解斜視図である。
【図6】同止め具の組立斜視図である。
【図7】公知の取手の斜視図である。
【図8】同取手を引戸に取付けた状態の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0058】
11 奥壁
13 側壁
13a 側壁上側(上側壁)
13b 側壁下側(下側壁)
14 取手本体
16 止め具
17 本体下側壁の窓穴
B 引戸
18 引戸の取手取付穴
19 止め具のアーム
21 アームの係合穴
20 アームの係止部材
22 係止部材の引戸側係止部
23 同、本体側係止部
24 同、係合部
25 本体側係止部の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成を具備することを特徴とする引戸の取手。
(A) 奥壁の周囲に側壁を有する断面凹状に形成された取手本体と、この取手本体の側壁外面に取付けられた止め具とを有すること。
(B) 上記止め具が取付けられた取手本体の側壁に窓穴が設けられていること。
(C) 上記止め具は、一端側が固定、他端側がフリーの状態で取手本体の側壁に設けられたバネ性を有するアームと、このアームのフリー側の端部にアームと交差して設けられた係止部材とから成ること。
(D) この係止部材には、取手取付穴の周面に向かう引戸側係止部と、取手本体の側壁に向かう本体側係止部とが設けられていること。
(E) 取手本体が引戸の取手取付穴に嵌め込まれた状態で、上記引戸側係止部が上記取手取付穴の周面に係止し、上記本体側係止部が上記窓穴に係止することによって取手本体が引戸に固定されるように構成されていること。
(F) 上記窓穴に対する本体側係止部の係止状態が外部からの操作によって解除されることにより、上記係止部材がアームとの交差部分を支点に回動して上記取手取付穴の周面に対する引戸側係止部の係止状態が解除され、取手本体の固定力が解かれるように構成されていること。
【請求項2】
請求項1記載の引戸の取手において、取手本体の側壁が奥壁に向かって先すぼまりに傾斜し、係止部材は、窓穴に対する本体側係止部の係止状態が解除された状態でこの側壁の傾斜に沿って回動するように構成されたことを特徴とする引戸の取手。
【請求項3】
請求項1または2記載の引戸の取手において、止め具のアームと係止部材とが別体に形成され、係止部材の中間部に係合部が設けられる一方、アームのフリー側端部に係合穴が設けられ、上記係合部がこの係合穴に係合することにより、この係合部を介して係止部材とアームとの間で力の伝達が行われるように構成されたことを特徴とする引戸の取手。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の引戸の取手において、係止部材の本体側係止部に凸部が設けられ、本体側係止部は、この凸部のみが窓穴に嵌まり込む状態で本体側壁に係止するように構成されたことを特徴とする引戸の取手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−214170(P2006−214170A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28071(P2005−28071)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000145895)株式会社小林製作所 (21)