説明

引戸

【課題】引手から手を離さずに引戸の開閉を行うことのできる引戸の提供。
【解決手段】コ字形に形成される装着枠9の上下の枠部7,8間に縦方向に渡る握り部10と、該握り部10と前記装着枠9の縦枠部6との間に内外に向けて開放する内外の指掛け凹部11とを備える引手構造体4を戸本体2の当り竪框5の高さの途中に切欠き形成する装着凹部3に嵌合し固着する。そして、引手構造体4の前記握り部10と前記当り竪框5の当り面との間に前記握り部10を把持する掌の差し入れを許す内外に抜ける手抜き空間33を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸に関する。更に言えば、引戸の引手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、襖や障子等、部屋や建物等の出入口に設けられる引戸には、その内外の面の所定位置に、引戸を開閉するための引手がそれぞれ取り付けられている。一般に、引手は、指が掛けられる指掛け凹部と該指掛け凹部を引戸の所定位置に固定するための取り付け鍔部とを有し、それらが一体成形されて、引戸の所定位置に穿孔される取り付け凹部に嵌め込み取り付けるようにしてある。
【0003】
通常、引手を利用して引戸を開閉する場合、開放側に立つ人はまず面前の引手に指を掛け、引戸を敷居の方向にスライドさせ開放したのち引手から手を離し、次に通り抜けた後、閉塞側にまわって反対側の引手に指を掛け、引戸をスライドさせて閉鎖することになる。
この様に、引戸を開閉操作する場合は、開放側の引手で開放し、閉めるときには反対側の引手を引いて閉塞するのが普通で、この開放する操作と閉塞する操作は、引手を持ち替えて行うことになる。
従来から引手については数多の提案があり、実用化されているが、引戸に取り付ける引手の例を挙げれば、例えば下記特許文献のものがある。
【0004】
【特許文献1】特開平10−280741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献記載の引手は、引戸に引手が取り付けられた後に引戸の厚みが薄くなった場合に引手相互の間隔を狭めることのできる引手に関するものであるが、実際の使用にあたっては従来の一般的な引手と同様に、前述した如く開放側の引手の位置を確認して指を掛けて引戸を開けた後、いったん指を引手から外すことになり、閉めるときには閉塞側に回り込んで、反対側の引手の位置を確認し、次にこの引手に指を掛けて引戸を閉めることになる。このように、引戸を開閉するにあたっては、引手の位置の確認と指を掛ける行為を2度ずつ行わなければならないことには変わりがない。
【0006】
このように開閉操作において二度手間になることに鑑み本発明はなされたものであり、その目的とするところは、引手の位置の確認と指を掛ける動作を1度で済ませ、引戸を開ける動作と閉める動作を片手で連続した一連の動作として行えるようにした引戸の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、コ字形に形成される装着枠の上下の枠部間に縦方向に渡る握り部と、該握り部と前記装着枠の縦枠部との間に内外に向けて開放する内外の指掛け凹部とを備える引手構造体を戸本体の当り竪框の高さの途中に切欠き形成する装着凹部に嵌合し固着すると共に、前記引手構造体の前記握り部と前記当り竪框の当り面との間に前記握り部を把持する掌の差し入れを許す手抜きの空間を設けてなることを特徴とした引戸を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、手抜きの空間には不使用時に該手抜きの空間を閉塞し、使用時には開放して掌の差し入れを許す開閉自由な扉を備えてなることを特徴とした引戸を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、扉は、常にはばねによって閉塞姿勢に付勢されることを特徴とした引戸を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、扉は、肉薄の回動板片であることを特徴とした引戸を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、扉は、ゴム、合成ゴム等の弾性素材製の帯状片からなることを特徴とした引戸を提供するものである。
【0012】
上記本発明の引戸を開閉して例えば部屋の内側から外側に出るには、まず、内側から手抜きの空間に手を通して握り部に手を掛けることになる。このとき自動的に指先が引戸の外側の指掛け凹部に臨むことになる。この手を掛けた状態のまま引戸をスライドさせ、開放させることになり、使用者は開けながら開放空間を通り抜けて引戸の外側に移動することになる。このとき、握っていた手のひらは握り部の周りを回って指先が指掛け凹部にそのまま入り込むことになることから、次にこの凹部に掛けられた指に力を入れて引戸を逆方向にスライドさせれば、引戸をそのまま閉じることができることになる。つまり、この間、引戸の開閉は片手で行われると共に、手は握り部に添えたままの一連の動作で行われることになる。
【0013】
また、手抜きの空間に対して扉が取り付けられている場合には、この扉が常時は空間を閉じた状態にあることによって、開放操作の際にはまず握り部を握る手によって押しのけられ、空間を開放した状態にして握り部に手を掛け、前述した操作が行われることになる。
そして、このとき、上記扉は握り部を握る手によって押しのけられながら握り部と一緒に握られることになり、引戸を閉じた後、指から解放されることになる。そして更にこのとき扉が、ばねによって付勢され、または弾性素材によって形成されている場合は、握りから解放されたとき復元力によって閉塞位置に自動復帰することになる。
【発明の効果】
【0014】
したがって、上記説明から、本発明の引戸によれば、握り部と当り竪框の当り面、言い換えれば装着凹部の開口部との間に掌の差し入れを許す手抜きの空間が形成されていることにより、引戸を開き、引戸の内側から外側へ通り抜け、引戸を閉めるまでの作業の間、掌を握り部から外すことなく行うことができることから、引手の位置の確認と手指を掛ける動作を1度で済ませることができ、従って引戸を開ける動作と閉める動作を片手による連続した一連の動作として行えることができるため、引戸の開閉操作を円滑に、且つ迅速に行うことができる。
【0015】
また、手抜きの空間を閉塞する扉を備えることによって、手抜きの空間を通して空気の出入りを防止すると共に、引戸の外側から内側が覗かれることを防止することができる。さらに、扉は使用時には簡単に開放されるため、握り部を握るときには邪魔にならず、しっかりと握り部を握ることができる。
そして、扉は、ばねによって閉塞姿勢に付勢される板片からなるものであったり、また弾性素材から構成されるため、戸の開閉操作後には自動的に閉塞位置に戻ることになり、手抜きの空間を閉塞することができる。
また、握り部をしっかり握って戸の開閉操作を行うことができるため、安全に開閉操作ができ指や爪を痛めることがなく、また引戸の滑りが悪く突然に停止するような場合があっても、しっかりと握り部を保持することができるのでバランスを崩して転倒するようなことを防ぐこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る引戸につきその実施の形態を実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明に係る引戸の斜視図、図2は引戸の要部となる引手構造体を引戸本体から外した状態の拡大斜視図、図3は引手構造体の拡大分解斜視図、図4は図2のA−A断面図、図5は図2のB−B断面図である。
【0018】
引戸1は、図1及び2に示すように、戸本体2に形成する装着凹部3に、別体に形成する引手構造体4を嵌め付け、一体に固着する構造に形成してある。
【0019】
前記戸本体2は、図示するように、本実施例では引き違いの引戸であり、図示しない敷居と鴨居によって支持され、これらの長さ方向に沿って自由に摺動するようになっている。
前記装着凹部3は、この戸本体2の当り竪框5の高さの途中に、室内外に連通するコ字形の凹部として切欠き形成される。なお、この装着凹部3は、本実施例においてはコ字形であるが、後述する引手構造体4の外形形状に合わせて一致するように形成することになる。
【0020】
前記引手構造体4は、図3〜5に示すように、縦枠部6の上下両端に上枠部7と下枠部8を並行に延設してコ字形に形成する装着枠9と、この装着枠9の上記上枠部7と下枠部8間に縦方向に渡る握り部10と、この握り部10と装着枠9の縦枠部6との間に位置する内外の指掛け凹部11,11とからなり、前記戸本体2の装着凹部5に装着枠9を嵌めつけることによって取り付けられる。
【0021】
装着枠9は、前記戸本体2の装着凹部3と形状を合わせてあり、装着凹部3に対して戸当り面5a側から嵌め込み、縦枠部6、上枠部7、下枠部8の各外側面の両縁部に立設する縁受け12,12にこの装着凹部3の切欠きの縁部を受け入れ、一体化した上で上下の枠部7,8に形成する孔13,13に内側からネジを通して揉み込むことによって固定される。
【0022】
縦枠部6には、指掛け凹部11,11を形成するための仕切り部14が中央部に長さ方向に沿って突出している。この仕切り部14は、戸板の厚み方向の中間部にあって、縦枠部6から戸当り方向に向かって突出し、肉薄とした先端部を握り部10の内側に当接して、この握り部10と協同して戸本体2の内と外に向かって開放する内外の指掛け凹部11,11を形成する。
【0023】
前記握り部10は、ここでは引戸1を開閉する際に使用者が把持するための握り部本体と、握り部本体の縦枠部6側に取り付けられるカバー15と、後述する扉16を開閉自由に支持する扉支持機構17を備えている。
握り部10は、戸当り方向に向かって半円状に膨出させてあり、内部に空洞部18を有している。そして、この握り部10の膨出部分の上端と下端に、周方向に沿って溝形の第1切欠き部19,19をそれぞれ設け、更にその各底部に連続させて同じく溝形の第2切欠き部20,20が設けてある。上記第1切欠き部19,19は、後述するバネ受筒21とバネ受筒22の旋回摺動を案内するためのものであり、第2切欠き部20,20は、後述する上下のアーム23,23の回動を案内するためのものである。
【0024】
握り部10の内部に設ける扉支持機構17は、空洞部18を上下方向に貫通する軸24と、軸24を握り部10の定位置に支持し、且つ上下の引張バネ25,25のそれぞれの一端を固定する断面略T字形の固定部材26と、扉16を動かすためにこの軸24の上端と下端に取り付けられるアーム23,23とからなる。
【0025】
上記固定部材26は、握り部10の内壁面27の高さ方向の中間部に取り付けられる。
また、上下のアーム23,23は、それぞれ後端に前記引張バネ25,25を掛け止めるための孔28を開設し、先端には筒型に形成され後述する扉16のバネ受筒22に対向させるバネ受筒21を形成している。そして、各アーム23,23の長さの中心付近には軸24の軸心に一致させてネジ孔29が開設してあり、上枠部7及び下枠部8に設けられる皿孔30,30を通して揉み込むネジ31によってこれら上枠部7及び下枠部8に回動自由に固定されるようになっている。
このアーム23は、引戸1を開閉するときに、扇形状の前記第二切欠き部20に添って回動し、アーム23の先端のバネ受筒21は、凸弧面形の前記第一切欠き部19に添って弧状を描いて摺動することになる。
【0026】
前記カバー15は、握り部10の開口する一面、つまり空洞部18を塞ぐために取り付けられる板状の部材であり、前記縦枠部6に向き合う面には前記仕切り部14の先端部を嵌合するための溝32が上下方向に刻設してある。
【0027】
引張バネ25,25は、アーム23の孔28にそれぞれ一端を係止し、他端を握り部10の空洞部18の内壁面27に取り付けた固定部材26に固定してこの間に張設され、これによってアーム23の前後の向きを上下枠部7,8の長さ方向に揃うように付勢してある。このため、扉16が上枠部7及び下枠部8の長さ方向から外れるように水平方向に回動されると、張力が高まることになり、この回動を解放すると自動的に原状、つまり上下の枠部7,8の長さ方向に揃う位置に復帰することになる。
【0028】
ところで、上述した握り部10と当り竪框5の戸当り面5a、更に言うと前記装着凹部3の開口部の位置との間には、握り部10を把持する掌の差し入れを許す手抜きの空間33が形成される。本実施例においては、引戸1の閉塞時にこの手抜きの空間33を塞ぐ前記扉16が握り部10に取り付くことになる。
【0029】
前記扉16は、薄肉の板状の部材であり、上端部と下端部には前記アーム23,23に形成したバネ受筒21,21に対向する同一形状のバネ受筒22,22が形成されている。
扉16の幅W(手抜きの空間33の幅よりやや狭い)は、掌を縦枠部6方向に向けた状態、つまり親指と小指を上下方向に向けたとき、この掌の肉厚を超える幅に形成される。従って、この扉16を受け入れる手抜きの空間33はこの扉16の幅より広い空間に形成されることになる。
【0030】
扉支持機構17のアーム23と扉16は、バネ受筒21の上端部からバネ受筒22の底部に埋設されるナット34に向けて貫通状に差し込まれる支軸となるネジ35によって回動自由に連結される。
そして、このバネ受筒21とバネ受筒22の内部には、扉16を常時戸当り方向に突き出すように付勢するバネ36,37が、前記ネジ35に巻装するようにして上下に収められ、中間のリング38を中心に上下対称的に取り付けられる。
また、ネジ35にはバネ受筒22の回動時にバネ36,37を必要以上に潰さないための管39が装着され、貫通させてある。
【0031】
図6及び図7は上記アーム23と扉16を連結する構造を拡大したもので、これにつき更に詳述することにする。尚、ここには上部における連結構造について示しているが、下部についても同一のものとなるので省略することにする。
アーム23に供えられるバネ受筒21と扉16のバネ受筒22の連結は、それぞれの筒内部にバネ36,37を収め、それぞれの端部を衝き合わせにするとき、両者間にリング38を介挿し、このリング38に各バネ36,37の一端を係合して両バネ同士を連結するようにする。そして、リング38の各面に突設する回り止めの爪40,41をバネ受筒21,22の端部に形成する回り止めの凹部42,43にそれぞれ滑合し、両バネ受筒21,22の衝き合わせを行う。
このとき、上記バネ36,37の他端はバネ受筒21,22の奥に係止させて勝手に回転するのを止めるようにする。
【0032】
そうした後、アーム23側のバネ受筒21の上端部から軸心に沿って貫通する孔44を通して前記管39をバネ受筒22に向けて差し入れ、次にこの管39にネジ35を通してバネ受筒22の奥に設けるナット34にネジ付けることでそれぞれの内部にバネ36,37を収めたバネ受筒21,22の連結がなされ、アーム23の先端に扉16が取り付くことになる。
【0033】
アーム23が上枠部7の長さ方向に沿って戸当り側に突き出る常態にあるとき、扉16も前記2つのバネ36,37の働きによってアーム23と同一方向の戸当り側に向けて突き出し、手抜きの空間33を閉ざすことになる。そして、引戸1の開放に当って手がこの手抜きの空間33に差し込まれ、外に向けて押出されたとき、扉16は図6に示したように矢印X方向に支軸となるネジ35を中心にして回動することになるが、このとき、この扉16の回動によってバネ受筒22が同一方向に回転し、凹部43の壁で爪41を送ってリング38を回転させることになるため、このリング38に一端を固定した上方のバネ36が絞られ圧縮されることになる。
【0034】
この扉16の矢印X方向への回動に際しては、前述したアーム23も軸24を支点にして回転し、外に向けて扉16を送り出すことになり、この状態において扉16がネジ35を支点に回動するため、この扉16は握り部10に巻きついた状態に畳まれ寄り添って握り部10を握る手の中に包み込まれることになる。
【0035】
この様にしてネジ35を支点に回動した扉16は、引戸の開閉操作の終了と共に握り部10から手が離れるのに伴って押し込みから開放されることから、前記圧縮したバネ36の復元力によって元の姿勢、つまり手抜きの空間33を閉じる戸当り側に突き出した状態に自動的に戻されることになる。
【0036】
上記の扉16の動作は逆に回動した場合、つまり図6の矢印Y方向に回動された場合も同じであり、握り部10から手が離れることに伴って内側に押し込まれた扉16が開放されたときには、閉塞姿勢に復元することになる。
このときには、バネ36にかわってバネ37が絞りこまれて圧縮され、反発力を高めることになり、手からの解放と共に復元力が働いて扉16を再び元の姿勢に帰すことになる。
【0037】
次に、上述した引手構造体4を有する引戸1を開閉する方法について図8及び9を参照して説明することにする。
引戸1を開ける場合には、まず、図8に示すように、引戸の内側(開けようとする人が立つ側)から手抜きの空間33に手を差し入れ、扉16を指先で押し開く。そして、図9に示すように扉16を共に握り部10を握る。このとき、手の指先は自動的に引戸1の外側の指掛け凹部11に臨むことになる。次に、握った状態のまま引戸1を開放方向(図の矢印方向)にスライドさせて開き、この動作に併せて使用者は引戸1の当り竪框5を回って外側に移動することになる。このとき、握っていた手のひらがそのまま握り部10の周りを回って指先が指掛け凹部11に入り込むことになることから、指を指掛け凹部11から外さずに引戸1を閉じる方向にスライドさせれば手を握り部10から外すことなく閉じることができる。そして、このとき引戸1を閉め切って戸と柱の当り部分との間に手抜きの空間33が確保されていることから、手を挟む心配がない。
なお、本実施例においては図の右方向に開く引戸を右手で開閉する場合について説明したが、左手で開閉してもよい。この場合は親指が戸の上方向に向くことになるが、扉16を指先で押し開きながら握り部10を握り、そして握った状態で引戸を開き、使用者は引き戸の外側に移動して、握った状態で引っ掛かっていた指を指掛け凹部11から外さずに引戸1を閉じる方向にスライドさせることに変わりはない。また図の左方向に開く引戸を開閉する場合にも右手でも左手でも同様の方法で開閉することができる。
【0038】
上述したように、本実施例による引戸1は、引戸1の開閉時において、引戸1を開いて引戸1の内側から外側へ通り抜けた後、引戸1を閉めるまでの作業を、指を握り部10から外すことなく行うことができるので、引戸1を開閉操作するとき、開ける操作と閉める操作を片手で連続して行うことができる。従って、迅速な開閉が行えると共に片手での操作ができるため、物を持って開閉するときに便利である。
また、扉16によって、開放状態におかれる手抜きの空間33に対して扉16を備えた場合、これを常時は閉塞しておけるため、手抜きの空間33を通して引戸1の外側から内側が覗かれたり、空気の吹き抜けを有効に防止することができる。尚、この扉16は開閉操作時には指先で押しながら握り部10と一緒に握ることができるため、握り部10を握るときには邪魔にならず、しかもしっかりと握り部10を握ることができるので安全に開閉操作できることになる。
そして、扉16は、引張バネ25,25、バネ36,37によって常時閉塞姿勢に付勢されることから、引戸1の開閉操作後に自動的に閉塞位置に戻すことができ、手抜きの空間33を閉塞しておくことができる。
尚、上述したように握り部10をしっかりと握って引戸1の開閉操作を行うことができるため、開閉操作が容易であると共に、引戸1と敷居との間の摺動状態が悪化し、急停止した場合でも、この握りによって体のバランスを保つことができることから転倒するのを有効に防ぐことができる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の実施例2について説明する。図10は本発明による実施例2の把手構造体の斜視図、図11は図10のC−C断面図、図12は引戸の開閉方法を示す図である。なお、図中の符号において、実施例1と同一の符号は同一の部所を示すものであり、重複説明を省略する。
【0040】
図12に示すように、握り部45は、前記握り部10と同様に戸当り方向に向かって半円状に膨出するように外形が形成され、装着枠9の上枠部7と下枠部8間に縦方向に渡るように取り付けられる。
そして、握り部40の縦枠部6に対面する面には仕切り部14の先端部を嵌合するための溝46が上下方向に刻設され、戸当り側の前記膨出面にはゴム等の弾性部材からなる帯板状の扉47の一端縁が差し込まれ、立ち上がり状に装着されている。
【0041】
前記実施例1と同様に、引戸1を開閉する際には、扉47を指先で押し開きながら握り部45を握る。このとき扉47は素材の弾性力によって握り部45に沿って撓むことになる。そして握った状態で引戸を開き、使用者は引き戸の外側に移動して、握った状態で引っ掛かっていた指を指掛け凹部11から外さずに引戸1を閉じる方向にスライドさせることになる。
【0042】
前記実施例1においては、引戸1の開閉後に、引張バネ25,25、バネ36,37の復元力によって扉16を閉塞姿勢に戻す場合について説明したが、本実施例においては、扉47の素材の弾性力によって閉塞姿勢に戻すことになる。
【0043】
このように、握り部本体45に弾性部材からなる扉47を植設した場合には、組立が容易となり、製造コストを削減することができる。
【0044】
なお、実施例1及び2では戸本体2とは別体に引手構造体4を設け、戸本体2に形成された装着凹部3に組み付けた例を示したが、これに限られず、直接戸本体2に引手構造を形成してもよく、この場合には装着枠9を省略することができる。
また、本実施例においては、バネや弾性素材の復元力によって扉を閉塞位置に付勢する例を示したが、これに限られず、例えばセンサー等を設けて指先が近づくと扉が上下や握り部に格納され、指先を離すと自動的に扉が閉塞位置に戻るように構成してもよい。
【0045】
また、本発明は、襖や障子その他、部屋の建物の出入り口に設けられる引戸のいずれのものに対しても有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1による引戸の斜視図。
【図2】引戸の要部となる引手構造体を引戸本体から外した状態の拡大斜視図。
【図3】引手構造体の拡大分解斜視図。
【図4】図2のA−A断面図。
【図5】図2のB−B断面図。
【図6】アームと扉の連結部分の拡大斜視図。
【図7】アームと扉の連結部分の拡大断面図。
【図8】開放方向に向かう扉の移動を示す要部の拡大横断面図。
【図9】開放時における扉の折り畳み状態を示す要部の拡大横断面図。
【図10】本発明の実施例2による引手構造体の拡大分解斜視図。
【図11】図10のC−C断面図。
【図12】開放時の扉の折り畳み状態を閉めす要部の横断面図。
【符号の説明】
【0047】
1 引戸
2 戸本体
3 装着凹部
4 引手構造体
5 当り竪框
5a 戸当り面
6 縦枠部
7 上枠部
8 下枠部
9 装着枠
10 握り部
11 指掛け凹部
12 縁受け
13,28,44 孔
14 仕切り部
15 カバー
16 扉
17 扉支持機構
18 空洞部
19 第一切欠き部
20 第二切欠き部
21,22 バネ受筒
23 アーム
24 軸
25 引張バネ
26 固定部材
27 内壁面
29 ネジ孔
30 皿孔
31,35 ネジ
32 溝
33 手抜きの空間
34 ナット
36,37 バネ
38 リング
39 管
40,41 爪
42,43 凹部
45 握り部
46 溝
47 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コ字形に形成される装着枠の上下の枠部間に縦方向に渡る握り部と、該握り部と前記装着枠の縦枠部との間に内外に向けて開放する内外の指掛け凹部とを備える引手構造体を戸本体の当り竪框の高さの途中に切欠き形成する装着凹部に嵌合し固着すると共に、前記引手構造体の前記握り部と前記当り竪框の当り面との間に前記握り部を把持する掌の差し入れを許す手抜きの空間を設けてなることを特徴とした引戸。
【請求項2】
手抜きの空間には不使用時に該手抜きの空間を閉塞し、使用時には開放して掌の差し入れを許す開閉自由な扉を備えてなることを特徴とした請求項1記載の引戸。
【請求項3】
扉は、常にはばねによって閉塞姿勢に付勢されることを特徴とした請求項2に記載の引戸。
【請求項4】
扉は、肉薄の回動板片であることを特徴とした請求項2または3に記載の引戸。
【請求項5】
扉は、ゴム、合成ゴム等の弾性素材製の帯状片からなることを特徴とした請求項2に記載の引戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−68189(P2009−68189A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235212(P2007−235212)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000169329)アトムリビンテック株式会社 (81)