説明

引手

【課題】薄肉厚の取付け対象に対する取付けにおいても指先の係りを充分に確保することができるようにした引手を提供することである。
【解決手段】引手取付け対象Bに形成された引手取付孔Hに嵌合される筒状の胴1の一端に底2を設け、かつ、胴1の他端に引手取付け対象Bの表面に衝合されて引手取付孔Hを覆うフランジ3を形成する。胴1はフランジ3の中心線を含む仮想平面の片側に配置される形成とする。引手取付け対象Bの表裏両面から引手取付孔H内に胴1を挿入する一対の引手の取付けの際に、胴1の軸方向長さが引手取付け対象の厚みの1/2以上の長さを有する場合に、一対の引手のそれぞれを、胴1が引手取付孔Hの中心軸を対称線として対称配置される組み込みとして、胴1の底2が干渉するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、襖や障子等に取付けられる引手に関する。
【背景技術】
【0002】
襖や障子等に取付けられる引手として、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。図7は、その特許文献1に記載された引手を示す。この引手Aは、底21を有する円筒部22の開口端に外向きのフランジ23を一体に設けたカバー20と、そのカバー20の円筒部22内に嵌合された底板24と、カバー20の開口端から円筒部22内に嵌合されて底板24を抜け止めし、その挿入方向の後端に外向きの化粧フランジ26を設けた円筒形の胴25からなり、上記胴25にカバー20の円筒部22を貫通するバーリング27を設けて、胴25とカバー20を一体化している。
【0003】
上記の構成からなる引手Aを襖等の引手取付け対象に取り付ける場合、図7に示すように、引手取付け対象Bに表裏に貫通する引手取付孔Hを形成し、上記引手取付け対象Bの表裏両面から引手取付孔H内に一対の引手Aを嵌合し、バーリング27に挿入する釘の打込みによって、一対の引手Aを固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−121934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、襖等の取付け対象においては、資材の有効利用や開閉操作性の向上を図る目的等から引手取付け対象の薄肉厚化が進められており、従来から一般に用いられてきた上記の引手Aの一対を引手取付け対象Bに取付けると、その一対の引手Aの底21が互いに当接して、カバー20のフランジ23と取付け対象Bの表面に隙間が生じ、体裁のよい取付け状態を得ることができず、また、引手取付け対象Bの引き違いの際に、カバー20のフランジ23が他方の引手取付け対象に当接して、他方の引手取付け対象を損傷させるという問題が発生する。
【0006】
その問題の解決には胴25の軸方向長さ(深さ)を短くすることが有効であるが、胴25の深さを短くすると、指先のかかりが浅くなり、操作性が悪くなるという問題が発生する。
【0007】
この発明の課題は、薄肉厚の引手取付け対象に対する取付けにおいても指先の係りを充分に確保することができるようにした引手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明においては、引手取付け対象に形成された引手取付孔に嵌合される筒状の胴の一端に底が設けられ、かつ、胴の他端に前記引手取付け対象の表面に衝合されて引手取付孔を覆うフランジが形成された引手において、前記フランジの中心線を含む仮想平面の片側に前記胴を設けた構成を採用したのである。
【0009】
上記の構成からなる引手を襖等の引手取付け対象に形成された引手取付孔に取り付ける場合は、引手取付け対象の表裏両面から引手取付孔内に一対の引手を挿入して、それぞれの引手を固定する。
【0010】
上記のような引手の取付けにおいて、一対の引手のそれぞれに形成された胴は、フランジの中心軸を含む仮想平面の片側に設けられているため、一対の引手のそれぞれは、胴が引手取付孔の中心軸を対称線として対称配置される組み込みとすることができる。
【0011】
このため、胴の軸方向長さが引手取付け対象の厚みの1/2を超えて、その厚み内に納まる長さを有するものであっても、胴の底が干渉するという不都合の発生はなく、フランジが引手取付け対象の表面に密着する体裁のよい取付け状態を得ることができる。また、胴の軸方向長さは、引手取付け対象の厚みの1/2を超えて、その厚み内に納まる長さとすることができるため、胴の内周面に対する指先のかかりを充分に確保することができる。
【0012】
ここで、筒状の胴は、半円形の筒体からなるものであってもよく、あるいは、四角形の筒体からなるものであってもよい。また、半楕円形の筒体からなるものであってもよい。
【0013】
この発明に係る引手において、胴の一端に底を一体に設けると、金属板のプレス成形により引手を形成することができるため、コストの安い引手を得ることができる。
【0014】
また、底を有する筒状のカバーを胴の外周面に嵌合一体化して、胴の一端に底を設けるようにすると、上記カバーの底面上に化粧用の座板を組込むことができるため、高級感のある引手を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、この発明に係る引手においては、フランジの中心軸を含む仮想平面の片側に胴を設けるようにしたので、引手取付け対象の表裏両面から引手取付孔内に胴を挿入する一対の引手の取付けの際に、胴の軸方向長さが引手取付け対象の厚みの1/2を超えて、その厚み内に納まる長さを有するものであっても、胴の底が干渉することのない組込み状態を得ることができ、フランジが引手取付け対象の表面に密着する体裁のよい取付け状態を得ることができる。
【0016】
また、胴の軸方向長さは、引手取付け対象の厚みの1/2を超えて、その厚み内に納まる長さとすることができるため、胴の内周面に対する指先のかかりを充分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係る引手の第1の実施の形態を示し、(a)は、引手の正面からの斜視図、(b)は、引手の背面からの斜視図
【図2】引手の取付け状態を示す横断平面図
【図3】引手の取付けの他の例を示す横断平面図
【図4】この発明に係る引手の第2の実施の形態を示し、(c)は、引手の斜視図、(d)は、(c)の横断平面図
【図5】この発明に係る引手の第3の実施の形態を示し、(e)は、引手の正面図、(f)は、(e)の横断平面図
【図6】この発明に係る引手の第4の実施の形態を示し、(g)は、横断平面図、(h)は、分解斜視図
【図7】従来の引手を示す横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1(a)および(b)は、この発明に係る引手の第1の実施の形態を示す。図示のように、この発明に係る引手Aは、筒状の胴1を有し、その胴1の一端には底2が一体に形成され、他端には外向きに円形のフランジ3が一体に設けられている。この引手Aは、金属板のプレス成形品であるが、合成樹脂の成形品であってもよい。
【0019】
胴1は、半円筒状とされ、その円弧状外周面の中心軸がフランジ3の中心軸に略一致している。このため、胴1はフランジ3の中心軸を含む垂直状の仮想平面の片側に位置する配置とされている。
【0020】
フランジ3の外周部は胴1の形成面側に向けての折曲げにより丸みがつけられている。
【0021】
第1の実施の形態で示す引手Aは上記の構造からなり、引手取付け対象への取付けに際しては、図2に示すように、引手取付け対象Bに、引手Aに形成された胴1が少しの余裕をもって嵌合可能な大きさの円形の引手取付孔Hを形成する。
【0022】
そして、引手Aの取付けに際しては、一対の引手Aのそれぞれの胴1を引手取付け対象Bの表裏から引手取付孔Hに嵌合して固定する。その固定には、釘止めする方法や接着する方法を採用することができる。釘止めによる固定に際しては、胴1にその内側から外側に向けて突き破り状の釘孔を形成しておくようにする。
【0023】
上記のような引手Aの取付けにおいて、引手取付け対象Bの厚みtが引手Aの軸方向長さLの2倍を超える長さ(t>2L)の場合、一対の引手Aの相互において胴1が前後で対向する組込みとしても、胴1の底2は干渉することはない。しかし、引手取付け対象Bの厚みtが引手Aの軸方向長さLの2倍未満(t<2L)であると、胴1の底2が互いに干渉して、フランジ3を引手取付け対象Bの表面に密着させることができなくなり、体裁のよい取付け状態を得ることができない。
【0024】
この場合、図2に示すように、一対の引手Aのそれぞれは、胴1が、引手取付孔Hの中心軸を対称線として対称配置される組み込みとする。このとき、一対の引手Aのそれぞれに形成された胴1は、フランジ3の中心軸を含む仮想平面の片側に位置する形成とされているため、底2が干渉するようなことはなく、フランジ3の外周部が引手取付け対象Bの表面に密着する体裁のよい取付けとすることができる。
【0025】
このように、引手Aのそれぞれに形成された胴1を、フランジ3の中心軸を含む仮想平面の片側に配置される形成とすることにより、一対の引手Aのそれぞれは、図2に示すように、胴1が引手取付孔Hの中心軸を対称線として対称配置される組み込みとすることができる。
【0026】
このため、胴1の軸方向長さLが引手取付け対象Bの厚みtの範囲内であってその厚みtの1/2を超える長さを有するものであっても、胴1の底2が干渉し合うという不都合の発生はなく、フランジ3が引手取付け対象Bの表面に密着する体裁のよい取付け状態を得ることができる。
【0027】
また、胴1の軸方向長さLは、引手取付け対象Bの厚みtの1/2を超えてその厚みtの範囲に納まる長さとすることができるため、胴1の内周面に対する指先のかかりを充分に確保することができる。
【0028】
図2では、引手取付孔Hに引手Aの胴1を挿入するようにしたが、図3に示すように、引手取付孔H内にリング部材4を嵌合して、接着による手段でそのリング部材4を固定し、そのリング部材4の内側に引手Aの胴1を嵌合し、接着による手段を介して胴1を固定するようにしてもよい。
【0029】
第1の実施の形態においては、胴1を半円形とし、フランジ3を円形としたが、胴1およびフランジ3の形状はこれに限定されるものではなく、図4および図5の形状を採ることができる。ここで、図4に示す第2の実施の形態では、胴1を角形とし、フランジ3を胴1の左右方向の幅寸法の2倍以上の幅寸法とされた角形とし、図5に示す第3の実施の形態では胴1を半楕円形とし、フランジ3を楕円形としている。
【0030】
また、第1の実施の形態においては、胴1の一端に底2を一体に形成したが、図6に示す第4の実施の形態のように、底11を有する半円形の筒状のカバー10を胴1の外周面に嵌合し、胴1の内周から外周に向けてのバーリング加工による突き破り孔12を形成して、胴1とカバー10を連結一体化してもよい。
【0031】
図6に示すように、底付きカバー10の嵌合によって底11を形成する場合、そのカバー10の底面上に化粧用の座板13を組込むことができるため、高級感のある引手を提供することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 胴
2 底
3 フランジ
10 カバー
11 底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引手取付け対象に形成された引手取付孔に嵌合される筒状の胴の一端に底が設けられ、かつ、胴の他端に前記引手取付け対象の表面に衝合されて引手取付孔を覆うフランジが形成された引手において、
前記胴が前記フランジの中心線を含む仮想平面の片側に設けられたことを特徴とする引手。
【請求項2】
前記胴が、半円形の筒体、四角形の筒体および半楕円形の筒体の一種から成る請求項1に記載の引手。
【請求項3】
前記底が胴に一体に設けられた請求項1又は2に記載の引手。
【請求項4】
前記底が胴の外周面に嵌合一体化される筒状のカバーに設けられた請求項1又は2に記載の引手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−242312(P2010−242312A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89124(P2009−89124)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(591201804)株式会社坂本金属工業所 (2)